説明

圧縮機入口のための流れ方向転換器

【課題】上流供給源から圧縮機に流れを送るための流れ方向転換器を提供する。
【解決手段】
本流れ方向転換器(10)は、その上流端に設置された円形の入口(20)を有する。入口(20)は、圧縮機の中心軸線(55)からずらして配置される。圧縮機は、流れ方向転換器(10)からの環状形状の軸方向流れを受けるように構成される。流れ方向転換器(10)は、軸線からずれた円形入口(20)から、圧縮機の軸線(55)の周りに配置された環状形状の出口(30)に流れを送る。流れ方向転換器(10)は、全体的に左右対称でありかつ収束する断面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機入口の分野に関する。より具体的には、本開示は、圧縮機の軸線からずらして設置された供給源からの流入流れを圧縮機内に方向転換させる入口に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械においては、一般的に回転ベーンを使用して流れに対して仕事を行うことによって流体の流れ内の圧力を増大させるために、圧縮機が使用される。圧縮機の性能は、圧縮機入口の幾何学形状によって引き起こされ得る歪みのような圧縮機内への流れにおける歪みに対して敏感である可能性がある。通常運転中に条件が変化した時、不均一な流れが圧縮機の入口においてしばしば発生する。不均一な流れの影響は、その他の設計要件の故に入口の幾何学形状に課せられた制約によって激化する可能性がある。
【0003】
入口に課せられる可能性がある1つのタイプの幾何学形状の制約は、圧縮機に連結することが必要になる場合がある装置に関連するものである。例えば、航空機用の補助動力装置(APU)においては、一般的に該APUに連結された始動モータ及び発電機のような電気装置を有することが望ましい。これらの装置の物理的要件及び配置は、APUの圧縮機への入口と関連した流路及び形状寸法にしばしば影響する。
【非特許文献1】Y. Kim et al., "The Investigation of Distorted and Enhanced Inlet Flow Influence of the Performance of a Certrifugal Compressor Stage," IMECE2001/PID-25602, Vol.6, ASME 2001, pp. 15-23, November 11-16, 2001.
【非特許文献2】D. Hill et al., "Understanding the Interaction between an Impeller and its Inlet Guide Vanes," IMECE20002-39589, pp. 53-66, November 17-22, 2002.
【非特許文献3】D. Manfrida et al., "Experimental Flow Survey in Gas Turbine Intake Models," ASME Cogen-Turbo, Vol. 1, 1987, pp. 341-347.
【非特許文献4】C. Rodgers et al., "Effect of Inlet Geometry on the Performance of Small Centrifugal Compressors," AIAA-88-2812, pp. 1-6.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、多様な作動条件下でまた様々な流れ供給源を用いて、圧縮機内に流れを送給するための改良したシステム及び方法に対する必要性が引き続き存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載したシステムの1つの実施形態では、上流供給源から中心軸線の周りに配置された環状断面を有する下流位置に流体流れを送る流れ方向転換器を提供する。上流供給源は、中心軸線からずらして設置される。方向転換器は、上流供給源に流れ連通して該上流供給源に結合された入口と、移行領域とを含む。移行領域は、入口に流れ連通しかつ横方向に対称な形状を有する。中心軸線に対して垂直に取った移行領域の断面は、該中心軸線に沿ったあらゆる所定のポイントにおける断面の面積が該所定のポイントの上流における該中心軸線に沿ったあらゆるポイントにおける断面の面積よりも小さくなるようになっている。方向転換器はまた、移行領域及び下流位置に流れ連通した出口を含む。
【0006】
本明細書に記載したシステムの別の態様では、出口は、圧縮機に流れ連通している。
【0007】
本明細書に記載したシステムのさらに別の態様では、下流位置に送給された流れの軸方向運動量に対する円周方向運動量の比は、0.4よりも小さい。他の態様では、この比は、0.2よりも小さくすることができる。幾つかの態様では、この比は、ゼロとすることができる。
【0008】
さらに別の態様では、流れ方向転換器はまた、第2の上流供給源と、入口に流れ連通した選択器とを含む。選択器は、第1の状態において上流供給源に流れ連通し、また第2の状態において第2の上流供給源に流れ連通する。
【0009】
次に、上記の及びその他の特徴について、流れ方向転換器の実施形態の図面を参照しながら説明する。図面は、本発明を説明するためのものであって、限定するためのものではない。図面には、後で説明する図1〜図7Cが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
記載したシステム及び組立体は、パイプのような供給源からの流体の流れを向け直し(方向転換し)かつ形を整え直し(形状変換し)て、流れが、圧縮機のような回転機械の部品内に導くのに適した環状断面を有するようにする。具体的には、供給源は回転機械の軸線からオフセットしているが、最終環状流れは、その軸線上に中心がある。記載したシステムは、発電システム又は産業用圧縮機システムに見ることができるようなオフセットした軸方向流れの供給源から圧縮機に流体の環状流れを供給するためのシステムに関連して説明することにする。そのようなシステムの実例には、航空機の補助動力装置(APU)、その他のタービン駆動車両、及び地上設置型の圧縮又は発電システムが含まれる。
【0011】
以下の説明において、「軸方向」という用語は、広義に回転機械がその周りで回転する軸線に平行な方向を意味する。この軸線は、システムの前方からエンジンの後方まで延びている。「半径方向」という用語は、広義に回転構成要素の回転軸線に対して垂直でありかつこの軸線に向かうように又はこの軸線から離れるように向いた方向を意味する。所定のポイントにおける「円周方向」は、局所的な半径方向に対して垂直でありかつ軸方向に対しても同様に垂直である方向である。
【0012】
「上流」方向とは、その方向から局所流れが到来している方向を意味し、他方、「下流」方向とは、その方向に局所流れが移動している方向を意味する。最も一般的な意味において、システム内を通る流れは、前方から後方になる傾向があるので、「上流方向」とは一般的に、前方方向を意味し、他方、「下流方向」とは、後方方向を意味することになる。ここに挙げた特定の実施例では、入口は、上流側つまりシステムの前方側にあり、出口は、下流側つまりシステムの後方側にある。
【0013】
軸方向及び半径方向に加えて、本明細書に記載したシステムはまた、3つの直角配向軸線の座標系に関して説明することもでき、これらの3つの直角配向軸線は、「長手方向」、「横方向」、及び「縦方向」と呼ぶことにする。長手方向は、前方から後方に延び、本明細書に示す全ての実施例における「軸方向」と同一である。他の実施形態では、様々な構成要素の回転軸線は他の軸線に沿って配向することもできることが理解されるであろうが、本明細書に記載した全ての実施例では、長手方向と軸方向とが整列するような回転軸線を使用することにする。横方向は、システムの一側面から他側面まで延びる、軸方向に対して垂直な方向として定義される。縦方向は、長手方向及び横方向の両方向に対して垂直であり、システムの頂部から底部まで延びる。
【0014】
上述したように、オフセットした入力流れは、圧縮機のような回転構成要素に供給される。圧縮機は、流体の圧力を上昇させるために流体の流れに対して仕事を行う装置である。圧縮機の具体的な用途は、ガスタービンエンジンのようなエンジン内の段としての用途、或いは貯蔵又はその他の目的のために加圧空気を生成する用途とすることができる。加圧空気は一般に、ガスタービンエンジン内で空気を燃料と混合しかつ燃料を燃焼させるのに先立って空気流を加圧するために使用される。一般的に、圧縮機に流入する流れは、圧縮機が最も効率よく作動するようにするために、比較的均一な流れ場を有するのが望ましい。
【0015】
しかしながら、圧縮機が、該圧縮機の直ぐ軸方向上流に配置されていない供給源からその入力流れを取り入れる補助動力装置(APU)のようなシステムの一部である場合には、圧縮機内に流入する流れを方向転換させかつ形を整え直す必要がある。しかしながら、環状の圧縮機内への入力に適した形態に流れを配向し直しかつ方向転換させるプロセスは、圧縮機及びその関連するエンジンの性能に悪影響を及ぼすおそれがある流れの不規則性及び不均一性をしばしば生じる。
【0016】
従って、圧縮機の軸線からずらして設置された流れを、流れの不規則性及び不均一性を持ち込まずに圧縮機に適した環状入力形態に方向転換させることのできる圧縮機のための入口システムを作り出すことが望ましい。そのようなシステムが小型であることもまた、望ましい。
【0017】
さらに、APUのようなシステム内には、エンジンの圧縮機又は関連する回転部品に取り付けられた補助的構成要素が存在することが多い。例えば、APUでは、APU構成要素の回転運動により発電することがしばしば望まれる。そのような運動を作り出すために、発電機がAPUの回転スプールに連結され、また多くの場合には、APUのスプール軸線に沿って延びるシャフトに発電機を直接連結することが望ましいことになる。そのようにすることは、入力流れ又は出力流れのいずれかをこの発電機の周りに導かなければならないことを必要とする。発電機に許容可能な作動温度(例えば、121℃(250°F)よりも低い)を維持するために、またそのようなシステムからの排気は、流入する空気よりも高温であるので、シャフトを後方ではなく前方に延ばして、発電機を圧縮機の上流にすなわち比較的低温の入力流れ内に設置ことがより実際的である。
【0018】
発電機をこの空間内に設置するために、流入する流れは、軸線からずれた位置から送られなければならないだけでなく、その流れが発電機の作動を邪魔しないような方法で発電機の周りに送られなくてはならない。流入する流れですらも周囲環境よりも高温である可能性があるので、発電機は、高温の流入する流れの通路から可能な限りより外側に配置すべきである場合もある。
【0019】
発電機に加えて、その他のタイプの構成要素を、APUの軸線上で圧縮機の上流に配置する場合もある。1つの実施例は、点火に先立ってそれを使用して最初にAPUのスプールの回転を開始させることができる電気モータである。スタータ/発電機の組合せも使用することができ、そのような装置は、APUの点火に先立ってAPUスプールをスピンアップさせるエネルギーを供給し、次にAPUスプールの回転によって供給されたエネルギーに基づいて発電するモードに切り換えることができる。
【0020】
一般に、流れ方向転換器は、直径が数インチでありかつ圧縮機前面に近接して設置される発電機、スタータ又はその他の機械装置のための空間を提供するように構成される。回転体動力学の理由により、近接した軸方向間隔が有利である。取付け及び保守のためにアクセスできるように機械装置のあらゆる側面への十分なアクセスを提供すること、及びその装置を支持しかつ構造的に固定する装着用ハードウエアのための場所を提供することも望ましい。
【0021】
APUを始動させかつAPUから発電するためのそのようなシステムが当技術分野においては時々使用されてきたが、それらの大多数は、何らかの半径方向取付け方式にてAPUの回転スプールに連結されたシステムを使用している。スタータ又は発電機などの構成要素のそのような半径方向位置は、圧縮機に流入する流路内において最小の妨害でシステムを作動させることを可能にするという一般的な目標は達成することができるが、それらは、システムに対して付加的な重量及び機械的な複雑さを持ち込み、このことにより不利益を生じるおそれがある。
【0022】
従って、軸線からずれた供給源を圧縮機への軸方向流れの環状入力内に送る方法を提供しながら、圧縮機の上流においてAPUの軸線上に配置された発電機のような構成要素の周りを流れが安全に通過することを可能にするシステムは、多くの利点をもたらすことができる。
【0023】
本明細書では、1つのそのような入口流れ方向転換器を図示しかつ説明する。そのような流れ方向転換器10の斜視図を、図1に示しており、以下に説明することにする。
【0024】
図1〜図4には、本明細書で説明する流れ方向転換器の1つの実施形態を示す。これらの図は、例示的な流れ方向転換器10の斜視図、側面図、上面図及び後面図を示す。流れ方向転換器10は、上流端に配置された入口20を含む。入口は、流れ方向転換器内に流入する空気流(図示せず)の少なくとも1つの供給源に流体連通している。出口30が、流れ方向転換器10の下流端に設置され、APU(図示せず)の圧縮機又は別の要素と流体連通している。内部流路50が、入口20と出口30と結合し、かつ空気又はその他の流体の流れが入口から出口に流れるための通路を形成する。内部流路は、一般に2つの部分、つまり移行領域52とノズル領域54とに分けられる。
【0025】
図2に最も明瞭に見ることができるように、入口20は、流れ方向転換器10の主軸線55からずらして設置される。具体的には、入口20は、中心軸線60を有するほぼ円形の断面を有する。しかしながら、出口30は、環状形状(図4を参照)を有しかつ異なる軸線55の周りに配置され、この異なる軸線55は、
圧縮機がその周りで回転するのとほぼ同一の軸線である。出口の軸線55は、「主軸線」とも呼ばれることになる。
【0026】
この図示した実施形態では、入口20の軸線60は、出口30の軸線の縦方向上方に設置される。このオフセットは、主軸線55からずれた供給源から受けている空気又はその他の流体の流れが軸線55上の供給源からのものとして供給されるのを可能にする。移行領域52を使用して、空気の流れを円形断面から環状断面へと方向転換させかつ同時に流れを軸線60から軸線55に位置転換させる。次に、ノズル領域54を使用して、圧縮機内への流れに適したサイズのアニュラス(環状流れ)へと収束させ続ける。1つの実施形態では、円弧及び半円輪郭を用いて移行領域52をモデル化し、モデルにおいて、幾つかの定数又は様々な補間方式を使用して輪郭角度を特定することができる。
【0027】
当技術分野では、これまで環状装置に供給するために円形入口を使用することが行われてきたが、大多数の装置では、環状出口と同軸に設置された入口が使用されてきた。例えば、伝統的なナセル搭載ジェットエンジンにおいては、エンジン前面の入口は、ほぼ円形の断面を有しており、圧縮機は、環状の空気流を受ける。そのような環境においては、これは、圧縮機前面から前方に延びて円形断面をアニュラス(環状断面)へと変形する単純な円錐ハブによって達成される。しかしながら、上記したように供給源の流れが主軸線55上に置かれていない場合には、そのような単純な方法を使用することはできない。
【0028】
本システムのもう1つの特徴は、流れ方向転換器10からの出力が、可能な限り殆ど正味渦流を含まない流れを生成すべきであるということである。「正味渦流」とは、流れの軸方向運動量と比較した場合の流れ内に存在する円周方向運動量の量を意味する。具体的には、流れ内に存在する渦流は、流れが圧縮機のブレードと効果的に出会う角度を変えるおそれがあるので、正味渦流は、圧縮機(又は、下流にあるその他の装置)の効率に大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0029】
例えば、ターボ過給機の入口のようなパイプ流れを環状流れに転換するための先行技術による典型的なタンジェンシャル噴射装置においては、流れ内に非常に高い度合の渦流が存在する。渦流は、タンジェンシャル噴射を使用するような装置においては望ましい場合もあるが、軸方向流れを受けるように設計された圧縮機を作動させようとする場合には不利なものとなるおそれがある。従って、正味渦流の量は、本発明の流れ方向転換器10においては最少にすることが望ましい。
【0030】
流れ方向転換器10の出口30において流れ内に存在する正味渦流の量を最少にすることに加えて、流れが出口30の円周の周りで可能な限り対称であることも望ましい。上述したのと同様な理由で、流れの性質における円周方向の変化は、出口30の下流にある圧縮機から見た時、流れ内に変動を引き起こす傾向になる。例えば、出口のタンジェンシャル渦流は、圧縮機入射角に影響を及ぼし、それが非軸対称である場合には、圧縮機に対して望ましくない非定常的な空気力学的力を引き起こす可能性がある。上述したように、ボリュート及びタンジェンシャル噴射システムは、圧縮機に対して一貫した流れを提供することができるが、それらは非常に高い正味渦流という犠牲を払ってのことであり、多くの用途にとって望ましくなく、また軸方向流れ入力に合わせて設計した圧縮機に使用するのには適していない。
【0031】
いずれかのシステムを通して流れを送るように設計した大多数の装置と同様に、正常な方向にて流れ方向転換器を通過する流れ内における圧力低下は、比較的小さいこと、つまりAPU用途の場合には1%よりも小さいことが望ましい。このことは、高い高度又は低い気圧において作動しているAPUの場合にしばしばそうであるように、圧縮機が失速限界付近で作動している用途では特に重要である。圧縮機失速はまた、流れ内の高い正味渦流によっても引き起こされる可能性がある。装置の前後における低い全体的圧力低下に加えて、流れ方向転換器の全長を可能な限り小さくして、流れ方向転換器をより少ない材料で製作ことを可能にし、また可能な限り小さな空間しか占めないようにすることも望ましい。
【0032】
これらの目標を達成するのを助けるために使用することができる1つの特徴は、その長さに沿った全ての軸方向位置において収束する断面を有する流れ方向転換器10を使用することである。システムが可能な最小のサイズ、特に可能な最小の軸方向長さを有するようにすることが望ましいので、入力流れは一般的に、軸線55上の機械装置に隣接して配置される。この小さな軸方向長さはまた、プレナムを含むシステムを使用しないことによって促進される。なぜなら、プレナム設計は、流れを収縮させるのに先立ってこれを膨張させ、この付加的な膨張が、軸方向長さを増大させるからである。
【0033】
小さな軸方向長さは、移行領域52内で強度の湾曲を使用することによって達成される。そのような強度の湾曲は、不均一な出口流れ状態及び高い圧力勾配を生じさせる流れ剥離を引き起こす可能性がある。流れ剥離は、連続的に収束する断面積を持たせることによって阻止される。
【0034】
上述したように、流れ方向転換器10は、圧縮機の主軸線55に平行な軸線60に沿った流れから圧縮機に適した環状形状の軸方向流れへの移行を行うために使用される。図5及び図6の切欠き図において最も明瞭に見ることができるように、流れ方向転換器10の一般的な作用は、流路を形成することであり、この流路においては、入口20から流入する流れの円形断面は、システムの主軸線55に向かって下向き方向に向かい、流路を横方向にはより広くするが、縦方向にはより平坦にする。
【0035】
流れが軸方向に移動するにつれて、断面の横方向部分は、それらが入口20の軸線60が設置されている側ではない主軸線55の反対側で互いに出会うまで、主軸線55の周りで円周方向に各側方に拡大される。このことは、それぞれ切断線A−A、B−B、C−Cによって図2に示した位置において取った例示的な流れ方向転換器の断面を示す図7A、図7B及び図7Cを精査することによって理解することができる。
【0036】
図7A(主軸線55に沿って下流方向を見た図を示す)で分かるように、流れ方向転換器10の内部通路50の断面は、切断線A−A(図2に示す)においてほぼ平坦なかつ丸味のある形状を有する。このポイントにおいて、断面の横方向端縁部は、流れ方向転換器の円周に沿って僅かな曲がりしか有していない。流れ方向転換器10の内表面75も同様にこの図に見ることができる。内表面75により、方向転換器の流路50の形状が定まる。この図においては、流れ方向転換器の外表面90も見ることができ、また流れ方向転換器の下流端に設置された出口30のアニュラス(環状空間)の中心に位置する開口80も見ることができる。
【0037】
アニュラスの中心にある開口80は、流れ方向転換器10の下流に設置された圧縮機又はその他の回転構成要素と、圧縮機の上流の軸線上にかつ流れ方向転換器の外表面90内に形成されたほぼ空洞内に設置された電気モータ又は発電機のような機械装置との間のシャフト又はその他の機械的連結部を収容することができる。そのような構成は、上述したように、回転構成要素の縁部に連結するように設計したベルト、歯車又はその他のデバイスを用いて装置に連結する必要なしに、装置の連結を可能にする。そのような構成はまた、流れ方向転換器10の空洞内に配置したあらゆる機械又は電気装置に対するアクセスを可能にする。
【0038】
図7Bは、流れ方向転換器10に沿って図7Aの位置よりもさらに下流に位置する図2の切断線B−Bで示す位置における主軸線55に対して垂直な断面に沿って取った切欠き図である。図7Bにおける移行領域52の内部流路の断面は、方向転換器の円周の周りで大きく拡大し始めるが、出口30のアニュラスの中央開口80をいまだ囲み終わっていないことが分かる。断面形状は、軸線に沿ってさらに拡大したが、この位置における断面の全体的サイズは、図7Aに示す断面のサイズよりも小さいことが望ましい。各連続した軸方向下流位置における断面をより小さくすることによって、全ての断面において収束した流路を形成することができる。上記したように、これによって、望ましくない流れ挙動を招く可能性がある流れ状態を制限するのを助けることができる。
【0039】
図7Cは、図2の切断線C−Cにおいて取った切欠き図を示しており、この図は、断面の横方向部分が中心軸線の周りで最後まで延びて、方向転換器10の底部において互いに出合った時の内部流路50の断面を示す。この軸方向位置において、流路50の環状形状が達成される。このポイントにおける流路50の断面のサイズも、やはり切断線B−Bにおける断面サイズよりも小さくて、流路を通る流れを収束させ続けるとことに注目されたい。
【0040】
図7A、図7B及び図7Cの断面と図3及び図6に示す上面図とから分かるように、流れ方向転換器10は、その全長に沿って横方向に対称な形状を有する。この対称性を維持することによって、流れ内に持ち込まれる正味渦流を最少にすることができる。渦流を有する個々の領域は、流れ方向転換器の軸方向長さに沿った様々なポイントに生じる可能性があるが、方向転換器の対称性は、出口30における流れが軸線55の周りのいずれの方向にも正味渦流を含まないように、ほぼ対称な流れパターンを維持するのを助ける。対称性はまた、出口30区域の円周の半径全体にわたってかつ円周の周りに均一な圧力及び質量流量を形成するのを助ける。
【0041】
正味渦流がゼロである完全に対称な流れを全ての作動条件下で必ずしも達成することができないことが分かるであろうが、対称設計は、内部流路50を通る流れ内にいかなる正味渦流も持ち込まないように構成される。具体的には、方向転換器の円周の周りでの両方向への流路の対称な横方向拡大は、断面を1つの円周方向においてのみ拡大することによって又は流れを軸線55の周りで包み込むことによって環状流れが達成されるようなボリュート及びその他のシステムにおいて使用する方法とは異なる。そのようなボリュートは環状流路を達成することはできるが、それらはまた、一方向への高い度合いのタンジェンシャル速度を持ち込み、それによって、多量の正味渦流を発生させ、さらに出口30におけるより均一性がない圧力及び質量流量分布と大きな全体圧力低下とを引き起こす。
【0042】
上述したように、移行領域52は、流れを環状断面(図7Cに見ることができるような)へと形状変換するために使用される。このポイントの後方では、流れ方向転換器10のノズル領域54が、圧縮機内に流入するのに適した半径方向寸法へと流れを収束させ続ける。流れは、ノズル領域54内で収束させ続けるべきではあるが、アニュラスの内側及び外側半径は、同じ量だけ又は同じ輪郭に従って変える必要はない。
【0043】
例えば、1つの実施形態では、移行領域52端における断面積は、入口20の面積の80%であって、ノズル領域54のために約2対1の収束度を残す。ノズル領域における収束が不十分な場合には、急激な方向転換によって、圧縮機性能を損なう流れ剥離及び厚い境界層を生じるおそれがある。これらの値は、流れ方向転換器に望まれる全収束の度合いに基づいて変化させることができる。
【0044】
剥離した横方向の流れを左側及び右側縦方向側面上に整列させかつ流れを一層軸方向に向けて方向転換させるのを助けるために、移行領域52の後方部分内にインサートを使用することができる。そのようなインサート又はベーンは必ずしも必要ではないが、これらのインサートを使用する実施形態は、これらの流れが合流する時に速度ベクトルを平行にするのを助けることができる。
【0045】
本明細書に記載した流れ方向転換器にはまた、多数の供給源の1つからの流れが方向転換器に流入するのを可能にする装置を組み込むことができる。そのような実施形態は、流れ選択器として作用すると共に流れ方向転換器としても作用する。そのような流れ選択器は、異なる作動条件下において圧縮機又はその他の下流システムを異なる流れ供給源により作動させる必要がある場合に利点を有することができる。
【0046】
例えば、流れ方向転換器がジェット機のAPUの圧縮機に連結されるような例示的な用途においては、流れ方向転換器は、周囲条件にある1つの供給源からの流れとより高い圧力にある別の供給源からの流れとの間で選択するように構成されることになる。例えば、1つの実施形態では、より高圧の供給源は、航空機の主推進エンジンの1つ又はそれ以上からの圧縮機吐出空気とすることができる。別の実施形態では、空気は、旅客機の客室から取り入れて圧縮機に供給することができる。地上設置型又は航空機搭載型のいずれかの発電及び加圧システムのための様々な高圧供給源は、記載したシステム及び方法の基本的性質を変更せずに使用することができることは、当業者には分かるであろう。
【0047】
そのような装置は、流れ方向転換器によって供給される圧縮機内への入力流れとして使用するためにこれら2つの供給源の1つを選択するのが望ましい場合に使用するものとすることができ、またこれら供給源の両方は、圧縮機又はその他の下流構成要素の主軸線55からずらして設置したパイプを通して利用できる。流れ方向転換器の入口部分内には、流れ方向転換器内に流入する流れを1つの供給源又は他の供給源から取り入れることを可能にするバルブを設置することができる。
【0048】
別の実施形態では、流れ方向転換器の入口部分は、2つのバルブ、つまり各供給源に対して1つのバルブを含むことができる。一度に単一の供給源から流れが取り入れられるのを維持するために、あらゆる所定の時点においてまさに2つの流れバルブの1つのみが開くようにシステムを作動させることができるのが望ましい。
【0049】
一般に、同時に両方の供給源から受ける流れではなく、流れをあらゆる時点において2つの供給源の1つからのみ受けるような方法でバルブを作動させることが望ましいことになる。具体的には、作動中、どの供給源を使用するかの選択は一般的に、システムの作動条件に基づいて、特により高圧の供給源からの流れの必要性があるか否かに基づいて決まることになる。
【0050】
例えば、高い高度の航空機上で作動しているAPUの場合には、周囲圧力は加圧供給源から得られることになる圧力よりも低い。周囲圧力供給源でAPUを作動させることは、APUが生成することができる動力の低下を引き起こすことになる。より高圧の入力流れを提供する入力供給源を選択するようにバルブを作動ことによって、APUによってより大きな動力を発生させることができる。適切な入力供給源を選択することにより、システムが圧縮機の所望の出口流れ状態を提供し、それによって所望の出力レベルを提供することが可能になる。
【0051】
従って、上記した圧縮機入口で使用するための流れ方向転換器の様々な実施形態は、流入流れを圧縮機内に向けて軸線からずれた流れから圧縮機軸線の周りの環状流れに方向転換する方法を提供する。これらの方法及びシステムはまた、流れ方向転換器の出口において正味渦流が低くかつ圧力及び質量流量の均一性の高い度合を有する流れを圧縮機内に供給することができる。そのようなシステムはまた、その各々が圧縮機の軸線からずらして設置された1つよりも多い供給源を圧縮機に連結しようとする場合に有効なものとすることができる。
【0052】
言うまでもなく、上記したような全ての目的及び利点が、あらゆる特定の実施形態により必ず達成できるとは限らないことを理解されたい。従って、例えば、本明細書に記載したシステム及び方法が、本明細書に教示又は示唆したのと同様なその他の目的又は利点を必ずしも達成せずに、本明細書に教示したような1つの利点又は一群の利点を達成又は最適化する方法で具現化又は実施することができることは、当業者には明らかであろう。
【0053】
さらに、当業者には、異なる実施形態の様々な特徴が相互に交換可能であることが明らかであろう。例えば、1つの実施形態に関連して説明した供給源選択装置及び方法は、他の実施形態に関連して説明した様々な流れ方向転換器で使用するようにすることができる。例えば、幾つかの実施形態では、圧縮機以外の構成要素に環状軸方向流れを供給するために、本明細書に記載した流れ方向転換器を使用することが望ましい場合がある。同様に、当業者は、本開示の原理に従って、記載した様々な特徴と各特徴の公知の均等物とを組合せまた適合させて、流れ方向転換器を構成することができる。
【0054】
本明細書におけるシステムは、特定の好ましい実施形態及び実施例に関連して開示してきたが、本発明が、具体的に開示した実施形態を超えて、本明細書におけるシステム及び方法並びにそれらの自明な変更形態及び均等物のその他の別の形実施形態及び/又は使用に拡張されることは、当業者には理解されるであろう。従って、開示した本発明の技術的範囲は、上に述べた特定の開示した実施形態によって限定されるべきではなく、提出した特許請求の範囲の公正な解釈によってのみ定められるべきであることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】例示的な流れ方向転換器の斜視図。
【図2】図1の流れ方向転換器の側面図。
【図3】図1の流れ方向転換器の上面図。
【図4】図1の流れ方向転換器の後面図。
【図5】図3に示す線5’−5’に沿って取った図3の流れ方向転換器の切欠き側面図。
【図6】図4に示す線6’−6’に沿って取った図4の流れ方向転換器の切欠き上面図。
【図7A】図2に示す線A−Aに沿って取った図2の流れ方向転換器の切欠き前面図。
【図7B】図2に示す線B−Bに沿って取った図2の流れ方向転換器の切欠き前面図。
【図7C】図2に示す線C−Cに沿って取った図2の流れ方向転換器の切欠き前面図。
【符号の説明】
【0056】
10 流れ方向転換器
20 入口
30 出口
50 内部流路
52 移行領域
54 ノズル領域
55 主軸線(圧縮機軸線)
60 入口の軸線
75 内表面
80 アニュラス内の開口
90 外表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線(55)からずらして配置された上流供給源から該中心軸線(55)の周りに配置された環状断面を有する下流位置に流体流れを送るように構成された流れ方向転換器(10)であって、
前記上流供給源に流れ連通しかつ該上流供給源に結合された入口(20)と、
前記入口(20)に流れ連通しかつ横方向に対称な形状を有しまた前記中心軸線(55)に対して垂直に取った断面を有し、前記中心軸線(55)に沿ったあらゆる所定のポイントにおける前記断面の面積が、該所定のポイントの上流に置かれた前記中心軸線(55)に沿ったあらゆるポイントにおける該断面の面積よりも小さくなるようになった移行領域(52)と、
前記移行領域(52)及び前記下流位置に流れ連通した出口(30)と、
を含む流れ方向転換器(10)。
【請求項2】
前記出口(30)が、環状断面を有する、請求項1記載の方向転換器(10)。
【請求項3】
構成要素が、前記中心軸線(55)上において前記出口(30)の上流に配置される、請求項1記載の方向転換器(10)。
【請求項4】
前記構成要素が、前記流れ方向転換器(10)を通る流体流れ内に位置していない、請求項3記載の流れ方向転換器(10)。
【請求項5】
前記出口(30)が、圧縮機に流れ連通している、請求項1記載の流れ方向転換器(10)。
【請求項6】
前記上流供給源から前記入口(20)内への流れが、前記中心軸線(55)と実質的に平行な方向に移動する、請求項1記載の流れ方向転換器(10)。
【請求項7】
前記出口(30)からの流れが、前記中心軸線(55)と実質的に平行な方向に流れる、請求項1記載の流れ方向転換器(10)。
【請求項8】
第2の上流供給源と、前記入口(20)に流れ連通して配置されかつ第1の状態及び第2の状態を有する選択器とをさらに含み、
前記選択器が、前記第1の状態において前記上流供給源に流れ連通し、また前記第2の状態において前記第2の上流供給源に流れ連通する、
請求項1記載の流れ方向転換器(10)。
【請求項9】
前記移行領域(52)の下流端及び該流れ方向転換器(10)の出口(30)に流れ連通したノズル領域(54)をさらに含む、請求項1記載の流れ方向転換器(10)。
【請求項10】
前記ノズル領域(54)が、前記中心軸線(55)に対して垂直に取った断面を有し、前記中心軸線(55)に沿ったあらゆる所定のポイントにおける前記断面の面積が、該所定のポイントの上流に置かれた前記中心軸線(55)に沿ったあらゆるポイントにおける該断面の面積よりも小さくなるようになっている、請求項1記載の流れ方向転換器(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2007−154895(P2007−154895A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−330464(P2006−330464)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】