説明

地上デジタル放送再送信システム

【課題】地上デジタル放送信号及びGPS信号の伝送の安定性を向上することができる、地上デジタル放送再送信システムを提供すること。
【解決手段】地上デジタル放送再送信システム1は、建物の屋外に設置されており、放送局から送信された地上デジタル放送信号を受信するDTV受信アンテナ10と、建物の屋外に設置されており、衛星から送信されたGPS信号を受信するGPS受信アンテナ30と、建物の屋内でGPS受信アンテナ30と平面座標が一致するように設置されており、DTV受信アンテナ10で受信された地上デジタル放送信号と、GPS受信アンテナで受信されたGPS信号とを屋内に送信する送信手段と、DTV受信アンテナ10と、GPS受信アンテナ30と、送信手段とを相互に接続し、DTV受信アンテナ10で受信された地上デジタル放送信号と、GPS受信アンテナ30で受信されたGPS信号とを送信手段に向けて光通信で伝送する光伝送手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送再送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末のような携帯端末として、地上デジタル放送の視聴が可能なものが提案されている。この携帯端末は、放送局から送られた地上デジタル放送信号を受信し、当該受信した地上デジタル放送信号に基づいて地上デジタル放送を当該携帯端末の画面に表示する。しかしながら、放送局から送信される地上デジタル放送信号が届かない地域では、ユーザがこの携帯端末を用いて地上デジタル放送を視聴することができなかった。そこで、地上デジタル放送信号が届かない地域であっても、地上デジタル放送を視聴することができる共同受信システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この共同受信システムは、放送局から出力される地上デジタル放送信号を受ける受信アンテナと、当該受信アンテナで受けた地上デジタル放送信号から再送信の対象となる地上デジタル放送信号を選択受信し、そのレベルを調整して出力する受信機と、受信機から与えられる入力信号を所定のレベルに増幅して出力する主増幅機と、入力端子に入力された信号を増幅して分岐し、出力端子に出力すると共に送信アンテナから送信する中継送信機と、主増幅機の出力側と中継送信機の入力端子の間を接続する第1のケーブルと、中継送信機の出力端子とその後段の中継送信機の入力端子の間を接続する第2のケーブルとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−48141公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この共同受信システムは、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されたGPS信号を用いて位置の検出が可能なように、GPS信号を受信するGPS用受信アンテナを設置して、当該GPS用アンテナと第1のケーブルとを接続することにより、当該第1のケーブルを介して当該GPS信号と地上デジタル放送信号とを併せて中継送信機に送るようにしてもよい。しかしながら、この共同通信システムは、地上デジタル放送信号及びGPS信号の伝送の安定性に関して改善の余地があった。例えば、電気ノイズを発生させる機器又は漏電電波を発生させる電力線が設置されている場所に、電線で構成された第1のケーブルが配設された場合には、これら電気ノイズ又は漏電電波によって、第1ケーブルにおける地上デジタル放送信号及びGPS信号の伝送が阻害されることにより、送信アンテナから安定した地上デジタル放送信号及びGPS信号の送信を行うことが困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地上デジタル放送信号及びGPS信号の伝送の安定性を向上することができる、地上デジタル放送再送信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の地上デジタル放送再送信システムは、放送局から送信される地上デジタル放送信号を建物の屋内に再送信する地上デジタル放送再送信システムであって、前記建物の屋外に設置されたものであって、前記放送局から送信された地上デジタル放送信号を受信する地上デジタル放送受信手段と、前記建物の屋外に設置されたものであって、衛星から送信されたGPS信号を受信するGPS受信手段と、前記建物の屋内において前記GPS受信手段と平面座標が一致するように設置されたものであって、前記地上デジタル受信手段にて受信された地上デジタル放送信号と、前記GPS受信手段にて受信されたGPS信号とを屋内に送信する送信手段と、前記地上デジタル放送受信手段と、前記GPS受信手段と、前記送信手段とを相互に接続するものであって、前記地上デジタル受信手段にて受信された地上デジタル放送信号と、前記GPS受信手段にて受信されたGPS信号とを前記送信手段に向けて光通信で伝送する光伝送手段とを備える。
【0007】
請求項2に記載の地上デジタル放送再送信システムは、請求項1に記載の地上デジタル放送再送信システムにおいて、前記地上デジタル放送受信手段は、当該地上デジタル放送受信手段にて受信された地上デジタル放送信号を、電気信号から光信号に変換し、前記GPS受信手段は、当該GPS受信手段にて受信されたGPS信号を、電気信号から光信号に変換し、前記光伝送手段は、前記地上デジタル放送受信手段にて変換された地上デジタル放送信号及び前記GPS受信手段にて変換されたGPS信号を伝送する共通の伝送路と、当該伝送路にて伝送された地上デジタル放送信号及びGPS信号を電気信号に変換する光電変換手段とを有する。
【0008】
請求項3に記載の地上デジタル放送再送信システムは、請求項1又は2に記載の地上デジタル放送再送信システムにおいて、前記送信手段は、前記光伝送手段にて伝送された信号のうち前記地上デジタル放送信号のみを取得する地上デジタル放送信号取得手段と、前記光伝送手段にて伝送された信号のうち前記GPS信号のみを取得するGPS信号取得手段とを備え、前記地上デジタル放送信号取得手段にて取得された地上デジタル放送信号と、前記GPS信号取得手段にて取得されたGPS信号とを屋内に個別に送信する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の地上デジタル放送再送信システムによれば、地上デジタル受信手段にて受信された地上デジタル放送信号と、GPS受信手段にて受信されたGPS信号とを送信手段に向けて光通信で伝送するので、建物の屋外又は屋外に設置された機器から発生する電気ノイズや電力線から発生する漏電電波等の影響を受けにくく、伝送による信号の損失が極めて小さいため、伝送の途中で信号を補正・増幅しなくても長距離伝送を行うことができ、地上デジタル放送信号及びGPS信号の伝送の安定性を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載の地上デジタル放送再送信システムによれば、光伝送手段は、地上デジタル放送受信手段にて変換された地上デジタル放送信号及びGPS受信手段にて変換されたGPS信号を伝送する共通の伝送路と、当該伝送路にて伝送された地上デジタル放送信号及びGPS信号を電気信号に変換する光電変換手段とを有するので、これら地上デジタル放送信号及びGPS信号を光伝送手段に同時に伝送し、当該地上デジタル放送信号及びGPS信号を光信号から電気信号に同時に変換することができ、光伝送手段の施工を簡略化することができると共に、光伝送手段の施工コストを低減することができる。特に、地上デジタル放送の地下施設等への再送信システムが導入されている場合には、この既設の再送信システムにGPS信号を混合して伝送することで、GPS信号を送信するための専用の伝送路を敷設する必要がなくなるので、システムの設置コストを一層低減することができる。
【0011】
請求項3に記載の地上デジタル放送再送信システムによれば、送信手段は、地上デジタル放送信号取得手段にて取得された地上デジタル放送信号と、GPS信号取得手段にて取得されたGPS信号とを屋内に個別に送信するので、送信手段の送信範囲内にいるユーザは地上デジタル放送信号又はGPS信号を受信することができ、当該受信した地上デジタル放送信号に基づいて地上デジタル放送を視聴したり、当該受信したGPS信号に基づいて当該送信手段に対応するGPS受信手段の位置に関する位置情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る地上デジタル放送再送信システムの構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る地上デジタル放送再送信システムの実施の形態を詳細に説明する。ただし、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(構成)
本実施の形態に係る地上デジタル放送再送信システムの設置対象の具体的な目的や構成は特記するものを除いて任意であり、地上デジタル放送信号及びGPS信号を遮断する建物であり、例えば、ショッピングセンター、オフィスビル等の地上施設に限定されず、トンネル、地下街等の地下施設にも設置することができる。以下では、設置対象が、ショッピングセンターである場合を例として説明を行う。また、以下の説明では、本実施の形態の建物は、鉄筋コンクリート等で形成された床、天井、屋根、壁で構成されている。また、以下の説明では、「位置情報」とは、衛星から送られるGPS信号の受信点の位置を示す情報であって、例えば、緯度、経度、高度等に関する情報が含まれるものとする。
【0015】
(構成−地上デジタル放送再送信システム)
次に、地上デジタル放送再送信システムの機械的及び電気的構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る地上デジタル放送再送信システム1の構成を示す概念図である。図1に示すように、地上デジタル放送再送信システム1は、DTV(Digital Television)受信アンテナ10、DTV再送信機20、GPS受信アンテナ30、GPS受信機40、光ケーブル50、V−ONU(Video−Optical Network Unit)60、DTVフィルタ70、GPSフィルタ80、DTV送信アンテナ90、及びGPS送信アンテナ100を備えて構成されている(図1では、光ケーブル50a〜50dが設けられている。これら光ケーブル50a〜50dは、相互に区別する必要がない場合には「光ケーブル50」と総称する)。
【0016】
DTV受信アンテナ10は、放送局から送信された地上デジタル放送信号を受信する地上デジタル放送受信手段である。このDTV受信アンテナ10は、建物の屋外に設置されており、当該建物の屋根等に固定されている。また、「地上デジタル放送」とは、地上デジタル放送やBSデジタル放送によるTV放送やラジオ放送等を含むが、これらに限定されず任意の放送形態による放送を含む。また、「地上デジタル放送」は、放送局から放送された放送(以下、「一次放送」)と、一次放送を中継等する機器から出力された放送(以下、「二次放送」)を含む。
【0017】
DTV再送信機20は、DTV受信アンテナ10にて受信された地上デジタル放送信号を屋内に向けて再送信する地上デジタル放送再送信手段である。このDTV再送信機20は、建物の屋外に設置されており、電線を介してDTV受信アンテナ10と接続されている。また、このDTV再送信機20は、変換回路21及びレーザダイオード(以下LD)22を備えて構成されている。変換回路21は、DTV受信アンテナ10にて受信された地上デジタル放送信号の周波数を所定の周波数に変換する周波数変換手段である。具体的には、UHF(Ultra−High Frequency)帯の地上放送を直接送ることにより有線テレビジョン放送を行う設備を用いて、地上デジタル放送信号を建物の屋内に送信する場合に、変換回路21は、DTV受信アンテナ10にて受信された地上デジタル放送信号の周波数帯域(例えば、周波数帯域70〜770MHz)を、UHF帯の周波数帯域(例えば、周波数帯域470〜710MHz)に公知の方法にて変換する。LD22は、DTV受信アンテナ10にて取得された地上デジタル放送信号を、電気信号から光信号に変換する電光変換手段である。なお、本実施の形態では電光変換素子としてLD22が用いられているが、これに限られず、例えば、電光変換素子として公知のLEDや公知の有機EL素子が用いられてもよい(以下、後述するLD42も同様とする)。
【0018】
GPS受信アンテナ30は、衛星から送信されたGPS信号を受信するGPS受信手段である。このGPS受信アンテナ30は、建物の屋外に設置されており、当該建物の屋根等に所定間隔毎に固定されている。また、GPS受信アンテナ30の各々の間隔の設定方法は任意であり、例えば、後述する各GPS送信アンテナ100のGPS信号の送信範囲が一定の場合には、当該GPS信号の送信範囲の相互間に隙間が生じないように、GPS受信アンテナ30の各々の間隔が設定される。
【0019】
ここで、「GPS信号」とは、GPS衛星から送信されるGPS信号が含まれるが、これに限られず、例えば、高い測位精度を有する準天頂衛星から送信されるQZSS(Quasi−Zenith Satellite System)信号が含まれる。このQZSS信号は、GPS信号と同様に、無線通信で使用される周波数帯域1.5754GHzにおいてPRN番号(Pseudo Random Noise code number:擬似雑音符号番号)で管理されており、GPS信号と同様に取り扱うことができる。また、建物の屋内に設置されたIMES(Indoor MEssageing System)データ発生装置から発信される信号も含まれる。この信号は、IMESデータ発生装置の設置場所の位置情報を含む信号であり、GPS信号と同じ周波数を有する測位信号であるため、GPS信号と同様に取り扱うことができる。
【0020】
また、GPS受信アンテナ30によるGPS信号の受信方法は任意であり、複数のGPS信号に基づいてGPS受信アンテナ30の位置を特定するために、当該GPS受信アンテナ30が複数の衛星から所定数のGPS信号(例えば4つ以上のGPS信号)を受信する。また、GPS受信アンテナ30が複数のGPS信号を受信する場合には、例えば、当該GPS受信アンテナ30がGPS衛星のみからGPS信号を受信したり、あるいは、GPS衛星及び準天頂衛星からGPS信号及びQZSS信号を組み合わせて受信してもよい。また、例えば、GPS受信アンテナ30からGPS信号を受信できる衛星が所定数以上ある場合には、当該GPS受信アンテナ30が受信状態の良好な衛星を公知の検出方法で検出する図示しない検出部を備えることにより、当該GPS受信アンテナ30が当該図示しない検出部にて検出された衛星のGPS信号を受信するようにしてもよい。
【0021】
GPS受信機40は、GPS受信アンテナ30にて受信されたGPS信号を受信するものである。このGPS受信機40は、各GPS受信アンテナ30に対応して設けられており、建物の屋外に設置され、電線を介してGPS受信アンテナ30と接続されている。また、このGPS受信機40は、チューナ41、及びLD42を備えて構成されている。チューナ41は、GPS受信アンテナ30にて受信された複数のGPS信号から所定のGPS信号を取得する取得手段である。具体的には、チューナ41は、GPS受信アンテナ30にて受信されたGPS信号から所定の周波数帯域のGPS信号(例えば、周波数帯域1.5754GHzのGPS信号)を公知の方法にて取得する。LD42は、チューナ41にて取得されたGPS信号を、電気信号から光信号に変換する電光変換手段である。
【0022】
光ケーブル50は、DTV再送信機20にて光信号に変換された地上デジタル放送信号をDTV送信アンテナ90に向けて伝送すると共に、GPS受信機40にて光信号に変換されたGPS信号をGPS送信アンテナ100に向けて伝送する共通の伝送路である。この光ケーブル50は、建物の屋外に設けられたGPS受信機40から建物の屋内に引き込まれるように配置されている。
【0023】
また、この光ケーブル50は、DTV再送信機20と、GPS受信機40と、V−ONU60とを相互に接続しており、当該光ケーブル50の経路上には、分配器D1と混合器M1とが設けられている。分配器D1は、DTV再送信機20から送られた地上デジタル放送信号を分配する分配手段である(後述する分配器D2も同様とする)。混合器M1は、当該分配器D1にて分配された地上デジタル放送信号と、GPS受信機40から送られたGPS信号とを混合する混合手段である。
【0024】
また、この光ケーブル50を構成する光ファイバは、電気ノイズの影響を受けにくい材質、例えば、完全フッ素化ポリマー、ポリスチレン等のプラスチック材料やガラス材料等で形成されている。これにより、光ケーブル50の配線経路の近傍において、当該光ケーブル50の配線経路の近傍において電気ノイズを発生させる機器(例えば、空調機器等)や漏電電波等を発生させる電力線(例えば、照明機器等と電源とを接続する電力線等)が設置されていても、光ケーブル50は安定した信号の伝送を行うことができる。また、光ファイバがガラス材料等の絶縁材料で形成されているので、光ケーブル50における信号の伝送ロスが電線に比べて極めて小さいことから、光ケーブル50は伝送の途中で信号を補正・増幅しなくても安定した長距離伝送を行うことができる。
【0025】
この光ケーブル50の配線方法は任意であり、例えば、図1に示すように、GPS受信アンテナ30の直下位置の建物の天井の一部に設けられた配線口を介して光ケーブル50を配線する。あるいは、GPS受信アンテナ30から離れた位置の建物の天井部分又は壁部分等に設けられた配線口を介して光ケーブル50を配線してもよい。この場合において、複数の光ケーブル50を一つの配線口を介して配線する場合に、複数の光ケーブル50を束ねて配線することになるが、このような場合であっても、光ケーブル50から漏電電波がほとんど発生しないため、安定した信号の伝送を行うことができると共に、光ケーブル50の配線の施工性を向上させることができる。
【0026】
V−ONU60は、光ケーブル50を介して伝送された地上デジタル放送及びGPS信号を、光信号から電気信号に変換する光電変換手段である。このV−ONU60は、各GPS受信アンテナ30に対応して設けられており、建物の屋内に配置されている。また、このV−ONU60は、当該V−ONU60から送られた信号を分配する分配器D2及び電線を介してDTVフィルタ70と相互に接続されていると共に、当該分配器D2及び電線を介してGPSフィルタ80と相互に接続されている。これらV−ONU60の設置位置は任意であり、建物の天井の外観を向上させる位置に設置してもよい。例えば、図1に示すように、GPS受信アンテナ30の直下位置の建物の天井の一部に設けられた配線口を介して光ケーブル50が配設されている場合には、建物の天井に設置された配線口の内部にV−ONU60を設置してもよい。なお、光ケーブル50及びV−ONU60は、特許請求の範囲における光伝送手段を構成するものである。
【0027】
DTVフィルタ70は、V−ONU60にて伝送された信号のうち地上デジタル放送信号のみを取得する地上デジタル放送信号取得手段である。具体的には、DTVフィルタ70は、V−ONU60とDTVフィルタ70との相互間に設けられた分配器D2で分配されたV−ONU60から送られた信号を電線を介して取得し、当該取得した信号に含まれる地上デジタル放送信号を公知の方法で取得する。このDTVフィルタ70は、各GPS受信アンテナ30に対応して設けられており、建物の屋内に配置され、電線を介してDTV送信アンテナ90に接続されている。また、このDTVフィルタ70の具体的構成は任意であり、例えば、DTVフィルタ70は、当該DTVフィルタ70で取得した地上デジタル放送信号の周波数を所定の周波数に変換するための図示しない変換部を備えてもよい。具体的には、この図示しない変換部は、DTVフィルタ70で取得した地上デジタル放送信号の周波数帯域(例えば、周波数帯域470〜710MHz)を、DTV受信アンテナで受信した地上デジタル放送信号の周波数帯域(例えば、周波数帯域70〜770MHz)に公知の方法にて変換する。また、DTVフィルタ70は、当該DTVフィルタ70で取得した地上デジタル放送信号を、図示しない増幅器を用いて所定のレベルまで増幅させてもよい(後述するGPSフィルタ80も同様とする)。
【0028】
GPSフィルタ80は、V−ONU60にて伝送された信号のうちGPS信号のみを取得するGPS信号取得手段である。具体的には、GPSフィルタ80は、分配器D2で分配されたV−ONU60から送られた信号を電線を介して取得し、当該取得した信号に含まれるGPS信号を公知の方法で取得する。このGPSフィルタ80は、各GPS受信アンテナ30に対応して設けられており、建物の屋内に配置され、電線を介してGPS送信アンテナ100に接続されている。
【0029】
DTV送信アンテナ90は、DTVフィルタ70で取得された地上デジタル放送信号を建物の屋内に送信するDTV送信手段である。このDTV送信アンテナ90は、各GPS受信アンテナ30に対応するように設けられており、建物の屋内に配置され、当該建物の天井に固定されている。また、DTV送信アンテナ90の具体的構成は任意であるが、例えば、DTV送信アンテナ90には、建物の屋内の広さに応じて、建物の屋内に送信される地上デジタル放送信号の送信範囲を任意に変えられるように地上デジタル放送信号の送信範囲を調整する図示しない送信範囲調整部が設けられてもよい。この図示しない送信範囲調整部を用いる場合には、例えば、DTV送信アンテナ90に取り付けられた図示しない操作部が管理人等によって操作されることにより、地上デジタル放送信号の送信範囲が調整されるようにしてもよい(後述するGPS送信アンテナ100も同様とする)。
【0030】
GPS送信アンテナ100は、GPSフィルタ80で取得されたGPS信号を建物の屋内に送信するGPS送信手段である。このGPS送信アンテナ100は、各GPS受信アンテナ30に対応するように設けられており、建物の屋内に配置され、当該建物の天井に固定されている。このGPS送信アンテナ100は、当該GPS送信アンテナ100の平面座標とGPS受信アンテナ30の平面座標とが一致するように配置されている。これにより、GPS送信アンテナ100にて送信されたGPS信号に基づいて特定されるGPS受信アンテナ30の位置と実際にGPS受信アンテナ30が設置されている位置とを一致させることができる。なお、DTVフィルタ70、DTV送信アンテナ90、GPSフィルタ80、及びGPS送信アンテナ100は、特許請求の範囲における送信手段を構成するものである。
【0031】
(地上デジタル放送再送信システムの動作)
次に、地上デジタル放送再送信システム1の動作について説明する。まず、図1に示すように、DTV受信アンテナ10は、放送局から送信される地上デジタル放送信号を受信するまで待機する。また、GPS受信アンテナ30も、複数の衛星から送信される所定数のGPS信号を受信するまで待機する。ここで、GPS受信アンテナ30が受信状態の良好な衛星からGPS信号を受信する場合には、例えば、上記の図示しない検出部によって公知な検出方法で衛星が検出された後に、当該図示しない検出部にて検出された衛星から当該GPS受信アンテナ30がGPS信号を受信する。
【0032】
次いで、放送局から地上デジタル放送信号が受信された場合に、DTV受信アンテナ10は、当該受信された地上デジタル放送信号を電気信号としてDTV再送信機20に送る。また、所定数のGPS信号が受信された場合に、GPS受信アンテナ30は、当該受信された所定数のGPS信号を電気信号としてGPS受信機40に送る。
【0033】
次に、DTV再送信機20の変換回路21は、DTV受信アンテナ10から送られた地上デジタル放送信号の周波数を所定の周波数に公知の方法にて変換し、当該変換した地上デジタル放送信号を電気信号としてDTV再送信機20のLD22に送る。次いで、DTV再送信機20のLD22は、DTV再送信機20の変換回路21から送られた地上デジタル放送信号を電気信号から光信号に変換する。その後、DTV再送信機20は、当該変換した地上デジタル放送信号を光ケーブル50を介してV−ONU60へ伝送する。一方、GPS受信機40のチューナ41は、GPS受信アンテナ30から送られた所定数のGPS信号の中から所定の周波数帯域のGPS信号を公知の方法にて取得し、当該取得したGPS信号を電気信号としてGPS受信機40のLD42に送る。次いで、GPS受信機40のLD42は、GPS受信機40のチューナ41から送られたGPS信号を、電気信号から光信号に変換する。その後、GPS受信機40は、当該変換したGPS信号を、光ケーブル50を介してV−ONU60へ伝送する。なお、この光ケーブル50は、電気ノイズ等の影響を受けにくく、伝送による信号の損失が極めて小さいため、光ケーブル50の配線経路の近傍に電気ノイズを発生する機器や電力線等が設置されていたり、あるいは当該光ケーブル50の長さが長距離であっても、DTV再送信機20又はGPS受信機40からV−ONU60に向けて安定した信号の伝送を行うことができる。
【0034】
ここで、光ケーブル50における地上デジタル放送信号とGPS信号の伝送方法について説明する。図1に示すように、DTV再送信機20から送られた地上デジタル放送信号を光ケーブル50aを介して分配器D1に送り、当該送られた地上デジタル放送信号を分配器D1で分配し、当該分配した地上デジタル放送信号を光ケーブル50bを介して混合器M1に送る。また、GPS受信機40から送られたGPS信号を光ケーブル50cを介して混合器M1に送る。そして、これら混合器M1に集められた地上デジタル放送信号とGPS信号とを当該混合器M1で混合し、当該混合した地上デジタル放送信号及びGPS信号を光ケーブル50dを介してV−ONU60に送る。このように、光ケーブル50は、DTV再送信機20にて変換された地上デジタル放送信号及びGPS受信機40にて変換されたGPS信号を伝送する共通の光ケーブル50dを有するので、これら地上デジタル放送信号及びGPS信号をV−ONU60に同時に伝送することができ、光ケーブル50の施工を簡略化することができると共に、光ケーブル50の施工コストを低減することができる。なお、地上デジタル放送信号とGPS信号とでは異なる周波数帯域であるため(前者は470〜710MHzで、後者は1.5754GHz)、両信号を混合した場合でも信号の干渉が生じにくいものと考えられる。
【0035】
続いて、V−ONU60は、光ケーブル50から伝送された地上デジタル放送信号及びGPS信号を、光信号から電気信号へ変換する。次いで、V−ONU60は、当該V−ONU60にて電気信号に変換された地上デジタル放送及びGPS信号を分配器D2に送り、当該分配器D2で分配された一方の地上デジタル放送及びGPS信号をDTVフィルタ70に送ると共に、当該分配器D2で分配された他方の地上デジタル放送及びGPS信号をGPSフィルタ80に送る。そして、DTVフィルタ70は、分配器D2から送られた一方の地上デジタル放送及びGPS信号のうち地上デジタル放送信号のみを公知の方法にて取得し、当該取得した地上デジタル放送信号をDTV送信アンテナ90に送る。また、GPSフィルタ80は、分配器D2から送られた他方の地上デジタル放送及びGPS信号のうちGPS信号のみを公知の方法にて取得し、当該取得したGPS信号をGPS送信アンテナ100に送る。
【0036】
次に、DTV送信アンテナ90は、当該DTVフィルタ70から送られた地上デジタル放送信号を、当該DTV送信アンテナ90の送信範囲内(例えば10m以内)において建物の屋内に送信する。また同時に、GPS送信アンテナ100は、当該GPSフィルタ80から送られたGPS信号を、当該GPS送信アンテナ100の送信範囲内(図1では、DTV送信アンテナ90の送信範囲と同様する)において建物の屋内に送信する。これにより、DTV送信アンテナ90の送信範囲内にいるユーザは、当該ユーザが携帯する携帯端末(例えば、地上デジタル放送の視聴機能が搭載された携帯電話等)によって地上デジタル放送信号を受信することができ、当該受信した地上デジタル放送信号に基づいて地上デジタル放送を視聴することができる。また、GPS送信アンテナ100の送信範囲内にいるユーザは、当該ユーザが携帯する携帯端末(例えば、GPS機能が搭載された携帯電話等)によってGPS信号を受信することができ、当該受信したGPS信号に基づいて当該GPS送信アンテナ100に対応するGPS受信機40の位置に関する位置情報を取得することができる。
【0037】
(効果)
このように本実施の形態によれば、DTV再送信機20又はGPS受信機40と送信手段との相互間において、DTV再送信機20にて受信された地上デジタル放送信号をDTV送信アンテナ90に向けて光伝送手段を介して光通信で伝送し、GPS受信機40にて受信されたGPS信号をGPS送信アンテナ100に向けて光伝送手段を介して光通信で伝送するので、建物の屋外又は屋外に設置された機器から発生する電気ノイズや電力線から発生する漏電電波等の影響を受けにくく、伝送による信号の損失が極めて小さいため、伝送の途中で信号を補正・増幅しなくても長距離伝送を行うことができ、地上デジタル放送信号及びGPS信号の伝送の安定性を向上することができる。
【0038】
また、光伝送手段は、DTV再送信機20にて変換された地上デジタル放送信号及びGPS受信機40にて変換されたGPS信号を伝送する共通の光ケーブル50と、当該光ケーブル50にて伝送された地上デジタル放送信号及びGPS信号を電気信号に変換するV−ONU60とを有するので、これら地上デジタル放送信号及びGPS信号をV−ONU60に同時に伝送し、当該地上デジタル放送信号及びGPS信号を光信号から電気信号に同時に変換することができ、光伝送手段の施工を簡略化することができると共に、光伝送手段の施工コストを低減することができる。特に、地上デジタル放送の地下施設等への再送信システムが導入されている場合には、この既設の再送信システムにGPS信号を混合して伝送することで、GPS信号を送信するための専用の伝送路を敷設する必要がなくなるので、システムの設置コストを一層低減することができる。
【0039】
また、送信手段は、DTVフィルタ70にて取得された地上デジタル放送信号をDTV送信アンテナ90により屋内に送信し、GPSフィルタ80にて取得されたGPS信号をGPS送信アンテナ100により屋内に送信するので、DTV送信アンテナ90の送信範囲内にいるユーザは地上デジタル放送信号を受信することができ、当該受信した地上デジタル放送信号に基づいて地上デジタル放送を視聴することができる。またGPS送信アンテナ100の送信範囲内にいるユーザはGPS信号を受信することができ、当該受信したGPS信号に基づいて当該GPS送信アンテナ100に対応するGPS受信機40の位置に関する位置情報を取得することができる。
【0040】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0041】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0042】
(地上デジタル放送再送信システムの適用対象)
上述の本実施の形態では、地上デジタル放送再送信システム1は、放送局から送信される地上デジタル放送信号及び衛星から送信されるGPS信号が遮断される建物の屋内に適用した場合について説明したが、これに限られず、例えばビル陰により地上デジタル放送及びGPS信号の受信状態が好ましくない場所等、すなわち建物の屋外に適用してもよい。
【0043】
(V−ONUについて)
上述の本実施の形態では、光ケーブル50にて伝送された地上デジタル放送信号及びGPS信号の光電変換を行うV−ONU60を設けると説明したが、例えば、当該V−ONU60と、無給電にて地上デジタル放送信号及びGPS信号の光電変換を行う無給電ONUとを併設してもよい。これにより、停電時であっても、無給電ONUによってGPS受信アンテナ30にて受信されたGPS信号を建物の屋内に送信することができる。
【0044】
(送信手段について)
上述の本実施の形態では、送信手段は、DTVフィルタ70にて取得された地上デジタル放送信号をDTV送信アンテナ90により屋内に送信し、GPSフィルタ80にて取得されたGPS信号をGPS送信アンテナ100により屋内に送信すると説明したが、これに限られない。例えば、V−ONU60から送られた地上デジタル放送及びGPS信号をまとめて屋内に送信する送信アンテナを設けることで、当該地上デジタル放送及びGPS信号を屋内に送信してもよい。これにより、電線の配線を簡略化し、DTVフィルタ70、GPSフィルタ80、及び分配器D2の設置を省略化することができる。この場合には、例えば、ユーザが携帯する携帯端末に、送信アンテナから送信された信号から地上デジタル放送又はGPS信号を取得する手段を設けるようにしてもよい。
【0045】
(位置情報について)
上述の本実施の形態では、GPS受信機40にて受信されたGPS信号に基づいて位置情報を取得すると説明したが、例えば、当該取得した位置情報に基づいて、外部のサーバから建物の詳細情報(例えば、災害時の避難経路や避難場所等の防災情報)をユーザの携帯端末を介して取得できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 地上デジタル放送再送信システム
10 DTV受信アンテナ
20 DTV再送信機
21 変換回路
22、42 LD
30 GPS受信アンテナ
40 GPS受信機
41 チューナ
50、50a、50b、50c、50d 光ケーブル
60 V−ONU
70 DTVフィルタ
80 GPSフィルタ
90 DTV送信アンテナ
100 GPS送信アンテナ
M1 混合器
D1、D2 分配器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局から送信される地上デジタル放送信号を建物の屋内に再送信する地上デジタル放送再送信システムであって、
前記建物の屋外に設置されたものであって、前記放送局から送信された地上デジタル放送信号を受信する地上デジタル放送受信手段と、
前記建物の屋外に設置されたものであって、衛星から送信されたGPS信号を受信するGPS受信手段と、
前記建物の屋内において前記GPS受信手段と平面座標が一致するように設置されたものであって、前記地上デジタル受信手段にて受信された地上デジタル放送信号と、前記GPS受信手段にて受信されたGPS信号とを屋内に送信する送信手段と、
前記地上デジタル放送受信手段と、前記GPS受信手段と、前記送信手段とを相互に接続するものであって、前記地上デジタル受信手段にて受信された地上デジタル放送信号と、前記GPS受信手段にて受信されたGPS信号とを前記送信手段に向けて光通信で伝送する光伝送手段と、
を備える地上デジタル放送再送信システム。
【請求項2】
前記地上デジタル放送受信手段は、当該地上デジタル放送受信手段にて受信された地上デジタル放送信号を、電気信号から光信号に変換し、
前記GPS受信手段は、当該GPS受信手段にて受信されたGPS信号を、電気信号から光信号に変換し、
前記光伝送手段は、前記地上デジタル放送受信手段にて変換された地上デジタル放送信号及び前記GPS受信手段にて変換されたGPS信号を伝送する共通の伝送路と、当該伝送路にて伝送された地上デジタル放送信号及びGPS信号を電気信号に変換する光電変換手段とを有する
請求項1に記載の地上デジタル放送再送信システム。
【請求項3】
前記送信手段は、
前記光伝送手段にて伝送された信号のうち前記地上デジタル放送信号のみを取得する地上デジタル放送信号取得手段と、前記光伝送手段にて伝送された信号のうち前記GPS信号のみを取得するGPS信号取得手段とを備え、
前記地上デジタル放送信号取得手段にて取得された地上デジタル放送信号と、前記GPS信号取得手段にて取得されたGPS信号とを屋内に個別に送信する、
請求項1又は2に記載の地上デジタル放送再送信システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−7901(P2012−7901A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141517(P2010−141517)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】