説明

圧電発振器の製造方法、圧電発振器

【課題】圧電発振器の製造方法、及び圧電発振器を提供する。
【解決手段】圧電振動子12の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報76に基づいて第1の近似式70を算出し、前記第1の近似式70と前記圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧66)を用いて温度補償量80を算出可能な温度補償回路40に、発振信号58と前記温度特性情報76を出力する圧電発振器10の製造方法であって、前記圧電振動子12の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示す離散温度特性情報74を生成し、前記離散温度特性情報74に基づいて前記第1の近似式70より高次である第2の近似式72を算出し、前記第2の近似式72から前記第1の近似式70が生成可能となる特徴点を抽出することにより前記温度特性情報76を生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(Grobal Positioning System)衛星からの測位信号に基づいて位置計測を行う圧電発振器の温度補償に係り、特に温度補償機能を外部に委ねる圧電発振器であるTSXO(Temperature Sensor Xtal Oscillator)に搭載され、外部の温度補償回路に供される圧電発振器の温度補償に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS機能を備えた携帯電話機等の受信装置、及びGPS受信機能を備えた携帯電話器等は、複数のGPS衛星から送信される測位信号を復調・解析して現在位置を測定するものである。これらの受信装置に使用される基準発振器としては、温度による周波数変化の小さい温度補償型圧電発振器TCXO(Temperature Compensated Xtal Oscilalator)が、広く使用されている。その理由は、受信装置に内蔵された発振器の周波数精度が高いほど、GPS衛星から送信される測位信号を捕捉するためのサーチ範囲を狭めることができ、結果的にサーチ時間を短縮して、すなわちGPS衛星の測位信号を捕捉する時間を短縮して、短時間で測位を行うことができる。
【0003】
一方、上述の受信装置等は装置の電源投入時等の立ち上げ時において、装置全体で温度が短時間に上昇したり、携帯電話等においては屋外から屋内、屋内から屋外に移動したときに温度が急激に変動するため、発振器内での温度が安定するまで温度補償が不安定になる問題があった。この問題を解決するため、ユーザー側で温度変化に対して高速で応答できる温度補償回路を独自に構築し、発振器側から発振器に搭載された圧電振動子特有の3次曲線的な周波数温度特性を示す温度特性情報を取得して、これにより温度補償を適切に行なう要請がなされている。よって、これに対応するため、発振回路側として温度補償回路を不要とするTSXOが適用され、TSXOは、搭載された圧電振動子の現在温度をユーザー側に出力する温度センサーと、搭載された圧電振動子の温度特性情報(ある環境温度における圧電振動子の所定温度を示す温度センサー電圧と温度係数)を記憶し、ユーザー側に温度特性情報を出力する記憶回路を搭載している(特許文献1参照)。
【0004】
厚みすべり振動を利用した水晶振動子を使用する場合、発振器から出力される発振信号は、正の3次曲線を描く温度特性を有するが、上述のTSXOを搭載しユーザー側でTSXOに接続した温度補償回路を有するGPSシステム等においては、温度センサーから得た温度の情報と、記憶回路から得た温度特性情報をもとに、どの温度においても周波数が一定となるように温度補償回路において温度補償量を算出して周波数補正を掛けている。
【0005】
ここで、記憶回路に記憶している温度特性情報は製造検査工程時に取得したものであるため、製造時のスループットの観点から、温度上昇時、または温度下降時のいずれか一方の温度変化した際の温度特性情報を取得し、記憶回路に記憶するのが一般的である。一方、温度補償回路側ではこの温度特性情報に基づいて水晶振動子の基準温度における発振周波数を基準とし温度変化に対して連続的に変化する周波数偏差の近似式を算出し、この近似式と温度センサーから得た温度の情報から温度補償量を算出している。
【0006】
ところで、上述のGPS機能を搭載した携帯電話端末などの高精度の電子機器の分野においては、周波数偏差(Δf/f)の許容範囲が非常に狭く、例えば、−30℃〜85℃の温度範囲では周波数偏差(Δf/f)は0.5ppm以内であることが要求される。この条件を満たさないとサーチ時間が長くなり、結果的に測位誤差が生じたり、GPS衛星との同調が不調となる虞がある、といった問題があった。このため温度特性情報の情報数を多くすることにより近似式を高精度に算出して温度補償を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−324318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、温度特性情報の情報数を増やすと、温度補償回路における温度補償量の算出時間がかかるため、温度補償回路における温度補償の応答速度が低下し、GPS装置など高速な応答が要求されるシステムにおいては上述の問題を回避することができないといった問題があった。また近似式の算出においては、元の温度特性情報は近似式を算出しやすい特徴点において測定された温度と、温度に対応する周波数偏差を用いることが望ましいが、水晶発振器中の水晶振動子の発振周波数の温度特性にはバラつきがあるため、個々の水晶振動子の温度特性の特徴点を特定した上で温度特性情報を生成するのは煩雑となる、といった問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に着目し、温度補償回路に出力する温度特性情報の情報数を増やすことなく、圧電振動子の発振周波数の温度特性のバラつきに関わらず周波数偏差情報の近似式を高精度に算出させ温度補償を高精度に行うことが可能な圧電発振器の製造方法、圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動子の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報に基づいて第1の近似式を算出し、前記第1の近似式と前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に、発振信号と前記温度特性情報を出力する圧電発振器の製造方法であって、前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示す離散温度特性情報を生成し、前記離散温度特性情報に基づいて前記第1の近似式より高次である第2の近似式を算出し、前記第2の近似式から前記第1の近似式が生成可能となる特徴点を抽出することにより前記温度特性情報を生成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【0011】
上記方法により、温度特性情報は離散温度特性情報より情報数が少ないものとなるが、温度補償回路はこれを用いて第1の近似式を生成して温度補償量を算出することになる。しかし第1の近似式は第2の近似式から第1の近似式を生成しやすい特徴点を抽出したものから生成されるため、圧電振動子の発振周波数の温度特性にバラつきがあっても第1の近似式を高精度に生成することができる。また第1の近似式は、第2の近似式の情報をある程度拾った形となっているため、第1の近似式の精度は第2の近似式の精度と遜色の無いものとなっている。したがって離散温度特性情報より少ない情報数の温度特性情報によっても高精度な温度補償を行うことができるので圧電発振器側の温度特性情報に係る容量負担を軽減して小型化を実現しつつ、高精度な温度補償を温度補償回路に行わせることができる。さらに温度特性情報の数を一定の数に制限できるので温度補償回路における温度変化に対応する応答性の低下を防止し、GPS装置など高速な応答が要求されるシステムの温度補償に対応することができる。
【0012】
[適用例2]前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、により生成したことを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器の製造方法。
【0013】
上記方法により、圧電発振器側で温度係数の演算が不要となるため圧電発振器形成時の作業負担を抑制してコストを抑制することができる。この場合、ユーザー側で温度特性情報に対応する第1の近似式から温度係数を算出することになるが、ユーザー側で独自に正確な温度係数を演算することができる。
【0014】
[適用例3]前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、に前記第1の近似式を整合させて抽出される温度係数により生成したことを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器の製造方法。
【0015】
上記方法により、温度補償回路においては温度係数を算出するための演算が不要となるため、ユーザー側の負担を軽減して圧電発振器を搭載したシステムの構築を容易に行うことができる。
【0016】
[適用例4]前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段を前記圧電振動子に隣接して配設し、前記第1、第2の近似式は、前記検出電圧に関連付けられた情報として算出し、前記温度特性情報は、前記第2の近似式から抽出し、前記温度特性情報に基づいて前記第1の近似式を算出し、前記第2の近似式と前記温度検出手段から入力される検出電圧を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に前記発振信号を出力することを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧電発振器の製造方法。
【0017】
上記方法により、温度検出手段は圧電振動子の周囲温度を測定誤差を抑制して測定することができるので、離散温度特性情報を高精度に算出して、第2の近似式を高精度に算出し、これにより第1の近似式、温度特性情報を高精度に算出することができる。さらに圧電振動子の現在温度をリアルタイムでかつ高精度に測定できるので、温度補償回路における補正誤差を抑制して、温度補償を高精度に行なわせることができる。
【0018】
[適用例5]適用例1乃至4のいずれか1例に記載の圧電発振器の製造方法により形成された圧電発振器に前記温度補償回路を組み込んだことを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【0019】
上記方法により、温度補償型発振回路において、離散温度特性情報より少ない情報数の温度特性情報によっても高精度な温度補償を行うことができるので圧電発振器側の温度特性情報に係る容量負担を軽減しつつ高精度な温度補償を温度補償回路に行わせ、高精度に温度補償が行われた発振信号を出力することができる。
【0020】
[適用例6]圧電振動子と、前記圧電振動子を発振させるとともに、前記圧電振動子の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報に基づいて第1の近似式を算出し、前記第1の近似式と前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出する温度補償回路に、発振信号を出力する発振回路と、前記温度特性情報を記憶する記憶回路と、を有し、前記温度特性情報は、前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散温度特性情報を生成し、前記離散温度特性情報に基づいて前記第1の近似式より高次である第2の近似式を算出し、前記第2の近似式から前記第1の近似式が生成可能となる特徴点を抽出して生成し前記記憶回路に記憶したものであることを特徴とする圧電発振器。
【0021】
上記構成により、温度特性情報は離散温度特性情報より情報数が少ないものとなるが、温度補償回路はこれを用いて第1の近似式を生成して温度補償量を算出することになる。しかし第1の近似式は第2の近似式から第1の近似式を生成しやすい特徴点を抽出したものから生成されるため、圧電振動子の発振周波数の温度特性にバラつきがあっても第1の近似式を高精度に生成することができる。また第1の近似式は、第2の近似式の情報をある程度拾った形となっているため、第1の近似式の精度は第2の近似式の精度と遜色の無いものとなっている。したがって離散温度特性情報より少ない情報数の温度特性情報によっても高精度な温度補償を行うことができるので圧電発振器側の温度特性情報に係る容量負担を軽減して小型化を実現しつつ、高精度な温度補償を温度補償回路に行わせることが可能な圧電発振器となる。さらに温度特性情報の数を一定の数に制限できるので温度補償回路における温度変化に対する応答性の低下を防止し、GPS装置など高速な応答が要求されるシステムの温度補償に対応することができる。
【0022】
[適用例7]前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、からなることを特徴とする適用例6に記載の圧電発振器。
【0023】
上記構成により、圧電発振器側で温度係数の演算が不要となるため圧電発振器形成時の作業負担を抑制してコストを抑制することが可能な圧電発振器となる。この場合、ユーザー側で温度特性情報に対応する第1の近似式から温度係数を算出することになるが、ユーザー側で独自に正確な温度係数を演算することができる。
【0024】
[適用例8]前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、に前記第1の近似式を整合させて抽出された温度係数であることを特徴とする適用例6に記載の圧電発振器。
【0025】
上記構成により、温度補償回路においては温度係数を算出するための演算が不要となるため、ユーザー側の負担を軽減して圧電発振器を搭載したシステムの構築を容易に行うことができる。
【0026】
[適用例9]前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段が前記圧電振動子に隣接して設けられるとともに、前記第1、第2の近似式は、前記検出電圧に関連付けられた情報として算出し、前記温度特性情報は、前記第2の近似式から抽出し、前記発振回路は、前記温度特性情報に基づいて前記第1の近似式を算出し、前記第2の近似式と前記温度検出手段から入力される前記検出電圧を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に前記発振信号を出力することを特徴とする適用例6乃至8のいずれか1例に記載の圧電発振器。
【0027】
上記構成により、温度検出手段は圧電振動子の周囲温度を測定誤差を抑制して測定することができるので、離散温度特性情報を高精度に算出して、第2の近似式を高精度に算出し、これにより第1の近似式、温度特性情報を高精度に算出することができる。さらに圧電振動子の現在温度をリアルタイムでかつ高精度に測定できるので、温度補償回路における補正誤差を抑制して、温度補償を高精度に行なわせることが可能な圧電発振器となる。
【0028】
[適用例10]適用例6乃至9のいずれか1例に記載の圧電発振器に前記温度補償回路を組み込んで形成したことを特徴とする圧電発振器。
上記構成により、離散温度特性情報より少ない情報数の温度特性情報によっても高精度な温度補償を行うことができるので圧電発振器側の温度特性情報に係る容量負担を軽減しつつ高精度な温度補償を温度補償回路に行わせ、高精度に温度補償が行われた発振信号を出力することが可能な温度補償型発振回路となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】温度補償回路に接続された本実施形態の圧電発振器の模式図である。
【図2】本実施形態の圧電発振器と測定器との接続図である。
【図3】離散温度特性情報と、離散温度特性情報に対応して算出された第2の近似式を示す図である。
【図4】第2の近似式の特徴点から抽出して生成された温度特性情報と、温度特性情報に対応して算出された第1の近似式を示す図である。
【図5】離散温度特性情報に係る温度における第1の近似式上の値と第2の近似式上の値と、の離散温度特性情報を基準とした近似誤差を示す図である。
【図6】記憶回路に記憶する温度特性情報の容量を比較する表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0031】
図1に温度補償回路に接続された本実施形態に係る圧電発振器を示す。本実施形態に係る圧電発振器10は、圧電振動子12と、前記圧電振動子12を発振させるとともに、前記圧電振動子12の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報76に基づいて第1の近似式70を算出し、前記第1の近似式70と前記圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧66)を用いて温度補償量80を算出する温度補償回路40に、発振信号58を出力する発振回路14と、前記温度特性情報76を記憶する記憶回路20と、を有し、前記温度特性情報76は、前記圧電振動子12の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散温度特性情報74(図3参照)を生成し、前記離散温度特性情報74に基づいて前記第1の近似式70より高次である第2の近似式72を算出し、前記第2の近似式72から前記第1の近似式70が生成可能となる特徴点を抽出して生成し前記記憶回路20に記憶したものである。
【0032】
したがって上記構成を用いた圧電発振器10の製造方法は、圧電振動子12の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報76に基づいて第1の近似式70を算出し、前記第1の近似式70と前記圧電振動子12の温度に対応する情報(検出電圧66)を用いて温度補償量80を算出可能な温度補償回路40に、発振信号58と前記温度特性情報76を出力する圧電発振器10の製造方法であって、前記圧電振動子12の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示す離散温度特性情報74(図3参照)を生成し、前記離散温度特性情報74に基づいて前記第1の近似式70より高次である第2の近似式72を算出し、前記第2の近似式72から前記第1の近似式70が生成可能となる特徴点を抽出することにより前記温度特性情報76を生成するものである。
【0033】
本実施形態の圧電発振器10は、温度補償回路40を内蔵しないTSXOである。半導体基板(不図示)上にパターニングにより、発振回路14、温度センサー16、バッファー18、記憶回路20、シリアルインターフェース回路22、電源端子36、グランド端子38等の各端子が形成され、発振回路14と圧電振動子12が接続された構造を有している。さらに図1に示すように、圧電発振器10の接続対象となる温度補償回路40は、周波数補正回路42、CPU44、メモリ46、A/D変換器48を有する。また温度特性情報76を算出する際には図2に示すように、圧電発振器10は測定器50に接続され、測定器50は、周波数カウンター52、PC54、電圧マルチメーター56を有する。
【0034】
圧電振動子12は、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料からなり、水晶であればATカットすることにより形成され、発振回路14から交流電圧を受けて、厚みすべり振動により所定の共振周波数で発振することができる。このATカットによる厚みすべり振動を用いた水晶振動子の共振周波数は、基準温度(25℃)を中心として正の3次曲線となる温度特性を有している。
【0035】
発振回路14は、圧電振動子12を発振源とする例えばコルピッツ型の発振回路であり、発振周波数出力端子24を介して温度補償回路40、または測定器50に発振信号58を出力する。
【0036】
温度センサー16は、ダイオード構造を有しており、順方向電流を流し、温度によって変化する検出電圧66をバッファー18を介して温度センサー電圧出力端子34から温度補償回路40または測定器50に出力するものである。ここで検出電圧66は温度上昇とともに1次関数的に減少し、出力される検出電圧66は測定される温度に対応したものとなっている。なお、温度センサー16は圧電振動子12に隣接して配置することが望ましい。これにより圧電振動子12近辺の温度を正確に測定することができ、後述の第2の近似式72、離散温度特性情報74において温度と周波数、若しくは周波数変位との対応を正確に行ない、第1の近似式70及び温度特性情報76を高精度に算出することができる。このように本実施形態において温度は、温度センサー16からの検出電圧66に対応しており、後述の温度補償回路40や測定器50もこの検出電圧66に関連付けられた情報として第1の近似式70、第2の近似式72を算出している。なお温度センサー16は電源から電力が供給される限り検出電圧66を出力し続けるものとする。
【0037】
シリアルインターフェース回路22は、外部からの指令を受けて記憶回路20に温度特性情報76を記憶したり、温度センサー16から出力される検出電圧66、記憶回路20に記憶された温度特性情報76を外部に出力するものである。シリアルインターフェース回路22は記憶回路20、温度センサー16に接続されており、データ入出力端子26、第1制御クロック入力端子28、第2制御クロック入力端子30を有している。
【0038】
第1制御クロック入力端子28に第1の制御クロック60を入力すると、データ入出力端子26に入力されるシリアル化された温度特性情報76を、第1の制御クロック60をトリガとして(第1の制御クロック60に同期して)記憶回路20に記憶する(書き込む)ことができる。第2制御クロック入力端子30に第2の制御クロック62を入力すると、記憶回路20に記憶された温度特性情報76を、データ入出力端子26を介して第2の制御クロック62をトリガとしてシリアル化して出力することができる。
【0039】
記憶回路20は、EEPROM等で形成され、シリアルインターフェース回路22を介して温度特性情報76が記憶され(書き込まれ)、または温度特性情報76を出力することができる。温度特性情報76は、有限個のデータにより構成されているが、それぞれ測定器50中のPC54、及び温度補償回路40中のCPU44が共通に認識できるアドレスが設けられている。
【0040】
温度特性情報76としては、後述の温度係数と温度係数の一部であるオフセット係数との組み合わせ、または圧電振動子12の使用温度範囲から任意に選択した複数の温度の情報と、前記複数の温度中の各温度に対応した周波数の情報、若しくは基準周波数からの周波数偏差の情報との組み合わせを用いることができる。このうち、複数の温度の情報と、前記複数の温度中の各温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報との組み合わせは、発振周波数の絶対値を用いた場合より桁数を小さくすることができるので、温度特性情報76の容量が最も小さくなる。また温度特性情報76として温度係数を記憶する場合は、温度の情報そのものを記憶する必要はないので温度特性情報76の容量を小さくすることができる。なお、温度特性情報76として、上述の複数の温度の情報と、各温度に対応した周波数の情報との組み合わせとした場合には、基準温度と基準温度における周波数の情報を取得するとともに、その組み合わせについて、PC54及びCPU44が他の情報と識別できるアドレスを付す必要がある。
【0041】
図2に圧電発振器10と測定器50との接続図を示す。測定器50は、発振回路14に搭載された圧電振動子12の発振周波数の温度特性から温度特性情報76より情報数の多い離散温度特性情報74を生成し、離散温度特性情報74から第1の近似式70より高次の第2の近似式72を算出し、第2の近似式72において第1の近似式70が算出可能となる特徴点を抽出し、温度補償回路40で用いられる温度特性情報76を生成して記憶回路20に書き込むものである。測定器50は、周波数カウンター52、PC(パーソナルコンピューター)54、電圧マルチメーター56により構成される。周波数カウンター52は、発振回路14に接続され、所定時間間隔ごとに発振回路14から出力される発振信号58の周波数を測定してPC54に出力することができる。電圧マルチメーター56は、温度センサー16からの検出電圧66をデジタルデータに変換してPC54に出力することができる。
【0042】
PC54は、パーソナルコンピューターなどの演算機器であり、データ入出力端子26、第1制御クロック入力端子30、周波数カウンター52、電圧マルチメーター56に接続されている。PC54は、キー操作等により周波数カウンター52や電圧マルチメーター56を起動可能であるものとする。またPC54は、インストールされたプログラムに従って所定の温度ごとに周波数を周波数カウンター52から入力し、検出電圧66(温度の情報)と周波数の情報をPC内の記憶領域(不図示)に記憶する。
【0043】
厚みすべり振動を用いた圧電振動子の共振周波数について、基準温度Tにおける基準周波数をfとすると、任意の温度Tにおける周波数偏差情報の第1の近似式70(Δf/f)は以下のべき級数で表すことができる。
【数1】

【0044】
同様に周波数偏差情報の第2の近似式72(Δf/f)は以下のように表すことができる。
【数2】

【0045】
ここで、B1、B2、C1、C2、D1、D2、E1、E2、F2は各近似式を決定する温度係数、A1、A2は各近似式のオフセット量を決定するオフセット係数(0次の温度係数)である。そして温度補償回路40においては、数式1に示されるように、温度変化に対して連続的に変化する周波数偏差情報の第1の近似式70の温度係数を算出する必要がある。
【0046】
ところで、数式1においては変数が5つあるため、例えば、温度特性情報76として、測定された温度(検出電圧66)と、温度に対応した周波数偏差の組み合わせが5つあれば、温度補償回路40において、これらをそれぞれ数式1に代入して、連立5元1次方程式を解いて数式1における変数を全て算出することができる。なお、前記組み合わせが5つ以外の場合でも、最小二乗法を用いることにより、数式1における変数を算出して近似式を求めることができる。勿論前記組み合わせが5つの場合も同様に最小二乗法を用いて求めることができる。温度特性情報76は第1の近似式70を高精度に算出するため、第1の近似式70の特徴点における温度の情報と、特徴点における温度に対応する発振周波数の情報の組み合わせであることが望ましい。
【0047】
ここで特徴点とは、第1の近似式70を高精度に算出するのにふさわしい第2の近似式72上の位置である。本実施形態で適用する厚みすべり振動子の場合、発振周波数の温度特性のグラフは全体的に3次関数的な形状を有しており、例えば、低温側の単調増加する位置、低温側の極値、変曲点、高温側の極値、高温側の単調増加する位置が特徴点(全部で5点)として挙げられる。しかし、圧電振動子の周波数特性のバラつきにより特徴点を確認しながら温度等を測定することは困難である。
【0048】
そこで圧電発振器10を温度調整が可能なチャンバー(不図示)内に配置し、圧電振動子12の周囲温度を、設定最低温度(−30℃)から基準温度(+25℃)を挟んで設定最高温度(+85℃)に至るまで変化させ、PC54は、プログラムにより所定の温度ごとに圧電振動子12の発振周波数を測定する。その測定数は温度特性情報76の情報数(本実施形態では5つ)より多くとるものとする。この測定結果から圧電振動子12の周囲温度と発振周波数との関係を離散的に示すとともに温度特性情報76より情報数の多い離散温度特性情報74を生成する。そして離散温度特性情報74から温度変化に対して連続的に変化する周波数偏差情報の第2の近似式72を算出する。
【0049】
次にPC54において、算出された第2の近似式72から特徴点を算出する。例えば上述の低温側の極値や高温側の極値は第2の近似式72を温度で1回微分し、その1回微分の値がゼロとなる温度を抽出する。また上述の変曲点の場合は第2の近似式72を温度で2回微分し、その2回微分の値がゼロとなる温度を抽出する。なお低温側及び高温側の単調増加する位置は、それぞれ設定最低温度(−30℃)、設定最高温度(+85℃)とすることができる。また低温側の極値に係る温度と、その温度に対応する第2の近似式72上の値を求める代わりに、0℃(低温側の極値に近い温度)における第2の近似式72上の値を用いてもよい。
【0050】
そしてこれら抽出された温度に対応する第2の近似式72の値を抽出する。そして、抽出された温度の情報と、その温度の情報に対応する第2の近似式72上の値との組み合わせに後述の温度補償回路40中のCPU44が認識できるアドレスを付して温度特性情報76を生成する。
【0051】
上述のようにPC54において温度特性情報76を構築したのち、PC54は、第1制御クロック入力端子28に第1の制御クロック60を出力し、第1の制御クロック60に同期させてシリアルデータ化させた温度特性情報76をデータ入出力端子26に出力し、シリアルインターフェース回路22を介して記憶回路20に温度特性情報76を記憶する。
【0052】
前述のように温度補償回路40は温度センサー16からの検出電圧66に関連付けられた情報として第1の近似式70を生成しているが、温度を変数とする第1の近似式70を算出する温度補償回路40に温度特性情報76を出力する場合には検出電圧66を温度の情報に変換する必要がある。上述のように温度センサー16から出力される検出電圧66は温度変化に対して一次関数的に変化するものである。ここで基準温度(25℃)における検出電圧66の値をV25とすると、温度センサー16から出力された電圧Vreadとそのときの温度Tは以下のように表すことができる。
【数3】

【0053】
ここでAは1V当たりの温度変化量の係数であり、Aは以下のように求めることができる。
【数4】

【0054】
ここでV85は設定最高温度における検出電圧66の値、V(−25)は設定最低温度における検出電圧66の値である。よってPC54は設定最低温度(−30℃)、基準温度(25℃)、設定最高温度(85℃)における検出電圧66のそれぞれの値(V(−30)、V25、V85)を測定して係数Aを求め、数式3、数式4にもとづいて検出電圧66に対応する温度の情報を算出し、この温度の情報と、この温度に対応する第2の近似式72上の値の情報との組み合わせに後述の温度補償回路40中のCPU44が認識できるアドレスを付して温度特性情報76を生成する。
【0055】
図1に示すように、温度補償回路40は、圧電発振器10とは分離した外部システムの一部である。温度補償回路40は、PC54から記憶回路20に入力された温度特性情報76を用いて第1の近似式70を算出し、第1の近似式70と温度センサー16から常時入力される検出電圧66(現在温度)に基づいて温度補償量80を算出するものであり、周波数補正回路42、CPU44、メモリ46等から構成される。周波数補正回路42は、CPU44から出力される温度補償量80に対応して容量を可変させる回路であって、発振回路14に接続されて発振信号58が入力され、CPU44の制御のもと温度補償を行った発振信号68を出力するものである。
【0056】
CPU44は、温度補償回路40の中核をなすものであって、記憶回路20から入力した温度特性情報76から第1の近似式70を算出し、第1の近似式70と温度センサー16から入力される検出電圧66(温度の情報)に基づいて温度補償量80を算出して周波数補正回路42に出力するものである。
【0057】
CPU44は、データ入出力端子26、第2制御クロック入力端子30に接続され、さらに温度センサー16にA/D変換器48を介して接続されている。CPU44は、起動時に、プログラムにより第2制御クロック入力端子30に第2の制御クロック62を入力し、第2の制御クロック62に同期して記憶回路20内の温度特性情報76をシリアルインターフェース回路22を介して出力させ、CPU44に付属するメモリ46に記憶する。
【0058】
記憶回路20に記憶された温度特性情報76が圧電振動子12の使用温度範囲の複数の温度の情報と、前記複数の温度中の各温度に対応した周波数偏差の情報との組み合わせである場合、CPU44は、温度特性情報76と数式1を用いて、数式1における温度係数と、オフセット係数(0次の温度係数)を上述の方法により算出し、付属のメモリ46に記憶可能な構成を有するものを用いる。また温度特性情報76が上述の複数の温度の情報と各温度に対応した周波数(絶対値)の情報である場合は、CPU44は温度特性情報76中の基準温度の情報と基準温度で測定した周波数の情報のアドレスを識別可能とし、温度特性情報76と数式1を用いて、数式1における温度係数と、オフセット係数を上述の方法により算出し、付属のメモリ46に記憶可能な構成を有するものを用いる。また記憶回路20に記憶された温度特性情報76が温度係数とオフセット係数であれば、CPU44は、そのまま付属のメモリ46に記憶する構成を有するものを用いる。
【0059】
またCPU44は、プログラム等により所定時間ごとに温度センサー16からの検出電圧66(温度の情報)をA/D変換器48を介してデジタルデータ化して入力し、付属のメモリ46に記憶する。そしてメモリ46から温度係数とオフセット係数を読み出して第1の近似式70を算出し、さらにメモリ46から温度センサー16から入力した検出電圧66を読み出して、第1の近似式70と検出電圧66から温度補償量80を算出し、温度補償量80を周波数補正回路42に出力する。よってCPU44は所定時間ごとに温度補償量80を算出して周波数補正回路42に出力する。これにより周波数補正回路42からは所定時間ごとに温度補償が行われた発振信号68が出力される。
【0060】
次に、本実施形態に係る圧電発振器10の作用効果について述べる。
図3は測定により得られた7点の温度点を有する離散温度特性情報74と、7点の温度点を有する離散温度特性情報74に対応して算出された第2の近似式72を示す。図4は第2の近似式72の特徴点から抽出して生成された温度特性情報76と、温度特性情報76に対応して算出された第1の近似式70を示す。図5は離散温度特性情報74に係る温度における第1の近似式70上の値と第2の近似式72上の値と、の離散温度特性情報74を基準とした近似誤差を示す。
【0061】
図3に示すように、本実施形態では基準温度(25℃)における圧電振動子12の発振周波数を基準とした周波数偏差を7点の温度点において測定したものを離散温度特性情報74としている。そしてこの離散温度特性情報74に対応する第2の近似式72を算出した。そして図3において−30℃(設定最低温度)、0℃、25℃(基準温度)、60℃(高温側の極値)、85℃(設定最高温度)における第2の近似式72上の値をそれぞれ特徴点として抽出してこれらのプロットを温度特性情報76とした。そして図4に示すように温度特性情報76に対応して第1の近似式70を算出した。さらに図3において離散温度特性情報74に係る温度に対応する第2の近似式72上の値を抽出して離散温度特性情報74との差分(近似誤差)をプロット82として算出し、図4において離散温度特性情報74に係る温度に対応する第1の近似式70上の値を抽出して離散温度特性情報74との差分(近似誤差)をプロット84として算出し、これらの結果を図5に示すグラフとした。
【0062】
図5は第1の近似式と第2の近似式のそれぞれの近似誤差を示したものである。図5において、プロット82は7点の温度点を有する離散温度特性情報74から第2の近似式72を介して生成されたものであり、プロット84は5点の温度点を有する温度特性情報76から第1の近似式70を介して生成されたものである。しかし、プロット82が示す近似誤差に対してプロット84が示す近似誤差は遜色がないことがわかる。よって温度補償回路における温度補償に用いられる温度特性情報76の情報数を増やすことなく温度補償の精度を高めることができることがわかる。
【0063】
図6に記憶回路に記憶する温度特性情報の容量を比較する表を示す。図6に示すように、温度特性情報76として周波数の絶対値を記憶する場合は11桁必要とするが、周波数偏差を記憶する場合は5桁で済むので周波数に関する容量を約45パーセント削減することができる。また仮に温度特性情報76を周波数の絶対値を用いて構成した場合の容量を100とすると、温度特性情報76を周波数の絶対値を用いて構成したときは容量を50%削減でき、温度特性情報76を周波数偏差を用いて構成したときは容量を73%削減することができる。なお、温度特性情報76として記憶するアドレスにおいて必要な桁数は、測定温度の個数が5個である場合は、3桁(最大8個のアドレス)で充分であり、温度(検出電圧66)はその分解能に従って必要な桁数が決定される。さらに温度特性情報76が温度係数である場合、温度係数については有効数字に従って必要な桁数が決定されるが、温度の情報は不要であるので、その分の容量を削減することができる。
【0064】
なお、本実施形態において、圧電振動子12は厚みすべり振動子を前提として述べてきたが、これに限定されず、双音叉型圧電振動子、シングルビーム型圧電振動子、SAW共振子等にも適用できる。また本実施形態において、圧電発振器10はTSXOを前提として述べてきたが、温度補償回路40を組み込むことにより温度補償型発振器(TCXO)を形成できることは言うまでもない。
【0065】
以上述べたように、本実施形態に係る圧電発振器10、及びその製造方法によれば、第1には、温度特性情報76は離散温度特性情報74より情報数が少ないものとなるが、温度補償回路40はこれを用いて第1の近似式70を生成して温度補償量80を算出することになる。しかし第1の近似式70は第2の近似式72から第1の近似式70を生成しやすい特徴点を抽出したものから生成されるため、圧電振動子12の発振周波数の温度依存性にバラつきがあっても第1の近似式70を高精度に生成することができる。また第1の近似式70は第2の近似式72の情報をある程度拾った形となっている。よって第1の近似式70の精度は第2の近似式72の精度と遜色の無いものとなっている。したがって離散温度特性情報74より少ない情報数の温度特性情報76によっても高精度な温度補償を行うことができるので圧電発振器10側の温度特性情報76に係る容量負担(記憶回路20への負担)を軽減して小型化を実現しつつ、高精度な温度補償を温度補償回路40に行わせることができる。さらに温度特性情報76の数を一定の数に制限できるので温度補償回路40における温度変化に対する応答性の低下を防止し、GPS装置など高速な応答が要求されるシステムの温度補償に対応することができる。
【0066】
第2には、温度特性情報76は、特徴点における温度と、温度に対応した発振周波数、若しくは基準周波数からの周波数偏差により生成したことにより、圧電発振器10側で温度係数の演算が不要となるため圧電発振器10形成時の作業負担を抑制してコストを抑制することができる。この場合、ユーザー側で温度特性情報76に対応する第1の近似式70から温度係数を算出することになるが、ユーザー側で独自に正確な温度係数を演算することができる。
【0067】
第3には、温度特性情報76は、特徴点における温度と、温度に対応した発振周波数、若しくは基準周波数からの周波数偏差に第1の近似式70を整合させて抽出される温度係数により生成したことにより、温度補償回路40においては温度係数を算出するための演算が不要となるため、ユーザー側の負担を軽減して圧電発振器10を搭載したシステムの構築を容易に行うことができる。
【0068】
第4には、周囲温度に対応した検出電圧66を出力する温度センサー16を圧電振動子12に隣接して配設し、第1の近似式70、第2の近似式72は、検出電圧66に関連付けられた情報として算出し、温度特性情報76は、第2の近似式72から抽出し、温度特性情報76に基づいて第1の近似式70を算出し、第1の近似式70と温度センサー16から入力される温度の情報(検出電圧66)を用いて温度補償量80を算出可能な温度補償回路40に発振信号58を出力することにより、温度センサー16は圧電振動子12の温度に対応した情報を測定誤差を抑制して測定することができるので、離散温度特性情報74を高精度に算出して、第2の近似式72を高精度に算出し、これにより第1の近似式70、温度特性情報76を高精度に算出することができる。さらに圧電振動子12の温度に対応した情報をリアルタイムでかつ高精度に測定できるので、温度補償回路40における補正誤差を抑制して、温度補償を高精度に行なわせることができる。
【0069】
また本実施形態に係る温度補償型発振器及びその製造方法によれば、上述の圧電発振器に温度補償回路を組み込んで形成したことにより、温度補償型発振回路において、離散温度特性情報74より少ない情報数の温度特性情報76によっても高精度な温度補償を行うことができるので圧電発振器10側の温度特性情報76に係る容量負担を軽減しつつ高精度な温度補償を温度補償回路40に行わせ、高精度に温度補償が行われた発振信号68を出力することができる。
【符号の説明】
【0070】
10………圧電発振器、12………圧電振動子、14………発振回路、16………温度センサー、18………バッファー、20………記憶回路、22………シリアルインターフェース回路、24………発振周波数出力端子、26………データ入出力端子、28………第1制御クロック入力端子、30………第2制御クロック入力端子、34………温度センサー電圧出力端子、36………電源端子、38………グランド端子、40………温度補償回路、42………周波数補正回路、44………CPU、46………メモリ、48………A/D変換器、50………測定器、52………周波数カウンター、54………PC、56………電圧マルチメーター、58………発振信号、60………第1の制御クロック、62………第2の制御クロック、66………検出電圧、68………発振信号、70………第1の近似式、72………第2の近似式、74………離散温度特性情報、76………温度特性情報、78………温度係数、80………温度補償量、82………プロット、84………プロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報に基づいて第1の近似式を算出し、前記第1の近似式と前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に、発振信号と前記温度特性情報を出力する圧電発振器の製造方法であって、
前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示す離散温度特性情報を生成し、前記離散温度特性情報に基づいて前記第1の近似式より高次である第2の近似式を算出し、前記第2の近似式から前記第1の近似式が生成可能となる特徴点を抽出することにより前記温度特性情報を生成することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項2】
前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、により生成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項3】
前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、に前記第1の近似式を整合させて抽出される温度係数により生成したことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項4】
前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段を前記圧電振動子に隣接して配設し、
前記第1、第2の近似式は、前記検出電圧に関連付けられた情報として算出し、
前記温度特性情報は、前記第2の近似式から抽出し、
前記温度特性情報に基づいて前記第1の近似式を算出し、前記第2の近似式と前記温度検出手段から入力される検出電圧を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に前記発振信号を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電発振器の製造方法により形成された圧電発振器に前記温度補償回路を組み込んだことを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項6】
圧電振動子と、
前記圧電振動子を発振させるとともに、前記圧電振動子の発振周波数の温度特性を近似するための温度特性情報に基づいて第1の近似式を算出し、前記第1の近似式と前記圧電振動子の温度に対応する情報を用いて温度補償量を算出する温度補償回路に、発振信号を出力する発振回路と、
前記温度特性情報を記憶する記憶回路と、を有し、
前記温度特性情報は、
前記圧電振動子の温度と前記発振周波数との関係を離散的に示した離散温度特性情報を生成し、前記離散温度特性情報に基づいて前記第1の近似式より高次である第2の近似式を算出し、前記第2の近似式から前記第1の近似式が生成可能となる特徴点を抽出して生成し前記記憶回路に記憶したものであることを特徴とする圧電発振器。
【請求項7】
前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、からなることを特徴とする請求項6に記載の圧電発振器。
【請求項8】
前記温度特性情報は、前記特徴点における温度の情報と、前記特徴点における温度に対応した発振周波数の情報、若しくは前記特徴点における温度に対応した基準周波数からの周波数偏差の情報と、に前記第1の近似式を整合させて抽出された温度係数であることを特徴とする請求項6に記載の圧電発振器。
【請求項9】
前記圧電振動子の温度に対応した検出電圧を出力する温度検出手段が前記圧電振動子に隣接して設けられるとともに、
前記第1、第2の近似式は、前記検出電圧に関連付けられた情報として算出し、
前記温度特性情報は、前記第2の近似式から抽出し、
前記発振回路は、前記温度特性情報に基づいて前記第1の近似式を算出し、前記第2の近似式と前記温度検出手段から入力される前記検出電圧を用いて温度補償量を算出可能な温度補償回路に前記発振信号を出力することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の圧電発振器。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の圧電発振器に前記温度補償回路を組み込んで形成したことを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−119978(P2011−119978A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275392(P2009−275392)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】