固相単結晶の成長方法
【課題】異常粒成長現象が発生する多結晶体における単結晶の成長方法を提供する。
【解決手段】異常粒成長が起こる多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節し、これにより異常粒子の個数密度を減少させ、極めて制限された個数の異常粒子だけを生成するか、または、異常粒子の生成を異常粒成長の駆動力の保障範囲内に抑える。この結果、極めて制限された個数の異常粒子だけ、または種単結晶だけを多結晶体中へと成長させ続け、50mmより大きい単結晶を得る。
【解決手段】異常粒成長が起こる多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節し、これにより異常粒子の個数密度を減少させ、極めて制限された個数の異常粒子だけを生成するか、または、異常粒子の生成を異常粒成長の駆動力の保障範囲内に抑える。この結果、極めて制限された個数の異常粒子だけ、または種単結晶だけを多結晶体中へと成長させ続け、50mmより大きい単結晶を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶の成長方法に関し、より詳しくは、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を異常粒または不連続粒の生成が起こる臨界粒径の付近になるように調節することにより異常粒子の個数密度を減少させることで単結晶を成長させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、単結晶は溶融工程により製造されるため、溶融工程を用いる従来の単結晶成長法は液相単結晶成長法(LSCG)と呼ばれる。これに対し、従来の液相単結晶成長法とは異なって、溶融工程を用いることなく多結晶体の熱処理中に起こるマトリックス粒子の粒成長を用いて単結晶を製造する方法は固相単結晶成長法(SSCG)と呼ばれる。多結晶体の熱処理中には常に粒子の成長が起こるが、ある場合には大半の正常粒子またはマトリックス粒子に比べて異常粒子だけが速く粒成長する異常粒成長または不連続粒成長現象が発生する。このような異常粒子の生成と成長を調節し、極めて限られた個数の異常粒子だけを多結晶体において成長させ続けると、複雑で制御し難い溶融工程を用いることなく単結晶を製造することができる。固相単結晶成長法の可能性は、既に1950年代から提示されてきており、一部の金属系材料では単結晶の製造に成功したが、酸化物材料では、粒成長を用いて単結晶を製造する際、多結晶体において一つの単結晶だけを連続的に成長させ続けること、すなわち、異常粒子の個数密度の制御が難しいため、実際に実用可能な大きさの酸化物単結晶を製造することは困難であった。
【0003】
フェライト、チタン酸バリウム(BaTiO3)及び酸化アルミニウム(Al2O3)、 並びにPMN−PT等に対して多結晶体を熱処理し、固相単結晶成長法にて単結晶を得ようとする試みが多く行われてきた。詳述すれば、これは、粉体に種単結晶を含浸させて焼結するか、または多結晶体と種単結晶との接合界面を形成させた後に、これを熱処理することで種単結晶を成長させる方法である。しかし、この方法では、融点の付近で行われる既存の液相単結晶成長法に比べて単結晶成長が遅く、一つの単結晶だけを成長させ続けることが難しいことから、実際の用途に必要な数十mm以上の大きさの単結晶を製造することが困難であった。多結晶体において起こる異常粒成長現象を用いて単結晶を製造する場合においても、異常粒子の個数密度の制御ができず多結晶体において一つの単結晶だけを生成させ成長させ続けることができないので、実際の用途に必要な数十mm以上の大きさの単結晶を製造することができなかった。異常粒成長現象が起こる多結晶体において種単結晶を用いて単結晶を製造する場合においても、異常粒子の個数密度が制御できず、多結晶体において生成された多数の異常粒子が種単結晶の成長を妨害するので、種単結晶を成長させ続けるということが困難であった。このように、従来の固相単結晶成長法では、異常粒子の個数密度が制御できず、単結晶の製造の再現性が低く、実際の用途に必要な大きさの大きい単結晶を製造することが困難であるという短所のため、従来の液相単結晶成長法に比べて長所が少なかった。
【0004】
従来の単結晶の成長方法は、高価な設備を必要とし、且つ生産工程が極めて複雑であるために大きな単結晶の大量生産が困難であり、また、高価であるため、その用途が制限されている。特に、揮発性の強い成分を含む材料の場合には、単結晶の製造時における揮発性の強い成分の揮発による問題が深刻である。しかも、従来の方法による単結晶の成長では、溶融工程を必ず経なければならないため、溶融工程中における揮発性の強い成分の揮発により全体の組成を変化させ、単結晶相を不安定にする。それゆえ、所望の大きさと特性を有する単結晶の製造が難しい。さらに、単結晶の製造に高価な設備を必要とし、生産工程に問題があるため、単結晶の大量生産が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するためのものである。本発明は、従来の単結晶成長法である、溶融工程を必要とする液相単結晶成長法の問題を解消し、溶融工程を用いることなく、特別の装置を要することなく、一般の単純な熱処理工程により、多結晶体において起こる異常粒成長を効率よく制御することで、純粋なチタン酸バリウム(BaTiO3)単結晶、固溶体組成のチタン酸バリウム((BaXM1-X)(TiyN1-y)O3)(0≦x≦1;0≦y≦1)単結晶、PbTiO3[PT]、Pb(ZrXTi1-X)O3[PZT]、(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3[(1−x)PMN−xPT]、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PIN−xPT−yPZ]、(1−x−y)PYbN−xPMN−yPTと(1−x−y)PIN−xPMN−yPT(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)と固溶体組成のPb系ペロブスカイトのようなPbペロブスカイトを含む各種の組成の単結晶を固相単結晶の成長方法(SSCG)で製造できるようにし、単結晶の製造コストを下げ、高い再現性と経済的な方法で単結晶が大量生産できる単結晶の成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような目的を達成するために、本発明による固相単結晶の製造方法は、熱処理により異常粒成長現象が発生する材料の単結晶の成長方法において、異常粒成長が起こる材料において多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することで異常粒子の個数密度(単位面積当たりの異常粒子の個数)を減少させる段階(a)及び前記(a)段階により異常粒子の個数密度が減少された多結晶体を熱処理することで異常粒子を成長させる段階(b)とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明による固相単結晶の製造方法は、熱処理により異常粒成長現象が発生する材料の単結晶の成長方法において、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することで異常粒子の個数密度(単位面積当たりの異常粒子の個数)を減少させる条件下で多結晶体を熱処理することを特徴とする。
【0008】
前記本発明による固相単結晶の成長方法は、異常粒子の個数密度が減少された状態で発生した少数の異常粒子だけを連続的に成長させ続けることで単結晶を得ることを特徴とする。
【0009】
前記本発明による固相単結晶の成長方法において、前記多結晶体の熱処理の前に多結晶体に種単結晶を接合し後、接合部では異常粒成長を誘導し、多結晶体中では異常粒成長を抑える条件下で種単結晶と多結晶体を熱処理することで種単結晶を多結晶体中へと成長させ続けることを特徴とする。
【0010】
前記本発明による固相単結晶の成長方法において、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒子の生成が起こる臨界粒径RC(異常粒子の個数密度がゼロに なるマトリックス粒子の平均粒径)の0.5倍以上2倍以下の範囲の粒径(0.5RC≦R≦2RC)に調節することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による固相単結晶の成長方法において、少数の異常粒子だけを生成させ、生成された少数の異常粒子だけを成長させようとするとき、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒の生成が起こる臨界粒径RC(異常粒の個数密度がゼロ になるマトリックス粒子の平均粒径)の0.5倍以上1倍以下の範囲の粒径(0.5RC≦R≦RC)に調節することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明による固相単結晶の成長方法において、前記異常粒成長は、二次異常粒成長であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上で説明したように、本発明による単結晶の成長方法では、特別な装置や熟練した技
術を必要とすることなく、一般の熱処理工程により純粋なチタン酸バリウム単結晶、固溶体組成のチタン酸バリウム単結晶、PZT単結晶、固溶体組成のPZT単結晶、PMN−PT単結晶および固溶体組成のPMN−PT単結晶等のような種々の単結晶を製造することができるため、低コストで数cm以上の大きさの実用的価値のある充分に大きい単結晶を大量生産することができるという長所がある。また、本発明による単結晶の成長方法では、単結晶の大きさを限りなく成長させることができ、単結晶製造の再現性が高く、その中に組成勾配を有する単結晶を製造することができる。本発明の方法は、また、単結晶中の気孔率、気孔の大きさ及び気孔の形状を調節することができ、且つ種単結晶と接する多結晶体を所望の形状にして熱処理すると、複雑な形状の単結晶を複雑な単結晶加工工程を要することなく製造することができる。さらに、本発明の方法は、製造された単結晶を再度繰返し種単結晶として用いることができるため、種々の種単結晶を安価に製造することができるという点で経済であり、チタン酸バリウム (BaTiO3) 及びPb系ペロブスカイト型構造の酸化物のみならず、異常粒成長が起こる全ての材料に適用することができる 。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】図1aは、本発明の方法において異常粒成長が起こる多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径(R)と異常粒子の個数密度(ND)(単位面積当たりの異常粒子の個数)の相関関係、および、マトリックス粒子の平均粒径(R)と単結晶の成長速度との相関関係を示す図である。
【図1b】図1bは、種単結晶の連続成長条件(0.5RC≦R≦2RC)を示す図である。(Rはマトリックス粒子の平均粒径、RCは異常粒子の生成を開始するためのマトリックス粒子の臨界粒径)である。
【図2a】図2aは、本発明の方法において多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径の変化による異常粒子の個数密度の変化と異常粒子の成長度合いを示す模式図(異常粒子の連続成長条件は、0.5RC≦R≦RCである。
【図2b】図2bは、本発明の方法において多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径の変化による異常粒子の個数密度の変化と種単結晶の成長度合いを示す模式図(種単結晶の連続成長条件は、0.5RC≦R≦2RC)である。
【図3】図3は、1380℃で15時間熱処理したBa(Ti0.7Zr0.3)O3多結晶体[(100−x)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−xTiO2;0≦x≦1]において、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)と多結晶体中に生成される異常粒子の個数密度(ND)の相関関係、および、マトリックス粒子の平均粒径(R)と種単結晶の多結晶体中への成長速度との相関関係を示す図である。
【図4】図4は、(99.6)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.4)TiO2(モル%)組成の多結晶体の試片上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理したとき、試片において成長した単結晶の写真である。
【図5】図5は、(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の多結晶体の試片を酸素分圧0.01以下の減圧雰囲気下において1380℃で5時間焼結した後、多結晶体の試片上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、再度1380℃で空気雰囲気下において200時間熱処理したときの試片の微細組織の写真図である 。
【図6】図6は、(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1370℃で200時間空気中で熱処理したとき、試片において成長したBa(Ti0.95Zr0.05)O3単結晶を示す写真である。
【図7】図7は、(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1390℃で5時間空気中で一次焼結した後、該焼結体上にBa(Ti0.95Zr0.05)O3単結晶を載置し、1370℃で200時間空気中で熱処理したときの試片の外形写真である。
【図8】図8は、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理したとき、試片において成長した単結晶を示す写真である。
【図9】図9は、(90)[(68)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(32)[PbTiO3]]−(10)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にチタン酸バリウムの種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。
【図10】図10は、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3単結晶を(90)[Pb(Zr0.46Ti0.54)O3]−(10)PbO組成の粉末成形体中に埋めて1200℃で100時間熱処理したとき、試片において成長したPZT単結晶を示す試片の表面写真である。
【図11】図11は、(91)[(50)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)[PbZrO3]]−(9)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。
【図12】図12は、(92)[(50)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)[PbZrO3]]−(8)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3種単結晶を埋めて1150℃で100時間熱処理し たときの試片の表面写真である。
【図13】図13は、(91)[(20)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−(48)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(32)[PbTiO3]]−(9)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。
【図14】図14は、(99.8)BaTiO3−(0.2)MnO2、(99.8)BaTiO3−(0.2)NbO2.5および(99.8)BaTiO3−(0.2)CeO2(モル%)の粉体をそれぞれ順次に積層してなる粉末成形体を、酸素分圧0.01の雰囲気下において1370℃で5時間一次焼結した後、該焼結体上にチタン酸バリウム種単結晶を載置し、酸素分圧0.2の雰囲気下において1370℃で100時間熱処理したときの試片の断面写真である。
【図15a】図15aは、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上に、(111)二重双晶(Double Twin)を含むチタン酸バリウム単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理したときの試片の外形写真である。
【図15b】図15bは、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上に、棒状の二つのチタン酸バリウム単結晶(一つの棒状単結晶を二つに分けた後に約10°の角度だけ回転させたもの)を載置し、1380℃で200時間熱処理したときの試片の外形写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は添付図面を参照する、以下の詳細な説明から明らかである。以下、本発明による固相単結晶の成長方法について、添付図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0016】
本発明は、熱処理により多結晶体において異常粒成長現象が発生する材料の単結晶の成長方法において、異常粒子の個数密度ND(単位面積当たりの異常粒子の個数)は、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)に反比例し、特に、異常粒成長のためのマトリックス粒子の臨界平均粒径以上では、異常粒子の個数密度がゼロになること、即ち、異常粒成長が完全に抑えられるということを用いて、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒子が生成されるマトリックス粒子の臨界粒径(RC)を前後にして特定の範囲(0.5RC≦R≦2RC)内に含まれるように調節することを含む、熱処理によって異常粒成長を示す材料の単結晶を成長させるための方法に関する。異常粒子の個数密度を制御する条件下で熱処理するか、または前記のように異常粒子の個数密度が制御された多結晶体を熱処理することにより単結晶を得ることができる。このとき、前記のように異常粒子の個数密度が制御された状態で生成された少数の異常粒子だけを成長させ続けることによって、単結晶を得ることができる。また、異常粒子の生成が完全に抑えられた多結晶体に種単結晶を接合するか或いは前記異常粒子の個数密度を制御する条件下で多結晶体と種単結晶とを接合して熱処理することにより、種単結晶が異常粒成長と同じ成長メカニズムにて多結晶体中へと連続的に成長し続ける。前記熱処理は、多結晶体と種単結晶との接合部では異常粒成長を誘導し、多結晶体中では異常粒成長を抑える条件下で行われる。このとき、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が0.5RCより小さいと異常粒子の個数密度が高くなりすぎ、これは異常粒子と単結晶との衝突につながって大きな単結晶への成長を妨げる。マトリックス粒子の平均粒径が2RCより大きいと単結晶の成長速度が遅くなりすぎ、大きな単結晶の製造が困難である。
【0017】
多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は、様々な方法にて調節することができる。まず、多結晶体のマトリックス粒子の特定の構成成分のいずれか1種または1種以上を、原組成より過剰に添加し、または少なくすることによりマトリックス粒子の粒径を調節することができる。例えば、Ba(Ti、Zr)O3にTiO2粉体を過剰に添加することによりマトリックス粒子の粒径を減少させることができる。また、多結晶体のマトリックス粒子の構成成分の比を変えたり、多結晶体のマトリックス粒子の構成成分とは異なる1種または2種以上の他の添加物を多結晶体に添加することによりマトリックス粒子の粒径を所望のとおりに調節することができる。それだけでなく、異常粒子を成長させるための熱処理温度より高い温度で多結晶体に予め熱処理を施したり、異常粒子の成長のための焼結雰囲気とは異なる焼結雰囲気を用いて多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することもできる。そして、多結晶体の密度を調節したり、加圧焼結中の圧力の調節により平均粒径を調節することもできる。また、多結晶体において異常粒成長を反復的に引き起こすことで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を増大させる方法もある。
【0018】
結晶体の異常粒成長には、一次異常粒成長と二次異常粒成長がある。同じ材料中における一次異常粒成長は、二次異常粒成長に先行し、一次異常粒成長の開始温度は、二次異常粒成長の開始温度より低い。一次異常粒成長により均一な粒径の分布が壊れて多結晶体において異常粒子がある程度成長すると、異常粒子が元のマトリックス粒子を全て消費し、再び均一な粒径の分布に到達する。このようにして到達した均一な粒径分布下での粒径は、一次異常粒成長前のマトリックス粒子の粒径より著しく大きくなっている。このようにして一次異常粒成長が完了した多結晶体を熱処理すると、二次異常粒成長が起こり得る。前記のように、二次異常粒成長が起こるときのマトリックス粒子の粒径は著しく大きくなっている。そこで、二次異常粒成長を用いる場合、一次異常粒成長を用いる場合に比べて遥かに細かな調節が可能になる。従って、本発明において一次異常粒成長を用いるよりは二次異常粒成長を用いる方が好ましい。
【0019】
多結晶体に種単結晶を接合して種単結晶を多結晶体中へと成長させるようにするためには、多結晶体である粉末成形体または焼結体上に種単結晶を載置するか、または粉末中に種単結晶を埋めて成形するか、或いは焼結体と種単結晶とを接合した後にその接合体を粉末に埋めて成形することができる。一方、種単結晶として多結晶体と同じ結晶構造を有する単結晶を使用することもできる。
【0020】
種単結晶の表面に多結晶体薄膜を成長させ、薄膜の成長中または成長後に多結晶体薄膜においてマトリックス粒子の平均粒径を調節すれば、熱処理中に種単結晶が多結晶体薄膜へと成長し続ける。そこで、種単結晶上に新規の薄膜単結晶を製造することができる。種単結晶上の多結晶体薄膜が緻密であれば、種単結晶の密度によらず完全に緻密な単結晶薄膜を製造することができる。多結晶体薄膜の組成が種単結晶の組成と異なると、種単結晶とは組成が異なる新規の単結晶薄膜を製造することができる。
【0021】
一方、所望の結晶方向を有する単結晶を製造することが必要とされるとき、多結晶体と種単結晶とを接合する前に種単結晶の結晶方向を先に決め、種単結晶の特定の結晶面を決めた結晶方向にそって研磨した後に多結晶体と接合することにより、種単結晶から多結晶体中へと成長する単結晶の結晶方向を変えることができる。また、特定の欠陥を含む単結晶を製造する必要があるときは、種単結晶として単一双晶、二重双晶および低傾角粒界のような欠陥を含むものを使用することにより、種単結晶と同じ欠陥を含む単結晶を製造することもできる。
【0022】
多結晶体と種単結晶との接合部だけにおける異常粒成長を誘導し、多結晶体中における異常粒成長を抑える目的のために、種単結晶と前記多結晶体との接合部に異常粒成長を促進する添加物を局部的に添加する条件下で熱処理を施すことができる。ここで、異常粒成長を促進する添加物は、異常粒成長の開始温度を下げ、多結晶体において液相生成温度を下げる添加物群より選ばれたいずれか1種または1種以上であることが好ましい。
【0023】
一方、多結晶体として、粉体を所望の形状または複雑な形状に成形または加工したものを使用することにより、単結晶加工工程を経ることなく所望の複雑な形状を有する単結晶を製造することができる。また、多結晶体に添加物を添加することによって、または液相量、焼結温度、焼結雰囲気(酸素分圧と真空度等)、及び焼結圧力等を変えることによって製造した、気孔率と気孔の大きさ及び気孔形状が異なる多結晶体を種単結晶と接合して熱処理することにより、多結晶体において成長する単結晶中の気孔率と気孔の大きさ及び気孔形状を制御し、気孔を含まない完全に緻密化した単結晶および様々な気孔率を有する単結晶を製造することができる。また、気孔を含む多結晶体の上に種単結晶を載置して熱処理して単結晶を成長させることにより、単結晶の表面に完全に緻密化した層を形成し、単結晶中は気孔を含み表面は気孔のない構造を有する単結晶を製造することができる。また、多結晶体として、多結晶体の結晶構造と固溶体を形成する添加物群より選ばれたいずれか1種または1種以上を添加してなる固溶体を使用することもできる。
【0024】
また、組成勾配を有する単結晶を得るために、多結晶体の組成の結晶構造に溶解する溶質元素群より選ばれたいずれか1種または1種以上を添加した多結晶体を用いて、それぞれ組成が不連続的にまたは連続的に変わる組成勾配を有する単結晶を製造することができる。
【0025】
多結晶体の具体的な例としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、または固溶体組成のチタン酸バリウム((BaXM1-X)(TiyN1-y)O3)(0≦x≦1;0≦y≦1)、Pb(ZrXTi1-X)O3 (0≦x≦1)[PZT]、または固溶体組成のPZT((PbX、M1-x)(ZraTibNC)O3(0≦x≦1;0≦a、b、c≦1;a+b+c=1))、そして、他のペロブスカイト組成(PbTiO3[PT]、(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3[(1−x)PMN−xPT]、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PIN−xPT−yPZ]、(1−x−y)PYbN−xPMN−yPTと(1−x−y)PIN−xPMN−yPT(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1))とその固溶体組成のペロブスカイト等が挙げられる。
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明による異常粒子の核生成の制御を用いた単結晶の製造方法を詳細に説明する。
【0027】
本発明による異常粒子の個数密度の制御による単結晶の成長方法においては、異常粒 の個数密度は、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)に反比例し、特に、臨界粒径以上では、異常粒子の個数密度がゼロになる。即ち、異常粒成長が完全に抑えられるということを用いて、本発明による異常粒子の個数密度を制御することによる単結晶の成長方法は、(1) 異常粒成長が起こる多結晶体材料におけるマトリックス粒子の粒径を調節することにより、異常粒子の個数密度を最小に抑えることで全体の多結晶体において1個の異常粒子だけを生成することと、(2) 多結晶体の結晶学的な構造が同一の結晶構造を有する種単結晶を多結晶体に接合し、種単結晶と多結晶体を熱処理することを含む。上記(1)によって生成した1個の異常粒子だけが成長を続けることができる。さらに、(2)の場合には、種単結晶が異常粒子の外核の役割を果たすことで種単結晶が種単結晶と多結晶体との接合部において成長し、多結晶体中において種単結晶と同一の構造を成長させ続ける。その結果、種単結晶が接合された元の多結晶体と同一の化学組成を有しながらも、種単結晶と同一の結晶構造を有する単結晶を得る。従って、本発明による方法において種単結晶を用いて得られる単結晶は、多結晶体の化学組成を有し、種単結晶の結晶構造を有する単結晶になる。本明細書では、この単結晶を多結晶体組成の単結晶と称する。
【0028】
本発明による方法で得られた各種の組成の単結晶を再度種単結晶として用いることができる。すなわち、本発明により製造された単結晶を多結晶体に接合し、多結晶体中において種単結晶と同一の構造を成長させ続けることで多結晶体組成の別の単結晶を製造することができる。即ち、本発明により製造された単結晶を種単結晶として繰り返し活用することで種単結晶のコストを低減することができる。
【0029】
図1a及び図1bは、本発明の方法において異常粒成長が起こる多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径(R)と異常粒子の個数密度(ND、単位面積当たりの異常粒子の個数)との相関関係およびマトリックス粒子の平均粒径(R)と単結晶の成長速度との相関関係(a)、ならびに種単結晶の連続成長条件(0.5RC≦R≦2RC)(b)を概略的に示す模式図である(R:マトリックス粒子の平均粒径、RC:異常粒子の生成を引き起こすマトリックス粒子の臨界粒径)。
【0030】
図1aに示すように、異常粒の個数密度(ND)は、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)に反比例し、特に、異常粒成長のためのマトリックス粒子の臨界平均粒径(RC)以上では、異常粒子の個数密度がゼロになって異常粒成長が完全に抑えられる。従って、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することにより異常粒子の個数密度を制御することができる。マトリックス粒子の平均粒径は、異常粒成長の駆動力と反比例するため、マトリックス粒子の平均粒径が小さいと異常粒子の成長駆動力が大きくなり、異常粒子は成長初期には高い駆動力によって速く成長する。しかし、異常粒子の個数密度が高いので、異常粒子は周囲の他の異常粒子と衝突する。その結果、異常粒子が成長できず、最終的に成長が止まるようになる。マトリックス粒子の平均粒径が増大すると、異常粒子の個数密度が減少すると共に、異常粒子の成長駆動力も連続して減少するようになる。マトリックス粒子の平均粒径が臨界平均粒径(RC)より大きいとき、他の異常粒子と衝突せずに異常粒子は成長し続けることができる。しかし、マトリックス粒子の平均粒径が増大するにつれて異常粒子の成長駆動力が連続して減少するので、異常粒子の成長速度が減少するようになる。その結果、マトリックス粒子の平均粒径による異常粒子の成長速度は、臨界平均粒径(RC)の付近で最大値を示す。マトリックス粒子の平均粒径がRCに比べて増大または減少すれば、異常粒子の成長速度が減少するようになる。従って、図1aにおいて多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が臨界平均粒径(RC)付近であるとき、新しく成長した異常粒子や種単結晶が成長し続けることができ、大きな単結晶を製造することができるということが分かる。
【0031】
図1bは、多結晶体において数cm以上の大きさに単結晶が成長できる種単結晶の成長条件(0.5RC≦R≦2RC)を示す。多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)が臨界平均粒径より小さい場合(R<RC)には、平均粒径が減少するにつれて異常粒子の個数密度が増大し、生成された異常粒子は、成長する単結晶と衝突して単結晶の成長を妨げる。その結果、マトリックス粒子の粒径が小さすぎると(例えば、RC≫R=R1)、単結晶は成長することができなくなる。マトリックス粒子の平均粒径(R)がRCより大きい場合には(R>RC)、異常粒子の個数密度は常にゼロである。しかし、マトリックス粒子の粒径が増大すると、粒成長の駆動力が急激に減少するようになる。マトリックス粒子が臨界平均粒径(RC)より大きくなりすぎると(例えば、R=R2≫RC)、粒成長の駆動力が小さくなりすぎる。そこで、多結晶体において異常粒成長が起こらなくても、多結晶体における単結晶の成長速度が遅すぎ、実際に使用可能な大きさの単結晶を製造することができない。従って、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が異常粒成長を引き起こすマトリックス粒子の臨界平均粒径(RC)に近い特定の範囲内にあるときのみ、実際に使用できる大きさの単結晶を製造することができる。
【0032】
本発明の実施例で示唆されるように、一般に、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が0.5RCより小さい場合(0.5RC>R)には、異常粒子の個数密度が高すぎて単結晶が成長できない。多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が2RCより大きい場合(2RC<R)には、異常粒子の個数密度はゼロである。しかし、単結晶の成長速度が遅すぎて大きな単結晶を製造することができない。そこで、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を特定の範囲(0.5RC≦R≦2RC)内に含まれるように調節することによって異常粒子の個数密度を制御することができ、種単結晶が異常粒成長と同じ成長メカニズムにて多結晶体中へと成長し続けることができ、実際に利用可能な数cm以上の大きさの単結晶を製造することができる。図2aは、多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径が変化するときの異常粒子の個数密度の変化と異常粒子の成長度合いを示す。そして、図2bは、多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径が変化するときの異常粒子の個数密度の変化と種単結晶の成長度合いを示す。図2aは、少数の異常粒子だけを生成させ、該生成された少数の異常粒子だけを成長させる条件(0.5RC≦R≦RC)を示し、図2bは、種単結晶の連続成長が可能な条件(0.5RC≦R≦2RC)を示す。少数の異常粒子だけを生成させ、該生成された少数の異常粒子だけを成長させるための条件は、0.5RC≦R≦RCである。Rが0.5RCより小さい場合には、生成される異常粒子の個数密度が高すぎるため、少数の異常粒子だけを成長させることが不可能であり、RがRCより大きい場合には、異常粒子がまったく生成しないため、前記範囲内に調節することが好ましい。
【0033】
従って、多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径を、異常粒成長は抑えるが粒成長の駆動力は十分に大きい特定の粒径範囲に制御することによって、即ち、多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく小さい場合は、マトリックス粒子の大きさを増大させることで特定の粒径範囲に含まれるようにするか、または多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく大きい場合は、マトリックス粒子の大きさを減少させることで前記特定の粒径範囲に含まれるようにマトリックス粒子の粒径を制御して、多結晶体における異常粒子の個数を最小にすることにより、生成された異常粒子だけを成長させ続けるか、または、異常粒成長を十分に抑え、多結晶体の外部に種単結晶を接合することで、種単結晶が異常粒子の外核の役割を果たすようにして、異常粒成長と同じメカニズムにて種単結晶を成長させ続けることができる。その結果、多結晶体組成の単結晶を製造することができる。
【0034】
多結晶体と種単結晶とを接合するためには、粉末成形体または多結晶体上に種単結晶を載置するか、粉体中に種単結晶を埋めて成形し、または、多結晶体と種単結晶とを接合した後に該接合体を粉体に埋めて成形する。
【0035】
多結晶体薄膜の製造法を用いて種単結晶の表面に多結晶体薄膜を成長させ、薄膜の成長中または成長後に多結晶体薄膜におけるマトリックス粒子の平均粒径を調節する。熱処理中に種単結晶が多結晶体薄膜へと成長し続け、種単結晶上に新規の薄膜単結晶を製造する。
【0036】
また、本発明による方法は、単純な形状の板状または棒状の種単結晶を用いるか、または成長速度の高い大きな結晶面である“L”字状のような種単結晶の成長速度を最大にすることができる複雑な形状の種単結晶を用いることにより、種単結晶の成長を促進することを特徴とする。
【0037】
多結晶材料の熱処理中には、常にマトリックス粒子の成長が起こる。マトリックス粒子の成長は、マトリックス粒子の化学組成、熱処理温度、添加剤の種類と量、不純物の種類と量、熱処理雰囲気(特に、酸素分圧及び真空度等)、多結晶体の密度および加圧焼結時の圧力等により大きく影響を受ける。本発明による方法では、多結晶体粉末の組成、熱処理温度、添加剤の使用、熱処理雰囲気、多結晶体の密度および加圧焼結時の圧力等の調節等により多結晶体のマトリックス粒子の粒径を調節する方法を用いて多結晶体における異常粒子の個数密度を制御し、多結晶体中での異常粒子の成長は抑えられるが、種単結晶と多結晶体との接合部では異常粒成長が起こることで、単結晶と同一の構造が多結晶体中へと成長するように熱処理される。特に、多結晶体の構成成分比の調節、熱処理温度の調節、熱処理雰囲気の調節、多結晶体の密度の調節および加圧焼結時の圧力の調節、または多結晶体の特定の構成成分の過剰添加、多結晶体のマトリックス粒子の構成成分とは異なる添加剤の添加等により多結晶体中におけるマトリックス粒子の平均粒径を調節し、異常粒子の個数密度を制御する。多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径の調節は、多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく小さい場合は、マトリックス粒子の粒径を増大して特定の粒径範囲(図1bにおいて、0.5RC≦R≦2RC)に含まれるようにするか、または多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく大きい場合は、マトリックス粒子の粒径を減少させて特定の粒径範囲(図1bにおいて、0.5RC≦R≦2RC)に含まれるようにする。これにより、多結晶体中では異常粒子の成長が抑えられるが、種単結晶と多結晶体との接合部では異常粒成長が起こり、種単結晶が多結晶体中へと成長し続けるように熱処理する。
【0038】
または、化学組成とマトリックス粒子の平均粒径の条件が同一の多結晶体では、熱処理温度が高いほど異常粒成長が活発に起こることを用いて、種単結晶と多結晶体との接合部の温度が多結晶体中の温度より高くなるように調節し、種単結晶と多結晶体との接合部における種単結晶の成長を促進し、多結晶体中における異常粒成長が抑えられる温度条件下で種単結晶と多結晶体を連続的に熱処理することにより種単結晶の成長を誘導する。
【0039】
または、マトリックス粒子の粒径を特定の臨界粒径(図1bにおいて、RC)以上に増大させて多結晶体中における異常粒成長を抑えた後に、種単結晶と多結晶体との接合部に異常粒成長を促進する添加物を添加して熱処理することで、種単結晶と多結晶体との接合部だけにおいて種単結晶が異常粒成長と同じメカニズムにて速く成長し、種単結晶が多結晶体中へと成長し続け、実際に使用可能な大きさの大きな単結晶を製造することができる。
【0040】
即ち、本発明による単結晶の成長方法は、多結晶体のマトリックス粒子の粒径を制御することで異常粒子の個数密度を調節することによって多結晶体中において自発的に生成された少数の異常粒子だけを成長させ続けるか、または多結晶体に種単結晶を接合することにより種単結晶が異常粒成長と同じメカニズムにて成長し、この結果、数cm以上の大きな単結晶を製造することができる。このように製造された大きな単結晶を種単結晶として再度使用し、多結晶体と接合して熱処理を施すことにより種単結晶と同一の構造を多結晶体中へと成長させ続け、この結果、多結晶体組成の単結晶を製造することができる。
【0041】
また、本発明による単結晶の成長方法において、多結晶体中における種単結晶から成長する単結晶は、種単結晶と同じ結晶方向を有し、また種単結晶が結晶の欠陥を有する場合には、成長する単結晶も同じ欠陥を有するということを用いて、所望の特定の結晶方向にそって種単結晶の結晶面を研磨してから、研磨した種単結晶を多結晶体と接合するか、または特定の欠陥(例えば、単一双晶、二重双晶と粒界等)を有する種単結晶を多結晶体に接合し、所望の特定の結晶方向と特定の欠陥を含む単結晶を容易に製造することができる。
【0042】
さらに、本発明による単結晶の成長方法においては、種単結晶から多結晶体へと成長する単結晶が完全に成長すると、成長した単結晶は、種単結晶に接合されていた多結晶体の外形と同じ形状になるということを用いて、多結晶体の粉体を所望の形状に成形するか、または多結晶体を複雑な形状に加工する工程を経た後に、成形または加工された多結晶体を種単結晶と接合することにより、単結晶加工のための複雑で高価な工程を要することなく、所望の複雑な形状を有する単結晶を容易に且つ安価に製造することができる。
【0043】
また、本発明による単結晶の成長方法においては、予め熱処理温度、熱処理雰囲気(例えば、酸素分圧と真空度等)、熱処理中の外圧(加圧焼結)、液相量と添加物等を調節する方法により、気孔率、気孔の形状および気孔の分布を有する多結晶体を製造した後に、その多結晶体を種単結晶と接合することにより単結晶を成長させると、種々の気孔組織を有する単結晶を製造することができる。完全に緻密化した多結晶体において単結晶を成長させると、気孔のない完全に緻密化した単結晶を経済的な方法で大量生産することができる。本発明により製造された40×40mm以上の大きな種単結晶を用いて、BaTiO3[BT]、BT固溶体((BaXM1-X)(TiyN1-y)O3)(例えば、Ba(Ti、Zr)O3[BTZ]、Ba(Ti、Sn)O3[BTS]、(Ba、Sr)TiO3[BST]等)、Pb(ZrXTi1-X)O3[PZT]、(Pby、La1-y)(ZrXTi1-X)O3[PLZT]、(100−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−(x)PbTiO3[(100−x)PMN−(x)PT]、(100−x)PMN−(x)BT、(100−x−y)PMN−xPT−yBTと(100−x−y)PMN−xPT−yPZ等及びその固溶体の単結晶、並びに各種の組成の単結晶を経済的に大量生産することができる。
【0044】
以下、本発明の実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0045】
誘電、圧電、強誘電性及び電気光学特性に優れていて各種の電子部品の核心素材として活用されているBa(Ti、Zr)O3を多結晶体にし、その構成成分のいずれか1種または1種以上を多結晶体の原組成より過剰に添加し、または少なくして熱処理することによりマトリックス粒子の平均粒径と異常粒子の個数密度を制御した。まず、実験に供されたBa(Ti、Zr)O3粉体は、BaCO3、TiO2およびZrO2粉体を混合した後、空気雰囲気下において1200℃でか焼して製造した。製造されたBa(Ti、Zr)O3粉体にTiO2を0.1モル%〜1.0モル%の範囲で変えて過剰添加し、過剰のTiO2が含まれた種々の組成の粉体を作った。TiO2が添加された粉体を四角形の型で成形した後に200MPaの冷間静水圧で加圧成形した。粉末成形体は、空気中において1300℃以上の種々の温度で200時間熱処理した。このようにして製造された多結晶体上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理した。
【0046】
図3は、過剰のTiO2が0.0モル%〜1.0モル%の範囲で添加されたBa(Ti0.7Zr0.3)O3[(100−x)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−xTiO2;0≦x≦1]組成の粉末成形体を、空気中において1380℃で15時間熱処理した試片における、マトリックス粒子の平均粒径(R)と多結晶体中に生成された異常粒子の個数密度(ND)の相関関係、および、マトリックス粒子の平均粒径(R)と種単結晶の多結晶体中への成長速度の相関関係を示す図である。Ba(Ti0.7Zr0.3)O3粉体にTiO2粉体を0.0モル%〜1.0モル%の範囲で変えて過剰添加した後に焼結した時、TiO2の含有量が増すにつれて焼結体のマトリックス粒子の粒径が連続して減少した。そして、TiO2が0.5モル%以上添加されたとき、多結晶体中において異常粒成長が起こった。また、TiO2の含有量が増すにつれて多結晶体中におけるマトリックス粒子の粒径が小さくなり、異常粒子の個数密度は連続して増大した。TiO2が0.5モル%添加された試片では、異常粒子の個数密度が2個/cm2程度に低くなり、マトリックス粒子の粒径が異常粒子の生成を引き起こす臨界粒径(RC)に至った(RC≒90μm)。(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.2)TiO2試片では、マトリックス粒子の粒径が大きすぎて多結晶体中における異常粒成長が起こらなかった。(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2試片では、マトリックス粒子の粒径が臨界粒径より小さすぎて異常粒子の個数密度が非常に高く、よって異常粒成長が活発に起こった。図3において各組成のマトリックス粒子の平均粒径は、それぞれ(a)210μm[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.2)TiO2]、(b)90μm[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.5)TiO2]および(c)35μm[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2]であり、異常粒子の生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(RC)は約90μmであった。マトリックス粒子の平均粒径が臨界粒径の2倍、即ち、180μm以上である[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.2)TiO2]の試片では、異常粒の生成は起こらなかった。しかし、粒成長の駆動力が小さすぎて種単結晶の成長速度が30μm/h以下であった。このように種単結晶の成長速度が30μm/h以下である場合には、長時間熱処理しても実際に利用可能な大きさの単結晶の製造は不可能であるため、単結晶の製造条件としては適していなかった。マトリックス粒子の平均粒径が臨界粒径の1/2、即ち、45μm以下である試片[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2]では、熱処理の初期には粒成長駆動力が大きくて種単結晶の成長が速く起こったが、成長する種単結晶の周囲において異常粒子が多く生成され、成長する種単結晶と衝突することにより種単結晶の成長を妨害した。このように異常粒子の個数密度が高い場合には、異常粒子との衝突により実際に利用可能な充分に大きい単結晶の製造が不可能であるため、単結晶の製造条件としては適していなかった。その結果、マトリックス粒子の平均粒径と単結晶の成長との関係を調査すると、マトリックス粒子の粒径が45μm以上180μm以下である場合のみ種単結晶を1cm以上の大きさに成長させることができることが分かった。従って、種単結晶が成長し続けることができるマトリックス粒子の平均粒径(R)と異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1において、RC)とを比較してみた時、その平均粒径の範囲は、0.5RC≦R≦2RCであった。
【0047】
図4は、本発明による方法により多結晶体((99.6)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.4)TiO2組成)上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3組成の種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理した試片において成長した単結晶を示す写真である。マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のための臨界粒径と類似している図3の(99.5)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.5)TiO2試片よりTiO2が0.1モル%少なく添加された図4の試片((99.6)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.4)TiO2)では、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きくて多結晶体中における異常粒成長が起こらなかった。熱処理の間、種単結晶は異常粒と衝突することなく多結晶体中へと成長し続け、約20×20mm以上の大きな種単結晶が製造された。
【0048】
Ba(Ti0.7Zr0.3)O3粉体にTiO2粉体を過剰添加することで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して減少させたとき、特定の量のTiO2粉体が添加された場合にチタン酸バリウム多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を異常粒生成のための臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きめに制御することができた(図4)。このような場合、多結晶体中における異常粒成長は起こらなかった。種単結晶は異常粒成長の外核として働いて異常粒成長と同じメカニズムにて多結晶体中へと成長し続けた。この結果、多結晶体中において大きな単結晶が製造された。製造された単結晶の大きさは、熱処理時間に比例した。そして、種単結晶が成長可能なマトリックス粒子の平均粒径(R)の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみた時、0.5RC≦R≦2RCであった。
【実施例2】
【0049】
本実施例では、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は、熱処理雰囲気(例えば、空気、酸素、水素、酸素分圧、真空度等)によって変わることを用いて、単結晶の成長のための二次熱処理の前に単結晶の成長のための熱処理雰囲気とは異なる熱処理雰囲気下において多結晶体だけを先に一次熱処理することで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節した。一次熱処理で製造された多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が二次熱処理の条件で0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように制御すれば、二次熱処理にて、種単結晶または前記一次熱処理で生成された少数の異常粒子だけを成長させ続けることができる。実験に供されたチタン酸バリウム粉体の製造と熱処理は、実施例1と同様な方法で行った。粉末成形体には、熱処理雰囲気の酸素分圧(PO2)を変化させながら1300℃以上で200時間熱処理を施した。
【0050】
(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の多結晶体試片を1380℃で酸素分圧0.2の空気雰囲気下において焼結した場合には、マトリックス粒子の平均粒径が約30μmであり、異常粒成長が活発に起こった。上記試片を1380℃で酸素分圧0.01以下の雰囲気下において焼結した場合には、マトリックス粒子の平均粒径が約110μmであり、異常粒成長は起こらなかった。焼結雰囲気の酸素分圧が低いほどチタン酸バリウム系多結晶体のマトリックス粒子の粒径が連続して増大した。熱処理温度によって特定の酸素分圧以下では、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径より大きくなり、異常粒成長が起こらなかった。
【0051】
図5は、(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の多結晶体の試片を酸素分圧0.01以下の還元雰囲気下において1380℃で5時間焼結した後、多結晶体の試片上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、再度1380℃の空気雰囲気下において200時間熱処理したときの試片の表面写真である。(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の試片を空気中で焼結し、種単結晶を焼結した試片に接合して熱処理した時は、マトリックス粒子の粒径が小さすぎ(即ち、0.5RC>R)、よって異常粒子の個数密度が高すぎて種単結晶が成長することができなかった。(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2試片に種単結晶を接合し、酸素分圧0.01以下の還元雰囲気下においてのみ熱処理し続けたときは、マトリックス粒子が成長し続けて2RCより大きくなり、単結晶成長の駆動力が小さくなりすぎて、種単結晶は成長しなかった。しかし、図5の実施例では、低い酸素分圧の雰囲気下において多結晶体の粒成長を促進し、二次熱処理条件で多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)が0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように調節した。その後、種単結晶と多結晶体とを接合し、多結晶体におけるマトリックス粒子の成長が抑えられる酸素分圧の高い空気中で単結晶の成長のための熱処理を施することにより、多結晶体における異常粒成長は抑えられ、種単結晶の成長駆動力は高く維持された。その結果、図5に示すように、種単結晶は多結晶体中へと成長し続けた。種単結晶の成長は、熱処理時間に比例し、長時間にわたる熱処理により多結晶体において25×25mm以上の大きさのBa(Ti0.7Zr0.3)O3単結晶が製造された(図5)。
【0052】
図5に示すように、多結晶体における異常粒成長を抑えるためにマトリックス粒子の粒径を増大させるための方法として、マトリックス粒子の平均粒径は熱処理雰囲気によって変わることを用いて、まず、多結晶体に粒成長が促進される熱処理雰囲気下において一次熱処理を施してマトリックス粒子の粒径を増大させた後、種単結晶の成長のための熱処理は、種単結晶が多結晶体中へと成長し続けられる熱処理雰囲気下において施した。その結果、多結晶体における異常粒成長を効率よく抑えつつ数十mmの大きな単結晶を製造することができた。
【実施例3】
【0053】
マトリックス粒子の平均粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径より小さいならば、多結晶体における異常粒成長は、常時発生し得る。そして、異常粒成長が起こると、異常粒子がマトリックス粒子を消費しつつ成長する。異常粒子がすべてのマトリックス粒子を消費し尽くしたとき、異常粒成長が完了する。このような異常粒成長が完了した後、最終的な異常粒子の粒径が十分に大きくなくて異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)より小さいならば、異常粒成長が再度発生し得る。このような場合、先に発生した異常粒成長を一次異常粒成長といい、後に起こった異常粒成長を二次異常粒成長という。このように、異常粒成長は反復的に起こり得、異常粒成長が起こって完了すると、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が急激に増大する。そこで、異常粒成長を反復的に引き起こすことによって、マトリックス粒子の平均粒径を調節することができる。本実施例の実験に供された粉体の製造と熱処理は、実施例1と同様な方法にて行った。
【0054】
(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2粉末成形体をそれぞれ(a)1300℃で1時間と(b)1365℃で50時間、空気中で熱処理したとき、1300℃では異常粒成長が進行し、マトリックス粒子の粒径は、約3μmであった。そして、異常粒子の粒径は約30μmであり、異常粒子の個数密度は、50000個/cm2程度であった。一次異常粒成長が開始する温度は、チタン酸バリウム粉体中のバリウム/チタンの比や添加物の含有量によって変わる。本実施例で使用した(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2粉体の一次異常粒成長の開始温度は約1300℃であった。熱処理時間を増大した時、異常粒子がマトリックス粒子を消費しつつ成長してマトリックス粒子が完全になくなったとき、一次異常粒成長が完了した。その結果、全体として一次異常粒子だけで構成された試片の微細組織が得られた。一次異常粒成長が起こる多結晶体(1300℃)のマトリックス粒子の平均粒径は約3μmであり、一次異常粒成長が完了した後の多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は約35μmであった。即ち、一次異常粒成長が完了した後におけるマトリックス粒子の平均粒径は、12倍程度に急激に大きくなった。1365℃では、一次異常粒成長が完了し、全体として一次異常粒子だけで構成された試片において温度が上昇することにより異常粒成長が再び起こった微細組織、即ち、二次異常粒成長が起こった試片の微細組織が得られた。二次異常粒成長が開始する温度は、チタン酸バリウム粉体中のバリウム/チタンの比や添加物の含有量によって変わる。本実施例で使用したチタン酸バリウム粉体の二次異常粒成長の開始温度は約1365℃であった。その粉体を1365℃で50時間焼結したときは、二次異常粒成長が進行し、マトリックス粒子の粒径は、約90μmであった。そして、異常粒子の粒径は約1500μmであり、異常粒子の個数密度は、2個/cm2程度であった。
【0055】
図6は、(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1370℃で200時間空気中で熱処理した試片において自発的に大きく成長した二次異常粒成長の粒子、即ち、Ba(Ti0.95Zr0.05)O3単結晶を示す写真である。多結晶体において一次異常粒成長を誘導した時、多結晶体のマトリックス粒子の粒径は、約3μmから35μmへと10倍以上に急激に増大した。一次異常粒成長が完了した多結晶体において再度二次異常粒成長が起こったとき、マトリックス粒子の平均粒径は約90μmであり、二次異常粒子のマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや小さい程度であった。従って、一次異常粒成長が完了した多結晶体を再度1370℃で熱処理したときは、二次異常粒子の個数密度は2個/cm2程度であり、二次異常粒子が他の二次異常粒子と衝突することなく成長し続け、1cm以上の大きさの単結晶が得られた。このように、異常粒子の個数密度が2個/cm2程度以下である場合には、外部の種単結晶を要することなく数cm以上の大きさの単結晶を製造することができる。
【0056】
多結晶体において異常粒成長が生成して完了したとき、マトリックス粒子の平均粒径が急激に増大する。そこで、異常粒成長を反復的に引き起こすとマトリックス粒子の粒径が調節できるということを用いて、図6に示すように、多結晶体において異常粒成長を抑えるためにマトリックス粒子の粒径を増大させるための方法として、まず、多結晶体において異常粒成長を誘導して完了させる一次熱処理によりマトリックス粒子の粒径を増大させた後、異常粒成長が完了した多結晶体に種単結晶を接合して種単結晶の成長のための熱処理を施し、多結晶体における異常粒成長を効率よく抑えながら数cmの大きさの大きな単結晶を製造することができた。
【実施例4】
【0057】
本実施例では、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は熱処理温度に比例して増大するということを用いて、単結晶の成長のための二次熱処理の前に単結晶の成長のための熱処理温度より高い温度で多結晶体だけをまず一次熱処理することで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することができた。単結晶の成長のための二次熱処理は、一次焼結温度より低い温度で実行した。二次熱処理温度では、多結晶体における異常粒成長を抑える方法を用いて多結晶体におけるマトリックス粒子の粒径と異常粒子の個数密度を調節した。単結晶成長の熱処理温度でのみ熱処理を施す場合には、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を、異常粒の生成ためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)より大きくすることが困難であった。そのような場合には、単結晶成長のための二次熱処理温度より高い温度でまず多結晶体に一次熱処理を施し、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が単結晶成長のための熱処理温度(即ち、二次熱処理温度)で0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように調節することにより単結晶を成長させることができた。本実験に供された粉体の製造と熱処理は、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0058】
(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の焼結体を136 0℃以下で熱処理した場合には、異常粒成長が活発に起こることで異常粒子の個数密度が高くなり過ぎ、種単結晶を成長させ続けることができなかった。(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1390℃で空気中で長時間焼結したときは、マトリックス粒子が正常に粒成長し続け、マトリックス粒子が成長し続けることによってマトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)より大きくなり、異常粒成長は起こらなかった。(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の多結晶体と種単結晶とを接合して連続して熱処理したときには、マトリックス粒子の粒径が種単結晶の連続成長条件(即ち、0.5RC≦R≦2RC)を超えて2RCより大きくなり、種単結晶を成長させることができなかった。
【0059】
図7は、1390℃で5時間空気中で(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を一次熱処理し、その焼結体上にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の単結晶を載置し、1370℃で200時間空気中で熱処理したときの試片の表面写真図である。(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の成形体に1390℃で一次熱処理を施さなかった場合には、焼結された多結晶体のマトリックス粒子の粒径が種単結晶の連続成長条件より小さく(0.5RC>R)、成長する単結晶の粒径が多結晶体において生成された異常粒子によって制限された。しかし、その成形体に単結晶の成長のための1370℃での熱処理の前に1390℃で5時間熱処理を施し、マトリックス粒子の粒径を異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)以上に増大したときには、異常粒子の個数密度がゼロ(0)個/cm2になった。1390℃で5時間一次焼結した焼結体上にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の単結晶を載置し、1370℃で200時間熱処理を施した試片(図7)では、種単結晶が成長し続け、多結晶体において異常粒子が生成せず、単結晶の成長が制限されずに熱処理時間に比例して単結晶は成長し続けた。
【0060】
図7に示すように、多結晶体において異常粒成長を抑えるためにマトリックス粒子の粒径を増大させるための方法として、マトリックス粒子の平均粒径は熱処理温度が上昇するにつれて増大するということを用いて、まず、多結晶体に高温で一次熱処理を施してマトリックス粒子の粒径が0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるようにマトリックス粒子を大きくさせた後、種単結晶の成長のための熱処理を低温で施し、多結晶体における異常粒成長を効率よく抑えながら種単結晶を成長させることができた。実施例3と4において種単結晶が成長できるマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみた時、0.5RC≦R≦2RCであった。
【実施例5】
【0061】
多結晶体の構成成分の元素とは異なる添加物を多結晶体に添加して熱処理すれば、添加物の種類と量によってマトリックス粒子の粒径が増減する。従って、多結晶体に多結晶体の構成成分の元素とは異なる他の適宜の添加物のいずれか1種または1種以上を添加してマトリックス粒子の粒径が0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように調節することで多結晶体における異常粒成長を制御すれば、異常粒子または種単結晶を多結晶体中へと成長させ続けて単結晶を製造することができる。本実施例では、チタン酸バリウム多結晶体の構成成分の元素とは異なる添加物を多結晶体に添加して熱処理し、マトリックス粒子の粒径を調節することで異常粒成長を制御した。実験に供されたチタン酸バリウム粉体は、バリウム/チタンの比が0.998程度であり、このチタン酸バリウム粉体にZrO2を添加して各種の組成の粉体を作った。ZrO2が添加された粉体は、四角形の型で成形した後に、その粉末成形体に200MPaの静水圧で加圧成形を施した。さらに、その粉末成形体には、空気中で1300℃以上の様々な温度で200時間熱処理を施した。
【0062】
BaTiO3粉体にZrO2粉体を0.1モル%〜1.0モル%の範囲で添加量を変えて添加した後に1380℃で焼結したとき、ZrO2の含有量が増すにつれて焼結体のマトリックス粒子の粒径が連続して減少した。そして、ZrO2が0.5モル%以上添加されたとき、異常粒成長が起こり、ZrO2の含有量が増すにつれて、即ち、マトリックス粒子の粒径が減少するにつれて異常粒子の個数密度は連続して増大した。ZrO2が約0.5モル%添加されたとき、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)に到達し、異常粒成長が始まった。各試片におけるマトリックス粒子の平均粒径と異常粒子の個数密度との関係をみてみると、ZrO2が少量添加された試片では、マトリックス粒子の粒径が最も大きく、異常粒子が観察されなかったが、ZrO2が0.5モル%より多く添加された試片では、異常粒子が観察され、ZrO2の添加加量が増すにつれて異常粒子の個数密度も増大した。本実施例において、ZrO2が添加されたチタン酸バリウム多結晶体における異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)は、約100μmであった。
【0063】
図8は、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理した試片において成長した単結晶を示す写真である。図8の(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の試片は、マトリックス粒子の平均粒径はRC<R≦2RCの範囲に含まれ、多結晶体において異常粒が生成しなかった。そこで、種単結晶が多結晶体中へと成長し続けることで大きな単結晶が製造された。
【0064】
チタン酸バリウム粉体にZrO2粉体を添加して多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して減少させたとき、特定の量のZrO2粉体を添加することによってチタン酸バリウム多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径がRC<R≦2RCの範囲に含まれるように調節することができる(図8)。かかる場合、多結晶体中において異常粒成長は起こらず、チタン酸バリウムの種単結晶が異常粒成長の外核として働いて異常粒成長と同じメカニズムでチタン酸バリウムの種単結晶が多結晶体中へと成長し続け、多結晶体中において大きな単結晶が製造された。製造された単結晶の大きさは、熱処理時間に比例した。本実施例において種単結晶が成長し得るマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみたとき、0.5RC≦R≦2RC程度であった。
【実施例6】
【0065】
圧電及び誘電特性に優れている(68)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−(32)PbTiO3[(68)PMN−(32)PTモル%]系の酸化物を多結晶体にし、この多結晶体の構成成分のいずれか1種または1種以上を多結晶体に過剰添加した後に熱処理することでマトリックス粒子の粒径と異常粒子の個数密度を調節した。まず、実験に供する(68)PMN−(32)PT粉体をコロンバイト前駆物質法で製造した。その製造工程は、次の通りである。炭酸マグネシウム水酸化物(4MgCO3・Mg(OH)2・4H2O)及び酸化ニオブ(Nb2O5)粉体をエタノール中でボールミリング処理し、1100℃で4時間か焼してニオブ酸マグネシウム(MgNb2O6)を合成した。か焼されたニオブ酸マグネシウム(MgNb2O6)は、酸化鉛(PbO)及び二酸化チタン(TiO2)粉体と混合し、再度ボールミリング処理してから850℃で4時間か焼し、最終的に(68)PMN−(32)PT粉体を製造した。粉体の混合時、酸化鉛、酸化ニオブ、炭酸マグネシウム水酸化物および二酸化チタンの比を調節することで各種の組成の粉体を製造した。一軸加圧成形で粉末成形体を製造した。それから、その粉末成形体に200MPaの圧力で冷間静水圧成形を施した。粉末成形体は、二重の白金(Pt)坩堝内で白金板上に載置して焼結し、試片のまわりにおける雰囲気粉体としては、ジルコン酸鉛(PbZrO3[PZ])及び酸化鉛粉体を置くことで焼結中の酸化鉛の揮発を抑えた。
【0066】
(68)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−(32)PbTiO3[68PMN−32PT]組成の粉体に過剰のMgOを添加し、粉末成形体を1200℃で空気中で10時間焼結した。過剰のMgOが添加されていない試片では、異常粒成長が観察されず、マトリックス粒子の粒径も8μm程度と非常に小さかった。過剰のMgOの添加によるマトリックス粒子の粒径の変化を観察するために、68PMN−32PT組成に含まれたMgOの量を基準に0%〜15%の範囲の過剰のMgOを添加した。過剰のMgOの添加量が増すにつれてマトリックス粒子の成長が活発に起こり、マトリックス粒子の粒径が連続して25μmまで増大した。その結果、過剰のMgOが添加されていない試片のマトリックス粒子の粒径に比べて約3倍大きくなった。
【0067】
過剰のPbOが添加された(90)[68PMN−32PT]−(10)PbO組成の多結晶体において、過剰のMgO量の変化によるマトリックス粒子の粒径の変化と異常粒子の個数密度の変化を測定した。0%のMgO(0MgO)が過剰添加された試片と4%のMgO(4MgO)が過剰添加された試片のマトリックス粒子の平均粒径を比較してみたとき、それぞれ約12μmと約40μmであった。過剰に添加されたMgOの量が増すにつれて、マトリックス粒子の粒径が連続して増大した。過剰のPbOが添加された(90[68PMN−32PT]−(10)PbO組成の試片において、過剰のMgOが2%未満の範囲で添加されたとき異常粒成長が著しく観察されたが、MgOが2%以上の過剰量添加されたとき異常粒成長は起こらなかった。即ち、過剰のMgOが2%未満の範囲で添加されると、マトリックス粒子の粒径が異常粒子の生成を誘導し得るマトリックス粒子の臨界平均粒径(図1中のRC)より小さくなり、多結晶体において異常粒成長が活発に起こった。しかし、一定量以上の過剰のMgOが添加されると、マトリックス粒子の粒径が異常粒の生成を誘導し得るマトリックス粒子の臨界平均粒径(図1中のRC)を超えて増大するため、多結晶体において異常粒成長は起こらなかった。本実験において、異常粒子の生成を誘導し得るマトリックス粒子の臨界平均粒径は約28μmであった。マトリックス粒子の平均粒径が14μm以上56μm 以下の範囲であるとき(0.5RC≦R≦2RC)に単結晶を製造することができた。
【0068】
図9は、(90)[68PMN−32PT]−(10)PbO組成の粉体に2%のMgO(2MgO)が過剰添加された組成の粉末成形体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。過剰のMgOが添加されなかった試片においては、チタン酸バリウムの種単結晶からPMN−PT単結晶が成長したが、多結晶体において生成された異常粒子と衝突することで数mm程度だけ成長し、その成長が止まった。しかし、2%の過剰のMgOが添加された図9に示す試片においては、多結晶体において異常粒子が生成されず、チタン酸バリウムの種単結晶から(68)PMN−(32)PTの単結晶が成長し続け、成長したPMN−PT単結晶の大きさは熱処理時間に比例した。
【0069】
PMN−PT粉体に過剰のPbOを添加して異常粒成長を誘導し、過剰のMgOを添加して多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して増大させたとき、過剰のMgOが特定の量以上添加された場合にPMN−PT多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きく制御することができた。かかる場合、種単結晶はPMN−PT多結晶体中へと成長し続け、多結晶体中において大きなPMN−PTの単結晶を製造することができた。そして、種単結晶が成長し得るマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみた時、0.5RC≦R≦2RCであった。
【実施例7】
【0070】
本実施例では、現在、圧電材料として最も広く使用されているPb(ZrXTi1-X)O3(PZT)の構成成分の比を変えて多結晶体のマトリックス粒子の粒径を調節する方法を用いて、多結晶体における異常粒成長を制御し、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶が多結晶体中へと成長し続けるように熱処理することでPZTの単結晶を製造した。PZT粉体は、PbO、ZrO2、及びTiO2粉体をエタノール中でボールミリング処理を行い、800℃で4時間か焼して合成した。また、ZrO2及びTiO2の比を調節することでPb(ZrXTi1-X)O3粉体においてx値が異なる組成のものを製造した。一軸加圧成形で粉末成形体を作り、その粉末成形体には200MPaの圧力で冷間静水圧成形を施した。粉末成形体は、二重の白金の坩堝内で白金板上に載置して焼結し、試片のまわりにおける雰囲気粉体として、ジルコン酸鉛(PbZrO3[PZ])及びPbO粉体を置くことで焼結中のPbOの揮発を抑えた。
【0071】
Zr/Tiの比が異なる各種のPb(Zr、Ti)O3焼結体を1200℃で1時間焼結したとき、Zr/Tiの比が増すにつれて多結晶体のマトリックス粒子の粒径が増加する傾向をみせた。Zr/Tiの比がそれぞれ0.72、1.08および1.21である試片のマトリックス粒子の粒径は、それぞれ2μm、6μmおよび10μmであった。Zr/Tiの比が増すにつれてマトリックス粒子の平均粒径が連続して増大した。また、Zr/Tiの比が異なる他の各種の組成のPb(Zr、Ti)O3粉体に過剰のPbOを添加し、PbOが添加された各種の組成の粉末成形体を製造して1200℃で1時間焼結した後、その微細組織を観察した。
【0072】
Pb(ZrXTi1-X)O3(PZT)粉体のZr/Tiの比を4〜25の範囲で変えながら製造した粉体に、10モル%の過剰PbOをそれぞれ添加した後に焼結した時、Zr/Tiの比が増すにつれて焼結体のマトリックス粒子の粒径が連続して増大した。Zr/Tiの比が0.72である試片においては、粒径3μmのマトリックス粒子から異常粒成長が起こってマトリックス粒子がすべて消費され、異常粒子だけが残留した組織を示した。Zr/Ti=1.08とZr/Ti=1.21である試片におけるマトリックス粒子の平均粒径は、それぞれ12μmと15μmであった。Zr/Tiの比が約0.85以下になると、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)に到達し、その臨界粒径は、約10μmであり、異常粒成長が始まった。このように過剰のPbOが多結晶試片に添加され、多結晶体試片に液相が供給されたとき、マトリックス粒子の粒径が十分に大きい場合(例えば、Zr/Ti=1.08とZr/Ti=1.21の試片)には、異常粒成長が起こらなかったが、マトリックス粒子の粒径が十分に小さい場合(例えば、Zr/Ti=0.72の試片)には、異常粒成長が起こった。
【0073】
図10は、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の単結晶を(90)[Pb(Zr0.46Ti0.54)O3]−(10)PbO組成の粉末成形体中に埋めてから1200℃で100時間熱処理したとき、試片において成長したPZT単結晶を示す試片の表面写真である。Zr/Tiの比を0.85に調節した時、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)である約10程度であり、PZT多結晶体において少数の異常粒子だけが生成され、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶がPZT多結晶体中へと成長し続け、このときの単結晶の成長速度は、約100μm/hであった。
【0074】
PZT粉体に過剰のPbOを添加しZr/Tiの比を調節することで異常粒成長を誘導し、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して変化させたとき、特定のZr/Ti比のPZT多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径を、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きめに制御することができた。多結晶体のマトリックス粒子の構成成分の比を変えることでマトリックス粒子の粒径を調節する方法を用いて、PZT多結晶体における異常粒成長を制御した。上記条件下で、PZT多結晶体中では異常粒成長が抑えられたが、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶とPZT多結晶体との接合部ではBa(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶が異常粒成長と同じメカニズムでPZT多結晶体中へと成長し続けるように熱処理することでPZT多結晶体中において大きなPZT単結晶を製造した。本実施例において、種単結晶が成長し得るマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径と比較してみたとき、0.5RC≦R≦2RC程度であった。
【実施例8】
【0075】
本実施例においては、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2 Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]と(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbTiO3[(1−x−y)PIN−xPMN−yPT]等の単結晶と、組成が複雑で溶融及び単結晶成長メカニズムの制御が難くて一般の液相単結晶方法では製造が困難な材料の単結晶を固相単結晶成長法で製造した。特に、(1−x−y)PMN−xPT−yPZ、(1−x−y)PYbN−xPT−yPZおよび(1−x−y)PIN−xPMN−yPT等の単結晶は、既存のPMN−PT単結晶に比べてキュリー温度が高くて高温での製造及び使用が可能である。そこで、常温及び高温での圧電単結晶の商業化のためにその開発が必要とされている。まず、実験に供される(1−x−y)PMN−xPT−yPZ、(1−x−y)PYbN−xPT−yPZおよび(1−x−y)PIN−xPMN−yPT粉体は、実施例6と同様にコロンバイト前駆物質法で製造した。粉体の混合時に酸化鉛、酸化二オブ、炭酸マグネシウム水酸化物、二酸化チタンおよび各原料酸化物の比を調節して各種の組成の粉体を製造した。一軸加圧成形で粉末成形体を製造し、その粉末成形体に200MPaの圧力で冷間静水圧成形を施した。粉末成形体は、二重の白金の坩堝内で白金板上に載置して焼結し、試片のまわりにおける雰囲気粉体としては、ジルコン酸鉛(PbZrO3[PZ])及び酸化鉛粉体を置くことで焼結中における酸化鉛の揮発を抑えた。
【0076】
(1−x−y)PMN−xPT−yPZ、(1−x−y)PYbN−xPT−yPZおよび(1−x−y)PIN−xPMN−yPT粉体に過剰のPbOを30モル%まで添加して粉末成形体を製造し、粉末成形体を焼結した。焼結した後に微細組織を観察すると、過剰のPbOが添加された試片では異常粒成長が起こり、過剰のPbOの量が増すにつれてマトリックス粒子の粒径が増大し、異常粒子の個数密度は減少した。従って、各組成の粉体に対して特定量を超える過剰のPbOを添加する場合には、マトリックス粒子の平均粒径を異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きめに制御することができ、Ba(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を成長させ続けることができた。
【0077】
図11は、(50)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)PbZrO3](50PMN−36PT−14PZ)(モル%)組成の粉体に9モル%の過剰のPbOを添加することによって製造された粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。熱処理の間、粉末成形体中のBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶から50PMN−36PT−14PZの単結晶が成長し続けて焼結体の表面まで成長してきた。図11に示すように、粉末成形体を1200℃で100時間熱処理したとき、2cm以上の大きさの50PMN−36PT−14PZの単結晶を製造することができた。
【0078】
(50)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)PbZrO3](モル%)組成の粉体に6モル%の過剰のPbOが添加された粉末成形体を1200℃で熱処理したときは、マトリックス粒子の粒径が小さすぎて異常粒子の個数密度が高かった。この試片を1250℃で5時間一次焼結することによって、マトリックス粒子の粒径を増大させたときは、多結晶体において異常粒成長は起こらなかった。しかし、Ba(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶は成長し続けて、2cm以上の大きさの50PMN−36PT−14PZ単結晶を製造することができた。
【0079】
図12は、(50)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)PbZrO3](50PYbN−36PT−14PZT)(モル%)組成の粉体に8%の過剰のPbOを添加することによって製造された粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を埋めて1150℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。熱処理の間、粉末成形体中のBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶から50PYbN−36PT−14PZの単結晶が成長し続けて焼結体の表面まで成長してきた。図12に示すように、粉末成形体を1200℃で100時間熱処理したとき、2cm以上の大きさの50PYbN−36PT−14PZの単結晶を製造することができた。
【0080】
図13は、(20)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−(48)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(32)PbTiO3](20PIN−48PMN−32PT)(モル%)組成の粉体に9モル%の過剰のPbOを添加することによって製造された粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。熱処理の間、粉末成形体中のBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶から20PIN−48PMN−32PTの単結晶が成長し続けて焼結体の表面まで成長してきた。図13に示すように、粉末成形体を1200℃で100時間熱処理したとき、2cm以上の大きさの20PIN−48PMN−32PTの単結晶を製造することができた。
【0081】
本実施例では、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]および(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbTiO3[(1−x−y)PIN−xPMN−yPT](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)等と固溶体組成のPb系ぺロブスカイト酸化物固溶体の単結晶等を始めとする各種の組成の単結晶を固相単結晶の成長方法で製造することができるようにし、一般に製造することが困難である高いキュリー温度を有する圧電単結晶を経済的な方法で大量生産することができる単結晶の成長方法を提供する。
【実施例9】
【0082】
本実施例では、本発明の方法により単結晶中において固溶物質の分布が不均一な固溶体組成の単結晶を製造した。実施例1においては、BaCO3、TiO2およびZrO2の粉体を均一に分散して混合し、ジルコニア(ZrO2)が均一に分布するチタン酸バリウム固溶体の多結晶体と単結晶を製造した。本実施例では、単結晶中において固溶物質が不均一に分布する単結晶を製造するために、まず、それぞれの固溶物質を含むチタン酸バリウム粉体を作り、成形型内で順次に積層してそれぞれの固溶物質が不均一に分布する固溶体組成の多結晶体を製造した。((100−x)BaTiO3−(x)MO(モル%))の固溶体組成のチタン酸バリウムの単結晶を製造するために使用された添加物として、チタン酸バリウムと固溶体をなすものとして知られているBi2O3、CaO、CdO、CeO2、CoO、Cr2O3、Fe2O3、HfO2、K2O、La2O3、MgO、MnO2、Na2O、Nb2O5、Nd2O3、NiO、PbO、Sc2O3、SmO2、SnO2、SrO、Ta2O5、UO2、Y2O3、ZnOおよびZrO2からなる群より選ばれた1種または1種以上を多結晶体に添加した。チタン酸バリウムと添加物(MO)の粉体とを混合してなる(100−x)BaTiO3−(x)MO(モル%)組成の粉体2.5gを用いて、直径が15mmで高さが7mmの大きさの円板状粉末成形体を製造し、その円板状粉末成形体を200MPaの静水圧で加圧した。実施例2と同様に、製造された固溶体粉末成形体を酸素分圧0.01以下の雰囲気下において熱処理して多結晶体のマトリックス粒子の粒径を増大させた後、酸素分圧0.2の雰囲気下において1360℃で100時間熱処理することで固溶体組成の単結晶を製造した。
【0083】
図14は、(99.8)BaTiO3−(0.2)MnO2、(99.8)BaTiO3−(0.2)NbO2.5および(99.8)BaTiO3−(0.2)CeO2(モル%)の粉体をそれぞれ順次に積層してなる成形体を、酸素分圧0.01の雰囲気下において1370℃で5時間一次焼結した後、該焼結体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、酸素分圧0.2の雰囲気下において1370℃で100時間熱処理したときの試片の断面写真である。実施例2と同様にチタン酸バリウム固溶体組成の多結晶体においても酸素分圧(PO2)0.01の雰囲気下において焼結する場合には、マトリックス粒子の成長が促進された。その多結晶体を再度酸素分圧(PO2)0.2の雰囲気下において熱処理しても異常粒成長は起こらなかった。酸素分圧0.01の雰囲気下において焼結された組成勾配を有する多結晶体((99.9)BaTiO3−(0.1)MnO2、(99.9)BaTiO3−(0.1)NbO2.5および(99.9)BaTiO3−(0.1)CeO2(モル%)の粉体を順次に積層した焼結体)上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、酸素分圧0.2の雰囲気下において1370℃で100時間熱処理した場合には、種単結晶が先にMnO2を含む部分へと成長し始め、NbO2.5とCeO2を含む部分へと成長し続けた。このようにして、純粋なチタン酸バリウム−Mn固溶体−Nb固溶体−Ce固溶体の4部分からなる連続した組成勾配を有するチタン酸バリウム固溶体の単結晶を製造した。雰囲気の調節により固溶体組成の多結晶体のマトリックス粒子の粒径を適宜制御したとき、多結晶体中へと種単結晶を成長させ続けることができ、この結果、数十mmの大きさの固溶体組成の単結晶と組成勾配を有する固溶体の単結晶を製造することができた。一般の液相単結晶の成長法では、その中に組成勾配を有する単結晶の製造は困難であって、組成勾配を有する単結晶を製造することができるということは、本発明の明らかな長所になる。
【実施例10】
【0084】
本実施例では、多結晶中において種単結晶から成長する単結晶は、種単結晶と同一の結晶方向を有し、また種単結晶が欠陥をもっている場合には、成長する単結晶も同じ欠陥をもつようになるということを用いて、所望の特定の結晶方向にそって種単結晶の結晶面を研磨してその種単結晶を多結晶体と接合するか、または特定の欠陥(例えば、単一双晶、二重双晶および粒界等)を有する種単結晶を多結晶体に接合し、所望の特定の結晶方向を有する単結晶と特定の欠陥を含む単結晶を容易に製造可能であることを述べる。本実施例では、実施例5と同様に過剰のZrO2が添加されたチタン酸バリウム多結晶体((99
.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成)を使用した。
【0085】
図15a及び図15bは、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上にそれぞれ、(a)(111)二重双晶を含むチタン酸バリウム単結晶と、(b)棒状の二つのチタン酸バリウム単結晶(一つの棒状単結晶を二つに分けた後に約10°の角度だけ回転させたもの)を載置し、1380℃で200時間熱処理したときの試片の外形写真である。図15に示すように、(a)(111)二重双晶を含む単結晶と、(b)約10°だけ回転させた棒状単結晶を使用する場合には、種単結晶から成長した単結晶中にも種単結晶が含む欠陥と同じ欠陥を含んでいた。本実施例から、(111)二重双晶と低傾角粒界のような欠陥を含む単結晶を製造しようとする場合には、所望の欠陥を含む種単結晶を製造することで容易に所望の欠陥を含む単結晶を製造できることが分かった。特に、各種の特定の結晶方位を有する二重単結晶は、本実施例のように少なくとも二つの単結晶を同時に使用し、同じ欠陥を含む種単結晶を使用すれば容易に製造することができる。
本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、当業者であれば、修正および変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶の成長方法に関し、より詳しくは、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を異常粒または不連続粒の生成が起こる臨界粒径の付近になるように調節することにより異常粒子の個数密度を減少させることで単結晶を成長させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、単結晶は溶融工程により製造されるため、溶融工程を用いる従来の単結晶成長法は液相単結晶成長法(LSCG)と呼ばれる。これに対し、従来の液相単結晶成長法とは異なって、溶融工程を用いることなく多結晶体の熱処理中に起こるマトリックス粒子の粒成長を用いて単結晶を製造する方法は固相単結晶成長法(SSCG)と呼ばれる。多結晶体の熱処理中には常に粒子の成長が起こるが、ある場合には大半の正常粒子またはマトリックス粒子に比べて異常粒子だけが速く粒成長する異常粒成長または不連続粒成長現象が発生する。このような異常粒子の生成と成長を調節し、極めて限られた個数の異常粒子だけを多結晶体において成長させ続けると、複雑で制御し難い溶融工程を用いることなく単結晶を製造することができる。固相単結晶成長法の可能性は、既に1950年代から提示されてきており、一部の金属系材料では単結晶の製造に成功したが、酸化物材料では、粒成長を用いて単結晶を製造する際、多結晶体において一つの単結晶だけを連続的に成長させ続けること、すなわち、異常粒子の個数密度の制御が難しいため、実際に実用可能な大きさの酸化物単結晶を製造することは困難であった。
【0003】
フェライト、チタン酸バリウム(BaTiO3)及び酸化アルミニウム(Al2O3)、 並びにPMN−PT等に対して多結晶体を熱処理し、固相単結晶成長法にて単結晶を得ようとする試みが多く行われてきた。詳述すれば、これは、粉体に種単結晶を含浸させて焼結するか、または多結晶体と種単結晶との接合界面を形成させた後に、これを熱処理することで種単結晶を成長させる方法である。しかし、この方法では、融点の付近で行われる既存の液相単結晶成長法に比べて単結晶成長が遅く、一つの単結晶だけを成長させ続けることが難しいことから、実際の用途に必要な数十mm以上の大きさの単結晶を製造することが困難であった。多結晶体において起こる異常粒成長現象を用いて単結晶を製造する場合においても、異常粒子の個数密度の制御ができず多結晶体において一つの単結晶だけを生成させ成長させ続けることができないので、実際の用途に必要な数十mm以上の大きさの単結晶を製造することができなかった。異常粒成長現象が起こる多結晶体において種単結晶を用いて単結晶を製造する場合においても、異常粒子の個数密度が制御できず、多結晶体において生成された多数の異常粒子が種単結晶の成長を妨害するので、種単結晶を成長させ続けるということが困難であった。このように、従来の固相単結晶成長法では、異常粒子の個数密度が制御できず、単結晶の製造の再現性が低く、実際の用途に必要な大きさの大きい単結晶を製造することが困難であるという短所のため、従来の液相単結晶成長法に比べて長所が少なかった。
【0004】
従来の単結晶の成長方法は、高価な設備を必要とし、且つ生産工程が極めて複雑であるために大きな単結晶の大量生産が困難であり、また、高価であるため、その用途が制限されている。特に、揮発性の強い成分を含む材料の場合には、単結晶の製造時における揮発性の強い成分の揮発による問題が深刻である。しかも、従来の方法による単結晶の成長では、溶融工程を必ず経なければならないため、溶融工程中における揮発性の強い成分の揮発により全体の組成を変化させ、単結晶相を不安定にする。それゆえ、所望の大きさと特性を有する単結晶の製造が難しい。さらに、単結晶の製造に高価な設備を必要とし、生産工程に問題があるため、単結晶の大量生産が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するためのものである。本発明は、従来の単結晶成長法である、溶融工程を必要とする液相単結晶成長法の問題を解消し、溶融工程を用いることなく、特別の装置を要することなく、一般の単純な熱処理工程により、多結晶体において起こる異常粒成長を効率よく制御することで、純粋なチタン酸バリウム(BaTiO3)単結晶、固溶体組成のチタン酸バリウム((BaXM1-X)(TiyN1-y)O3)(0≦x≦1;0≦y≦1)単結晶、PbTiO3[PT]、Pb(ZrXTi1-X)O3[PZT]、(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3[(1−x)PMN−xPT]、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PIN−xPT−yPZ]、(1−x−y)PYbN−xPMN−yPTと(1−x−y)PIN−xPMN−yPT(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)と固溶体組成のPb系ペロブスカイトのようなPbペロブスカイトを含む各種の組成の単結晶を固相単結晶の成長方法(SSCG)で製造できるようにし、単結晶の製造コストを下げ、高い再現性と経済的な方法で単結晶が大量生産できる単結晶の成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような目的を達成するために、本発明による固相単結晶の製造方法は、熱処理により異常粒成長現象が発生する材料の単結晶の成長方法において、異常粒成長が起こる材料において多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することで異常粒子の個数密度(単位面積当たりの異常粒子の個数)を減少させる段階(a)及び前記(a)段階により異常粒子の個数密度が減少された多結晶体を熱処理することで異常粒子を成長させる段階(b)とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明による固相単結晶の製造方法は、熱処理により異常粒成長現象が発生する材料の単結晶の成長方法において、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することで異常粒子の個数密度(単位面積当たりの異常粒子の個数)を減少させる条件下で多結晶体を熱処理することを特徴とする。
【0008】
前記本発明による固相単結晶の成長方法は、異常粒子の個数密度が減少された状態で発生した少数の異常粒子だけを連続的に成長させ続けることで単結晶を得ることを特徴とする。
【0009】
前記本発明による固相単結晶の成長方法において、前記多結晶体の熱処理の前に多結晶体に種単結晶を接合し後、接合部では異常粒成長を誘導し、多結晶体中では異常粒成長を抑える条件下で種単結晶と多結晶体を熱処理することで種単結晶を多結晶体中へと成長させ続けることを特徴とする。
【0010】
前記本発明による固相単結晶の成長方法において、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒子の生成が起こる臨界粒径RC(異常粒子の個数密度がゼロに なるマトリックス粒子の平均粒径)の0.5倍以上2倍以下の範囲の粒径(0.5RC≦R≦2RC)に調節することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による固相単結晶の成長方法において、少数の異常粒子だけを生成させ、生成された少数の異常粒子だけを成長させようとするとき、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒の生成が起こる臨界粒径RC(異常粒の個数密度がゼロ になるマトリックス粒子の平均粒径)の0.5倍以上1倍以下の範囲の粒径(0.5RC≦R≦RC)に調節することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明による固相単結晶の成長方法において、前記異常粒成長は、二次異常粒成長であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上で説明したように、本発明による単結晶の成長方法では、特別な装置や熟練した技
術を必要とすることなく、一般の熱処理工程により純粋なチタン酸バリウム単結晶、固溶体組成のチタン酸バリウム単結晶、PZT単結晶、固溶体組成のPZT単結晶、PMN−PT単結晶および固溶体組成のPMN−PT単結晶等のような種々の単結晶を製造することができるため、低コストで数cm以上の大きさの実用的価値のある充分に大きい単結晶を大量生産することができるという長所がある。また、本発明による単結晶の成長方法では、単結晶の大きさを限りなく成長させることができ、単結晶製造の再現性が高く、その中に組成勾配を有する単結晶を製造することができる。本発明の方法は、また、単結晶中の気孔率、気孔の大きさ及び気孔の形状を調節することができ、且つ種単結晶と接する多結晶体を所望の形状にして熱処理すると、複雑な形状の単結晶を複雑な単結晶加工工程を要することなく製造することができる。さらに、本発明の方法は、製造された単結晶を再度繰返し種単結晶として用いることができるため、種々の種単結晶を安価に製造することができるという点で経済であり、チタン酸バリウム (BaTiO3) 及びPb系ペロブスカイト型構造の酸化物のみならず、異常粒成長が起こる全ての材料に適用することができる 。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】図1aは、本発明の方法において異常粒成長が起こる多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径(R)と異常粒子の個数密度(ND)(単位面積当たりの異常粒子の個数)の相関関係、および、マトリックス粒子の平均粒径(R)と単結晶の成長速度との相関関係を示す図である。
【図1b】図1bは、種単結晶の連続成長条件(0.5RC≦R≦2RC)を示す図である。(Rはマトリックス粒子の平均粒径、RCは異常粒子の生成を開始するためのマトリックス粒子の臨界粒径)である。
【図2a】図2aは、本発明の方法において多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径の変化による異常粒子の個数密度の変化と異常粒子の成長度合いを示す模式図(異常粒子の連続成長条件は、0.5RC≦R≦RCである。
【図2b】図2bは、本発明の方法において多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径の変化による異常粒子の個数密度の変化と種単結晶の成長度合いを示す模式図(種単結晶の連続成長条件は、0.5RC≦R≦2RC)である。
【図3】図3は、1380℃で15時間熱処理したBa(Ti0.7Zr0.3)O3多結晶体[(100−x)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−xTiO2;0≦x≦1]において、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)と多結晶体中に生成される異常粒子の個数密度(ND)の相関関係、および、マトリックス粒子の平均粒径(R)と種単結晶の多結晶体中への成長速度との相関関係を示す図である。
【図4】図4は、(99.6)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.4)TiO2(モル%)組成の多結晶体の試片上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理したとき、試片において成長した単結晶の写真である。
【図5】図5は、(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の多結晶体の試片を酸素分圧0.01以下の減圧雰囲気下において1380℃で5時間焼結した後、多結晶体の試片上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、再度1380℃で空気雰囲気下において200時間熱処理したときの試片の微細組織の写真図である 。
【図6】図6は、(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1370℃で200時間空気中で熱処理したとき、試片において成長したBa(Ti0.95Zr0.05)O3単結晶を示す写真である。
【図7】図7は、(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1390℃で5時間空気中で一次焼結した後、該焼結体上にBa(Ti0.95Zr0.05)O3単結晶を載置し、1370℃で200時間空気中で熱処理したときの試片の外形写真である。
【図8】図8は、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理したとき、試片において成長した単結晶を示す写真である。
【図9】図9は、(90)[(68)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(32)[PbTiO3]]−(10)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にチタン酸バリウムの種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。
【図10】図10は、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3単結晶を(90)[Pb(Zr0.46Ti0.54)O3]−(10)PbO組成の粉末成形体中に埋めて1200℃で100時間熱処理したとき、試片において成長したPZT単結晶を示す試片の表面写真である。
【図11】図11は、(91)[(50)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)[PbZrO3]]−(9)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。
【図12】図12は、(92)[(50)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)[PbZrO3]]−(8)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3種単結晶を埋めて1150℃で100時間熱処理し たときの試片の表面写真である。
【図13】図13は、(91)[(20)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−(48)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(32)[PbTiO3]]−(9)PbO(モル%)組成の粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。
【図14】図14は、(99.8)BaTiO3−(0.2)MnO2、(99.8)BaTiO3−(0.2)NbO2.5および(99.8)BaTiO3−(0.2)CeO2(モル%)の粉体をそれぞれ順次に積層してなる粉末成形体を、酸素分圧0.01の雰囲気下において1370℃で5時間一次焼結した後、該焼結体上にチタン酸バリウム種単結晶を載置し、酸素分圧0.2の雰囲気下において1370℃で100時間熱処理したときの試片の断面写真である。
【図15a】図15aは、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上に、(111)二重双晶(Double Twin)を含むチタン酸バリウム単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理したときの試片の外形写真である。
【図15b】図15bは、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上に、棒状の二つのチタン酸バリウム単結晶(一つの棒状単結晶を二つに分けた後に約10°の角度だけ回転させたもの)を載置し、1380℃で200時間熱処理したときの試片の外形写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は添付図面を参照する、以下の詳細な説明から明らかである。以下、本発明による固相単結晶の成長方法について、添付図面を参照しながら、より詳しく説明する。
【0016】
本発明は、熱処理により多結晶体において異常粒成長現象が発生する材料の単結晶の成長方法において、異常粒子の個数密度ND(単位面積当たりの異常粒子の個数)は、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)に反比例し、特に、異常粒成長のためのマトリックス粒子の臨界平均粒径以上では、異常粒子の個数密度がゼロになること、即ち、異常粒成長が完全に抑えられるということを用いて、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)を、異常粒子が生成されるマトリックス粒子の臨界粒径(RC)を前後にして特定の範囲(0.5RC≦R≦2RC)内に含まれるように調節することを含む、熱処理によって異常粒成長を示す材料の単結晶を成長させるための方法に関する。異常粒子の個数密度を制御する条件下で熱処理するか、または前記のように異常粒子の個数密度が制御された多結晶体を熱処理することにより単結晶を得ることができる。このとき、前記のように異常粒子の個数密度が制御された状態で生成された少数の異常粒子だけを成長させ続けることによって、単結晶を得ることができる。また、異常粒子の生成が完全に抑えられた多結晶体に種単結晶を接合するか或いは前記異常粒子の個数密度を制御する条件下で多結晶体と種単結晶とを接合して熱処理することにより、種単結晶が異常粒成長と同じ成長メカニズムにて多結晶体中へと連続的に成長し続ける。前記熱処理は、多結晶体と種単結晶との接合部では異常粒成長を誘導し、多結晶体中では異常粒成長を抑える条件下で行われる。このとき、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が0.5RCより小さいと異常粒子の個数密度が高くなりすぎ、これは異常粒子と単結晶との衝突につながって大きな単結晶への成長を妨げる。マトリックス粒子の平均粒径が2RCより大きいと単結晶の成長速度が遅くなりすぎ、大きな単結晶の製造が困難である。
【0017】
多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は、様々な方法にて調節することができる。まず、多結晶体のマトリックス粒子の特定の構成成分のいずれか1種または1種以上を、原組成より過剰に添加し、または少なくすることによりマトリックス粒子の粒径を調節することができる。例えば、Ba(Ti、Zr)O3にTiO2粉体を過剰に添加することによりマトリックス粒子の粒径を減少させることができる。また、多結晶体のマトリックス粒子の構成成分の比を変えたり、多結晶体のマトリックス粒子の構成成分とは異なる1種または2種以上の他の添加物を多結晶体に添加することによりマトリックス粒子の粒径を所望のとおりに調節することができる。それだけでなく、異常粒子を成長させるための熱処理温度より高い温度で多結晶体に予め熱処理を施したり、異常粒子の成長のための焼結雰囲気とは異なる焼結雰囲気を用いて多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することもできる。そして、多結晶体の密度を調節したり、加圧焼結中の圧力の調節により平均粒径を調節することもできる。また、多結晶体において異常粒成長を反復的に引き起こすことで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を増大させる方法もある。
【0018】
結晶体の異常粒成長には、一次異常粒成長と二次異常粒成長がある。同じ材料中における一次異常粒成長は、二次異常粒成長に先行し、一次異常粒成長の開始温度は、二次異常粒成長の開始温度より低い。一次異常粒成長により均一な粒径の分布が壊れて多結晶体において異常粒子がある程度成長すると、異常粒子が元のマトリックス粒子を全て消費し、再び均一な粒径の分布に到達する。このようにして到達した均一な粒径分布下での粒径は、一次異常粒成長前のマトリックス粒子の粒径より著しく大きくなっている。このようにして一次異常粒成長が完了した多結晶体を熱処理すると、二次異常粒成長が起こり得る。前記のように、二次異常粒成長が起こるときのマトリックス粒子の粒径は著しく大きくなっている。そこで、二次異常粒成長を用いる場合、一次異常粒成長を用いる場合に比べて遥かに細かな調節が可能になる。従って、本発明において一次異常粒成長を用いるよりは二次異常粒成長を用いる方が好ましい。
【0019】
多結晶体に種単結晶を接合して種単結晶を多結晶体中へと成長させるようにするためには、多結晶体である粉末成形体または焼結体上に種単結晶を載置するか、または粉末中に種単結晶を埋めて成形するか、或いは焼結体と種単結晶とを接合した後にその接合体を粉末に埋めて成形することができる。一方、種単結晶として多結晶体と同じ結晶構造を有する単結晶を使用することもできる。
【0020】
種単結晶の表面に多結晶体薄膜を成長させ、薄膜の成長中または成長後に多結晶体薄膜においてマトリックス粒子の平均粒径を調節すれば、熱処理中に種単結晶が多結晶体薄膜へと成長し続ける。そこで、種単結晶上に新規の薄膜単結晶を製造することができる。種単結晶上の多結晶体薄膜が緻密であれば、種単結晶の密度によらず完全に緻密な単結晶薄膜を製造することができる。多結晶体薄膜の組成が種単結晶の組成と異なると、種単結晶とは組成が異なる新規の単結晶薄膜を製造することができる。
【0021】
一方、所望の結晶方向を有する単結晶を製造することが必要とされるとき、多結晶体と種単結晶とを接合する前に種単結晶の結晶方向を先に決め、種単結晶の特定の結晶面を決めた結晶方向にそって研磨した後に多結晶体と接合することにより、種単結晶から多結晶体中へと成長する単結晶の結晶方向を変えることができる。また、特定の欠陥を含む単結晶を製造する必要があるときは、種単結晶として単一双晶、二重双晶および低傾角粒界のような欠陥を含むものを使用することにより、種単結晶と同じ欠陥を含む単結晶を製造することもできる。
【0022】
多結晶体と種単結晶との接合部だけにおける異常粒成長を誘導し、多結晶体中における異常粒成長を抑える目的のために、種単結晶と前記多結晶体との接合部に異常粒成長を促進する添加物を局部的に添加する条件下で熱処理を施すことができる。ここで、異常粒成長を促進する添加物は、異常粒成長の開始温度を下げ、多結晶体において液相生成温度を下げる添加物群より選ばれたいずれか1種または1種以上であることが好ましい。
【0023】
一方、多結晶体として、粉体を所望の形状または複雑な形状に成形または加工したものを使用することにより、単結晶加工工程を経ることなく所望の複雑な形状を有する単結晶を製造することができる。また、多結晶体に添加物を添加することによって、または液相量、焼結温度、焼結雰囲気(酸素分圧と真空度等)、及び焼結圧力等を変えることによって製造した、気孔率と気孔の大きさ及び気孔形状が異なる多結晶体を種単結晶と接合して熱処理することにより、多結晶体において成長する単結晶中の気孔率と気孔の大きさ及び気孔形状を制御し、気孔を含まない完全に緻密化した単結晶および様々な気孔率を有する単結晶を製造することができる。また、気孔を含む多結晶体の上に種単結晶を載置して熱処理して単結晶を成長させることにより、単結晶の表面に完全に緻密化した層を形成し、単結晶中は気孔を含み表面は気孔のない構造を有する単結晶を製造することができる。また、多結晶体として、多結晶体の結晶構造と固溶体を形成する添加物群より選ばれたいずれか1種または1種以上を添加してなる固溶体を使用することもできる。
【0024】
また、組成勾配を有する単結晶を得るために、多結晶体の組成の結晶構造に溶解する溶質元素群より選ばれたいずれか1種または1種以上を添加した多結晶体を用いて、それぞれ組成が不連続的にまたは連続的に変わる組成勾配を有する単結晶を製造することができる。
【0025】
多結晶体の具体的な例としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)、または固溶体組成のチタン酸バリウム((BaXM1-X)(TiyN1-y)O3)(0≦x≦1;0≦y≦1)、Pb(ZrXTi1-X)O3 (0≦x≦1)[PZT]、または固溶体組成のPZT((PbX、M1-x)(ZraTibNC)O3(0≦x≦1;0≦a、b、c≦1;a+b+c=1))、そして、他のペロブスカイト組成(PbTiO3[PT]、(1−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3[(1−x)PMN−xPT]、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PIN−xPT−yPZ]、(1−x−y)PYbN−xPMN−yPTと(1−x−y)PIN−xPMN−yPT(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1))とその固溶体組成のペロブスカイト等が挙げられる。
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明による異常粒子の核生成の制御を用いた単結晶の製造方法を詳細に説明する。
【0027】
本発明による異常粒子の個数密度の制御による単結晶の成長方法においては、異常粒 の個数密度は、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)に反比例し、特に、臨界粒径以上では、異常粒子の個数密度がゼロになる。即ち、異常粒成長が完全に抑えられるということを用いて、本発明による異常粒子の個数密度を制御することによる単結晶の成長方法は、(1) 異常粒成長が起こる多結晶体材料におけるマトリックス粒子の粒径を調節することにより、異常粒子の個数密度を最小に抑えることで全体の多結晶体において1個の異常粒子だけを生成することと、(2) 多結晶体の結晶学的な構造が同一の結晶構造を有する種単結晶を多結晶体に接合し、種単結晶と多結晶体を熱処理することを含む。上記(1)によって生成した1個の異常粒子だけが成長を続けることができる。さらに、(2)の場合には、種単結晶が異常粒子の外核の役割を果たすことで種単結晶が種単結晶と多結晶体との接合部において成長し、多結晶体中において種単結晶と同一の構造を成長させ続ける。その結果、種単結晶が接合された元の多結晶体と同一の化学組成を有しながらも、種単結晶と同一の結晶構造を有する単結晶を得る。従って、本発明による方法において種単結晶を用いて得られる単結晶は、多結晶体の化学組成を有し、種単結晶の結晶構造を有する単結晶になる。本明細書では、この単結晶を多結晶体組成の単結晶と称する。
【0028】
本発明による方法で得られた各種の組成の単結晶を再度種単結晶として用いることができる。すなわち、本発明により製造された単結晶を多結晶体に接合し、多結晶体中において種単結晶と同一の構造を成長させ続けることで多結晶体組成の別の単結晶を製造することができる。即ち、本発明により製造された単結晶を種単結晶として繰り返し活用することで種単結晶のコストを低減することができる。
【0029】
図1a及び図1bは、本発明の方法において異常粒成長が起こる多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径(R)と異常粒子の個数密度(ND、単位面積当たりの異常粒子の個数)との相関関係およびマトリックス粒子の平均粒径(R)と単結晶の成長速度との相関関係(a)、ならびに種単結晶の連続成長条件(0.5RC≦R≦2RC)(b)を概略的に示す模式図である(R:マトリックス粒子の平均粒径、RC:異常粒子の生成を引き起こすマトリックス粒子の臨界粒径)。
【0030】
図1aに示すように、異常粒の個数密度(ND)は、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)に反比例し、特に、異常粒成長のためのマトリックス粒子の臨界平均粒径(RC)以上では、異常粒子の個数密度がゼロになって異常粒成長が完全に抑えられる。従って、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することにより異常粒子の個数密度を制御することができる。マトリックス粒子の平均粒径は、異常粒成長の駆動力と反比例するため、マトリックス粒子の平均粒径が小さいと異常粒子の成長駆動力が大きくなり、異常粒子は成長初期には高い駆動力によって速く成長する。しかし、異常粒子の個数密度が高いので、異常粒子は周囲の他の異常粒子と衝突する。その結果、異常粒子が成長できず、最終的に成長が止まるようになる。マトリックス粒子の平均粒径が増大すると、異常粒子の個数密度が減少すると共に、異常粒子の成長駆動力も連続して減少するようになる。マトリックス粒子の平均粒径が臨界平均粒径(RC)より大きいとき、他の異常粒子と衝突せずに異常粒子は成長し続けることができる。しかし、マトリックス粒子の平均粒径が増大するにつれて異常粒子の成長駆動力が連続して減少するので、異常粒子の成長速度が減少するようになる。その結果、マトリックス粒子の平均粒径による異常粒子の成長速度は、臨界平均粒径(RC)の付近で最大値を示す。マトリックス粒子の平均粒径がRCに比べて増大または減少すれば、異常粒子の成長速度が減少するようになる。従って、図1aにおいて多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が臨界平均粒径(RC)付近であるとき、新しく成長した異常粒子や種単結晶が成長し続けることができ、大きな単結晶を製造することができるということが分かる。
【0031】
図1bは、多結晶体において数cm以上の大きさに単結晶が成長できる種単結晶の成長条件(0.5RC≦R≦2RC)を示す。多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)が臨界平均粒径より小さい場合(R<RC)には、平均粒径が減少するにつれて異常粒子の個数密度が増大し、生成された異常粒子は、成長する単結晶と衝突して単結晶の成長を妨げる。その結果、マトリックス粒子の粒径が小さすぎると(例えば、RC≫R=R1)、単結晶は成長することができなくなる。マトリックス粒子の平均粒径(R)がRCより大きい場合には(R>RC)、異常粒子の個数密度は常にゼロである。しかし、マトリックス粒子の粒径が増大すると、粒成長の駆動力が急激に減少するようになる。マトリックス粒子が臨界平均粒径(RC)より大きくなりすぎると(例えば、R=R2≫RC)、粒成長の駆動力が小さくなりすぎる。そこで、多結晶体において異常粒成長が起こらなくても、多結晶体における単結晶の成長速度が遅すぎ、実際に使用可能な大きさの単結晶を製造することができない。従って、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が異常粒成長を引き起こすマトリックス粒子の臨界平均粒径(RC)に近い特定の範囲内にあるときのみ、実際に使用できる大きさの単結晶を製造することができる。
【0032】
本発明の実施例で示唆されるように、一般に、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が0.5RCより小さい場合(0.5RC>R)には、異常粒子の個数密度が高すぎて単結晶が成長できない。多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が2RCより大きい場合(2RC<R)には、異常粒子の個数密度はゼロである。しかし、単結晶の成長速度が遅すぎて大きな単結晶を製造することができない。そこで、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を特定の範囲(0.5RC≦R≦2RC)内に含まれるように調節することによって異常粒子の個数密度を制御することができ、種単結晶が異常粒成長と同じ成長メカニズムにて多結晶体中へと成長し続けることができ、実際に利用可能な数cm以上の大きさの単結晶を製造することができる。図2aは、多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径が変化するときの異常粒子の個数密度の変化と異常粒子の成長度合いを示す。そして、図2bは、多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径が変化するときの異常粒子の個数密度の変化と種単結晶の成長度合いを示す。図2aは、少数の異常粒子だけを生成させ、該生成された少数の異常粒子だけを成長させる条件(0.5RC≦R≦RC)を示し、図2bは、種単結晶の連続成長が可能な条件(0.5RC≦R≦2RC)を示す。少数の異常粒子だけを生成させ、該生成された少数の異常粒子だけを成長させるための条件は、0.5RC≦R≦RCである。Rが0.5RCより小さい場合には、生成される異常粒子の個数密度が高すぎるため、少数の異常粒子だけを成長させることが不可能であり、RがRCより大きい場合には、異常粒子がまったく生成しないため、前記範囲内に調節することが好ましい。
【0033】
従って、多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径を、異常粒成長は抑えるが粒成長の駆動力は十分に大きい特定の粒径範囲に制御することによって、即ち、多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく小さい場合は、マトリックス粒子の大きさを増大させることで特定の粒径範囲に含まれるようにするか、または多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく大きい場合は、マトリックス粒子の大きさを減少させることで前記特定の粒径範囲に含まれるようにマトリックス粒子の粒径を制御して、多結晶体における異常粒子の個数を最小にすることにより、生成された異常粒子だけを成長させ続けるか、または、異常粒成長を十分に抑え、多結晶体の外部に種単結晶を接合することで、種単結晶が異常粒子の外核の役割を果たすようにして、異常粒成長と同じメカニズムにて種単結晶を成長させ続けることができる。その結果、多結晶体組成の単結晶を製造することができる。
【0034】
多結晶体と種単結晶とを接合するためには、粉末成形体または多結晶体上に種単結晶を載置するか、粉体中に種単結晶を埋めて成形し、または、多結晶体と種単結晶とを接合した後に該接合体を粉体に埋めて成形する。
【0035】
多結晶体薄膜の製造法を用いて種単結晶の表面に多結晶体薄膜を成長させ、薄膜の成長中または成長後に多結晶体薄膜におけるマトリックス粒子の平均粒径を調節する。熱処理中に種単結晶が多結晶体薄膜へと成長し続け、種単結晶上に新規の薄膜単結晶を製造する。
【0036】
また、本発明による方法は、単純な形状の板状または棒状の種単結晶を用いるか、または成長速度の高い大きな結晶面である“L”字状のような種単結晶の成長速度を最大にすることができる複雑な形状の種単結晶を用いることにより、種単結晶の成長を促進することを特徴とする。
【0037】
多結晶材料の熱処理中には、常にマトリックス粒子の成長が起こる。マトリックス粒子の成長は、マトリックス粒子の化学組成、熱処理温度、添加剤の種類と量、不純物の種類と量、熱処理雰囲気(特に、酸素分圧及び真空度等)、多結晶体の密度および加圧焼結時の圧力等により大きく影響を受ける。本発明による方法では、多結晶体粉末の組成、熱処理温度、添加剤の使用、熱処理雰囲気、多結晶体の密度および加圧焼結時の圧力等の調節等により多結晶体のマトリックス粒子の粒径を調節する方法を用いて多結晶体における異常粒子の個数密度を制御し、多結晶体中での異常粒子の成長は抑えられるが、種単結晶と多結晶体との接合部では異常粒成長が起こることで、単結晶と同一の構造が多結晶体中へと成長するように熱処理される。特に、多結晶体の構成成分比の調節、熱処理温度の調節、熱処理雰囲気の調節、多結晶体の密度の調節および加圧焼結時の圧力の調節、または多結晶体の特定の構成成分の過剰添加、多結晶体のマトリックス粒子の構成成分とは異なる添加剤の添加等により多結晶体中におけるマトリックス粒子の平均粒径を調節し、異常粒子の個数密度を制御する。多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径の調節は、多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく小さい場合は、マトリックス粒子の粒径を増大して特定の粒径範囲(図1bにおいて、0.5RC≦R≦2RC)に含まれるようにするか、または多結晶体のマトリックス粒子の粒径がRCより著しく大きい場合は、マトリックス粒子の粒径を減少させて特定の粒径範囲(図1bにおいて、0.5RC≦R≦2RC)に含まれるようにする。これにより、多結晶体中では異常粒子の成長が抑えられるが、種単結晶と多結晶体との接合部では異常粒成長が起こり、種単結晶が多結晶体中へと成長し続けるように熱処理する。
【0038】
または、化学組成とマトリックス粒子の平均粒径の条件が同一の多結晶体では、熱処理温度が高いほど異常粒成長が活発に起こることを用いて、種単結晶と多結晶体との接合部の温度が多結晶体中の温度より高くなるように調節し、種単結晶と多結晶体との接合部における種単結晶の成長を促進し、多結晶体中における異常粒成長が抑えられる温度条件下で種単結晶と多結晶体を連続的に熱処理することにより種単結晶の成長を誘導する。
【0039】
または、マトリックス粒子の粒径を特定の臨界粒径(図1bにおいて、RC)以上に増大させて多結晶体中における異常粒成長を抑えた後に、種単結晶と多結晶体との接合部に異常粒成長を促進する添加物を添加して熱処理することで、種単結晶と多結晶体との接合部だけにおいて種単結晶が異常粒成長と同じメカニズムにて速く成長し、種単結晶が多結晶体中へと成長し続け、実際に使用可能な大きさの大きな単結晶を製造することができる。
【0040】
即ち、本発明による単結晶の成長方法は、多結晶体のマトリックス粒子の粒径を制御することで異常粒子の個数密度を調節することによって多結晶体中において自発的に生成された少数の異常粒子だけを成長させ続けるか、または多結晶体に種単結晶を接合することにより種単結晶が異常粒成長と同じメカニズムにて成長し、この結果、数cm以上の大きな単結晶を製造することができる。このように製造された大きな単結晶を種単結晶として再度使用し、多結晶体と接合して熱処理を施すことにより種単結晶と同一の構造を多結晶体中へと成長させ続け、この結果、多結晶体組成の単結晶を製造することができる。
【0041】
また、本発明による単結晶の成長方法において、多結晶体中における種単結晶から成長する単結晶は、種単結晶と同じ結晶方向を有し、また種単結晶が結晶の欠陥を有する場合には、成長する単結晶も同じ欠陥を有するということを用いて、所望の特定の結晶方向にそって種単結晶の結晶面を研磨してから、研磨した種単結晶を多結晶体と接合するか、または特定の欠陥(例えば、単一双晶、二重双晶と粒界等)を有する種単結晶を多結晶体に接合し、所望の特定の結晶方向と特定の欠陥を含む単結晶を容易に製造することができる。
【0042】
さらに、本発明による単結晶の成長方法においては、種単結晶から多結晶体へと成長する単結晶が完全に成長すると、成長した単結晶は、種単結晶に接合されていた多結晶体の外形と同じ形状になるということを用いて、多結晶体の粉体を所望の形状に成形するか、または多結晶体を複雑な形状に加工する工程を経た後に、成形または加工された多結晶体を種単結晶と接合することにより、単結晶加工のための複雑で高価な工程を要することなく、所望の複雑な形状を有する単結晶を容易に且つ安価に製造することができる。
【0043】
また、本発明による単結晶の成長方法においては、予め熱処理温度、熱処理雰囲気(例えば、酸素分圧と真空度等)、熱処理中の外圧(加圧焼結)、液相量と添加物等を調節する方法により、気孔率、気孔の形状および気孔の分布を有する多結晶体を製造した後に、その多結晶体を種単結晶と接合することにより単結晶を成長させると、種々の気孔組織を有する単結晶を製造することができる。完全に緻密化した多結晶体において単結晶を成長させると、気孔のない完全に緻密化した単結晶を経済的な方法で大量生産することができる。本発明により製造された40×40mm以上の大きな種単結晶を用いて、BaTiO3[BT]、BT固溶体((BaXM1-X)(TiyN1-y)O3)(例えば、Ba(Ti、Zr)O3[BTZ]、Ba(Ti、Sn)O3[BTS]、(Ba、Sr)TiO3[BST]等)、Pb(ZrXTi1-X)O3[PZT]、(Pby、La1-y)(ZrXTi1-X)O3[PLZT]、(100−x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−(x)PbTiO3[(100−x)PMN−(x)PT]、(100−x)PMN−(x)BT、(100−x−y)PMN−xPT−yBTと(100−x−y)PMN−xPT−yPZ等及びその固溶体の単結晶、並びに各種の組成の単結晶を経済的に大量生産することができる。
【0044】
以下、本発明の実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0045】
誘電、圧電、強誘電性及び電気光学特性に優れていて各種の電子部品の核心素材として活用されているBa(Ti、Zr)O3を多結晶体にし、その構成成分のいずれか1種または1種以上を多結晶体の原組成より過剰に添加し、または少なくして熱処理することによりマトリックス粒子の平均粒径と異常粒子の個数密度を制御した。まず、実験に供されたBa(Ti、Zr)O3粉体は、BaCO3、TiO2およびZrO2粉体を混合した後、空気雰囲気下において1200℃でか焼して製造した。製造されたBa(Ti、Zr)O3粉体にTiO2を0.1モル%〜1.0モル%の範囲で変えて過剰添加し、過剰のTiO2が含まれた種々の組成の粉体を作った。TiO2が添加された粉体を四角形の型で成形した後に200MPaの冷間静水圧で加圧成形した。粉末成形体は、空気中において1300℃以上の種々の温度で200時間熱処理した。このようにして製造された多結晶体上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理した。
【0046】
図3は、過剰のTiO2が0.0モル%〜1.0モル%の範囲で添加されたBa(Ti0.7Zr0.3)O3[(100−x)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−xTiO2;0≦x≦1]組成の粉末成形体を、空気中において1380℃で15時間熱処理した試片における、マトリックス粒子の平均粒径(R)と多結晶体中に生成された異常粒子の個数密度(ND)の相関関係、および、マトリックス粒子の平均粒径(R)と種単結晶の多結晶体中への成長速度の相関関係を示す図である。Ba(Ti0.7Zr0.3)O3粉体にTiO2粉体を0.0モル%〜1.0モル%の範囲で変えて過剰添加した後に焼結した時、TiO2の含有量が増すにつれて焼結体のマトリックス粒子の粒径が連続して減少した。そして、TiO2が0.5モル%以上添加されたとき、多結晶体中において異常粒成長が起こった。また、TiO2の含有量が増すにつれて多結晶体中におけるマトリックス粒子の粒径が小さくなり、異常粒子の個数密度は連続して増大した。TiO2が0.5モル%添加された試片では、異常粒子の個数密度が2個/cm2程度に低くなり、マトリックス粒子の粒径が異常粒子の生成を引き起こす臨界粒径(RC)に至った(RC≒90μm)。(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.2)TiO2試片では、マトリックス粒子の粒径が大きすぎて多結晶体中における異常粒成長が起こらなかった。(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2試片では、マトリックス粒子の粒径が臨界粒径より小さすぎて異常粒子の個数密度が非常に高く、よって異常粒成長が活発に起こった。図3において各組成のマトリックス粒子の平均粒径は、それぞれ(a)210μm[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.2)TiO2]、(b)90μm[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.5)TiO2]および(c)35μm[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2]であり、異常粒子の生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(RC)は約90μmであった。マトリックス粒子の平均粒径が臨界粒径の2倍、即ち、180μm以上である[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.2)TiO2]の試片では、異常粒の生成は起こらなかった。しかし、粒成長の駆動力が小さすぎて種単結晶の成長速度が30μm/h以下であった。このように種単結晶の成長速度が30μm/h以下である場合には、長時間熱処理しても実際に利用可能な大きさの単結晶の製造は不可能であるため、単結晶の製造条件としては適していなかった。マトリックス粒子の平均粒径が臨界粒径の1/2、即ち、45μm以下である試片[(99.8)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2]では、熱処理の初期には粒成長駆動力が大きくて種単結晶の成長が速く起こったが、成長する種単結晶の周囲において異常粒子が多く生成され、成長する種単結晶と衝突することにより種単結晶の成長を妨害した。このように異常粒子の個数密度が高い場合には、異常粒子との衝突により実際に利用可能な充分に大きい単結晶の製造が不可能であるため、単結晶の製造条件としては適していなかった。その結果、マトリックス粒子の平均粒径と単結晶の成長との関係を調査すると、マトリックス粒子の粒径が45μm以上180μm以下である場合のみ種単結晶を1cm以上の大きさに成長させることができることが分かった。従って、種単結晶が成長し続けることができるマトリックス粒子の平均粒径(R)と異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1において、RC)とを比較してみた時、その平均粒径の範囲は、0.5RC≦R≦2RCであった。
【0047】
図4は、本発明による方法により多結晶体((99.6)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.4)TiO2組成)上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3組成の種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理した試片において成長した単結晶を示す写真である。マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のための臨界粒径と類似している図3の(99.5)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.5)TiO2試片よりTiO2が0.1モル%少なく添加された図4の試片((99.6)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.4)TiO2)では、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きくて多結晶体中における異常粒成長が起こらなかった。熱処理の間、種単結晶は異常粒と衝突することなく多結晶体中へと成長し続け、約20×20mm以上の大きな種単結晶が製造された。
【0048】
Ba(Ti0.7Zr0.3)O3粉体にTiO2粉体を過剰添加することで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して減少させたとき、特定の量のTiO2粉体が添加された場合にチタン酸バリウム多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を異常粒生成のための臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きめに制御することができた(図4)。このような場合、多結晶体中における異常粒成長は起こらなかった。種単結晶は異常粒成長の外核として働いて異常粒成長と同じメカニズムにて多結晶体中へと成長し続けた。この結果、多結晶体中において大きな単結晶が製造された。製造された単結晶の大きさは、熱処理時間に比例した。そして、種単結晶が成長可能なマトリックス粒子の平均粒径(R)の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみた時、0.5RC≦R≦2RCであった。
【実施例2】
【0049】
本実施例では、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は、熱処理雰囲気(例えば、空気、酸素、水素、酸素分圧、真空度等)によって変わることを用いて、単結晶の成長のための二次熱処理の前に単結晶の成長のための熱処理雰囲気とは異なる熱処理雰囲気下において多結晶体だけを先に一次熱処理することで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節した。一次熱処理で製造された多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が二次熱処理の条件で0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように制御すれば、二次熱処理にて、種単結晶または前記一次熱処理で生成された少数の異常粒子だけを成長させ続けることができる。実験に供されたチタン酸バリウム粉体の製造と熱処理は、実施例1と同様な方法で行った。粉末成形体には、熱処理雰囲気の酸素分圧(PO2)を変化させながら1300℃以上で200時間熱処理を施した。
【0050】
(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の多結晶体試片を1380℃で酸素分圧0.2の空気雰囲気下において焼結した場合には、マトリックス粒子の平均粒径が約30μmであり、異常粒成長が活発に起こった。上記試片を1380℃で酸素分圧0.01以下の雰囲気下において焼結した場合には、マトリックス粒子の平均粒径が約110μmであり、異常粒成長は起こらなかった。焼結雰囲気の酸素分圧が低いほどチタン酸バリウム系多結晶体のマトリックス粒子の粒径が連続して増大した。熱処理温度によって特定の酸素分圧以下では、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径より大きくなり、異常粒成長が起こらなかった。
【0051】
図5は、(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の多結晶体の試片を酸素分圧0.01以下の還元雰囲気下において1380℃で5時間焼結した後、多結晶体の試片上にBa(Ti0.7Zr0.3)O3種単結晶を載置し、再度1380℃の空気雰囲気下において200時間熱処理したときの試片の表面写真である。(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2組成の試片を空気中で焼結し、種単結晶を焼結した試片に接合して熱処理した時は、マトリックス粒子の粒径が小さすぎ(即ち、0.5RC>R)、よって異常粒子の個数密度が高すぎて種単結晶が成長することができなかった。(99.2)Ba(Ti0.7Zr0.3)O3−(0.8)TiO2試片に種単結晶を接合し、酸素分圧0.01以下の還元雰囲気下においてのみ熱処理し続けたときは、マトリックス粒子が成長し続けて2RCより大きくなり、単結晶成長の駆動力が小さくなりすぎて、種単結晶は成長しなかった。しかし、図5の実施例では、低い酸素分圧の雰囲気下において多結晶体の粒成長を促進し、二次熱処理条件で多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径(R)が0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように調節した。その後、種単結晶と多結晶体とを接合し、多結晶体におけるマトリックス粒子の成長が抑えられる酸素分圧の高い空気中で単結晶の成長のための熱処理を施することにより、多結晶体における異常粒成長は抑えられ、種単結晶の成長駆動力は高く維持された。その結果、図5に示すように、種単結晶は多結晶体中へと成長し続けた。種単結晶の成長は、熱処理時間に比例し、長時間にわたる熱処理により多結晶体において25×25mm以上の大きさのBa(Ti0.7Zr0.3)O3単結晶が製造された(図5)。
【0052】
図5に示すように、多結晶体における異常粒成長を抑えるためにマトリックス粒子の粒径を増大させるための方法として、マトリックス粒子の平均粒径は熱処理雰囲気によって変わることを用いて、まず、多結晶体に粒成長が促進される熱処理雰囲気下において一次熱処理を施してマトリックス粒子の粒径を増大させた後、種単結晶の成長のための熱処理は、種単結晶が多結晶体中へと成長し続けられる熱処理雰囲気下において施した。その結果、多結晶体における異常粒成長を効率よく抑えつつ数十mmの大きな単結晶を製造することができた。
【実施例3】
【0053】
マトリックス粒子の平均粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径より小さいならば、多結晶体における異常粒成長は、常時発生し得る。そして、異常粒成長が起こると、異常粒子がマトリックス粒子を消費しつつ成長する。異常粒子がすべてのマトリックス粒子を消費し尽くしたとき、異常粒成長が完了する。このような異常粒成長が完了した後、最終的な異常粒子の粒径が十分に大きくなくて異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)より小さいならば、異常粒成長が再度発生し得る。このような場合、先に発生した異常粒成長を一次異常粒成長といい、後に起こった異常粒成長を二次異常粒成長という。このように、異常粒成長は反復的に起こり得、異常粒成長が起こって完了すると、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が急激に増大する。そこで、異常粒成長を反復的に引き起こすことによって、マトリックス粒子の平均粒径を調節することができる。本実施例の実験に供された粉体の製造と熱処理は、実施例1と同様な方法にて行った。
【0054】
(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2粉末成形体をそれぞれ(a)1300℃で1時間と(b)1365℃で50時間、空気中で熱処理したとき、1300℃では異常粒成長が進行し、マトリックス粒子の粒径は、約3μmであった。そして、異常粒子の粒径は約30μmであり、異常粒子の個数密度は、50000個/cm2程度であった。一次異常粒成長が開始する温度は、チタン酸バリウム粉体中のバリウム/チタンの比や添加物の含有量によって変わる。本実施例で使用した(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2粉体の一次異常粒成長の開始温度は約1300℃であった。熱処理時間を増大した時、異常粒子がマトリックス粒子を消費しつつ成長してマトリックス粒子が完全になくなったとき、一次異常粒成長が完了した。その結果、全体として一次異常粒子だけで構成された試片の微細組織が得られた。一次異常粒成長が起こる多結晶体(1300℃)のマトリックス粒子の平均粒径は約3μmであり、一次異常粒成長が完了した後の多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は約35μmであった。即ち、一次異常粒成長が完了した後におけるマトリックス粒子の平均粒径は、12倍程度に急激に大きくなった。1365℃では、一次異常粒成長が完了し、全体として一次異常粒子だけで構成された試片において温度が上昇することにより異常粒成長が再び起こった微細組織、即ち、二次異常粒成長が起こった試片の微細組織が得られた。二次異常粒成長が開始する温度は、チタン酸バリウム粉体中のバリウム/チタンの比や添加物の含有量によって変わる。本実施例で使用したチタン酸バリウム粉体の二次異常粒成長の開始温度は約1365℃であった。その粉体を1365℃で50時間焼結したときは、二次異常粒成長が進行し、マトリックス粒子の粒径は、約90μmであった。そして、異常粒子の粒径は約1500μmであり、異常粒子の個数密度は、2個/cm2程度であった。
【0055】
図6は、(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1370℃で200時間空気中で熱処理した試片において自発的に大きく成長した二次異常粒成長の粒子、即ち、Ba(Ti0.95Zr0.05)O3単結晶を示す写真である。多結晶体において一次異常粒成長を誘導した時、多結晶体のマトリックス粒子の粒径は、約3μmから35μmへと10倍以上に急激に増大した。一次異常粒成長が完了した多結晶体において再度二次異常粒成長が起こったとき、マトリックス粒子の平均粒径は約90μmであり、二次異常粒子のマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや小さい程度であった。従って、一次異常粒成長が完了した多結晶体を再度1370℃で熱処理したときは、二次異常粒子の個数密度は2個/cm2程度であり、二次異常粒子が他の二次異常粒子と衝突することなく成長し続け、1cm以上の大きさの単結晶が得られた。このように、異常粒子の個数密度が2個/cm2程度以下である場合には、外部の種単結晶を要することなく数cm以上の大きさの単結晶を製造することができる。
【0056】
多結晶体において異常粒成長が生成して完了したとき、マトリックス粒子の平均粒径が急激に増大する。そこで、異常粒成長を反復的に引き起こすとマトリックス粒子の粒径が調節できるということを用いて、図6に示すように、多結晶体において異常粒成長を抑えるためにマトリックス粒子の粒径を増大させるための方法として、まず、多結晶体において異常粒成長を誘導して完了させる一次熱処理によりマトリックス粒子の粒径を増大させた後、異常粒成長が完了した多結晶体に種単結晶を接合して種単結晶の成長のための熱処理を施し、多結晶体における異常粒成長を効率よく抑えながら数cmの大きさの大きな単結晶を製造することができた。
【実施例4】
【0057】
本実施例では、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は熱処理温度に比例して増大するということを用いて、単結晶の成長のための二次熱処理の前に単結晶の成長のための熱処理温度より高い温度で多結晶体だけをまず一次熱処理することで多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を調節することができた。単結晶の成長のための二次熱処理は、一次焼結温度より低い温度で実行した。二次熱処理温度では、多結晶体における異常粒成長を抑える方法を用いて多結晶体におけるマトリックス粒子の粒径と異常粒子の個数密度を調節した。単結晶成長の熱処理温度でのみ熱処理を施す場合には、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を、異常粒の生成ためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)より大きくすることが困難であった。そのような場合には、単結晶成長のための二次熱処理温度より高い温度でまず多結晶体に一次熱処理を施し、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径が単結晶成長のための熱処理温度(即ち、二次熱処理温度)で0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように調節することにより単結晶を成長させることができた。本実験に供された粉体の製造と熱処理は、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0058】
(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の焼結体を136 0℃以下で熱処理した場合には、異常粒成長が活発に起こることで異常粒子の個数密度が高くなり過ぎ、種単結晶を成長させ続けることができなかった。(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を1390℃で空気中で長時間焼結したときは、マトリックス粒子が正常に粒成長し続け、マトリックス粒子が成長し続けることによってマトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)より大きくなり、異常粒成長は起こらなかった。(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の多結晶体と種単結晶とを接合して連続して熱処理したときには、マトリックス粒子の粒径が種単結晶の連続成長条件(即ち、0.5RC≦R≦2RC)を超えて2RCより大きくなり、種単結晶を成長させることができなかった。
【0059】
図7は、1390℃で5時間空気中で(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の粉末成形体を一次熱処理し、その焼結体上にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の単結晶を載置し、1370℃で200時間空気中で熱処理したときの試片の表面写真図である。(99.8)Ba(Ti0.95Zr0.05)O3−(0.2)TiO2組成の成形体に1390℃で一次熱処理を施さなかった場合には、焼結された多結晶体のマトリックス粒子の粒径が種単結晶の連続成長条件より小さく(0.5RC>R)、成長する単結晶の粒径が多結晶体において生成された異常粒子によって制限された。しかし、その成形体に単結晶の成長のための1370℃での熱処理の前に1390℃で5時間熱処理を施し、マトリックス粒子の粒径を異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)以上に増大したときには、異常粒子の個数密度がゼロ(0)個/cm2になった。1390℃で5時間一次焼結した焼結体上にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の単結晶を載置し、1370℃で200時間熱処理を施した試片(図7)では、種単結晶が成長し続け、多結晶体において異常粒子が生成せず、単結晶の成長が制限されずに熱処理時間に比例して単結晶は成長し続けた。
【0060】
図7に示すように、多結晶体において異常粒成長を抑えるためにマトリックス粒子の粒径を増大させるための方法として、マトリックス粒子の平均粒径は熱処理温度が上昇するにつれて増大するということを用いて、まず、多結晶体に高温で一次熱処理を施してマトリックス粒子の粒径が0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるようにマトリックス粒子を大きくさせた後、種単結晶の成長のための熱処理を低温で施し、多結晶体における異常粒成長を効率よく抑えながら種単結晶を成長させることができた。実施例3と4において種単結晶が成長できるマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみた時、0.5RC≦R≦2RCであった。
【実施例5】
【0061】
多結晶体の構成成分の元素とは異なる添加物を多結晶体に添加して熱処理すれば、添加物の種類と量によってマトリックス粒子の粒径が増減する。従って、多結晶体に多結晶体の構成成分の元素とは異なる他の適宜の添加物のいずれか1種または1種以上を添加してマトリックス粒子の粒径が0.5RC≦R≦2RCの範囲に含まれるように調節することで多結晶体における異常粒成長を制御すれば、異常粒子または種単結晶を多結晶体中へと成長させ続けて単結晶を製造することができる。本実施例では、チタン酸バリウム多結晶体の構成成分の元素とは異なる添加物を多結晶体に添加して熱処理し、マトリックス粒子の粒径を調節することで異常粒成長を制御した。実験に供されたチタン酸バリウム粉体は、バリウム/チタンの比が0.998程度であり、このチタン酸バリウム粉体にZrO2を添加して各種の組成の粉体を作った。ZrO2が添加された粉体は、四角形の型で成形した後に、その粉末成形体に200MPaの静水圧で加圧成形を施した。さらに、その粉末成形体には、空気中で1300℃以上の様々な温度で200時間熱処理を施した。
【0062】
BaTiO3粉体にZrO2粉体を0.1モル%〜1.0モル%の範囲で添加量を変えて添加した後に1380℃で焼結したとき、ZrO2の含有量が増すにつれて焼結体のマトリックス粒子の粒径が連続して減少した。そして、ZrO2が0.5モル%以上添加されたとき、異常粒成長が起こり、ZrO2の含有量が増すにつれて、即ち、マトリックス粒子の粒径が減少するにつれて異常粒子の個数密度は連続して増大した。ZrO2が約0.5モル%添加されたとき、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)に到達し、異常粒成長が始まった。各試片におけるマトリックス粒子の平均粒径と異常粒子の個数密度との関係をみてみると、ZrO2が少量添加された試片では、マトリックス粒子の粒径が最も大きく、異常粒子が観察されなかったが、ZrO2が0.5モル%より多く添加された試片では、異常粒子が観察され、ZrO2の添加加量が増すにつれて異常粒子の個数密度も増大した。本実施例において、ZrO2が添加されたチタン酸バリウム多結晶体における異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)は、約100μmであった。
【0063】
図8は、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、1380℃で200時間熱処理した試片において成長した単結晶を示す写真である。図8の(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の試片は、マトリックス粒子の平均粒径はRC<R≦2RCの範囲に含まれ、多結晶体において異常粒が生成しなかった。そこで、種単結晶が多結晶体中へと成長し続けることで大きな単結晶が製造された。
【0064】
チタン酸バリウム粉体にZrO2粉体を添加して多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して減少させたとき、特定の量のZrO2粉体を添加することによってチタン酸バリウム多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径がRC<R≦2RCの範囲に含まれるように調節することができる(図8)。かかる場合、多結晶体中において異常粒成長は起こらず、チタン酸バリウムの種単結晶が異常粒成長の外核として働いて異常粒成長と同じメカニズムでチタン酸バリウムの種単結晶が多結晶体中へと成長し続け、多結晶体中において大きな単結晶が製造された。製造された単結晶の大きさは、熱処理時間に比例した。本実施例において種単結晶が成長し得るマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみたとき、0.5RC≦R≦2RC程度であった。
【実施例6】
【0065】
圧電及び誘電特性に優れている(68)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−(32)PbTiO3[(68)PMN−(32)PTモル%]系の酸化物を多結晶体にし、この多結晶体の構成成分のいずれか1種または1種以上を多結晶体に過剰添加した後に熱処理することでマトリックス粒子の粒径と異常粒子の個数密度を調節した。まず、実験に供する(68)PMN−(32)PT粉体をコロンバイト前駆物質法で製造した。その製造工程は、次の通りである。炭酸マグネシウム水酸化物(4MgCO3・Mg(OH)2・4H2O)及び酸化ニオブ(Nb2O5)粉体をエタノール中でボールミリング処理し、1100℃で4時間か焼してニオブ酸マグネシウム(MgNb2O6)を合成した。か焼されたニオブ酸マグネシウム(MgNb2O6)は、酸化鉛(PbO)及び二酸化チタン(TiO2)粉体と混合し、再度ボールミリング処理してから850℃で4時間か焼し、最終的に(68)PMN−(32)PT粉体を製造した。粉体の混合時、酸化鉛、酸化ニオブ、炭酸マグネシウム水酸化物および二酸化チタンの比を調節することで各種の組成の粉体を製造した。一軸加圧成形で粉末成形体を製造した。それから、その粉末成形体に200MPaの圧力で冷間静水圧成形を施した。粉末成形体は、二重の白金(Pt)坩堝内で白金板上に載置して焼結し、試片のまわりにおける雰囲気粉体としては、ジルコン酸鉛(PbZrO3[PZ])及び酸化鉛粉体を置くことで焼結中の酸化鉛の揮発を抑えた。
【0066】
(68)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−(32)PbTiO3[68PMN−32PT]組成の粉体に過剰のMgOを添加し、粉末成形体を1200℃で空気中で10時間焼結した。過剰のMgOが添加されていない試片では、異常粒成長が観察されず、マトリックス粒子の粒径も8μm程度と非常に小さかった。過剰のMgOの添加によるマトリックス粒子の粒径の変化を観察するために、68PMN−32PT組成に含まれたMgOの量を基準に0%〜15%の範囲の過剰のMgOを添加した。過剰のMgOの添加量が増すにつれてマトリックス粒子の成長が活発に起こり、マトリックス粒子の粒径が連続して25μmまで増大した。その結果、過剰のMgOが添加されていない試片のマトリックス粒子の粒径に比べて約3倍大きくなった。
【0067】
過剰のPbOが添加された(90)[68PMN−32PT]−(10)PbO組成の多結晶体において、過剰のMgO量の変化によるマトリックス粒子の粒径の変化と異常粒子の個数密度の変化を測定した。0%のMgO(0MgO)が過剰添加された試片と4%のMgO(4MgO)が過剰添加された試片のマトリックス粒子の平均粒径を比較してみたとき、それぞれ約12μmと約40μmであった。過剰に添加されたMgOの量が増すにつれて、マトリックス粒子の粒径が連続して増大した。過剰のPbOが添加された(90[68PMN−32PT]−(10)PbO組成の試片において、過剰のMgOが2%未満の範囲で添加されたとき異常粒成長が著しく観察されたが、MgOが2%以上の過剰量添加されたとき異常粒成長は起こらなかった。即ち、過剰のMgOが2%未満の範囲で添加されると、マトリックス粒子の粒径が異常粒子の生成を誘導し得るマトリックス粒子の臨界平均粒径(図1中のRC)より小さくなり、多結晶体において異常粒成長が活発に起こった。しかし、一定量以上の過剰のMgOが添加されると、マトリックス粒子の粒径が異常粒の生成を誘導し得るマトリックス粒子の臨界平均粒径(図1中のRC)を超えて増大するため、多結晶体において異常粒成長は起こらなかった。本実験において、異常粒子の生成を誘導し得るマトリックス粒子の臨界平均粒径は約28μmであった。マトリックス粒子の平均粒径が14μm以上56μm 以下の範囲であるとき(0.5RC≦R≦2RC)に単結晶を製造することができた。
【0068】
図9は、(90)[68PMN−32PT]−(10)PbO組成の粉体に2%のMgO(2MgO)が過剰添加された組成の粉末成形体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。過剰のMgOが添加されなかった試片においては、チタン酸バリウムの種単結晶からPMN−PT単結晶が成長したが、多結晶体において生成された異常粒子と衝突することで数mm程度だけ成長し、その成長が止まった。しかし、2%の過剰のMgOが添加された図9に示す試片においては、多結晶体において異常粒子が生成されず、チタン酸バリウムの種単結晶から(68)PMN−(32)PTの単結晶が成長し続け、成長したPMN−PT単結晶の大きさは熱処理時間に比例した。
【0069】
PMN−PT粉体に過剰のPbOを添加して異常粒成長を誘導し、過剰のMgOを添加して多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して増大させたとき、過剰のMgOが特定の量以上添加された場合にPMN−PT多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きく制御することができた。かかる場合、種単結晶はPMN−PT多結晶体中へと成長し続け、多結晶体中において大きなPMN−PTの単結晶を製造することができた。そして、種単結晶が成長し得るマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径RCと比較してみた時、0.5RC≦R≦2RCであった。
【実施例7】
【0070】
本実施例では、現在、圧電材料として最も広く使用されているPb(ZrXTi1-X)O3(PZT)の構成成分の比を変えて多結晶体のマトリックス粒子の粒径を調節する方法を用いて、多結晶体における異常粒成長を制御し、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶が多結晶体中へと成長し続けるように熱処理することでPZTの単結晶を製造した。PZT粉体は、PbO、ZrO2、及びTiO2粉体をエタノール中でボールミリング処理を行い、800℃で4時間か焼して合成した。また、ZrO2及びTiO2の比を調節することでPb(ZrXTi1-X)O3粉体においてx値が異なる組成のものを製造した。一軸加圧成形で粉末成形体を作り、その粉末成形体には200MPaの圧力で冷間静水圧成形を施した。粉末成形体は、二重の白金の坩堝内で白金板上に載置して焼結し、試片のまわりにおける雰囲気粉体として、ジルコン酸鉛(PbZrO3[PZ])及びPbO粉体を置くことで焼結中のPbOの揮発を抑えた。
【0071】
Zr/Tiの比が異なる各種のPb(Zr、Ti)O3焼結体を1200℃で1時間焼結したとき、Zr/Tiの比が増すにつれて多結晶体のマトリックス粒子の粒径が増加する傾向をみせた。Zr/Tiの比がそれぞれ0.72、1.08および1.21である試片のマトリックス粒子の粒径は、それぞれ2μm、6μmおよび10μmであった。Zr/Tiの比が増すにつれてマトリックス粒子の平均粒径が連続して増大した。また、Zr/Tiの比が異なる他の各種の組成のPb(Zr、Ti)O3粉体に過剰のPbOを添加し、PbOが添加された各種の組成の粉末成形体を製造して1200℃で1時間焼結した後、その微細組織を観察した。
【0072】
Pb(ZrXTi1-X)O3(PZT)粉体のZr/Tiの比を4〜25の範囲で変えながら製造した粉体に、10モル%の過剰PbOをそれぞれ添加した後に焼結した時、Zr/Tiの比が増すにつれて焼結体のマトリックス粒子の粒径が連続して増大した。Zr/Tiの比が0.72である試片においては、粒径3μmのマトリックス粒子から異常粒成長が起こってマトリックス粒子がすべて消費され、異常粒子だけが残留した組織を示した。Zr/Ti=1.08とZr/Ti=1.21である試片におけるマトリックス粒子の平均粒径は、それぞれ12μmと15μmであった。Zr/Tiの比が約0.85以下になると、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)に到達し、その臨界粒径は、約10μmであり、異常粒成長が始まった。このように過剰のPbOが多結晶試片に添加され、多結晶体試片に液相が供給されたとき、マトリックス粒子の粒径が十分に大きい場合(例えば、Zr/Ti=1.08とZr/Ti=1.21の試片)には、異常粒成長が起こらなかったが、マトリックス粒子の粒径が十分に小さい場合(例えば、Zr/Ti=0.72の試片)には、異常粒成長が起こった。
【0073】
図10は、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の単結晶を(90)[Pb(Zr0.46Ti0.54)O3]−(10)PbO組成の粉末成形体中に埋めてから1200℃で100時間熱処理したとき、試片において成長したPZT単結晶を示す試片の表面写真である。Zr/Tiの比を0.85に調節した時、マトリックス粒子の粒径が異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)である約10程度であり、PZT多結晶体において少数の異常粒子だけが生成され、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶がPZT多結晶体中へと成長し続け、このときの単結晶の成長速度は、約100μm/hであった。
【0074】
PZT粉体に過剰のPbOを添加しZr/Tiの比を調節することで異常粒成長を誘導し、多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径を連続して変化させたとき、特定のZr/Ti比のPZT多結晶体におけるマトリックス粒子の平均粒径を、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きめに制御することができた。多結晶体のマトリックス粒子の構成成分の比を変えることでマトリックス粒子の粒径を調節する方法を用いて、PZT多結晶体における異常粒成長を制御した。上記条件下で、PZT多結晶体中では異常粒成長が抑えられたが、Ba(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶とPZT多結晶体との接合部ではBa(Ti0.7Zr0.3)O3の種単結晶が異常粒成長と同じメカニズムでPZT多結晶体中へと成長し続けるように熱処理することでPZT多結晶体中において大きなPZT単結晶を製造した。本実施例において、種単結晶が成長し得るマトリックス粒子の平均粒径の範囲は、異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径と比較してみたとき、0.5RC≦R≦2RC程度であった。
【実施例8】
【0075】
本実施例においては、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2 Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]と(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbTiO3[(1−x−y)PIN−xPMN−yPT]等の単結晶と、組成が複雑で溶融及び単結晶成長メカニズムの制御が難くて一般の液相単結晶方法では製造が困難な材料の単結晶を固相単結晶成長法で製造した。特に、(1−x−y)PMN−xPT−yPZ、(1−x−y)PYbN−xPT−yPZおよび(1−x−y)PIN−xPMN−yPT等の単結晶は、既存のPMN−PT単結晶に比べてキュリー温度が高くて高温での製造及び使用が可能である。そこで、常温及び高温での圧電単結晶の商業化のためにその開発が必要とされている。まず、実験に供される(1−x−y)PMN−xPT−yPZ、(1−x−y)PYbN−xPT−yPZおよび(1−x−y)PIN−xPMN−yPT粉体は、実施例6と同様にコロンバイト前駆物質法で製造した。粉体の混合時に酸化鉛、酸化二オブ、炭酸マグネシウム水酸化物、二酸化チタンおよび各原料酸化物の比を調節して各種の組成の粉体を製造した。一軸加圧成形で粉末成形体を製造し、その粉末成形体に200MPaの圧力で冷間静水圧成形を施した。粉末成形体は、二重の白金の坩堝内で白金板上に載置して焼結し、試片のまわりにおける雰囲気粉体としては、ジルコン酸鉛(PbZrO3[PZ])及び酸化鉛粉体を置くことで焼結中における酸化鉛の揮発を抑えた。
【0076】
(1−x−y)PMN−xPT−yPZ、(1−x−y)PYbN−xPT−yPZおよび(1−x−y)PIN−xPMN−yPT粉体に過剰のPbOを30モル%まで添加して粉末成形体を製造し、粉末成形体を焼結した。焼結した後に微細組織を観察すると、過剰のPbOが添加された試片では異常粒成長が起こり、過剰のPbOの量が増すにつれてマトリックス粒子の粒径が増大し、異常粒子の個数密度は減少した。従って、各組成の粉体に対して特定量を超える過剰のPbOを添加する場合には、マトリックス粒子の平均粒径を異常粒生成のためのマトリックス粒子の臨界粒径(図1中のRC)よりやや大きめに制御することができ、Ba(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を成長させ続けることができた。
【0077】
図11は、(50)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)PbZrO3](50PMN−36PT−14PZ)(モル%)組成の粉体に9モル%の過剰のPbOを添加することによって製造された粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。熱処理の間、粉末成形体中のBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶から50PMN−36PT−14PZの単結晶が成長し続けて焼結体の表面まで成長してきた。図11に示すように、粉末成形体を1200℃で100時間熱処理したとき、2cm以上の大きさの50PMN−36PT−14PZの単結晶を製造することができた。
【0078】
(50)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)PbZrO3](モル%)組成の粉体に6モル%の過剰のPbOが添加された粉末成形体を1200℃で熱処理したときは、マトリックス粒子の粒径が小さすぎて異常粒子の個数密度が高かった。この試片を1250℃で5時間一次焼結することによって、マトリックス粒子の粒径を増大させたときは、多結晶体において異常粒成長は起こらなかった。しかし、Ba(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶は成長し続けて、2cm以上の大きさの50PMN−36PT−14PZ単結晶を製造することができた。
【0079】
図12は、(50)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−(36)[PbTiO3]−(14)PbZrO3](50PYbN−36PT−14PZT)(モル%)組成の粉体に8%の過剰のPbOを添加することによって製造された粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を埋めて1150℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。熱処理の間、粉末成形体中のBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶から50PYbN−36PT−14PZの単結晶が成長し続けて焼結体の表面まで成長してきた。図12に示すように、粉末成形体を1200℃で100時間熱処理したとき、2cm以上の大きさの50PYbN−36PT−14PZの単結晶を製造することができた。
【0080】
図13は、(20)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−(48)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−(32)PbTiO3](20PIN−48PMN−32PT)(モル%)組成の粉体に9モル%の過剰のPbOを添加することによって製造された粉末成形体中にBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶を埋めて1200℃で100時間熱処理したときの試片の表面写真である。熱処理の間、粉末成形体中のBa(Ti0.95Zr0.05)O3の種単結晶から20PIN−48PMN−32PTの単結晶が成長し続けて焼結体の表面まで成長してきた。図13に示すように、粉末成形体を1200℃で100時間熱処理したとき、2cm以上の大きさの20PIN−48PMN−32PTの単結晶を製造することができた。
【0081】
本実施例では、(1−x−y)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PMN−xPT−yPZ]、(1−x−y)Pb(Yb1/2Nb1/2)O3−xPbTiO3−yPbZrO3[(1−x−y)PYbN−xPT−yPZ]および(1−x−y)Pb(In1/2Nb1/2)O3−xPb(Mg1/3Nb2/3)O3−yPbTiO3[(1−x−y)PIN−xPMN−yPT](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)等と固溶体組成のPb系ぺロブスカイト酸化物固溶体の単結晶等を始めとする各種の組成の単結晶を固相単結晶の成長方法で製造することができるようにし、一般に製造することが困難である高いキュリー温度を有する圧電単結晶を経済的な方法で大量生産することができる単結晶の成長方法を提供する。
【実施例9】
【0082】
本実施例では、本発明の方法により単結晶中において固溶物質の分布が不均一な固溶体組成の単結晶を製造した。実施例1においては、BaCO3、TiO2およびZrO2の粉体を均一に分散して混合し、ジルコニア(ZrO2)が均一に分布するチタン酸バリウム固溶体の多結晶体と単結晶を製造した。本実施例では、単結晶中において固溶物質が不均一に分布する単結晶を製造するために、まず、それぞれの固溶物質を含むチタン酸バリウム粉体を作り、成形型内で順次に積層してそれぞれの固溶物質が不均一に分布する固溶体組成の多結晶体を製造した。((100−x)BaTiO3−(x)MO(モル%))の固溶体組成のチタン酸バリウムの単結晶を製造するために使用された添加物として、チタン酸バリウムと固溶体をなすものとして知られているBi2O3、CaO、CdO、CeO2、CoO、Cr2O3、Fe2O3、HfO2、K2O、La2O3、MgO、MnO2、Na2O、Nb2O5、Nd2O3、NiO、PbO、Sc2O3、SmO2、SnO2、SrO、Ta2O5、UO2、Y2O3、ZnOおよびZrO2からなる群より選ばれた1種または1種以上を多結晶体に添加した。チタン酸バリウムと添加物(MO)の粉体とを混合してなる(100−x)BaTiO3−(x)MO(モル%)組成の粉体2.5gを用いて、直径が15mmで高さが7mmの大きさの円板状粉末成形体を製造し、その円板状粉末成形体を200MPaの静水圧で加圧した。実施例2と同様に、製造された固溶体粉末成形体を酸素分圧0.01以下の雰囲気下において熱処理して多結晶体のマトリックス粒子の粒径を増大させた後、酸素分圧0.2の雰囲気下において1360℃で100時間熱処理することで固溶体組成の単結晶を製造した。
【0083】
図14は、(99.8)BaTiO3−(0.2)MnO2、(99.8)BaTiO3−(0.2)NbO2.5および(99.8)BaTiO3−(0.2)CeO2(モル%)の粉体をそれぞれ順次に積層してなる成形体を、酸素分圧0.01の雰囲気下において1370℃で5時間一次焼結した後、該焼結体上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、酸素分圧0.2の雰囲気下において1370℃で100時間熱処理したときの試片の断面写真である。実施例2と同様にチタン酸バリウム固溶体組成の多結晶体においても酸素分圧(PO2)0.01の雰囲気下において焼結する場合には、マトリックス粒子の成長が促進された。その多結晶体を再度酸素分圧(PO2)0.2の雰囲気下において熱処理しても異常粒成長は起こらなかった。酸素分圧0.01の雰囲気下において焼結された組成勾配を有する多結晶体((99.9)BaTiO3−(0.1)MnO2、(99.9)BaTiO3−(0.1)NbO2.5および(99.9)BaTiO3−(0.1)CeO2(モル%)の粉体を順次に積層した焼結体)上にチタン酸バリウムの種単結晶を載置し、酸素分圧0.2の雰囲気下において1370℃で100時間熱処理した場合には、種単結晶が先にMnO2を含む部分へと成長し始め、NbO2.5とCeO2を含む部分へと成長し続けた。このようにして、純粋なチタン酸バリウム−Mn固溶体−Nb固溶体−Ce固溶体の4部分からなる連続した組成勾配を有するチタン酸バリウム固溶体の単結晶を製造した。雰囲気の調節により固溶体組成の多結晶体のマトリックス粒子の粒径を適宜制御したとき、多結晶体中へと種単結晶を成長させ続けることができ、この結果、数十mmの大きさの固溶体組成の単結晶と組成勾配を有する固溶体の単結晶を製造することができた。一般の液相単結晶の成長法では、その中に組成勾配を有する単結晶の製造は困難であって、組成勾配を有する単結晶を製造することができるということは、本発明の明らかな長所になる。
【実施例10】
【0084】
本実施例では、多結晶中において種単結晶から成長する単結晶は、種単結晶と同一の結晶方向を有し、また種単結晶が欠陥をもっている場合には、成長する単結晶も同じ欠陥をもつようになるということを用いて、所望の特定の結晶方向にそって種単結晶の結晶面を研磨してその種単結晶を多結晶体と接合するか、または特定の欠陥(例えば、単一双晶、二重双晶および粒界等)を有する種単結晶を多結晶体に接合し、所望の特定の結晶方向を有する単結晶と特定の欠陥を含む単結晶を容易に製造可能であることを述べる。本実施例では、実施例5と同様に過剰のZrO2が添加されたチタン酸バリウム多結晶体((99
.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成)を使用した。
【0085】
図15a及び図15bは、(99.6)BaTiO3−(0.4)ZrO2組成の粉末成形体上にそれぞれ、(a)(111)二重双晶を含むチタン酸バリウム単結晶と、(b)棒状の二つのチタン酸バリウム単結晶(一つの棒状単結晶を二つに分けた後に約10°の角度だけ回転させたもの)を載置し、1380℃で200時間熱処理したときの試片の外形写真である。図15に示すように、(a)(111)二重双晶を含む単結晶と、(b)約10°だけ回転させた棒状単結晶を使用する場合には、種単結晶から成長した単結晶中にも種単結晶が含む欠陥と同じ欠陥を含んでいた。本実施例から、(111)二重双晶と低傾角粒界のような欠陥を含む単結晶を製造しようとする場合には、所望の欠陥を含む種単結晶を製造することで容易に所望の欠陥を含む単結晶を製造できることが分かった。特に、各種の特定の結晶方位を有する二重単結晶は、本実施例のように少なくとも二つの単結晶を同時に使用し、同じ欠陥を含む種単結晶を使用すれば容易に製造することができる。
本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、当業者であれば、修正および変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相単結晶の成長方法において、
異常粒子の個数密度がゼロになるマトリックス粒子の平均粒径(RC)の0.5倍以上2倍以下の範囲にある、マトリックス粒子の平均粒径(R)を有する多結晶体(0.5RC≦R≦2RC)を熱処理する段階を含み、
前記多結晶体は下記の群より選ばれることを特徴とする固相単結晶の成長方法。
(1−x)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3](0≦x≦1)(PMN−PT);PMN−PT固溶体;Pb(ZrXTi1-X)O3(0≦x≦1)(PZT);PZT固溶体(((PbXM1-X)(ZraTibNC)O3(0≦x≦1;0≦a,b,c≦1;a+b+c=1)));(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PT−PZ);PMN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PYbN−PT−PZ);PYbN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PIN−PT−PZ);PIN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PYbN−PT);PMN−PYbN−PT固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0 ≦x+y≦1)(PMN−PIN−PT);及びPMN−PIN−PT固溶体。
【請求項2】
固相単結晶の成長方法において、
異常粒子の個数密度がゼロになるマトリックス粒子の平均粒径(RC)の0.5倍以上2倍以下の範囲にある、マトリックス粒子の平均粒径(R)を有する多結晶体(0.5RC≦R≦2RC)に種単結晶を接合した後、熱処理する段階を含み、
前記多結晶体は下記の群より選ばれることを特徴とする固相単結晶の成長方法。
(1−x)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3](0≦x≦1)(PMN−PT);PMN−PT固溶体;Pb(ZrXTi1-X)O3(0≦x≦1)(PZT);PZT固溶体(((PbXM1-X)(ZraTibNC)O3(0≦x≦1;0≦a,b,c≦1;a+b+c=1)));(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PT−PZ);PMN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PYbN−PT−PZ);PYbN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PIN−PT−PZ);PIN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PYbN−PT);PMN−PYbN−PT固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0 ≦x+y≦1)(PMN−PIN−PT);及びPMN−PIN−PT固溶体。
【請求項3】
前記多結晶体のマトリックス粒子の特定の構成成分のいずれか1種または1種以上を、前記多結晶体の原組成より過剰に添加し、または少なくすることで、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は前記範囲に調節されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項4】
前記多結晶体のマトリックス粒子の構成元素の成分比を変えることで、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は前記範囲に調節されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項5】
前記多結晶体のマトリックス粒子の構成成分とは異なる1種または2種以上の添加物を前記多結晶体に添加することで、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は前記範囲に調節されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項6】
前記多結晶体は、その組成が不連続的にまたは連続的に変わる組成勾配を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項7】
前記熱処理は、前記多結晶体がPb系である場合、前記多結晶体の構成成分であるPbOが組成式より過剰に添加される条件下で行われることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項8】
前記種単結晶に多結晶体薄膜を接合し、前記種単結晶が多結晶体薄膜へと成長し続けるようにすることで種単結晶上に薄膜単結晶が形成されることを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項9】
前記種単結晶は、単一双晶境界、二重双晶境界および低傾角粒界のような欠陥を含み、この種の種単結晶と同じ欠陥を含む単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項10】
前記多結晶体は気孔を含み、気孔を含む多結晶体に種単結晶を接合して熱処理することで単結晶を成長させ、成長した単結晶の表面に形成された完全に緻密化した層を用いて内部には気孔を含み、表面には気孔のない単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項11】
前記多結晶体は、粉体を所望の形状に成形または加工したものであり、成形または加工された多結晶体を種単結晶と接合することにより、単結晶の加工工程を要することなく所望の形状を有する単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項12】
前記多結晶体は、添加物を添加するか、または液相量、焼結温度、焼結雰囲気及び焼結圧力を変えることによって、特有の気孔率と気孔の大きさと気孔形状を有し、前記多結晶体を種単結晶と接合して熱処理することで多結晶体において成長する単結晶中の気孔率と気孔の大きさと気孔形状を制御し、気孔を含まない完全に緻密化した単結晶または種々の気孔率を有する単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項1】
固相単結晶の成長方法において、
異常粒子の個数密度がゼロになるマトリックス粒子の平均粒径(RC)の0.5倍以上2倍以下の範囲にある、マトリックス粒子の平均粒径(R)を有する多結晶体(0.5RC≦R≦2RC)を熱処理する段階を含み、
前記多結晶体は下記の群より選ばれることを特徴とする固相単結晶の成長方法。
(1−x)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3](0≦x≦1)(PMN−PT);PMN−PT固溶体;Pb(ZrXTi1-X)O3(0≦x≦1)(PZT);PZT固溶体(((PbXM1-X)(ZraTibNC)O3(0≦x≦1;0≦a,b,c≦1;a+b+c=1)));(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PT−PZ);PMN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PYbN−PT−PZ);PYbN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PIN−PT−PZ);PIN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PYbN−PT);PMN−PYbN−PT固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0 ≦x+y≦1)(PMN−PIN−PT);及びPMN−PIN−PT固溶体。
【請求項2】
固相単結晶の成長方法において、
異常粒子の個数密度がゼロになるマトリックス粒子の平均粒径(RC)の0.5倍以上2倍以下の範囲にある、マトリックス粒子の平均粒径(R)を有する多結晶体(0.5RC≦R≦2RC)に種単結晶を接合した後、熱処理する段階を含み、
前記多結晶体は下記の群より選ばれることを特徴とする固相単結晶の成長方法。
(1−x)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3](0≦x≦1)(PMN−PT);PMN−PT固溶体;Pb(ZrXTi1-X)O3(0≦x≦1)(PZT);PZT固溶体(((PbXM1-X)(ZraTibNC)O3(0≦x≦1;0≦a,b,c≦1;a+b+c=1)));(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PT−PZ);PMN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PYbN−PT−PZ);PYbN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−x[PbTiO3]−y[PbZrO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PIN−PT−PZ);PIN−PT−PZ固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(Yb1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)(PMN−PYbN−PT);PMN−PYbN−PT固溶体;(1−x−y)[Pb(Mg1/3Nb2/3)O3]−x[Pb(In1/2Nb1/2)O3]−y[PbTiO3](0≦x≦1;0≦y≦1;0 ≦x+y≦1)(PMN−PIN−PT);及びPMN−PIN−PT固溶体。
【請求項3】
前記多結晶体のマトリックス粒子の特定の構成成分のいずれか1種または1種以上を、前記多結晶体の原組成より過剰に添加し、または少なくすることで、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は前記範囲に調節されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項4】
前記多結晶体のマトリックス粒子の構成元素の成分比を変えることで、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は前記範囲に調節されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項5】
前記多結晶体のマトリックス粒子の構成成分とは異なる1種または2種以上の添加物を前記多結晶体に添加することで、前記多結晶体のマトリックス粒子の平均粒径は前記範囲に調節されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項6】
前記多結晶体は、その組成が不連続的にまたは連続的に変わる組成勾配を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項7】
前記熱処理は、前記多結晶体がPb系である場合、前記多結晶体の構成成分であるPbOが組成式より過剰に添加される条件下で行われることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項8】
前記種単結晶に多結晶体薄膜を接合し、前記種単結晶が多結晶体薄膜へと成長し続けるようにすることで種単結晶上に薄膜単結晶が形成されることを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項9】
前記種単結晶は、単一双晶境界、二重双晶境界および低傾角粒界のような欠陥を含み、この種の種単結晶と同じ欠陥を含む単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項10】
前記多結晶体は気孔を含み、気孔を含む多結晶体に種単結晶を接合して熱処理することで単結晶を成長させ、成長した単結晶の表面に形成された完全に緻密化した層を用いて内部には気孔を含み、表面には気孔のない単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項11】
前記多結晶体は、粉体を所望の形状に成形または加工したものであり、成形または加工された多結晶体を種単結晶と接合することにより、単結晶の加工工程を要することなく所望の形状を有する単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【請求項12】
前記多結晶体は、添加物を添加するか、または液相量、焼結温度、焼結雰囲気及び焼結圧力を変えることによって、特有の気孔率と気孔の大きさと気孔形状を有し、前記多結晶体を種単結晶と接合して熱処理することで多結晶体において成長する単結晶中の気孔率と気孔の大きさと気孔形状を制御し、気孔を含まない完全に緻密化した単結晶または種々の気孔率を有する単結晶を製造することを特徴とする請求項2記載の固相単結晶の成長方法。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【公開番号】特開2009−184916(P2009−184916A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87330(P2009−87330)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2005−501033(P2005−501033)の分割
【原出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(500445310)セラコンプ カンパニー, リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2005−501033(P2005−501033)の分割
【原出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(500445310)セラコンプ カンパニー, リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]