説明

圧電振動デバイス

【課題】 圧電振動素子の電気的特性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができる圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 平面視矩形状の圧電振動素子3を保持するベース1と、当該圧電振動素子を気密封止するキャップ2とを有してなる圧電振動デバイスであって、前記ベースは、圧電振動素子の対向する辺の両端部で保持する支持台14,15と当該支持台の上部に形成された電極パッド16,17とを具備しており、前記圧電振動素子は、辺の一部のみに導電性接合材が塗布されて前記電極パッドと接合してなり、前記支持台の導電性接合材が塗布される部分には、当該支持台の稜部分からベースの外側に向かった切り欠き141,151が形成されている。当該切り欠きに前記導電性接合材の一部が食い込んだ状態で、前記圧電振動素子と前記支持台とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子や水晶フィルタ、水晶発振器などの圧電振動デバイスに関するものであり、特にセラミック材料などからなる表面実装型パッケージに圧電振動素子を搭載してなる電極パッドを改善するものである。
【背景技術】
【0002】
気密封止を必要とする電子部品の例として、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等の圧電振動デバイスがあげられる。これら各製品はいずれも水晶振動板(圧電振動素子)の表面に金属薄膜電極を形成し、この金属薄膜電極を外気から保護するため、気密封止されている。
【0003】
これら圧電振動デバイスは部品の表面実装化の要求から、セラミック材料からなるパッケージ内に気密的に収納する構成が増加している。例えば、特許文献1には、表裏面に励振電極が形成された水晶振動板を搭載する電極パッド(電極端子)を有する絶縁性ベースと、断面が逆凹形のキャップとからなり、これらを気密的に封止したセラミック材料からなるパッケージが開示されている。ここでは、水晶振動板の対向する辺の両端部に形成された2つの電極パッドにより水晶振動板を両持ち保持している。
【特許文献1】特開2003−297453号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧電振動デバイスに使用される表面実装型パッケージのうち、車載向け用途のものでは、導電性接合材等を圧電振動素子の両端部で接合して保持することで、塗布面積を増大させ、圧電振動素子の撓みを抑制させることにより、瞬間的な発振停止をなくし、耐衝撃性能を向上させている。また一方で、近年、表面実装型パッケージは、ますます軽薄短小化が進んでおり、圧電振動素子を小型化しても、CI値などの電気的特性を低下させない工夫が必要不可欠となっている。
【0005】
しかしながら、圧電振動素子を両端部で保持する構成は、片端部のみで保持する構成にくらべて、導電性接合材で圧電振動素子を押さえ込むことによってCI値の低下等の電気的特性面での悪影響を受けやすい。また、圧電振動素子の両端部で保持するために、圧電振動素子の励振電極を形成する際に設計的な寸法制限が加わりやすいといった問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、圧電振動素子の電気的特性を低下させることなく、耐衝撃性を向上させることができる圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1による圧電振動デバイスは、平面視矩形状の圧電振動素子を保持するベースと、当該圧電振動素子を気密封止するキャップとを有してなる圧電振動デバイスであって、前記ベースは、圧電振動素子の対向する辺の両端部で保持する支持台と当該支持台の上部に形成された電極パッドとを具備しており、前記圧電振動素子は、辺の一部のみに導電性接合材が塗布されて前記電極パッドと接合してなり、前記支持台の導電性接合材が塗布される部分には、当該支持台の稜部分からベースの外側に向かった切り欠きが形成されており、当該切り欠きに前記導電性接合材の一部が食い込んだ状態で、前記圧電振動素子と前記支持台とが接合されてなることを特徴とする。
【0008】
また、上述の構成において、前記切り欠きが、ベースの中心点に対してお互いに対向する位置に設けられてなることを特徴とする。
【0009】
また、上述の構成において、前記電極パッドは、略凸字形状で、圧電振動素子の外形形状に対応して形成された幅広の搭載領域と、外部に延出された幅狭の引出領域を具備し、前記電極パッドの引出領域がお互いに対向する位置に前記切り欠きが設けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特許請求項1によれば、前記圧電振動素子は、辺の一部のみに導電性接合材が塗布されて前記電極パッドと接合してなり、前記支持台の導電性接合材が塗布される部分に、当該支持台の稜部分からベースの外側に向かった切り欠きが形成されているので、支持台の稜の一部を圧電振動板の中心部から離すとともに、不要な導電性接合材を前記支持台の切り欠きの内部に溜めることで、不要な導電性接合材が圧電振動板の中央部に向かってはい上がるのを抑制することができる。このため、導電性接合材により、圧電振動素子の動きを妨げることなく、CI値の低下をなくすことができる。しかも、前記支持台の稜部分に沿って切り欠きが形成されているので、当該切り欠きへ導電性接合材の食い込みが増大した状態で、前記圧電振動素子と前記支持台とが接合される。このため、アンカー効果が生じるとともに、導電性接合材の剥がれようとする応力は、圧電素子主面と支持台上面の面方向のみならず、圧電素子主面と切り欠き断面のせん断方向にも働くので、導電性接合材の塗布量が少なくなっても接合強度が飛躍的に向上する。このように、本発明では、圧電振動素子の電気的特性を低下させることなく、耐衝撃性能を向上させることができる。
【0011】
請求項2によれば、上述の作用効果に加えて、前記切り欠きが、ベースの中心点に対してお互いに対向する位置に設けられているので、さらに接合強度が高まる。
【0012】
請求項3によれば、上述の作用効果に加え、前記電極パッドは、略凸字形状で、圧電振動素子の外形形状に対応して形成された幅広の搭載領域と、外部に延出された幅狭の引出領域を具備しているので、圧電振動素子の外形端部を前記電極パッドの搭載領域端部の位置に合わせることで、圧電振動素子を支持台と電極パッドからずれることなく位置決めできる。しかも、前記引出領域の位置を認識することで、切り欠きの位置が認識できるので、導電性接合材を圧電振動素子の両端辺の一部で、切り欠きのある位置に塗布する際にずれることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による実施形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり図面とともに説明する。図1は本発明の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の分解斜視図であり、図2は図1のベース平面図であり、図3は図2の水晶振動板を搭載した状態のベース平面図である。図4は図3のA−A線に沿った断面図である。表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有する平面矩形状のベース1と、当該ベースの中に収納される圧電振動素子である水晶振動板3と、ベースの開口部に接合されるキャップ2とからなる。
【0014】
ベース1は、例えばアルミナセラミック材料からなり、矩形平板形状のベース基体と、中央部分が穿設されるとともに外形サイズが前記ベース基体とほぼ等しい第1の枠体と、中央部分が前記第1の枠体より大きく穿設されるとともに外形サイズが前記ベース基体とほぼ等しい第2の枠体からなり、これら各層が積層されて一体的に焼成されている。上記焼成成形後、枠体の上面には前述のガラス層11aが焼き付け加工等の手法により形成されている。つまり、ベース1は、断面でみて凹形の圧電振動素子収納部10と長手方向の両端部に支持台14,15とを有した形態となっており、凹形周囲の堤部11上に周状のガラス層11aが形成されている。このベース外周上下部には、4角にキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている。このうちキャスタレーションC1,C3の下方には連結電極(図示せず)が形成され、外部に接続される端子電極(図示せず)と電気的につながっている。
【0015】
図1、図2に示すように、前記ベース内部の支持台14,15には、支持台の幅方向の中央でその稜部分からベース1の外側(長手方向の両端部)に向かった切り欠き141,151がそれぞれ形成され、ベースの中心点に対してお互いに対向する位置に設けられてなる。このため、支持台14,15の稜の一部を後述する水晶振動板3の中心部から離すとともに、後述する不要な導電性接合材Dを切り欠き141,151の内部に溜めることで、不要な導電性接合材が水晶振動板3の中央部に向かってはい上がるのを抑制することができる。なお、これらの切り欠き141,151は、セラミック焼成前の前記第1の枠体に予め形成することで容易に作成できる。
【0016】
前記切り欠きが形成された支持台14,15の上部には、2つの電極パッド16,17がそれぞれ形成されており、これら電極パッドは、図示しないビアと連結電極を介して、ベース1の底面に形成された前記端子電極(図示せず)へと電気的に延出されている。これらの端子電極、連結電極、電極パッドは、ダングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベースと一体的に焼成して形成し、これのうち一部のものは、メタライズ上部にニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成して構成されている。
【0017】
これらの電極パッド16,17は、前記支持台の上面で略凸字形状に形成されており、後述する水晶振動板3が搭載される搭載領域161,171と、前記搭載領域より幅細に形成された引出領域162,172を具備している。そして、前記搭載領域161,171は、搭載される水晶振動板3の外形形状に対応して形成されているとともに、前記引出領域162,172は、前記切り欠き141,151の形成された支持台の幅方向の中央で外部に延出されている。つまり、前記電極パッドの搭載領域161,171は、その幅寸法が水晶振動板の短辺寸法とほぼ同じ寸法であり、対向する搭載領域161と171の外側端部の寸法が水晶振動板の長辺寸法とほぼ同じ寸法となるように形成されているとともに、前記切り欠き161,171と引出領域162,172とは、支持台の幅方向の中央部分を結ぶ直線上に位置にするように形成されている。このため、水晶振動板3の両端部を前記搭載領域161,171の端部位置に合わせ、水晶振動板3の短辺方向の中央部を前記引出領域162,172の位置に合わせることで、水晶振動板を支持台と電極パッドからずれることなく位置決めできる。しかも、前記引出領域の位置を認識することで、同一直線上に存在する切り欠き141,151の位置も認識できるので、導電性接合材を塗布する際にずれることがない。
【0018】
図3、図4に示すように、前記電極パッド16,17の上部には平面視矩形状の水晶振動板3が搭載される。水晶振動板3は、励振電極31、32と前記電極パッド15,16の方向へ引き出された引出電極311,321とを具備しており、当該水晶振動板の引出電極部分311,321と前記電極パッド15,16が、例えばシリコーン系の導電性樹脂接合材Dにより導電接合される。このとき、前記水晶振動板3の短辺方向における中央部の一部にのみ導電性接合材Dを塗布されて前記支持台14,15に接合してなり、かつ、前記導電性接合材Dの一部が前記切り欠き141,151に食い込んだ状態で、前記水晶振動板3と前記電極パッド16,17とが接合されている。このように、本発明のような切り欠き141,151を設けることで、電極の形成されていないベースの厚み方向にある素地部分(アルミナセラミック部分)にも導電性接合材が食い込んだ状態で接合されるので、アンカー効果が生じ、導電性接合材の塗布量が少なくなっても接着強度が飛躍的に向上できる。また、シリコーン系の導電性樹脂接合材と金メッキされた電極パッドでは、金メッキ部分の酸化が促進されないので接着強度があまり強くないが、本発明により同様の組み合わせの構成であっても耐衝撃性が改善できる。
【0019】
前記ベース1にキャップ2を被せ、所定温度の加熱により、キャップに形成されたガラス材を溶融させ気密封止を行う。以上により表面実装型水晶振動子の完成となる。
【0020】
前記実施形態では、一対の切り欠きを例にしているが、導電性接合材が塗布される領域であれば、複数の切り欠きを設けることも可能である。また、前記切り欠きの形成位置は、ベースの中心点でお互いに対向する位置に設けることで、接合強度が高まるのでより好ましいが、これらの位置に特定して形成しなくてもよい。
【0021】
前記実施形態では、封止接合材としてガラス材を例にしているが、樹脂等でもよい。また、セラミックベースに金属製のキャップを用い、封止接合材に銀ロウ材等のロウ材を用いたレーザ封止、電子ビーム封止、シーム封止、雰囲気加熱処理による封止等でも適用できる。さらに、前記実施形態では、表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用できる。
【0022】
本発明は、その精神または収容な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の分解斜視図。
【図2】図1のベース平面図。
【図3】図2の水晶振動板を搭載した状態のベース平面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0024】
1 ベース
2 キャップ
3 水晶振動板(圧電振動素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形状の圧電振動素子を保持するベースと、当該圧電振動素子を気密封止するキャップとを有してなる圧電振動デバイスであって、
前記ベースは、圧電振動素子の対向する辺の両端部で保持する支持台と当該支持台の上部に形成された電極パッドとを具備しており、
前記圧電振動素子は、辺の一部のみに導電性接合材が塗布されて前記電極パッドと接合してなり、
前記支持台の導電性接合材が塗布される部分には、当該支持台の稜部分からベースの外側に向かった切り欠きが形成されており、
当該切り欠きに前記導電性接合材の一部が食い込んだ状態で、前記圧電振動素子と前記支持台とが接合されてなることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記切り欠きが、ベースの中心点に対してお互いに対向する位置に設けられてなることを特徴とする特許請求項1記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記電極パッドは、略凸字形状で、圧電振動素子の外形形状に対応して形成された幅広の搭載領域と、外部に延出された幅狭の引出領域を具備し、前記電極パッドの引出領域がお互いに対向する位置に前記切り欠きが設けられてなることを特徴とする特許請求項1、または特許請求項2項記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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