説明

圧力容器

【課題】平坦なまたはほぼ平坦な蓋を有し繊維強化プラスチックからなる圧力容器を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの方向へ圧力容器を貫通し軸線方向へ配向され、内部スペース内に均一に分布され、内圧に起因する力の大半を受容する複数の補強構造体を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを貯蔵するための、繊維強化プラスチックからなる圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製又はプラスチック製インライナ(Inliner)を含む圧力容器を特徴とする従来技術がある。インライナには、ある巻付け法によって、繊維強化プラスチックが配される(これに関しては後掲特許文献1参照)。この場合、軸線方向強度は縦方向巻付け繊維によって、周方向強度は周方向巻付け繊維によって各別に実現される。
【0003】
圧力容器の本質的要素として、インライナは、繊維強化プラスチックを配するための支持フレームとしてかつガスの透過に対するバリヤとして役立つ。圧力容器の強度は、繊維強化プラスチックを配することによって達成される。
【特許文献1】DE−OS 199 52 611
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術の欠点は、インライナが装置(圧力容器)の重量を増大することである。更に、ドーム(状鏡端部)の領域に好ましくない材料分布が生ずる。なぜならば、その巻付けプロセスによっては、ドーム(状鏡端部)の極(頂部)の領域には強度を生成しない材料が配される(蓄積される)からである。既知の圧力容器の最大限の容積の利用を妨げている問題は、圧力容器の端部(複数)が、常に、凸状のドームとして構成されていると云う事実に基づく。ドーム形状のため、不利な容積利用が生ずる。
【0005】
ドーム形状をいわゆるアイソテンソイド(等張力:isotensoid)形態に変更し及び繊維分布及び角度を変更しても、上記問題は限定的にしか改善することができない。
【0006】
圧力容器の周囲ないし外周部(外殻スリーブ)の領域に複数の繊維ストランド(Faserstraenge)を配することによってかつ巻付けプロセスによって、複数の方向からの力を受容しなければならない。
【0007】
それゆえ、本発明の課題は、圧力容器の設計(製造)時に僅かな費用で本質的な改善を実現できる圧力容器を開発することにある。このため、上記欠点が減少されるように、平坦な又はほぼ平坦な蓋部材(複数)を有し繊維強化プラスチックから構成される圧力容器が実現されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明により、少なくとも1つの方向で圧力容器内部空間を貫通延在し軸線方向に整列された複数の補強構造体(ないし強化構造=Verstaerkungsstrukturen)であって、圧力容器内部空間内に一様に分布され、内圧に起因する力の大部分を受容する補強構造体が配される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、円筒形圧力容器の横断面にわたって一様に分布されて配された、繊維強化複合材料の複数の繊維ストランド(好ましくは、エポキシ樹脂のマトリックスで含浸処理された複数の炭素繊維)が、軸線方向に正確に整列されかつ平坦な又はほぼ平坦な蓋部材ないし鏡板(複数)に固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明の有利な一実施形態では、縁部(複数)が肉厚に形成されたほぼ一方向性の繊維層(シート)を渦巻状に巻くことによって、圧力容器が形成される。
【0011】
上記(繊維)層の繊維配向(延伸方向)は、その面内において、巻き(巻丸めないし巻回し)方向(Wickelrichtung)に対し横方向ないし直角(quer)である。肉厚部(複数)は、他の方向に配向させることもでき、又は他の材料から作成することもできる。
【0012】
補強ストランドないし渦巻状に巻かれた一方向性繊維層にわたって(を覆うように)、圧力容器の閉鎖部(シール)を形成するとともに周方向に配向され半径方向に作用する補強層(複数)が配される。
【0013】
本発明の他の一側面では、軸線方向の補強(強化)は、2以上の方向で行われる。更に、内部空間を貫通延在する軸線方向補強部(構造体)と外周部ないし外殻スリーブ(Aussenhuelle)に組込んだ(外周部と一体化された)補強部(構造体)とを組合せることも可能である。
【0014】
一実施形態では、圧力容器の気密性を高めるために、軸線方向補強部(構造体)の外側層と周囲(円周方向)に巻き付けられる外周部(外郭スリーブ)との間に、十分に重なり合うバリヤ層(複数)を巻き付けることができる。
【0015】
驚くべきことに、ほぼ平坦な蓋部材が(圧力)容器に使用できることが発見され、巻き付けられる圧力容器の形成時に一連の利点を実現することを可能とする技術的解決手段が自由に利用され得る。
【0016】
両側の蓋部材を固定するために、内部に延在する通気性の補強パイプが配される。
【0017】
圧力容器の端面を形成する蓋部材(複数)は、適切な軽量の金属材料又は繊維強化プラスチックからなる。補強構造体を受容するため、角度的には規則的であるが深さの異なるスリット(複数)を配することできる。このため、同時に、圧力容器のアーマチュア(ないし付属装置:Armaturen)をガスコネクタに気密に結合するという解決法が実現される。
【0018】
本発明は、以下の一連の利点を有する:
インライナは不要。補強材料は生じる力の方向にほぼ完全に配向される。(この)2つの特質のため、重量当りの(gewichtsspezifisch)貯蔵能ははっきりと改善される。製造は単純化される。
【0019】
装置への組込みは、より都合の良い形状(Formgebung)によって、より空間節約的に実行することができ、かくして、容積当りの貯蔵密度が増大される。
【0020】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
図1の圧力容器は、繊維強化複合材料の複数の繊維ストランド、好ましくは炭素繊維又は他の高強度の繊維状ないし糸状ストランド(複数)からなる含浸処理された複数の各別繊維ないし糸(Einzelfaeden)から構成されるとともに軸線方向に貫通延在する補強構造体1を、円筒体内部に配することによって構成される。補強構造体は、横断面にわたってほぼ一様に分布され、かつ平坦な蓋部材(鏡板)7に固定される。蓋部材7は、ある巻丸め技術によって、同様に、上記ストランド材料から形成されるか、又は他の材料と一緒に巻丸められる。蓋部材の中心部には、付属装置のための金属製コネクタ5が複合材料に埋設されると好ましい。
【0022】
この補強ストランド(複数)は、圧力室の外側境界面に極めて密接して配されるため、補強ストランドには、バリヤ層3を介装被覆することができる。そして、このバリヤ層3上には、半径方向の補強を生成しかつ圧力容器の外側閉鎖部(シール外殻)を形成する半径方向補強体(radialen Verstaerkungen)2が巻き付けられる。
【0023】
図2及び図3の圧力容器は、両縁部に肉厚部8を有し(好ましくはエポキシ樹脂のマトリックス(母材)で含浸処理された炭素繊維等の繊維強化複合材料からなる積層状の層(シート)等の)一方向性層からなるベース層から構成される半製品を巻くことによって形成される。肉厚部は、同様に、複合材料によって形成するのが好ましく、付加的に、バリヤ層6を含むことができる。半製品は、通常、マトリックスシステムで含浸前処理する。巻付けは、同時に付属装置を担持する金属製補強パイプ4上で行うことができる。この場合、パイプ4は、貯蔵媒体の貫流のための開口(複数)を有する必要がある。
【0024】
巻付け(巻丸め)の際、半製品は、ベース層内の繊維の方向が圧力容器の軸線方向と一致するよう配向される。この場合、縁部領域の肉厚部(複数)8は、同じく、圧力容器の軸線方向の閉鎖(シール外皮)部分を形成する。
【0025】
形成された渦巻状コア上には、半径方向に作用するバリヤ層3を配することができる。そして、このバリヤ層3上に、周方向に配向され半径方向に作用する補強層2が配される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】繊維ストランドを有する圧力容器の一例。
【図2】一方向層を有する圧力容器の一例。
【図3】一方向層の一例。
【符号の説明】
【0027】
1 補強構造体
2 半径方向補強層
3 バリヤ層
4 補強パイプ
5 金属製コネクタ
6 付加的バリヤ層
7 蓋部材(鏡板)
8 肉厚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧によって引き起こされる力を受容するため、圧力容器内部空間を少なくとも1つの方向に貫通延在するとともに、該圧力容器内部空間内に一様に分布される複数の補強構造体(1)が配されること
を特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記複数の補強構造体(1)は、円筒形圧力容器の横断面にわたって一様に分布されて配されると共に、軸線方向に正確に整列され、ほぼ平坦な蓋部材からその反対側へと延在し、かつ周方向に配向され半径方向に作用する補強層(2)によって包囲される複数の繊維ストランドから構成されること
を特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記複数の補強構造体(1)は、渦巻状に巻かれた複合材料の一方向性の層であって、縁部に肉厚部(8)を有し、巻上げの際前記蓋部材(7)又は該蓋部材の一部を形成しかつ周方向に配向され半径方向に作用する補強層(2)によって囲まれる一方向性の層から構成されること
を特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記圧力容器内部空間を軸線方向に貫通延在する複数の補強構造体(1)は、1つの空間方向に配されているのみならず、他の1つの空間方向又は3つのすべての軸線方向に配されること
を特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記圧力容器内部空間を貫通延在する複数の補強構造体(1)は、内圧による軸線方向力の一部のみを受容し、かつ外周部にわたって延在する補強層(2)と組合されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の圧力容器。
【請求項6】
ガスの透過を阻止するバリヤ層(3)が、前記貫通延在する複数の補強構造体(1)の外側層と前記周方向に配向され半径方向に作用する補強層(2)との間に配されること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧力容器。
【請求項7】
帯状に巻き回され重なり合うバリヤ層(3)が配されること
を特徴とする請求項6に記載の圧力容器。
【請求項8】
内部に延在する中心補強パイプ(4)が配されること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記蓋部材(7)は、角度的には規則的であるが深さは異なる複数のスリットが形成されかつ該複数のスリットに前記貫通延在する補強構造体(1)が固定されるよう形成された適切な軽量材料から構成されること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧力容器。
【請求項10】
アーマチュアは、蓋部材(7)に気密に結合されること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧力容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧によって引き起こされる力を受容するため、圧力容器内部空間を貫通延在し軸方向に作用する複数の補強構造体(1)が配されること、
該複数の補強構造体(1)は、円筒形圧力容器の横断面にわたって一様に分布されて配され、軸線方向に正確に整列され、ほぼ平坦な2つの蓋部材の間にほぼ平行に延在する複数の繊維ストランドから構成されると共に、該複数の繊維ストランドは周方向に配向され専ら半径方向に作用する補強層(2)によって包囲されるよう構成されること、
を特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記複数の補強構造体(1)は、渦巻状に巻かれた複合材料の一方向性の層であって、縁部に肉厚部(8)を有し、巻上げの際前記蓋部材(7)又は該蓋部材の一部を形成しかつ周方向に配向され半径方向に作用する補強層(2)によって囲まれる一方向性層から構成されること
を特徴とする請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
ガスの透過を阻止するバリヤ層(3)が、前記貫通延在する複数の補強構造体(1)の外側層と前記周方向に配向され半径方向に作用する補強層(2)との間に配されること
を特徴とする請求項1又は2に記載の圧力容器。
【請求項4】
帯状に巻き回され重なり合うバリヤ層(3)が配されること
を特徴とする請求項3に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記蓋部材(7)は、角度的には規則的であるが深さの異なる複数のスリットが形成されかつ該複数のスリットに前記貫通延在する補強構造体(1)が固定されるよう形成された適切な軽量材料から構成されること
を特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧力容器。
【請求項6】
アーマチュアは、蓋部材(7)に気密に結合されること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−519961(P2006−519961A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501767(P2006−501767)
【出願日】平成16年2月7日(2004.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001136
【国際公開番号】WO2004/072542
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(505302247)
【出願人】(505302236)
【Fターム(参考)】