説明

固形粉末化粧料

【課題】 化粧料の肌への移り具合が良好であり、化粧膜の均一性に優れ、しかも塗布後の肌の突っ張り感がなく、化粧持続性にも優れた固形粉末化粧料を提供すること。
【解決手段】 次の成分(a)〜(c);
(a)粒径が0.5〜5μmである酸化チタン 5〜30質量%
(b)油剤 16〜50質量%
(c)成分(a)以外の粉体
を配合し、水を用いて使用することを特徴とする固形粉末化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時にスポンジやマット、ブラシ等の小道具に水を含ませて使用する固形粉末化粧料に関するものであり、より詳細には、化粧料の肌への移り具合が良好であり、化粧膜の均一性に優れ、しかも塗布後の肌の突っ張り感がなく、化粧持続性にも優れた固形粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、コンパクトファンデーション等に代表される粉体が主成分である化粧料剤型である。これらは、スポンジやマット、ブラシ等の小道具を用いて、固形表面を塗擦し、化粧料を前記小道具に移り取り、これを肌に塗布して化粧するものである。小道具は、そのまま(乾燥したまま)用いるのが一般的であるが、みずみずしい使用感と肌への密着性を高めるために、小道具に水を含ませて使用する、水使用専用の固形粉末化粧料も上市されている。
【0003】
しかしながら、従来の水使用専用の固形粉末化粧料は、密着性の高い化粧膜を形成することが可能である反面、肌上で水が揮発する際に粉体同士の凝集により、肌の突っ張り感を強く感じる場合が多かった。このため、水を用いて使用する固形粉末化粧料では、使用性を向上させるための様々な検討がなされてきた。
【0004】
例えば、フッ素系油剤を配合して、水が揮発する際の粉体同士の凝集力を弱める方法(例えば、特許文献1参照。)、シリコーン系油を多量に配合する方法(例えば、特許文献2参照。)、シリコーン系ゴム状粉体を配合する方法(例えば、特許文献3参照。)等が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特許3213867号公報
【特許文献2】特公昭59−36881号公報
【特許文献3】特開2001−114649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1記載の方法では、肌の突っ張り感は若干軽減されるものの、水を含ませた小道具への化粧料の移り具体が悪く、肌上に形成される化粧膜の均一性が良好ではなかった。また、前記特許文献2記載の方法では、伸び広がりや小道具への移りは良いが、肌への付着力が良好ではなかった。そして、前記特許文献3記載の方法でも、肌上に形成される化粧膜のキメが粗く、均一性が良好ではなかった。
【0007】
このため、化粧料の肌への移り具合が良好であり、化粧膜の均一性に優れ、しかも塗布後の肌の突っ張り感がなく、化粧持続性にも優れた固形粉末化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記実状において鋭意検討を重ねた結果、使用時に小道具に水を含ませて使用する固形粉末化粧料に、平均粒径が0.5〜5μmである酸化チタンと油剤を特定量配合することにより、肌上で水が揮発する際の粉体同士の凝集力を緩和することにより、肌への密着性に優れ、且つ塗布後の肌の突っ張り感が改善されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は次の成分(a)及び(b);
(a)平均粒径が0.5〜5μmである酸化チタン 5〜30質量%
(b)油剤 16〜50質量%
(c)成分(a)以外の粉体
を配合し、水を用いて使用することを特徴とする固形粉末化粧料を提供するものである。
【0010】
また、前記成分(a)がリン脂質及び/又はリン脂質誘導体で表面被覆されていることを特徴とする前記固形粉末化粧料を提供するものである。また、前記成分(c)がリン脂質及び/又はリン脂質誘導体で表面被覆されている粉体であることを特徴とする前記固形粉末化粧料を提供するものである。
【0011】
更に、成分(d)として多価アルコールを配合することを特徴とする前記固形粉末化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固形粉末化粧料は、使用時にスポンジやマット、ブラシ等の小道具に水を含ませて使用する際に、化粧料の肌への移り具合が良好であり、化粧膜の均一性に優れ、しかも塗布後の肌の突っ張り感がなく、化粧持続性にも優れた固形粉末化粧料に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
本発明において、固形粉末化粧料は、使用時にスポンジやマット、ブラシ等の小道具に水を含ませて使用する固形粉末化粧料である。
【0014】
本発明に用いられる成分(a)は、平均粒径が0.5〜5μmの酸化チタンである。平均粒径が0.5μm未満の酸化チタン(従来の酸化チタン)は、肌上で水が揮発する際に、粉体同士の凝集力が高くなり、塗布後の肌の突っ張り感を強く感じるため好ましくない。また、平均粒径が5μmを超える酸化チタンは、塗布膜の隠蔽性等が低下するため好ましくない。固形粉末化粧料では、肌を隠蔽するために、高屈折率の白色顔料である酸化チタンが配合されるが、従来の酸化チタンは可視光反射率が高くなるよう、平均粒径が0.2〜0.4μmのものが汎用されている。本発明で用いられる成分(a)の平均粒径が0.5〜5μmの酸化チタンも、従来の酸化チタンと同様に、肌を隠蔽する効果を付与するため用いられるものであるが、従来の白色顔料である酸化チタンより平均粒径が大きいので、凝集力が弱く塗布後の肌の突っ張り感を減じることができる。尚、成分(a)の酸化チタンは、塗布膜の突っ張り感のなさと肌隠蔽性のバランスから0.7〜3μmがより好ましい。尚、本発明において、粉体の平均粒径はレーザー回折法により得られた値を示す。
【0015】
前記成分(a)の酸化チタンは、平均粒径が0.5〜5μmの範囲であれば、結晶形(アナタース、ルチル等)、結晶状態(アモルファス)等には限定されず、その製造方法も、塩素法、硫酸法等の何れの製造方法により得られたものであってもよい。
【0016】
また、成分(a)の酸化チタンは、必要に応じて、通常公知の疎水化表面被覆剤である、アルミナ、シリカ、酸化鉄等の無機化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物、リン脂質、リン脂質誘導体、金属石鹸ン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を施して用いても良い。本発明の成分(a)は予め、リン脂質及び/又はリン脂質誘導体により表面被覆して用いた方が、肌への付着性がより良好になるため好ましい。(本発明では、粉体の表面に疎水化剤をコーテイングすることを「表面被覆」と表現している。)
【0017】
成分(a)の表面被覆に用いるリン脂質は、動物性、植物性、水添、非水添は問わず、リン酸基を有する脂質である。具体的には、大豆リン脂質である味の素レシチン(味の素社製)、水添大豆レシチンのレシノールS−10、S−10E(何れも、日光ケミカルズ社製)等の市販品をそのまま用いることができる。また、リン脂質誘導体としては、リン脂質にアクリルポリマーが重合したリン脂質ポリマーである、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体または2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーとの共重合体等が挙げられる。具体的には、LIPIDURE−HM、PMB、C、S(何れも、日本油脂社製)等の市販品をそのまま用いることができる。
【0018】
成分(a)へのリン脂質及び/又はリン脂質誘導体の表面被覆量は、粉体100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。尚、表面被覆方法は、特に限定されないが、例えば、n−へキサン等の炭化水素系又はイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒中にリン脂質及び/又はリン脂質誘導体を溶解又は分散し、成分(a)と混合し、溶媒をろ過又は加熱乾燥により除去、粉砕して得る方法等が挙げられる。
【0019】
このような成分(a)の酸化チタンは、市販品として、TITANIX MP−100、TITANIX MP−70(何れも、テイカ社製)、ルクセレンシルクD(朝日化学工業社製)等を用いることができる。
【0020】
本発明の固形粉末化粧料において、成分(a)の酸化チタンの配合量は、5〜30質量%(以下、単に「%」と略す。)である。成分(a)の配合量が5%未満では、化粧効果が十分でなく、配合量が30%を超えると、肌上での伸び広がりが悪くなるため好ましくない。
【0021】
本発明に用いられる成分(b)は、通常、化粧料に用いられる油剤であれば、何れでもよく、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャトロプシュワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素系類、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ等の天然ロウ類、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、オリーブ油、ヒマシ油、モクロウ等の油脂類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、N−ラウロイルーL−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類、ジメチルポリシロキサン、アルキル変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系油剤類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。尚、これら油剤の中でも特に好ましい油剤は、35℃において液状であるものである。更には、水を抱え込む、いわゆる抱水性油剤が特に好ましい、このような抱水性油剤としては、N−ラウロイルーL−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類、ラノリン誘導体類等が挙げられる。
【0022】
本発明の固形粉末化粧料において、成分(b)の油剤の配合量は、16〜50%である。成分(b)の配合量が16%未満では、塗布後の肌の突っ張り感の改善が十分でなく、潤い感にも乏しく、配合量が50%を超えると、化粧持続性が好ましくない。
【0023】
本発明の固形粉末化粧料には、成分(c)として、成分(a)以外の粉体を配合する。このような粉体としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられ感触調整や着色等の目的で用いられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、珪ソウ土、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化硼素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄処理雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。尚、これら粉体は、必要に応じて、通常公知の表面被覆剤である、アルミナ、シリカ、酸化鉄等の無機化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物、リン脂質、金属石鹸ン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を施して用いても良い。
【0024】
本発明の固形粉末化粧料において、前記粉体の配合量は、20〜80%が好ましい。前記粉体の配合量がこの範囲内であると、小道具へのとれが良好になる。
【0025】
また、本発明の固形粉末化粧料に配合する全粉体〔成分(a)と成分(c)の合計〕における、疎水化処理粉体の含有量が40〜70%であると、化粧料の肌への移り具合がより良好で、化粧持続性により優れた固形粉末化粧料を得ることができる。本発明において、前記疎水化処理粉体とは、100mlのビーカーに20℃の水50mlを入れ、粉体0.1gを液面に静かに添加し、5分放置後に粉体が液面上に残っている粉体をいう。このような疎水化処理粉体は、成分(a)又は成分(c)をフッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、リン脂質、リン脂質誘導体、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等を用いて表面被覆して調製されるものである。
【0026】
本発明において、成分(c)が、リン脂質及び/又はリン脂質誘導体を用いて表面被覆されている粉体であると、肌移りがよく肌への突っ張り感がない点で特に好ましい。このようなリン脂質及び/又はリン脂質誘導体は、成分(a)の表面被覆剤として用いるものと同じであり、成分(c)への表面被覆量は、粉体100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。また、表面被覆方法も成分(a)と同じである。また、成分(c)中における、リン脂質及び/又はリン脂質誘導体を用いて表面被覆されている粉体の割合は、特に限定されないが、5%以上が好ましい。
【0027】
また、本発明には、上記成分に加えて、成分(d)として、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコールを配合することにより、水使用時に粉の水への湿潤を助ける働きにより化粧料の肌への移り具合がより良好となる。本発明の固形粉末化粧料における成分(d)の配合量は、特に限定されないが、0.5〜5%が好ましい。
【0028】
本発明の固形粉末化粧料には、上記成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、リン脂質以外の界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、パラオキシ安息香酸誘導体、フェノキシエタノール等の防腐剤、香料等の通常化粧料に汎用される成分を含有することができる。
【0029】
本発明に配合可能な界面活性剤としては、乳化剤としてではなく、粉体の分散剤、湿潤剤等に用いられるものである。具体的には、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等のノニオン界面活性剤類、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸の無機塩及び有機塩、アルキルベンゼンスルホン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、o−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン界面活性剤類、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤類等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0030】
本発明に配合可能な紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4‘−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン類等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の粉末固形化粧料の製造方法は、特に限定しないが、例えば、成分(a)及び成分(c)に成分(b)、必要に応じて成分(d)を添加し、混合分散し、粉砕し、金皿や樹脂更に圧縮成形する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明の固形粉末化粧料は、口紅、ファンデーション、白粉、頬紅、コンシーラー、アイシャドウ、下地料、アイライナー等のメーキャップ化粧料が挙げられるが、これらファンデーション、アイシャドウ等の化粧料であると、本発明の効果がより顕著である。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0034】
試験例:酸化チタンの単位厚さあたりの折れ荷重値
本発明の成分(a)は、水使用塗布後に塗布膜が乾燥した時に、肌に突っ張り感を感じさせない。これは、粒径の小さい酸化チタンが水により水素結合で引き合い凝集することで、肌が突っ張ったような印象を与えるため、特定の粒径の成分(a)を配合した場合、その凝集力が低いことによるものと考えられる。そこで、水による粉体同士の結合力を評価するために、水スラリーを調製し、これより水を乾燥させた成形物の折れ荷重値を測定した。試料は、水中に各種酸化チタンを25〜50%(粉体のカサにより異なる)添加し、スラリー状にして万能攪拌機にて10分混合脱泡し、縦横3cmで厚さ4mmの金皿にサランラップ(登録商標)を敷き、該スラリーを約20g充填後、40℃で10時間乾燥した後、前記サランラップ(登録商標)を引き抜くことで成形物を金皿から取り出した。折れ荷重の測定は、FUDOH RHEOMETER(株式会社レオテック社製)にて行った。2cm幅の空隙のある台の上にサンプルを乗せ、そのサンプル板の中心に底面積4mm×15mmの長方形の棒を進入させたときの最大折れ荷重値を測定し(進入速度:6cm/min)、乾燥後サンプルの厚みを5箇所測定した平均で割った値を表1に示した。(これは、上から荷重をかけた時の応力値を凝集力と評価し、酸化チタンの平均粒径によって水スラリー充填した場合の凝集力がどのように変化するかを示したものである。)
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果より、平均粒径の小さい酸化チタンは荷重値も大きく、平均粒径が大きくなるにつれて折れ荷重値が低くなっていることがわかる。本発明に用いられる成分(a)の酸化チタンは、折れ荷重値が低く、凝集力が低いことがわかる。
【0037】
実施例1〜5及び比較例1〜4:水使用専用(以下「ケーキ」と略す)ファンデーション
下記表2〜3に示す組成のケーキファンデーションを下記製造方法により調製し、「肌移りのよさ」、「化粧膜の均一性」、「塗布後の肌の突っ張り感」、「化粧持続性」の各項目について、以下に示す評価方法により評価し、結果を併せて表2及び3に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
(製造方法)
A:成分13〜16を60℃で加熱し、混合する。
B:成分1〜12をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:Bを粉砕する。
D:CにAと17,18を添加し、混合する。
E:Dを金皿に充填し、圧縮成型して、ケーキファンデーションを得た。
【0041】
〔評価方法〕
化粧品評価専門パネル20名に、前記実施例及び比較例のケーキファンデーションを使用してもらい、「肌移りのよさ」、「化粧膜の均一性」、「塗布後の肌の突っ張り感」、「化粧持続性」の其々の項目について、各自が以下の評価基準に従って5段階評価しファンデーション毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。尚、「化粧持続性」については、ファンデーション塗布後、日常生活を6時間した後に評価してもらった。
評価基準:
[評価結果] :[評 点]
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
判定基準:
[評点の平均点] :[判 定]
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0042】
表2及び表3の結果から明らかなように、本発明の実施品である実施例1〜5のケーキファンデーションは、「肌移りのよさ」、「化粧膜の均一性」、「塗布後の肌の突っ張り感」、「化粧持続性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。これに対して、成分(a)を含有しない比較例1や、成分(a)の量が多い比較例2では、塗布後の肌の突っ張り感が劣ってい。また、成分(b)の量が少ない比較例3では、化粧膜の均一性に乏しかった。そして、成分(b)の量が多すぎる比較例4では、肌移りのよさや化粧持続性に劣っていた。
【0043】
実施例6:ケーキ頬紅
(成分) (%)
1.シリコーン処理セリサイト 20
2.ナイロンパウダー 5
3.水添大豆リン脂質表面被覆合成金雲母
(粉体99.5質量部に0.5質量部表面被覆) 20
4.ステアリン酸マグネシウム 3
5.水添大豆リン脂質0.2%表面被覆酸化チタン(注10) 7
6.タルク 残量
7.ベンガラ 2
8.黄色酸化鉄 2
9.黒色酸化鉄 1
10.パラオキシ安息香酸メチル 適量
11.ワセリン 1
12.パーフルオロポリエーテル(注11) 3
13.ジメチルポリシロキサン(注12) 10
14.流動パラフィン 3
※注10:TITANIX MP−100(テイカ社製)
※注11:フォンブリンHC/04(アウジモント社製)
※注12:KF96(10cs)(信越化学工業社製)
【0044】
(製造方法)
A:成分11〜14を加熱し、混合する。
B:成分1〜10をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:Bを粉砕する。
D:CにAを添加し、混合する。
E:Dを金皿に充填し、圧縮成形して、ケーキ頬紅を得た。
本発明の実施品である実施例6のケーキ頬紅は、「肌移りのよさ」、「化粧膜の均一性」、「塗布後の肌の突っ張り感」、「化粧持続性」に優れた固形粉末化粧料であった。
【0045】
実施例7:ケーキアイシャドウ
(成分) (%)
1.タルク 残量
2.リン脂質誘導体表面(※)2%被覆酸化チタン(注10)
(※LIPIDURE−S) 5
3.フッ素化合物表面被覆雲母チタン 5
4.シリコーン表面被覆雲母チタン 10
5.窒化硼素 10
6.酸化チタン被覆ガラス末 2
7.合成金雲母 10
8.黄色酸化鉄 3
9.ベンガラ 2
10.黒色酸化鉄 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.5
13.トリオクタン酸グリセリル 3
14.スクワラン 6.5
15.ワセリン 5
16.ジメチルポリシロキサン(注12) 5
17.ジプロピレングリコール 0.5
【0046】
(製造方法)
A:成分12〜17を加熱し、混合する。
B:成分1〜11をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:BにAを添加し、混合する。
D:Cを粗粉砕する。
E:Dの100部に対して、軽質流動イソパラフィン37部を添加し、混合する。
F:Eを容器に充填し、70℃で24時間乾燥して軽質流動イソパラフィンを除去し、ケーキアイシャドウを得た。
本発明の実施品である実施例7のケーキアイシャドウは、「肌移りのよさ」、「化粧膜の均一性」、「塗布後の肌の突っ張り感」、「化粧持続性」の項目に優れた固形粉末化粧料であった。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)平均粒径が0.5〜5μmである酸化チタン 5〜30質量%
(b)油剤 16〜50質量%
(c)成分(a)以外の粉体
を配合し、水を用いて使用することを特徴とする固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)がリン脂質及び/又はリン脂質誘導体で表面被覆されていることを特徴とする請求項1記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(c)がリン脂質及び/又はリン脂質誘導体で表面被覆されている粉体であることを特徴とする請求項1又は2記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
更に、成分(d)として多価アルコールを配合することを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の固形粉末化粧料。

【公開番号】特開2007−169212(P2007−169212A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368876(P2005−368876)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】