説明

圃場作業機、及び該圃場作業機をローダに取り付けて成る農業機械

【課題】ローダのリフトアームの先端に圃場作業機を取り付けて、圃場の環境や作業内容に柔軟に対応し、安定且つ安全に作業を行わせることのできる圃場作業機を実現する。
【解決手段】圃場作業機3の主フレーム38に作業具35〜37が取り付けられ、連結用主部材66の前端部は、主フレーム38に対してピッチング及びローリング可能に取付けられており、連結用主部材66の後端部に取り付けられた後部フレーム75に固定された取付支持板81のフック係合用ピン82に、ローダ2のリフトアーム10の先端に取り付けられたスナップヒッチ18のフックが係合され、取付支持板81の連結軸挿通孔とスナップヒッチ18の連結軸挿通孔とに連結用のボルト83が挿通されて、取付支持部材80がスナップヒッチ18に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローダのリフトアームに取り付けて使用する圃場作業機、及びこの圃場作業機を取り付けて成る農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ローダは構造的に大きくは、装軌道式(履帯式)のトラックローダと、装輪式(タイヤ式)のホイルローダとに分類される。そして、ローダは通常、リフトアームを備えており、従来、リフトアームの先端に取り付けるアタッチメントの種類により、各種の用途に利用されている。
【0003】
即ち、リフトアームの先端に取り付けるアタッチメントとしては、バケット、マニアフォーク、ヘイフォーク、パレットフォーク、コンテナバケット、ローディングフック、ロールグラブ、ベールフォーク、グレーダ、爪付バケット等がある。
【0004】
そして、これらのアタッチメントを取り付けて可能な作業例としては、次のような作業が知られている(特許文献1、2、3参照)。
・土砂、土石、堆肥、糞、牧草、わら等の収集、運搬、排除、押さえ込み、加圧
・コンテナ、箱、パレット、材木、管材
・除雪
・土石の掘削、穴掘り、溝掘り
・整地
・根の掘り起こし
【0005】
サブソイラのような圃場作業具を備えた圃場作業機を、トラクタの後部に3点リンク(ロワーリンクとトップリンク)を介して取付ける構成が、従来知られている(特許文献4参照)。さらに、プラウのような圃場作業具を備えた圃場作業機を、トラクタの前部に3点リンク(ロワーリンクとトップリンク)を介して取付ける構成が、従来知られている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−8183号公報
【特許文献2】特開2003−113618号公報
【特許文献3】国際公開2005/012653号公報
【特許文献4】特開昭55−150801号公報
【特許文献5】実開昭61−89214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タイン(鋤)、スクレーパ、鎮圧輪等の圃場作業機は、上記のとおり、通常は、トラクタの後部に3点リンクを介して取付け、トラクタで牽引して利用している。また、一般的ではないが、圃場作業機をトラクタの前部に3点リンクを介して取付けて押し出すような利用の仕方もある。要するに、通常は、圃場作業機はトラクタを必要としている。
【0008】
ところで、上記のとおり、ローダは、アタッチメントを取り替えればいろいろな作業ができ有用であるので、上記背景技術で説明したとおりのローダ本来の各種の使用目的において、多く使用されている。そこで、このようなローダを利用して圃場作業機を使用できれば、農場で所有しているローダをより有効活用可能である。
【0009】
しかしながら、従来、ローダを利用して圃場作業機を使用するような発想はなく、実際、そのような農業機械は存在しない。そもそも、ローダは、リフトアームの有する昇降機能や運搬機能を利用して、リフトアームにバケット等のアタッチメントを装着して、各種の物の採集、運搬、穴掘り等の作業を行う機械として適しているから、ローダを利用して圃場作業機を押すようにして圃場作業を行わせるような発想はなかったのである。
【0010】
即ち、ローダは、そのリフトアームの先端にアタッチメントをしっかりと固定して、リフトアームの力を直にアタッチメントに伝達して、アタッチメントを強制的に稼働させる構造である。確かに、上記採集、運搬、穴掘り等、直にアタッチメントに力を伝達する必要のある作業等には、ローダは適している。
【0011】
しかしながら、圃場作業機は、圃場の環境条件(例えば、圃場表面の凹凸、耕土の硬さ、水分含有度合い等)、圃場作業の内容・用途等によって、作業進行方向に圃場作業機をローダが押す力とは別に、圃場作業機自体に対して、いろいろな方向からの外力が作用する。
【0012】
従って、仮に、圃場作業機をリフトアームに、上記採集、運搬、穴掘り等のアタッチメントと同様な固定構造でリフトアームにしっかりと固定すれば、圃場作業機に対して、上記圃場の環境条件や作業条件で受ける外部から受ける力が、圃場作業機自体に作用し破損したり圃場作業も安定せず、或いはリフトアーム及びローダ本体である車輌にも作用して、圃場作業機とリフトアームの連結構造やリフトアームの破損、さらには、ローダの運転操作の安全性にも支障を及ぼし、好ましくない。
【0013】
従来、圃場作業機はその作業の安定性、牽引するトラクタ運転操作作業の安全性等の観点から、3点リンクを介して取り付けられているが、ローダは、リフトアームの先端にアタッチメントを装着する構成であるから、リフトアームの先端に3点リンクを取り付けにくい構成である。
【0014】
また、圃場作業機自体も、ローダのリフトアームの先端に何とか取り付けたとしても、安定かつ安全にて作業を行わせるような遊びのある構造ではなかった。このような点からも、ローダの前方に圃場作業機を取り付けて、圃場作業機を前方に押すようにして作業を行わせるような発想は生じ得なかったものと考えられる。
【0015】
本発明は、ローダのリフトアームの先端に取り付けて、圃場の環境や作業内容に柔軟に対応し、安定且つ安全に作業を行わせることのできる構造の圃場作業機を実現することを課題とする。また、このような圃場作業機をローダに取り付けて成る農業機械を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、作業進行方向に対して横方向に延びるように配置された主フレームと、作業進行方向に延びるように配置された連結用主部材とを備え、主フレームに1種又は複数種の圃場用の作業具を取り付けて成る圃場作業機であって、前記連結用主部材の前端部は、主フレームに対してピッチング及びローリング可能に取付けられており、連結用主部材の後端部には、作業進行方向に対して横方向に延びるように配置された後部フレームが取り付けられており、前記後部フレームには、取付支持部材が固定されており、前記取付支持部材は、その上部においてフック係合用ピンが固定されており、その下部において連結軸挿通孔が形成されており、前記取付支持部材のフック係合用ピンに、ローダのリフトアームの前端に回動可能設けられたスナップヒッチのフックが係合されて、取付支持部材の連結軸挿通孔とスナップヒッチの連結軸挿通孔とが合わされて連結軸が挿通されることで、取付支持部材がスナップヒッチに取り付けられることを特徴とする圃場作業機を提供する。
【0017】
後部フレームには下方に延び、規制切欠きが形成された規制板が設けられており、主フレームの後面には後方に延びる規制杆が突設されており、規制杆は、規制切欠き内に入り、規制切欠きの範囲内で規制板に対して相対的に上下左右に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
連結用主部材の前端部は、主フレームに固定された前部フレームに取り付けられた左右一対の耳片に球面ブッシュを介してピッチング及びローリング可能に取り付けられていることが好ましい。
【0019】
取付支持部材は、それぞれ互いに間隔をおいて後部フレームに平行に固定された2枚の取付支持板を備え、フック係合用ピンは、2枚の取付支持板の上部において取付支持板間を橋絡するように固定されており、取付支持部材の連結軸挿通孔は、2枚の取付支持板の下部に形成されていることが好ましい。
【0020】
取付支持部材は、後部フレームに互いに作業進行方向に対して横方向に間隔をおいて複数設けられていることが好ましい。
【0021】
複数設けられている取付支持部材の少なくとも一つの取付支持部材を構成する2枚の取付支持板の一方の支持板には、掛け止め片が回動可能に取り付けられており、主フレームの後面には凹部を有する掛け止め受け具が設けられており、掛け止め片は、掛け止め受け具の凹部に係合可能であるように構成されていることが好ましい。
【0022】
主フレームに取り付けられる1種又は複数種の圃場用の作業具は、タイン、スクレーパ及び鎮圧輪のいずれか1種である、又はタイン、スクレーパ及び鎮圧輪が作業進行方向の前方から後方に向けて順次配置されたものであることが好ましい。
【0023】
本発明は、上記圃場作業機がローダのリフトアームの先端に取り付けられて成り、ローダにより圃場作業機を前方に押して移動させることにより圃場作業を行う構成であることを特徴とする農業機械を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る圃場作業機及び農業機械によれば、次のような効果が生じる。
本発明の圃場作業機においては、フード部材は、その前端では、主フレームに対して、ブッシュを介してピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)可能に設けられおり、その後端では、主フレームに対して、規制切欠き内で規制杆が動き得る範囲内で、左右上下に相対的にある程度の自由度をもって移動可能である。
【0025】
従って、圃場作業において、圃場表面の凹凸等の環境条件で、タイン、スクレーパ、鎮圧輪等の圃場用作業具を介して主フレームに外力が加わり上下左右の動き、ピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)が生じても、これらの外力や動きは、ある程度の遊びをもって、フード部材、後部フレーム及び取付支持部材に伝達する。
【0026】
そのために、圃場作業におけるローダ運転操作の安定性、安全性を確保することが可能となるとともに、圃場作業機の各部、ローダのリフトアーム、及び圃場作業機とリフトアームの連結する部分の構造等への損傷、破壊を防止できる。
【0027】
また、タイン、スクレーパ、鎮圧輪等の圃場用作業具は、ローダ及びフード部材により、完全には拘束されず、ある程度の遊びをもって連結されているから、圃場表面の凹凸等の環境条件に順応して作業を行うことが可能となる。よって、圃場に対する作業の安定性、安全性も確保可能となる。
【0028】
さらに、圃場作業機を単体又はローダに連結した状態で、トラック等で搬送する際、又は、ローダで圃場作業機を押して単に移動する際には、取付支持板に回動可能に設けられた掛け止め片を主フレームの後面に設けられた掛け止め受け具の凹部に係合しておけば、搬送時に横揺れや振動等があっても、圃場作業機をローダに対して、横方向にずれたりすることなく搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る農業機械の実施例の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る農業機械の実施例の全体構成を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図3】本発明に係る農業機械の実施例のローダの全体構成を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る農業機械の実施例のローダの全体構成を示す側面図である。
【図5】本発明に係る圃場作業機の実施例を示す図であり、(a)は圃場作業機の背面図(後方から見た図)であり、(b)は圃場作業機の側面図である。
【図6】本発明に係る圃場作業機の実施例を示す図であり、(a)は圃場作業機の平面図であり、(b)は圃場作業機の正面図(前方から見た図)である。
【図7】本発明に係る圃場作業機の実施例におけるスクレーパの構造を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【図8】本発明に係る圃場作業機の実施例における主フレーム、前部フレーム及び鎮圧輪等を含む要部を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【図9】本発明に係る圃場作業機の実施例における要部を示す図であり、(a)は連結用主部材等の側面図を示し、(b)は鎮圧輪及び前後支持板等の側面図を示し、(c)は球面ブッシュ取付部の垂直断面の拡大図である。
【図10】(a)は、本発明に係る圃場作業機をローダに取り付ける取付構造の斜視図であり、(b)、(c)は作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る圃場作業機、及び該圃場作業機をローダに取り付けて成る農業機械(以下、単に「圃場作業機及び農業機械」と言う。)を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例】
【0031】
本発明に係る圃場作業機及び農業機械の実施例を、図1〜10において説明する。本発明に係る農業機械1は、図1及び図2に全体構成を示すように、ローダ2と、ローダ2のリフトアーム部4の先端に取り付けられた圃場作業機3とから成る。
【0032】
ローダ:
本発明では、ローダは、トラックローダ(装軌式ローダ)及びホイルローダ(装輪式ローダ)のいずれでもよいが、本実施例のローダ2については、4輪のホイルローダによって説明する。ローダ2は、図1〜4に示すように、車輌5と左右一対のリフトアーム部4を備えている。
【0033】
左右のリフトアーム部4は、それぞれ車輌5の車体フレーム6に、取付ブラケット7及び支持フレーム8を介して取り付けられたリフトアーム10と、リフトアーム10の先端に上下方向に回動可能に設けられたスナップ部11と、リフトシリンダ12と、ダンプシリンダ13とを備えている。リフトアーム10は、リフトシリンダ12によって、車輌5に対して上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0034】
図3及び図4に示すように、左右のリフトアーム10は、それぞれ側面視で「く」の字型の形状をしており、互いに前後方向に間隔をおいて結合軸14で結合されている。スナップ部11は、回転ブラケット15と、略「く」の字型のクランク16と、コンロッド17と、スナップヒッチ18とを備えている。
【0035】
回転ブラケット15は、リフトアーム10の先端部に枢支軸19によって回動可能に取り付けられている。左右の回転ブラケット15は、互いに結合杆20で結合されているとともに、先端には支持杆21が取り付けられている。
【0036】
支持杆21両端に、それぞれスナップヒッチ18が固定されている。スナップヒッチ18の先端には、凹状のフック25が形成されている。スナップヒッチ18の基端側には、連結軸挿通孔26が形成されている。
【0037】
クランク16の基端は、リフトアーム10の前端に枢支ピン27で回動可能に取り付けられており、クランク16の先端はコンロッド17の基端に枢支ピン28で回動可能に取り付けられている。コンロッド17の先端は、回転ブラケット15に枢支ピンで回動可能に取り付けられている。クランク16及びコンロッド17は、リフトアーム10と回転ブラケット15との間でリンク機構をして機能する。
【0038】
リフトシリンダ12は、支持フレーム8とリフトアーム10の屈曲部29との間に取り付けられており、リフトシリンダ12を伸縮することで、リフトアーム10を昇降することが可能である。
【0039】
ダンプシリンダ13は、リフトアーム10の屈曲部29と枢支ピン28の外套筒30の間に取り付けられており、ダンプシリンダ13を伸縮することで、回転ブラケット15及び支持杆21を介してスナップヒッチ18を、リフトアーム10に対して枢支軸19の廻りに回動する。なお、22はリフトアーム10を地上に定置する際に使用するスタンドである。
【0040】
圃場作業機:
圃場作業機としては、一般的に、サブソイラ(心土粉砕機)、プラウ(鋤)、タイン、スクレーパ(均平機)、鎮圧輪、溝掘り機、レベラー(整地・均平機)等のいろいろな圃場用の作業具を備えたものがあるが、本発明に係る圃場作業機は、これらの圃場用の作業具のいずれか1種又は複数種を備えている。
【0041】
本実施例の圃場作業機3においては、図1、2、5及び6に示すように、前方から後方に向けて順次、タイン35、スクレーパ36及び鎮圧輪37を備えて成る構成によって説明する。圃場作業機3は、作業進行方向に対して横方向(作業進行方向に対して左右の方向)水平に延びる主フレーム38を備えている。この主フレーム38は、断面矩形のパイプから成る。
【0042】
図5に示すように、主フレーム38の両端からそれぞれ下方に延びる左右の垂直フレーム39が設けられている。左右の垂直フレーム39の下端部の間には、鎮圧輪37が回動可能に取り付けられている。鎮圧輪37は、左右の垂直フレーム39の下端部の間に軸受40により支持された回動軸41と、回動軸41の周囲に設けられた螺旋杆42とから成る。
【0043】
主フレーム38の後面には、後記する掛け止め片43が係合可能(より正確には、係脱可能、即ち、係合したり係合を解除したりすることが可能)な凹部を有する掛け止め受け具44が設けられている(図6(a)、図8(a)、図10(a)等参照)。
【0044】
図5(b)及び図6に示すように、主フレーム38から左右一対の水平支持板45、及び水平支持板45の前端に固定された傾斜板46が、前方に向けて延びるように固定されて設けられている。左右の一対の傾斜板46の前端部で、作業進行方向に対して横方向に延びるタイン水平支持杆47が設けられている。
【0045】
タイン35は、複数の鋤片48を備えている。鋤片48は、図5(b)に示すように、略円形の弾性を有する取付用上部49と、下方に延びる鋤用下部50とから構成されている。タイン水平支持杆47に、複数の鋤片48が、それぞれ一定の間隔をおいて、略円形の取付上部49において固定されて取り付けられている。
【0046】
図5(b)、図6、図7に示すように、主フレーム38から左右一対の傾斜支持板55が前方下方に向けて傾斜して設けられている。左右一対の傾斜支持板55の間に、作業進行方向に対して横方向に長細く延びるスクレーパ支持板56が回動可能に取り付けられている。このスクレーパ支持板56の後面に、作業進行方向に対して横方向に間隔をおいて複数のスクレーパ片57の上部が取り付けられている。
【0047】
複数のスクレーパ片57は、その前方に設けられているタイン35の複数の鋤片48の隙間(一定間隔の隙間)の後方に位置するように設けられている。このような構成により、タイン35で作業進行方向に対して横方向に掻き分けられた土を、スクレーパ片57で均平にならすことができる。
【0048】
主フレーム38には、スクレーパ操作シリンダ58の基端が取り付けられており、このスクレーパ操作シリンダ58の先端は、スクレーパ支持板56に固定されたスクレーパ駆動ブラケット59に回動可能に取り付けられている。
【0049】
圃場作業機のローダへの取付構造:
以上説明した構成が本実施例の圃場作業機3の圃場作業に必要な基本的な構成であるが、本発明における特徴的な構成である、圃場作業機3をローダ2へ取り付ける取付構造を、以下に説明する。
【0050】
図8に示すように、主フレーム38における左、右及び中央の3つ位置に、前方に向けて水平に延びる3つの前後支持板61の基端(後端)が固定されている。3つの前後支持板61の先端(前端)には、前部フレーム62が取り付けられている。前部フレーム62は、作業進行方向に対して横方向に延びる角形パイプから成る。
【0051】
前部フレーム62における作業進行方向に対して横方向の中央部に、ほぼ三角形の上下一対の固定板63によって前後方向に延びる角棒64が挟持固定されて取り付けられている。この角棒64の先端には、図6(b)、図8に示すように、左右一対の耳片65が突設されている。左右一対の耳片65には、作業進行方向に対して横方向に向けて貫通孔が形成されている。
【0052】
圃場作業機3の上部には、図5、図6及び図9(a)に示すように、連結用主部材66が設けられている。この連結用主部材66は本実施例では、具体的には、断面山形であって、インジケータ67が付設されたフード部材66(連結用主部材の一例であるから同じ符号66を付す。)として構成されている。このフード部材66は、主フレーム38に対して、次に説明するような取付構造で取り付けられている。
【0053】
フード部材66の前端下部には、図5(b)、図6及び図9に示すように断面視で
L字型のブラケット68が固定され、このブラケット68の下面に垂下板69が突設されている。この垂下片69の左右両面には球面ブッシュ70が設けられており、垂下片69及び球面ブッシュ70には、作業進行方向に対して横方向に貫通するように、貫通孔71が形成されている。
【0054】
垂下片69及び球面ブッシュ70は、図6(b)、図9(c)に示すように、角棒68の先端に突設された左右一対の耳片65の間に挿入される。左右一対の耳片65のうち一方の耳片65の外面には円筒74が溶着されている。この溶着された円筒74の外端から、連結軸72が挿入され、左右一対の耳片65の貫通孔と球面ブッシュ70の貫通孔71に挿通される。そして、連結軸72及び円筒74に直交して設けられた挿通孔に、止めボルト73を挿通しナット73’で締着する。これにより、連結軸72は固定される。
【0055】
これにより、フード部材66の前端は、ピッチング(縦揺れ。上下方向の揺動)可能に、且つローリング(横揺れ。左右方向の揺動)可能に、角棒64及び前後支持板61を介して主フレーム38に対して取り付けられることとなる。
【0056】
フード部材66の後端には、作業進行方向に対して横方向に延びる後部フレーム75が固定されている。この後部フレーム75は、主フレーム38及び前部フレーム62と同様に、角形パイプから成る。
【0057】
後部フレーム75の下面に、図5(a)に示すように、規制板76が下方に延びるように突設されている。この規制板76には、左右に規制切欠き77が形成されている。この規制切欠き77の形状は、後記する規制杆78の動きを規制することを考慮して形成される。
【0058】
図5(a)及び図8(a)に示すように、主フレーム38の左右には、後方に向けて左右一対の規制杆78が突設されている。規制杆78は、断面円形に形成されている。この左右の規制杆78が、それぞれ規制板76の左右の規制切欠き77に入り込んでおり、規制杆78が規制切欠き77の範囲内で、規制板76に対して相対的に移動可能なように配置されている。
【0059】
以上の構成により、フード部材66は、その前端では、ピッチング及びローリング可能に角棒64及び前後支持板61を介して主フレーム38に取り付けられており、その後端は、規制切欠き77に対して規制杆78が動き得る範囲内で、主フレーム38に対して左右上下に相対的に移動可能である。
【0060】
後部フレーム75には、図5、図6、図9(a)、図10(a)等に示すように、左右一対の取付支持部材80が設けられている。本実施例では、左右一対の取付支持部材80は、後部フレーム75の左右の端部に設けられており、それぞれ作業進行方向に対して横方向に間隔をおいて固定された2枚の取付支持板81から成る。
【0061】
取付支持部材80の2枚の取付支持板81のうち、作業進行方向に対して横方向の外端側の取付支持板81は、後部フレーム75の端部に溶着されており、作業進行方向に対して横方向の内側の取付支持板81は、後部フレーム75が嵌合する矩形の切り抜きが形成されており、後部フレーム75が嵌合して溶着されている。
【0062】
図9(a)及び図10(a)において、2枚の取付支持板81の上部には、2枚の取付支持板81間を橋絡するようにフック係合用ピン82が固定されている。また、2枚の取付支持板81の下部には、連結軸挿通孔84が形成されている。この2枚の取付支持板81の連結軸挿通孔84とローダ2のスナップヒッチ18の連結軸挿通孔26に連結軸83を通して、圃場作業機3を、ローダ2のリフトアーム10の先端に、スナップヒッチ18及び回転ブラケット15を介して装着可能である。
【0063】
取付支持板81とスナップヒッチ18の連結のための連結軸83は、例えば、ボルト83(連結軸83と同じ符号を付す。)であり、ボルト83をその一端側から取付支持板81の連結軸挿通孔84とスナップヒッチ18の連結軸挿通孔26に挿通し、ボルト83の一端にナットを螺着し固定する。必要に応じて、ナットの緩み止めとして、ボルト及びナットを貫通するピン孔を形成し、このピン孔に緩み止めピンを挿通する構成としてもよい。
【0064】
さらに、図10(a)に示すように、外側の取付支持板81の外側面には、掛け止め片43が回動可能に取り付けられており、この掛け止め片43は、主フレーム38の後面に設けられた掛け止め受け具44の凹部に係合可能である。
【0065】
掛け止め片43と掛け止め受け具44は、圃場作業機3又は農業機械1全体を搬送する際に、主フレーム38に対して、フード部材66及び後部フレーム75が作業進行方向に対して横方向に動いたりずれたりしないようにする機能を有する。
【0066】
(作用)
以上の構成から成る本発明に係る圃場作業機3及び農業機械1の実施例の作用について説明する。特に、本発明の特徴的構成の一つである圃場作業機3をローダ2のリフトアーム10に取り付ける取付構造を中心に、その取付のプロセス、及びそのような取付構造による作用等を中心に、以下説明する。
【0067】
圃場作業機3をローダ2のリフトアーム10に取り付ける際には、まず、ローダ2のリフトアーム10の前に圃場作業機3が位置するように、ローダ2を運転操作する。そして、リフトシリンダ12とダンプシリンダ13によってリフトアーム10を操作して、その先端に設けられたスナップヒッチ18を、図10(b)に示すように、圃場作業機3の取付支持板81に近づける。
【0068】
次に、リフトシリンダ12とダンプシリンダ13によって、リフトアーム10及びスナップヒッチ18を操作して、図10(c)に示すように、スナップヒッチ18を圃場作業機3の2枚の取付支持板81の間に挿入し、その凹条のフック25内に、取付支持部材80のフック係合用ピン82を係合させる。
【0069】
このようにフック25内にフック係合用ピン82を係合した状態で、ダンプシリンダ13を動作させて、図10(c)に示すように、スナップヒッチ18によってフック係合用ピン82を介して取付支持板81を上方に持ち上げるようにしながら、フック係合用ピン82を中心にしてスナップヒッチ18を取付支持板80に対して近づくように相対的に回動し、スナップヒッチ18の連結軸挿通孔26と2枚の取付支持板81の連結軸挿通孔84を互いに合わせるように調整する。
【0070】
ところで、圃場作業機3は、フード部材66が、その前端では、主フレーム38に対して、ピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)可能であり、その後端では、規制切欠き77に対して規制杆78が動き得る範囲内で、主フレーム38に対して左右上下に相対的に移動可能である。
【0071】
従って、上記のとおり、スナップヒッチ18を2枚の取付支持板81の間に挿入し、スナップヒッチ18の連結軸挿通孔26と2枚の取付支持板81の連結軸挿通孔84を互いに合わせる際の、微調整のための作業がし易くなる。
【0072】
互いに合わせられたスナップヒッチ18の連結軸挿通孔26と2枚の取付支持板81の連結軸挿通孔84に、図9に示すようにボルト83を挿入してから、ボルト83の先端にナットを螺着し、必要に応じて、ナットとボルトに形成されたピン孔にピンを入れて抜け止めする。このようにして、圃場作業機3をローダ2のリフトアーム10先端に設けられたスナップヒッチ18に取り付けられる。
【0073】
圃場において、ローダ2が圃場作業機3を前方に押すと、タイン35で耕土を鋤きながら左右に振り分け、その後方から左右に振り分けられた土をスクレーパ36で均す(ならす)。さらに、その後方から鎮圧輪37で耕土を全体的に均平化していく。
【0074】
このような圃場作業において、圃場の環境条件、例えば、圃場表面の凹凸、土質(硬さ、粘土、水分含有状態等)等によっては、タイン35、スクレーパ36及び鎮圧輪37を介して主フレーム38に外力が加わり、これらに、上下左右の動き、ピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)を引き起こさせる。
【0075】
このような外力が、仮に、タイン35、スクレーパ36及び鎮圧輪37を介して主フレーム38等から、直にフード部材66、後部フレーム75及び取付支持部材80等に伝達され、さらに、スナップヒッチ18に伝達されると、外力が作用するフード部材66、後部フレーム75及び取付支持部材80のいずれかにおいて、或いは取付支持部材80とスナップヒッチ18の取付構造部等において、破損が生じるおそれがある。
【0076】
また、タイン35、スクレーパ36及び鎮圧輪37を介して主フレーム38に加わる外力が、フード部材66、後部フレーム75及び取付支持部材80等を介して、ローダ2のリフトアーム10、場合によっては車輌5にも伝達すると、リフトアーム10を部分的に破損させたり、或いは車輌5を傾けさせたりして、ローダ2の運転操作作業の安定性、安全性等にも支障を及ぼす可能性もある。
【0077】
また、逆に、ローダ2のリフトアーム10、取付支持部材80、後部フレーム75及びフード部材66等が、タイン35、スクレーパ36及び鎮圧輪37を介して主フレーム38に生じる上下左右の動き、ピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)を拘束し押さえ込もうとすると、圃場の環境条件に順応してタイン35、スクレーパ36、鎮圧輪37が十分機能せず、圃場作業の安定性という観点から好ましくはない。
【0078】
しかしながら、本発明の圃場作業機3においては、フード部材66は、その前端では、ピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)可能に球面ブッシュ70を介して角棒64に取り付けられおり、その後端では、規制切欠き77に対して規制杆78が動き得る範囲内で、主フレーム38に対して相対的に、左右上下にある程度の自由度をもって移動可能である。
【0079】
従って、圃場作業において、上記圃場の環境条件で、タイン35、スクレーパ36、鎮圧輪37を介して主フレーム38に外力が加わり、上下左右の動き、ピッチング(縦揺れ)及びローリング(横揺れ)が生じても、これらの外力や、上下左右の動き、ピッチング及びローリング等は、直に、フード部材66、後部フレーム75及び取付支持部材80等に伝達することなく、ある程度の遊びをもって伝達する。
【0080】
そのために、圃場作業におけるローダ2運転操作作業の安定性、安全性を確保することが可能となり、圃場作業機3、ローダ2のリフトアーム10、及び圃場作業機3とリフトアーム10の連結する部分の構造等への損傷、破壊等を防止できる。
【0081】
また、タイン35、スクレーパ36、鎮圧輪37及び主フレーム38は、ローダ2及びフード部材66により、完全には拘束されず、ある程度の遊びをもって連結されているから、タイン35、スクレーパ36及び鎮圧輪37は、圃場の環境条件に沿うようにして機能して作業を行うことが可能となる。よって、圃場に対する作業の安定性、安全性も確保可能となる。
【0082】
なお、圃場作業機3のみ又は農業機械1全体(圃場作業機3をローダ2に連結した状態のもの)をトラック、トレーラ等で搬送する際に、或いは単なる移送目的で、ローダ2によって圃場作業機3を押して移動する際に、取付支持板81に回動可能に設けられた掛け止め片43(図6(a)、図9(a)、図10(a)等参照)を主フレーム38の後面に設けられた掛け止め受け具44の凹部に係合しておけば、搬送時又は移送時に横揺れや振動等が生じても、圃場作業機3をローダ2に対して、横方向にずれることなく搬送や移送ができる。
【0083】
以上、本発明に係る圃場作業機及び農業機械を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る圃場作業機及び農業機械は上記のような構成であるから、通常は、採集、運搬、穴掘り等の作業等に使用しているローダを、サブソイラ(心土粉砕機)、プラウ(鋤)、タイン、スクレーパ、鎮圧輪、溝掘り機、レベラー(整地・均平機)等の圃場用の作業具を備えた各種の圃場作業機の移動手段として適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 農業機械
2 ローダ
3 圃場作業機
4 リフトアーム部
5 車輌
6 車体フレーム
7 取付ブラケット
8 支持フレーム
10 リフトアーム
11 スナップ部
12 リフトシリンダ
13 ダンプシリンダ
14 左右のリフトアームの結合軸
15 回転ブラケット
16 クランク
17 コンロッド
18 スナップヒッチ
19 枢支軸
20 結合杆
21 支持杆
22 スタンド
25 凹状のフック
26 スナップヒッチの連結軸挿通孔
27、28 枢支用ピン
29 リフトアームの屈曲部
30 枢支用ピンの外套筒
35 タイン
36 スクレーパ
37 鎮圧輪
38 主フレーム
39 垂直フレーム
40 軸受
41 回動軸
42 螺旋杆
43 掛け止め片
44 掛け止め受け具
45 水平支持板
46 傾斜板
47 タイン水平支持杆
48 鋤片
49 取付用上部
50 鋤用下部
55 傾斜支持板
56 スクレーパ支持板
57 スクレーパ片
58 スクレーパ操作シリンダ
59 スクレーパ駆動ブラケット
61 前後支持板
62 前部フレーム
63 三角形の上下一対の固定板
64 角棒
65 左右一対の耳片
66 フード部材(連結用主部材)
67 インジケータ
68 ブラケット
69 垂下板
70 球面ブッシュ
71 球面ブッシュの貫通孔
72 連結軸
73 止めボルト
73’ ナット
74 耳片に溶着された円筒
75 後部フレーム
76 規制板
77 規制切欠き
78 規制杆
80 取付支持部材
81 取付支持板
82 フック係合用ピン
83 ボルト(連結軸)
84 取付支持の板連結軸挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業進行方向に対して横方向に延びるように配置された主フレームと、作業進行方向に延びるように配置された連結用主部材とを備え、主フレームに1種又は複数種の圃場用の作業具を取り付けて成る圃場作業機であって、
前記連結用主部材の前端部は、主フレームに対してピッチング及びローリング可能に取付けられており、連結用主部材の後端部には、作業進行方向に対して横方向に延びるように配置された後部フレームが取り付けられており、
前記後部フレームには、取付支持部材が固定されており、
前記取付支持部材は、その上部においてフック係合用ピンが固定されており、その下部において連結軸挿通孔が形成されており、
前記取付支持部材のフック係合用ピンに、ローダのリフトアームの前端に回動可能設けられたスナップヒッチのフックが係合されて、取付支持部材の連結軸挿通孔とスナップヒッチの連結軸挿通孔とが合わされて連結軸が挿通されることで、取付支持部材がスナップヒッチに取り付けられることを特徴とする圃場作業機。
【請求項2】
後部フレームには下方に延び、規制切欠きが形成された規制板が設けられており、
主フレームの後面には後方に延びる規制杆が突設されており、
規制杆は、規制切欠き内に入り、規制切欠きの範囲内で規制板に対して相対的に上下左右に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の圃場作業機。
【請求項3】
連結用主部材の前端部は、主フレームに固定された前部フレームに取り付けられた左右一対の耳片に球面ブッシュを介してピッチング及びローリング可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の圃場作業機。
【請求項4】
取付支持部材は、それぞれ互いに間隔をおいて後部フレームに平行に固定された2枚の取付支持板を備え、
フック係合用ピンは、2枚の取付支持板の上部において取付支持板間を橋絡するように固定されており、
取付支持部材の連結軸挿通孔は、2枚の取付支持板の下部に形成されていることを特徴とする請求項3記載の圃場作業機。
【請求項5】
取付支持部材は、後部フレームに互いに作業進行方向に対して横方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項4記載の圃場作業機。
【請求項6】
複数設けられている取付支持部材の少なくとも一つの取付支持部材を構成する2枚の取付支持板の一方の支持板には、掛け止め片が回動可能に取り付けられており、
主フレームの後面には凹部を有する掛け止め受け具が設けられており、
掛け止め片は、掛け止め受け具の凹部に係合可能であるように構成されていることを特徴とする請求項5記載の圃場作業機。
【請求項7】
主フレームに取り付けられる1種又は複数種の圃場用の作業具は、タイン、スクレーパ及び鎮圧輪のいずれか1種である、又はタイン、スクレーパ及び鎮圧輪が作業進行方向の前方から後方に向けて順次配置されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圃場作業機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の圃場作業機がローダのリフトアームの先端に取り付けられて成り、ローダにより圃場作業機を前方に押して移動させることにより圃場作業を行う構成であることを特徴とする農業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−167089(P2011−167089A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31837(P2010−31837)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(391057937)スガノ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】