説明

固形状油中水型乳化化粧料

【課題】 皮膚に塗布した際にのびが良く、みずみずしい良好な使用感が得られ、なおかつ、塗布後の皮膚のべたつきといった不快感がなく、さらに、保存安定性に優れる固形状油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】 全量に対し、液状油分5〜70質量部、固形状油分2〜20質量部、水1〜65質量部、界面活性剤1〜10質量%、球状粉体1〜25質量%を含有する固形状油中水型乳化化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状油中水型乳化化粧料に関する。具体的には、口紅、ファンデーション、アイシャドー、頬紅、美白スティック等の固形状油中水型乳化化粧料に関する。特に本発明は、皮膚に塗布したときに皮膚へののびが良く、みずみずしい良好な使用感が得られ、さらに、塗布後の皮膚のべたつきといった不快感がなく、さらに、保存安定性に優れる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料は付着力、耐水性、被覆力に優れることから口紅、アイシャドー、アイライナー、頬紅、ファンデーション等のメーク化粧料、そしてエモリエントスティック等のスキンケア化粧料に広く使用されている。一般に油性固形化粧料は、液状、半固形、固形油からなる油性基剤、または、液状油をゲル化剤によって固化させた油性基剤に顔料が分散されてなる。しかし、従来の油性基剤主体の油性固形化粧料は、べたつき感や油っぽさを感じる等の欠点があった。そこで、みずみずしい、さっぱりとした良好な使用感を得るために、水を配合した固形状油中水型乳化化粧料が開発されている(特許文献1)が、べたつき感や油っぽさは僅かに少なくなったものの、みずみずしさ、さっぱり感は十分ではなく、また多量の水を配合すると安定性が悪くなるという欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特許2665473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、皮膚に塗布したときにのびが良く、みずみずしい良好な使用感が得られ、なおかつ、塗布後の皮膚のべたつきといった不快感がなく、さらに、保存安定性に優れる固形状油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、液状油分、固形状油分、水、界面活性剤、粉体を含有することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、全量に対し、液状油分5〜70質量部、固形状油分2〜20質量部、水1〜65質量部、界面活性剤1〜10質量%、球状粉体1〜25質量%を含有する固形状油中水型乳化化粧料を提供する。
【0007】
本発明において、「液状」、「固形状」の語は常温における状態を示し、揮発性等の用語は常圧での状態を示す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目元、頬等の皮膚に塗布したときに、のびが良く、みずみずしい良好な使用感が得られ、なおかつ、塗布後の皮膚べたつきといった不快感がなく、さらに、保存安定性に優れる固形状油中水型乳化化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料に配合される液状油分としては、例えば、オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油等の液体油脂類;スクワラン、流動パラフィン、ポリブテン等の炭化水素油;イソステアリン酸イソセチル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2−ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2−オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2−エチルヘキシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン等のエステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン油;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン油;トリグリセリン、フッ素変性油等が挙げられる。これら液状油分は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、固形状油中水型乳化化粧料が皮膚へののびが良好な使用感が得られ、さらに、塗布後の皮膚のべたつきがないという点で、少なくとも液状油分の1種として環状シリコーン油を使用することが本発明の効果をよく発揮するために好ましい。
【0010】
環状シリコーン油の例としては、例えば、重合度4〜6の以下に示す環状シリコーン油が挙げられる。市販品の例としては、例えば、KF994、KF995、KF996(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明に用いられる液状油分の含有量は、固形状油中水型乳化化粧料全量中5〜70質量%が好ましく、特に、皮膚へののびが良く、みずみずしい良好な使用感の固形状油中水型乳化化粧料にするという点で10〜50質量%の範囲が特に好ましい。
【0012】
配合量が固形状油中水型乳化化粧料中5質量%未満では、固形状油中水型乳化化粧料の保存安定性が悪くなる。また、固形状油中水型乳化化粧料中70質量%を超えると、使用性が悪くなる。本発明においては環状シリコーン油を液状油分中に1質量%以上含有することが好ましい。
【0013】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料に配合される固形状油分としては、固形状化粧料一般に用いられるものであって、固体油脂、ロウ類、炭化水素、高級アルコール、シリコーン等が挙げられる。例えば、モクロウ、カカオ脂、水素添加ホホバ油、硬化ヒマシ油、硬化油、パーム油、硬化ヤシ油、モクロウ核油等の固体油脂;カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ジョジョバロウ、ラノリン、セラックロウ等のロウ類:ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素系ワックス類;ベヘニルアルコール、セタノール、バチルアルコール等の高級アルコール;シリコンワックス等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらの固形状油分は、1種のみを用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、固形状油中水型乳化化粧料が皮膚へののびが良く、みずみずしい良好な使用感が得られ、さらに、塗布後の皮膚のべたつきがないという点で、少なくとも固形状油分の1種として水素添加ホホバ油を使用することが本発明の効果をよく発揮するために好ましい。
【0014】
水素添加ホホバ油は、ホホバ油を水素添加し、ホホバ油中の炭素炭素間二重結合(以下、単に二重結合という。)の一部または全部を飽和結合にしたものである。水素添加ホホバ油は水素添加の度合いにより融点が変化し、水素添加率が高くなるほど融点が上昇する。本発明においては、水素添加率の高い水素添加ホホバ油が好適に用いられ、融点が50℃以上になるまで水素添加された水素添加ホホバ油が特に好適に用いられる。さらに好ましくは融点が55〜70℃の水素添加ホホバ油である。かかる水素添加ホホバ油を用いることにより、皮膚への延びがよく、みずみずしい良好な使用感が得られ、なおかつ、塗布後のべたつきといった不快感のない固形状油中水型乳化化粧料を得ることができる。
【0015】
本発明の水素添加ホホバ油は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、ハイドロホホバ(融点58〜60℃、香栄興業製)、極度水添ホホバ油(融点65〜70℃、香栄興業製)、ホホバ硬化油(融点60〜70℃、高級アルコール工業製)、水素添加ホホバ油(融点65〜70℃、横関油脂工業製)、NIKKOLホホバワックス(融点66〜70℃、日光ケミカルズ製)等が挙げられる。
【0016】
水素添加ホホバ油は、固形状油分全量に対して少なくとも20質量%、好ましくは25質量%以上配合するとよい。
【0017】
固形状油分の配合量は、一般的には固形状油中水型乳化化粧料全量中2〜20質量%が好ましく、特に皮膚へののびが良い使用感と、固形状油中水型乳化化粧料の保存安定性の点で、3〜15質量%が特に好ましい。配合量が固形状油中水型乳化化粧料中2質量%未満では、固形状油中水型乳化化粧料の保存安定性が悪くなる。また、固形状油中水型乳化化粧料中20質量%を超えると、固形状油中水型乳化化粧料の使用性が悪くなる。
【0018】
本発明において用いられる界面活性剤は、通常の乳化化粧料に用いられるものであればよく、例えば、非イオン界面活性剤として、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。界面活性剤は、一種又は二種以上を任意に選択して用いることができる。
【0019】
本発明における界面活性剤の含有量は固形状油中水型乳化化粧料全量中1〜10質量%が好ましく、化粧料に配合したときのべたつきの無さより2〜8質量%の範囲が特に好ましい。
【0020】
本発明で用いられる水は、通常化粧品に使用されるものであれば特に制限はなく、蒸留水やイオン交換水の他に、ハマメリス、ラベンダー、ローズ等の植物水抽出液、深海から採取される海洋深層水等が挙げられる。
【0021】
水の含有量は、固形状油中水型乳化化粧料全量中1〜65質量%の範囲が好ましく、2〜60質量%の範囲が特に好ましい。この範囲では、塗布したときにみずみずしく、べたつかない良好な使用感が得られる。
【0022】
本発明に用いられる球状粉末は、化粧料等で使用される球状粉末であればいかなるものでも使用可能であるが、無孔質の球状粉末がより効果を発揮する点で好ましい。好ましく用いられる無孔質の球状粉末の具体的な例を示すと、例えば、無孔質シリカ、ウレタンパウダー、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAともいう)、ポリエチレン等が挙げられる。特に、無孔質シリカが化粧料に配合した時のべたつかない使用感付与と固形状油中水型乳化化粧料の保存安定性より最も好ましい。
【0023】
本発明において最も好ましく配合される無孔質シリカは、市販品の例としては、例えば、サンスフェアNP−30、サンスフェアNP−100(共に、旭硝子製)等が挙げられる。
【0024】
前記無孔質粉末は平均粒径が1.0〜15.0μmであるものが好適に用いられる。この範囲のものを使用することによって、特に優れた使用感が得られる。平均粒径が15μmを超えるものは、ざらつき感が出る可能性がある。
【0025】
前記球状粉末の配合量は、固形状油中水型乳化化粧料全量中1〜25質量%が好ましく、特に化粧料に配合した時のべたつかない使用感と固形状油中水型乳化化粧料の保存安定性の点で、固形状油中水型乳化化粧料全量中2〜20質量%が特に好ましい。配合量が固形状油中水型乳化化粧料中1質量%未満では、固形状油中水型乳化化粧料の使用性、保存安定性が悪くなる。また、固形状油中水型乳化化粧料中25質量%を超えると、保存安定性が悪くなる。
【0026】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料は、上記球状粉末以外の粉末を配合してもよい。かかる粉末としては一般に化粧品等に使用されている粉末であればいずれでも配合出来る。例えば、タルク、カリオン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等の無機粉末、シリコ−ン樹脂粉末、セルロース粉末等の有機粉末、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄黄酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット 酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青等の無機顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号 赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号などのジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料、クロロフィル、β−カロチン等の天然色素などが挙げられる。
【0027】
また上記粉末をシリコーン処理、金属石鹸処理、脂肪酸処理、界面活性剤処理、あるいは酸、アルカリ、無機塩類による処理、さらにはこれらの複合処理を行った後、配合してもよい。
【0028】
上記粉末は、球状粉末の5質量倍まで、好ましくは4質量倍まで、より好ましくは同量以下となるよう配合する。本発明において球状粉末と球状でない粉末の両方を含む粉末全量の配合量は、固形状油中水型乳化化粧料中1〜40質量%とするのが好ましい。
【0029】
本発明に用いる美白成分は、ハイドロキノンの配糖体およびその誘導体、L−アスコルビン酸およびその誘導体、胎盤抽出物、アルキルレゾルシノールおよびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体、エラグ酸、レゾルシン誘導体、カミツレエキスが好ましい。
【0030】
特に、ハイドロキノンの配糖体およびその誘導体、L−アスコルビン酸およびその誘導体、胎盤抽出物、アルキルレゾルシノールおよびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体が特に好ましい。
【0031】
本発明で使用するハイドロキノン及びその誘導体としては、特に限定されないが、ハイドロキノン配糖体が好ましく用いられ、例えば、ハイドロキノン−α−D−グルコース、ハイドロキノン−β−D−グルコース、ハイドロキノン−α−L−グルコース、ハイドロキノン−β−L−グルコース、ハイドロキノン−α−D−ガラクトース、ハイドロキノン−β−D−ガラクトース、ハイドロキノン−α−L−ガラクトース、ハイドロキノン−β−L−ガラクトース等の六炭糖配糖体、ハイドロキノン−α−D−リボース、ハイドロキノン−β−D−リボース、ハイドロキノン−α−L−リボース、ハイドロキノン−β−L−リボース、ハイドロキノン−α−D−アラビノース、ハイドロキノン−β−D−アラビノース、ハイドロキノン−α−L−アラビノース、ハイドロキノン−β−L−アラビノース等の五炭糖配糖体、ハイドロキノン−α−D−グルコサミン、ハイドロキノン−β−D−グルコサミン、ハイドロキノン−α−L−グルコサミン、ハイドロキノン−β−L−グルコサミン、ハイドロキノン−α−D−ガラクトサミン、ハイドロキノン−β−D−ガラクトサミン、ハイドロキノン−α−L−ガラクトサミン、ハイドロキノン−β−L−ガラクトサミン等のアミノ糖配糖体、ハイドロキノン−α−D−グルクロン酸、ハイドロキノン−β−D−グルクロン酸、ハイドロキノン−α−L−グルクロン酸、ハイドロキノン−β−L−グルクロン酸、ハイドロキノン−α−D−ガラクツロン酸、ハイドロキノン−β−D−ガラクツロン酸、ハイドロキノン−α−L−ガラクツロン酸、ハイドロキノン−β−L−ガラクツロン酸等のウロン酸配糖体等を挙げることができる。またその誘導体としては、アセチル化物等のエステル体、メチル化物などのエーテル体等を挙げることができ、これらの中でもハイドロキノン−β−D−グルコースが本発明の効果の面から最も好ましい。
【0032】
本発明で使用するL−アルコルビン酸誘導体としては、例えば、L−アスコルビン酸モノステアレート、L−アスコルビン酸モノパルミテート、L−アスコルビン酸テトライソパルミテート、L−アスコルビン酸モノオレート等のL−アスコルビン酸モノアルキルエステル類、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸-2-硫酸エステルなどのL−アスコルビン酸モノエステル類;L−アスコルビン酸ジステアレート、L−アスコルビン酸ジパルミテート、L−アスコルビン酸ジオレートなどのL−アスコルビン酸ジアルキルエステル類;L−アスコルビン酸トリステアレート、L−アスコルビン酸トリパルミテート、L−アスコルビン酸トリオレートなどのL−アスコルビン酸トリアルキルエステル類;L−アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのL−アスコルビン酸トリエステル類;L−アスコルビン酸2−グルコシドなどのL−アスコルビン酸グルコシド類が挙げられる。
【0033】
特に、L−アスコルビン酸モノアルキルエステル類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸-2-硫酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシドまたはそれらの塩が好ましく用いられる。L−アスコルビン酸およびその誘導体は、1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
本発明で使用する胎盤抽出物とは、ウシまたはブタの胎盤から精製水で抽出して得られるエキス、ウシの胎盤から蛋白分解酵素処理し精製水で抽出して得られるエキス等を挙げることが出来る。
【0035】
本発明で使用するアルキルレゾルシノールは、公知の物質である。アルキルレゾルシノールのアルキル基としては、炭素数1〜7の直鎖、分岐、環状構造を有するものの何れでも良く、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピルメチル基等が例示できる。これらの内では炭素数4のアルキル基が好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。ベンゼン環へのアルキル置換基の位置は、特に限定されないが、四位の位置が好ましい。又、本発明の化粧料で用いることのできる、アルキルレゾルシノールの生理的に許容される塩としては、通常化粧料などに使用され、生理的に許容されるものであれば特段の限定は受けないが、好ましいものは、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩である。
【0036】
本発明で使用するトラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4'−ヒドロキシフェニルエステル)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸およびその塩)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス−4−アミノメチルシコロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス−4−(P−メトキシビンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩)などが挙げられる。
【0037】
美白成分は1種または2種以上を用いることができる。美白成分の配合量は、固形状油中水型乳化化粧料全量中に0.01〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、0.1%〜10質量%である。
【0038】
本発明には発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じ、保湿剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線防止剤、PH調整剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、香料等を配合することができる。
【0039】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料は、医薬品、医薬部外品、化粧料、トイレタリー、雑貨等に広く応用することができる。本発明の固形状油中水型乳化化粧料は、広く各種化粧品基剤として利用でき、例えば、口紅、ファンデーション、フェースカラー、頬紅、アイカラー、アイシャドー等のメーク化粧料、リップクリームやエモリエントスティック等のスキンケア化粧料、そしてヘアケア用固形化粧料等、そして、スティック状化粧料では、美白用、ヘアケア用、アイシャドー、ファンデーション、アイブロー、アイカラー、リップライナー等に適しているが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明の固形状油中水型乳化化粧料の製造方法としては格別なものはなく、目的とする製品を製造する際に従来用いられる方法を適宜用いて製造すればよい。
【実施例】
【0041】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法及び評価基準について説明する。
【0042】
[使用感官能試験]
各試験品について、10名の女性パネルが使用し、肌へののび、肌のみずみずしさ、塗布後のべたつき感について、以下の基準に従って評価した。
【0043】
(評価基準)
肌へののび :ない 0←1←2→3→4 ある
肌のみずみずしさ :しない 0←1←2→3→4 する
肌のべたつき :ある 0←1←2→3→4 ない
0:非常に
1:どちらかといえば
2:どちらともいえない
3:どちらかといえば
4:非常に
【0044】
(判断基準)
◎:10名の4段階評価の平均値が3以上4以下
○:10名の4段階評価の平均値が2以上3未満
△:10名の4段階評価の平均値が1以上2未満
×:10名の4段階評価の平均値が0以上1未満
【0045】
[保存安定性]
固形状油中水型乳化化粧料を25℃に保持された恒温槽、50℃に保持された恒温槽、40℃に保持された恒温槽、サイクル槽(1日ごとに−5℃および40℃と変化させる)で1ヶ月保存された固形状油中水型乳化化粧料につき、25℃に保持された固形状油中水型乳化化粧料の状態と比較し、状態の変化の有無を下記の基準に従って評価した。
【0046】
(評価基準)
○:いずれの恒温槽に保存された固形状油中水型乳化化粧料も、変化がみられなかった。
△:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか1つで発汗や乳化破壊がみられる。
×:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか2つ以上で発汗や乳化破壊がみられる。
【0047】
(実施例1〜8)
表1に示す処方の油中水型乳化スティックを以下の方法で調製した。A成分を加熱溶解する。B成分を加熱溶解する。A成分中にB成分を加え混合分散し、油中水型乳化スティックバルクを得た。上記調製方法で得られたスティックバルクを75℃で溶解し、スティック容器に流し込み、冷却し、油中水型乳化スティックを得た。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、上記および下記実施例では、無孔質シリカとしては平均粒径が3〜10μmのものを用いた。また、タルクは平均粒径1〜30μmで鱗片状のものを、酸化チタンは平均粒径10〜50nmで紡錘状もしくは粒状のものを用いた。
【0050】
【表2】

【0051】
表2から、液状油分し、固形状油分、球状粉体を含有し、さらに水と、界面活性剤を含有する実施例1〜8の油中水型乳化スティックは、使用による肌へののびが良く、肌はみずみずしく、使用後の肌のべたつきも無い等優れた使用感が得られ、さらに、保存安定性に優れたものであることが分かる。
【0052】
(比較例1〜9)表4に示す処方の油中水型乳化スティックを実施例1〜8の方法に準じて調製した。
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表4から、本発明の必須構成成分の配合量の少なくとも1つが本発明の範囲外となる比較例1〜9の油中水型乳化スティックは、肌へののびが悪かったり、肌のみずみずしさがなかったり、使用後の肌にべたつきがあったり、保存安定性が悪いものであった。
【0055】
実施例9〜15
実施例1〜8の方法に準じて下記処方の本発明固形状油中水型乳化化粧料を製造した。下記表において、配合量はいずれも化粧料全量に対する質量%で示している。得られた固形状油中水型乳化化粧料について実施例1〜8と同様の試験を行ったところ、いずれにおいても優れた結果を得た。
【0056】
(実施例9)スティックファンデーションα
【表5】

*1 KF-96A-10CS(信越化学製)
*2 KF−995(信越化学製)
*3 T.I.O(日清オイリオ製)
*4 コスモール222(日清オイリオ製)
*5 サンスフェアNP-30(旭硝子製)
【0057】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を80℃にて口紅容器に直接充填・冷却し、スティックファンデーションαを得た。
【0058】
(実施例10)スティックファンデーションβ
【表6】

【0059】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を80℃にて口紅容器に直接充填・冷却し、スティックファンデーションβを得た。
【0060】
(実施例11)アイシャドー
【表7】

*6 リピジュアタルク(大日本化成製)
*7 エステモールN−01(日清オイリオ製)
【0061】
(製法)Bに属する油相部の原料及びCに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、攪拌機にて乳化処理し、30℃に冷却する。乳化物をAに混合し専用金皿に充填プレスし、アイシャドーを得た。
【0062】
(実施例12)頬紅
【表8】

*8 リピジュアチタン(大日本化成製)
*9 リピジュアタルク(大日本化成製)
*10 リピジュアマイカ(大日本化成製
【0063】
(製法)Bに属する油相部の原料及びCに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、攪拌機にて乳化処理し、30℃に冷却する。乳化物をAに混合し専用金皿に充填プレスし、頬紅を得た。
【0064】
(実施例13)コンパクトファンデーション
【表9】

*11 リピジュアセリサイト(大日本化成製)
*12 サンスフェアNP−100(旭硝子製)
【0065】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を80℃にて専用金皿に直接充填・冷却し、コンパクトファンデーションを得た。
【0066】
(実施例14)美白スティック
【表10】

*13 ヒアルロンサンHA−LQ(キューピー製)
【0067】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を80℃にて口紅容器に直接充填・冷却し、美白スティックを得た。
【0068】
(実施例15)ブライトニングスティック
【表11】

*14 リン酸L−アスコルビルマグネシウム(和光純薬製)
【0069】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を80℃にて口紅容器に直接充填・冷却し、ブライトニングスティックを得た。
【0070】
(実施例15)ヘアトリートメントスティック
【表12】

【0071】
(製法)Aに属する油相部の原料及びBに属する水相部の原料を80℃に加熱し、完全溶解した後、水相部を油相部に混合し、乳化機にて乳化処理する。乳化物を80℃にて口紅容器に直接充填・冷却し、ヘアトリートメントスティックを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全量に対し、液状油分5〜70質量部、固形状油分2〜20質量部、水1〜65質量部、界面活性剤1〜10質量%、球状粉体1〜25質量%を含有する固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
液状油分として、少なくとも揮発性のシリコーン油を含有する請求項1に記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
固形状油分として、少なくとも水素添加ホホバ油を含有する請求項1乃至2のいずれか1項に記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
球状粉体として、無孔質の球状粉体を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
さらに美白成分を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項6】
美白成分が、ハイドロキノンの配糖体およびその誘導体、L−アスコルビン酸およびその誘導体、胎盤抽出物、アルキルレゾルシノールおよびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体、エラグ酸、レゾルシン誘導体、カミツレエキスからなる群から選ばれた一種または二種以上である請求項5に記載の固形状油中水型乳化化粧料。
【請求項7】
スティック状である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の固形状油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2006−282632(P2006−282632A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107727(P2005−107727)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(591119750)岩瀬コスファ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】