説明

圧縮膨張タービンユニット

【課題】 空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能な圧縮膨張タービンユニットを提供する。
【解決手段】 この圧縮膨張タービンユニット5は、コンプレッサ6および膨張タービン7を備える。コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13と膨張タービン7のインペラ7aの主軸14は平行に配置する。これら各主軸13,14はそれぞれラジアル軸受15〜18により支持する。両主軸13,14の間には、回転を伝達する伝達機構22と、この伝達機構を介して前記コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aを駆動するモータ26とを配置する。各主軸13,14には、前記インペラ6a,7aの背圧によるアキシアル力を補償する磁気軸受27,28を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気サイクル冷凍冷却システムに適用される圧縮膨張タービンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
空気サイクル冷凍冷却システムは、冷媒として空気を用いるため、フロンやアンモニアガス等を用いる場合に比べてエネルギー効率が不足するが、環境保護の面では好ましい。また、冷凍倉庫等のように、冷媒空気を直接に吹き込むことができる施設では、庫内ファンやデフロストの省略等によってトータルコストを引下げられる可能性があり、このような用途で空気サイクル冷凍冷却システムが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、−30℃〜−60℃のディープ・コール領域では、空気冷却の理論効率は、フロンやアンモニアガスと同等以上になることが知られている。ただし、上記空気冷却の理論効率を得ることは、最適に設計された周辺装置があって、始めて成り立つとも述べられている。周辺装置は、圧縮機や膨張タービン等である。
圧縮機,膨張タービンとしては、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている(特許文献1)。
【0004】
なお、プロセスガスを処理するタービン・コンプレッサとしては、主軸の一端にタービン翼車、他端にコンプレッサ翼車を取付け、前記主軸を電磁石の電流で制御するジャーナルおよびスラスト軸受で支承した磁気軸受式タービン・コンプレッサが提案されている(特許文献2)。
また、ガスタービンエンジンにおける提案ではあるが、主軸支持用の転がり軸受に作用するスラスト荷重が軸受寿命の短縮を招くことを回避するため、転がり軸受に作用するスラスト荷重をスラスト磁気軸受により低減することが提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特許第2623202号公報
【特許文献2】特開平7−91760号公報
【特許文献3】特開平8−261237公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、空気サイクル冷凍冷却システムとして、ディープ・コール領域で高効率となる空気冷却の理論効率を得るためには、最適に設計された圧縮機や膨張タービンが必要となる。
圧縮機,膨張タービンとしては、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている。このタービンユニットは、膨張タービンの生じる動力によりコンプレッサ翼車を駆動できることで空気サイクル冷凍機の効率を向上させている。
【0006】
しかし、コンテナ用冷凍ユニットに空気サイクル冷凍冷却システムを適用する場合、コンテナ用冷凍ユニットの奥行き寸法が420mm以下に制限されていることから、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットを用いるものとすると、その主軸を奥行き方向に配置することが困難である。この場合、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車は小型のものに限られるから、満足する冷凍能力を得ようとすると主軸を高速回転させる必要がある。その結果、軸受損、風損、モータの鉄損が大きくなり、効率の向上が困難となる。
【0007】
この発明の目的は、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能な圧縮膨張タービンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の圧縮膨張タービンユニットは、コンプレッサおよび膨張タービンを備え、上記コンプレッサのインペラの主軸と上記膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれラジアル軸受により支持し、両主軸の間に、回転を伝達する伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサのインペラを駆動するモータとを配置し、前記各主軸に、前記インペラの背圧によるアキシアル力を補償する磁気軸受を設けたことを特徴とする。
この構成によると、コンプレッサのインペラの主軸と膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれラジアル軸受により支持しているので、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、前記主軸をコンテナ用冷凍ユニットの奥行き方向に配置することができる。これにより、コンプレッサおよび膨張タービンのインペラとして大径のものを採用できることから、低速回転で運転しても必要な圧縮比および流量が得られ、小径インペラの場合よりも断熱効率向上が容易で、満足する冷凍能力を得ることができる。低速回転での運転であると、騒音も小さくなり、風損、軸受損、モータ鉄損を小さくできる。
また、両主軸の間に、回転を伝達する例えば歯車列からなる伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサおよび膨張タービンのインペラを駆動するモータとを配置しているので、前記歯車列の増速比などの選択によって各主軸の回転数を任意に設定できる。そのため、コンプレッサおよび膨張タービンの効率が最適となる回転数で各主軸を回転させることができる。
また、各主軸に、各インペラの背圧によるアキシアル力を補償する磁気軸受を設けているので、各主軸に作用するアキシアル力を、非接触で支持することができて、回転トルクの増大を回避しながらアキシアル力を支持することができ、安定した回転が得られる。
【0009】
この発明において、前記伝達機構が、前記モータの回転を増速して前記主軸に伝達する増速機構であっても良い。この構成の場合、モータとして低速汎用のモータを使用しても各主軸を高速回転させることができ、コストを低減できる。冷凍冷却も容易となる。
【0010】
この発明において、前記ラジアル軸受にグリース潤滑のアンギュラ玉軸受を用いても良い。グリース潤滑であると、油潤滑と異なり、軸受内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを確実に防止できる。
【0011】
この発明において、前記インペラの背面と、この背面付近に位置する前記ラジアル軸受との間を、非接触シールによって隔離しても良い。この構成の場合、インペラの出口空気や入口空気がラジアル軸受に導入されるのを非接触シールで阻止できるので、軸受内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを防止できる。
この発明において、前記コンプレッサおよび膨張タービンが遠心式であっても良い。この発明の圧縮膨張タービンユニットは、上記各タービンが遠心式である場合に、その各効果がより効果的に発揮される。
【0012】
この発明の空気サイクル冷凍冷却システムは、上記構成の圧縮膨張タービンユニットを備えた空気サイクル冷凍冷却システムであって、流入空気に対して、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却,前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行うものである。
この構成によると、圧縮膨張タービンユニットにおいて、各インペラの主軸の安定した高速回転が得られ、かつ軸受の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることから、圧縮膨張タービンユニットの全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としても信頼性が向上する。また、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンユニットの主軸軸受の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上することから、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の圧縮膨張タービンユニットは、コンプレッサおよび膨張タービンを備え、上記コンプレッサのインペラの主軸と上記膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれラジアル軸受により支持し、両主軸の間に、回転を伝達する伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサのインペラを駆動するモータとを配置し、前記各主軸に、前記インペラの背圧によるアキシアル力を補償する磁気軸受を設けたため、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、低速回転で必要な冷凍能力が得られ、効率の向上が可能となる。
この発明の空気サイクル冷凍冷却システムは、上記発明の圧縮膨張タービンユニットを備えた空気サイクル冷凍冷却システムであって、流入空気に対して、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行うものとしたため、空気サイクル冷凍冷却システムの全体として信頼性が向上し、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。この圧縮膨張タービンユニット5は、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに組み込んだものであり、コンプレッサ6および膨張タービン7を備える。コンプレッサ6および膨張タービン7には、遠心式のものが用いられる。コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13と、膨張タービン7のインペラ7aの主軸14とは、冷凍ユニットの奥行き方向に向けて互いに平行に配置されている。これら各主軸13,14は、それぞれ冷凍ユニットの本体ハウジング20内に配置されたラジアル軸受15,16,17,18により支持されている。これらのラジアル軸受15〜18には、グリース潤滑のアンギュラ玉軸受が用いられる。本体ハウジング20は、冷凍ユニットの隔壁を兼ねるものであっても良い。
【0015】
コンプレッサ6は、冷凍ユニットの被冷却空間10に臨ませたインペラ6aと微小の隙間d1を介して対向するコンプレッサ部ハウジング6bを有し、中心部の吸込口6cから軸方向に吸入した空気を、インペラ6aで圧縮し、外周部の出口(図示せず)から矢印6dで示すように排出する。
膨張タービン7は、冷凍ユニットの被冷却空間10に臨ませたインペラ7aと微小の隙間d2を介して対向するタービン部ハウジング7bを有し、外周部のノズル12から矢印7cで示すように吸い込んだ空気を、インペラ7aで断熱膨張させ、中心部の排出口7dから軸方向に排出する。
前記コンプレッサ部ハウジング6b、タービン部ハウジング7b、および本体ハウジング20により、タービンユニットハウジング5aが構成される。
【0016】
前記本体ハウジング20内における両主軸13,14の間には、回転を伝達する伝達機構22と、この伝達機構22を介して前記コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aを駆動するモータ26とが配置されている。伝達機構22は、モータ26の出力軸26aに設けられた歯車23と、コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13に設けられ前記歯車23に噛み合う歯車24と、膨張タービン7のインペラ7aの主軸14に設けられ前記歯車23に噛み合う歯車25とでなる歯車列として構成される。歯車列の歯数比は、モータ26の回転出力が、歯車23,24を介してコンプレッサ6のインペラ6aの主軸13に増速して伝達されると共に、歯車23,25を介して膨張タービン7のインペラ7aの主軸14に増速して伝達されるように設定される。すなわち、この場合、伝達機構22は、モータ26の回転を増速して各主軸13,14に伝達する増速機構として構成されている。
【0017】
コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13には、インペラ6aの背圧によるアキシアル力を補償するアキシアル磁気軸受27が設けられている。このアキシアル磁気軸受27は、強磁性体からなるスラスト板29と電磁石30とで構成される。スラスト板29は、主軸13の前記本体ハウジング20内に向けた軸端において、主軸13に垂直かつ同軸に設けられたフランジ状の円板である。電磁石30は、前記スラスト板29のインペラ6a側に向く片面とは反対側の片面を電磁石ターゲットとして、この片面に非接触で対向するように本体ハウジング20内に設置されている。この電磁石30からスラスト板29に作用する吸引力で、前記インペラ6aの背圧によるスラスト力が補償される。すなわちスラスト力が支持される。
【0018】
膨張タービン7のインペラ7aの主軸14にも、インペラ7aの背圧によるアキシアル力を補償するアキシアル磁気軸受28が設けられている。このアキシアル磁気軸受28も、強磁性体からなるスラスト板31と電磁石32とで構成される。スラスト板31は、主軸14の前記本体ハウジング20内に向けた軸端において、主軸14に垂直かつ同軸に設けられたフランジ状の円板である。電磁石32は、前記スラスト板31のインペラ7a側に向く片面とは反対側の片面を電磁石ターゲットとして、この片面に非接触で対向するように本体ハウジング20内に設置されている。この電磁石32からスラスト板31に作用する吸引力で、前記インペラ7aの背圧によるスラスト力が補償される。
【0019】
なお、前記アキシアル磁気軸受27,28の他の構成として、前記各インペラ6a,7aの背面あるいは前記各歯車24,25の側面に非接触で対向するように前記各電磁石30,32を配置し、インペラ6a,7aや歯車24,25を電磁石30,32で吸引するようにして、前記各スラスト板29,31を省略しても良い。
【0020】
コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13を支持するラジアル軸受15,16は、インペラ6a側に位置する前側ラジアル軸受15と、前記スラスト板29側に位置する後側ラジアル軸受16とでなり、これら一対のラジアル軸受15,16に挟まれる軸方向位置に前記歯車24が設けられている。インペラ6aの背面と前側ラジアル軸受15との間、およびスラスト板29と後側ラジアル軸受16との間は、それぞれ非接触シール35,36によって隔離されている。
【0021】
膨張タービン7のインペラ7aの主軸14を支持するラジアル軸受17,18も、インペラ7a側に位置する前側ラジアル軸受17と、前記スラスト板31側に位置する後側ラジアル軸受18とでなり、これら一対のラジアル軸受17,18に挟まれる軸方向位置に前記歯車25が設けられている。インペラ7aの背面と前側ラジアル軸受17との間、およびスラスト板31と後側ラジアル軸受18との間は、それぞれ非接触シール37,38によって隔離されている。
上記各非接触シール35〜38は、隙間を小さくすることで、回転時のシールを行うものである。
【0022】
この構成の圧縮膨張タービンユニット5によると、コンプレッサ6のインペラ6aの主軸13と膨張タービン7のインペラ7aの主軸14とを平行に配置し、これら各主軸13,14をそれぞれラジアル軸受15〜18により支持しているので、空気サイクル冷凍冷却システムを適用したコンテナ用冷凍ユニットに用いる場合でも、前記主軸13,14をコンテナ用冷凍ユニットの奥行き方向に配置することができる。これにより、コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aとして大径のものを採用できることから、低速回転で運転しても必要な圧縮比および流量が得られ、小径インペラの場合よりも断熱効率向上が容易で、満足する冷凍能力を得ることができる。低速回転での運転であると、騒音も小さくなり,風損、軸受損、モータ鉄損を小さくできる。
【0023】
また、両主軸13,14の間に、回転を伝達する例えば歯車列からなる伝達機構22と、この伝達機構22を介して前記コンプレッサ6および膨張タービン7のインペラ6a,7aを駆動するモータ26とを配置しているので、前記歯車列の増速比などの選択によって各主軸13,14の回転数を任意に設定できる。そのため、コンプレッサ6および膨張タービン7の効率が最適となる回転数で各主軸13,14を回転させることができる。
【0024】
また、両主軸13,14に、各インペラ6a,7aの背圧によるアキシアル力を補償するスラスト磁気軸受27,28を設けているので、各主軸13,14に作用するアキシアル力を、非接触で支持することができて、回転トルクの増大を回避しながらアキシアル力を支持することができ、安定した回転が得られる。また、摩耗がなくて長期安定性が得られる。
【0025】
この実施形態では、前記伝達機構22を、モータ26の回転を増速して前記各主軸13,14に伝達する増速機構として構成しているので、モータ26として低速汎用のモータを使用しても各主軸13,14を高速回転させることができ、コストを低減できる。冷凍冷却も容易となる。
【0026】
また、この実施形態では、インペラ6a,7aの背面と、この背面付近に位置する前側ライジアル軸受15,17との間を、非接触シール35,37によって隔離している。これにより、例えばコンプレッサ6においては、インペラ6aの出口空気が前側ラジアル軸受15に導入されるのを非接触シール35,36で阻止できるので、前側ラジアル軸受15,17内の潤滑剤が空気の流れによって漏出するのを防止できる。ここでは、ラジアルル軸受15〜18がグリース潤滑のアンギュラ玉軸受からなるので、油潤滑と異なり、潤滑油の漏れが生じ難い。
【0027】
図2は、図1に示す圧縮膨張タービンユニット5を用いた空気サイクル冷凍冷却システムの全体の構成を示す。この空気サイクル冷凍冷却システムは、コンテナ用冷凍ユニットの被冷却空間10の空気を直接に冷媒として冷却するシステムであり、被冷却空間10にそれぞれ開口した空気の取入口1aから排出口1bに至る空気循環経路1を有している。この空気循環経路1に、予圧縮手段2、第1の熱交換器3、圧縮膨張タービンユニット5のコンプレッサ6、第2の熱交換器3、中間熱交換器9、および前記圧縮膨張タービンユニット5の膨張タービン7が順に設けられている。中間熱交換器9は、同じ空気循環経路1内で取入口1aの付近の流入空気と、後段の圧縮で昇温し、冷却された空気との間で熱交換を行うものであり、取入口1aの付近の空気は熱交換器9a内を通る。
【0028】
予圧縮手段2はブロア等からなり、モータ2aにより駆動される。第1の熱交換器3および第2の熱交換器8は、冷却媒体を循環させる熱交換器3a,8aをそれぞれ有し、熱交換器3a,8a内の水等の冷却媒体と空気循環経路1の空気との間で熱交換を行う。各熱交換器3a,8aは、冷却塔11に配管接続されており、熱交換で昇温した冷却媒体が冷却塔11で冷却される。なお、前記予圧縮手段2を含まない構成の空気サイクル冷凍冷却システムでもよい。
【0029】
この空気サイクル冷凍冷却システムは、被冷却空間10を0℃〜−60℃程度に保つシステムであり、被冷却空間10から空気循環経路1の取入口1aに0℃〜−60℃程度で1気圧の空気が流入する。なお、以下に示す温度および気圧の数値は、一応の目安となる一例である。取入口1aに流入した空気は、中間熱交換器9により、空気循環経路1中の後段の空気の冷却に使用され、30℃まで昇温する。この昇温した空気は1気圧のままであるが、予圧縮手段2により1.4気圧に圧縮させられ、その圧縮により、70℃まで昇温する。第1の熱交換器3は、昇温した70℃の空気を冷却すれば良いため、常温程度の冷水であっても効率良く冷却することができ、40℃に冷却する。
【0030】
熱交換により冷却された40℃,1.4気圧の空気が、圧縮膨張タービンユニット5のコンプレッサ6により、1.8気圧まで圧縮され、この圧縮により70℃程度に昇温した状態で、第2の熱交換器8により40℃に冷却される。この40℃の空気は、中間熱交換器9で−30℃の空気により−20℃まで冷却される。気圧はコンプレッサ6から排出された1.8気圧が維持される。
中間熱交換器9で−20℃まで冷却された空気は、圧縮膨張タービンユニット5の膨張タービン7により断熱膨張され、−55℃まで冷却されて排出口1bから被冷却空間10に排出される。この空気サイクル冷凍冷却システムは、このような冷凍サイクルを行う。
【0031】
この空気サイクル冷凍冷却システムでは、圧縮膨張タービンユニット5において、各インペラ6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13,14の安定した高速回転が得られ、かつラジアル軸受15〜18の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることで、ラジアル軸受15〜18の長期耐久性が向上することから、圧縮膨張タービンユニット5の全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としての信頼性が向上する。このように、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンユニット5の主軸軸受15〜18の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上するため、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態にかかる圧縮膨張タービンユニットの断面図である。
【図2】図1の圧縮膨張タービンユニットを適用した空気サイクル冷凍冷却システムの系統図である。
【符号の説明】
【0033】
2…予圧縮手段
3…第1の熱交換器
5…圧縮膨張タービンユニット
6…コンプレッサ
6a…インペラ
7…膨張タービン
7a…インペラ
8…第2の熱交換器
13,14…主軸
15〜18…ラジアル軸受
22…伝達機構
23,24,25…歯車
26…モータ
27,28…アキシアル磁気軸受
35,37…非接触シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサおよび膨張タービンを備え、上記コンプレッサのインペラの主軸と上記膨張タービンのインペラの主軸とを平行に配置し、これら各主軸をそれぞれラジアル軸受により支持し、両主軸の間に、回転を伝達する伝達機構と、この伝達機構を介して前記コンプレッサのインペラを駆動するモータとを配置し、前記各主軸に、前記インペラの背圧によるアキシアル力を補償する磁気軸受を設けたことを特徴とする圧縮膨張タービンユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記伝達機構が、前記モータの回転を増速して前記主軸に伝達する増速機構である圧縮膨張タービンユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記ラジアル軸受にグリース潤滑のアンギュラ玉軸受を用いた圧縮膨張タービンユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記インペラの背面と、この背面付近に位置する前記ラジアル軸受との間を、非接触シールによって隔離した圧縮膨張タービンユニット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記コンプレッサおよび膨張タービンが遠心式である圧縮膨張タービンユニット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の圧縮膨張タービンユニットを備えた空気サイクル冷凍冷却システムであって、流入空気に対して、前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、熱交換器による冷却,前記圧縮膨張タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、他の熱交換器による冷却、前記圧縮膨張タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、を順次行うものである空気サイクル冷凍冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−62901(P2009−62901A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232182(P2007−232182)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】