説明

圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイス

【課題】 小型化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも短辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の水晶振動片2の一端側と接合される一対の搭載パッド12が、長手方向一端側に並列形成された平面視矩形状のベース1において、前記ベース1の内底面には枕部13が前記搭載パッド12と近接した位置に形成されている。そして前記枕部13は、前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベース1の長手方向へ延出した仮想線2上にあり、前記枕部13の周縁の一部または全てが、前記一対の搭載パッド12の対向する二辺の両端の内、前記ベース他端側に近い方の二端点の間を結ぶ仮想線1よりも内側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイス用パッケージ(べース)および、これを用いた圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の圧電振動デバイスの小型化および低背化に伴い、例えば表面実装型の水晶振動子は図8に示すように、パッケージ(以下ベースと称す)1はセラミックグリーンシートを2層積層した構成となっており、低周波帯のATカット水晶振動子では、平面視矩形状の水晶振動片2の端部に面取り加工(ベベル加工)が施される。前記加工は、水晶振動片の端部を薄肉化することにより、支持部分(端部)における振動エネルギーを減衰させるとともに、前記水晶振動片2の表裏面の中央領域に形成された励振電極(図示せず)下に振動エネルギーを閉じ込めて良好な特性を得るために行われる。そして、上記水晶振動片2の一端部が、ベース1の凹部5の内底面一端側に並列形成された一対の搭載パッド12の上に、導電性接合材4などの接合材を介して片持ち支持接合される構成となっている。このような構成の圧電振動デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−70231号
【0004】
ATカット水晶振動片は一般に、発振周波数と厚みが反比例の関係にあり、低周波になるほど厚みが厚くなり、端部に面取り加工が施されるが、定常状態であれば図8のように水晶振動片の頂部(主面中央付近)とベースの内底面とは離間しており、間隙が確保されているが、外部衝撃を受けた際に、図9に示すように水晶振動片の自由端側が変位することによって、前記頂部とベースの内底面とが接触し、前記励振電極のキズや発振停止等の不具合が生じることがあった。このような問題は、水晶振動片の自由端近傍の下方に突起状の枕部あるいは段部を形成することで解消することが可能であったが、近年の圧電振動デバイスの小型化および低背化に伴う水晶振動片の小型化によって、自由端側の下方に枕部を配置しても水晶振動片の頂部の方が先にベースの内底面と接触してしまい、前記枕部が有効に機能しなくなってきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、小型化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、少なくとも短辺端部が面取り加工された、平面視略矩形状の圧電振動素子の一端側と接合される一対の搭載パッドが、長手方向一端側に並列形成された平面視矩形状のベースであって、前記ベースの内底面には、枕部が前記搭載パッドと近接した位置に、前記搭載パッドと同一厚み、あるいは前記搭載パッドよりも薄い厚みで形成されているとともに、前記枕部は、前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベースの長手方向へ延出した仮想線上にある。そして、前記枕部の周縁の一部または全てが、前記一対の搭載パッドの対向する二辺の両端の内、前記ベース他端側に近い方の二端点の間を結ぶ仮想線よりも、前記ベース他端側に近い側に位置しているベースであるので、外部衝撃が加わった際の、圧電振動素子とベース内底面との接触を防止することができる。
【0007】
上記構成によると、枕部は圧電振動素子の自由端側寄りではなく、固定端側、つまり前記搭載パッドと近接した位置で、前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベースの長手方向へ延出した仮想線上にある。そして、前記枕部の周縁の一部または全てが、前記一対の搭載パッドの対向する二辺の両端の内、前記ベースの他端側に近い方の二端点間を結ぶ仮想線よりも、前記ベース他端側に近い側、つまり前記仮想線よりも内側に位置している。前記構成によると、圧電振動子に外部衝撃が加わったとしても、圧電振動素子のベース内底面に対向する面において、固定端側の端部に近接する位置と、前記枕部とが、圧電振動素子の曲面の頂部(圧電振動素子の長辺の略中央部分)よりも先に接触するため、圧電振動素子とベース内底面との接触を回避することができる。
【0008】
また、矩形状の圧電振動素子の前記面取り加工を、圧電振動素子の断面が両凸レンズ状(バイコンベックス形状)になるまで行った場合、長辺側と短辺側が同時に加工され、長辺および短辺ともに辺の中央付近が最も厚くなる。上記構成によると、前記枕部は前記搭載パッドと近接した位置で、前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベースの長手方向へ延出した仮想線上にあるため、枕部と圧電振動素子の短辺方向における曲面の頂部との位置関係は略同一線上に位置することになる。したがって、外部衝撃を受けた際の圧電振動素子の短辺方向における変位量の抑制に最も効果的な位置となる。つまり、外部衝撃を受けて圧電振動素子が撓んだ場合であっても、圧電振動素子の短辺側の頂部(圧電振動素子の短辺の略中央部分)が前記枕部と接触するため、短辺方向における変位量を最小化することができ、耐衝撃性能が向上する。なお、前記面取り加工は圧電振動片の両面(表裏)に限定されるものではなく、片面だけが面取り加工された形状であっても適用可能である。すなわち、凸状曲面が形成された側の面が、ベース内底面に対向して搭載される圧電振動素子に対しても前記構成は有効である。
【0009】
前記搭載パッドより厚さ(高さ)が厚い枕部の場合には、導電性接合材の硬化収縮時に、当該枕部が圧電振動素子に対して支点として機能するため、枕部は応力(反力)が集中しやすくなり、外部衝撃を受けた際に自由端側が撓み、梃子の原理により、圧電振動素子と搭載パッドとの接合部に大きな応力が加わりやすくなる。これにより、前記接合部の剥離や脱落の発生も懸念される。しかし、本発明の構成によれば、枕部は前記搭載パッドと同一厚み、あるいは前記搭載パッドよりも薄い厚みで形成されているため、圧電振動素子と非接触状態あるいは接触した状態であっても、前記応力集中を緩和することができる。したがって、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0010】
なお、前記枕部の形成数は1個に限定されるものではなく、請求項1に記載の枕部の形成位置に加えて、1個以上の枕部が形成されていてもよい。例えば、前述の位置に形成された枕部(便宜上第1の枕部と称す)に加えて、もう1つの枕部(第2の枕部と称す)を前記第1の枕部に並列かつ、離間した位置に形成してもよい。この場合、外部衝撃を受けた際に、圧電振動素子の短辺側の曲面の頂部付近(短辺中央付近)だけでなく、その横側においても前記第2の枕部が接触することで衝撃緩和機能を向上させることができる。
【0011】
さらに前述のように、複数の枕部を形成する場合、請求項1に記載の枕部の形成位置に加えて、ベースの長辺の略中央で、(矩形状圧電振動素子の前記ベースへの搭載後に)前記圧電振動素子の二長辺の周縁に近接するような位置に、対向する一対の枕部を形成してもよい。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、前記枕部が絶縁材料で形成されていることを特徴とするベースであるので、例えば前記励振電極が圧電振動素子の周縁付近の位置まで大きく形成されている場合、外部衝撃を受けて前記励振電極と前記枕部との接触状態が変化しても、電荷の移動が無く、励振電極間の容量が変化しないため周波数の変化を防止することができる。したがって、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイスを得ることができる。なお、前記枕部は、当該励振電極と接続し、圧電振動素子の一端側へ引き出された引出電極と、外部衝撃を受けて接触した場合においても、前記枕部が絶縁材料で形成されているため、電荷の移動が無く、容量が変化しないので周波数の変化を防止することができる。
【0013】
前記枕部は、絶縁材料から形成されているが、例えば、前記ベースと同材料のセラミック材料を使用した場合、コスト面で有利となる。しかしながら、前記枕部の材料は絶縁材料に限定されるものではなく、導電性の材料でも可能である。例えば圧電振動素子と前記搭載パッドとを電気機械的に接合する導電性樹脂接合材と同材料の接合材を硬化させて枕部として使用することも可能である。このような場合、外部衝撃を受けた際に、励振電極および引出電極と、枕部(導電体)とが接触しないように、予め圧電振動デバイス側の電極設計を変更することで、電荷移動による周波数変化を防止することが可能である。あるいはまた、接合材中に導電性フィラー(フレーク状物質)を含有しない樹脂を使用することによっても対応可能である。
【0014】
前記枕部に、圧電振動素子と前記搭載パッドとを接合する導電性樹脂接合材と同じ材料の接合材を用いた場合、圧電振動素子固着用の導電性樹脂接合材および、枕部形成用の接合材の、加熱雰囲気中での硬化時に発生するガス成分が同種になり、異種材料で枕部を形成する場合よりも圧電振動デバイスの特性の安定化が期待できる。
【0015】
また、請求項3にかかる発明によれば、励振電極と、当該励振電極から一端側に延出された引出電極とを表裏に有する、少なくとも短辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子の前記一端側を、凹部を有する平面視矩形状のベースの、長手方向一端側に並列形成された一対の搭載パッドと接合することによって、片持ち支持する構成の圧電振動デバイスにおいて、前記ベースの内底面には、少なくとも1個以上の枕部が前記搭載パッドの近傍で、かつ当該搭載パッドから前記ベース他端側方向に離間して形成されているとともに、前記枕部は、前記圧電振動素子の前記内底面と対向する面に形成された前記引出電極と、平面視で重ならない位置に配置されている圧電振動デバイスであり、このような構成であれば、外部衝撃を受けて前記枕部が前記圧電振動素子と接触した際に、前記内底面と対向する面に形成された前記引出電極とは接触することがないため、電荷の移動が無く、容量が変化しないので周波数の変化を防止することができる。
【0016】
前述のように、前記枕部が前記圧電振動素子の前記内底面と対向する面に形成された前記引出電極と、平面視で重ならない位置に配置されている場合は、前記枕部の断面形状を前記圧電振動素子の曲率に対応した形状とすることで、前記圧電振動素子の短辺方向において前記圧電振動素子の曲面頂部から離れた位置であっても効果的に機能する。つまり、通常の略直方体形状の枕部では、圧電振動素子に凸状の曲面が形成されている場合に、前記枕部の稜線部分で圧電振動素子と接触することになり、単一の線接触によって応力が集中しやすくなるが、これに対し、前記枕部を断面視階段形状や、傾斜面を有する形状とすることで、前者の場合は複数の線接触に、後者の場合は面接触となり、枕部の受ける単位面積あたりの応力を軽減することが可能となる。
【0017】
また、請求項4にかかる発明によれば、請求項1乃至請求項2に記載のベースを用いて、当該ベースの内部に形成された一対の搭載パッド上に圧電振動素子を、導電性接合材を介して片持ち支持接合し、平面視矩形状の蓋体で気密封止した圧電振動デバイスであり、前述の効果を有するベースを用いた圧電振動デバイスであるので、小型化に対応して、耐衝撃性能にも優れた圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、小型化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明の実施形態において、圧電デバイスとして表面実装型の水晶振動子を例に挙げている。
−第1の実施形態−
本発明による実施形態を、図1乃至図3を基に説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示すベースの平面図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は図2のB部の拡大図である。なお、図2乃至図3において、水晶振動片の表裏面に形成される電極(詳細は後述)の記載は省略している。また、図2においてベース底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子とベース内部の搭載パッドとを電気的に接続するための接続手段の記載は省略している。
【0020】
本実施形態で適用される水晶振動子は、断面視凹状のベースと、平面視矩形状の水晶振動片と、平板状の蓋体とから構成されている。そして前記水晶振動片は、一端側がベース内部で片持ち支持接合される形態となっている。まず前記各構成部材について説明した後、本実施形態で適用される水晶振動子の製造方法について説明する。
【0021】
図1は本発明の第1の実施形態を示すベースの平面図であり、当該ベース内部に水晶振動片が収容された状態を表している。図1においてベース1は、アルミナセラミック材料から成る2枚のセラミックグリーンシートから構成され、平板状の第1のシート1aの上部に、枠状の第2のシート1bが積層され、焼成によって一体的に形成されている。前記ベース1は凹部5を有する、上部が開口した平面視矩形状の容器体であり、枠状の前記第2のシート1bの上面は平坦な状態となっている。なお、本実施形態において前記ベース1の外形寸法は、長辺×短辺=2.5mm×2.0mmで、高さは約0.5mmとなっている。なお、前記ベース外形寸法は一例であり、前記外形寸法に限定されるものではない。
【0022】
前記凹部5の長手方向一端側の、前記第1のシート1a上面には一対の搭載パッド12が並列して形成されている。前記搭載パッド12は、前記第1のシート1aの上面にタングステンメタライズを施し、その上部にニッケルメッキが、さらにその上部に金メッキが施されている。そして、前記搭載パッド12は、ベース1の底面(裏面)に形成されている外部接続端子(図示せず)と、ベース1の外周上下部の4角にキャスタレーション(図示せず)を介して電気的に接続されている。なお、前記搭載パッド12と前記外部接続端子との電気的接続は、ビアホールを形成することによって行ってもよい。
【0023】
そして、前記一対の搭載パッド12と対向し、凹部5の長手方向他端側の、前記第1のシート1a上面には水晶振動片の自由端側と近接する位置に、段部11が形成されている。ここで、前記段部11はタングステンメタライズによって形成されている。なお、前記段部11が導電性材料(タングステン)で形成されているのは、水晶振動片をベース内部に収容したときに、後述する水晶振動片の表裏面に形成される金属膜(電極膜)が平面視で、前記段部11と重ならないような位置に成膜される設計とした場合であって、前記金属膜が前記段部11と平面視で重なるような位置に設計した場合は、外的要因による衝撃によって、水晶振動片の自由端側が段部と接触したときの電荷移動防止のために、前記段部11を絶縁性材料で形成すればよい。あるいは導電性材料で形成された段部の上部を絶縁性材料で被覆することによっても、電荷移動を防止することが可能である。
【0024】
さらに、図1に示すようにベース1の内底面(第1のシート1aの上面)には、絶縁材料から成る突起状で,直方体形状の枕部13が形成されている。前記枕部13は、前記搭載パッド12と近接した位置に、前記搭載パッド12と同一の厚み、あるいは前記搭載パッド12よりも薄い厚みで形成されている。前記搭載パッド12と近接した位置とは、具体的には前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベース1の長手方向へ延出した仮想線上にあって、前記搭載パッド12と近接する位置のことを示す。さらに、前記枕部13の周縁の全てが、前記一対の搭載パッド12の対向する二辺の両端の内、前記ベース他端側に近い方の二端点の間を結ぶ仮想線よりも、前記ベース1の他端側に近い側に位置している。すなわち、前記枕部13の周縁全体が、図1の点線で示す2本の直交する仮想線の内、ベース短辺と平行となる方の仮想線(仮想線1)よりも右側に位置している。なお、図1の仮想線2が、前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベース1の長手方向へ延出した仮想線に相当する。なお、本実施形態において前記枕部13の外形寸法は、0.2mm×0.15mmであるが、枕部の外形寸法は前記外形寸法に限定されない。
【0025】
本実施形態では前記枕部13は、枕部13の周縁の全てが前記仮想線1よりも右側に位置している状態であるが、前記枕部13の周縁の一部が、前記仮想線1よりも左側に位置している状態であってもよい。すなわち、仮想線1と仮想線2が直交する点Pを含んで左右両側(仮想線2の延出方向)に亘って枕部が形成されていてもよい。
【0026】
このような位置に枕部13を配置することによって、圧電振動子に外部衝撃が加わったとしても、圧電振動素子のベース内底面に対向する面において、固定端側の端部に近接する位置と前記枕部とが、圧電振動素子の曲面の頂部よりも、先に接触するため圧電振動素子とベース内底面との接触を回避することができる。なお、本実施形態では前記枕部13と前記段部の両方が形成されたベースを用いているが、枕部13が形成され、前記段部11が形成されていないベースであっても本発明は適用可能である。
【0027】
本実施形態では、前記搭載パッド12の高さは約40μmで、前記枕部13の高さは約30μmであり、前記段部11の高さは約30μmとなっている。ここで、前記枕部13はベース基体と同一のセラミック材料で形成されており、当該枕部の長辺がベース1の短辺と略平行で、かつ、平面視で枕部13の長辺の略中央を図1の仮想線2が通るように形成されている。このような搭載パッドと枕部および段部との相対的な高さ関係によって、枕部が定常状態において圧電振動素子と接触した状態となっていても、前記枕部一点への応力集中を回避することができるので、応力集中による圧電振動デバイスの特性劣化を抑制でき、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0028】
次に、本実施形態で使用される水晶振動片2について説明する。図1で水晶振動片2は、平面視矩形状のATカット水晶板であり、断面視では図2に示すような両凸レンズ状(バイコンベックス形状)となっている。なお、本実施形態ではバイコンベックス形状に加工された水晶振動片を例に挙げているが、水晶振動片の片面だけが凸レンズ状(プラノコンベックス形状)となるように加工された水晶振動片や、端部だけが面取り加工され、水晶振動片の主面(フラットな部分)を有している水晶振動片、さらに前記面取り加工部分が複数の曲率で形成された水晶振動片に対しても本発明は適用可能である。
【0029】
図1に示すように、水晶振動片2の表裏面には、当該水晶振動片2を駆動させるための励振電極21a、21b(裏面側の21bは図示せず)と、前記励振電極から引き出される引出電極22a、22b(裏面側の22bは図示せず)と、前記引出電極と接続し,水晶振動片2の一端部両側に形成された一対の接続電極23a、23b(裏面側の23bは図示せず)とが形成されている。これらの電極は水晶振動板の上に、クロム(Cr)−金(Au)−クロム(Cr)の順序で蒸着法等によって成膜される。なお、前記電極の膜構成は、これに限定されるものではなく、例えば水晶振動板の上に、Cr−Auの順に、あるいは水晶振動板の上に、Cr−Ag(銀)の順に、または水晶振動板の上に、Cr−Ag−Crの順で膜構成されたものであってもよい。なお、前述したように、本実施形態では水晶振動片2をベース1の凹部5に収容したときの、水晶振動片2の裏面側の前記励振電極21bと、段部11とは平面視で重ならない位置関係となっている。以上が水晶振動片2について説明である。
【0030】
本実施形態で使用される蓋体は、平面視矩形状のセラミック材料から成り、蓋体の下面、すなわちベース1の堤部10の上面との接合面側には、全面に封止材が形成されている。本実施形態では前記封止材として低融点ガラスが使用されている。なお、前記蓋体材料として、セラミック材料以外に、コバールを母材として、その上部にニッケルめっき層、金めっき層が形成された金属性材料から構成されていてもよい。この場合、封止材としてAn−Sn合金等の金属ロウ材が使用される。以上が水晶振動子の各構成部材についての説明である。
【0031】
次に本発明における水晶振動子の製造方法について説明を行う。
まず、前記電極が形成された水晶振動片2の一端側に形成された一対の接続電極23a、23bを、導電性接合材4を介して一対の搭載パッド12、12と一対一で接合する。前記接合は、所定温度プロファイルに制御された雰囲気下で前記導電性接合材4を硬化させることによって行われる。前記導電性接合材として、例えばシリコーン系の導電性樹脂接合材が使用される。なお、導電性接合材はシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、シリコーン系以外にもエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。ここで水晶振動片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、図2に示すように枕部13と、水晶振動片2のベース内底部に対向する面の、前記枕部13の上方に位置する部分との間には、間隙は形成されていない状態となっている。
【0032】
前記水晶振動片2と前記搭載パッド12とを接合して、周波数の微調整を行った後、前記ベース1の堤部10の上面に、前記蓋体の外周が略一致するようにして蓋体を被せ、所定温度に加熱することにより、蓋体に形成されたガラス材を溶融させて蓋体とベース1との気密封止を行う。以上により表面実装型の水晶振動子の完成となる。
【0033】
なお、本実施形態では前記枕部13の材料は絶縁材料で形成されているが、導電性材料で形成してもよい。例えばメタライズによってタングステンを2層積層した構成とすることで枕部を形成する。このような場合、図3(a)に示すように下層13a(枕部第1層)の上に前記枕部第1層と同一の面積の上層13b(枕部第2層)を積層して枕部13を形成する場合や、図3(b)に示すように、下層13aよりも面積が小さい2つの枕部第2層(13c,13d)を積層することで、水晶振動片2の曲面形状に対応した断面形状に近づけることができる。前記断面形状により、枕部13は、前記枕部第2層である13cと13dの両方の稜線部で、水晶振動片2と線接触するため抗力を2箇所に分散させることができる。さらに図3(c)のように、断面視で直角三角形状の上層13e(枕部第2層)を下層13aの上に積層することで、水晶振動片2の曲面形状により近づけることができ、前記上層13eの傾斜面と面で接触することになり、水晶振動片への抗力を軽減することができる。
【0034】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を、図4を用いて説明する。図4は本発明の第2の実施形態を示すベースの平面図と、ベース短辺方向の断面図である。図4(a)は第2の実施形態を示すベースの平面図で、図4(b)は図4(a)に水晶振動片が収容された状態を表しており、図4(c)は図4(b)のC−C線における断面図である。図4(c)において、水晶振動片の表裏面に形成される電極およびベース底面に形成される外部接続端子、キャスタレーションの記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0035】
図4に示すように枕部は、前記第1の実施形態に記載した枕部13の形成位置に加え、もう1つの枕部14(第2の枕部)を前記枕部13に並列に、かつ離間した位置に形成されている。ここで水晶振動片2と搭載パッド12との接合が完了した状態(定常状態)において、図4(c)に示すように枕部13と枕部14は水晶振動片2と非接触の状態となっている。この場合、外部衝撃を受けた際に、水晶振動片2の短辺側の曲面頂部付近(短辺中央付近)と、その横側の位置においても、前記第2の枕部14が水晶振動片2と接触することで衝撃緩和機能をさらに向上させることができる。なお、ここで第2の枕部14の高さは枕部13の高さよりも若干高くなるように形成されている。
【0036】
また、第2の実施形態の変形例として図5に示すように、搭載パッド12に近接する領域には1個の枕部13が形成されているとともに、ベース1の二長辺の略中央部で凹部5内底部には一対の枕部15が対向して形成されている。ここで前記一対の枕部15は各々が水晶振動片2の長辺の周縁の下方に位置するように形成されている。このような位置にも枕部を設けることで、水晶振動片とベース内底部との外部衝撃による接触抑制に、より効果が期待できる。
【0037】
−第3の実施形態−
次に、本発明の第3の実施形態を、図6乃至図7を用いて説明する。図6は本発明の第3の実施形態を示すベースの平面図である。図7は図6の切断線に沿ったベースの断面図である。図7において、水晶振動片の表裏面に形成される電極およびベース底面に形成される外部接続端子、キャスタレーションの記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成部分については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。なお、本実施形態において水晶振動片と搭載パッドとの接合が完了した状態(定常状態)において、枕部は水晶振動片と接触した状態となっている。
【0038】
図6はベース1の内底面に枕部13が搭載パッド12の近傍で、かつ当該搭載パッド12から前記ベース長辺の他端側方向に離間した位置に形成されている。そして前記枕部13の形成位置は、前記水晶振動片2のベース内底面と対向する面に形成された引出電極22bと、平面視で重ならない位置となっている。すなわち本実施形態ではベースの短辺中心線上には枕部13は形成されておらず、一対の搭載パッド12の片方の搭載パッド12に近接する位置に形成されている。この場合、図7(a)に示すように、枕部13の高さは水晶振動片2の短辺方向の厚みに応じて形成される。すなわち、凸レンズ状に加工された水晶振動片の場合、水晶振動片の短辺方向中心から短辺端部方向に遠ざかるほど、薄肉になるため、これに応じて枕部の高さを高くしている。
【0039】
このような構成であれば、図7(b)に示すように枕部13の上方には、引出電極22bまたは励振電極21bが位置しないため、外部衝撃を受けて前記枕部13が水晶振動片2と接触した際に、当該引出電極22bまたは励振電極21bとが接触しないため電荷の移動が無く、容量が変化しないので周波数の変化を防止することができる。
【0040】
なお、本実施形態では前記枕部13は断面視矩形状であるが、矩形状に限定されるものでなく、例えば、前述の図3(b)や図3(c)のような断面形状になるように枕部13を形成してもよい。前記枕部13の断面形状を前記水晶振動片2の曲率に対応した形状とすることで、枕部が前記水晶振動片2の短辺方向において前記水晶振動片の曲面頂部から離れた位置であっても、枕部と水晶振動片との距離の変化を小さくできるので衝撃緩和の点で、より効果的に機能する。つまり、前記枕部を断面視階段形状や、傾斜面を有する形状とすることで、前者の場合は複数の線接触に、後者の場合は面接触となり、枕部の受ける単位面積あたりの応力を軽減することができる。
【0041】
本発明の実施形態では蓋体側にだけ封止材が形成され、ベース側には封止材が形成されていない構成となっているが、前記構成に限定されるものではなく、例えばベースの堤部上面にだけ封止材が形成された構成や、蓋体とベースの両方に封止材が形成された構成であってもよい。
【0042】
さらに本発明の実施形態では、封止材としてガラス材を例にしているが、セラミックベースと金属製の蓋体を用い、封止材に銀ロウ材等のロウ材を用いたレーザー封止、電子ビーム封止による封止等でも適用できる。さらに本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用可能である。
【0043】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すベースの平面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】図2のB部の拡大図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すベースの平面図と、ベース短辺方向の断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る変形例を示すベースの平面図。
【図6】本発明の第3の実施形態を示すベースの平面図。
【図7】図6の切断線に沿ったベースの断面図。
【図8】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図である。
【図9】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ベース
2 水晶振動片
3 蓋体
4 導電性接合材
5 凹部
6 封止材
10 堤部
11 段部
12 搭載パッド
13 枕部
13a 枕部第1層
13b、13c、13d、13e 枕部第2層
14 第2の枕部
15 第3の枕部
1a 第1のシート
1b 第2のシート
21a、21b 励振電極
22a、22b 引出電極
23a、23b 接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも短辺端部が面取り加工された、平面視略矩形状の圧電振動素子の一端側と接合される一対の搭載パッドが、長手方向一端側に並列形成された平面視矩形状のベースであって、
前記ベースの内底面には、枕部が前記搭載パッドと近接した位置に、前記搭載パッドと同一厚み、あるいは前記搭載パッドよりも薄い厚みで形成されているとともに、
前記枕部は、前記一対の搭載パッド間の中央を通り、前記ベースの長手方向へ延出した仮想線上にあり、
前記枕部の周縁の一部または全てが、前記一対の搭載パッドの対向する二辺の両端の内、前記ベース他端側に近い方の二端点の間を結ぶ仮想線よりも、前記ベース他端側に近い側に位置していることを特徴とするベース。
【請求項2】
前記枕部が絶縁材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベース。
【請求項3】
励振電極と、当該励振電極から一端側に延出された引出電極とを表裏に有する、少なくとも短辺端部が面取り加工された平面視略矩形状の圧電振動素子の前記一端側を、
凹部を有する平面視矩形状のベースの、長手方向一端側に並列形成された一対の搭載パッドと接合することによって、片持ち支持する構成の圧電振動デバイスにおいて、
前記ベースの内底面には、少なくとも1個以上の枕部が前記搭載パッドの近傍で、かつ当該搭載パッドから前記ベース他端側方向に離間して形成されているとともに、
前記枕部は、前記圧電振動素子の前記内底面と対向する面に形成された前記引出電極と、平面視で重ならない位置に配置されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項2に記載のベースを用いて、当該ベースの内部に形成された一対の搭載パッド上に圧電振動素子を、導電性接合材を介して片持ち支持接合し、平面視矩形状の蓋体で気密封止した圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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