説明

地下タンク構造

【課題】液化ガスのタンクの上部に覆う軽量被覆材上に盛土された植栽用土を、その全域において風雨などにより浸食されないように保持できるようにする。
【解決手段】地下タンク構造10において、タンク本体20の上面の外周に沿って筒状に立設された擁壁26の内部に軽量被覆材51が充填され、軽量被覆材51の上部に遮水シート33が敷設され、遮水シート33の上部に植栽用土30が覆土されており、植栽用土30内にはネット35が埋設されており、ネット35は遮水シート33に取り付けられた保持具32により保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを貯蔵するための下部が地中に埋設された地下タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LPG,LNGなどの液化ガスの貯蔵タンクとして、底部と、底部の周囲に沿って構築された側壁と、側壁の上部を覆う屋根部とからなり、少なくともその下部が地中に埋設されるように構築されたタンクが用いられている。かかる貯蔵タンクは、タンクの上部が地表に露出していると威圧感があるため、タンク上部が埋設されるように盛土及び覆土を施す方法が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、このようにタンク上部に覆土を施す方法では、覆土に用いられる土砂の重量が大きく、その荷重を支持することができるように、屋根部を強固に構築しなければならない。そこで、例えば、特許文献1には、タンクの屋根部に作用する荷重を削減するべく、タンクの直上部分に例えば発泡スチロールや発泡ウレタンフォームなどの軽量被覆材を配置する方法が記載されている。この方法では、周辺の盛土部分からの雨水の浸入により軽量被覆材が浮き上がることを防止することを目的としてタンク外縁を擁壁で囲っている。
【特許文献1】特開平4―236899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のようにタンクの屋根部の上部に配置された軽量被覆材の上部には、遮水シートが敷設され、遮水シートの上方には遮水シートの損傷を防止するため植栽用土が敷き均される。このような植栽用土は、タンクに作用する荷重が増加しないように、薄層であることが好ましい。しかし、植栽用土は薄層に形成すると風雨により浸食されやすいので、植栽用土内にネットを埋設し、植栽用土をこのネットにより固定することが行われている。
【0005】
しかしながら、植栽用土を固定するためのネットを固定する箇所としては、例えば、タンクの上方中央に設けられた突出部などに限られてしまうため、軽量被覆材が配置された領域の上部全体の植栽用土をネットにより固定することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、液化ガスのタンクの上部を覆う軽量被覆材上に盛土された植栽用土を、その全域において風雨により浸食されないように保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地下タンク構造は、地下に少なくとも下部が埋設された状態で構築された地下タンク構造であって、鉄筋コンクリート造のタンク本体と、前記タンク本体の上部に設けられた被覆材と、前記被覆材の上部に敷設された遮水シートと、前記遮水シートの上部に覆土された覆土層と、を備え、前記覆土層には網状部材が設けられており、前記網状部材は前記遮水シートに取り付けられた保持具により保持されていることを特徴とする。
【0008】
上記の地下タンク構造において、前記保持具は、シート状に形成されたシート部と、フック状に形成され、前記シート部に立設されたフック部と、を備え、前記シート部が前記遮水シートに貼付され、前記網状部材は前記フック部に引掛けられて保持してもよい。
【0009】
また、前記遮水シート及び前記保持具は熱可塑性樹脂からなり、前記保持具は前記遮水シートに加熱溶着されていてもよい。また、前記遮水シートの上部に導水シートが敷設されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タンク上部全体に亘って敷設された遮水シートに保持具を取り付け、この保持具により植栽用土と一体となったネットを保持することとしたため、タンクの上部に配置された軽量被覆材の上部全領域の植栽用土をネットにより保持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の地下タンク構造の一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の貯蔵タンク構造10を示す鉛直断面図であり、図2は、貯蔵タンク構造10の上部の構成を示す鉛直断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の地下タンク構造10は、LPGやLNGなどの液化ガスを貯蔵するためのものであり、地中に円筒形に形成された地中連続壁11と、地中連続壁11の内部に地中連続壁11と一体となるように構築された地下タンク本体20と、地下タンク本体20の側壁21の上部に構築された擁壁26と、擁壁26の内部の地下タンク本体20の上部に軽量被覆材51が積まれてなる被覆材層50と、被覆材層50の上部に構築された覆土層30とにより構成される。
【0012】
地下タンク本体20は、底部に排水砕石層22及び底部ヒータ23を介して構築されたコンクリート製の底版24と、底版24の周囲に一体に、かつ、地中連続壁11と一体に構築された側壁21と、側壁21の頂部に一体にドーム状に構築されたコンクリート製の屋根部25とにより構成される。屋根部25の頂部は、盛土12によりかさ上げされる前の地表高さ(図中破線で示す)に比べて上方に位置するように構築されている。
【0013】
地下タンク本体20の内周面にはメンブレンなどの保冷材が取り付けられており、地下タンク本体20の断熱性を保つようにしている。また、地中連続壁11の外周部には側部ヒータ40が埋設され、底版24の下方に埋設された底部ヒータ23とともに周囲の地盤の凍結を防止している。
【0014】
地中連続壁11は、上下方向にかさ上げ前の地表高さから地下タンク本体20の底版24近傍に亘って構築されている。この地中連続壁11は地下タンク本体20を構築する際に、土留め壁として用いられたものである。
【0015】
擁壁26は地下タンク本体20の側壁21の上部の外周に沿って構築された円筒状の鉄筋コンクリート壁からなる。擁壁26は、下端が側壁21の上部と一体となり、上端が地下タンク本体20の上部に設けられた覆土層50の上面から突出するように構築されており、周囲の地盤と地下タンク本体20の上部の空間とを仕切るものである。擁壁26の外部には擁壁26の頂部近傍の高さまで盛土12が施されている。
【0016】
擁壁26の内部には、例えば直方体形状に形成された発泡スチロールなどの軽量被覆材51が積層されてなる被覆材層50が形成されている。さらに、被覆材層50の上部には植栽用土31が盛土されてなる覆土層30が形成されている。
【0017】
図3は、覆土層30の構成を示す図である。同図に示すように、覆土層30は、被覆材層50の上部に敷設された遮水シート33と、遮水シート33の上部に敷設された導水シートと、遮水シート33と一体となった保持具32と、保持具32により保持されたネット35と、ネット35により保持された植栽用土とにより構成される。
【0018】
遮水シート33は例えば、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなり、遮水性を有する。雨天時には植栽用土31内に雨水が浸透するが、遮水シート33により雨水が被覆材層50まで到達するのが防止される。
【0019】
導水シート34は、例えば、不織布などを用いることができ、内部に浸透した雨水などを一面に浸透させて保水し、その面全体から植栽用土31へ水分を供給する機能を有する。
【0020】
保持具32は、遮水シート34上に平面視において略1m間隔で固定されており、ネット35を固定するためのものである。図4は、保持具32を示す斜視図である。同図に示すように、保持具32は、シート状の融着部32Aと、フック状に形成され、融着部32Aに立設されたフック状部32Bとにより構成される。これら融着部32A及びフック状部32Bは遮水シート33と同様の材料(すなわち、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂)からなり、融着部32Aが遮水シート33の表面に熱融着されることにより固定されている。なお、保持具32は、予め、遮水シート33に取り付けておいてもよいし、遮水シート33を敷設した後にその表面に取り付けてもよい。
【0021】
ネット35は、ポリエチレン製の2〜4cm間隔のメッシュ状の部材からなり、その一部が遮水シート33の表面に取り付けられた保持具32のフック状部32Bの内側に収容されることにより、保持具32を介して遮水シート33に保持されている。ネット35には、植栽用土31に植栽された植生が絡み付き、これにより、植栽用土31がネット35と一体となっている。なお、本実施形態では、ネット35により植栽用土31を保持する構成としているが、植栽用土の表面をネットで覆う構成としても、植栽用土を保持することができる。
【0022】
かかる構成より、地下タンク構造10の上部に強風等が吹いた場合であっても、遮水シート33に固定された保持具32がネット35を保持するため、ネット35と一体となった植栽用土31が浸食されるのを防止できる。
【0023】
本実施形態によれば、植栽用土31を保持するためのネット35を固定する保持具32を遮水シート33に取り付けることとしたため、被覆材層50の上部全体に亘ってネット35を固定することができる。これにより、植栽用土31の浸食を防止することができ、遮水シート33を保護することができる。
【0024】
また、保持具32及び遮水シート33を熱可塑性樹脂からなるものとしたため、保持具32を遮水シート33に熱溶着することができ、遮水シート33に開口を設けることなく、保持具32を取り付けることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、保持具32を構成する融着部32A及びフック状部32Bを熱可塑性樹脂により構成するものとしたが、これに限らず、少なくとも融着部32Aが熱可塑性樹脂により構成されていれば、遮水シート33に熱融着させることができる。
【0026】
また、保持具32は必ずしも熱融着により遮水シート33に固定する必要はなく、接着剤などを用いて遮水シート33に固定することとしてもよい。
また、保持具32は図4に示すフック形状に限らず、ネット35に引っ掛けられて、ネット35を固定できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態の貯蔵タンク構造物を示す鉛直断面図である。
【図2】貯蔵タンク構造の上部の構成を示す鉛直断面図である。
【図3】覆土層の構成を示す図である。
【図4】保持具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 地下タンク構造
11 地中連続壁
12 盛土
20 タンク本体
21 側壁
22 排水砕石層
23 ヒータ
24 底版
25 屋根部
26 擁壁
30 覆土層
31 植栽用土
32 保持具
32A 融着部
32B フック状部
33 遮水シート
34 導水シート
35 ネット
40 ヒータ
50 被覆材層
51 軽量被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に少なくとも下部が埋設された状態で構築された地下タンク構造であって、
鉄筋コンクリート造のタンク本体と、
前記タンク本体の上部に設けられた被覆材と、
前記被覆材の上部に敷設された遮水シートと、
前記遮水シートの上部に覆土された覆土層と、を備え、
前記覆土層には網状部材が設けられており、前記網状部材は前記遮水シートに取り付けられた保持具により保持されていることを特徴とする地下タンク構造。
【請求項2】
請求項1記載の地下タンク構造であって、
前記保持具は、シート状に形成されたシート部と、フック状に形成され、前記シート部に立設されたフック部と、を備え、
前記シート部が前記遮水シートに貼付され、前記網状部材は前記フック部に引掛けられて保持されていることを特徴とする地下タンク構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の地下タンク構造であって、
前記遮水シート及び前記保持具は熱可塑性樹脂からなり、
前記保持具は前記遮水シートに加熱溶着されていることを特徴とする地下タンク構造。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れか1項に記載の地下タンク構造であって、
前記遮水シートの上部に導水シートが敷設されていることを特徴とする地下タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52740(P2010−52740A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216852(P2008−216852)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】