説明

圧電発振器

【課題】 容易に集積回路素子と集積回路素子用容器体との間に不要物が入り込まないようにする。
【解決手段】 集積回路素子20を搭載する凹部30Cを有する集積回路素子用容器体30の該凹部30Cの上方に、圧電振動素子11を内部に搭載して封止された圧電振動子10が電気的及び機械的に接続された圧電発振器100であって、凹部30Cに集積回路素子20が搭載され、圧電振動子10と集積回路素子用容器体30との間に形成される間隙50を跨いで設けられるバンド部40を備え、バンド部40が熱により収縮する熱収縮性材からなり、間隙50を塞ぐように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に圧電発振器が用いられている。かかる従来の圧電発振器としては、例えば図3に示すように、内部に圧電振動素子211が収容されている圧電振動子210と、キャビティ部232内に前記圧電振動素子211の振動に基づいて発振出力を制御する集積回路素子220やコンデンサ等の電子部品素子(図示せず)が収容される集積回路素子用容器体230とを備え、この集積回路素子用容器体230上に圧電振動子210を取着させた構造のものが知られている。かかる圧電発振器200は、マザーボード等の実装回路基板(図示せず)上に載置させた後、集積回路素子用容器体230の下面に設けられている外部端子231を実装回路基板の配線に半田接合することにより実装回路基板上に実装される。
なお、圧電振動子210は、圧電振動素子211と、圧電振動素子211を収納するキャビティ214を有する圧電振動素子用容器体212とキャビティ214を塞ぐ蓋体213とから構成されている。
【0003】
このように、圧電振動子210と、集積回路素子220を収納した集積回路素子用容器体230とを取着させると、圧電振動子210の四隅に設けられている接続端子215と集積回路素子用容器体231のキャビティ232側の四隅に設けられる接続端子233とを取着させることにより、圧電振動子210と、集積回路素子220を収納した集積回路素子用容器体230との間に間隙250が形成されることとなる。
一般的に、このように構成される圧電発振器200は、用途に応じて、間隙250から不要物が入り込むのを防ぐためにキャビティ内にアンダーフィル(図示せず)を注入する場合(例えば特許文献1参照)と注入しない場合(図3参照)とがある。
ここで、不要物は、例えば、集積回路素子220の回路形成面に付着するいわゆるコンタミネーションであって、実装基板(図示せず)を保護する保護剤やガスなどである。
【特許文献1】特開2006−101249号公報(段落0002〜0032、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、集積回路素子220を収納するために設けられるキャビティ232内にアンダーフィルを注入する場合、集積回路素子220と集積回路素子用容器体230との間にアンダーフィルを入り込ませる作業が煩雑であるという問題がある。例えば、圧電発振器200の小型化により、真空状態にしなければ集積回路素子220と集積回路素子用容器体230との間にアンダーフィルを入り込ませることができない状態の場合は真空にする装置が別途必要になるという問題や、集積回路素子220と集積回路素子用容器体230との間に合わせたアンダーフィルの注入ノズルの開発が必要になるという問題や、アンダーフィルの注入量を制御する必要があるという問題がある。
また、アンダーフィルを注入しない場合は、キャビティ232内に不要物が入り込まないようにしなければならず、作業が煩雑となるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、容易に集積回路素子と集積回路素子用容器体との間に不要物が入り込まないようにする圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、集積回路素子を搭載する凹部を有する集積回路素子用容器体の該凹部の上方に、圧電振動素子を内部に搭載して封止された圧電振動子が電気的及び機械的に接続された圧電発振器であって、前記凹部に前記集積回路素子が搭載され、前記圧電振動子と前記集積回路素子用容器体との間に形成される間隙を跨いで設けられるバンド部を備え、前記バンド部が熱により収縮する熱収縮性材からなり、前記間隙を塞ぐように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このような圧電発振器によれば、圧電振動子の四隅に設けられている接続端子と集積回路素子用容器体21のキャビティ側の四隅に設けられる接続端子とを取着させることで形成される圧電振動子と集積回路素子用容器体21との間隙を容易に塞ぐことができるので、外部からの不要物の浸入を遮断し、外部環境の影響を受けない安定した圧電発振器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、圧電振動素子が水晶からなる場合について説明する。
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る圧電発振器の一例を示す断面図である。図2は本発明の実施形態に係る圧電発振器の一例を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る圧電発振器100は、圧電振動子10と集積回路素子20とこの集積回路素子20を収納する集積回路素子用容器体30とバンド体40とから構成されている。この圧電発振器100は、集積回路素子用容器体30内に集積回路素子20を収納し、集積回路素子用容器体30と圧電振動子10とを取着してなる。
【0011】
図1に示すように、圧電振動子10は、平面視矩形形状となっており、圧電振動素子11とこの圧電振動素子11を内部に収納して搭載する圧電振動素子用容器体12と蓋体13とから主に構成されている。
【0012】
圧電振動素子11は、所定の結晶軸でカットした圧電素板11Aの両主面に一対の振動電極11Bを被着・形成して成り、外部からの変動電圧が一対の振動電極11Bを介して圧電素板11Aに印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こすこととなる。
【0013】
圧電振動素子用容器体12は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る基板部12Aと、基板部12Aと同様のセラミック材料から成る側壁部12Bとからなり、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。基板部12Aの一方の主面の縁に沿って側壁部12Bを設けることでキャビティ部12Cを形成し、このキャビティ部12C内に圧電振動素子11を収納するようになっている。
ここで、キャビティ12C内の基板部12Aの表面には、圧電振動素子11に設けられた励振電極に対応して搭載パッドP1が設けられている。この搭載パッドP1は、基板部12Aの他方の主面であって四隅に設けられた接続用端子12Dのうちのいずれかと圧電振動素子用容器体12の内部を介して電気的に接続している。
【0014】
蓋体13は、キャビティ12Cを気密封止するために用いられ、例えば、42アロイやコバール,リン青銅等の金属からなり、キャビティ部12Cを塞ぐように、基板部12Aの側壁部12Bの上面に蓋体13を載置して固定させる。
この固定は、例えば、側壁部12Bの蓋体13と接触する面にメタライズ層Mを設けておき、また、蓋体13の側壁部12Bと接触する面に封止材Fを設けておき、メタライズ層Mと封止材Fとを接触させた後にシーム溶接することによって行われる。
【0015】
集積回路素子20は、例えばフリップチップ型であって、図1に示すように、後述する集積回路素子用容器体30に搭載される際に用いられる複数の接続パッドPICと、その回路形成面(下面)に、周囲の温度状態を検知するサーミスタといった感温素子、圧電振動素子11の温度特性を補償する温度補償データを格納するメモリ、メモリ内の温度補償データに基づいて圧電振動素子5の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、先の温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等を備えている(図示せず)。この発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
また、集積回路素子20の内部には、圧電振動素子の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて圧電発振器の発振周波数を補正するための温度補償回路が設けられており(図示せず)、圧電発振器100を組み立てた後、前記温度補償データを集積回路素子20のメモリ内に格納するために、後述する集積回路素子用容器体30の下面や外側面等に温度補償データ書込用の書込制御端子(図示せず)が設けられている。温度補償データは、書込制御端子に温度補償データ書込装置のプローブ針を当てることにより集積回路素子26内のメモリに入力され、また、格納される。
【0016】
図1及び図2に示すように、集積回路素子用容器体30は、例えば、平面視矩形形状となっており、ガラス布基材エポキシ樹脂やポリカーボネイト,エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等の樹脂材料やガラス−セラミック,アルミナセラミックス等のセラミック材料等から成る平板部30Aと、この平板部30Aと同様のセラミック材料から成る枠部30Bとからなり、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。平板部30Aの一方の主面の縁に沿って枠部30Bを設けることで凹部30Cを形成し、この凹部30C内に集積回路素子20を収納しつつ搭載するようになっている。
【0017】
ここで、凹部30C内の平板部30Aの表面には、集積回路素子20に設けられた複数の接続パッドPICに対応して搭載パッドP2が設けられている。また、平板部30Aの他方の主面であって四隅には、外部端子30D(電源電圧端子、グランド端子、発振出力端子、発振制御端子)が設けられている。
これら搭載パッドP2のうちのいずれかは、外部端子30Dと集積回路素子用容器体30の内部を介して電気的に接続している。
外部端子30Dは、圧電発振器100をマザーボード等(図示せず)の実装回路基板に接続するための端子として機能するものであり、圧電発振器100を実装回路基板上に搭載する際、実装回路基板の回路配線と半田等の導電性接合材を介して電気的に接続されるように成っている。
【0018】
また、枠部30Bの圧電振動子10が取着される側の面の四隅には、該圧電振動子10に設けられている接続用端子12Dに対応して取着用端子30Eが設けられている。
この取着用端子30Eのいずれかは圧電振動素子11の励振電極11Bと電気的に接続しつつ、集積回路素子20と電気的に接続するようになっている。
【0019】
図1及び図2に示すように、バンド体40は、本発明の実施形態に係る圧電発振器100を構成するに当たり、空間部30C内に集積回路素子20を収納した集積回路素子用容器体30の枠部30Bに設けられた取着用端子30Eと、圧電振動素子11を内部に収納した圧電振動子10に設けられた接続用端子12Dとを当接させた状態で導電性接合材Dによって機械的・電気的に接合させたときに形成される間隙50を跨ぐようにして設けられる。
このバンド体40は、熱により収縮する熱収縮性材からなり、例えば、絶縁性及び耐熱性に優れたガラス、シリコン樹脂や、熱収縮性の大きいフッ素樹脂等が用いられる。
また、バンド体40は、圧電振動子10と集積回路素子用容器体30との間の間隙50を跨いで外周面に設けられ、熱が加えられることによって収縮して間隙50を塞ぐ役割を果たす。
【0020】
これにより、バンド体40を圧電振動子10と集積回路素子用容器体30との間の間隙50を跨いで外周面に設けた後、アニール等で加熱処理を行うだけで、この間隙50を塞ぐことができるので、従来から用いられる装置がそのまま利用でき、また、容易に、集積回路素子20を収納する凹部30Cを封止することができる。
したがって、集積回路素子20を収納する凹部30C内への外部からの不要物の浸入を遮断することができ、外部環境の影響を受けない安定した圧電発振器を得ることができる。
【0021】
なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、バンド体40は、圧電振動子10及び集積回路素子用容器体30の側面全面に設けても良い。
また、圧電振動子10の蓋体13をグランド端子用の外部端子30Dに接続させても良い。このように構成することで、使用時に、金属から成る蓋体13が基準電位に接続されてシールド機能が付与されることとなるため、圧電振動素子11や集積回路素子20を外部からの不要な電気的作用から良好に保護することができる。従って、圧電振動子10の蓋体13は圧電振動子10の接続用端子12Dや集積回路素子用容器体30の取着用端子30Eを介してグランド端子用の外部端子30Dに接続させておくことが好ましい。
また、枠部30Bの外側側面に書込制御端子を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電発振器の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧電発振器の一例を示す斜視図である。
【図3】従来の圧電発振器の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
100 圧電発振器
10 圧電振動子
11 圧電振動素子
11A 圧電素板
11B 振動電極
12 圧電振動素子用容器体
12A 基板部
12B 側壁部
12C キャビティ
12D 接続用端子
13 蓋体
20 集積回路素子
30 集積回路素子用容器体
30A 平板部
30B 枠部
30C 凹部
30D 外部端子
30E 取着用端子
40 バンド体
PIC 接続パッド
P1,P2 搭載パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路素子を搭載する凹部を有する集積回路素子用容器体の該凹部の上方に、圧電振動素子を内部に搭載して封止された圧電振動子が電気的及び機械的に接続された圧電発振器であって、
前記凹部に前記集積回路素子が搭載され、
前記圧電振動子と前記集積回路素子用容器体との間に形成される間隙を跨いで設けられるバンド部を備え、
前記バンド部が熱により収縮する熱収縮性材からなり、前記間隙を塞ぐように構成されていることを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−28860(P2008−28860A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201173(P2006−201173)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】