説明

圧電特性の測定装置および測定方法

【課題】光学式測位法を用いて圧電特性を測定する際に、照射光に対する反射光の散乱を防ぐことが容易で、圧電変形や圧電特性の測定精度が従来よりも高い測定装置および測定方法の提供を図る。
【解決手段】測定装置1はファイバーヘッド3、可動反射板51、試料保持構造10、測光部4、および、演算制御部5を備える。ファイバーヘッド3は照射光を照射し、その照射光の反射光を受光する。試料保持構造10は、圧電体試料50の下端部近傍を固定して圧電体試料50の上端部側を自立させる。可動反射板51は、下面が圧電体試料50の上端部に接触するように配置され、ファイバーヘッド3の照射光を反射する。演算制御部5は、圧電体試料50の圧電変形による可動反射板51の変位を検出して圧電体試料50の圧電特性を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状圧電体の面内方向の変形量を検出し、圧電特性を測定する測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から圧電体の変形量を検出し、圧電特性を測定する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。図1は特許文献1を参考にした測定装置の模式構成を説明する図である。
【0003】
測定装置101は、載置部102、光学式測位計103、および制御測定部104を備える。載置部102には測定対象となる圧電体試料100が載置される。光学式測位計103は、光源103Bから対物レンズ103Aまで導光した照射光を圧電体試料100に照射し、圧電体試料100で反射された反射光を受光部103Cまで導光して測光する。制御測定部104は、まず圧電体試料100を圧電変形させずに、照射光と反射光との位相差を利用して照射光の初期反射位置を把握し、次に圧電体試料100を圧電変形させてから、再び照射光の反射位置を把握する。このようにして制御測定部104で圧電体試料100の変形量を検出し、その変形量に基づいて圧電定数が計測される。
【0004】
また近年、ポリ乳酸フィルムやセルロース系材料のフィルムが圧電体として利用されることがある。ポリ乳酸フィルムの場合、その製造プロセスでは、フィルム面に平行な方向に張力をかける延伸処理が施され、その延伸方向が分極方向となりポリ乳酸フィルムの結晶化や分極化が進展する。延伸処理が施されたポリ乳酸フィルムは厚み方向に電界が印加されることで、ずり方向に歪みが生じる圧電性を持ち、厚み方向に直交する面内方向(長さ方向や幅方向)の変形が生じる。この圧電性は、圧電テンソルd14で表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−152273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の測定装置では、測定対象となる圧電体試料を対物レンズの光軸に沿って変形するように配置する必要がある。そのため、ポリ乳酸フィルムのように面内方向に圧電変形が生じるフィルム状圧電体を測定対象とするためには、測定装置の載置台に対して垂直な姿勢でフィルムを保持し、フィルムの断面に照射光を照射する必要がある。
しかしながらフィルム断面の面積は小さいため、照射光を照射して変形量を測定することは容易でない。その上、フィルム断面の平滑度や光軸に対する垂直度が高くなければ反射光が散乱してしまうため、高精度な圧電特性の測定は難しかった。
【0007】
また、高精度な圧電特性の測定には圧電効果のみによる変形が検出されることが望ましいが、フィルム状圧電体は自重などの様々な要因によって容易に変形するため、やはり高精度な圧電特性の測定は難しかった。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明の目的は、フィルム状圧電体の面内方向の変形を検出することが容易であり、フィルム状圧電体の圧電特性の測定精度を従来よりも高められる、圧電特性の測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る圧電特性の測定装置は、試料固定部、可動板、可動板支持部、電圧制御部、検出部、および、測定部を備える。試料固定部は圧電体試料の下端部近傍を固定して前記圧電体試料の上端部側を自立させる。可動板は、前記圧電体試料の上端部に下面が接触する。可動板支持部は、前記圧電体試料とともに前記可動板の下面に接触し前記可動板を支持する。電圧制御部は前記圧電体試料に電圧を印加し、前記圧電体試料を変形させる。検出部は、前記可動板の位置変化を検出する。測定部は、前記可動板の位置変化に基づいて前記圧電体試料の圧電特性を測定する。
なお、可動板の位置変化の検出方法としては、光学式測位法や、うず電流式や静電容量式の変位センサを用いる方法など、様々な検出方法を用いることができる。
【0010】
上述の構成では、圧電体試料の圧電変形に伴って変位するように可動板を配置し、その可動板の位置変化を検出することで、圧電体試料の変形量を容易に検出できる。また、可動板の下面を圧電体試料と可動板支持部とが接触支持するため、可動板から圧電体試料に加わる外力を低減して圧電体試料の圧電変形が拘束されることを抑制できる。
【0011】
上述の測定装置において、前記試料固定部は、前記圧電体試料よりも幅狭なピン部と、前記ピン部に対向する対向部とを備え、前記圧電体試料を前記ピン部と前記対向部とで狭持するように構成されると好適である。
仮に圧電体試料が幅方向の全長に亘って試料固定部に固定されていれば、圧電体試料の幅方向の変位が拘束され、圧電体試料の長さ方向の変形量が影響を受けて圧電変形や圧電特性の測定精度は低下してしまう。そこで、ピン部を用いて圧電体試料を狭持することにより、圧電体試料の幅方向の変位が拘束されることを抑制し、圧電変形や圧電特性の測定精度を高められる。
【0012】
上述の測定装置において、前記対向部は、前記圧電体試料の長手方向に延設される溝部を前記ピン部に対向する位置に備えると好適である。
【0013】
このように溝部を設ければ、その溝部に沿うように圧電体試料を曲げて型を付けた圧電体試料を保持でき、圧電体試料を自立させることが容易になる。なお、圧電体試料をこのように曲げても圧電体試料の長手方向の圧電変形は殆ど拘束されず、測定精度はほとんど劣化することがない。
【0014】
上述の測定装置において、前記可動板支持部は、前記圧電体試料に直交する方向に長尺な梁状部と、前記圧電体試料に平行する方向に長尺であり前記梁状部に連結される柱状部と、を備え、前記梁状部で前記圧電体試料に対面する構成であると好適である。
【0015】
仮に反射板支持部と圧電体試料とが対面する面積が大きければ、両者の間で帯電が生じて圧電体試料が前後に撓む恐れがあり、圧電体試料が前後に撓むだけでも圧電変形や圧電特性の測定精度は低下してしまう。そこで、可動板支持部が梁状部で圧電体試料に対面するように構成して両者の対向面積を低減し、これにより、帯電現象による圧電体試料の撓みの発生を抑え、圧電変形や圧電特性の測定精度を高められる。
【0016】
上述の測定装置において、前記圧電体試料は、延伸処理が施されたポリ乳酸フィルムの長矩形片であり、延伸方向から45°の角度を長手方向として切り出されたものであると好適である。延伸処理を施したポリ乳酸フィルムは圧電テンソルd14を持ち、0°の角度を長手方向として切り出した場合には長矩形片が平行四辺形に歪むように変形する。一方、45°の角度を長手方向として切り出した場合には長矩形片が長手方向に伸縮するように変形する。このため、延伸方向から45°の角度を長手方向として切り出すことで、長矩形片の長手方向の変形量からJapanese Journal of Applied Physics.vol.37 p3374-3376,1998年などに記載された方法のような公知の演算方法を参考にして、圧電テンソルd14を導出することができる。
なお、圧電テンソルd31を有するフィルム状の圧電材料であれば、延伸方向から0°の角度を長手方向として切り出すことで、長矩形片が長手方向に伸縮するように変形し、その長手方向の変形量からd31を導出することができる。
【0017】
また、上述の測定装置において、
本発明に係る圧電特性の測定方法は、圧電体試料の下端部近傍を固定して前記圧電体試料の上端部側を自立させる第一のステップと、前記第一のステップで自立させた前記圧電体試料の上端部を一つの支持位置として可動板を載置する第二のステップと、前記圧電体試料を圧電変形させ、前記可動板の上下方向の位置変化を検出し、前記可動板の位置変化に基づいて前記圧電体試料の圧電特性を測定する第三のステップと、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧電体試料の上下方向の圧電変形に伴って変位するように圧電体試料の上端に可動板の下面を接触させ、その可動板の位置変化を検出することで、圧電体試料の変形量を容易に検出できる。また、可動板の下面が圧電体試料に接触支持されるように構成することで、可動板から圧電体試料に加わる外力を低減し、圧電体試料の圧電変形が拘束されることを抑制できる。したがって、可動板の変位量に基づいて、圧電体試料の圧電変形量や圧電特性を容易かつ高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】光学式測位法を用いた従来装置の模式構成を説明する図である。
【図2】第1の実施形態に係る測定装置を説明する模式図である。
【図3】図2に示す測定装置を用いた、圧電特性の測定方法を説明するフローチャートである。
【図4A】図2に示す測定装置の試料保持構造を説明するX−Z断面図である。
【図4B】図2に示す測定装置の試料保持構造を説明するY−Z断面図である。
【図4C】図2に示す測定装置の試料保持構造を説明するX−Y断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る測定装置の試料保持構造を説明するX−Y断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る測定装置の試料保持構造を説明するX−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る圧電特性の測定装置および測定方法について、添付図を用いて説明する。なお、各添付図には直交座標系を適宜付しており、直交座標系のX軸、Y軸、Z軸はそれぞれ圧電体試料の厚み方向、幅方向、長さ方向に対応している。またZ軸は装置の載置台に垂直な鉛直方向になっている。
【0021】
《第1の実施形態》
図2は、本発明の第1の実施形態に係る測定装置の構成を例示する模式図である。
測定装置1は、発光部2、ファイバーヘッド3、測光部4、演算制御部5、電圧印加部6、および、試料保持構造10を備え、圧電体試料50の圧電特性を測定する。
【0022】
ここで示す圧電体試料50は、ポリ乳酸フィルムに延伸処理を施すとともに、その両面に電極膜を成膜し、延伸方向に対して45°の角度を長手として長矩形片(例えば長さ方向32mm、幅方向5mm)を切り出したものである。このような圧電体試料50は、両面の電極膜に電圧が印加されて厚み方向に電界が作用すると、圧電テンソルd14で表される圧電効果によって、圧電体試料50全体として長さ方向および幅方向(面内方向)の伸縮が生じることになる。
【0023】
試料保持構造10は、長さ方向をZ軸方向(鉛直方向)に向けて配置した圧電体試料50の下端部近傍を狭持し、圧電体試料50の上端部側を自立させて保持する。また、その圧電体試料50の上端部には、ガラス製の可動反射板51を接触した状態にして、可動反射板51がX−Y面に平行な姿勢となるように可動反射板51を支持する。
【0024】
電圧印加部6は、演算制御部5から制御信号を受けて圧電体試料50の両面の電極膜に所定の周波数、振幅の交流電圧(例えば、10Hzで283Vp-pの交流電圧)を印加する。なお、交流電圧に替えて、所定電圧の直流電圧を印加し、印加状態をオン・オフしてもよい。これにより、圧電体試料50に面内方向の変形を生じさせ、圧電体試料50の上端部に接触する可動反射板51にZ軸方向の変位振動を発生させる。そのため電圧印加部6は演算制御部5とともに電圧制御部を構成する。
【0025】
発光部2は演算制御部5から制御信号を受けて発光する。発光部2の発光した光は、光ファイバー等を介してファイバーヘッド3や測光部4まで導光される。ファイバーヘッド3は、可動反射板51の上面側に微小間隔を隔てて対向するように配置され、可動反射板51に対して照射光を照射する。この照射光は、圧電体試料50の上端部に照射されるのではなく、可動反射板51の上面に照射される。このため、圧電体試料50のフィルム断面に照射光が直接照射されるのではなく、可動反射板51に照射光が照射されることになり、散乱が生じることなく反射光が得られる。そして、その反射光はファイバーヘッド3に受光され、光ファイバー等を介してファイバーヘッド3から測光部4まで導光される。
【0026】
測光部4は受光する反射光や照射光に基づく測光信号を演算制御部5に出力する。演算制御部5は、測光部4から入力される測光信号に基づいて、圧電体試料50の圧電特性を測定する。そのため測光部4は検出部を構成し、また演算制御部5は測定部を構成する。
【0027】
次に、測定装置1を用いた圧電特性の測定方法の一例を説明する。図3は、圧電特性の測定方法を説明するフローチャートである。
【0028】
まず、圧電体試料50の下端部近傍を試料保持構造10に狭持させ、圧電体試料50の長手方向をZ軸方向に向けてセットする(S11)。
次いで、可動反射板51の下面を圧電体試料50の上端に接触支持させ、可動反射板51の長手方向をX軸方向に向けてセットする(S12)。
次いで、ファイバーヘッド3をZ軸方向の上側から可動反射板51に近づけて、両者の間隔を調整し、両者を対向させる(S13)。
次いで、電圧印加部から交流電圧を印加することで圧電体試料50を圧電変形させる(S14)。
【0029】
そして、その状態で可動反射板51に照射光を反射させ、測光部4で反射光の測光信号を検出し、演算制御部5で測光信号に基づいて反射位置の変位の振幅を検出する(S15)。
なお、演算制御部5による測光信号からの反射位置の検出は、前述の特許文献1に開示されるヘテロダイン方式のような公知の方法を採用することができる。このため、ここでは測光信号からの反射位置の検出法についての詳細な説明は省く。
【0030】
なお、可動反射板51と圧電体試料50とが接触する位置の上面側にファイバーヘッド3が照射光を照射する場合、照射光の反射位置の変位量と圧電体試料50の変形量とが一致することになる。そのため、演算制御部5では、検出する反射位置の変位量を、そのまま圧電体試料50の変形量とみなすことができる。
【0031】
次いで、演算制御部5は、検出した圧電体試料50の変形量に基づいて圧電体試料50の圧電特性(圧電テンソルd14)を演算する(S16)。
【0032】
なお、圧電体試料の圧電テンソルd14の測定には、Japanese Journal of Applied Physics.vol.37 p3374-3376,1998年などに開示される公知の方法を参考にすることができる。
例えば、283Vp-pの交流電圧を印加して500nm p-pの変位振幅が得られたとすると、フィルムの厚さを65μm、フィルム下端固定部から先端までの長さを30mmとして、圧電テンソルd14は次式のような演算により導出することができる。
d14= [{500(nm)×65(μm)}/{30(mm)×283(V)}]×2
= 7.7(pm/V)
以上のようなプロセスフローにより測定装置1を用いて圧電体試料50の圧電特性を測定することができる。
【0033】
次に、試料保持構造10の詳細構成について説明する。
図4Aは、試料保持構造10のX−Z断面(A−A’断面)図であり、図4Bは、試料保持構造10のY−Z断面(B−B’断面)図であり、図4Cは、試料保持構造10のX−Y断面(C−C’断面)図である。
試料保持構造10は、反射板支持部12、載置台13、試料保持板14、試料保持ピン15、およびピン固定部16を備え、圧電体試料50と可動反射板51とを保持する。
【0034】
可動反射板51は前述のようにガラス製であり、ファイバーヘッド3から照射される照射光を反射光として反射する。なお、可動反射板51の材質はどのようなものでもよく、少なくとも、表面で照射光を反射することができる材質であればよい。なお、光学式の測定法ではなく、うず電流式や静電容量式の方法を用いる場合には、可動反射板の上面は導電性の金属膜を形成するとよい。ただし、可動反射板51の重量が大きければ、その荷重によって圧電体試料50が撓んだり、圧電体試料50の変形が拘束されたりする恐れがあるため、可動反射板51は重量が軽いほうが好ましい。
【0035】
反射板支持部12は、載置台13の上面に固定配置される矩形枠形(ロの字形)の部材であり、開口部12Aを備えている。可動反射板51は、この反射板支持部12の上面と、圧電体試料50の上端部との間に架けて載置され、反射板支持部12および圧電体試料50に接触支持される。このため、圧電体試料50には可動反射板51からは荷重のみが外力として作用し、可動反射板51の重量が軽ければ、可動反射板51との接触を要因として圧電体試料50が厚み方向に撓むことがほとんど無くなる。
【0036】
また、反射板支持部12の開口部12Aは、圧電体試料50と反射板支持部12との対向面積を低減するために設けており、これにより、圧電体試料50と反射板支持部12との間に帯電が生じて、圧電体試料50に対して大きな静電力が作用することを防ぐことが可能である。これにより、静電力を要因として圧電体試料50が厚み方向に撓むことがほとんど無くなる。なお、反射板支持部12は矩形枠型以外の形状であっても良く、少なくとも、圧電体試料50の長手方向に平行する長尺な柱状の部位と、その柱状の部位に連結されて圧電体試料50の長手方向に直交する方向(または交差する方向)に延設される長尺な梁状の部位と、を備えて、梁状の部位で可動反射板51の一端を支持すればよい。たとえば、反射板支持部12はI字型などのように対向面積の低減に不向きな形状であってもよいが、コの字形やT字型、逆L字形など圧電体試料50との対向面積の低減が望める形状であると好適である。
【0037】
試料保持ピン15は円柱形の部材であり、ピン固定部16を介して載置台13に固定配置される。ピン固定部16は、貫通孔が付設され、その貫通孔に試料保持ピン15が挿入される。ピン固定部16に対する試料保持ピン15の固定は、どのような手段を用いても良いが、例えば、貫通孔に交差するネジ穴にネジを螺合し、ネジによって試料保持ピン15を貫通孔内壁に押しつけることにより実現することができる。
試料保持板14は板状の部材であり、試料保持ピン15とともに圧電体試料50を狭持し、試料固定部を構成する。この試料保持板14と試料保持ピン15とによって圧電体試料50を狭持する際には、圧電体試料50の上端が、圧電体試料50とともに可動反射板51を接触支持する反射板支持部12の上面と面一になるように、圧電体試料50の狭持位置を微調整するとよい。本実施形態のように試料保持ピン15を用いて圧電体試料50を狭持することにより、圧電体試料50の圧電変形による幅方向の変位が拘束されることを抑制でき、圧電体試料50の長さ方向の変形が拘束されることも抑制できる。これにより、圧電定数等の測定精度を高めることができる。
なお、試料保持板14と試料保持ピン15は導電性材料で構成し、電圧印加端子として圧電体試料50に電圧を印加するようにすると、構成の簡易化が図れるためより好適である。
【0038】
以上の構成とすることにより、試料保持構造10は、可動反射板51に対して照射光を照射して、圧電体試料50の圧電変形に伴って反射位置が変位する反射光を散乱なく得ることができる。そして、圧電体試料50の圧電変形の他の要因によって変形したり、圧電変形が拘束されたりすることを大幅に抑制することができ、圧電体試料50が圧電変形や圧電特性を高精度に測定することが可能になる。
【0039】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る測定装置および測定方法ついて説明する。図5は、本実施形態に係る試料保持構造20のX−Y断面(C−C’断面)図である。
【0040】
本実施形態に係る試料保持構造20は、形状が相違する試料保持板24を備える点で第1の実施形態と相違する。試料保持板24は、X−Y断面形状が円弧状の溝部24AをZ軸方向に延設して設けた構成である。
圧電体試料50が自重によって撓むほど薄い場合には、圧電体試料50を幅方向に曲げて円弧状などの型を付けることで、圧電体試料50を長手方向に撓みにくくすることができる。したがって、圧電体試料50に予め溝部24Aの形状に沿うような型をつけておき、溝部24Aに沿って圧電体試料50を配置することで、圧電体試料50の姿勢を安定に保つことができる。なお、第1の実施形態で示したような平面状の保持板であっても、円弧状に型をつけた圧電体試料50を挟持することはできるが、本実施形態のように溝部24Aを設けるほうが、圧電体試料50の姿勢をより安定に保持することができる。
【0041】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態に係る測定装置および測定方法ついて説明する。図6は、本実施形態に係る試料保持構造30のX−Y断面(C−C’断面)図である。
本実施形態に係る試料保持構造30は、試料保持ピンに替えて第二の試料保持板35Aと狭持用バネ35Bとを備える点で第1の実施形態と相違する。
試料保持板35Aは試料保持板14と同様な平板であり、試料保持板35Aと試料保持板14とは、狭持用バネ35Bによって互いに引き合うように構成されている。このような試料保持構造30では、圧電体試料50が幅方向の全長に亘って狭持されることになる。したがって、圧電体試料50の幅方向の拘束を抑える観点からは、第3の実施形態よりも第1の実施形態や第2の実施形態のほうが望ましいといえる。
【0042】
《その他の実施形態》
上述の各実施形態で示すほかにも、本発明は多様な形態で実施することができる。
例えば、圧電体試料を狭持する構造は上述の各構成の他のどのような構成を採用しても良い。
【0043】
また、光学式測位にヘテロダイン方式のような分光干渉法を採用する他にも、三角測量法、ドップラー法など様々な方式を採用することができる。
【0044】
また、試料保持構造を覆うようにカバーを設けても好適である。その場合、圧電体試料や可動反射板が極めて薄い場合、あるいは柔らかい場合でも、室内気流などの影響による圧電体試料や可動反射板の変形を防ぐことができる。また、カバーを設けることで、圧電体試料に印加する高電圧に感電する危険性を低減して測定作業を行うことが可能になる。より好適には、カバーにより試料保持構造を覆う状態となってから、圧電体試料に高電圧が印加される安全装置等を設けると望ましい。
【0045】
また、測定条件の設定はどのようなものであってもよい。例えば圧電体試料に印加する電圧は、直流よりも交流の方がドリフトの影響を排除しやすく好適である。その場合には、圧電体の共振周波数よりも十分に低い周波数とするとよい。
【符号の説明】
【0046】
1…測定装置
2…発光部
3…ファイバーヘッド
4…測光部
5…演算制御部
6…電圧印加部
10,20,30…試料保持構造
12…反射板支持部
12A…開口部
13…載置台
14,24…試料保持板
24A…溝部
15…試料保持ピン
16…ピン固定部
50…圧電体試料
51…可動反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体試料の長手方向の下端部近傍を固定して前記圧電体試料の長手方向の上端部側を自立させる試料固定部、
前記圧電体試料の上端部に下面が接触する可動板、
前記圧電体試料とともに前記可動板の下面に接触し前記可動板を支持する可動板支持部、
前記圧電体試料に電圧を印加し、前記圧電体試料を変形させる電圧制御部、
前記可動板の位置変化を検出する検出部、および、
前記可動板の位置変化に基づいて前記圧電体試料の圧電特性を測定する測定部、
を備える圧電特性の測定装置。
【請求項2】
前記試料固定部は、前記圧電体試料よりも幅狭なピン部と、前記ピン部に対向する対向部とを備え、前記圧電体試料を前記ピン部と前記対向部とで狭持するように構成される、
請求項1に記載の圧電特性の測定装置。
【請求項3】
前記対向部は、前記圧電体試料の長手方向に延設される溝部を前記ピン部に対向する位置に備える、請求項2に記載の圧電特性の測定装置。
【請求項4】
前記可動板支持部は、
前記圧電体試料の長手方向に直交する方向に長尺な梁状部と、
前記圧電体試料の長手方向に平行する方向に長尺であり前記梁状部に連結される柱状部と、
を備え、前記梁状部で前記圧電体試料に対面する構成である、
請求項1〜3のいずれかに記載の圧電特性の測定装置。
【請求項5】
前記圧電体試料は、延伸処理が施されたポリ乳酸フィルムの長矩形片であり、延伸方向から45度の角度を長手方向として切り出されたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の圧電特性の測定装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記可動板の上面に照射した照射光の反射光から前記可動板の上下方向の位置変化を検出するように構成される、請求項1〜5のいずれかに記載の圧電特性の測定装置。
【請求項7】
圧電体試料の下端部近傍を固定して前記圧電体試料の上端部側を自立させる第一のステップと、
前記第一のステップで自立させた前記圧電体試料の上端部を、一つの支持位置として可動板を載置する第二のステップと、
前記圧電体試料を圧電変形させ、前記可動板の上下方向の位置変化を検出し、前記可動板の位置変化に基づいて前記圧電体試料の圧電特性を測定する第三のステップと、
を有する圧電特性の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163502(P2012−163502A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25551(P2011−25551)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】