説明

土壌処理装置

【課題】土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼の拡縮状態を制御、管理して土壌処理を確実に、又、土壌攪拌翼の損傷を抑制して安全に行える土壌処理装置を提供する。
【解決手段】回転半径方向に拡縮可能の土壌掘削刃ヘッド11、土壌攪拌翼12及び添加物吐出口111a〜111cを有する回転ヘッド1を備えた土壌処理装置Aであり、回転ヘッドも支持駆動装置2を備えており、回転ヘッド1は、掘削刃ヘッド11を支持する内側軸13と、土壌攪拌翼12を支持して内側軸13に昇降可能に外嵌された外側軸15と、外側軸15の昇降に連動させて掘削刃ヘッド11を縮小拡大させる連動機構と、外側軸15の昇降に連動させて土壌攪拌翼12を縮小拡大させる連動機構とを備え、回転ヘッドの支持駆動装置2は、土壌掘削刃ヘッド支持駆動部21と、外側軸支持昇降駆動部3と、外側軸回転駆動部22とを含んだ土壌処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重金属等で汚染されている汚染土壌を無害化処理したり、軟弱地盤を構造物構築に適する地盤に改良する等の土壌処理に用いる土壌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場跡地やゴミ処理場近辺の土地の土壌は重金属等で汚染されている場合がある。このように汚染された土地を住宅地、学校等の各種施設などに転用する場合、汚染土壌に含まれる汚染物質による人体への悪影響に十分注意を払わなければならない。
【0003】
こうした汚染土壌を有する土地を利用する場合、次のような方法で土壌を無害化する土壌処理が行われてきた。すなわち、汚染土壌を含む土地を1又は2以上に区画化し、各区画においてそれを囲む土留め壁(乃至遮水壁)を土中に構築し、該土留め壁(乃至遮水壁)で囲まれた土壌を掘削して地上へ取り出し、予め準備された地上のコンクリート枠壁等で囲まれた土壌処理用の場所へ運搬移入し、そこで該土壌に土壌処理用の添加物を添加し、撹拌して無害化処理したのち、このように処理された土壌を再びもとの位置へ埋め戻していた。
【0004】
また、かかる汚染土壌の浄化処理ではないが、軟弱地盤等の改良にあたっては、地上から改良処理対象土壌層へ向けて回転掘削ヘッドにて掘削、進行し、処理対象土壌層において該回転掘削ヘッドを介して土壌処理用添加物の添加を行い、該ヘッドを用いて該添加物と土壌との混合攪拌等の処理を行い、その後に回転掘削ヘッドを地上へ戻すことも行われいた。
【0005】
しかし、かかる汚染土壌処理によると、
(1)汚染された土壌を土留め壁(乃至遮水壁)を構築して掘り起こし、地上へ搬出しなければならず、地上には汚染土壌処理用の場所を設けなければならず、これらの作業は大がかりとなり、さらに地上への汚染土壌の搬出、土壌処理場所への汚染土壌の搬入、処理後の土壌の埋め戻し等に種々の土壌運搬、搬送用機器も必要となり、全体として、工数が増え、工期が長くなり、ひいては工費が高くつく。
(2)処理すべき汚染土壌は地表やそれに近い位置よりも深い位置にあることが多いが、処理する必要のない表層土壌までも掘り起こし、再び埋め戻さなければならない。従ってそれだけ作業や使用添加物等の無駄が多くなり、ひいては工費が無駄に、余分にかかってしまう。
(3)処理する必要のない安定地盤状態にある表層土壌までも掘り起こし、埋め戻すことになるので、埋め戻し後の土地表層での十分な地盤強度が得られなくなる。この問題を解消しようとすると、所定の地盤強度を得るために添加物としてセメント系固化材等を多く添加することが必要となり、それだけコスト高となる。
【0006】
また、軟弱地盤の改良処理等の場合においても、処理対象土壌は地表やそれに近い位置よりも深い位置にあることが多いが、その場合、回転掘削ヘッドが本来処理する必要のない安定地盤状態にある表層土壌或いは該表層土壌及びその近傍の土壌を通って処理対象土壌層まで掘削、進行し、処理後再び該表層土壌或いは該表層土壌及びその近傍の土壌を通って地上へ戻され、これにより、処理対象土壌層における回転掘削ヘッドによる土壌処理半径と同半径でもって表層土壌層等まで広範囲に掘削されることになり、その結果土地表層での十分な地盤強度が得られなくなる。この問題を解消しようとすると、所定の地盤強度を得るために添加物としてセメント系固化材等を多く添加することが必要となり、それだけコスト高となる。
【0007】
そこで、特開2002−248457号公報記載の発明は、土壌掘削刃ヘッド及びその上方に配置された土壌攪拌翼を有するとともに、土壌処理用添加物を土壌中へ注入するための添加物吐出口を有し、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼がいずれも回転半径方向に拡縮可能である回転ヘッドを備えた土壌処理装置を用いる土壌処理を提案している。
【0008】
特開2002−248457号公報で提案されている土壌処理では、前記回転ヘッドの掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼をともに縮小状態として地上から処理対象土壌層へ向けて、土壌を掘進し、該回転ヘッドが処理対象土壌層に到達すると、該掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼をともに拡大状態として処理対象土壌層の土壌を処理し(土壌掘削及び攪拌並びに土壌処理用添加物の土壌中への注入及び土壌との混合)、土壌処理後は、再び掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼をともに縮小状態として地上へ向けて退出させるようにしている。
【0009】
回転ヘッドにおける掘削刃ヘッドの拡縮は、掘削刃ヘッド開閉装置を用いて行い、土壌攪拌翼の拡縮については、処理対象土壌層において、土壌攪拌翼を掘削刃ヘッドの土壌掘削方向回転とは反対方向に回転駆動することで、土壌抵抗にて開姿勢をとらせて拡大し、処理対象土壌層へ至るまで、及び土壌処理後回転ヘッドを退出させるときには、土壌攪拌翼を掘削刃ヘッドの土壌掘削方向回転と同方向に回転させて土壌抵抗により閉姿勢をとらせて縮小させるようにしている。
【0010】
この土壌処理によると、土壌処理作業において土壌を地上へ搬出する必要がなく、土壌を殆ど地中にとどめておくことができるとともに処理対象土壌をそれがある原位置で処理することができ、例えば旧来の土壌を地上へ搬出し、処理後に埋め戻す汚染土壌処理と比べると、少ない工数、短い工期で、簡単安価に汚染土壌を処理できる。また、旧来の汚染土壌処理と比べると、作業の無駄、土壌処理用添加物の無駄等の無駄無く、それだけ安価に汚染土壌を処理できる。
【0011】
また、回転ヘッドは回転半径方向に拡縮可能であり、処理対象土壌層へ向けて掘進するとき、及び処理された土壌層から地上へ退出するときには、縮小状態に設定でき、従って、処理する必要のない地表、或いは地表及びその近傍の土壌について徒に掘削、攪拌することがない一方、処理対象土壌層においては回転ヘッドを拡大状態に設定でき、それにより広い範囲にわたり効率よく土壌を処理でき、これらにより、表層土壌或いは表層土壌及びその近傍の土壌についてはその地盤強度をできるだけ確保しつつより深層の土壌を処理できる。
【0012】
【特許文献1】特開2002−248457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特開2002−248457号公報に開示された土壌処理装置によると、土壌攪拌翼は、その回転に伴って発生する土壌抵抗により開閉(拡縮)させるものであるため、例えば処理対象土壌層の土壌の性状によっては、土壌攪拌翼を開いたり(拡大させたり)、閉じたり(縮小させたり)するに十分な土壌抵抗を土壌攪拌翼に与えることができず、その結果、土壌攪拌翼が半径方向に拡大しなかったり、拡大しても不十分であったりして、土壌攪拌及び土壌処理用添加物と土壌との混合が不可能或いは不十分となったり、或いは処理対象土壌層から回転ヘッドを退出させるにあたり、土壌攪拌翼を土壌抵抗により閉じさせる方向に回転させても、閉じなかったり、閉じても不十分であったりして、掘削刃ヘッドにより掘削されていなかった土壌に土壌攪拌翼が衝突して損傷する恐れもある。
【0014】
そこで本発明は、土壌掘削刃ヘッド及びその上方に配置された土壌攪拌翼を有するとともに、土壌処理用添加物を土壌中へ注入するための添加物吐出口を有し、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼がそれぞれ回転半径方向に拡縮可能である回転ヘッドを備えた土壌処理装置であって、土壌掘削刃ヘッドの拡縮状態だけでなく、土壌攪拌翼の拡縮状態も制御、管理することができ、それだけ目的とする土壌処理を確実に行える土壌処理装置を提供することを第1の課題とする。
また本発明は、かかる土壌処理装置であって、土壌攪拌翼の損傷を抑制して安全に土壌処理を行える土壌処理装置を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は前記第1の課題を解決するため、次の土壌処理装置を提供する。すなわち、
土壌掘削刃ヘッド及びその上方に配置された土壌攪拌翼を有するとともに、土壌処理用添加物を土壌中へ注入するための添加物吐出口を有し、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼がいずれも回転半径方向に拡縮可能である回転ヘッドを備えた土壌処理装置であり、
前記回転ヘッドを支持し、前記土壌掘削刃ヘッドの回転駆動及び拡縮駆動並びに前記土壌攪拌翼の回転駆動及び拡縮駆動を行う回転ヘッド支持駆動装置を備えており、
前記回転ヘッドは、
下端部に前記土壌掘削刃ヘッドを支持する内側軸と、
外側部位に前記土壌攪拌翼を支持し、前記内側軸に昇降可能に外嵌された外側軸と、
前記土壌掘削刃ヘッドを、前記外側軸の前記内側軸に対する上昇動作に連動させて縮小させて縮小姿勢におくことができ、下降動作に連動させて拡大させて拡大姿勢におくことができる第1連動機構と、
前記外側軸の前記内側軸に対する昇降動作に連動させて前記土壌攪拌翼を縮小拡大させる第2連動機構であって、該外側軸が該内側軸に対し上昇することで前記第1連動機構により前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると該土壌攪拌翼を縮小姿勢に維持することができ、該外側軸が該内側軸に対し下降することで前記第1連動機構により該土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると該土壌攪拌翼を拡大姿勢におくことができる第2連動機構とを含んでおり、
前記回転ヘッド支持駆動装置は、前記内側軸を支持することで前記土壌掘削刃ヘッドを支持するとともに該内側軸を介して該土壌掘削刃ヘッドを回転駆動する掘削刃ヘッド支持駆動部と、前記外側軸を支持して前記内側軸に対し昇降させることで、前記第1連動機構にて該土壌掘削刃ヘッドを、前記第2連動機構にて前記土壌攪拌翼を、それぞれ縮小拡大させる外側軸支持昇降駆動部と、前記外側軸を回転駆動することで前記土壌攪拌翼を回転駆動する外側軸回転駆動部とを含んでいる
土壌処理装置である。
【0016】
この土壌処理装置によると、例えば次のようにして土壌処理を行える。
まず、回転ヘッドを回転ヘッド支持駆動装置で支持した状態で処理対象土壌層上方の地上に配置する。
回転ヘッド支持駆動装置は例えば昇降装置に取り付ければよい。例えば地上の支柱に昇降可能に取り付ければよい。かくして回転ヘッドを該支柱に沿って昇降可能に配置できる。かかる支柱は自走車に搭載されているものでもよいし、地上に立設されたもの等でもよい。
【0017】
次いで、回転ヘッド支持駆動装置における掘削刃ヘッド支持駆動部にて回転ヘッドにおける内側軸を回転駆動することで土壌掘削刃ヘッドを回転させるとともに、外側軸回転駆動部にて回転ヘッドにおける外側軸を回転駆動することで土壌攪拌翼を回転させ、これらを下降させる。それにより回転ヘッドは地上から処理対象土壌層へ向けて、土壌をそれがある位置で掘削し、攪拌し、ほぐしながら進入せしめられる。このとき回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼は、いずれも縮小姿勢としておく。
【0018】
このように回転ヘッドを処理対象土壌層へ向けて進入させるとき、土壌掘削刃ヘッドは土壌掘削方向に回転させればよく、土壌攪拌翼については、土壌掘削刃ヘッドと同方向に回転させても、土壌掘削刃ヘッドとは反対方向に回転させてもよい。土壌掘削刃ヘッドと同方向に回転させる場合は、土壌掘削刃ヘッドと同速で回転させても、土壌掘削刃ヘッドとは異なる回転速度で回転させる等してもよい。
土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼の縮小は、外側軸支持昇降駆動部により、回転ヘッドの外側軸を内側軸に対し上昇させておくことで、第1連動機構により土壌掘削刃ヘッドを縮小姿勢におき、第2連動機構により土壌攪拌翼を縮小姿勢におくことで行える。
【0019】
回転ヘッドが処理対象土壌層に到達すると、そこで、土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼をいずれも拡大姿勢とし、土壌処理に供する。土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼の拡大は、外側軸支持昇降駆動部により、回転ヘッドの外側軸を内側軸に対し下降させることで、第1連動機構により土壌掘削刃ヘッドを拡大姿勢におき、第2連動機構により土壌攪拌翼を拡大姿勢におくことで行える。
【0020】
この土壌処理においても、土壌掘削刃ヘッドは、掘削刃ヘッド支持駆動部にて土壌掘削方向に回転させる。
土壌攪拌翼については、外側軸回転駆動部にて回転駆動する。この土壌処理時には、土壌攪拌翼は、土壌の効率的な攪拌、後述する土壌処理用添加物と土壌との効率的な混合のために、土壌に剪断力が加わるように、土壌掘削刃ヘッドとは反対方向に回転させるか、或いは同方向に、且つ、土壌掘削刃ヘッドとは異なる回転速度で回転させてもよい。
【0021】
かくして、回転ヘッドは前記進入時よりも拡大された、従ってより広い範囲にわたり掘削等できる状態で、処理対象土壌をそれがある位置で掘削し、攪拌する。
また、土壌処理用の添加物を回転ヘッドの添加物吐出口へ供給し、そこから処理対象土壌中へ注入し、該添加物と該土壌を混合攪拌する。
添加物吐出口は、回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッドに設ける場合を代表例として挙げることができる。
【0022】
このようにして処理対象土壌を処理すると、その後、外側軸支持昇降駆動部により、回転ヘッドの外側軸を内側軸に対し上昇させることで、第1連動機構により土壌掘削刃ヘッドを縮小姿勢におくとともに、第2連動機構により土壌攪拌翼を縮小姿勢におき、これらを回転駆動しつつ、地上までの途中の土壌を該土壌がある位置で攪拌しながら退出させる。このときの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼の回転方向については、特に制限はないが、例えば、土壌掘削刃ヘッドは土壌掘削方向に、土壌攪拌翼は土壌掘削刃ヘッドと同方向に又は反対方向に回転させる場合を挙げることができる。
【0023】
なお、土壌の掘削、攪拌においては必要に応じ、掘削、攪拌を円滑化するための水等を添加注入してもよい。
土壌処理における添加物の投入タイミングについては、処理対象土壌層の一通りの掘削、攪拌が終わったあとでもよいが、処理対象土壌層の掘削、攪拌処理の進行中に添加物の添加を開始してもよい。要するに土壌を処理できる適当なタイミングを選んで添加すればよい。
【0024】
添加物と処理対象土壌の混合攪拌は回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼を回転させることで行える。かかる混合攪拌のタイミングについても、処理対象土壌と添加物との混合攪拌を行うに支障のないタイミングであればよく、代表的には、回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼を回転させつつ添加物を添加して混合攪拌を行う場合を例示できる。
【0025】
いずれにしても、本発明に係る土壌処理装置は、土壌処理用添加物を前記回転ヘッドの添加物吐出口へ供給する添加物供給装置を備えていてもよい。
また、前記回転ヘッドは前記添加物吐出口を複数有していてもよく(例えば少なくとも三つ有していてもよく)、前記添加物供給装置は、該複数の添加物吐出口のそれぞれに対し該添加物吐出口に連通する、土壌処理用添加物の供給路を有していてもよい。
【0026】
前記土壌掘削刃ヘッドとしては、該ヘッドの少なくとも一部が、その一端部で内側軸に対し回動可能に連結され、他端部(自由端部)が上下方向に回動して閉じ姿勢又は開き姿勢をとることができる可動部とされており、該可動部の開閉により土壌掘削刃ヘッド全体が回転ヘッド半径方向に拡縮できるものを例示できる。
【0027】
かかる土壌掘削刃ヘッドを採用する場合の、構造簡単な第1連動機構として、
前記内側軸とともに回転可能且つ該内側軸に対し昇降可能に該内側軸に設けられ、前記外側軸の下端部に、該下端部に対し回動可能に支持されたスライダと、
該スライダを前記土壌掘削刃ヘッドの可動部に連結するリンク機構であって、前記外側軸の昇降に伴い該スライダが前記内側軸に対し昇降することで前記土壌掘削刃ヘッドの可動部を閉じ又は開いて該土壌掘削刃ヘッドを縮小又は拡大させるリンク機構とを含むものを例示できる。
【0028】
前記土壌攪拌翼としては、構造簡単なものとして、一端部で前記外側軸の外側部位に回動可能に連結されて他端部(自由端部)が上下方向に回動可能とされていることで、回転ヘッド半径方向に縮小拡大可能であるものを例示できる。
【0029】
かかる土壌攪拌翼を採用する場合の、前記第2連動機構として次のものを例示できる。 前記内側軸及び外側軸間に配置された、該内側軸及び外側軸に対し相対的に昇降可能の中間部材及び該中間部材位置制御バネと、
前記土壌攪拌翼の一端部から、前記外側軸壁を貫通して前記中間部材へ延びる拡縮規制アームとを含んでおり、
前記中間部材は、前記外側軸壁方向に開放された凹部を有し、該凹部に前記土壌攪拌翼の拡縮規制アームを受入れ係合させており、前記内側軸に対する下降限度が該内側軸上の下限ストッパにて定められており、
前記中間部材位置制御バネは、
前記中間部材に下方へ向け押圧力を付与し、前記外側軸が前記内側軸に対して上昇することで前記土壌攪拌翼の拡縮規制アーム及び該アームが係合した前記中間部材が引き上げられるとともに前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると、前記中間部材を前記内側軸に対する上昇限度におくとともに該中間部材の凹部に前記拡縮規制アームを相対的に下方へ押圧させた状態で前記土壌攪拌翼を縮小姿勢に維持し、前記外側軸が前記内側軸に対して下降することで前記土壌攪拌翼の拡縮規制アームが下降するとともに前記土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると、前記中間部材を前記内側軸上の下限ストッパへ押圧するとともに該中間部材の凹部に前記拡縮規制アームを相対的に上方へ押圧させて前記土壌攪拌翼を拡大姿勢におく、そのような連動機構である。
【0030】
かかる中間部材位置制御バネの例として、
前記内側軸上に設けたバネ受け部と前記中間部材との間に嵌装され、前記外側軸の内側軸に対する上昇により前記土壌攪拌翼の拡縮規制アーム及び該アームが係合した前記中間部材が引き上げられるとともに前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると、該中間部材に押圧されて該中間部材を前記上昇限度におく第1の圧縮バネと、
前記外側軸上に設けたバネ受け部と前記中間部材との間に嵌装され、前記外側軸の内側軸に対する下降により前記土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると、前記内側軸上の下限ストッパに当接する該中間部材に該外側軸上のバネ受け部にて押圧される第2の圧縮バネとを含んでいるものを例示できる。
【0031】
中間部材位置制御バネとしては、前記内側軸上に設けたバネ受け部と前記中間部材との間に嵌装され、前記外側軸の内側軸に対する上昇により前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると、該中間部材に押圧されて該中間部材の前記上昇限度を定め、該外側軸の内側軸に対する下降により前記土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると、該内側軸上の前記下限ストッパに当接する該中間部材に該内側軸上のバネ受け部にて押圧される、そのような一つの圧縮バネを含むものでもよい。
【0032】
しかし、前記のように第1、第2の圧縮バネを採用して、それらバネを次のようなバネとすることで、前記本発明の第2の課題を解決し得る、土壌攪拌翼の損傷を抑制して安全に土壌処理を行える土壌処理装置を提供することができる。
【0033】
すなわち、前記第1の圧縮バネ及び前記第2の圧縮バネは、前記外側軸の内側軸に対する下降により前記土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼を縮小姿勢から拡大姿勢へ向け拡大させるとき、該土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢にある状態から拡大開始した後に該土壌攪拌翼が拡大開始し、且つ、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼のそれぞれの拡大途中においては、該土壌攪拌翼の拡大途中半径が該土壌掘削刃ヘッドの拡大途中半径を超えないように該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼が拡大姿勢へ向け拡大していくように、前記中間部材位置を制御するバネとする。
【0034】
かくして、未だ土壌掘削刃ヘッドにより掘削されていない土壌部分に、土壌掘削刃ヘッドに先行して土壌攪拌翼が接触して損傷するといった事態の発生を抑制して、それだけ安全に土壌処理を行える。
【0035】
以上説明した土壌処理装置によると、汚染土壌処理作業において土壌を地上へ搬出する必要がなく、土壌を殆ど地中にとどめておくことができるとともに処理対象土壌をそれがある原位置で処理することができ、例えば旧来の、汚染土壌を地上へ搬出し、処理後に埋め戻す汚染土壌処理と比べると、少ない工数、短い工期で、簡単安価に汚染土壌を処理できる。また、旧来の汚染土壌処理と比べると、作業の無駄、土壌処理用添加物の無駄等の無駄無く、それだけ安価に汚染土壌を処理できる。
【0036】
さらに、前記回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼は回転ヘッドの回転半径方向に拡縮可能であり、処理対象土壌層へ向けて進入させるとき、及び処理された土壌層から地上へ退出させるときには、縮小状態に設定でき、従って、処理する必要のない地表、或いは地表及びその近傍の土壌について徒に掘削、攪拌することがない一方、処理対象土壌層においては回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼を拡大状態に設定でき、それにより広い範囲にわたり効率よく土壌を処理でき、これらにより、表層土壌或いは表層土壌及びその近傍の土壌についてはその地盤強度をできるだけ確保しつつより深層の土壌を処理できる。
【0037】
また、本発明に係る土壌処理装置によると、回転ヘッドの外側軸の内側軸に対する昇降駆動を外側軸昇降駆動部により行うことができるので、例えば地上において、回転ヘッドにおける外側軸の内側軸に対する昇降量を制御、管理することができ、それにより、土壌掘削刃ヘッドの拡縮状態は勿論のこと、土壌攪拌翼の拡縮状態も制御、管理することができ、それだけ目的とする土壌処理を確実に行える。
また、既述のとおり、土壌攪拌翼が損傷するといった事態の発生を抑制して、それだけ安全に土壌処理を行えるようにすることも可能である。
【0038】
なお、本発明に係る土壌処理装置による土壌処理においては、処理対象土壌層における土壌処理において、必要に応じ、回転ヘッドを地上へ一旦退出させ、処理対象土壌をサンプリングして(試料として採取して)土壌処理状態を検査することができる。このとき、回転ヘッドの土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼は縮小姿勢として地上へ退出させる。土壌処理のために再び回転ヘッドを処理対象土壌層へ進入させ、さらなる土壌処理を行うときの手順は当初の回転ヘッド進入等の手順と同様である。
【0039】
本発明に係る土壌処理装置が対象とする土壌処理には、汚染土壌の浄化処理等の土壌浄化処理、軟弱地盤の改良処理等の地盤改良処理等が含まれる。
土壌浄化処理に用いる添加物(添加剤)は、土壌汚染物質や浄化した土壌、土地の利用の仕方などによって選ばれるものであって、特に限定されるものではない。
例えば、アルカリ〔 Ca(OH)2、CaO 、NaOH、Mg(OH)2 など〕、酸(H2SO4
HCl 、H3PO4 など)、塩〔CaCO3 、Ca(HCO3)2 、Na2CO3、NaHCO3、CaCl2
NaHSO4、CaSO4 、Na4SiO4 、Na3PO4、Na2HPO4 、NaH2PO4 など〕、酸化剤〔H2O2、KMnO4 、NaMnO4、O3、NaClO 、Ca(ClO)2、Na2S2O4 など〕、還元剤〔Na2SO3、NaHSO3、Na2S2O3 、アスコルビン酸(Na 塩) 、FeCl2 、FeSO4 、鉄粉など〕、不溶化剤〔Fe(II)塩、Fe(III) 塩、Al塩、Mg塩、Na2S、CaS など〕、キレート剤(ジチオカルバミン酸塩系化合物、トリアジン系化合物など)、固化剤(セメント、焼きセッコウ、ポゾラン、珪酸塩など)、微生物、微生物の栄養剤などである。
これらを単独あるいは複数用いることができる。複数用いる場合、これらを同時に添加する場合と順次添加する場合がある。順次添加する場合、その添加順序は特に限定されるものではない。また、これらの添加形態は溶液、懸濁液、粉体、固体、気体のいずれでもよい。添加量も特に限定されるものではない。
また、地盤改良に採用できる添加物として、セメント系固化材、石灰系固化材、石こう系固化材等を例示できる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように本発明によると、土壌掘削刃ヘッド及びその上方に配置された土壌攪拌翼を有するとともに、土壌処理用添加物を土壌中へ注入するための添加物吐出口を有し、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼がそれぞれ回転半径方向に拡縮可能である回転ヘッドを備えた土壌処理装置であって、土壌掘削刃ヘッドの拡縮状態だけでなく、土壌攪拌翼の拡縮状態も制御、管理することができ、それだけ目的とする土壌処理を確実に行える土壌処理装置を提供することができる。
また本発明によると、かかる土壌処理装置であって、土壌攪拌翼の損傷を抑制して安全に土壌処理を行える土壌処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1及び図2は本発明に係る土壌処理装置の1例Aを概略的に示している。図1は回転ヘッド1を縮小状態として示す図であり、図2は回転ヘッド1を拡大状態として示す図である。図3及び図4はいずれも回転ヘッド1の拡大断面図であり、図3は回転ヘッド1が縮小姿勢をとった状態を、図4は回転ヘッド1が拡大姿勢をとった状態を示している。図5は回転ヘッドが縮小状態から拡大状態へ移行する経過状態を示す図である。
【0042】
図示の土壌処理装置Aは、回転ヘッド1、回転ヘッド1の支持駆動装置2及び土壌処理用添加物の添加装置4等を備えている。
〔1〕回転ヘッド1について(図1〜図5参照)
回転ヘッド1は、土壌掘削刃ヘッド11及びその上方に配置された土壌攪拌翼12を備えている。土壌掘削刃ヘッド11は、土壌掘削刃11aを備えた固定部111と、土壌掘削刃11bを備えた可動部112とからなっている。固定部111は内側軸13の下端に固定的に取り付けられている。固定部111の直ぐ上で内側軸13にリング部材113が嵌合固定されており、可動部112はその一端部が部材113に回動可能に連結されていることで、内側軸13に回動可能に連結されている。
【0043】
内側軸13には、掘削刃ヘッド11より上方部位に、内側軸13に対し昇降可能にスライダ14が嵌合されており、また、内側軸13には、内側軸との間に間隙をおいて筒状の外側軸15が昇降可能に嵌合されている。スライダ14は、内側軸13上に設けたキーK(図4参照)に沿って昇降可能であるとともに該キーにより内側軸13とともに回転可能である。
【0044】
スライダ14は外側軸15の下端部151に、外側軸15に対し相対的に回動可能に抱かれて、外側軸15に支持されている。かくして、外側軸15が内側軸13に対し昇降することでスライダ14も内側軸13に対して昇降する。
【0045】
掘削刃ヘッド11の可動部112は、図6に示すように、3本あり、それらは内側軸13を中心として等中心角度間隔で放射状に配置されている。なお、図1、図2では、理解を容易にするため、可動部112を左右に対をなすが如く示してあるが、実際には,図3〜図6に示すように、120度間隔で放射状に設けられている。各可動部112の根元に近い部位に対リンク114の下端部が回動可能にピン連結されており、該対リンクの上端部がスライダ14に回動可能にピン連結されている。
【0046】
かくして、外側軸15が内側軸13に対して上昇すると、スライダ14も上昇し、それにより掘削刃ヘッド11の各可動部112が対リンク114に引っ張られて上方へ回動して閉じ、掘削刃ヘッド11は、全体として、回転ヘッド半径方向に縮小した姿勢をとることができる。外側軸15が内側軸13に対して下降すると、スライダ14も下降し、それにより掘削刃ヘッド11の各可動部112が対リンク114に押され、下方へ回動して開き、掘削刃ヘッド11は、全体として、回転ヘッド半径方向に拡大した姿勢をとることができる。
【0047】
このことから分かるように、スライダ14及び対リンク114は、外側軸15の昇降に連動して掘削刃ヘッド11を縮小拡大させる連動機構を構成している。
なお、掘削刃ヘッド11の固定部111には、三つの添加物吐出口111a、111b及び111cがそれぞれ設けられている。
【0048】
土壌攪拌翼12は、図4に示すように、上下3段に設けられている。図4において、中段の土壌攪拌翼12(12b)は鎖線で示してある。図4において、各段の土壌攪拌翼12は、いずれも外側軸15から左右に直線状に、且つ、外側軸15のまわりの角度的ずれが無い状態で延びるかのごとく示してあるが、実際には、土壌攪拌翼を上方から見た図7に示すように、上中下の各段の2本の土壌攪拌翼12は外側軸15を間にして対をなすように互いに反対方向に延びており、且つ、上段の一対の土壌攪拌翼12(12a)に対し、中段の一対の土壌攪拌翼12(12b)は外側軸15のまわりに60度ずれており、下段の一対の土壌攪拌翼12(12c)は中段の一対の土壌攪拌翼12bに対し、さらに60度ずれている。従って、上方又は下方から見ると、合計6本の土壌攪拌翼12が外側軸15のまわりに60度の等中心角度間隔で放射状に配置されている。
【0049】
土壌攪拌翼12の実際の配置は以上のとおりであるが、各部の説明を容易にし、理解を容易にするため、図1から図5においては、中段の一対の土壌攪拌翼12(12b)の図示を省略し、或いは破線で示し、上下各段の一対の土壌攪拌翼12が、いずれも外側軸15から左右に直線状に、且つ、外側軸15のまわりの角度的ずれが無い状態で延びるかのごとく示してある。
【0050】
内側軸13と外側軸15との間には、中間部材16、第1圧縮バネ17及び第2圧縮バネ18が配置されている。
中間部材16は、中央円筒孔161を有しているとともに、凹溝部162が上下3段に、間隔を開けて周設されたものである。各凹溝部162は外側軸15に向け横方向に開放されている。中央円筒孔161の内面には、円筒形状の摺動用部材161aが設けられている。この中間部材16は、摺動用部材161aを設けた中央円筒孔161の部分で内側軸13に外嵌されており、内側軸13及び外側軸15に対し、相対的に昇降可能である。また、中間部材16は、その下端に、内側軸13に対し昇降可能に嵌合されたリング部材163を保持している。このリング部材163は、後述するように、中間部材16が内側軸13に沿って下降したとき、前記内側軸13上のキーKに当接して、該キーKとともに中間部材16の下降限度を定める。
【0051】
前記の各土壌攪拌翼12は、その一端部(根元部分)が、外側軸15の外面から横方向に突設された受け部材120に回動可能にピン連結されており、これにより、翼12の他端部(自由端部)が上下方向に回動して、図1及び図3に示すように、外側軸15に近く閉じたり、図2及び図4に示すように、外側軸15に対し略90度の姿勢で開いたりでき、このように、回転ヘッド1の回転半径方向に縮小、拡大可能である。
【0052】
また、各土壌攪拌翼12の一端部には、拡縮規制アーム121が、翼12とは反対方向へ、且つ、翼12に対し、上方向回りに、90度より小さい角度をなして、突設されている。この拡縮規制アーム121は、外側軸15の壁に設けられた窓部を通って外側軸15内へ延び、前記中間部材16の凹溝部162内へ嵌入、係合している。
さらに言えば、上段翼12(12a)の拡縮規制アーム121は、中間部材16の上段凹溝部162内へ嵌入し、中段翼12(12b)の拡縮規制アーム121は、中間部材16の中段凹溝部162内へ嵌入し、下段翼12(12c)の拡縮規制アーム121は、中間部材16の下段凹溝部162内へ嵌入している。
上下に隣り合う凹溝部162の間の凹所162’には、必要に応じ、グリース等の潤滑剤或いは摺動部材を配置してもよい。
【0053】
なお、中間部材16の凹溝部162の底部には、各拡縮規制アーム121に対応させて突起部16a(図7参照)を突設してあり、後述するように、外側軸15が回転駆動されて土壌攪拌翼12が回転するとき、アーム121が該突起部16aに係合することで、中間部材16は内側軸13を中心に回転する。
【0054】
第1圧縮バネ17は、本例では、内側軸13に外嵌された圧縮コイルバネであり、内側軸13の上部の太径部131の段差下面で提供されるバネ受け部132と中間部材16の上端との間に配置されている。第1圧縮バネ17は、図3に示すように、土壌掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12が縮小姿勢におかれると、圧縮限度まで圧縮される。
【0055】
第2圧縮バネ18は、本例では、外側軸15に内嵌され、且つ、第1圧縮バネ17の外側に外嵌された圧縮コイルバネであり、外側軸15の内側に形成された段差部により提供されるバネ受け部152と中間部材16の上端との間に配置されている。第2圧縮バネ18は、図4に示すように、土壌掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12が拡大姿勢におかれると、圧縮限度まで圧縮される。
これら第1、第2のバネ17、18はいずれも中間部材16に下方への押圧力を付与するバネである。
【0056】
中間部材16には円筒形状のバネカバー164が立設されており、その上端には、本例ではゴム製の弾性リング165を取り付けてある。リング165は、土砂侵入防止のためのもので、外側軸15の内面及び内側軸13の太径部131の外面に摺動可能である。バネカバー164は、バネ18への土砂侵入を防止するためのものである。
【0057】
既述のとおり、掘削刃ヘッド11は、外側軸15を内側軸13に対して上昇させると、図1及び図3に示すように、閉じて縮小姿勢をとり、下降させると、図2及び図4に示すように、開いて拡大姿勢をとる。
【0058】
掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12が図3及び図5(A)に示すように縮小姿勢をとっている状態から、外側軸15を内側軸13に対して下降させると、外側軸15に連結された各土壌攪拌翼12も引き下げられるが、このとき、外側軸15が下降するにつれ、第1バネ17は次第に伸びて中間部材16を下方へ押圧する力を減じていく一方、第2バネ18は次第に圧縮され、中間部材16を下方へ押圧する力を増していく。かくして、外側軸15が下降するとき、外側軸15より中間部材16が先に下降しようとし、それにより、中間部材16の凹溝部162の上側内面が拡縮規制アーム162を下方へ押圧した状態が維持され、かくして、図5(B)に示すように、土壌攪拌翼12は未だ閉じて縮小姿勢を保ったまま、掘削刃ヘッド11が開き始める。
【0059】
このように掘削刃ヘッド11が開き始め、外側軸15がさらに下降すると、図5(C)及び図5(D)に示すように、掘削刃ヘッド11はさらに開き、それにつれ、土壌攪拌翼12も開き始め、さらに開いていく。このとき、図5(C)及び図5(D)に示すように、土壌掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12のそれぞれの拡大途中においては、土壌攪拌翼12の拡大途中半径R12c、R12dは掘削刃ヘッド11の拡大途中半径R11c、R11dを超えない。
【0060】
外側軸15がさらに下降することで掘削刃ヘッド11が拡大姿勢をとる直前には、さらに圧縮された第2バネ18が中間部材16を強く下方へ押圧して該中間部材下端のリング部材163を内側軸13上の、下限ストッパを兼ねるキーKに当接させ、それにより中間部材16を下降限度におく。このように中間部材16が下降限度に置かれた状態からさらに外側軸15が下降すると、掘削刃ヘッド11は拡大姿勢をとる。また、外側軸15の該下降により各土壌攪拌翼12も引き下げられ、それにより、拡縮規制アーム121が、既に下降停止された中間部材16の凹溝部162の下側内面に係合して相対的に持ち上げられ、それにより土壌攪拌翼12が開き始め、図4及び図5(E)に示すように、掘削刃ヘッド11が拡大姿勢をとると、各土壌攪拌翼12も同時的に拡大姿勢をとり、その拡大姿勢が維持される。
本例では、掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12が拡大姿勢をとるとき、第2バネ18は、そのコイルが接触しあって圧縮限度をとる。一方、第1バネ17はほぼ自然長となる。
【0061】
掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12が図4及び図5(E)に示すように拡大姿勢をとっている状態から、外側軸15を内側軸13に対して上昇させ始めると、掘削刃ヘッド11は閉じ始めるとともに、外側軸15に連結された各土壌攪拌翼12が引き上げられ始める。このとき、中間部材16は未だ第2バネ18にて下方へ十分な押圧を付与された状態にあり、かくして、各土壌攪拌翼12から中間部材16の凹溝部162内へ嵌入している拡縮規制アーム121は凹溝部162の上側内面に係合し、相対的に下方へ押圧され、それにより、土壌攪拌翼12も閉じ始め、さらなる外側軸15の上昇により、掘削刃ヘッド11よりも早く縮小姿勢をとる。
【0062】
さらに外側軸15を上昇させると、それにつれ掘削刃ヘッド11はさらに閉じていくとともに各土壌攪拌翼12が引き上げられる。このとき、第2バネ18は次第に伸びて中間部材16を下方へ押圧する力を減じていく一方、第1バネ17は次第に圧縮され、中間部材16を下方へ押圧する力を増していく。かくして、外側軸15がさらに上昇することで各土壌攪拌翼12がさらに引き上げられていく間も、中間部材16に下方への押圧力が付与され、それにより土壌攪拌翼12から中間部材16の凹溝部162内へ嵌入した拡縮規制アーム121が凹溝部162の上側内面へ係合する状態が維持され、各土壌攪拌翼12は縮小姿勢を維持し、また、中間部材16がバネ17の弾性力に抗して引き上げられていく。
【0063】
さらに外側軸15が上昇すると、図3及び図5(A)に示すように、掘削刃ヘッド11が縮小姿勢をとり、このとき、各土壌攪拌翼12は既に縮小姿勢をとっており、その姿勢に維持される。このとき、本例では、第1バネ17が、それを構成するコイルが接触しあった圧縮限度となり、それにより、中間部材16、ひいては外側軸15及びそれに連結された土壌攪拌翼12が上昇限度に置かれる。一方、第2バネ18は略自然長となる。
【0064】
以上の説明から分かるように、中間部材16、第1及び第2のバネ17、18並びに各土壌攪拌翼12の拡縮規制アーム121は、外側軸15の昇降動作に連動させて土壌攪拌翼12を縮小拡大させる連動機構を構成している。
【0065】
〔2〕回転ヘッド1の支持駆動装置2について。
回転ヘッド支持駆動装置2は、図1、図2に示すように、
内側軸13を支持することで掘削刃ヘッド11を支持するとともに該掘削刃ヘッド11を土壌掘削方向に回転駆動する掘削刃ヘッド支持駆動部21、
外側軸15を支持して内側軸13に対し昇降させることで掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12を縮小拡大させる外側軸支持昇降駆動部3、
外側軸15を回転駆動する外側軸回転駆動部22等を含んでいる。
【0066】
掘削刃ヘッド支持駆動部21は、内側軸13に嵌合され、ピン状キーKa(図3、図4参照)の挿入により該内側軸に接続された内側中間軸130及び該中間軸130をボックス継ぎ手20(図8も参照)等を介して回転駆動するモータM1等からなっている。
【0067】
さらに説明すると、中間軸130は図8に示すように中空管軸からなり(内側軸13も中空管軸である)、その上端がボックス継ぎ手20の下側部材202に接続されている。そしてボックス継ぎ手20の上側部材201の断面形状6角形の上端部201’が、図1、図2に示すように、モータM1の回転軸msとの継ぎ手200の断面形状6角形穴に差し込まれ、キーK1で抜け止めされている。
【0068】
ボックス継ぎ手20の下側部材202は断面形状6角形であり、上側部材201の下端部の断面形状6角形の穴に内嵌され、キーK2で抜け止めされている。かくして、内側軸13は中間軸130、ボックス継ぎ手20等を介してモータM1に支持されており、モータM1を運転することで、ボックス継ぎ手20を介して内側中間軸130及び内側軸13を回転させ、掘削刃ヘッド11を土壌掘削方向に回転駆動することができる。
【0069】
外側軸回転駆動部22は、外側軸15に接続された筒状の外側中間軸150、ギアボックスGB、モータM2等からなっている。
さらに説明すると、ギアボックスGBはモータM1に一対の油圧作動のピストンシリンダ装置PCにて吊り下げ支持されている。ギアボックスGB内には大歯車G1が回転可能に設けられており、これに前記の外側中間軸150の上端が接続固定されている。またギアボックスGB内には大歯車G1に噛み合う小歯車G2が設けられており、これはボックスGBに搭載されたモータM2にて正逆回転駆動可能である。掘削刃ヘッド駆動軸(内側軸)13に接続された内側中間軸130やボックス継ぎ手20はギアボックスGB及びその中の大歯車G1を貫通でき、それらに対し回転可能且つ昇降可能となっている。
【0070】
モータM2を運転することで、小歯車G2を回し、さらには大歯車G1回転させて中間軸150及び外側軸15を回し、それにより土壌攪拌翼12を掘削刃ヘッド11の土壌掘削方向回転と同方向にも反対方向にも回転駆動することができる。
【0071】
各ピストンシリンダ装置PCは図示省略の油圧回路に接続されており、全体的に伸長又は短縮動作させることができる。各ピストンシリンダ装置PCを伸長させると、図2に示すように、ギアボックスGB及び大歯車G1並びに該歯車に接続された中間軸150及びこれに接続支持された外側軸15を内側軸13に対し下降させることができ、それにより、図4に示すように、掘削刃ヘッド拡縮用のスライダ14を下降させて掘削刃ヘッド11を拡大させることができる。各土壌攪拌翼12も拡大させることができる。
【0072】
一方、各ピストンシリンダ装置PCを縮めると、図1に示すように、ギアボックスGB及び大歯車G1並びに該歯車に接続された中間軸150及びこれに接続支持された外側軸15を内側軸13に対し上昇させることができ、それにより掘削刃ヘッド拡縮用のスライダ14を上昇させて掘削刃ヘッド11を縮小させることができる。各土壌攪拌翼12も縮小させることができる。
このことから分かるように、ピストンシリンダ装置PC、ギアボックスGB、外側中間軸150等は、外側軸支持昇降駆動部3を構成している。
【0073】
以上説明したように、回転ヘッド支持駆動装置2は、回転ヘッド1の掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12を、回転半径方向に拡大された拡大姿勢として、該掘削刃ヘッド11を土壌掘削方向に、土壌攪拌翼12を該掘削刃ヘッドとは反対方向に回転駆動することができる。
また、掘削刃ヘッド11は内側軸13、内側中間軸130及びボックス継ぎ手20を介してモータM1に支持されている。土壌攪拌翼12は外側軸15、外側中間軸150、大歯車G1、ギアボックスGB、ピストンシリンダ装置PCを介してモータM1に支持されている。
【0074】
そしてモータM1の背面には、図9に示すようにスライダSLが固定されており、このスライダSLは自走車Vに搭載された支柱CL上のレールRLに沿って昇降できる。また、外側中間軸150が支柱CLから突出する軸受け部SPにて回転可能、昇降可能に支持される。さらに、モータM1の頂部には滑車装置m1が搭載されており、この滑車装置m1と支柱上の滑車装置m2及び図示省略のウインチ等によってモータM1を、従って回転ヘッド1等を昇降させることができる。すなわち支柱CL、スライダSL、軸受け部SP、滑車装置m1、m2等は回転ヘッド支持駆動装置2を昇降させる装置を構成している。支柱CLは自走車V上の油圧作動のピストンシリンダ装置VPCにより姿勢制御できる。
【0075】
〔3〕土壌処理用添加物供給装置4について
添加物供給装置4は、図1、図2及び図8に示すように、モータM1の回転軸ms部分に設けられたそれ自体は既に知られているスイベル装置31及びボックス継ぎ手20の上側部材201の中間部に設けられたそれ自体は既に知られているスイベル装置32とを含んでいる。
【0076】
スイベル装置31は、モータ回転軸msに相対的に回転可能に外嵌されてモータM1に固設された筒部材311の内周面に環状凹溝311aを形成し、該凹溝の一か所を筒部材311の外周面へ貫通させ、そこに第1添加物供給ホースH1を接続する一方、モータ回転軸ms中に一端が環状凹溝311aに臨み、他端がボックス継ぎ手20の上側部材201の上端201’に臨む添加物流通孔312を形成したものである。
【0077】
ボックス継ぎ手20の上側部材201及び下側部材202にはモータ回転軸の添加物流通孔312に連通する孔2011、2021が貫通している。下側部材202の孔2021には第1添加物の流通管P1が接続され、これは内側中間軸130及び内側軸13中を通って掘削刃ヘッド11の第1添加物吐出口111aに接続されている(図3及び図4も参照)。
【0078】
スイベル装置32は、ボックス継ぎ手20の上側部材201の中間部分に上下のベアリングBRを介して相対的に回転可能に外嵌する筒状部材321の内周面に上側環状凹溝321a及び下側環状凹溝321bを形成し、上側凹溝321aの一か所を筒状部材321の外周面へ貫通させ、そこに第2添加物供給ホースH2を接続するとともに、下側凹溝321bの一か所を筒状部材321の外周面へ貫通させ、そこに第3添加物供給ホースH3を接続する一方、上側部材201の中間部分に、一端が環状凹溝321a、321bに臨み、他端が下側部材202の上端に臨む添加物流通孔322、323をそれぞれ形成したものである。
【0079】
ボックス継ぎ手20の下側部材202には上側部材201中の添加物流通孔322、323にそれぞれ連通する孔2022、2023が貫通している。下側部材202の孔2022、2023には第2、第3の添加物の流通管P2、P3がそれぞれ接続され、これは中間軸130及び掘削刃ヘッド駆動軸13中を通って掘削刃ヘッド11の第2、第3の添加物吐出口111b、111cにそれぞれ接続されている(図3及び図4も参照)。
なおボックス継ぎ手20におけるSR1、SR2、SR3は添加物の漏れを防止するシールリングである。
【0080】
〔4〕土壌処理装置Aによる土壌処理について。
土壌処理装置Aは自走車Vに搭載されて、例えば、図9及び図10(A)に示すように処理対象土壌層40上方の地表5の上に配置される。
このとき掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12は、図1及び図3にも示すようにピストンシリンダ装置PCを縮めて、回転ヘッド1における外側軸15を内側軸13に対し上昇させておくことで縮小姿勢としておく。すなわち回転ヘッド1の全体を縮小状態にしておく。
【0081】
次いで回転ヘッド1の掘削刃ヘッド11をモータM1により土壌掘削方向に回転駆動するとともに土壌攪拌翼12もモータM2によりヘッド11と、本例では同方向に、略同回転速度で回転駆動し、回転ヘッド1全体を下降させる。なお、このとき、土壌攪拌翼12は、支障がなければ、掘削刃ヘッド11とは反対方向に回転させてもよいし、同方向に、且つ、ヘッド11とは異なる回転速度で回転させてもよい。
かくして図10(B)に示すように、回転ヘッド1を地表5から処理対象土壌層40へ向けて、途中の土壌6をそれがある位置で掘削し、攪拌し、ほぐしながら進入させる。この掘削、攪拌しながらのヘッド進入は、掘削刃ヘッド11の例えば第1添加物吐出口111aから土壌中へ水等を注入しながら行ってもよい。
【0082】
回転ヘッド1が処理対象土壌層40に到達すると、そこで、ピストンシリンダ装置PCを伸長させることで、回転ヘッド1における外側軸15を内側軸13に対し下降させ、それにより掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12を拡大状態に移行させ、拡大姿勢におき、土壌処理に供する。
【0083】
すなわち、拡大姿勢へ移りつつある掘削刃ヘッド11及び拡大姿勢とされた掘削刃ヘッド11をモータM1で土壌掘削方向に回転させるとともに、拡大姿勢へ移りつつある土壌攪拌翼12及び拡大姿勢におかれた土壌攪拌翼12をモータM2で、土壌掘削方向とは反対方向(掘削刃ヘッド11とは反対方向)に回転させ、土壌を十分攪拌等できるようにする。
【0084】
このとき、掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12の拡大は、図5に示す経過で拡大する。すなわち、図5(B)に示すように、先ず、掘削刃ヘッド11が開き始め、その後に、図5(C)に示すように、土壌攪拌翼12が開き始める。そして、土壌掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12のそれぞれの拡大途中においては、図5(C)及び図5(D)に示すように、土壌攪拌翼12の拡大途中半径R12c、R12dは土壌掘削刃ヘッド11の拡大途中半径R11c、R11dより小さく維持される。従って、未だ土壌掘削刃ヘッド11により掘削されていない土壌部分に、土壌掘削刃ヘッド11に先行して土壌攪拌翼12が接触して損傷するといった事態の発生を抑制することができ、それだけ安全である。
【0085】
かくして図10(C)に示すように回転ヘッド1は前記進入時よりも拡大された、従ってより広い範囲にわたり掘削等できる状態で、処理対象土壌をそれがある位置で掘削し、攪拌できる。
この作業も、掘削刃ヘッド11の例えば第1添加物吐出口111aから土壌中へ水等を注入しながら行ってもよい。
【0086】
そして、処理対象土壌層40においては、土壌の状態に応じて、すなわち、例えば汚染土壌の浄化処理においては土壌の汚染状態等に応じて、掘削刃ヘッド11の第1、第2及び第3の添加物吐出口111a、111b及び111cのうち少なくとも一つから少なくとも1種類の汚染土壌処理用の添加物(主として土壌浄化用の薬液)を土壌中へ注入し、該添加物と土壌を混合攪拌する。その後必要に応じ例えば第1添加物吐出口111aから土壌中へ土壌処理用添加物の1種としての土壌固化材(例えばセメント系固化材)を注入し、それと土壌を混合攪拌して汚染土壌の処理処理を完了する。
【0087】
また、地盤の改良処理においては、土壌の状態(例えば軟弱の程度)等に応じて、例えば掘削刃ヘッド11の第1、第2及び第3の添加物吐出口111a、111b及び111cのうち少なくとも一つから少なくとも1種類の地盤改良用の土壌処理用添加物(例えばセメント系固化材等)を土壌中へ注入し、該添加物と土壌を混合攪拌して土壌を改良する。
なお、土壌層40の処理においては、必要に応じ、回転ヘッド1を該層40中で繰り返し昇降させてもよい。
【0088】
このようにして処理対象土壌層40の1箇所の処理が完了すると、その後は、ピストンシリンダ装置PCを縮めることで回転ヘッド1における外側軸15を内側軸13に対して上昇させ、掘削刃ヘッド11を縮小姿勢におくとともに土壌攪拌翼12も縮小姿勢として該姿勢を維持し、このように回転ヘッド1を縮小姿勢とした状態で、掘削刃ヘッド11及び土壌攪拌翼12を共に回転させつつ、処理された土壌から地表5へ向け途中の土壌6を該土壌がある位置で攪拌しながら、さらに、必要に応じ、例えば第1添加物吐出口111aから土壌中へ土壌処理用添加物の1種としての土壌固化材を注入し、それと土壌とを混合攪拌しながら、退出させる。
【0089】
このようにして一か所の土壌処理が終了すると、次の土壌処理箇所へ移り、そこでの土壌を処理し、最終的には、それには限定されないが例えば図11に示すように、隣合う土壌処理箇所41が一部重なりあうように処理対象土壌層全体を処理する。
このように処理された土壌の上には図12に例示するように家屋等HSを構築して安全に使用することができる。なお図11及び図12において42は地表5から処理された土壌41に至る回転ヘッド1の移動後の土壌である。
【0090】
前記の処理対象土壌層40の各箇所での処理における添加物の投入タイミングについては、その箇所での土壌層40の一通りの掘削、攪拌が終わったあとでもよいが、土壌層40の掘削、攪拌処理の進行中に添加物の添加を開始してもよい。要するに土壌を処理できる適当なタイミングを選んで添加すればよい。
【0091】
添加物と土壌の混合攪拌は回転ヘッド1を回転させることで行うが、かかる混合攪拌のタイミングについても、土壌と添加物の混合攪拌を行うに支障のないタイミングであればよく、代表的には、回転ヘッド1を回転させつつ添加物を添加して混合攪拌を行えばよい。
また、添加物の態様としては、液体や液状のものに限定されるものではなく、粉体添加物でもよく、場合によってはガス添加物その他でもよい。粉体添加物は例えば空気搬送により供給することができる。
【0092】
以上説明した土壌処理装置Aによる土壌処理においては、土壌を地上へ搬出する必要がなく、地表5から土壌層40にいたるまでの土壌6を殆ど地中にとどめておくことができるとともに処理対象土壌をそれがある原位置で処理することができ、従来の汚染土壌浄化処理のように土壌を地上へ搬出し、処理後に埋め戻す方法と比べると、少ない工数、短い工期で、簡単安価に土壌を処理できる。また、作業の無駄、土壌処理用添加物の無駄等の無駄無く、それだけ安価に土壌を処理できる。
【0093】
さらに、回転ヘッド1は回転半径方向に拡縮可能であり、土壌層40へ向けて進入させるとき、及び処理された土壌41から地上へ退出させるときには、縮小状態に設定でき、従って、処理する必要のない地表、或いは地表及びその近傍の土壌6について徒に掘削、攪拌することがない一方、土壌層40においては回転ヘッド1を拡大状態に設定でき、それにより広い範囲にわたり効率よく土壌を処理でき、これらにより、表層土壌或いは表層土壌及びその近傍の土壌6についてはその地盤強度をできるだけ確保しつつより深層の土壌を処理できる。
【0094】
また、土壌処理装置Aによると、回転ヘッド1の外側軸15の内側軸13に対する昇降駆動を外側軸昇降駆動部3により行うことができるので、例えば地上において、回転ヘッド1における外側軸15の内側軸13に対する昇降量を制御、管理することができ、それにより、土壌掘削刃ヘッド11の拡縮状態は勿論のこと、土壌攪拌翼12の拡縮状態も制御、管理することができ、それだけ目的とする土壌処理を確実に行える。
【0095】
さらに、土壌処理装置Aにおいては、添加物の供給を三つの供給経路を用いて行えるので、各添加物の供給経路を明確化でき、添加物供給におけるトラブルやメインテナンス等への対応が容易である、という利点もある。
なお、土壌処理装置Aによる土壌処理においては、必要に応じ、回転ヘッド1を地上へ一旦退出させ、処理対象土壌をサンプリングして(試料として採取して)土壌処理状態を検査することができる。このとき、回転ヘッド1を縮小状態として地上へ退出させる。土壌処理のために再び回転ヘッドを処理対象土壌層へ進入させ、さらなる土壌処理を行うときの手順は当初の回転ヘッド進入等の手順と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、重金属等で汚染されている汚染土壌を無害化処理したり、軟弱地盤を構造物構築に適する地盤に改良する等の土壌処理に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る土壌処理装置の1例を概略的に、且つ、回転ヘッドを縮小状態として示す図である。
【図2】図1の土壌処理装置を、回転ヘッドを拡大状態として示す図である。
【図3】図1の土壌処理装置における回転ヘッドを縮小状態として示す拡大断面図である。
【図4】図1の土壌処理装置における回転ヘッドを拡大状態として示す拡大断面図である。
【図5】回転ヘッドが縮小状態から拡大状態へ移行する過程を示す図である。
【図6】図4の拡大状態の回転ヘッドにおける土壌掘削刃ヘッドの可動部を下方から見て示す図である。
【図7】図4の拡大状態の回転ヘッドにおける土壌攪拌翼を上方から見て示す図である。
【図8】ボックス継ぎ手及び添加物供給装置の主要部の断面図である。
【図9】図1の土壌処理装置を自走車に搭載した状態の側面図である。
【図10】図10(A)から図10(C)は土壌処理の手順の一部を示す図である。
【図11】土壌処理領域の様子を示す平面図である。
【図12】処理された土地とその上に構築される家等を示す図であり、土地については図11のX−X線断面で示してある。
【符号の説明】
【0098】
A 土壌処理装置
1 回転ヘッド
11 土壌掘削刃ヘッド
11a、11b 土壌掘削刃
111 固定部
112 可動部
113 リング部材
114 対リンク
12 土壌攪拌翼
12a 上段土壌攪拌翼
12b 中段土壌攪拌翼
12c 下段土壌攪拌翼
120 受け部材
121 拡縮規制アーム
13 内側軸
131 内側軸13の太径部
132 バネ受け部
K キー
14 スライダ
15 外側軸
151 軸15の下端部
152 バネ受け部
16 中間部材
161 中央円筒孔
161a 摺動用部材
162 凹溝部
162’ 凹溝部162間の凹所
163 リング部材
164 仕切り筒
165 リング部材
16a 突起部
17 第1圧縮バネ
18 第2圧縮バネ
2 回転ヘッドの支持駆動装置
4 土壌処理用添加物の添加装置
21 掘削刃ヘッド支持駆動部
22 外側軸回転駆動部
130 内側中間軸
Ka キー
20 ボックス継ぎ手
M1 モータ
202 ボックス継ぎ手の下側部材
201 ボックス継ぎ手の上側部材
201’ 上端部
ms モータM1の回転軸
200 継ぎ手
K1、K2 キー
150 外側中間軸
GB ギアボックス
G1 大歯車
G2 小歯車
M2 モータ
PC ピストンシリンダ装置
3 外側軸支持昇降駆動部
SL スライダ
V 自走車
CL 支柱
RL レール
SP 軸受け部
m1、m2 滑車装置
VPC ピストンシリンダ装置
4 土壌処理用添加物供給装置
31、32 スイベル装置
311 筒部材
311a 環状凹溝
312 添加物流通孔
H1、H2、H3 添加物供給ホース
2011、2021 孔
BR ベアリング
321 筒状部材
321a、321b 環状凹溝
322、323 添加物流通孔
P1、P2、,3 添加物の流通管
SR1、SR2、SR3 シールリング
40 処理対象土壌層
5 地表
6 途中の土壌
41 土壌処理箇所
HS 家屋等
41 処理された土壌
42 途中土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌掘削刃ヘッド及びその上方に配置された土壌攪拌翼を有するとともに、土壌処理用添加物を土壌中へ注入するための添加物吐出口を有し、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼がいずれも回転半径方向に拡縮可能である回転ヘッドを備えた土壌処理装置であり、
前記回転ヘッドを支持し、前記土壌掘削刃ヘッドの回転駆動及び拡縮駆動並びに前記土壌攪拌翼の回転駆動及び拡縮駆動を行う回転ヘッド支持駆動装置を備えており、
前記回転ヘッドは、
下端部に前記土壌掘削刃ヘッドを支持する内側軸と、
外側部位に前記土壌攪拌翼を支持し、前記内側軸に昇降可能に外嵌された外側軸と、
前記土壌掘削刃ヘッドを、前記外側軸の前記内側軸に対する上昇動作に連動させて縮小させて縮小姿勢におくことができ、下降動作に連動させて拡大させて拡大姿勢におくことができる第1連動機構と、
前記外側軸の前記内側軸に対する昇降動作に連動させて前記土壌攪拌翼を縮小拡大させる第2連動機構であって、該外側軸が該内側軸に対し上昇することで前記第1連動機構により前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると該土壌攪拌翼を縮小姿勢に維持することができ、該外側軸が該内側軸に対し下降することで前記第1連動機構により該土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると該土壌攪拌翼を拡大姿勢におくことができる第2連動機構とを含んでおり、
前記回転ヘッド支持駆動装置は、前記内側軸を支持することで前記土壌掘削刃ヘッドを支持するとともに該内側軸を介して該土壌掘削刃ヘッドを回転駆動する掘削刃ヘッド支持駆動部と、前記外側軸を支持して前記内側軸に対し昇降させることで、前記第1連動機構にて該土壌掘削刃ヘッドを、前記第2連動機構にて前記土壌攪拌翼を、それぞれ縮小拡大させる外側軸支持昇降駆動部と、前記外側軸を回転駆動することで前記土壌攪拌翼を回転駆動する外側軸回転駆動部とを含んでいる
ことを特徴とする土壌処理装置。
【請求項2】
前記土壌掘削刃ヘッドは、該ヘッドの少なくとも一部が、その一端部で前記内側軸に対し回動可能に連結され、他端部が上下方向に回動して閉じ姿勢又は開き姿勢をとることができる可動部とされており、該可動部の開閉により土壌掘削刃ヘッド全体が回転ヘッド半径方向に拡縮可能であり、
前記第1連動機構は、
前記内側軸とともに回転可能且つ該内側軸に対し昇降可能に該内側軸に設けられ、前記外側軸の下端部に、該下端部に対し回動可能に支持されたスライダと、
該スライダを前記土壌掘削刃ヘッドの可動部に連結するリンク機構であって、前記外側軸の昇降に伴い該スライダが前記内側軸に対し昇降することで該土壌掘削刃ヘッドの可動部を閉じ又は開いて該土壌掘削刃ヘッドを縮小又は拡大させるリンク機構とを含んでいる請求項1記載の土壌処理装置。
【請求項3】
前記土壌攪拌翼は、一端部で前記外側軸の外側部位に回動可能に連結されて他端部が上下方向に回動可能とされていることで、回転ヘッド半径方向に縮小拡大可能であり、
前記第2連動機構は、
前記内側軸及び外側軸間に配置された、該内側軸及び外側軸に対し相対的に昇降可能の中間部材及び該中間部材位置制御バネと、
前記土壌攪拌翼の一端部から、前記外側軸壁を貫通して前記中間部材へ延びる拡縮規制アームとを含んでおり、
前記中間部材は、前記外側軸壁方向に開放された凹部を有し、該凹部に前記土壌攪拌翼の拡縮規制アームを受入れ係合させており、前記内側軸に対する下降限度が該内側軸上の下限ストッパにて定められており、
前記中間部材位置制御バネは、
前記中間部材に下方へ向け押圧力を付与し、前記外側軸が前記内側軸に対して上昇することで前記土壌攪拌翼の拡縮規制アーム及び該アームが係合した前記中間部材が引き上げられるとともに前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると、前記中間部材を前記内側軸に対する上昇限度におくとともに該中間部材の凹部に前記拡縮規制アームを相対的に下方へ押圧させた状態で前記土壌攪拌翼を縮小姿勢に維持し、前記外側軸が前記内側軸に対して下降することで前記土壌攪拌翼の拡縮規制アームが下降するとともに前記土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると、前記中間部材を前記内側軸上の下限ストッパへ押圧するとともに該中間部材の凹部に前記拡縮規制アームを相対的に上方へ押圧させて前記土壌攪拌翼を拡大姿勢におく請求項1又は2記載の土壌処理装置。
【請求項4】
前記中間部材位置制御バネは、
前記内側軸上に設けたバネ受け部と前記中間部材との間に嵌装され、前記外側軸の内側軸に対する上昇により前記土壌攪拌翼の拡縮規制アーム及び該アームが係合した前記中間部材が引き上げられるとともに前記土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢をとると、該中間部材に押圧されて該中間部材を前記上昇限度におく第1の圧縮バネと、
前記外側軸上に設けたバネ受け部と前記中間部材との間に嵌装され、前記外側軸の内側軸に対する下降により前記土壌掘削刃ヘッドが拡大姿勢をとると、前記内側軸上の下限ストッパに当接する該中間部材に該外側軸上のバネ受け部にて押圧される第2の圧縮バネとを含んでいる請求項3記載の土壌処理装置。
【請求項5】
前記第1の圧縮バネ及び前記第2の圧縮バネは、前記外側軸の内側軸に対する下降により前記土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼を縮小姿勢から拡大姿勢へ向け拡大させるとき、該土壌掘削刃ヘッドが縮小姿勢にある状態から拡大開始した後に該土壌攪拌翼が拡大開始し、且つ、該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼のそれぞれの拡大途中においては、該土壌攪拌翼の拡大途中半径が該土壌掘削刃ヘッドの拡大途中半径を超えないように該土壌掘削刃ヘッド及び土壌攪拌翼が拡大姿勢へ向け拡大していくように、前記中間部材位置を制御する請求項4記載の土壌処理装置。
【請求項6】
土壌処理用添加物を前記回転ヘッドの添加物吐出口へ供給する添加物供給装置を備えている請求項1から5のいずれかに記載の土壌処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−63913(P2007−63913A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253733(P2005−253733)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(591214804)株式会社松村組 (14)
【出願人】(594126735)麻生フォームクリート株式会社 (7)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】