説明

圧縮機及び冷凍装置

【課題】油分離器で分離された高温高圧の潤滑油を圧縮機内部へ戻す過程において、体積効率の低下を抑制することができる圧縮機を提供することにある。
【解決手段】圧縮機構15によって、潤滑油を含有する高温高圧の圧縮冷媒が、高圧空間S1へ吐出される。高圧空間S1の圧縮冷媒は、スクロール圧縮機101から吐出されて油分離器102に供給される。油分離器102によって、圧縮冷媒に含有される潤滑油が分離される。分離された潤滑油は、油戻し管96を流れて油分離器102の外部に排出され、差圧によって第2貯留空間Q2に吸引される。第2貯留空間Q2に吸引された潤滑油は、圧縮機構15の摺動部に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及び冷凍装置に関し、特に、圧縮機から吐出された圧縮冷媒に含まれる潤滑油を圧縮機内部へ戻す機構を備える圧縮機、及び、当該圧縮機を備える冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、冷媒ガスが冷凍サイクルを繰り返す冷媒回路を構成する圧縮機は、圧縮機内部の圧縮機構等の摺動部の潤滑性を高めるために、潤滑油を内部に有している。そのため、圧縮機から吐出される圧縮冷媒は潤滑油を含有する。しかし、潤滑油を含有する圧縮冷媒が圧縮機外部の冷媒回路へ供給されると、圧縮機内部の潤滑油が不足して摺動部の潤滑不良が引き起こされると共に、冷媒回路を構成する凝縮器内部の伝熱管に潤滑油が付着して伝熱作用が阻害される等の問題が発生する。そこで、従来、潤滑油を含有する圧縮冷媒が圧縮機外部の冷媒回路へ供給されることを防止するため、圧縮機から吐出される圧縮冷媒から潤滑油を分離して圧縮機内部へ戻す機構が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平5−223074号公報)に記載されるスクロール圧縮機では、圧縮冷媒から潤滑油を分離する油分離器(オイルセパレータ)が圧縮機本体(スクロール型コンプレッサ)の外部に配設されている。圧縮機本体のケーシング上面に配設される吐出管は、油分離器内部の上部空間に連通している。圧縮機本体の吐出管から吐出された圧縮冷媒は、油分離器内部に供給され、金属の微細線を丸めて形成されたオイル分離手段を通過する。このとき、圧縮冷媒に含まれる潤滑油が金属の微細線に付着することで、潤滑油が圧縮冷媒から分離される。圧縮冷媒から分離された潤滑油は、油分離器内部のオイル溜り室に貯留される。このオイル溜り室は、絞り機構を有するオイル戻り流路を介して、圧縮機内部の低圧空間と連通している。従って、油分離器内部のオイル溜り室に貯留された潤滑油は、オイル戻り流路を介して圧縮機内部の低圧空間に戻される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のスクロール圧縮機では、圧縮冷媒に含まれる高温高圧の潤滑油は、油分離器によって分離された後、圧縮前の低温低圧の冷媒が満たされている圧縮機内部の空間に戻される。そのため、従来のスクロール圧縮機では、圧縮前の低温低圧の冷媒が高温高圧の潤滑油によって過熱されて膨張するので、体積効率の大幅な低下を招いてしまうという問題が発生する虞がある。
【0005】
本発明の課題は、油分離器で分離された高温高圧の潤滑油を圧縮機内部へ戻す過程において、体積効率の低下を抑制することができる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る圧縮機は、密閉容器と、電動機と、圧縮機構と、駆動軸と、油分離器と、油戻し管と、隔板とを備える。密閉容器は、潤滑油が貯留される油貯留部を底部に有する。電動機は、密閉容器の内部に収容される。圧縮機構は、密閉容器の内部に収容され、電動機によって駆動される。圧縮機構は、冷媒を圧縮すると共に、密閉容器の内部の高圧空間に圧縮冷媒を吐出する。ここで、高圧空間は、圧縮冷媒が吐出される空間である。駆動軸は、密閉容器の内部に収容され、電動機によって駆動される。駆動軸は、軸心部を貫通して形成されている給油路を有する。油分離器は、密閉容器の外部に配設される。油分離器は、圧縮機構から吐出される圧縮冷媒から潤滑油を分離する。油戻し管は、油分離器によって分離された潤滑油を油分離器の外部に排出する。隔板は、密閉容器の内部に収容される。隔板は、油貯留部を第1貯留空間と第2貯留空間とに画成する。第1貯留空間は、高圧空間の一部である。第2貯留空間は、油戻し管と連通し、第1貯留空間の圧力より低い圧力を有する。給油路は、第2貯留空間に貯留される潤滑油を圧縮機構に供給するための通路である。
【0007】
第1観点に係る圧縮機では、電動機及び圧縮機構等を内部に収容する密閉容器からなる圧縮機本体が、圧縮機本体の外部に配設される油分離器と、油戻し管によって接続されている。圧縮機構によって、潤滑油を含有する高温高圧の圧縮冷媒が、高圧空間へ吐出される。高圧空間の圧縮冷媒は、圧縮機本体から吐出されて油分離器に供給される。油分離器によって、圧縮冷媒に含有される潤滑油が分離される。分離された潤滑油は、油分離器の外部に排出されて油戻し管を流れる。ここで、第2貯留空間は、高圧空間の一部である第1貯留空間より低い圧力下にある。また、油戻し管は油分離器を介して高圧空間と連通しているので、第2貯留空間は、油戻し管より低い圧力下にある。そのため、油戻し管を流れる潤滑油は、差圧によって第2貯留空間へ吸引されて貯留される。第2貯留空間に貯留された潤滑油は、給油路を経由して圧縮機構に供給され、圧縮機構の摺動部等を潤滑する。これにより、第1観点に係る圧縮機では、従来の圧縮機と異なり、油分離器によって分離された高温高圧の潤滑油が、圧縮前の低温低圧の冷媒が満たされる圧縮機本体内部の空間へ戻されることがない。そのため、圧縮機本体内部に戻された潤滑油によって圧縮前の冷媒が過熱されて膨張することがない。従って、第1観点に係る圧縮機では、体積効率の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る圧縮機は、第1観点に係る圧縮機において、第2貯留空間は、絞り部を介して第1貯留空間と連通する。
【0009】
第2観点に係る圧縮機では、第1貯留空間は、流路断面積が小さい絞り部を介して第2貯留空間と連通している。これにより、第2観点に係る圧縮機では、第1貯留空間と第2貯留空間との間で圧力差を保つことができる。また、第2観点に係る圧縮機では、圧縮機の起動直後等、油戻し管を流れる潤滑油の量が少ない場合であっても、第1貯留空間から第2貯留空間へ潤滑油が供給される。従って、第2観点に係る圧縮機では、潤滑油を摺動部に安定的に供給することができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る圧縮機は、第1観点又は第2観点に係る圧縮機において、軸受をさらに備える。軸受は、油貯留部の近傍の高圧空間に配設され、駆動軸を回転自在に支持する。第2貯留空間は、密閉容器の底部と、軸受と、隔板とによって囲まれる空間である。
【0011】
第3観点に係る圧縮機では、隔板は、例えば、円筒形状を有している。この場合、円筒の下端が密閉容器の底部と密着し、かつ、円筒内部の上部空間に軸受の下部が嵌入されることで、密閉容器の底部と、軸受と、隔板とによって囲まれる第2貯留空間が形成される。従って、第3観点に係る圧縮機では、第2貯留空間を簡便に形成することができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る圧縮機は、第3観点に係る圧縮機において、隔板は、シール部材を介して軸受と密着されている。
【0013】
第4観点に係る圧縮機では、隔板は、Oリング等のシール部材を介して軸受と密着している。従って、第4観点に係る圧縮機では、隔板と軸受との接着部において、第2貯留空間を第1貯留空間から気密的に隔離することができる。
【0014】
本発明の第5観点に係る圧縮機は、第3観点又は第4観点に係る圧縮機において、隔板は、密閉容器の底部に溶着されている。
【0015】
第5観点に係る圧縮機では、円筒の下端が密閉容器の底部に溶接により接着されている。従って、第5観点に係る圧縮機では、隔板と密閉容器との接着部において、第2貯留空間を第1貯留空間から気密的に隔離することができる。
【0016】
本発明の第6観点に係る圧縮機は、第2観点乃至第5観点のいずれかに係る圧縮機において、絞り部は、隔板に形成される細孔である。
【0017】
第6観点に係る圧縮機では、第1貯留空間に貯留される潤滑油が、隔板に形成される流路断面積が小さい細孔を経由して、第2貯留空間に供給される。
【0018】
本発明の第7観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第6観点のいずれかに係る圧縮機において、給油路は、第2貯留空間に貯留される潤滑油を差圧によって圧縮機構に供給する。
【0019】
第7観点に係る圧縮機では、給油路の上端部と下端部との間に発生する差圧によって、第2貯留空間の潤滑油を圧縮機構に安定的に供給することができる。
【0020】
本発明の第8観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第6観点のいずれかに係る圧縮機において、オイルポンプをさらに備える。オイルポンプは、第2貯留空間に配設され、電動機によって駆動される。オイルポンプは、第2貯留空間に貯留される潤滑油を吸入して給油路に吐出する。
【0021】
第8観点に係る圧縮機では、オイルポンプによって第2貯留空間の潤滑油を給油路に送出することで、潤滑油を圧縮機構に安定的に供給することができる。
【0022】
本発明の第9観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第8観点のいずれかに係る圧縮機において、給油路の内部に配設され、螺旋状に捩られた板部材をさらに備える。板部材は、第2貯留空間に貯留される潤滑油を粘性ポンプ作用によって圧縮機構に供給する。
【0023】
第9観点に係る圧縮機では、螺旋状に捩られた板部材(以下、「螺旋デバイダ」という。)が粘性ポンプとして作用する。すなわち、螺旋デバイダの下端部に潤滑油が浸っている状態で、螺旋デバイダが駆動軸と共に軸回転運動を行うと、潤滑油が螺旋デバイダを伝って上昇して圧縮機構に供給される。従って、第9観点に係る圧縮機では、螺旋デバイダを用いることで、第2貯留空間の潤滑油を圧縮機構に安定的に供給することができる。
【0024】
本発明の第10観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第9観点のいずれかに係る圧縮機において、油戻し管は、密閉容器の底部を貫通して固定されている。
【0025】
本発明の第11観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第10観点のいずれかに係る圧縮機において、油戻し管に設けられている電磁弁をさらに備える。
【0026】
第11観点に係る圧縮機では、電磁弁の開閉制御によって、油戻し管から第2貯留空間に供給される潤滑油の量を調節することができる。従って、第11観点に係る圧縮機では、圧縮機本体の起動直後等、油戻し管を流れる潤滑油の量が少ないときにおいて、油戻し管から第2貯留空間に、冷媒等の潤滑油以外の流体が供給されることを防ぐことができる。
【0027】
本発明の第12観点に係る冷凍装置は、第1観点乃至第11観点のいずれかに係る圧縮機と、凝縮器と、膨張部と、蒸発器と、を備える。
【0028】
第12観点に係る冷凍装置では、第1観点乃至第11観点のいずれかに係る圧縮機を、冷凍装置が備えることができる。第1観点乃至第11観点のいずれかに係る圧縮機は、体積効率の低下を抑制することができる。従って、第12観点に係る冷凍装置では、成績係数の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る圧縮機では、油分離器で分離された高温高圧の潤滑油を圧縮機内部へ戻す過程において、体積効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機を備える冷媒回路の概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機のポンプカバー近傍の詳細な縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る圧縮機について、図1乃至図3を参照しながら説明する。
【0032】
本実施形態における圧縮機は、高低圧ドーム型スクロール圧縮機本体(以下、「スクロール圧縮機」という)と、スクロール圧縮機の外部に配設される油分離器とから構成される。スクロール圧縮機は、互いに噛合する2つのスクロール部品の少なくとも一方が自転運動をすることなく公転運動をすることにより冷媒を圧縮する機構を有する圧縮機である。
【0033】
(1)全体構成
本実施形態に係るスクロール圧縮機101の縦断面図を図1に示す。また、本実施形態に係るスクロール圧縮機101、油分離器102、凝縮器103、膨張部104及び蒸発器105から構成される冷媒回路の概略図を図2に示す。この冷媒回路は、冷媒ガスを循環する冷凍サイクルを繰り返す。スクロール圧縮機101は、冷媒回路中の冷媒ガスを圧縮する役割を担う。
【0034】
本実施形態に係るスクロール圧縮機101は、図1に示されるように、ケーシング10、圧縮機構15、主フレーム23、オルダム継手39、駆動モータ16、副フレーム60、油分離板73、ポンプカバー97、駆動軸17、吸入管19及び吐出管20から構成される。また、本実施形態に係るスクロール圧縮機101は、図2に示されるように、吐出管20及び油戻し管96を介して、スクロール圧縮機101の外部に配設される油分離器102と接続されている。油戻し管96には電磁弁98が設けられている。以下、スクロール圧縮機101の構成部品及び油分離器102について詳述する。
【0035】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング
ケーシング10は、略円筒状の胴部ケーシング部11と、胴部ケーシング部11の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部12と、胴部ケーシング部11の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部13とから構成される。ケーシング10は、ケーシング10の内部及び外部において圧力及び温度が変化した場合に変形及び破損が起こりにくい剛性部材で成型される。また、ケーシング10は、胴部ケーシング部11の略円筒状の軸方向が鉛直方向に沿うように設置される。
【0036】
ケーシング10の内部には、圧縮機構15と、圧縮機構15の下方に配置される駆動モータ16と、ケーシング10内を鉛直方向に延びるように配設される駆動軸17等が収容されている。また、ケーシング10の上壁部12には吸入管19が気密状に溶接され、胴部ケーシング部11には吐出管20が気密状に溶接され、底壁部13には油戻し管96が気密状に溶接されている。
【0037】
ケーシング10の底部には、潤滑油を貯留するための空間である油貯留部Pが形成されている。潤滑油は、スクロール圧縮機101の運転中に圧縮機構15等の摺動部の潤滑性を良好に保つために使用される。
【0038】
(2−2)圧縮機構
圧縮機構15は、ケーシング10の内部に収容され、低温低圧の冷媒を吸引し、圧縮し、高温高圧の冷媒(以下、「圧縮冷媒」という)を吐出する。圧縮機構15は、固定スクロール部品24と、旋回スクロール部品26とから構成される。次に、固定スクロール部品24及び旋回スクロール部品26について、それぞれ説明する。
【0039】
固定スクロール部品24は、第1鏡板24aと、第1鏡板24aに直立して形成されている渦巻形状(インボリュート状)の第1ラップ24bとを有している。固定スクロール部品24には、主吸入孔(図示せず)と、主吸入孔に隣接する補助吸入孔(図示せず)とが形成されている。主吸入孔は、吸入管19と、後述する圧縮室40とを連通する。補助吸入孔は、後述する低圧空間S2と、圧縮室40とを連通する。また、第1鏡板24aの中央部には、吐出孔41が形成され、第1鏡板24aの上面には、吐出孔41と連通する拡大凹部42が形成されている。この拡大凹部42は、第1鏡板24aの上面に凹設された水平方向に広がる空間である。固定スクロール部品24の上面には、この拡大凹部42を塞ぐように蓋体44がボルト44aにより締結固定されている。そして、拡大凹部42に蓋体44が覆い被せられることにより圧縮機構15の運転音を消音させる膨張室からなるマフラー空間45が形成されている。固定スクロール部品24と蓋体44とは、ガスケット(図示せず)を介して密着させることによりシールされている。また、固定スクロール部品24には、マフラー空間45と連通し、固定スクロール部品24の下面に開口する第1連絡通路46が形成されている。
【0040】
旋回スクロール部品26は、第2鏡板26aと、第2鏡板26aに直立して形成されている渦巻形状(インボリュート状)の第2ラップ26bとを有している。第2鏡板26aの下面中央部には、第2軸受部26cが形成されている。第2鏡板26aの内部には、給油細孔63が形成されている。給油細孔63は、第2鏡板26aの上面外周部と、第2軸受部26cの内側の空間とを連通している。
【0041】
固定スクロール部品24及び旋回スクロール部品26は、第1ラップ24bと第2ラップ26bとが噛合することにより、第1鏡板24a、第1ラップ24b、第2鏡板26a及び第2ラップ26bによって囲まれる空間である圧縮室40を形成する。この圧縮室40は、後述するように、旋回スクロール部品26の公転運動によって自身の体積を減少させることにより、冷媒を圧縮する。
【0042】
(2−3)主フレーム
主フレーム23は、圧縮機構15の下方に配設され、その外周面においてケーシング10の内壁に気密状に接合されている。このため、ケーシング10の内部は、主フレーム23の下方の高圧空間S1と、主フレーム23の上方の低圧区間S2とに画成されている。主フレーム23は、主フレーム23の上面に凹設されている主フレーム凹部31と、主フレーム23の下面から下方に延設されている第1軸受部32とを有している。この第1軸受部32には、鉛直方向に第1軸受孔33が貫通して形成されている。また、主フレーム23は、ボルト等で固定することによって固定スクロール部品24を載置し、後述するオルダム継手39を介して、固定スクロール部品24と共に、旋回スクロール部品26を挟持している。また、主フレーム23の外周部には、鉛直方向に第2連絡通路48が貫通して形成されている。この第2連絡通路48は、主フレーム23の上面において第1連絡通路46と連通し、主フレーム23の下面において吐出口49を介して高圧空間S1と連通する。
【0043】
(2−4)オルダム継手
オルダム継手39は、旋回スクロール部品26の自転運動を防止するための環状部材である。オルダム継手39は、主フレーム23に形成されている長円形状のオルダム溝26dに嵌め込まれている。
【0044】
(2−5)駆動モータ
駆動モータ16は、ケーシング10の内部に収容され、主フレーム23の下方に配設されるブラシレスDCモータである。駆動モータ16は、ケーシング10の内壁に固定されるステータ51と、このステータ51の内側に僅かな間隙(エアギャップ)を設けて回転自在に収容されるロータ52とによって構成される。
【0045】
ステータ51は、電線が巻き付けられているコイル部(図示せず)と、コイル部の上方及び下方に形成されているコイルエンド53とを有している。また、ステータ51の外周面には、ステータ51の上端面から下端面に亘り、かつ、周方向に所定間隔をおいて、切欠形成されている複数のコアカット部(図示せず)が設けられている。このコアカット部は、胴部ケーシング部11とステータ51との間に鉛直方向に延びるモータ冷却通路55を形成する。
【0046】
ロータ52は、その回転中心において鉛直方向に貫通している駆動軸17を固定している。ロータ52は、駆動軸17を介して、圧縮機構15と接続されている。
【0047】
(2−6)副フレーム
副フレーム60は、駆動モータ16の下方に配設され、その外周面の一部においてケーシング10の内壁に気密状に接合されている。副フレーム60は、鉛直方向に貫通して形成されている第3軸受部60aを有している。
【0048】
(2−7)油分離板
油分離板73は、ケーシング10の内部に収容される平板状の部材である。油分離板73は、副フレーム60の上端面に固定されている。
【0049】
(2−8)ポンプカバー
ポンプカバー97は、円筒状の部材であり、ケーシング10の底壁部13と副フレーム60との間の空間において、その円筒状の軸方向が鉛直方向に沿うように配設されている。図3に示されるように、副フレーム60の下端部は、ポンプカバー97の上端部の内側の空間に嵌入されている。ポンプカバー97は、副フレーム60とOリング95を介して密着されている。ポンプカバー97の下端部は、その全周に亘って、ケーシング10の底壁部13の底面に溶着されている。
【0050】
ポンプカバー97は、油貯留部Pを、第1貯留空間Q1と第2貯留空間Q2との2つの空間に画成する。図3に示されるように、第1貯留空間Q1は、ポンプカバー97の円筒外側の空間であり、第2貯留空間Q2は、ポンプカバー97の円筒内側の空間である。第1貯留空間Q1は、高圧空間S1の一部である。第2貯留空間Q2は、後述するように、ポンプカバー97に設けられた細孔97aを介して第1貯留空間Q1と連通すると共に、駆動軸17の給油路61及び油戻し管96と連通する。スクロール圧縮機101の起動中において、第2貯留空間Q2は、第1貯留空間Q1及び油戻し管96内の空間と比べて、低い圧力下にある。
【0051】
ポンプカバー97には、図3に示されるように、流路断面積が小さい細孔97aが貫通して形成されている。細孔97aは、絞り部として機能し、第1貯留空間Q1と第2貯留空間Q2とを連通する。
【0052】
(2−9)駆動軸
駆動軸17は、ケーシング10の内部に収容され、その軸方向が鉛直方向に沿うように配設されている。駆動軸17は、図1に示されるように、その上端部の軸心が上端部を除く部分の軸心に対してわずかに偏心している形状を有している。
【0053】
駆動軸17は、駆動モータ16のロータ52に固定され、その軸回転運動によって、第1軸受部32、第2軸受部26c及び第3軸受部60aと摺動する。駆動軸17は、その上端部が第2軸受部26cに嵌入することで旋回スクロール部品26と接続されている。駆動軸17は、軸回転運動することによって、旋回スクロール部品26を駆動させる。
【0054】
駆動軸17は、軸方向に形成されている給油路61を有している。給油路61の上端は、駆動軸17の上端面と第2鏡板26aの下面とによって形成される油室83と連通している。この油室83は、第2鏡板26aの給油細孔63を介して、固定スクロール部品24と旋回スクロール部品26との摺動部(以下、「圧縮機構15の摺動部」という)に連通し、圧縮室40を介して最終的に低圧空間S2に連通する。また、給油路61の下端は、第2貯留空間Q2に連通する。
【0055】
また、駆動軸17は、給油路61から分岐する第1給油横孔61a、第2給油横孔61b及び第3給油横孔61cを有している。第1給油横孔61a、第2給油横孔61b及び第3給油横孔61cは、給油路61に対して直交して形成されている。
【0056】
(2−10)吸入管
吸入管19は、ケーシング10の外部から圧縮機構15へ、冷媒回路の冷媒を導入するための管状部材である。吸入管19は、ケーシング10の上壁部12に気密状に嵌入されている。吸入管19は、低圧空間S2を鉛直方向に貫通すると共に、内端部が固定スクロール24に嵌入されている。
【0057】
(2−11)吐出管
吐出管20は、高圧空間S1からケーシング10の外部へ、圧縮冷媒を吐出するための管状部材である。吐出管20は、ケーシング10の胴部ケーシング部11に気密状に嵌入されている。吐出管20は、高圧空間S1を水平方向に貫通すると共に、内端部が主フレーム23近傍の高圧空間S1に位置している。
【0058】
(2−12)油分離器
油分離器102は、スクロール圧縮機101の外部に設置される。油分離器102は、スクロール圧縮機101の吐出管20から吐出された圧縮冷媒から潤滑油を分離する。これにより、油分離器102は、潤滑油を含有する圧縮冷媒が冷媒回路を循環することを防止する。
【0059】
油分離器102は、図2に示されるように、入口管102b、出口管102c及び油戻し管96が、密閉容器であるタンク102aの壁部を貫通して気密上に溶接された構造を有している。
【0060】
タンク102aは、圧縮冷媒から潤滑油を分離する機構を内部に備える。圧縮冷媒から潤滑油を分離する機構の例として、遠心分離式機構がある。遠心分離式機構では、タンク102aの内部に旋回板を配設して、圧縮冷媒を旋回運動させることにより、圧縮冷媒に含まれる潤滑油の油滴を遠心力によって分離させる。圧縮冷媒から分離された潤滑油は、タンク102aの底部に貯留され、油戻し管96からタンク102aの外部へ排出される。
【0061】
入口管102bは、スクロール圧縮機101の吐出管20と連通する。入口管102bは、スクロール圧縮機101の高圧空間S1からタンク102aの内部へ、圧縮冷媒を導入するための管状部材である。
【0062】
出口管102cは、タンク102aの内部からタンク102aの外部の冷媒回路へ、潤滑油が分離された圧縮冷媒を導入するための管状部材である。
【0063】
油戻し管96は、圧縮冷媒から分離された潤滑油をタンク102aの外部へ排出するための管状部材である。油戻し管96は、図3に示されるように、第2貯留空間Q2にある底壁部13を貫通して気密上に溶接されている。すなわち、油戻し管96は、タンク102a内の空間と、第2貯留空間Q2とを連通する。また、油戻し管96には、後述する電磁弁98が取り付けられている。
【0064】
(2−13)電磁弁
電磁弁98は、油戻し管96に取り付けられている。電磁弁98は、油戻し管96内の流路を開閉するための装置である。
【0065】
電磁弁98は、駆動モータ16の駆動周波数(以下、「モータ周波数」という。)に基づいて、自動的に開閉制御を行う。具体的には、モータ周波数が所定値未満である場合には、電磁弁98は油戻し管96内の流路を閉じる制御を行い、モータ周波数が当該所定値以上である場合には、電磁弁98は油戻し管96内の流路を開く制御を行う。
【0066】
(3)動作
本実施形態におけるスクロール圧縮機101の運転動作について説明する。最初に、スクロール圧縮機101が備えられる冷媒回路を循環する冷媒の流れについて説明する。次に、スクロール圧縮機101の摺動部を潤滑する潤滑油の流れについて説明する。次に、電磁弁98の制御について説明する。
【0067】
(3−1)冷媒の流れ
駆動モータ16が駆動されることによって、ロータ52が回転する。これにより、ロータ52に固定されている駆動軸17が、軸回転運動を行う。駆動軸17の軸回転運動は、第2軸受部26cを介して旋回スクロール部品26に伝達される。駆動軸17の上端部の軸心は、駆動軸17の軸回転運動の軸心に対して偏心しているので、旋回スクロール部品26は、駆動軸17の軸回転中心に対して公転運動を行う。旋回スクロール部品26は、オルダム継手39によって自転することなく公転運動を行う。
【0068】
圧縮前の低温低圧の冷媒は、吸入管19から主吸入孔を経由して、又は、低圧空間S2から補助吸入孔を経由して、圧縮機構15の圧縮室40に吸引される。旋回スクロール部品26の旋回運動により、圧縮室40は体積を徐々に減少させながら固定スクロール部品24の外周部から中心部へ向かって移動する。その結果、圧縮室40内の冷媒は圧縮されて圧縮冷媒となる。圧縮冷媒は、吐出孔41からマフラー空間45へ吐出された後、第1連絡通路46及び第2連絡通路48を経由して、吐出口49から高圧空間S1へ導入される。そして、圧縮冷媒は、ガスガイド58と胴部ケーシング部11との間の空間を下方に向かって流れる。圧縮冷媒は、モータ冷却通路55を下降して、駆動モータ16の下方の空間に到達する。その後、圧縮冷媒は、流れの向きを反転して、他のモータ冷却通路55及びエアギャップを上昇する。最終的に、圧縮冷媒は、吐出管20からスクロール圧縮機101の外部に吐出される。
【0069】
スクロール圧縮機101から吐出された高温高圧の圧縮冷媒は、油分離器102の入口管102bからタンク102a内に吸入される。圧縮冷媒は、タンク102a内で潤滑油が分離されて、出口管102cから油分離器102の外部に吐出される。
【0070】
油分離器102から吐出された圧縮冷媒は、凝縮器103を通過することによって、冷却されて液化される。液化された冷媒は、膨張部104を通過することによって、低温低圧の冷媒になる。その後、低温低圧の冷媒は、蒸発器105を通過することによって、気化されて低温低圧の冷媒ガスとなり、最終的に吸入管19からスクロール圧縮機101の内部に吸入される。
【0071】
(3−2)潤滑油の流れ
駆動モータ16が駆動される前においては、第1貯留空間Q1と第2貯留空間Q2との間に圧力差は発生していない。このとき、第1貯留空間Q1及び第2貯留空間Q2では、副フレーム60の下端部まで潤滑油が満たされている。
【0072】
駆動モータ16が駆動されることによって、ロータ52が回転する。これにより、ロータ52に固定されている駆動軸17が、軸回転運動を行う。駆動軸17の軸回転運動によって圧縮機構15が駆動して、高圧空間S1に圧縮冷媒が吐出され始めると、高圧空間S1の圧力が次第に上昇する。これにより、高圧空間S1の一部である第1貯留空間Q1の圧力と、第1貯留空間Q1と連通する第2貯留空間Q2の圧力が上昇する。
【0073】
駆動軸17の給油路61の上端は、油室83及び給油細孔63を介して、圧縮前の冷媒が満たされる低圧空間S2に連通している。給油路61の下端は、第2貯留空間Q2に連通している。第2貯留空間Q2の圧力は上昇していくので、給油路61の上端と下端との間には次第に圧力差が発生する。その結果、給油路61自体が差圧ポンプとして作用するので、第2貯留空間Q2に貯留される潤滑油は吸引されて給油路61を上昇する。
【0074】
給油路61を上昇して油室83まで到達した潤滑油は、給油細孔63を経由して、圧縮機構15の摺動部に供給される。圧縮機構15の摺動部を摺動した潤滑油は、低圧空間S2及び圧縮室40に漏れ込む。このとき、元来高温高圧である潤滑油は、低圧空間S2及び圧縮室40に存在する圧縮前の冷媒を過熱する。また、潤滑油は、油滴の状態で圧縮冷媒に含有される。圧縮冷媒に含有される潤滑油は、圧縮冷媒と同じ経路を通って、圧縮室40から高圧空間S1へ吐出される。その後、潤滑油は、圧縮冷媒と共にモータ冷却通路55を下降した後に、一部が油分離板73に衝突する。このとき、油分離板73に付着した潤滑油は、高圧空間S1を落下して第1貯留空間Q1に貯留される。
【0075】
一方、給油路61を上昇する潤滑油の多くは、第1給油横孔61a、第2給油横孔61b及び第3給油横孔61cに供給される。第1給油横孔61aを流れる潤滑油、及び、油室83内の潤滑油の一部は、駆動軸17と第2軸受部26cとの摺動部を潤滑した後、主フレーム凹部31の底部に落下する。第2給油横孔61bを流れる潤滑油、及び、主フレーム凹部31の底部に落下した潤滑油の一部は、駆動軸17と第1軸受部32との摺動部を潤滑して主フレーム23の下端から高圧空間S1に漏出した後、高圧空間S1を落下する。なお、主フレーム凹部31の底部に落下した潤滑油の一部は、主フレーム凹部31と高圧空間S1とを連通する油通路(図示せず)を経由して高圧空間S1に到達した後、高圧空間S1を落下する。第3給油横孔61cを流れる潤滑油は、駆動軸17と第3軸受部60aとの摺動部を潤滑して高圧空間S1に漏出した後、高圧空間S1を落下する。
【0076】
高圧空間S1を落下する潤滑油は、一部が第1貯留空間Q1に落下して貯留され、一部が高圧空間S1を上昇する圧縮冷媒の流れに巻き込まれる。その結果、吐出管20からスクロール圧縮機101の外部へ吐出される圧縮冷媒は潤滑油を含有する。
【0077】
スクロール圧縮機101から吐出された圧縮冷媒は、油分離器102の入口管102bからタンク102a内に吸引されて、潤滑油が分離される。圧縮冷媒から分離された潤滑油は、タンク102aの底部に一時的に貯留される。その後、潤滑油は、タンク102a内から排出されて油戻し管96内を流れる。
【0078】
本実施形態では、給油路61自体が差圧ポンプとして作用することで、第2貯留空間Q2から潤滑油が吸引されて第2貯留空間Q2の圧力が次第に減少する。これにより、第1貯留空間Q1と第2貯留空間Q2との間に圧力差が発生する。この圧力差によって、第1貯留空間Q1に貯留される潤滑油が細孔97aを経由して第2貯留空間Q2へ吸引される。同様に、油戻し管96と第2貯留空間Q2との間にも圧力差が発生する。この圧力差によって、油戻し管96内を流れる潤滑油が第2貯留空間Q2へ吸引される。
【0079】
(3−3)電磁弁の制御
電磁弁98は、スクロール圧縮機101が起動された直後のモータ周波数が低い状態においては、閉じられている必要がある。なぜなら、このときは、油分離器102のタンク102a内に貯留されている潤滑油の量が少ないため、電磁弁98が開けられていると、タンク102a内の高温高圧の冷媒が、潤滑油と共に第2貯留空間Q2へ吸引される虞があるからである。第2貯留空間Q2へ冷媒が供給され続けると、第2貯留空間Q2を潤滑油が占めることができる容積が次第に減少していく。その結果、第2貯留空間Q2から圧縮機構15の摺動部等に潤滑油が供給されにくくなるので、摺動部の潤滑不良が引き起こされる虞が生じる。従って、電磁弁98は、スクロール圧縮機101が起動された後、ある程度の時間が経過して、油分離器102のタンク102a内に潤滑油が十分に貯留された後に、開かれる必要がある。
【0080】
本実施形態では、電磁弁98は、モータ周波数に基づいて、自動的に開閉制御を行う。ここで、駆動モータ16が駆動されてからモータ周波数が所定値に達した場合には、スクロール圧縮機101が起動されてからある程度の時間が経過しているので、油分離器102のタンク102a内に潤滑油が十分に貯留されていると見なすことができる。本実施形態では、電磁弁98は、モータ周波数が所定値未満である場合に、油戻し管96内の流路を閉じる制御を行い、モータ周波数が当該所定値以上である場合に、油戻し管96内の流路を開く制御を行う。このように、本実施形態では、電磁弁98の自動開閉制御によって、油分離器102のタンク102a内の圧縮冷媒が油戻し管96を経由して第2貯留空間Q2に吸引されることを抑制することができる。
【0081】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態では、油分離器102によって分離された高温高圧の潤滑油は、油戻し管96を介して第2貯留空間Q2へ戻される。これにより、本実施形態では、スクロール圧縮機101内部の圧縮前の冷媒が、高温高圧の潤滑油によって過熱されて膨張することを防ぐことができる。従って、本実施形態では、スクロール圧縮機101の体積効率の低下を抑制することができる。
【0082】
(4−2)
本実施形態では、第2貯留空間Q2の圧力は、油戻し管96内の圧力と比べて低いので、油戻し管96内を流れる潤滑油は、差圧によって第2貯留空間Q2へ吸引される。これにより、本実施形態では、油戻し管96内を流れる潤滑油を吸引して第2貯留空間Q2へ吐出するためのポンプ等が不要である。従って、本実施形態では、圧縮機の部品数を削減することによるコストダウン及び保守の効率化を図ることができる。
【0083】
(4−3)
本実施形態では、流路断面積が小さい細孔97aを介して、第1貯留空間Q1が第2貯留空間Q2と連通しているので、第1貯留空間Q1の潤滑油は、細孔97aを介して第2貯留空間Q2へ供給される。これにより、本実施形態では、第1貯留空間Q1から第2貯留空間Q2へ潤滑油を送油するための特別な装置なしに、単純な構造の細孔97aのみによって、第1貯留空間Q1と第2貯留空間Q2との圧力差が保持される。従って、本実施形態では、圧縮機の部品数を削減することによるコストダウン及び保守の効率化を図ることができる。
【0084】
(4−4)
本実施形態では、ポンプカバー97は円筒状の部材であるので、簡便に成形することができる。また、ポンプカバー97の上端部内側の空間に副フレーム60の下端部を嵌入し、ポンプカバー97の下端部をケーシング10の底壁部13の底面に溶着する工程によって、第2貯留空間Q2が形成される。これにより、本実施形態では、適切に成型されたポンプカバー97を従来の圧縮機に取り付けることで、第2貯留空間Q2を簡便に形成することができる。
【0085】
(4−5)
本実施形態では、電磁弁98は、モータ周波数に基づいて自動的に開閉制御を行う。これにより、本実施形態では、油分離器102のタンク102a内の圧縮冷媒が、第2貯留空間Q2に供給されることを抑制することができるので、第2貯留空間Q2の潤滑油が不足することを防止することができる。従って、本実施形態では、圧縮機の摺動部の潤滑不良を抑制することができる。
【0086】
(5)変形例
(5−1)変形例1A
本実施形態においては、スクロール圧縮機101は、固定スクロール部品24と旋回スクロール部品26とから構成される圧縮機構15を備えているが、駆動軸17の軸回転運動によって駆動される圧縮機構であれば、他の種類の圧縮機構を備えていてもよい。例えば、ロータリー式の圧縮機構やスクリュー式の圧縮機構を備えていてもよい。
【0087】
(5−2)変形例1B
本実施形態においては、ポンプカバー97には細孔97aが設けられているが、第1貯留空間Q1と第2貯留空間Q2とを連通し、かつ、絞り機構を有する流路であれば、他の手段が設けられていてもよい。
【0088】
(5−3)変形例1C
本実施形態においては、電磁弁98は、モータ周波数に基づいて自動的に開閉制御を行うが、例えば、油分離器102のタンク102a内に貯留される潤滑油の量に基づいて自動的に開閉制御を行ってもよい。この場合、電磁弁98は、潤滑油量が所定値未満である場合に閉じる制御を行い、潤滑油量が当該所定値以上である場合に開く制御を行う。これにより、油分離器102のタンク102a内の潤滑油の量を適正に保つことができると共に、第2貯留空間Q2の潤滑油が不足することを防止することができる。
【0089】
(5−4)変形例1D
本実施形態においては、油戻し管96に電磁弁98が設けられているが、代わりに流量調節機構が設けられていてもよい。例えば、モータ周波数に基づいて油戻し管96内の潤滑油の流量を調節するために、自動的に開度を制御する流量調節機構が油戻し管96に設けられていてもよい。この流量調節機構は、モータ周波数が所定値未満の場合には、開度をゼロにする制御を行い、モータ周波数が当該所定値以上の場合には、モータ周波数が増加するに従って、開度を徐々に増加させる制御を行ってもよい。
【0090】
(5−5)変形例1E
本実施形態においては、油分離器102がスクロール圧縮機101のケーシング10の外部に配設されているが、油分離器102に相当する油分離機構がケーシング10の内部に配設されていてもよい。これにより、冷凍装置のコンパクト化を図ることができる。
【0091】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る圧縮機について、図4を参照しながら説明する。
【0092】
本実施形態の基本的な構成、動作及び特徴は、第1実施形態に係る圧縮機と同一であるので、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0093】
(1)構成
本実施形態に係るスクロール圧縮機201の縦断面図を図4に示す。
【0094】
本実施形態では、第2貯留空間Q2にトロコイドポンプ193が配設されている。このトロコイドポンプ193は、ポンプケース193a及びインナーロータ193bから構成される。インナーロータ193bは、ポンプケース193aの下端面に形成されている凹部に嵌入されている。駆動軸17は、その下端部がポンプケース193aに嵌入されることによって、インナーロータ193bと接続されている。第2貯留空間Q2には、潤滑油がトロコイドポンプ193の下端部まで満たされている。
【0095】
駆動軸17が軸回転運動することによって、インナーロータ193bが駆動される。インナーロータ193bが駆動することで、トロコイドポンプ193は、作動流体を吸引して吐出するポンプとして作用する。
【0096】
(2)動作
本実施形態では、駆動モータ16が駆動されると、トロコイドポンプ193は、第2貯留空間Q2に貯留される潤滑油を吸引して、駆動軸17の給油路61に吐出する。
【0097】
(3)特徴
本実施形態では、スクロール圧縮機201は、第1実施形態において用いられる差圧ポンプではなく、トロコイドポンプ193によって、第2貯留空間Q2に貯留される潤滑油を駆動軸17の給油路61に供給する。
【0098】
従って、本実施形態では、スクロール圧縮機201の起動直後等の低周波数運転時において、給油路61の上端と下端との間に十分な差圧が発生していない場合であっても、トロコイドポンプ193によって摺動部に潤滑油を安定的に供給することができる。
【0099】
(4)変形例
本実施形態では、トロコイドポンプ193を用いているが、駆動軸17の軸回転運動によって駆動されるオイルポンプであれば、他の種類のオイルポンプが第2貯留空間Q2に配設されていてもよい。
【0100】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る圧縮機について、図5を参照しながら説明する。
【0101】
本実施形態の基本的な構成、動作及び特徴は、第1実施形態に係る圧縮機と同一であるので、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0102】
(1)構成
本実施形態に係るスクロール圧縮機301の縦断面図を図5に示す。
【0103】
本実施形態においては、駆動軸17の給油路61に、螺旋状に捩られた板部材である螺旋デバイダ299が嵌入されている。螺旋デバイダ299は、駆動軸17に対して固定されている。
【0104】
(2)動作
本実施形態では、駆動モータ16が駆動されると、駆動軸17の軸回転運動によって、螺旋デバイダ299が軸回転運動をする。螺旋デバイダ299の軸回転運動によって、螺旋デバイダ299の下端部に接触している第2貯留空間Q2の潤滑油は、螺旋デバイダ299を伝って上昇する。すなわち、螺旋デバイダ299は、粘性ポンプとして作用する。これにより、潤滑油は給油路61を上昇して、圧縮機構15の摺動部に供給される。
【0105】
(3)特徴
本実施形態では、スクロール圧縮機301は、第1実施形態において用いられる差圧ポンプではなく、螺旋デバイダ299による粘性ポンプ作用によって、第2貯留空間Q2に貯留される潤滑油を駆動軸17の給油路61に供給する。
【0106】
従って、本実施形態では、スクロール圧縮機301の起動直後等の低周波数運転時において、給油路61の上端と下端との間に十分な差圧が発生していない場合であっても、螺旋デバイダ299によって摺動部に潤滑油を安定的に供給することができる。
【0107】
(4)変形例
本実施形態では、駆動軸17の給油路61に嵌入された螺旋デバイダ299による粘性ポンプ作用を利用して、第2貯留空間Q2に貯留される潤滑油を摺動部に供給しているが、第2実施形態で用いられているトロコイドポンプ193を第2貯留空間Q2にさらに配設してもよい。
【0108】
この場合、螺旋デバイダ299による粘性ポンプ作用及びトロコイドポンプ193による吸引力によって、摺動部に潤滑油をより安定的に供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、圧縮機及び冷凍装置に適応可能であり、特に、圧縮機から吐出された圧縮冷媒に含まれる潤滑油を圧縮機内部へ戻す機構を備える圧縮機、及び、当該圧縮機を備える冷凍装置に適応可能である。
【符号の説明】
【0110】
10 ケーシング(密閉容器)
15 圧縮機構
16 駆動モータ(電動機)
17 駆動軸
60 副フレーム(軸受)
61 給油路
95 Oリング(シール部材)
96 油戻し管
97 ポンプカバー(隔板)
97a 細孔(絞り部)
98 電磁弁
101 スクロール圧縮機(圧縮機)
102 油分離器
103 凝縮器
104 膨張部
105 蒸発器
193 トロコイドポンプ(オイルポンプ)
299 螺旋デバイダ(板部材)
P 油貯留部
Q1 第1貯留空間
Q2 第2貯留空間
S1 高圧空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開平5−223074号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油が貯留される油貯留部(P)を底部に有する密閉容器(10)と、
前記密閉容器の内部に収容される電動機(16)と、
前記密閉容器の内部に収容され、前記電動機によって駆動され、冷媒を圧縮すると共に、前記密閉容器の内部の高圧空間(S1)に圧縮冷媒を吐出する圧縮機構(15)と、
前記密閉容器の内部に収容され、前記電動機によって駆動され、軸心部を貫通して形成されている給油路(61)を有する駆動軸(17)と、
前記密閉容器の外部に配設され、前記圧縮機構から吐出される圧縮冷媒から潤滑油を分離する油分離器(102)と、
前記油分離器によって分離された潤滑油を前記油分離器の外部に排出する油戻し管(96)と、
前記密閉容器の内部に収容され、前記油貯留部を第1貯留空間(Q1)と第2貯留空間(Q2)とに画成する隔板(97)と、
を備え、
前記第1貯留空間は、前記高圧空間の一部であり、
前記第2貯留空間は、前記油戻し管と連通し、前記第1貯留空間の圧力より低い圧力を有し、
前記給油路は、前記第2貯留空間に貯留される潤滑油を前記圧縮機構に供給するための通路である、
圧縮機(101)。
【請求項2】
前記第2貯留空間は、絞り部(97a)を介して前記第1貯留空間と連通する、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記油貯留部の近傍の前記高圧空間に配設され、前記駆動軸を回転自在に支持する軸受(60)をさらに備え、
前記第2貯留空間は、前記密閉容器の底部と、前記軸受と、前記隔板とによって囲まれる空間である、
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記隔板は、シール部材(95)を介して前記軸受と密着されている、
請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記隔板は、前記密閉容器の底部に溶着されている、
請求項3又は4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記絞り部は、前記隔板に形成される細孔である、
請求項2から5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記給油路は、前記第2貯留空間に貯留される潤滑油を差圧によって前記圧縮機構に供給する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記第2貯留空間に配設され、前記電動機によって駆動されるオイルポンプ(193)をさらに備え、
前記オイルポンプは、前記第2貯留空間に貯留される潤滑油を吸入して前記給油路に吐出する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記給油路の内部に配設され、螺旋状に捩られた板部材(299)をさらに備え、
前記板部材は、前記第2貯留空間に貯留される潤滑油を粘性ポンプ作用によって前記圧縮機構に供給する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記油戻し管は、前記密閉容器の底部を貫通して固定されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項11】
前記油戻し管に設けられている電磁弁(98)
をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の圧縮機と、
凝縮器(103)と、
膨張部(104)と、
蒸発器(105)と、
を備える、冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−57595(P2012−57595A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204572(P2010−204572)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】