説明

圧延ロール用外層材および圧延ロール

【課題】優れた耐摩耗性および耐肌荒れ性を具備するとともに、外層材に高い縦弾性係数を付与することによりロールの偏平を抑制し、圧延の安定性に優れ、製造コストが比較的安価なた圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールを提供する。
【解決手段】圧延ロール用外層材イはビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の総量が0〜5%分散した組織であって、縦弾性係数が240GPa以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールに関するものであり、耐摩耗性および耐肌荒れ性に優れるとともに、特にロールの偏平が少なく、熱間薄板圧延機の仕上列に用いられるワークロールおよびその外層材として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
圧延の生産性を決定する重要な特性として、圧延ロールの耐摩耗性および耐肌荒れ性がある。耐摩耗性が乏しいと、早期にロール表面が摩耗し、被圧延材の寸法精度を損なう。また、耐肌荒れ性に乏しいと、ロール表面に凹凸が発生し、これが被圧延材に転写されることで、被圧延材の表面品質を損なう。これらを防止するためにはロールを頻繁に取り替えなければならず、圧延操業の中断の頻度が増えることによる圧延工場の生産性の低下、ロール表面研削加工に要するコストの増大、さらにロール表面研削量の増大によるロール原単位の低下といった問題が発生する。
【0003】
そこで、従来から耐摩耗性および耐肌荒れ性の要求に応えることを目論んだ圧延ロール用外層材(圧延使用層)として、Cr、Mo、W、Vなどの合金元素を多量に含んだハイス系合金が使用されている。その組織には、Crを多く含むM型炭化物(Mは金属元素を示す、以降同様)、Mo及びWを多く含むM2C型炭化物やM6C型炭化物、およびVを多く含むMC型炭化物などの金属炭化物を含有しているものである。
【0004】
一方、近年、鋼の結晶粒の微細化による機械的性質の向上を目論み、熱間圧延仕上列における高圧下圧延の適用が進みつつある。このようなミルでは圧延荷重が増大するためロールの損耗、すなわち、ロール摩耗量の増加やロール表面の早期肌荒れが発生する。また、高圧延荷重により、ロールの表面に偏平が発生し、スリップの要因となる。これらの現象が発生すると安定的な圧延が困難となる。
【0005】
このような問題を解消するために、従来より種々のロールが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、帯鋼または鋼板を熱間連続圧延する仕上げタンデム圧延機群の後方3基の圧延機に作動ロールとして組み込まれる熱間圧延用複合ロールであって、該ロールの直径を250〜620mmとし、縦弾性係数を200〜260GPaにすると共に、外層の化学成分が質量比で、C:1.0〜3.0%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、V:3.0〜10.0%、Cr:3.0〜10.0%およびMo、Wの1種または2種を2.0〜10.0%含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる熱間圧延用複合ロールが記載されている。
【0007】
特許文献1によれば、熱間帯鋼連続圧延において、圧延鋼材との間で高い摩擦係数を有し摩耗が少なく、かつ偏平や降伏損傷しない作動ロールを提供すると共に、これを用いて仕上げ後段群において高圧下圧延を行うことにより、生産性が高く経済的な圧延ができるものである。
【0008】
また、特許文献2には、鋼板を熱間連続圧延する連続熱間圧延機群の後方3基の圧延機に組み込まれる熱間圧延用複合ロールにおいて、鋼系材料からなる芯材の周囲に、質量%でTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W金属との炭化物および/または窒化物の粉末10〜50%とC:0.5〜1.5%、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜2.0%、および、Ni:0.1〜2%、Cr:0.5〜10%、Mo:0.1〜2%の一種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鉄系粉末とを焼結して外層材を形成し、該外層材からなる複合ロールの直径を250〜620mm、かつ縦弾性係数を240GPa以上とした熱間圧延用複合ロールが記載されている。
【0009】
特許文献2によれば、従来の鉄系鋳造材では弾性係数に自ずと限界があったが、本発明の炭化物は高い弾性係数を有し、これを多量に利用することによりロール材としても高い弾性係数を付与することができるものである。
【0010】
【特許文献1】特開2002−346613号公報
【特許文献2】特開2004−148321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、耐摩耗性、耐肌荒れ性に優れるとともに、安定的な圧延を行いやすい偏平の少ないロールの要望が高まっている。例えば、微細粒組織熱延鋼板を製造する熱間薄板圧延機の仕上列においては、従来の圧延に比べ圧下量が飛躍的に増大しており、耐摩耗性および耐肌荒れ性の向上に加え、特に偏平の少ないロールが求められている。
【0012】
ここで、特許文献1は、熱間圧延用複合ロールの縦弾性係数を制御する手段を開示していない。また、外層の金属組織の構成要素の最適化により縦弾性係数を上昇させロール偏平を抑制させることは考慮されていない。また、耐摩耗性に貢献するMC炭化物の量が従来のハイスロールと同等程度であり、さらなる耐摩耗性向上の要求に応えることが困難である。
【0013】
また、特許文献2には、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W金属との炭化物および/または窒化物の粉末と鉄系粉末とを焼結してなる外層材からなる複合ロールにおいて、外層材の粉末の混合比率、ロール直径および縦弾性係数の範囲について記載されている。特許文献2によると、これらの炭化物もしくは窒化物を多量に利用することにより240GPa以上の高い縦弾性係数を付与させたものである。しかしながら、外層の金属組織に含まれる炭化物の量、種類および分布状態を制御することは考慮されていない。また、これらの炭化物および窒化物は極めて高価であるとともに、焼結プロセスには多大な工数を要するため、遠心力鋳造などの溶製プロセスに比べ製造コストが高くなる。
【0014】
本発明は、優れた耐摩耗性および耐肌荒れ性を具備するとともに、外層材に高い縦弾性係数を付与することによりロールの偏平を抑制し、圧延の安定性に優れ、製造コストが比較的安価な圧延ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ロール外層材中の金属炭化物は、基地に比べ縦弾性係数が高いので、これを多量に含ませることで縦弾性係数が向上する。本発明者らは、さらに、金属炭化物の量、種類および分布状態を制御することで、従来にない高い縦弾性係数が得られることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明の圧延ロール用外層材は、ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織であって、縦弾性係数が240GPa以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第2の圧延ロール用外層材は、ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の総量で0〜5%分散した組織であって、縦弾性係数が240GPa以上であることを特徴とする。
【0018】
前記本発明において、前記外層材の組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超えないことを特徴とする。
【0019】
前記外層材の組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離が10〜40μmであることを特徴とする。
【0020】
前記外層材の組織におけるMC炭化物の平均円相当直径が10〜50μmであることを特徴とする。
【0021】
前記外層材の組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2以下であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の圧延ロール用外層材は、化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:11.0%を超え40.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなることを特徴とする。
【0023】
さらに前記外層材において、化学成分が質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の外層材の化学成分において、前記Vの一部を、質量%で下記(1)式を満足する範囲のNbで置換することを特徴とする。
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
【0025】
さらに下記(2)式を満足することを特徴とする。
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(2)
【0026】
さらに質量%で、Ni:2.0%以下およびCo:10.0%以下のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする。
【0027】
さらに質量%で、Ti:0.5%以下およびAl:0.5%以下のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の圧延ロール用外層材が遠心力鋳造で形成されてなることを特徴とする。さらに、本発明の圧延ロール用外層材を用いて形成された圧延ロールであることを特徴とする。
【0029】
まず、本発明の圧延ロール用外層材の組織要素について説明する。
基地は、MC炭化物などの炭化物を除く部分であり、おもにFeおよび合金元素からなり、熱処理による変態や基地中の極微細な炭化物の析出などにより硬さが変化する。基地の硬さがビッカース硬さでHv550未満では耐摩耗性が低下する。耐摩耗性向上の観点から基地の硬さは高いほうが望ましいが、Hv900を超えると、基地の靭性が低下する。基地の硬さのより好ましい範囲は、Hv650〜850である。さらに好ましい範囲は、Hv650〜750である。
【0030】
MC炭化物は、他の炭化物に比べると高硬度であり、耐摩耗性の向上に寄与する。また、MC炭化物は高温で安定であり、被圧延材と金属結合しにくいことから、耐焼付き性改善にも優れた効果を発揮する。MC炭化物は粒状になりやすいことから、多く含ませても靭性低下が少ない特徴を有する。加えて、本発明はMC炭化物を多量に含ませることにより、縦弾性係数を高めたことが最大の特徴である。MC炭化物はFe系の基地に比べ縦弾性係数が高く、外層材の縦弾性係数を向上させるには効果的である。MC炭化物のうち、例えばVC炭化物の縦弾性係数は270GPa程度、NbC炭化物のそれは340GPa程度であり、基地の200〜220GPa程度に比べ大きい。本発明のMC炭化物は、面積率で20%未満では耐摩耗性および縦弾性係数の上昇が不十分であり、MC炭化物が面積率で60%を超えると耐焼付き性改善効果が飽和するとともに、靭性が著しく低下する。よってMC炭化物は面積率で20〜60%が好ましい。より好ましい面積率は30〜50%である。
【0031】
本発明の外層材は縦弾性係数が240GPa以上であるのが望ましい。また、本発明の外層材はMC炭化物の分散形態を特定することにより、従来のハイス系溶製材料に比べ縦弾性係数を格段に高めて、ロール表面の偏平を抑制し、圧延の安定性を向上させることができる。縦弾性係数のより好ましい範囲250GPa以上であり、さらに好ましい範囲としては260GPa以上である。
【0032】
本発明の外層材には、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の合計総量が面積率で0〜5%分散することができる。MCおよびMC炭化物はおもにMoやWを多く含み、M炭化物はおもにCrを多く含む炭化物である。これらは、MC炭化物に次ぐ硬さを有する炭化物だが、粗大かつネットワーク状に分布しやすい。これらMC炭化物以外の炭化物が過剰に含まれると、圧延事故時のクラックがこれらの炭化物を伝播しやすくなり靭性が低下する。これらの炭化物の総和が面積率で3%を超えると、それらの炭化物が粗大化し耐肌荒れ性や靭性が劣化する。少ないほど好ましく、面積率で0%でもよい。より好ましい面積率は0〜1%である。なお、本発明の外層材においては、MC、MC、MCおよびM炭化物以外の各種炭化物を微量含んでもかまわない。
【0033】
本発明の圧延ロール用外層材は遠心力鋳造法で形成するのが望ましく、本発明の遠心力鋳造されてなる圧延ロール用外層材について説明する。図4は本発明の遠心力鋳造されてなる圧延ロール用外層材を説明するための図である。本発明の外層材は、初晶MC炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を遠心力鋳造用鋳型内に鋳込み、遠心力鋳造することにより、内面側にMC炭化物を濃化した層を形成させて得られる。図4において、イ部はMC炭化物が密集濃化した層である。ロ部はそれ以外の部位でありMC炭化物の存在が乏しい層である。ハ部は遠心力鋳造によって形成された中空部である。遠心力鋳造後、図4のロ部を、切削加工などにより除去し、図4のイ部を、すなわち本発明の圧延ロール用外層材を得る。つまり、MC炭化物が濃化した層のイ部を圧延使用層とする。
【0034】
本発明の外層材の組織において円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超えないことが好ましい。MC炭化物が円相当直径で15μm未満の場合、MC炭化物が本来有する耐焼付き性の向上効果を期待できない。また、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径を150μm以下としたのは、この内接円直径より大きい領域が存在すると、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きくなり、耐焼付き性に劣る。円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で120μmを超えないことがより好ましい。さらには80μmを超えないことがより望ましい。
【0035】
また、本発明の外層材の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離が10〜40μmであることが好ましい。この平均粒子間距離より小さいと、MC炭化物が凝集しすぎて、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう。この平均粒子間距離より大きいと、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きくなり、耐焼付き性に劣る。円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離は20〜30μmがより好ましい。
【0036】
また、本発明の外層材の組織において、分散するMC炭化物の平均円相当直径は10〜50μmが望ましい。圧延時にロール表面は圧延鋼板からの高熱に晒される。特に熱負荷が高い場合は、ロール表面から10μm程度熱影響を受け、ロール基地が軟化し、ロールの耐摩耗性、耐肌荒れ性の劣化の要因となる。MC炭化物の平均円相当直径が10μm未満では、前述の軟化した基地をMC炭化物が支持することができず、耐摩耗性、耐肌荒れ性が劣化する。一方、50μmを超えて粗大になると耐焼付き性の向上効果が飽和するとともに、靭性が低下する。MC炭化物の平均円相当直径のより好ましい範囲は、10〜40μmであり、さらに好ましくは15〜30μmである。
【0037】
また、本発明の外層材の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2以下であるのが望ましい。本発明の外層材は、耐摩耗性に優れるMC炭化物を多量に含んでおり、耐摩耗性に優れるが、一方で製造時にはMC炭化物が凝集しやすい。MC炭化物が凝集すると、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう一因となる。このG/Hの値が2を超えると、MC炭化物が凝集傾向にあり、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう。より好ましいG/Hの値は、1.5以下である。
【0038】
ここで、本発明における円相当直径について説明する。図1に円相当直径の概念図を示す。円相当直径とは、対象物(ここでは炭化物を指す)と等しい面積の円の直径を表したものである。図1において、測定対象物Eの面積をAとすると、円相当直径Dは測定対象物の面積Aと等しい面積に相当する円Bの直径であり、式(3)で表される。
円相当直径D=√(A×4/π) ・・・(3)
【0039】
このようにして、本発明のMC炭化物の円相当直径Dやそれらを平均したMC炭化物の平均円相当直径Hを求めた。
【0040】
また、本発明における円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径について説明する。図2に円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の概念図を示す。
【0041】
図2において、符号a、a1、a2、a3、a4(白塗り部)は円相当直径で15μm以上のMC炭化物、符号b(黒塗り部)は円相当直径で15μm未満のMC炭化物、符号eはMC炭化物aおよびbを除いた部分であり、基地とMC、MCおよびM炭化物の存在する領域である。この場合、本発明の内接円直径は領域eの面に無数に描かれる。図2に示すように、15μm未満のMC炭化物bを測定対象から除外して、15μm以上のMC炭化物a1〜a4のすべてに内接する内接円直径dが、本発明における内接円直径である。
【0042】
また、本発明における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離について説明する。図3に平均粒子間距離の概念図を示す。図3において、符号a(白塗り部)は円相当直径で15μm以上のMC炭化物、符号b(黒塗り部)は円相当直径で15μm未満のMC炭化物、符号eはMC炭化物aおよびbを除いた部分であり、基地とMC、MCおよびM炭化物の存在する領域である。この場合、任意の直線Lにおいて、15μm未満のMC炭化物bを測定対象から除外して、直線L上に存在する15μm以上のMC炭化物aにおいて隣接するMC炭化物a同士間の最短距離であるLの線分をLn(nは線分の個数)とすると、平均粒子間距離Gは、式(4)で表される。なお、Xは他の任意の直線であって、直線L同様に平均粒子間距離Gを求める。
円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離G=
(Σ(L+L+・・・・+L))/n ・・・(4)
【0043】
次に本発明の圧延ロール用外層材の化学成分(質量%)の限定理由について説明する。なお、本発明の外層材の化学成分は、溶湯の成分ではなく、最終製品における外層材の化学成分を示す。
【0044】
C:2.5%を超え9.0%以下
Cは、おもにVもしくはNbなどの合金元素と結合しMC炭化物を形成することで耐摩耗性に寄与する必須の元素である。また、合金元素と結合しないCはおもに基地中に固溶もしくは合金元素とともに極微細に析出し基地を強化することでも耐摩耗性に寄与する。Cが2.5%以下ではMC炭化物の量が不足し十分な耐摩耗性が得られない。一方、Cが9.0%を超えると、炭化物が過多となり耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいC含有量は3.5%を超え9.0%以下であり、さらに好ましくは4.5%を超え9.0%以下である。
【0045】
Si:0.1%を超え3.5%以下
Siは、溶湯中で脱酸剤として作用する。Siが0.1%以下では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、3.5%を超えると脆化する。より好ましいSi含有量は0.2〜2.5%であり、さらに好ましくは0.2〜1.5%である。
【0046】
Mn:0.1%を超え3.5%以下
Mnは、溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定し、0.1%を超えると効果がある。Mnが3.5%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり安定して硬さを維持できず、耐摩耗性が劣化しやすくなる。より好ましいMn含有量は0.2〜2.5%であり、さらに好ましくは0.2〜1.5%である。
【0047】
V:11.0%を超え40.0%以下
Vは、おもにCと結合しMC炭化物を形成する本発明の重要な元素である。本発明の特徴の一つは、外層材に極めて多量のMC炭化物を含むことにある。Vが11.0%以下では、MC炭化物が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Vが40.0%を超えるとMC炭化物が過剰となり、靭性が劣化する。より好ましいV含有量は15.0%を超え40.0%以下であり、さらに好ましくは18.0%を超え40.0%以下である。
【0048】
Cr:1.0%を超え15.0%以下
Crは、基地に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地部を強化する。Crが1.0%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。また、15.0%を超えるとM炭化物などのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいCr含有量は3.0〜9.0%である。
【0049】
Mo:0.5%を超え20.0%以下
Moは、基地に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地を強化する。さらに、Moの一部はVやNbなどとともに粒状炭化物を形成する。Moが0.5%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、20.0%を超えるとMCやMCなどのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいMo含有量は2.5〜20.0%であり、さらに好ましくは2.5〜10.0%以下である。
【0050】
W:1.0%を超え40.0%以下
Wは、基地部に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地部を強化する。さらに、Wの一部はVやNbなどとともに粒状炭化物を形成する。Wが1.0%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、40.0%を超えるとMCやMCなどのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいW含有量は、5.0〜40.0%であり、さらに好ましくは5.0〜20.0%以下である。
【0051】
本発明の外層材には耐摩耗性を十分に発揮すべく必要な基地を得るために、基地の強化元素であるCr、MoもしくはWの少なくともいずれか1種または2種以上を含有させることが望ましい。
【0052】
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
Nbは、MC炭化物を形成する点でVと同様の作用がある。質量%でVが1.0%の場合、Nbは原子量の比より質量%で0.55×Nb%でVと等価となる。よって、(1)式の範囲でVの一部をNbで置換することができる。
【0053】
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(2)
C%−0.2×(V%+0.55Nb%)の値が0以下となると、MC炭化物の量が十分に得られなくなるとともに、基地中にVやNbが過剰となり基地の硬さが得られず耐摩耗性が低下する。また、C%−0.2×(V%+0.55Nb%)の値が2.0%を超えると、MC、MC、およびM炭化物などのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、耐熱亀裂性が劣化する。
【0054】
また、圧延ロールの用途、使用方法に応じて、本発明の外層材には以下の成分を適宜添加することができる。
【0055】
Ni:2.0%以下
Niは基地に固溶し、基地の焼入れ性を向上させるのに有効である。Niが2.0%を超えると基地のオーステナイトが安定するため、基地の硬さが十分に得られない。
【0056】
Co:10.0%以下
Coは基地部に固溶し、基地強化の効果がある。また、高温においても基地の硬さを維持できる。Coが10.0%を超えると靭性が低下する。一方、Coは高価であるので、経済性と使用条件を考慮し含有量を決定するのが望ましい。
【0057】
Ti:0.5%以下
Tiは、溶湯中で脱酸剤として作用するほか、Nと結合して窒化物を形成し、粒状炭化物の核となり、粒状炭化物を微細にする効果がある。また一部はCと結合して粒状炭化物の一部となる。Tiの効果は0.5%以下で十分である。
【0058】
Al:0.5%以下
Alは、溶湯中で脱酸剤として作用するほか、粒状炭化物を微細にする効果がある。0.5%を超えると焼入れ性を悪化させ十分な基地硬さが得がたく好ましくない。
【0059】
また、内層材の外周に本発明の外層材を形成させた複合圧延ロールにおいて、内層材の材質は特に限定するものではない。例えば内層材の縦弾性係数が210GPa程度の鋼系材料を使用した場合、本発明の高縦弾性係数の外層材との相乗効果によりロール全体としてより高い剛性を発揮できる。また、内層材の縦弾性係数が180GPa程度のダクタイル系材料を使用した場合、本発明の高縦弾性係数の外層材を用いても、ロールベンディングなどによる板形状制御を容易にすることができる。このように、内層材は用途や目的に応じて適宜選定すればよい。また、複合圧延ロールにおいて、本発明の外層材と内層材の間に1層以上の中間層を設けても構わない。さらに、本発明の圧延ロールは、本発明の外層材を形成させた中実または中空ロールであればよく、本発明の外層材を有するスリーブを軸材に嵌合して構成してもよい。
【発明の効果】
【0060】
本発明の圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールは、圧延用ワークロール全般で優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性および圧延の安定性を発揮する。特に熱間薄板圧延機の仕上列において高圧下圧延に用いられるワークロールで極めて優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性および圧延の安定性を発揮し、圧延工場における生産性の向上、ロール原単位の低減および被圧延材の品質向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明の外層材は、初晶粒状炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を遠心力鋳造用鋳型内に鋳込み、遠心力鋳造することにより、鋳型内の内面側にMC炭化物が濃化した層を形成した。供試材No.1〜5は本発明の実施例であり、本発明の遠心力鋳造で形成し、前述の図4のイ部に相当する部位より採取したものである。また、供試材No.6〜8は比較例、供試材No.9および10は従来例である。供試材No.6は静置鋳造で形成し、供試材No.7〜10は遠心力鋳造で形成した。
【0062】
採取した供試材No.1〜8およびNo.10は、鋳込後1000〜1200℃で焼入れを行い、500〜600℃で3回焼戻しを行う熱処理を行った。また、供試材No.9は鋳込後400〜500℃で加熱し、残留オーステナイト分解兼歪取り熱処理を行った。各供試材はこれらの熱処理の後、各種試験片形状に加工を行った。これらの供試材No.1〜10の化学成分(質量%)を表1に示す。ここで、表1中の式(1)はV%+0.55×Nb%の値、また式(2)はC%−0.2×(V%+0.55×Nb%)の値である。また、表1における外層材の化学成分は、溶湯の成分ではなく、最終製品における外層材の化学成分を示す。
【0063】
【表1】

【0064】
次に、各供試材の縦弾性係数の測定を行った。縦弾性係数の測定は、供試材を幅10mm、長さ60mm、厚み1.5mmに加工した試験片を用い、自由共振式固有振動法にて測定した。
【0065】
さらに、MC、MCおよびM炭化物の合計の面積率、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値、基地のビッカース硬さ、MC炭化物の平均円相当直径および円相当直径が15μm以上のMC炭化物の平均粒子間距離の測定をそれぞれ行った。
【0066】
また、耐摩耗性および耐肌荒れ性の評価として圧延摩耗試験機による摩耗試験の摩耗量および粗さの測定、耐焼付き性の評価として摩擦熱衝撃試験による焼付き面積率の測定、また靭性評価として破壊靭性値KICの測定を行った。
【0067】
MC炭化物の面積率は、まず供試材を鏡面研磨し、次に重クロム酸カリウム水溶液中で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食した後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA−II)を使用し測定した。
【0068】
また、MC、MCおよびM炭化物の面積率は、まず供試材を鏡面研磨し、次に村上試薬によって腐食することによりMC、MC、およびM炭化物を黒色に腐食または、黒色もしくは灰色に着色した後、画像解析装置を使用し測定した。なお、識別が容易な、円相当直径で1μm以上のMC、MC、およびM炭化物を測定対象とした。
【0069】
これらの画像解析は1視野が供試材の0.23mm×0.25mmに相当する視野で面積率の測定を行った。この測定を、各供試材それぞれ任意の20視野について行い、その平均値を求めた。
【0070】
MC炭化物の平均円相当直径は、まず供試材を鏡面研磨し、次に重クロム酸カリウム水溶液中で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食した後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA−II)を使用し測定した。画像解析の測定範囲は、1視野が供試材の0.23mm×0.25mmに相当する視野とし、各供試材それぞれ任意の20視野について測定し、測定値の平均値を求めた。
【0071】
円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離は、まず供試材を鏡面研磨し、次にピクリン酸アルコール溶液で基地を腐食する。これを光学顕微鏡で観察すると、基地は濃い灰色、MC炭化物は薄い灰色、MC、MCおよびM炭化物は白色に見える。このようにして、供試材試料の任意の1.0mm×1.5mmの面の倍率200倍の光学顕微鏡組織写真を用いて、円相当直径が15μm以上のMC炭化物の平均粒子間距離を測定した。
【0072】
円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の測定は、まず供試材を鏡面研磨し、次にピクリン酸アルコール溶液で基地を腐食する。これを光学顕微鏡で観察すると、基地は濃い灰色、MC炭化物は薄い灰色、MC、MCおよびM炭化物は白色に見える。このようにして供試材試料の任意の2.0mm×3.0mmの面の倍率100倍の光学顕微鏡組織写真を作製し、本発明の内接円直径の最大値を測定した。
【0073】
基地のビッカース硬さは、供試材を鏡面研磨し、ピクリン酸エタノール溶液を用いて基地を軽く腐食した後、ビッカース硬さ試験機を用いて、荷重50g〜200gの範囲で測定した。供試材それぞれ任意の5箇所についてその平均値を求めた。
【0074】
図5は圧延摩耗試験機の概略図を示す。図5において、圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延材Sを余熱する加熱炉4と、圧延材Sを冷却する冷却水槽5と、圧延材Sの巻取り機6とテンションコントローラ7とから構成される。圧延機1には試験用ロール2、3が組み込まれる。試験用ロールは前述の各供試材から作製し、外径60mm、内径40mm、幅40mmの小型スリーブロールを用いた。圧延摩耗試験機に試験用ロールを組み込み、試験条件が、圧延材料:SUS304、圧下率:25%、圧延速度:150m/min、圧延温度:900℃、圧延距離:300m/回、ロール冷却:水冷、ロール数:4重式にて試験を行った。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さと十点平均粗さ(Rz)を触針式表面粗さ計により測定した。
【0075】
図6は摩擦熱衝撃試験機の概略図を示す。この試験は、ラック8に重り9を落下させることによりピニオン10を回動させ、試験材11に噛み込み材12を強く接触させるものである。この試験により、試験材11に圧痕がつき、その一部もしくは全面に噛み込み材が焼付き付着する。焼付き面積率は焼付き付着面積を圧痕面積で割ったものを百分率で表したものである。この試験を各供試材につきそれぞれ2回行い、焼付き面積率の平均を求めた。
【0076】
破壊靭性値KICは、各供試材より破壊靭性値KIC測定用の試験片を採取し、ASTM E399に準拠した試験により測定した。測定は各供試材につき2個の試験片について行い、その平均値を求めた。
【0077】
表2に各種測定した結果を示す。すなわち、MC炭化物の面積率(%)、円相当直径が1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の合計の面積率AA(%)、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値BB(μm)、300℃における熱伝導率DD(W/m・K)、常温〜300℃における平均熱膨張係数CC(×10−6/℃)、円相当直径が15μm以上のMC炭化物の平均粒子間距離G(μm)、MC炭化物の平均円相当直径H(μm)、基地のビッカース硬さ(Hv)、摩耗量(μm)、表面粗さRz(μm)、焼付き面積率(%)および破壊靭性値KIC(kg/mm3/2)を示す。
【0078】
【表2】

【0079】
図7に本発明例の供試材No.1の金属組織を示す。図7において、白色の部分がMC炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.1はMC炭化物が高濃度に分布しているのがわかる。
【0080】
図8に比較例の供試材No.6の金属組織を示す。図8において、白色の部分がMC炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.6はMC炭化物が部分的に偏在して分布しているのがわかる。
【0081】
図9に従来例のハイス系ロール材の供試材No.10の金属組織を示す。図9において、白色の微細粒状の部分がMC炭化物、白色の網目状の部分がMC、MCおよびM炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.10はMC炭化物が部分的に偏在して分布し、MC、MCおよびM炭化物は網目状に分布しているのがわかる。
【0082】
本発明の供試材No.1〜5の縦弾性係数はすべて240GPa以上であり、特にMC炭化物の面積%が大きいものは、従来材に比べ格段に高い値が得られた。これはMC炭化物が面積率で20%以上分散分布していることが大きく寄与する。
【0083】
摩耗量は従来材の供試材No.9およびNo.10に比べ半分以下であり、耐摩耗性が極めて良好であるとともに、破壊靭性値KICも従来材以上であり耐事故性を兼ね備えている。
【0084】
比較例のNo.6は、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超え、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超える本発明の範囲外であり、粗さおよび焼付き面積率が従来例材以下であり、耐肌荒れ性および耐焼付き性が劣る。
【0085】
比較例のNo.7は、C%、Ni%、式(2)の値、MC炭化物の面積率、基地硬さ、MC炭化物の平均円相当直径が本発明の範囲外であり、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超えるものであり、摩耗量および焼付き面積率が従来例材以下であり、耐摩耗性および耐焼付き性が劣る。
【0086】
比較例のNo.8は、V%、Cr%、式(1)の値、式(2)の値、MC炭化物の面積率、MC、MCおよびM炭化物の合計面積率が本発明の範囲外であり、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超えるものであり、粗さおよびKICが従来例材以下であり、耐肌荒れ性および靭性が劣る。
【0087】
従来例のNo.9は、V%、Ni%、式(1)の値、MC炭化物の面積率、MC炭化物の平均円相当直径が本発明の範囲外であり、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超えるものであり、耐摩耗性が本発明材よりも劣る。
【0088】
本発明の圧延ロール用外層材を用いて圧延ロールを製造し、実際に圧延を行ったところ、耐摩耗性、耐肌荒れ性および耐焼付き性に優れることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールは、圧延用ワークロール全般で優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性および圧延の安定性を発揮する。特に熱間薄板圧延機の仕上列において高圧下圧延に用いられるワークロールで極めて優れた耐摩耗性、耐肌荒れ性および圧延の安定性を発揮し、圧延工場における生産性の向上、ロール原単位の低減および被圧延材の品質向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】円相当直径を説明するための図である。
【図2】内接円直径を説明するための図である。
【図3】平均粒子間距離を説明するための図である。
【図4】本発明の圧延ロール用外層材を説明するための図である。
【図5】圧延摩耗試験機の概略図である。
【図6】摩擦熱衝撃試験機の概略図である。
【図7】本発明の供試材No.1の光学顕微鏡による金属組織写真である。
【図8】比較例の供試材No.6の光学顕微鏡による金属組織写真である。
【図9】従来例の供試材No.10の光学顕微鏡による金属組織写真である。
【符号の説明】
【0091】
1 圧延摩耗試験機、 2 試験用ロール、 3 試験用ロール、 4 加熱炉、
5 冷却水槽、 6 巻取り機、 7 テンションコントローラ、 S 圧延材、
8 ラック、 9 重り、 10 ピニオン、 11 試験材、
12 噛み込み材、 A 対象物の面積、 B 円、 D 円相当直径、
E 測定対象物、
a(a1、a2、a3、a4) 円相当直径で15μm以上のMC炭化物、
b 円相当直径で15μm以下のMC炭化物、 c 内接円、 d 内接円直径、
e MC炭化物a、bを除いた領域、 L 任意の直線、
L1、L2、L3 粒子間距離、 イ MC炭化物遠心分離濃化層、
ロ イを除く部位、 ハ 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織であって、縦弾性係数が240GPa以上であることを特徴とする圧延ロール用外層材。
【請求項2】
ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の総量で0〜5%分散した組織であって、縦弾性係数が240GPa以上であることを特徴とする圧延ロール用外層材。
【請求項3】
前記組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超えないことを特徴とする請求項1または2に記載の圧延ロール用外層材。
【請求項4】
前記組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離が10〜40μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項5】
前記組織におけるMC炭化物の平均円相当直径が10〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項6】
前記組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項7】
外層材は化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:11.0%を超え40.0%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項8】
さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項7に記載の圧延ロール用外層材。
【請求項9】
前記Vの一部を、質量%で下記(1)式を満足する範囲のNbで置換することを特徴とする請求項7または8に記載の圧延ロール用外層材。
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
【請求項10】
さらに下記(2)式を満足することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(2)
【請求項11】
さらに質量%で、Ni:2.0%以下およびCo:10.0%以下のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項12】
さらに質量%で、Ti:0.5%以下およびAl:0.5%以下のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項13】
遠心鋳造で形成されてなることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の圧延ロール用外層材を用いて形成されたことを特徴とする圧延ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−38289(P2007−38289A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339910(P2005−339910)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】