説明

地下タンク及びその製造方法

【課題】簡単な構成で強度を確保し得るとともに、修復の手間を軽減することが可能な地下タンクを提供する。
【解決手段】FRP製の内殻2及び外殻6を有し、地中に埋設される地下タンク1であって、内殻2の外側に配置され、内殻2の損傷を検知するための第1の検知層3と、外殻6の内側に配置され、外殻6の損傷を検知するための第2の検知層5と、第1及び第2の検知層3、5の間に配置される鋼製の中殻4とを備える。この際、第1の検知層3を三次元ガラス繊維織物により形成することができ、また、第2の検知層5を三次元ガラス繊維織物又は樹脂製フィルムにより形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される地下タンク及びその製造方法に関し、特に、自動車へ供給する燃料油を貯留する地下タンク等に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料油を貯留する給油所のタンクは、地中に埋設されている。このタンクが損傷して燃料油が流出すると、危険であり環境破壊となる。このため、従来の地下タンクにおいては、図7に示すように、内殻51及び外殻52からなる二重殻を備えるとともに、それらの間に、検知液が流れる漏洩検知空間53を介設し、漏洩検知器54で検知液の漏洩を検知して損傷の有無を監視するように構成されている。
【0003】
こうした二重殻タンクには、内外殻51、52の双方を鋼製としたもの、内殻51を鋼製とし、外殻52をガラス繊維強化プラスチック(以下、「FRP」という)製としたもの、さらには、内外殻51、52の双方をFRP製としたものがある。これらのうちでも、内外殻の双方をFRP製とした二重殻タンクは、軽量で耐食性が高く、急速に普及している。
【0004】
しかし、FRP製の内外殻を備える二重殻タンクは、鋼製のタンクに比べて柔軟で可とう性を有することから、鋼製のタンクと剛性強度が異なるため、土圧に対する強度を補うための補強対策を講じる必要がある。そこで、例えば、特許文献1には、図8に示すように、FRP製の内殻61と、内殻61と漏洩検知空間63を介して形成されたFRP製の外殻62よりなる二重殻タンクにおいて、内殻61の半径方向内方にリング状の補強リブ64を取り付けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−117255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、地下に埋設されるタンクにおいては、結露等による水分の混入や、配管及びタンク内スラッジ等の不純物の混入が考えられ、特許文献1に記載の二重殻タンクにおいては、補強リブ64の高さ位置までにより区切られた層内に不純物が停滞し易くなるため、それらを排出するための連通口65を設ける必要が生じる(図8参照)。このため、補強リブ64やその周辺の構造が複雑化し、工期の長期化や製造コストの増大を招くという問題があった。
【0007】
こうした問題を解決する手段の1つとして、補強リブを外殻の外周面(タンクの外側)に設け、タンクの内側に凹凸が生じるのを回避することが考えられる。しかし、この場合でも、タンクの外側に凹凸が生じることになるため、タンクを支持する基礎の構造に工夫や改良を強いられることになり、新たな対策が必要となる。加えて、基礎との関係や土壌の掘下げ深さとの関係上、補強リブの高さを低くせざるを得ないため、十分な強度を確保するには、補強リブの数を増やす必要が生じ、却ってコストを増大させる虞がある。
【0008】
また、従来の二重殻タンクにおいては、図7に示すように、漏洩検知空間53を内殻51と外殻52の間に設けるため、検知液の漏洩(タンクの損傷)が検知されても、内殻51と外殻52のどちらが損傷したのかを把握することができない。このため、漏洩が検知される都度、タンクを掘り出して損傷箇所を確認せざるを得ず、修繕作業に非常に手間がかかるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で強度を確保し得るとともに、修繕作業の手間を軽減することが可能な地下タンク等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、FRP製の内殻及び外殻を有し、地中に埋設される地下タンクであって、前記内殻の外側に配置され、該内殻の損傷を検知するための第1の検知層と、前記外殻の内側に配置され、該外殻の損傷を検知するための第2の検知層と、前記第1及び第2の検知層の間に配置される鋼製の中殻とを備えることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、内殻と外殻の間に鋼製の中殻を備えるため、地下タンクの内側や外側に補強リブを形成せずとも必要な強度を確保することができ、簡単な構成で強度を確保することが可能になる。また、第1及び第2の検知層を備えるため、内殻と外殻のどちらが損傷したのかを即座に把握することができ、修繕作業の手間を軽減することが可能になる。
【0012】
上記地下タンクにおいて、前記第1の検知層を三次元ガラス繊維織物により形成することができる。これによれば、第1の検知層の内部に適度に空間を形成し得ると同時に、第1の検知層の強度を向上させることが可能になる。
【0013】
上記地下タンクにおいて、前記第2の検知層を三次元ガラス繊維織物又は樹脂製フィルムにより形成することができる。
【0014】
上記地下タンクにおいて、該地下タンクの内部空間を仕切るための仕切部を有し、該仕切部が、該仕切部の損傷を検知するための検知層を備えることができ、これにより、仕切部の損傷を区別して検知することが可能になる。
【0015】
また、本発明は、地中に埋設される地下タンクの製造方法であって、鋼材を該地下タンクに対応する形状に加工して中殻を形成する工程と、前記中殻の内側に内殻の損傷を検知するための第1の検知層を形成するとともに、該第1の検知層の内側にFRP製の前記内殻を形成する工程と、前記中殻の外側に外殻の損傷を検知するための第2の検知層を形成するとともに、該第2の検知層の外側にFRP製の前記外殻を形成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で強度を確保し得るとともに、修復の手間を軽減することが可能な地下タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る地下タンクの第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のA部分の拡大図である。
【図3】図1の地下タンクの修繕方法を説明するための図である。
【図4】本発明に係る地下タンクの第2の実施形態を示す断面図である。
【図5】図4の仕切部の他の例を示す図である。
【図6】図4の仕切部の他の例を示す図である。
【図7】従来の地下タンクの一例を示す断面図である。
【図8】補強リブを備えた従来の地下タンクを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明に係る地下タンクの第1の実施形態を示し、この地下タンク1は、略円筒形の大型容器であり、内側から外側に向けて順に、内殻2、第1の検知層3、中殻4、第2の検知層5及び外殻6が積層された構成を有する。
【0020】
内殻2及び外殻6は、FRP製であり、その表面には、図2に示すように、内殻2及び外殻6の劣化を防止するための耐食層2a、6aが形成される。
【0021】
第1の検知層3は、内殻2の損傷を検知するために備えられ、図2に示すように、ガラス繊維3aを三次元的に織り込むとともに、ガラス繊維3aに樹脂を含浸させた三次元ガラス繊維織物により形成される。この三次元ガラス繊維織物は、ガラス繊維3aを絡ませてシート状に成形したものであり、繊維3aと繊維3aの間に形成される空間3bを検知液が流れるように構成される。
【0022】
第1の検知層3において、地下タンク1の長手方向と直交する面では、ガラス繊維3aを低密度で配置して空間3bを大きくし、長手方向への検知液の流動性を向上させる。その一方で、長手方向と平行な面では、ガラス繊維3aを高密度で配置し、高い強度を確保して第1の検知層3を補強部材の1つとして機能させる。
【0023】
この第1の検知層3は、図1に示すように、検知液の液位の変化を検知する漏洩検知器7に接続される。そして、内殻2が損傷して検知液が漏洩し、液位が低下した場合には、その旨が漏洩検知器7を通じてモニタ(不図示)に伝達され、内殻2の損傷が報知される。
【0024】
第2の検知層5は、外殻6の損傷を検知するために備えられる。この第2の検知層5は、第1の検知層3と同様の構成を有し、図2に示すように、ガラス繊維5aを三次元的に織り込んだ三次元ガラス繊維織物により形成される。また、第2の検知層5は、図1に示すように、地下タンク1に挿入される検知管8aと連通するように構成され、検知管8aの内部には、検知液の液位の変化を検出するフロートセンサ8bと、フロートセンサ8bと電気的に接続されたリード線8cとが配置される。
【0025】
中殻4は、地下タンク1の胴板の強度を補うために備えられ、鋼材を加工して形成される。中殻4を鋼製とした場合、地下タンク1全体の重量が増大し易くなるため、重量と強度のバランスを考慮すると、中殻4の厚さは、3.7mm〜12.0mmとすることが好ましい。但し、中殻4の好ましい厚さは、地下タンク1のサイズに応じて変動し得るため、上記の数値範囲は絶対的なものではない。また、図2に示すように、中殻4と第1の検知層3との間にはFRP層9が配置され、中殻4と第2の検知層5との間にはFRP層10が配置される。
【0026】
上記構成を有する地下タンク1の製造にあたっては、中央に位置する中殻4を形成した後、中殻4の内側に内殻2及び第1の検知層3を形成するとともに、内殻4の外側に第2の検知層5及び外殻6を形成する。
【0027】
具体的には、先ず、鋼板を加工し、タンク型に形状を整えて中殻4(鋼製タンク)を形成する。次に、中殻4の内側の清掃及びケレンを行い、紫外線硬化型の三次元ガラス繊維プリプレグ法、又は、三次元ガラス繊維織物でのFRPハンドレイアップ工法により、FRP層9及び第1の検知層3を形成する。その後、第1の検知層3の表面上に内殻2及び耐食層2aを順次成形し、中殻4より内側の部分を完成させる。
【0028】
次いで、中殻4の外側の清掃及びケレンを行い、紫外線硬化型の三次元ガラス繊維プリプレグ法、又は、三次元ガラス繊維織物でのFRPハンドレイアップ工法により、FRP層10及び第2の検知層5を形成する。そして、第2の検知層5の表面上に外殻6及び耐食層6aを順次成形し、中殻4より外側の部分を完成させる。
【0029】
本実施の形態に係る地下タンク1によれば、内殻2と外殻6の間に鋼製の中殻4を設けるため、地下タンク1の胴板自体の強度を向上させることができ、地下タンク1の内側や外側に補強リブを形成せずとも必要な強度を確保することが可能になる。従って、地下タンク1の構造を簡略化することができ、工期の短縮や製造コストの削減を図ることが可能になる。
【0030】
また、地下タンク1においては、第1及び第2の検知層3、5を備え、内殻2及び外殻6の各々に対応する検知層を設けるため、検知液の漏洩が検知された際に、内殻2と外殻6のどちらが損傷したのかを即座に把握することができる。また、内殻2又は外殻6の一方が損傷したのか、それとも、それらの双方が損傷したのかを把握することもできるため、損傷の度合いをある程度推測することが可能になり、修繕の要否が判断し易くなる。
【0031】
そして、内殻2側に損傷が生じた場合には、作業員が地下タンク1内に入って損傷箇所を特定した後、図3に示すように、損傷箇所を含む一定の領域11につき、中殻4より内側の部分を切り取る(図3(a)参照)。その後、領域11を切り取った部分に、領域11と同一の形状を有する交換部材12を押し込み、地下タンク1と接合する(図3(b)参照)。一方、外殻6側に損傷が生じた場合には、従来と同様、地下タンク1を掘り出し、損傷箇所を修繕する。
【0032】
このように、地下タンク1によれば、漏洩が検知された段階で、内殻2と外殻6のどちらが損傷したのかを把握し得るとともに、内殻2側の損傷であれば、地下タンク1を掘り出さずに修繕することができるため、修繕の都度、地下タンク1を掘り出す必要がなくなり、修繕作業の手間を軽減することが可能になる。
【0033】
次に、本発明に係る地下タンクの第2の実施形態について、図4〜図6を参照しながら説明する。尚、それらの図において、図1及び図2と同一の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、本実施の形態に係る地下タンク20は、胴部21の内部を複数の空間に仕切るための仕切部22を備える。この仕切部22は、胴部21の内壁面と接合されるとともに、両側に配置された支持部材23により支持される。
【0035】
仕切部22は、FRP製の第1及び第2の板状層22a、22bの間に、仕切部22の損傷を検知するための検知層22cが介設された構成を有する。検知層22cは、ガラス繊維を三次元的に織り込んだ三次元ガラス繊維織物により形成され、繊維と繊維の間の空間を検知液が流れるように構成される。
【0036】
また、検知層22cは、胴部21の第1及び第2の検知層3、5から離間するように配置されるとともに、漏洩検知器7や検知管8a(図1参照)とは別に設置される専用の漏洩検知器24と接続される。尚、胴部21内に複数の仕切部22を配置する場合には、仕切部22毎に漏洩検知器24が設置される。
【0037】
ここで、仕切部22の損傷を検知するための構成は、図5に示すように、検知層32の内部に空気を充填させ、圧力検知器34で圧力損失を検知したり、図6に示すように、検知層42の内部に電極センサ42a及びリード線42bを配置し、検知器44で電気的に損傷を検知するように構成することもできる。
【0038】
本実施の形態によれば、胴部21の内殻2及び外殻6だけでなく、仕切部22の損傷も区別して検知し得るようになるため、損傷箇所の特定がより一層容易となる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施の形態においては、燃料油を貯蔵する場合を例にとって説明したが、耐食層2a、6aの材料を変更することで、薬品等を貯蔵するタンクにも広く適用することが可能である。
【0041】
また、上記実施の形態においては、第1及び第2の検知層3、5に検知液を封入するが、図5に示した場合と同様に、検知層の内部に空気を充填させて圧力損失を検知するように構成することもできる。
【0042】
さらに、上記実施の形態においては、第2の検知層5(外殻6の損傷を検知するための層)を三次元ガラス繊維織物により形成したが、塩ビシートフィルム等の樹脂製フィルムを用いて形成することもできる。この場合、中殻(鋼製タンク)4の外側にフィルムを貼着して第2の検知層5を形成した後、第2の検知層5の表面上にFRP成形シートを巻き付けて外殻6を形成する。
【符号の説明】
【0043】
1 地下タンク
2 内殻
2a 耐食層
3 第1の検知層
3a ガラス繊維
3b 空間
4 中殻
5 第2の検知層
5a ガラス繊維
5b 空間
6 外殻
6a 耐食層
7 漏洩検知器
8a 検知管
8b フロートセンサ
8c リード線
9、10 FRP層
11 領域
12 交換部材
20 地下タンク
21 胴部
22 仕切部
22a、22b 板状層
22c 検知層
23 支持部材
24 漏洩検知器
32 検知層
34 圧力検知器
42 検知層
42a 電極センサ
42b リード線
44 検知器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FRP製の内殻及び外殻を有し、地中に埋設される地下タンクであって、
前記内殻の外側に配置され、該内殻の損傷を検知するための第1の検知層と、
前記外殻の内側に配置され、該外殻の損傷を検知するための第2の検知層と、
前記第1及び第2の検知層の間に配置される鋼製の中殻とを備えることを特徴とする地下タンク。
【請求項2】
前記第1の検知層が三次元ガラス繊維織物により形成されることを特徴とする請求項1に記載の地下タンク。
【請求項3】
前記第2の検知層が三次元ガラス繊維織物又は樹脂製フィルムにより形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下タンク。
【請求項4】
該地下タンクの内部空間を仕切るための仕切部を有し、
該仕切部が、該仕切部の損傷を検知するための検知層を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の地下タンク。
【請求項5】
地中に埋設される地下タンクの製造方法であって、
鋼材を該地下タンクに対応する形状に加工して中殻を形成する工程と、
前記中殻の内側に内殻の損傷を検知するための第1の検知層を形成するとともに、該第1の検知層の内側にFRP製の前記内殻を形成する工程と、
前記中殻の外側に外殻の損傷を検知するための第2の検知層を形成するとともに、該第2の検知層の外側にFRP製の前記外殻を形成する工程とを有することを特徴とする地下タンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−25987(P2011−25987A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176125(P2009−176125)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ・メカトロニクス (167)
【Fターム(参考)】