説明

圧縮機

【課題】ロータが受ける加振力を低減することで、騒音を抑えることができる圧縮機を提供することにある。
【解決手段】モータ16は、ロータ52と、ステータ51とを有する。ステータ51は、ロータ52の径方向外側においてロータ52との間に流体が流れる隙間であるエアギャップ56が形成されるように、ロータ52の外側面から離れて配置される。ロータ52は、ロータコア52aと、第1整流部材52bとを有する。ロータコア52aは、クランク軸17に取り付けられる。第1整流部材52bは、ロータコア52aの軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に取り付けられ、ロータコア52aの端面からの軸方向の距離が増加するに従って、ロータコア52aの中心軸からの径方向の距離が徐々に減少する外表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧縮機には、円筒形状のロータと、ロータの外側面を囲むように配置されるステータとから構成されるモータが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2004−132251号公報)に記載されているロータリー圧縮機では、軸受部によって片持ち支持されているシャフトに回転子(ロータ)が固定されている。この回転子は、円筒形状を有しており、軸方向の端面が平板状に形成されている。このロータリー圧縮機では、回転子の下方に設けられた圧縮機構部によって圧縮された冷媒ガスが、回転子と固定子(ステータ)との間の隙間であるエアギャップを通過した後に、ロータリー圧縮機の外部に吐出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の圧縮機では、圧縮された冷媒ガスがエアギャップを通過する際に、冷媒ガスの流れ方向の上流側では、冷媒ガスの流れがロータの端面に衝突することによって、ロータが加振力を受ける。また、冷媒ガスの流れ方向の下流側では、冷媒ガスの流れがロータから剥離することにより発生する負圧によって、ロータが加振力を受ける。その結果、ロータの上下振動が励起されて、騒音の原因となる虞がある。
【0005】
本発明の課題は、ロータが受ける加振力を低減することで、騒音を抑えることができる圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る圧縮機は、ケーシングと、モータと、クランク軸と、圧縮機構とを備える。モータは、ケーシング内に収容される。モータは、ロータと、ステータとを有する。ステータは、ロータの径方向外側においてロータとの間に流体が流れる隙間であるエアギャップが形成されるように、ロータの外側面から離れて配置される。クランク軸は、ケーシング内に収容される。クランク軸は、モータによって駆動される。圧縮機構は、ケーシング内に収容される。圧縮機構は、クランク軸に連結される。ロータは、ロータコアと、整流部材とを有する。ロータコアは、クランク軸に取り付けられ、クランク軸と同心の円筒形状を有する。整流部材は、ロータコアの軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に取り付けられ、ロータコアの端面からの軸方向の距離が増加するに従って、ロータコアの中心軸からの径方向の距離が徐々に減少する外表面を有する。
【0007】
第1観点に係る圧縮機では、圧縮機構内の圧縮室に吸入された低圧の冷媒ガスは、圧縮室の収縮によって圧縮されて高圧の冷媒ガスとなる。圧縮された高圧の冷媒ガスは、圧縮機構内の圧縮室から吐出孔を経由して、ロータコアの一方の端面の近傍の空間に吐出される。その後、冷媒ガスは、エアギャップを通過して、ロータコアの他方の端面の近傍の空間に到達する。この圧縮機では、ロータコアの両端面のいずれか一方に、整流部材が取り付けられている。整流部材は、ロータコアの端面からの軸方向の距離が増加するに従って、軸方向に垂直な断面形状の大きさが徐々に小さくなる滑らかな外表面を有している。
【0008】
第1観点に係る圧縮機では、圧縮機構から吐出された冷媒ガスは、整流部材の表面を沿うように流れやすい。例えば、エアギャップを流れる流体の流れ方向の下流側に位置するロータコアの端面に整流部材が取り付けられている場合、エアギャップを通過した冷媒ガスは、整流部材の表面を沿うように流れやすい。これにより、冷媒ガスの流れがロータコアから剥離しにくくなるので、ロータコアの近傍で発生する負圧を抑制することができる。従って、この圧縮機では、負圧に起因してロータコアが受ける加振力が低減される。また、例えば、エアギャップを流れる流体の流れ方向の上流側に位置するロータコアの端面に整流部材が取り付けられている場合、圧縮機構から吐出されてエアギャップに入る前の冷媒ガスは、整流部材の表面を沿うように流れやすい。これにより、圧縮機構から吐出された冷媒ガスがロータコアの端面に衝突することによって、ロータコアの端面が受ける圧力を低減することができる。従って、この圧縮機では、冷媒ガスの流れの圧力に起因してロータコアが受ける加振力が低減される。以上より、この圧縮機では、整流部材によってロータコアが受ける加振力が低減されるので、運転時において、ロータコアの振動による騒音を抑えることができる。
【0009】
従って、第1観点に係る圧縮機では、ロータが受ける加振力が低減されるので、運転時の騒音を抑えることができる。
【0010】
本発明の第2観点に係る圧縮機は、第1観点に係る圧縮機において、整流部材は、エアギャップを流れる流体の流れ方向の下流側に位置するロータコアの端面に取り付けられる。
【0011】
第2観点に係る圧縮機では、エアギャップを通過した冷媒ガスは、整流部材の表面を沿うように流れやすい。これにより、冷媒ガスの流れがロータコアから剥離しにくくなるので、ロータコアの近傍で発生する負圧を抑制することができる。従って、この圧縮機では、負圧に起因してロータコアが受ける加振力が低減される。
【0012】
本発明の第3観点に係る圧縮機は、第1観点又は第2観点に係る圧縮機において、整流部材は、エアギャップを流れる流体の流れ方向の上流側に位置するロータコアの端面に取り付けられる。
【0013】
第3観点に係る圧縮機では、圧縮機構から吐出されてエアギャップに入る前の冷媒ガスは、整流部材の表面を沿うように流れやすい。これにより、圧縮機構から吐出された冷媒ガスがロータコアの端面に衝突することによって、ロータコアの端面が受ける圧力を低減することができる。従って、この圧縮機では、冷媒ガスの流れの圧力に起因してロータコアが受ける加振力が低減される。
【0014】
本発明の第4観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第3観点のいずれか1つに係る圧縮機において、軸受をさらに有する。軸受は、ケーシング内に収容される。クランク軸は、軸受によって片持ち支持される。整流部材は、軸受が位置する側にあるロータコアの端面の反対側の端面に、全体を覆うように取り付けられる。
【0015】
本発明の第5観点に係る圧縮機は、第4観点に係る圧縮機において、整流部材は、ロータコアの軸方向から見たときの中央部に、尖端部を有する。
【0016】
第5観点に係る圧縮機では、エアギャップを通過した冷媒ガスは、整流部材の表面を沿うように流れた後、尖端部に到達する。尖端部は、整流部材の表面を流れてきた冷媒ガスが互いに滑らかに合流させることができる。これにより、この圧縮機では、冷媒ガスは、尖端部によって、整流部材の表面をより滑らかに沿うように流れることができる。
【0017】
本発明の第6観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第5観点のいずれか1つに係る圧縮機において、整流部材は、ロータコアの軸方向から見たときの中央部に、クランク軸が貫通する貫通孔を有する。
【0018】
本発明の第7観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第6観点のいずれか1つに係る圧縮機において、ロータコアは、バランスウェイトが端面に取り付けられる。整流部材は、バランスウェイトを配設するための空間を内部に有する。
【0019】
第7観点に係る圧縮機では、整流部材は、バランスウェイトを配設するための空間を内部に有することによって、外表面の形状を維持することができる。
【0020】
本発明の第8観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第7観点のいずれか1つに係る圧縮機において、ロータコアは、重量バランスをとるための窪みを端面に有する。
【0021】
第8観点に係る圧縮機では、ロータコアの端面に窪みを設けることによって、整流部材は、外表面の形状を維持することができる。
【0022】
本発明の第9観点に係る圧縮機は、第1観点乃至第8観点のいずれか1つに係る圧縮機において、整流部材は、ロータコアの端面に接着または嵌入されることにより取り付けられる。
【0023】
本発明の第10観点に係る圧縮機は、ケーシングと、モータと、クランク軸と、圧縮機構とを備える。モータは、ケーシング内に収容される。モータは、ロータと、ステータとを有する。ステータは、ロータの径方向外側においてロータとの間に流体が流れる隙間であるエアギャップが形成されるように、ロータの外側面から離れて配置される。クランク軸は、ケーシング内に収容される。クランク軸は、モータによって駆動される。圧縮機構は、ケーシング内に収容される。圧縮機構は、クランク軸に連結される。ロータは、軸方向の両端面の少なくとも一方の端面が、軸方向中心部からの軸方向の距離が増加するに従って、ロータの中心軸からの径方向の距離が徐々に減少するように形成されている。
【0024】
第10観点に係る圧縮機では、ロータの端部が、第1観点に係る圧縮機が備える整流部材と同じ形状を有している。すなわち、この圧縮機では、ロータコアとは別部材の整流部材がロータコアの端面に取り付けられているのではなく、ロータコアの端部自体が整流部材と同じ形状を有している。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1、4、6、9及び10観点に係る圧縮機では、ロータが受ける加振力が低減されるので、運転時の騒音を抑えることができる。
【0026】
本発明の第2観点に係る圧縮機では、ロータコアの近傍で発生する負圧に起因してロータが受ける加振力が低減される。
【0027】
本発明の第3観点に係る圧縮機では、ロータコアの端面が受ける冷媒ガスの圧力に起因してロータが受ける加振力が低減される。
【0028】
本発明の第5観点に係る圧縮機では、冷媒ガスは、整流部材の表面をより滑らかに沿うように流れることができる。
【0029】
本発明の第7及び8観点に係る圧縮機では、整流部材は、外表面の形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態における、ロータリー圧縮機の縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における、図1のII−II線における断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における、ロータの縦断面図である。
【図4A】本発明の第1実施形態の変形例1Aにおける、ロータの縦断面図である。
【図4B】本発明の第1実施形態の変形例1Aにおける、ロータの縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における、ロータの縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態における、ロータの縦断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の変形例3Aにおける、ロータの縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態における、ロータの縦断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態の変形例4Aにおける、ロータの縦断面図である。
【図10】比較例としてのロータリー圧縮機のロータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る圧縮機について、図1乃至図4Bを参照しながら説明する。
【0032】
本実施形態における圧縮機は、ロータリー圧縮機である。ロータリー圧縮機は、シリンダ内のピストンの往復運動によってシリンダ内の圧縮室が収縮されることにより、流体を圧縮する圧縮機である。
【0033】
(1)全体構成
本実施形態に係るロータリー圧縮機101の縦断面図を図1に示す。ロータリー圧縮機101は、冷媒を循環する冷凍サイクルを繰り返す冷媒回路において、冷媒ガスを圧縮する役割を担う。
【0034】
本実施形態に係るロータリー圧縮機101は、図1に示されるように、ケーシング10、圧縮機構15、モータ16、クランク軸17、吸入管19及び吐出管20等から構成される。以下、ロータリー圧縮機101の構成部品について詳述する。
【0035】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング
ケーシング10は、略円筒状の胴部ケーシング部11と、胴部ケーシング部11の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部12と、胴部ケーシング部11の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部13とから構成される。ケーシング10は、ケーシング10の内部及び外部において圧力及び温度が変化した場合に変形及び破損が起こりにくい剛性部材で成形される。ケーシング10は、胴部ケーシング部11の略円筒状の軸方向が鉛直方向に沿うように設置される。
【0036】
ケーシング10の内部には、圧縮機構15と、圧縮機構15の上方に配置されるモータ16と、ケーシング10内を鉛直方向に延びるように配設されるクランク軸17等が収容されている。ケーシング10の壁部には、吸入管19及び吐出管20が気密状に溶接されている。
【0037】
ケーシング10の底部には、潤滑油を貯留するための空間である油貯留部Pが形成されている。潤滑油は、ロータリー圧縮機101の運転中において、圧縮機構15等の摺動部の潤滑性を良好に保つために使用される。
【0038】
(2−2)圧縮機構
圧縮機構15は、図1に示されるように、ピストン21と、ブッシュ22と、フロントヘッド23と、シリンダブロック24と、リアヘッド25とから構成される。圧縮機構15は、油貯留部Pに貯留される潤滑油に浸っている。圧縮機構15の上方の空間は、圧縮機構15によって圧縮された冷媒ガスが吐出される高圧空間S1である。圧縮機構15のフロントヘッド23の上面には、マフラー26が取り付けられている。以下、圧縮機構15の構成部品及びマフラー26について詳述する。
【0039】
(2−2−1)シリンダブロック
シリンダブロック24には、図2に示されるように、シリンダ孔24a、吸入孔24b、吐出路24c、ブッシュ収容孔24d及びブレード収容孔24eが形成されている。シリンダ孔24aは、図1に示されるように、シリンダブロック24の板厚方向に貫通する円筒状の孔である。吸入孔24bは、シリンダブロック24の外周面からシリンダ孔24aの内周面に貫通して形成されている。吐出路24cは、シリンダ孔24aの内周面の一部が切り欠かれることによって形成されている。ブッシュ収容孔24dは、シリンダブロック24の板厚方向に貫通する孔であって、板厚方向に沿って見た場合において吸入孔24bと吐出路24cとの間に位置している。ブレード収容孔24eは、シリンダブロック24の板厚方向に貫通する孔であって、ブッシュ収容孔24dと連通している。
【0040】
シリンダブロック24は、図1に示されるように、吐出路24cが後述するフロントヘッド23側を向くようにして、フロントヘッド23とリアヘッド25との間に配設されている。
【0041】
(2−2−2)ピストン
ピストン21は、円筒状のロータ部21aと、ロータ部21aの径方向外側に突出するブレード部21bとを有する。ロータ部21aは、後述するクランク軸17の偏心軸部17aに接合され、シリンダブロック24のシリンダ孔24a内に配設される。これにより、ロータ部21aは、クランク軸17が軸回転運動を行うと、クランク軸17の回転軸を中心とした公転運動を行う。ブレード部21bは、ブッシュ収容孔24d及びブレード収容孔24eに収容される。これにより、ブレード部21bは、ロータ部21aの公転運動に伴って、その長手方向に沿って進退運動を行う。
【0042】
シリンダブロック24及びピストン21は、圧縮機構15の内部にシリンダ室R1を形成する。シリンダ室R1は、吸入孔24bと連通する吸入室と、吐出路24cと連通する吐出室とに区画される。
【0043】
(2−2−3)ブッシュ
ブッシュ22は、略半円筒状の部材であって、ピストン21のブレード部21bを挟み込むようにしてブッシュ収容孔24dに収容される。
【0044】
(2−2−4)フロントヘッド
フロントヘッド23は、シリンダブロック24の吐出路24c側を覆う部材であって、ケーシング10の内壁に固定されている。図1に示されるように、フロントヘッド23には上部軸受23aが形成されており、上部軸受23aはクランク軸17を支持する。
【0045】
(2−2−5)リアヘッド
リアヘッド25は、シリンダブロック24の吐出路24c側の反対側を覆う部材である。図1に示されるように、リアヘッド25には下部軸受25aが形成されており、下部軸受25aはクランク軸17を支持する。
【0046】
(2−2−6)マフラー
マフラー26は、その上面の中央部がクランク軸17に貫通されている状態で、クランク軸17周辺のフロントヘッド23の上面を覆うように配設される部材である。図1に示されるように、マフラー26は、フロントヘッド23の上面との間に、シリンダブロック24の吐出路24cから吐出された冷媒ガスが貯留されるマフラー空間S2を形成する。マフラー26は、その上面に、マフラー空間S2内の冷媒ガスを高圧空間S1に吐出するためのマフラー吐出孔26aを有している。マフラー吐出孔26aは、例えば、クランク軸17周りに形成される環状の孔である。
【0047】
(2−3)モータ
モータ16は、ケーシング10の内部に収容され、圧縮機構15の上方に配設されるブラシレスDCモータである。モータ16は、クランク軸17に連結され、クランク軸17の回転軸を中心に軸回転運動を行うロータ52と、高圧空間S1内の冷媒ガスが流れる隙間であるエアギャップ56をロータ52との間に形成するステータ51とから構成される。
【0048】
ステータ51は、導線が巻き付けられているコイル部(図示せず)と、コイル部の上方及び下方に形成されているコイルエンド53とを有し、ケーシング10の内壁に固定されている。エアギャップ56は、ステータ51の内側面とロータ52の外側面とによって挟まれた空間である。
【0049】
ロータ52は、図1に示されるように、ロータコア52aと、ロータコア52aの上部端面に接着によって取り付けられている第1整流部材52bとから構成される。ロータコア52aは、複数の積層鋼板(図示せず)が積層することにより構成されるロータ52の主要部分である。ロータコア52aは、クランク軸17に固定して取り付けられ、クランク軸17と同心の円筒形状を有している。第1整流部材52bは、ロータコア52aの上部端面から上方に向かって凸状に膨らんだ形状を有し、樹脂で薄板状に成形されている部材である。第1整流部材52bは、図1に示されるように、ロータコア52aの上部端面からの軸方向の距離が増加するに従って、ロータコア52aの回転軸からの径方向の距離が徐々に減少する滑らかな外表面を有する。また、第1整流部材52bは、図1に示されるように、軸方向の上端が尖っている尖端部52b1を有している。
【0050】
(2−4)クランク軸
クランク軸17は、図1に示されるように、偏心軸部17aが設けられている。クランク軸17は、偏心軸部17aが設けられていない部分が、ロータ52のロータコア52aに固定されている。クランク軸17は、軸回転運動を行うことによって、圧縮機構15を駆動する。
【0051】
(2−5)吸入管
吸入管19は、ケーシング10の外部から圧縮機構15へ、冷媒回路を流れる圧縮前の冷媒ガスを導入するための管状部材である。吸入管19は、ケーシング10の胴部ケーシング部11に気密状に嵌入されている。吸入管19は、ケーシング10の内部で、シリンダブロック24の吸入孔24bに接続されている。
【0052】
(2−6)吐出管
吐出管20は、高圧空間S1からケーシング10外部の冷媒回路へ、圧縮された冷媒ガスを吐出するための管状部材である。吐出管20は、ケーシング10の上壁部12の上面に気密状に嵌入されている。
【0053】
(3)動作
モータ16が駆動されると、クランク軸17の回転軸周りに偏心軸部17aが偏心回転する。これにより、偏心軸部17aに接合されているピストン21のローラ部21aは、その外周面がシリンダ孔24aの内周面と接している状態で、シリンダ孔24a内で公転する。ローラ部21aがシリンダ孔24a内で公転するに伴って、ピストン21のブレード部21bがその両側面をブッシュ22に挟まれながら進退する。また、ローラ部21aがシリンダ孔24a内で公転するに伴って、吸入孔24bと連通する吸入室は、徐々に容積を増加させて吐出路24cと連通する吐出室となり、この吐出室は、徐々に容積を減少させて再び吸入室となる。これにより、吸入管19から吸入孔24bを経由して吸入室に吸入された低圧の冷媒ガスは、吐出室で高圧の冷媒ガスに圧縮された後、吐出室から吐出路24cを経由してマフラー空間S2に吐出される。マフラー空間S2内の冷媒ガスは、マフラー吐出孔26aを経由して高圧空間S1に吐出される。このとき、冷媒ガスは、マフラー吐出孔26aから、クランク軸17周りのロータコア52aの下部端面に向かって吐出される。その後、冷媒ガスは、図1に示されるように、エアギャップ56の下端部からエアギャップ56内に入って上方に向かって流れた後、エアギャップ56の上端部からエアギャップ56外に出る。そして、冷媒ガスは、エアギャップ56の上方にある吐出管20からケーシング10の外部に吐出される。
【0054】
(4)特徴
本実施形態では、エアギャップ56を通過した冷媒ガスは、第1整流部材52bの近傍を流れる際に、図3に示されるように、第1整流部材52bの表面を沿うように流れやすい。第1整流部材52bによって冷媒ガスの流れはロータコア52aから剥離しにくいので、冷媒ガスの流れの剥離に起因してロータコア52aの近傍で発生する負圧を抑制することができる。その結果、ロータ52が受ける鉛直方向の加振力が低減される。従って、本実施形態では、ロータリー圧縮機101の運転時において、ロータ52の鉛直方向の振動による騒音を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1整流部材52bは、尖端部52b1を有しているので、第1整流部材52bの表面を沿うように流れてきた冷媒ガスは、尖端部52b1の上方で互いに滑らかに合流する。これにより、エアギャップ56を通過した冷媒ガスは、尖端部52b1によって、第1整流部材52bの表面を滑らかに沿うように流れることができる。
【0056】
一方、比較例として挙げる、本実施形態に係る第1整流部材52bを有さないロータコアを備える圧縮機では、図10に示されるように、ロータコアの上端面が平板状である。このため、エアギャップを通過した冷媒ガスの流れはロータコアから剥離しやすく、ロータコアの近傍で発生する負圧によって、ロータは鉛直方向の加振力を受けやすい。従って、この圧縮機では、ロータの振動による騒音が運転中に発生する虞がある。
【0057】
(5)変形例1A
本実施形態では、図3に示されるように、第1整流部材52bは、尖端部52b1を有しているが、図4A及び図4Bに示されるように、第1整流部材52bは、尖端部52b1を有していなくてもよい。この場合でも、エアギャップ56を上方に向かって流れてきた冷媒ガスは、第1整流部材52bの表面を沿うように流れやすいので、冷媒ガスの流れの剥離に起因してロータコア52aの近傍で発生する負圧を抑制することができる。
【0058】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る圧縮機について、図5を参照しながら説明する。本実施形態の基本的な構成、動作及び特徴は、第1実施形態に係る圧縮機と同一であるので、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0059】
(1)構成
本実施形態では、図5に示されるように、ロータコア52aは、第1整流部材52bが取り付けられている上部端面の反対側に位置する下部端面に、第2整流部材52cが取り付けられている。第2整流部材52cは、第1整流部材52bと同様に、ロータコア52aの下部端面からの軸方向の距離が増加するに従って、ロータコア52aの回転軸からの径方向の距離が徐々に減少する外表面を有する。また、第2整流部材52cは、クランク軸17の軸方向から見た場合に、貫通孔52c1を中央部に有している。第2整流部材52cは、貫通孔52c1がクランク軸17に貫通されている状態で、ロータコア52aの下部端面に接着によって取り付けられている。
【0060】
(2)特徴
本実施形態では、マフラー空間S2から高圧空間S1に吐出された冷媒ガスは、エアギャップ56に入る前に、第2整流部材52cの表面を沿うように流れやすい。そのため、マフラー吐出孔26aからロータコア52aの下部端面に向かって吐出された冷媒ガスの流れの圧力に起因してロータコア52aが受ける加振力が低減される。従って、本実施形態では、ロータリー圧縮機101の運転時において、ロータ52の鉛直方向の振動による騒音を低減することができる。
【0061】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る圧縮機について、図6及び図7を参照しながら説明する。本実施形態の基本的な構成、動作及び特徴は、第1実施形態に係る圧縮機と同一であるので、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0062】
(1)構成
本実施形態では、図6に示されるように、第1整流部材52bが取り付けられているロータコア52aの上部端面にバランスウェイト18が取り付けられている。バランスウェイト18は、ロータコア52aの上部端面と第1整流部材52bとの間の空間に納まる形状を有している。
【0063】
(2)特徴
本実施形態では、ロータコア52aの上部端面に取り付けられたバランスウェイト18によって、ロータ52の軸回転運動中におけるロータ52の重量バランスを確保することができる。これにより、ロータ52の軸回転運動が安定するので、クランク軸17の軸回転運動中における径方向の振動を抑制することができる。また、本実施形態では、バランスウェイト18は、ロータコア52aの上部端面と第1整流部材52bとの間の空間に納まる形状を有しているので、第1整流部材52bは、外表面の形状を維持することができる。
【0064】
(3)変形例
(3−1)変形例3A
本実施形態では、ロータコア52aの上部端面にバランスウェイト18が取り付けられているが、図7に示されるように、ロータコア52aの端面に窪み52a1がさらに設けられていてもよい。本変形例では、窪み52a1を適切に設けることによって、ロータコア52aの重量バランスを確保することができる。
【0065】
(3−2)変形例3B
本実施形態では、ロータコア52aの上部端面にバランスウェイト18が取り付けられているが、バランスウェイト18が取り付けられていない状態で、ロータコア52aの端面に変形例3Aに係る窪み52a1のみが設けられていてもよい。本変形例では、窪み52a1を適切に設けることによって、ロータコア52aの重量バランスを確保することができる。
【0066】
(3−3)変形例3C
本実施形態では、ロータコア52aの上部端面にバランスウェイト18が取り付けられているが、バランスウェイト18以外の他のバランスウェイトが、ロータコア52aの端面にさらに取り付けられていてもよい。
【0067】
(3−4)変形例3D
本実施形態及び変形例3A乃至3Cにおいて、第2実施形態に係る第2整流部材52cが、ロータコア52aの下部端面にさらに取り付けられていてもよい。
【0068】
例えば、変形例3A及び3Bにおいて、第2整流部材52cがロータコア52aの下部端面に取り付けられていると共に、ロータコア52aの下部端面に窪み52a1が設けられている場合であっても、第2整流部材52cは、窪み52a1によって、外表面の形状を維持することができる。
【0069】
また、変形例3Cにおいて、第2整流部材52cがロータコア52aの下部端面に取り付けられていると共に、バランスウェイト18以外の他のバランスウェイトがロータコア52aの下部端面に取り付けられている場合であっても、このバランスウェイトは、ロータコア52aの下部端面と第2整流部材52cとの間の空間に納まる形状を有しているので、第2整流部材52cは、外表面の形状を維持することができる。
【0070】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る圧縮機について、図8及び図9を参照しながら説明する。本実施形態の基本的な構成、動作及び特徴は、第1実施形態に係る圧縮機と同一であるので、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0071】
(1)構成
本実施形態に係るロータリー圧縮機401では、図8に示されるように、ロータ352のロータコア352aは、第1実施形態に係るロータコア52aの上部端面よりも上方に向かって凸状に突き出ている第1整流端部352bを有している。第1整流端部352bは、第1実施形態に係る第1整流部材52bと同じ形状を有している。第1整流端部352bは、ロータコア352aの一部分であり、ロータコア352aと同様に複数の積層鋼板が積層することにより構成される。また、第1整流端部352bは、軸方向の上端が尖っている尖端部352b1を有している。
【0072】
(2)特徴
本実施形態では、第1実施形態と同様に、エアギャップ56を通過した冷媒ガスの流れは、第1整流端部352bによって、ロータコア352aから剥離しにくい。これにより、冷媒ガスの流れの剥離に起因してロータコア352aの近傍で発生する負圧を抑制することができる。その結果、ロータ352が受ける鉛直方向の加振力が低減される。従って、本実施形態では、ロータリー圧縮機401の運転時において、ロータ352の鉛直方向の振動による騒音を低減することができる。
【0073】
(3)変形例4A
本実施形態では、ロータコア352aは、第1整流端部352bを上部に有しているが、図9に示されるように、第2実施形態に係る第2整流部材52cと同様の形状を有する第2整流端部352cを下部に有していてもよい。第1整流端部352bと同様に、第2整流端部352cは、ロータコア352aの一部であり、ロータコア352aと同様に複数の積層鋼板が積層することにより構成される。
【0074】
本変形例では、マフラー空間S2から高圧空間S1に吐出された冷媒ガスは、エアギャップ56に入る前に、第2整流端部352cの表面を沿うように流れやすい。従って、マフラー吐出孔26aからロータコア52aの下部端面に向かって吐出された冷媒ガスの流れの圧力に起因してロータコア52aが受ける加振力が低減される。
【0075】
<他の変形例>
(1)
第1実施形態乃至第3実施形態において、ロータリー圧縮機101のロータコア52aに取り付けられる第1整流部材52b及び第2整流部材52cについて説明したが、これらの第1整流部材52b及び第2整流部材52cは、スクロール圧縮機など、他の種類の圧縮機に用いられてもよい。
【0076】
(2)
第1実施形態乃至第3実施形態において、第1整流部材52b及び第2整流部材52cは、それぞれ、ロータコア52aの上部端面及び下部端面に接着によって取り付けられているが、第1整流部材52b及び第2整流部材52cは、それぞれ、ロータコア52aの上部端面及び下部端面に嵌入されることによって取り付けられてもよい。例えば、第1整流部材52bは、その下端部に、ロータコア52aの上部端面の外周部に設けられた窪みに嵌合する爪を有していてもよい。
【0077】
(3)
第4実施形態において、ロータリー圧縮機401のロータコア352aが有する第1整流端部352b及び第2整流端部352cについて説明しましたが、これらの第1整流端部352b及び第2整流端部352cは、スクロール圧縮機など、他の種類の圧縮機に用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る圧縮機は、ロータが受ける加振力を低減することで、騒音を抑えることができるので、有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 ケーシング
15 圧縮機構
16 モータ
17 クランク軸
18 バランスウェイト
23a 上部軸受(軸受)
25a 下部軸受(軸受)
51 ステータ
52 ロータ
52a ロータコア
52a1 窪み
52b 第1整流部材(整流部材)
52b1 尖端部
52c 第2整流部材(整流部材)
52c1 貫通孔
56 エアギャップ
101 ロータリー圧縮機(圧縮機)
316 モータ
352 ロータ
401 ロータリー圧縮機(圧縮機)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2004−132251号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(10)と、
前記ケーシング内に収容され、ロータ(52)と、前記ロータの径方向外側において前記ロータとの間に流体が流れる隙間であるエアギャップ(56)が形成されるように前記ロータの外側面から離れて配置されるステータ(51)とを有するモータ(16)と、
前記ケーシング内に収容され、前記モータによって駆動されるクランク軸(17)と、
前記ケーシング内に収容され、前記クランク軸に連結される圧縮機構(15)と、
を備え、
前記ロータは、前記クランク軸に取り付けられ前記クランク軸と同心の円筒形状を有するロータコア(52a)と、前記ロータコアの軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に取り付けられ前記ロータコアの端面からの軸方向の距離が増加するに従って前記ロータコアの中心軸からの径方向の距離が徐々に減少する外表面を有する整流部材(52b,52c)とを有する、
圧縮機(101)。
【請求項2】
前記整流部材は、前記エアギャップを流れる流体の流れ方向の下流側に位置する前記ロータコアの端面に取り付けられる、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記整流部材は、前記エアギャップを流れる流体の流れ方向の上流側に位置する前記ロータコアの端面に取り付けられる、
請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記ケーシング内に収容される軸受(23a,25a)をさらに有し、
前記クランク軸は、前記軸受によって片持ち支持され、
前記整流部材は、前記軸受が位置する側にある前記ロータコアの端面の反対側の端面に全体を覆うように取り付けられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記整流部材は、前記ロータコアの軸方向から見たときの中央部に、尖端部(52b1)を有する、
請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記整流部材は、前記ロータコアの軸方向から見たときの中央部に、前記クランク軸が貫通する貫通孔(52c1)を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記ロータコアは、バランスウェイト(18)が端面に取り付けられ、
前記整流部材は、前記バランスウェイトを配設するための空間を内部に有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記ロータコアは、重量バランスをとるための窪み(52a1)を端面に有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記整流部材は、前記ロータコアの端面に接着または嵌入されることにより取り付けられる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項10】
ケーシング(10)と、
前記ケーシング内に収容され、ロータ(352)と、前記ロータの径方向外側において前記ロータとの間に流体が流れる隙間であるエアギャップ(56)が形成されるように前記ロータの外側面から離れて配置されるステータ(51)とを有するモータ(316)と、
前記ケーシング内に収容され、前記モータによって駆動されるクランク軸(17)と、
前記ケーシング内に収容され、前記クランク軸に連結される圧縮機構(15)と、
を備え、
前記ロータは、軸方向の両端面の少なくとも一方の端面が、軸方向中心部からの軸方向の距離が増加するに従って前記ロータの中心軸からの径方向の距離が徐々に減少するように形成されている、
圧縮機(401)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−117459(P2012−117459A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268291(P2010−268291)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】