説明

圧電デバイスの製造方法

【課題】貼り合わせ構造を有する基板にスルーホールを形成する場合に、マイクロクラックを生じさせずに工程時間を短縮することができる製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、第1の基板11と、第1の基板11よりも高い靱性を有する第2の基板21とを貼り合わせる工程と、第1の基板11において、第2の基板21と貼り合わせた側と逆側から、第1の貫通孔12を形成する工程と、第2の基板21において、第1の基板11と貼り合わせた側と逆側から、第1の貫通孔12に対応した位置に、第1の貫通孔12とは異なる形成方法で第2の貫通孔22を形成する工程と、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスの製造方法に関する。より詳しくは、圧電基板に別の基板を貼り合わせた構造の圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信機器の回路部においては、段間フィルタやデュプレクサが必須である。段間フィルタやデュプレクサには、従来から圧電デバイスが用いられている。圧電デバイスは、弾性表面波(SAW)デバイスや弾性境界波デバイス等の弾性波デバイスの他、BAW、FBAR等を含む。これらの圧電デバイスは、圧電基板上に形成されている。
【0003】
圧電デバイスの構造としては、例えば特許文献1の構造が知られている。特許文献1では、図5のように、第1の圧電基板111上と第2の圧電基板121上に、それぞれ櫛型電極113と123が形成されている。第1の圧電基板111と第2の圧電基板121とは、櫛型電極113と123が対向するように接合部材131で接合されている。櫛型電極113、123はそれぞれ接続電極112、122と電気的に接続されている。そして、接続電極112と122とは電気的に接続されている。そして、接続電極122と表面電極133とを電気的に接続するために、第2の圧電基板121にはスルーホール124が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−546207号公報
【発明の概要】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、共振周波数の温度特性を調整するために、圧電基板に別の基板を貼り合わせた構造の圧電デバイスが知られている。この貼り合わせ構造を有する基板を特許文献1の構造に適用する場合には、貼り合わせ構造を有する構造にスルーホールを形成する必要がある。工法によっては、孔をあけるのに時間がかかったり、マイクロクラックが生じる等の不具合が生じていた。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであり、貼り合わせ構造を有する基板にスルーホールを形成する場合に、マイクロクラックを生じさせずに工程時間を短縮することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、第1の基板と、前記第1の基板よりも高い靱性を有する第2の基板とを貼り合わせる工程と、前記第1の基板において、前記第2の基板と貼り合わせた側と逆側から、第1の貫通孔を形成する工程と、前記第2の基板において、前記第1の基板と貼り合わせた側と逆側から、前記第1の貫通孔に対応した位置に、前記第1の貫通孔とは異なる形成方法で第2の貫通孔を形成する工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明では、第1の基板と第2の基板とを貫通するスルーホールを、第1の基板と第2の基板とで異なる方法により形成する。したがって、スルーホールの形成時に、マイクロクラックの発生を抑制し、工程時間を短縮することができる。
【0010】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第1の基板が圧電基板であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第1の貫通孔に第1の接続電極を形成する工程と、前記第2の貫通孔に第2の接続電極を形成する工程と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第2の貫通孔を形成する工程において、前記第2の基板の貫通孔の形成方法がサンドブラスト法であることが好ましい。
【0013】
かかる場合、第2の接続電極の密着強度を向上させることが可能である。
【0014】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第1の貫通孔を形成する工程において、前記第1の貫通孔の形成方法が反応性イオンエッチング法であることが好ましい。
【0015】
かかる場合、第1の基板にクラックを生じずに貫通孔を形成することができる。
【0016】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第2の基板の線膨張係数が、前記第1の基板の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。
【0017】
かかる場合、第1の基板の熱膨張が、第2の基板により抑制される。そのため、第1の基板の熱膨張による周波数変化を低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第1の基板の、前記第2の基板と貼り合わせた面と逆側の面に、空洞を形成するように第3の基板を貼り合わせる工程を備えることが好ましい。
【0019】
かかる場合、圧電デバイスを小型化することができる。
【0020】
また、本発明に係る圧電デバイスの製造方法は、前記第3の基板と第4の基板を貼り合わせる工程を備えることが好ましい。
【0021】
かかる場合、第3の基板の共振周波数の温度特性の調整をすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、第1の基板と第2の基板とを貫通するスルーホールを、第1の基板と第2の基板とで異なる方法により形成する。したがって、スルーホールの形成時に、マイクロクラックの発生を抑制し、工程時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る圧電デバイスの製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明に係る圧電デバイスの製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明に係る圧電デバイスの製造方法を示す断面図である。
【図4】圧電デバイスの断面図の例である。
【図5】従来の圧電デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1〜図3は、本発明に係る圧電デバイスの製造方法を示す断面図である。
【0026】
まず、図1(A)のように、第1の基板11と、第1の基板11よりも高い靱性を有する第2の基板21とを貼り合わせる。第1の基板11は、例えば第2の基板21と貼り合わせた後に研磨等で薄層化することで、所定の厚みを形成することができる。第1の基板11は、圧電基板であることが好ましい。第1の基板11の材質としては、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ホウ酸リチウム、ランガサイト、水晶などが挙げられる。また、単結晶基板は靱性が低いため、第1の基板11として単結晶基板を用いた場合に、本発明は特に有効である。
【0027】
第2の基板21は、基板の共振周波数の温度特性を調整するために貼り合わされる。第2の基板21の材質は、後の工程でスルーホールを形成して導通させるため、絶縁体であり、かつリーク電流の小さいことが好ましい。例えば、アルミナ、ガラス、サファイア、高抵抗シリコン、樹脂などが挙げられる。また、第2の基板21の線膨張係数は、第1の基板11の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。基板に熱が加わった場合、第1の基板11の熱膨張が、第2の基板21のために抑制される。そのため、熱膨張による共振周波数の変化を低減することができるためである。
【0028】
次に、図1(B)のように、第1の基板11に第1の貫通孔12を形成する。第1の貫通孔12は、第1の基板11と第2の基板21とを貼り合わせた構造において、第1の基板11の、第2の基板21と貼り合わせた側と逆側から形成される。第1の貫通孔12の形成方法としては、例えば反応性イオンエッチング法や、イオンミリング法が挙げられる。反応性イオンエッチング法の場合、化学反応でエッチングを行なう。したがって、第1の基板11の靱性が低い場合にも、マイクロクラックを生じさせずにエッチングをすることができる。
【0029】
そして、図1(C)のように、第1の貫通孔12に、第1の接続電極13を形成する。また、同時に第1の表面電極14を形成しても良い。第1の表面電極14の例としては、例えば櫛型電極が挙げられる。第1の接続電極13と第1の表面電極14とは、例えばスパッタリングや蒸着で形成することができる。第1の接続電極13は、第1の表面電極14と電気的に接続するために形成される。第1の接続電極13は、少なくとも第1の貫通孔12に沿った部分に形成される。そして、第1の基板11の主面上まで引き出されていても良い。第1の表面電極14は、第1の基板11の主面上に形成される。
【0030】
そして、図2(D)のように、第2の基板21に第2の貫通孔22を形成する。第2の貫通孔22は、第1の基板11における第1の貫通孔12に対応した位置に、第1の貫通孔12と連通するように形成される。その結果、貼り合わせ構造を有する基板にスルーホール構造を形成することとなる。第2の貫通孔22は、第2の基板21において、第1の基板11と貼り合わせた側と逆側から形成される。第2の貫通孔22は、第1の貫通孔12と異なる形成方法で形成される。第2の貫通孔22の形成方法としては、例えばサンドブラスト法や、レーザー加工法などが挙げられる。これらの形成方法は、第1の貫通孔12の形成方法に比べて、加工時間を短縮することができる。また、安価に貫通孔を形成することができる。第2の貫通孔22を形成する際には、基板の界面で加工を停止しなくとも、多少オーバーエッチングしても良い。第2の基板21と第1の接続電極13の選択比が異なるため、第1の接続電極13が残る位置まで加工することが可能である。
【0031】
そして、図2(E)のように、第2の貫通孔22に、第2の接続電極23を形成する。第2の接続電極23は、第1の接続電極13と電気的に接続するように形成される。第2の接続電極23は、例えばスパッタリングや蒸着で形成することができる。本実施形態ではスルーホール構造に対して、第1の基板11側と第2の基板21側とから別々に電極を形成している。別々に電極を形成することにより、1回で電極を形成する場合に比べて、より確実にスルーホール構造の導通をとることができる。スルーホール構造に1回で電極を形成しようとした場合には、スルーホール構造に電極を充填させる必要がある。したがって充填が不十分になり、導通が不十分になる可能性が高い。また、充填する工法自体も、貫通孔の側壁に給電膜を形成してから充填めっきをするなど、難易度が高いものとなるためである。
【0032】
第2の接続電極23は、少なくとも第2の貫通孔22に沿った部分に形成される。第2の貫通孔22がサンドブラスト法で形成されている場合、第2の貫通孔22の表面が適度に粗面化される。したがって、第2の接続電極23を形成する際に、第2の基板21への密着強度を向上させることが可能である。
【0033】
また、図2(F)のように、別に第3の基板31と第4の基板41とを貼り合わせておく。そして、第3の基板31の主面上に、第3の接続電極33と、第3の表面電極34とを形成する。あらかじめ第3の接続電極33と第3の表面電極34とを第3の基板31に形成した後に貼り合せても良い。第3の表面電極34の例としては、例えば櫛型電極が挙げられる。第3の基板31は、例えば圧電基板が好ましい。第3の基板31の材質は、例えば第1の基板と同様の例が挙げられる。第4の基板41は、基板の共振周波数の温度特性を調整するために用いられる。そして、第4の基板41の材質は、例えば第2の基板と同様の例が挙げられる。
【0034】
そして、図3(G)のように、第1の基板11と第2の基板21を貼り合わせた構造と、第3の基板31と第4の基板41を貼り合わせた構造とを接合部材51で接合する。その際、第1の基板11の、第2の基板21と貼り合わせた面と逆側の面に、空洞を形成するように第3の基板31を対向するように貼り合わせる。
【0035】
図3(G)のように接合した構造とすることで、例えば第1の基板11と第2の基板21を貼り合わせた構造と、第3の基板31と第4の基板41を貼り合わせた構造との各々にフィルタ機能を持たせて、圧電デバイスをデュプレクサとすることができる。そして、第1の表面電極14と第3の表面電極34とは、空洞を介して対向する構造とすることで、圧電デバイスを小型化することができる。
【0036】
第1の表面電極14と第3の表面電極34とを、外部と電気的に接続するために、第1の表面電極14は、第1の接続電極13と電気的に接続されている。また、第3の表面電極34は、第3の接続電極33、接続線路52を介して第1の接続電極13と電気的に接続されている。第2の接続電極23は、外部のマザーボード等に実装できるように、第2の貫通孔22から引き出される構造となっている。
【0037】
圧電デバイスは、第2の接続電極23が形成された第2の基板21側が第1の基板11側に比べて外側になる構造である。かかる構造の場合、第2の接続電極23が外部環境にさらされることとなる。したがって、信頼性試験時において第2の接続電極23の密着強度が重要である。第2の貫通孔22をサンドブラスト法で形成した場合には、上述したように密着強度が向上するため、信頼性を向上させることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態において、第1の基板11と第2の基板21を貼り合わせた構造だけでなく、第3の基板31と第4の基板41を貼り合わせた構造に対しても、本発明の製造方法を適用させることが可能である。
【0039】
本発明に係る圧電デバイスの製造方法により製造された圧電デバイスの断面図の別の例を図4に示す。図1〜3の例と共通する点は省略する。
【0040】
図4(A)は圧電デバイスを金属ケースで封止した例である。第1の基板11は第2の基板21と貼り合わされている。そして、第1の基板11の主面上には、第1の表面電極14が形成されている。第1の表面電極14は、第1の接続電極13を介して第2の接続電極23と電気的に接続されている。第2の接続電極23は、はんだバンプ63を介して実装電極64と電気的に接続されている。実装電極64はマザーボード61上に形成されており、圧電デバイスはマザーボード61上に実装される。金属ケース62は、第1の表面電極14を保護するように、圧電デバイスを覆って封止するように設けられる。
【0041】
図4(B)は、圧電デバイスの第1の表面電極14を、樹脂により封止した例である。第1の基板11は、接合部材65を介して樹脂層66と接合されている。樹脂層の例としては、例えばポリイミド樹脂等が挙げられる。第1の表面電極14は、樹脂層66と接合部材65により封止されている。第2の接続電極23は、はんだバンプ63を介して実装電極64と電気的に接続されている。実装電極64はマザーボード61上に形成されており、圧電デバイスはマザーボード61上に実装される。
【0042】
以上、本発明の圧電デバイスの製造方法がこの内容に限定されることはなく、発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0043】
11 第1の基板
12 第1の貫通孔
13 第1の接続電極
14 第1の表面電極
21 第2の基板
22 第2の貫通孔
23 第2の接続電極
31 第3の基板
33 第3の接続電極
34 第3の表面電極
41 第4の基板
51 接合部材
52 接続線路
61 マザーボード
62 金属ケース
63 はんだバンプ
64 実装電極
65 接合部材
66 樹脂層
111 第1の圧電基板
112 接続電極
113 櫛型電極
121 第2の圧電基板
122 接続電極
123 櫛型電極
131 接合部材
132 空洞
133 表面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、前記第1の基板よりも高い靱性を有する第2の基板とを貼り合わせる工程と、
前記第1の基板において、前記第2の基板と貼り合わせた側と逆側から、第1の貫通孔を形成する工程と、
前記第2の基板において、前記第1の基板と貼り合わせた側と逆側から、前記第1の貫通孔に対応した位置に、前記第1の貫通孔とは異なる形成方法で第2の貫通孔を形成する工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板が圧電基板である、請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1の貫通孔に第1の接続電極を形成する工程と、
前記第2の貫通孔に第2の接続電極を形成する工程と、
を備える、請求項1または2に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2の貫通孔を形成する工程において、前記第2の貫通孔の形成方法がサンドブラスト法である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1の貫通孔を形成する工程において、前記第1の貫通孔の形成方法が反応性イオンエッチング法である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第2の基板の線膨張係数が、前記第1の基板の線膨張係数よりも小さい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板の、前記第2の基板と貼り合わせた面と逆側の面に、空洞を形成するように第3の基板を貼り合わせる工程を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第3の基板と第4の基板を貼り合わせる工程を備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−130385(P2011−130385A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289687(P2009−289687)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】