説明

圧電モーターの製造方法、圧電モーター、液体噴射装置及び時計

【課題】 圧電素子と振動部材との位置関係を高精度に維持しながら効率良く所定の作業を進めることができる圧電モーターの製造方法を提供する。
【解決手段】 圧電アクチュエーター10と、回転軸3と、圧電アクチュエーター10を回転軸3に向かって付勢する付勢手段80とを具備する圧電モーター1の製造方法であって、突起部21の基端となる振動部材20の短手方向の辺と突起部21の境界に圧電素子30の厚さ方向に突出する凸部26を形成するとともに、振動部材20の長手方向の二辺の相対向する位置から面方向に突出している腕部22の基端となる前記長手方向の二辺のそれぞれの境界に前記圧電素子30の厚さ方向に突出する凸部27を形成する工程と、凸部26、27に圧電素子30の端面を当接させて振動部材20に対する圧電素子30の位置を規制することによりその位置合わせを行ないつつ振動部材20に圧電素子30を貼着する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子によって被駆動部を駆動する圧電モーターの製造方法、圧電モーター、圧電モーターを用いた液体噴射装置及び圧電モーターを用いた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電モーターは、圧電素子を具備する圧電アクチュエーターによって回転軸を回転駆動させるものである。ここで、圧電モーターに用いられる圧電アクチュエーターは、振動部材と、振動部材の一方面側に保持された圧電素子とを具備する。圧電素子は、振動部材側に設けられた第1電極と、圧電体層の第1電極とは反対側に設けられた第2電極とで構成されており、振動部材と第1電極とが接着剤を介して接着されている。
【0003】
このような圧電アクチュエーターでは、圧電素子の第1電極と第2電極との間に電圧を印加し、圧電素子を振動部材の面内方向において縦振動及び屈曲振動させることで、振動部材の端部を回転駆動させる。そして、圧電アクチュエーターを回転軸に向かって付勢しながら、振動部材の端部を回転軸に当接させることで回転軸を回転させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−267482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如き圧電アクチュエーターを製造するに際しては、圧電素子を振動部材に接着剤により貼着する工程がある。かかる貼着工程においては圧電素子と振動部材との位置関係を高精度に維持しながら効率良く作業を進めることが肝要である。
【0006】
ところが、従来の貼着工程では圧電素子と振動部材とを単に重ね合わせただけで位置合わせを行っていたので,十分な位置合わせ精度が得られていなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、圧電素子と振動部材との位置関係を高精度に維持しながら効率良く所定の作業を進めることができる圧電モーターの製造方法、圧電モーター、液体噴射装置及び時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、圧電体層を挟んで両側にそれぞれ設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子と、少なくとも片面に前記圧電素子が貼着されている振動部材とを有する圧電アクチュエーターと、前記振動部材の突起部が当接されて回転駆動する回転軸と、前記圧電アクチュエーターを前記回転軸に向かって付勢する付勢手段とを具備する圧電モーターの製造方法であって、前記突起部の基端となる前記振動部材の短手方向の辺と前記突起部との境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を形成するとともに、前記振動部材の長手方向の二辺の相対向する位置から面方向に突出している腕部の基端となる前記長手方向の二辺と前記腕部とのそれぞれの境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を形成する工程と、前記凸部に前記圧電素子の端面を当接させて前記振動部材に対する前記圧電素子の位置を規制することによりその位置合わせを行ないつつ前記振動部材に圧電素子を貼着する工程とを有することを特徴とする圧電モーターの製造方法にある。
【0009】
本態様によれば、圧電素子の端面を振動部材の凸部に当接させるとその短手方向の一点と長手方向の二点との三点で位置が規制される。この結果、圧電素子を振動板の所定位置に簡易且つ高精度に位置決めすることができる。
【0010】
ここで、前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の一方の面側に他方の面側から前記突起部及び前記振動部材の一部を突出させることにより形成するとともに、前記振動部材の前記一方の面側に前記凸部を利用して位置決めをした前記圧電素子を貼着して形成することができる。この場合は振動部材の片面のみに圧電素子を貼着する場合に適用して特に有用なものとなる。また、前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の前記境界において前記突起部及び前記振動部材の幅方向の両端部から切込みを入れ、その後前記突起部及び前記振動部材を捻ることにより切込み部分の一方を一方向に、他方を反対方向に突出させることにより形成するとともに、前記振動部材の両面に前記凸部を利用して位置決めをした圧電素子をそれぞれ貼着して形成しても良い。この場合は振動部材の両面に圧電素子を貼着する場合にも適用できる。
【0011】
本発明の他の態様は、圧電体層を挟んで両側にそれぞれ設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子と、少なくとも片面に前記圧電素子が貼着されている振動部材とを有する圧電アクチュエーターと、前記振動部材の突起部が当接されて回転駆動する回転軸と、前記圧電アクチュエーターを前記回転軸に向かって付勢する付勢手段とを具備する圧電モーターであって、前記振動部材は、前記突起部の基端となる短手方向の辺と前記突起部の境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を具備するとともに、長手方向の二辺の相対向する位置から面方向に突出している腕部の基端となる前記長手方向の二辺と前記腕部とのそれぞれの境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を具備し、前記圧電素子は、前記凸部に端面をそれぞれ当接させて前記振動部材に貼着したことを特徴とする圧電モーターにある。
【0012】
本態様によれば、圧電素子の端面を振動部材の凸部に当接させるとその短手方向の一点と長手方向の二点との三点で位置が規制される。この結果、圧電素子を振動板の所定位置に簡易且つ高精度に位置決めすることができ、圧電モーターとして構造的なバランスがとれ、良好な振動特性を得ることができる。
【0013】
ここで、前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の一方の面側に他方の面側から前記突起部及び前記振動部材の一部を突出させることにより形成するとともに、前記圧電素子は前記振動部材の前記一方の面側で前記凸部に端面を当接させることにより位置決めをして貼着して構成することができる。この場合は振動部材の片面のみに圧電素子を貼着する場合に適用して特に有用なものとなる。また、前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の前記境界において前記突起部及び前記振動部材の幅方向の両端部から切込んだ切込み部分で前記突起部及び前記振動部材を捻ることにより前記切込み部分の一方を一方向に、他方を反対方向に突出させることにより形成したものであり、前記圧電素子は前記振動部材の両面で前記凸部に端面を当接させることにより位置決めをしてそれぞれ貼着して形成したものであっても良い。この場合は振動部材の両面に圧電素子を貼着する場合にも適用できる。
【0014】
本発明の他の態様は、上記何れかの圧電モーターを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0015】
本態様によれば、液体噴射装置の、例えば紙送り部分等、回転軸の回転駆動を伴う部分に好適に適用できる。
【0016】
本発明の他の態様によれば、上記何れかの圧電モーターを具備することを特徴とする時計にある。
【0017】
本態様によれば、小形化を達成するとともに、耐久性も向上させることができる時計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る圧電モーターの分解斜視図。
【図2】実施形態1に係る圧電モーターの平面図。
【図3】実施形態1に係る圧電モーターの断面図。
【図4】実施形態1に係る圧電アクチュエーターの位置合わせ時の態様を示す図。
【図5】実施形態1に係る圧電アクチュエーターの動作を示す平面図。
【図6】実施形態1に係る圧電アクチュエーターの動作を示す平面図。
【図7】他の実施形態に係る圧電アクチュエーターの位置合わせ時の態様を示す図。
【図8】一実施形態に係る記録装置の概略斜視図である。
【図9】一実施形態に係る記録装置の要部拡大平面図である。
【図10】一実施形態に係る時計の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る圧電モーターの分解斜視図であり、図2は、圧電モーターの平面図であり、図3は、圧電モーターの断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、本実施形態の圧電モーター1を構成する圧電アクチュエーター10は、振動部材20と、振動部材20の片面に貼着された圧電素子30とを具備する。
【0021】
振動部材20の片面に貼着された圧電素子30は、圧電体層40と、圧電体層40の振動部材20側に設けられた第1電極50と、圧電体層40の第1電極50とは反対側に設けられた第2電極60とを有する。
【0022】
圧電体層40は、電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でも一般式ABOで示されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物からなる。圧電体層40としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等を用いることができる。もちろん、本実施形態の圧電体層40は、上記した材料に限定されるものではないが、優れた電気機械変換作用を有する圧電体層40として、鉛を含有するものが挙げられる。
【0023】
第1電極50は、圧電体層40の振動部材20側の面に亘って連続して設けられて、圧電素子30の共通電極となっている。
【0024】
圧電素子30は、詳しくは後述するが、長手方向の中央部が縦振動及び屈曲振動における基点となっており、長手方向の中央部は比較的変位量が少ない。
【0025】
第2電極60は、圧電体層40の第1電極50とは反対側に設けられており、溝部70によって互いに電気的に隔離されて面内方向で複数に分割されている。すなわち、分割されて各領域を個別に駆動するための個別電極となっている。第2電極60を分割する溝部70は、圧電素子30の幅(短手方向)をほぼ三等分するように形成された第1溝部71と、第1溝部71によって分割された3つの電極のうち短手方向両側の電極を長手方向でほぼ二等分するように形成された第2溝部72とからなる。第2電極60は、これら第1溝部71及び第2溝部72からなる溝部70によって、短手方向中央部に長手方向に亘って設けられた縦振動用電極部61と、この縦振動用電極部61の短手方向両側に、縦振動用電極部61を挟んで対角となるように配置されて対をなす2組の屈曲振動用電極部62、63との合計5つに分割されている。ここで、圧電素子30は、第2電極60の縦振動用電極部61が設けられた領域が、圧電素子30の長手方向の縦振動を励起する縦振動励起領域41となっている。これに対して、縦振動励起領域41の短手方向両側の屈曲振動用電極部62、63が設けられた領域が、それぞれ圧電素子30の短手方向に屈曲振動を励起する屈曲振動励起領域42、43となっている。
【0026】
かかる圧電素子30は、第1電極50側が振動部材20に接着剤25を介して貼着されている。ここで、振動部材20は、ステンレス鋼(SUS)等の金属や樹脂材料で形成された板状部材からなる。
【0027】
また、振動部材20は、上述のように圧電素子30の第1電極50側と同じ表面形状を有すると共に、長手方向の一端部側に圧電素子30よりも突出するように延設された突起部21が設けられている。また、振動部材20の圧電素子30の長手方向中央部には、圧電素子30の短手方向両側に向かって延設された一対の腕部22を有する。この腕部22の先端部には、厚さ方向に貫通する貫通孔24を有する固定部23が一体的に設けられており、貫通孔24を挿通させたねじ部材86を介して詳しくは後述する保持部材81に固定される。すなわち、圧電アクチュエーター10は、振動部材20の腕部22及び固定部23を介して保持部材81に固定されている。この結果、圧電素子30が、腕部22を基点として保持部材81に対し縦振動及び屈曲振動が可能となるように保持されている。
【0028】
本実施形態における圧電アクチュエーター10の製造過程において振動部材20に対して圧電素子30を貼着する必要があるが、かかる貼着工程における両者の位置合わせは次のような態様で行っている。すなわち、図4(a)及びそのA−A’線に沿う拡大断面図である図4(b)に示すように、振動部材20とその突起部21との境界には凸部26が、また振動部材20とその左右の腕部22との境界には凸部27がそれぞれ設けられている。かかる凸部26,27は、例えば振動部材20をプレスで抜いて形成する場合に同時に好適に形成することができる。
【0029】
位置決めは振動部材20に形成された凸部26,27を介して行う。すなわち、かかる凸部26、27が形成された振動部材20に圧電素子30を載置するだけで良い。凸部26,27が圧電素子30の端面に3点で接触することによりその位置が所定の位置に規制されるからである。かかる状態で振動部材20と圧電素子30とを接着することにより両者の位置関係が所定通りに維持された圧電アクチュエーター10を得る。
【0030】
このような圧電アクチュエーター10では、圧電素子30の縦振動励起領域41と、屈曲振動励起領域42、43とをそれぞれ面方向で縦振動及び屈曲振動するように駆動する。すなわち、図5(a)に示すように、振動部材20の面方向において、縦振動励起領域41を縦方向(長手方向)に伸張・収縮させることで、圧電素子30を長手方向に縦振動を行わせる。
【0031】
また、図5(b)及び図5(c)に示すように、振動部材20の面方向において、屈曲振動励起領域42、43を伸張・収縮させることで圧電素子30を屈曲駆動させる。具体的には、圧電素子30の短手方向で対角となる一方の組の屈曲振動励起領域42を伸張させると同時に対角となる他方の一対の屈曲振動励起領域43を収縮させる。これにより、図5(b)に示すように圧電素子30をS字状に変形させる。また、伸張していた屈曲振動励起領域42を収縮させると同時に収縮していた屈曲振動励起領域43を伸張させることで、図5(c)に示すように、圧電素子30を逆S字状に屈曲させる。この図5(b)及び図5(c)に示す屈曲変形を交互に繰り返させることで、圧電素子30にS字状及び逆S字状の屈曲振動が行われる。
【0032】
そして、圧電素子30に縦振動励起領域41による縦振動と屈曲振動励起領域42、43による屈曲振動とを交互に繰り返させることで、図6に示すように、圧電素子30の長手方向の端部、すなわち、振動部材20の突起部21を楕円軌道を描くように回転駆動することができる。具体的には、圧電素子30に、縦方向(長手方向)の伸張、S字状の屈曲、縦方向の収縮、逆S字状の屈曲の変形を順次繰り返し行わせることで、突起部21を振動部材20の面内において時計方向に楕円軌道を描くように回転駆動することができる。また、圧電素子30に変形を行わせる際に、屈曲の順番を入れ替えることで、突起部21を振動部材20の面内において反時計方向に楕円軌道を描くように回転駆動することができる。
【0033】
一方、図1及び図2に示すように、圧電モーター1には、装置本体2に軸を中心として回転自在となる回転軸3が設けられている。そして、この回転軸3に圧電アクチュエーター10の楕円軌道を描くように回転駆動される突起部21を当接させることで、回転軸3は回転される。本実施形態では、圧電アクチュエーター10の突起部21が楕円軌道を描く回転方向が、回転軸3の回転方向となるように、突起部21が回転軸3の周方向の表面に当接するようにした。もちろん、突起部21が、回転軸3の端面に当接するようにしてもよい。
【0034】
また、圧電モーター1には、圧電アクチュエーター10を回転軸3方向に向かって所定の圧力で押圧する付勢手段80が設けられている。
【0035】
付勢手段80は、圧電アクチュエーター10を保持する保持部材81と、保持部材81に一端が固定されたコイルばね等のばね部材82と、ばね部材82の他端に当接すると共に装置本体2に固定された支持ピン83とを具備する。
【0036】
保持部材81は、圧電アクチュエーター10の腕部22が固定される一対の固定部84と、固定部84の間に一体的に設けられて装置本体2に対してスライド移動可能に支持されるスライド部85とを具備する。固定部84には、固定部23の貫通孔24に対応して、ねじ部材86が螺合される雌ねじ部87が形成されている。この雌ねじ部87に固定部23の貫通孔24を挿通したねじ部材86を螺合させることで、圧電アクチュエーター10は保持部材81に保持される。
【0037】
スライド部85には、厚さ方向に貫通し、且つスライド方向に延設された長孔である2つのスライド孔88が設けられている。そして、各スライド孔88に挿通されて装置本体2に固定されたスライドピン89によってスライド部85は装置本体2に対してスライド移動可能に支持されている。
【0038】
ばね部材82は、コイルばねからなり、固定部84に一端が固定されると共に、装置本体2に固定された支持ピン83の側面に他端が当接するように配置されている。また、ばね部材82は、スライド部85のスライド方向に沿って配置されている。このような、ばね部材82は、圧電アクチュエーター10を装置本体2に対して回転軸3に向かって付勢される。
【0039】
なお、本実施形態では、ばね部材82としてコイルばねを用いたが、ばね部材82は特にこれに限定されず、例えば、板ばね等を用いるようにしてもよい。
【0040】
このような付勢手段80によって、圧電アクチュエーター10は、圧電素子30の長手方向(縦振動方向)が回転軸3の軸中心となるように、所定の圧力で回転軸3に押圧される。すなわち、本実施形態の圧電アクチュエーター10は、圧電素子30の長手方向が回転軸3の径方向になるように配置され、回転軸3の径方向に向かってスライド移動可能に設けられている。したがって、圧電アクチュエーター10は、圧電素子30の長手方向が回転軸3の径方向となるように押圧される。
【0041】
そして、上述のように、付勢手段80によって圧電アクチュエーター10の突起部21を回転軸3に押圧しながら、圧電素子30に縦振動及び屈曲振動を交互に行わせて突起部21を楕円軌道を描くように回転駆動することで、回転軸3を回転駆動することができる。
【0042】
なお、圧電アクチュエーター10によって回転される回転軸3の回転数は、縦振動及び屈曲振動を行う振動周期により規定され、また回転軸3のトルクは、付勢手段80による圧電アクチュエーター10の回転軸3への押圧力により規定される。
【0043】
かかる圧電モーター1においては圧電アクチュエーター10における突起部21の楕円運動に伴いこの楕円運動に伴う駆動力が突起部21を介して回転軸3に伝達される。この結果、回転軸3は圧電素子30の縦振動及び屈曲振動の振動周期で規定される所定の回転数で回転する。
【0044】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は、上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、振動部材20の片面に圧電素子30を設けた圧電アクチュエーター10を例示したが、特にこれに限定されず、振動部材20の両面に圧電素子30を設けた圧電アクチュエーターであっても勿論構わない。この場合の実施形態を図7に示す。同図に示すように、本実施形態における圧電アクチュエーター10Aは振動部材20の両面に圧電素子30をそれぞれ貼着するものである。このため、圧電素子30をそれぞれ振動部材20の両面に貼着する際の位置合わせは、例えば図中の上方に突出する凸部と図中の下方に突出する凸部とを形成して振動部材20に対する圧電素子30の位置を規制する必要がある。そこで、本実施形態では、振動部材20とその突起部21との境界部分及び振動部材20とその左右の腕部22との境界部分の幅方向の両側から切込み21A,21B,22A,22Bをそれぞれ形成し、その後突起部21及び腕部22を捻ることにより一方の切込み21A,22A部分を図中上方に突出させるとともに、他方の切込み21B,22B部分を図中下方に突出させている。かかる状態で振動部材20の両面に圧電素子30を当接させると上方の圧電素子30が3点で上方に突出する切込み21A,22Aに当接してその位置が規制され、同時に下方の圧電素子30が3点で下方に突出する切込み21B,22Bに当接してその位置を規制される。かかる状態で振動部材20と上下の圧電素子30とを接着することにより両者の位置関係が所定通りに維持された圧電アクチュエーター10Aを得る。ここで、位置決め用の凸部を形成するために捻った突起部21及び腕部22は反対側に捻ることにより元の状態(水平状態)に戻しておく。
【0045】
また、上述した実施形態1では、圧電アクチュエーター10を付勢手段80によって回転軸3に向かって押圧するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、回転軸3を圧電アクチュエーター10に向かって押圧するようにしてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態の圧電モーター1は、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の駆動手段として用いることができる。ここで、実施形態1の圧電モーター1を用いたインクジェット式記録装置の一例を図8及図9に示す。なお、図8は、一実施形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図であり、図9は、要部を拡大した平面図である。
【0047】
図8に示すインクジェット式記録装置100において、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッド101を有する記録ヘッドユニット102は、インク供給手段を構成するカートリッジ103が着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット102を搭載したキャリッジ104は、記録装置本体105に取り付けられたキャリッジ軸106に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット102は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0048】
そして、駆動モーター107の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト108を介してキャリッジ104に伝達されることで、記録ヘッドユニット102を搭載したキャリッジ104はキャリッジ軸106に沿って移動される。一方、記録装置本体105にはキャリッジ軸106に沿ってプラテン109が設けられており、給紙手段110によって給紙された紙等の被噴射媒体である記録シートSがプラテン109に巻き掛けられて搬送される。記録シートSは、プラテン109上でインクジェット式記録ヘッド101から吐出されたインクによって印刷される。そしてプラテン109上で印刷された記録シートSは、プラテン109の給紙手段110とは反対側に設けられた排紙手段120によって排紙される。
【0049】
図9に示すように、給紙手段110は、給紙ローラー111と従動ローラー112とで構成されている。給紙ローラー111には、その端部に上述した圧電モーター1の回転軸3が固定されており、圧電アクチュエーター10の駆動によって回転駆動される。また、給紙ローラー111には、同軸上に第1歯車113が設けられている。
【0050】
排紙手段120は、排紙ローラー121と従動ローラー122とで構成されている。排紙ローラー121には同軸上に第2歯車123が設けられている。そして、給紙ローラー111の第1歯車113が、この第1歯車113に噛み合う第3歯車130、第3歯車130に噛み合う第4歯車131、第4歯車131に噛み合う第5歯車132を介して排紙ローラー121の第2歯車123に噛み合うことで、給紙ローラー111を回転駆動する圧電モーター1の駆動力が、排紙ローラー121に伝達される。
【0051】
なお、図8及び図9に示す例では、圧電モーター1によって、給紙手段110及び排紙手段120を回転駆動するものであるが、例えば、上述した実施形態の圧電モーター1を、キャリッジ104を移動させる駆動モーター107の代わりに用いることも可能である。もちろん、その他の駆動系、例えば、インクジェット式記録ヘッド101にインクを供給するポンプ等に圧電モーター1を用いることもできる。
【0052】
本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものであり、圧電モーターは、上述したインクジェット式記録装置以外の液体噴射装置に搭載することが可能である。その他の液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射装置、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射装置等が挙げられる。
【0053】
さらに、上述した実施形態の圧電モーター1は、時計の駆動手段としても用いることができる。ここで、実施形態1の圧電モーター1を用いた時計の一例を図10に示す。
【0054】
図10に示すように、時計200を構成するカレンダー表示機能は、圧電モーター1に連結されており、その駆動力によって駆動される。
【0055】
カレンダー表示機能の主要部は、圧電モーター1の回転軸3の回転を減速する減速輪列とリング状の日車201とを具備する。また、減速輪列は日回し中間車202と、日回し車203とを有する。
【0056】
そして、上述の圧電モーター1の圧電アクチュエーター10によって回転軸3を時計回りに回転駆動させると、回転軸3の回転は、日回し中間車202を介して日回し車203に伝達され、この日回し車203が日車201を時計回りに回転させる。これら圧電アクチュエーター10から回転軸3、回転軸3から減速輪列(日回し中間車202、日回し車203)、減速輪列から日車201への力の伝達は、何れも面内方向で行われる。このためカレンダー表示機構を薄型化することができる。
【0057】
また、日車201には、周方向に沿って日付を表す文字が印刷された円盤状の文字板204が固定されている。そして、時計200の本体には、文字板204に設けられた一文字を露出する窓部205が設けられており、窓部205から日付が覗けるようになっている。なお、時計200には、特に図示していないが、長針及び短針や、これら長針及び短針を駆動するムーブメント等が設けられている。
【0058】
なお、圧電モーター1は、カレンダー表示機構だけではなく、時計の長針・短針等を駆動するムーブメントとして利用することができる。これら時計の長針・短針等を駆動する構造については従来周知の電磁モーター等の代わりに上述した圧電モーター1、1Aを組み込むだけで可能である。
【0059】
また、本発明は、広く圧電モーター全般を対象としたものであり、上述した液体噴射装置や時計以外の小型デバイスに利用することが可能である。圧電モーターを利用できる小型デバイスとしては、医療用ポンプ、カメラ、義手などのロボット等が挙げられる。
【符号の説明】
【0060】
1 圧電モーター、 10 圧電アクチュエーター、 20 振動部材、 21 突起部、 21A,21B 切欠き、 22 腕部、 22A,22B 切欠き、 25 接着剤、 26,27 凸部、 30 圧電素子、 40 圧電体層、 50 第1電極、60 第2電極、 70 溝部、 80 付勢手段、 100 記録装置、 200 時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層を挟んで両側にそれぞれ設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子と、少なくとも片面に前記圧電素子が貼着されている振動部材とを有する圧電アクチュエーターと、前記振動部材の突起部が当接されて回転駆動する回転軸と、前記圧電アクチュエーターを前記回転軸に向かって付勢する付勢手段とを具備する圧電モーターの製造方法であって、
前記突起部の基端となる前記振動部材の短手方向の辺と前記突起部との境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を形成するとともに、前記振動部材の長手方向の二辺の相対向する位置から面方向に突出している腕部の基端となる前記長手方向の二辺と前記腕部とのそれぞれの境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を形成する工程と、
前記凸部に前記圧電素子の端面を当接させて前記振動部材に対する前記圧電素子の位置を規制することによりその位置合わせを行ないつつ前記振動部材に圧電素子を貼着する工程とを有することを特徴とする圧電モーターの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する圧電モーターの製造方法において、
前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の一方の面側に他方の面側から前記突起部及び前記振動部材の一部を突出させることにより形成するとともに、前記振動部材の前記一方の面側に前記凸部を利用して位置決めをした前記圧電素子を貼着して形成することを特徴とする圧電モーターの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する圧電モーターの製造方法において、
前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の前記境界において前記突起部及び前記振動部材の幅方向の両端部から切込みを入れ、その後前記突起部及び前記振動部材を捻ることにより切込み部分の一方を一方向に、他方を反対方向に突出させることにより形成するとともに、前記振動部材の両面に前記凸部を利用して位置決めをした圧電素子をそれぞれ貼着して形成することを特徴とする圧電モーターの製造方法。
【請求項4】
圧電体層を挟んで両側にそれぞれ設けられた第1電極及び第2電極を有する圧電素子と、少なくとも片面に前記圧電素子が貼着されている振動部材とを有する圧電アクチュエーターと、前記振動部材の突起部が当接されて回転駆動する回転軸と、前記圧電アクチュエーターを前記回転軸に向かって付勢する付勢手段とを具備する圧電モーターであって、
前記振動部材は、前記突起部の基端となる短手方向の辺と前記突起部の境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を具備するとともに、長手方向の二辺の相対向する位置から面方向に突出している腕部の基端となる前記長手方向の二辺と前記腕部とのそれぞれの境界に前記圧電素子の厚さ方向に突出する凸部を具備し、
前記圧電素子は、前記凸部に端面をそれぞれ当接させて前記振動部材に貼着したことを特徴とする圧電モーター。
【請求項5】
請求項4に記載する圧電モーターにおいて、
前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の一方の面側に他方の面側から前記突起部及び前記振動部材の一部を突出させることにより形成するとともに、前記圧電素子は前記振動部材の前記一方の面側で前記凸部に端面を当接させることにより位置決めをして貼着したものであることを特徴とする圧電モーター。
【請求項6】
請求項4に記載する圧電モーターにおいて、
前記凸部は前記突起部及び前記振動部材の前記境界において前記突起部及び前記振動部材の幅方向の両端部から切込んだ切込み部分で前記突起部及び前記振動部材を捻ることにより前記切込み部分の一方を一方向に、他方を反対方向に突出させることにより形成したものであり、前記圧電素子は前記振動部材の両面で前記凸部に端面を当接させることにより位置決めをしてそれぞれ貼着したものであることを特徴とする圧電モーター。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載の圧電モーターを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載の圧電モーターを具備することを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−233334(P2010−233334A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77869(P2009−77869)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】