説明

圧電振動子及びその調整方法

【課題】 圧電振動板の内部形状やこの圧電振動板上に形成される励振電極の膜厚等を変化させることなく、幅縦モードと長さ縦モードによる振動の変動率を長さ縦モードの周波数のみによる独立した調整を可能とすることで、高発振周波数に対応して小型化する圧電振動子の周波数特性や温度特性を最適化することのできる圧電振動子を提供することである。
【解決手段】 幅縦モードの主振動を伴う一対の主振動辺12a,12b及びこの一対の主振動辺と直交し、長さ縦モードの副振動を伴う一対の副振動辺12c,12dを有し、表面に励振電極が形成された四角形状の圧電振動板12と、前記一対の主振動辺12a,12bから外方向に延びる支持アーム13,14と、前記主振動辺の略中間位置から外方向に突出し、先端に重量を調整するための張出部を有する突起片15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅縦・長さ縦結合モードの圧電振動子及びその調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7(a),(b)に示すように、従来の幅縦・長さ縦結合モードの圧電振動子1は、幅縦モードの主振動辺2a,2b及び長さ縦モードの副振動辺2c,2dを有し、表裏面に励振電極が形成された圧電振動板2と、前記一対の主振動辺2a,2bの一端を支えると共に前記励振電極に繋がる電極パターンが形成された一対の支持アーム3,4とを有して構成されている。前記支持アーム3,4は、バネ性と共に剛性を持たせるため、前記主振動辺2a,2bから延びる一対の接続部3a,4aの先に張り出す一対のリング部3b,4bと、この一対のリング部3b,4bの他端から外方向に延びる一対のリード部3c,4cとを有して構成されている。前記一対のリード部3c,4cは、圧電振動子1が収められるパッケージ(図示せず)内の一対の端子電極にそれぞれ導通接続され、電圧が印加される。このような構造による圧電振動子1は、前記支持アーム3,4によって長さ縦モードの副振動に制限を加え、その周波数を制御することで結合度合いを調整して良好な温度特性を得ていた。
【0003】
前記幅縦振動による主振動の共振周波数は、1〜3.5MHz程度までは実用化がなされている。例えば、主振動の共振周波数が2.1MHzの場合、圧電振動板2の一辺の長さは、1.5mm程度となる。このような大型の圧電振動板2にあっては、励振電極も比較的広く取れるので、圧電振動板2の振動エネルギーは十分に大きいものとなる。このため、良好な温度特性を得るには、前記支持アーム3,4によって副振動に制限を加え、その振動周波数を調整することで、主振動との結合状態を制御するのが比較的容易であった。
【0004】
ところが、上記圧電振動子1において、主振動の共振周波数を上げるために圧電振動板2を小型化すると、振動エネルギーそのものが小さくなる。上述したように、従来形状の支持アーム3,4は、大きく張り出したリング部3b,4bによって副振動を大きく制限する構造であるため、振動エネルギーが小さくなればなるほど、副振動を制御し難くなるといった欠点があった。したがって、圧電振動板2のサイズが比較的大きな1〜3.5MHzの共振周波数帯では実用上問題はないが、従来形状をそのまま小型化するだけでは、設計が非常に困難となる。
【0005】
特許文献1では、上記構造による幅縦・長さ縦結合モードの圧電振動子1において、圧電振動板2の主振動辺2a,2bに面した電極膜5あるいは副振動辺2c,2dに面した電極膜6の膜厚を薄くしたり、厚くしたりすることで、図7(a),(b)に示したような縦方向の幅縦モード及び横方向の長さ縦モードの振動を制御して周波数を変化させることで、周波数温度特性の改善を図るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−52213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図7(a),(b)の斜線で示した部分の電極膜5,6は、それぞれ幅縦モード及び長さ縦モードの周波数を制御する上で効果的な場所であることが特許文献1等に開示されている。このような領域を広くとることによって、重量変化の幅が広くなるので、周波数の調整幅も広く設定することが可能となっていた。
【0008】
しかしながら、高周波数化に対応するように、圧電振動板2そのものが小さくなると、励振用電極の一部分だけの膜厚を増減させることで、各モードにおける周波数のみを選択的に上げたり、下げたりするといった調整は困難となる。例えば、12MHzの幅縦・長さ縦結合モード圧電振動子の場合、圧電振動板2の一辺の大きさは0.27mm程度となる。このような圧電振動板2の中で、非常に狭い箇所の水晶自体を選択的に付加、あるいは、除去することは大変難しく、特に、それぞれの振動モードの周波数調整幅を大きくするためには、広い面積(大きな重量変化)が必要となる。このため、圧電振動板2の面積が狭くなれば、自ずと大きな重量変化を起こしにくくなるといった問題があり、小型で周波数特性の良好な圧電振動子の実現が困難となっていた。
【0009】
また、高周波化に伴って圧電振動板2のサイズが小さくなると、その分、重量調整を行う領域も狭められ、蒸着、レーザーあるいはイオンビームトリミングなどによる加工が困難になる。このため、それぞれのモードに対応した重量調整領域から外れた箇所を加工するような場合も生じ、他のモードの調整に影響を及ぼすおそれがあった。
【0010】
さらに、高周波化及び小型化された圧電振動板を備えた圧電振動子にあっては、圧電振動板に形成される励振電極の一部分であっても膜厚を増減させることで、電気抵抗値が変化し、特に、等価直列抵抗(R1)や振動効率を表す容量比等の電気的特性が悪化するといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、圧電振動板の内部形状やこの圧電振動板上に形成される励振電極の膜厚等を変化させることなく、幅縦モードと長さ縦モードによる振動の変動率を長さ縦モードの周波数のみによる独立した調整を可能とすることで、高発振周波数に対応して小型化する圧電振動子の周波数特性や温度特性を最適化することのできる圧電振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の圧電振動子は、幅縦モードの主振動を伴う一対の主振動辺及びこの一対の主振動辺と直交し、長さ縦モードの副振動を伴う一対の副振動辺を有し、表面に励振電極が形成された四角形状の圧電振動板と、前記一対の主振動辺から外方向に延びる支持アームと、前記主振動辺の略中間位置から外方向に突出し、先端に重量調整部位を有する突起片とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の圧電振動子の調整方法は、幅縦モードの主振動を伴う一対の主振動辺及びこの一対の主振動辺と直交し、長さ縦モードの副振動を伴う一対の副振動辺を有し、表面に励振電極が形成された四角形状の圧電振動板と、前記一対の主振動辺から外方向に延びる支持アームと、前記主振動辺の略中間位置から外方向に突出し、先端に重量調整部位を有する突起片とを備え、前記重量調整部位に形成される金属膜の厚みを増加、あるいは、減少させて前記突起片の重さを変化させることで、前記主振動と副振動の周波数差を調整し、周波数温度特性を改善することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧電振動子によれば、幅縦モードの主振動を伴う圧電振動板の主振動辺から外側に重量調整部位を有する突起片を設けたことによって、この突起片が主振動と副振動の周波数比を調整させる錘として機能させることができる。
【0015】
また、前記重量調整部位に金属膜を所定厚みに形成することによって、前記圧電振動板の形状やサイズによって異なる幅縦モード及び長さ縦モードの結合比を前記突起片の重量とこの突起片に形成される膜厚の重量とによって容易に調整することが可能となる。
【0016】
また、前記突起片は、幅縦モードの節部となる主振動辺上の中間位置に設けられるため、主振動に影響を及ぼすことなく、副振動の周波数のみを変化させることができる。
【0017】
本発明の圧電振動子の調整方法によれば、重量調整部位に形成する金属膜の厚みを増減させることによって、周波数温度特性が最適となるように、主振動と副振動の周波数差を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における圧電振動子の平面図である。
【図2】上記圧電振動子の要部を示す拡大平面図である。
【図3】上記圧電振動子における周波数の温度依存性を示すグラフである。
【図4】上記圧電振動子における1次温度係数の膜厚依存性を示すグラフである。
【図5】上記圧電振動子における1次温度係数の周波数差依存性を示すグラフである。
【図6】第2実施形態の圧電振動子の平面図である。
【図7】従来の幅縦・長さ縦モードの圧電振動子の振動形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る第1実施形態の圧電振動子11の平面形状を示す。この圧電振動子11は、輪郭振動を伴う基本形状からなり、幅縦・長さ縦結合モードの振動を生じる四角形状の圧電振動板12と、この圧電振動板12を支持する一対の支持アーム13,14と、前記圧電振動板12の外周から支持アーム13,14が接続される方向に延びる一対の突起片15とを備えて構成されている。
【0020】
幅縦・長さ縦結合モードは、通常、長さ縦モードの振動を調整して、幅縦モードを結合させることにより、温度特性などの良好な振動子特性を得る。前記突起片15は、長さ縦モードの振動に対する錘として機能し、振動を抑制することで周波数を調整する役割を備えている。
【0021】
この圧電振動子11は、機械軸(Y軸)に垂直となるY板水晶を電気軸(X軸)を回転軸として角度θx=+40°〜+60°回転し、さらに、前記X軸の回転後の新軸(Y´軸)を回転軸として、角度θy=40°〜50°回転した上下面及び四方向の側面を有する薄板状の水晶体を所定の形状に加工して形成されている。また、前記Y軸の回転後の新軸であるY´軸に垂直な面となる圧電振動板12の表面及び裏面には極性の異なる少なくとも一対の励振電極17が対向して配置されている。なお、前記圧電振動板12、支持アーム13,14及び突起片15からなる圧電振動子11は、前記カット角による板状の水晶体を所定形状に打ち抜くことによって形成される。
【0022】
前記圧電振動板12は、幅縦の主振動を生じさせるように対向する一対の主振動辺12a,12bと、長さ縦の副振動を生じさせるように前記主振動辺12a,12bと直交する方向に対向する一対の副振動辺12c,12dとによって四角形状に形成されている。前記主振動辺12a,12bと副振動辺12c,12dとの辺比は、発振させる周波数によって異なる。また、圧電振動板12の表面に第1励振電極、裏面に第2励振電極が形成され、それぞれの励振電極に対して逆位相の電圧が各支持アーム13,14を介して印加することで、前記主振動辺12a,12b及び副振動辺12c,12dが撓み変形して幅縦・長さ縦結合モードの振動が生じる。ここで、主振動辺とは、主振動モードの振動方向に平行となる辺を示し、この辺の長さが主振動モードの周波数を決定するものである。また、副振動辺とは、副振動モードの振動方向に平行となる辺を示し、この辺の長さが副振動モードの周波数を決定するものである。
【0023】
前記一対の支持アーム13,14は、4つの屈曲部を有した長方形状に近いリング部13b,14bと、このリング部13b,14bの一端から前記主振動辺12a,12bの略中間位置に接続される接続部13a,14aと、前記リング部13b,14bの他端から外方向に延び、図示しないパッケージ内の接続端子に支持及び導通接続されるリード部13c,14cとを有して形成されている。前記リング部13b,14bは、接続部13a,14aに近い部分が狭(細)く、リード部13c,14cに近い部分が広(太)くなるように形成される。これによって、主振動辺12a,12bに近い部分がバネ性を有して撓み変形しやすくなり、主振動に影響を及ぼすことなく副振動を大きく変化させることが可能となる。一方、リード部13c,14c側が広(太)くなっているので、支持強度が得られると共に、圧電振動板12を安定した状態で支持することができる。
【0024】
図2に示すように、前記一対の突起片15は、圧電振動板12や支持アーム13,14と同様に水晶体によって形成され、接続部13a,14aからリング部13b,14bの内部に向けて突出して設けられる。この一対の突起片15は、前記接続部13a,14aと繋がる脚部15aと、この脚部15aの先端から張り出すように一体形成される重量調整部位(張出部)15bとを有して形成されている。前記脚部15aは接続部13aと略同じ幅(太さ)によって形成される。前記張出部15bは、これ自体で所定の重量を備えると共に、表面に金属膜を成膜させるための所定サイズの平面領域を備えて形成される。前記張出部15bは、支持アーム13,14のそれぞれのリング部13b,14bの内周面に接触しない形状及びサイズに形成される。本実施形態では、長方形状としたが、多角形状あるいは円形状であってもよい。
【0025】
前記張出部15bには、重量を調整するための調整領域15cが設けられる。この調整領域15cは、張出部15bの外周縁に露出する水晶体によって、前記励振電極や配線電極とは電気的に絶縁分離している。前記調整領域15cには、金属膜16が所定厚みに形成され、この金属膜16の重量と、張出部15b自体の重量とによって、突起片15全体の重量が設定される。前記金属膜16は、励振電極と同様に、蒸着やスパッタリングあるいはエッチング等によって所定の厚みに形成することができる。また、調整領域15cの一部に成膜するなどの範囲を限定することで、突起片15の重量を調整することができる。
【0026】
次に、前記突起片15を設けたことによる圧電振動子11の周波数調整方法について説明する。先ず、主振動辺12a,12bによる幅縦モードの周波数温度特性は、この幅縦モードと副振動辺12c,12dによる長さ縦モードとの結合度合いで決まる。さらに、この結合度合いは、幅縦モードと長さ縦モードとの周波数差で規定される。この周波数差δは、主振動の周波数をFm、副振動の周波数をFsとしたとき、δ=(Fm−Fs)/Fmとして規定される。すなわち、幅縦モードと長さ縦モードとの周波数差を適切な値に設定することによって、両モードとの間に程よい距離を保つこと、換言すれば、主振動に対する副振動の結合度合いを適切に調節することができ、幅縦モードによる主振動の特性を最大限に高めることができる。これによって、最適な周波数温度特性を備えた圧電振動子が得られることとなる。
【0027】
前記副振動は、所定重量を有した前記突起片15を圧電振動板12の副振動方向に設けたことによって低減させることが可能となった。長さ縦モードの周波数を制御して主振動である幅縦モードとの結合度合いを調整することで、幅縦モードの周波数温度特性を改善しようとする場合は、前記突起片15の張出部15bに形成する金属膜16の厚みによって長さ縦モードのみの周波数を選択的に大きく変化させることが可能となる。このとき、前記張出部15bを小さく、あるいは、調整領域15cに形成する金属膜16の厚みを薄くして重量を軽くすると、長さ縦モードの周波数は大きくなる。逆に、前記張出部15bを大きく、あるいは、調整領域15cに形成する金属膜16の厚みを増して重量を重くすると、長さ縦モードの周波数は小さくなる。このように長さ縦モードの周波数は前記突起片15の重量の増減によって大きく変動するが、主振動である幅縦モードの周波数変化には寄与していないことが確認されている。
【0028】
図3は前記張出部15bに形成する金属膜16を金(Au)とした場合において、このAuの厚みを変化させたときの周波数温度特性を示したものである。横軸は温度 t [℃]、縦軸は周波数偏差 ΔF/F [ppm]を示す。ここでは、基本周波数を12MHzに設定し、解析温度範囲が−40℃〜+80℃、Au膜厚が0から2000Åごとにステップアップした10000Åまでの条件で有限要素法(FEM)解析を行った。使用した圧電振動子のサンプルによれば、解析温度が+20℃を基準として、Au膜厚が4000Åより薄くなるにしたがって、解析温度の上昇と共にプラス側への周波数変動率が大きくなり、Au膜厚が4000Åより厚くなるにしたがって、解析温度の上昇と共にマイナス側への周波数変動率が大きくなるといった結果が得られた。
【0029】
図4は1次温度係数の膜厚による依存性を示したものである。横軸は前記張出部15bに形成されるAu膜厚t[Å]、縦軸は1次温度係数α[×10−61/℃]を示す。ここで、Au膜厚10000Åのとき、20℃における曲線の傾き(1次温度係数α)は、負(α<0)である。Auの膜厚を減少させる毎に、αの値は大きくなっていき、4000Å辺りでα≒0となり、良好な周波数温度特性が得られる。さらにAuの膜厚を減少させると、αの値は大きくなる。図5は1次温度係数の周波数差による依存性を示したものである。横軸は主振動と副振動の周波数差δ[%]、縦軸は1次温度係数α[×10−61/℃]を示す。また、上記図4及び図5の解析値を表1に示す。
【0030】
上記図4,図5及び表1の結果から、膜厚及び周波数差δと1次温度係数αとの間には相関関係が見られる。特に、膜厚と副振動周波数を変化させ、周波数差をモニタすることで、主振動の周波数温度特性を調整することが可能となる。さらに、本解析モデルでの容量比は、いずれの膜厚においても、310〜321であり、良好な特性となっている。
【0031】
【表1】

【0032】
上記結果から、突起片15の重量が変化する前後で幅縦モードと長さ縦モードの周波数差に変化が生じると同時に、この両モードによる結合状態が変化して周波数温度特性が変化することがわかる。このとき、幅縦モードによる周波数温度特性が最良となる周波数差を見出し、この周波数差となるように、前記突起片15の張出部15bのサイズやこの張出部15bに形成する金属膜16の厚みをモニタしながら調整することで、周波数温度特性に優れた圧電振動子の製造及び量産化が可能となる。
【0033】
このように、圧電振動板12の内部に形成される励振電極に手を加えたり、機械的な加工を要したりすることなく、圧電振動板12の外部に突出させた突起片15の重量変化の調整だけで周波数温度特性の良好な圧電振動子を得ることができるようになった。また、前記突起片15を圧電振動板12と支持アーム13,14との接続部分である振動の節部近傍に設けたことで、主振動への影響を最大限に抑える効果が得られた。
【0034】
図6は第2実施形態の圧電振動子21を示したものである。この圧電振動子21は、幅縦方向に三面の励振電極27a,27b,27cを有する圧電振動板22と、中間に位置している励振電極27bの振動領域の両主振動辺22a,22bから一つの経路を有して支持する一対の支持アーム23,24と、この一対の支持アーム23,24が連結されるフレーム28とを有して構成されている。
【0035】
このような複数の励振電極を有する圧電振動板22にあっては、全体として高次の振動モードによる周波数温度特性を持つが、それぞれの励振電極が形成されている振動領域の主振動辺に突起片25を設けて、副振動方向の重量を変化させることで、前記振動領域ごとの幅縦モードと長さ縦モードの結合度合いを調整することが可能となった。本実施形態では、突起片25をそれぞれの振動領域の主振動辺上に設けたが、全ての振動領域に対して均等に設ける必要はなく、圧電振動板22の主振動辺22a,22b及び副振動辺22c,22dの辺比に応じて、最も周波数の変動が大きくなる振動領域に設定するといった選択的な設定も可能であり、それぞれの突起片25に形成される金属膜の厚み等も任意に設定することが可能である。なお、それぞれの振動領域における突起片25の重量調整及びその効果は第1実施形態の圧電振動子11の場合と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0036】
前記一対の支持アーム23,24は、主振動辺22a,22bからそれぞれ外方向に延びる接続部23a,24aと、この接続部23a,24aから第1アーム部(23b,24b)、第2アーム部(23c,24c)、第3アーム部(23d,24d)とでコ字状に延びる連続した一つの経路によって結ばれている。また、前記接続部23a,24a側の第1アーム部23b,24bが狭(細)く、フレーム28側の第3アーム部23d,24dが広(太)くなるように形成される。これによって、主振動辺22a,22bに近い部分がバネ性を有して撓み変形しやすくなり、主振動に影響を及ぼすことなく副振動を大きく変化させることが可能となる。一方、フレーム24側が広(太)くなっているので、支持強度が得られると共に、圧電振動板22をパッケージ内に設けられる接続端子に安定した状態で支持することができる。
【0037】
図6に示したように、前記フレーム28は、圧電振動子21をパッケージに固定すると共に、前記支持アーム23,24を介して圧電振動板22の表裏面に形成される一対の励振電極に電圧を印加するために設けられる。このフレーム28も前記支持アーム23,24の一部を構成するため、支持強度を保持しつつ、できるだけ軽量であることが望ましい。このため、本実施形態では、前記圧電振動板22を三方向から囲うようにコ字状に形成した。
【0038】
本実施形態の圧電振動子21は、圧電振動板22に突起片25を設けて幅縦モードと長さ縦モードを調整すると共に、支持アーム23,24が圧電振動板22の一対の主振動辺22a,22bからフレーム28に向けて複数の屈曲部を有しながら一経路で結ばれた構造となっている。このような構造を備えたことによって、幅縦モードと長さ縦モードの結合度合いを制御することが容易であると共に、容量比は最小となるため、良好な電気的特性を得ることが可能となる。
【0039】
なお、図6に示した支持アーム23,24は、4つの屈曲部を有したコ字状となっているが、2つの屈曲部を有するL字状、3つの屈曲部を有するV字状、6つの屈曲部を有するS字状とすることもできる。
【0040】
上記各実施形態の圧電振動子は、セラミック等のパッケージ内の端子電極にフレームの一端を電気的に接続することによって片持ち支持され、電子ビーム封止や真空シーム溶接、ガラス封止、AuSn封止などで蓋をして、真空度が1.0×10Pa以下で密閉封止される。
【符号の説明】
【0041】
1 圧電振動子
2 圧電振動板
2a,2b 主振動辺
2c,2d 副振動辺
3,4 支持アーム
3a,4a 接続部
3b,4b リング部
3c,4c リード部
5,6 電極膜
11 圧電振動子
12 圧電振動板
12a,12b 主振動辺
12c,12d 副振動辺
13,14 支持アーム
13a,14a 接続部
13b,14b リング部
13c,14c リード部
15 突起片
15a 脚部
15b 張出部(重量調整部位)
15c 調整領域
16 金属膜
17 励振電極
21 圧電振動子
22 圧電振動板
22a,22b 主振動辺
22c,22d 副振動辺
23,24 支持アーム
23a,24a 接続部
23b,24b 第1アーム部
23c,24c 第2アーム部
23d,24d 第3アーム部
25 突起片
27a,27b,27c 励振電極
28 フレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅縦モードの主振動を伴う一対の主振動辺及びこの一対の主振動辺と直交し、長さ縦モードの副振動を伴う一対の副振動辺を有し、表面に励振電極が形成された四角形状の圧電振動板と、
前記一対の主振動辺から外方向に延びる支持アームと、
前記主振動辺の略中間位置から外方向に突出し、先端に重量調整部位を有する突起片とを備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記突起片は、前記重量調整部位の重さを増減することによって、前記主振動と副振動の周波数差を調整する請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記突起片は、前記主振動辺から延びる脚部と、この脚部の先端に張り出すようにして設けられる平面状の張出部とによって形成され、この張出部の表面に重量を調整する金属膜が所定厚みに形成される請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記圧電振動板は、主振動方向に対して複数の励振電極からなる振動部を有し、それぞれの振動部の主振動辺に前記突起片を設けた請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記支持アームは、前記主振動辺と前記フレームとの間が一つの経路によって結ばれ、その間に二以上の屈曲部を有している請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項6】
前記支持アームは、前記圧電振動板の主振動辺と直交する方向に延びる第1アーム部と、該第1アーム部から第1の屈曲部を介して主振動辺と平行に延びる第2アーム部と、該第2アームから第2の屈曲部を介して前記フレームに向かって延びる第3アーム部とを備える請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項7】
前記支持アームは、前記主振動辺の略中間位置から前記フレームに向けて略L字状又は略コ字状に屈曲して延びる請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項8】
前記フレームは、前記圧電振動板の外周に沿うように略L字状又は略コ字状に形成される請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項9】
幅縦モードの主振動を伴う一対の主振動辺及びこの一対の主振動辺と直交し、長さ縦モードの副振動を伴う一対の副振動辺を有し、表面に励振電極が形成された四角形状の圧電振動板と、前記一対の主振動辺から外方向に延びる支持アームと、前記主振動辺の略中間位置から外方向に突出し、先端に重量調整部位を有する突起片とを備え、
前記重量調整部位に形成される金属膜の厚みを増加、あるいは、減少させて前記突起片の重さを変化させることで、前記主振動と副振動の周波数差を調整し、周波数温度特性を改善することを特徴とする圧電振動子の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119762(P2012−119762A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265302(P2010−265302)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000237444)リバーエレテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】