説明

地中変位測定装置

【課題】測定範囲の制限を受けることなく地中の土の変位を測定することを可能にする地中変位測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】地中変位測定装置101は、ボアホール3内に互いに間隔をあけて設置される複数のセンサ装置101aを備える。センサ装置101aは、超音波を発信する超音波発信器11と、超音波を検知する超音波受信器12と、制御装置20とを有している。さらに、センサ装置101aの制御装置20は、センサ装置101a及び別のセンサ装置101aの間で別のセンサ装置101aの超音波発信器11が超音波を発信してからセンサ装置101aの超音波受信器12が超音波を検知するまでの伝播時間を検出する伝播時間検出手段として作用し、検出した超音波の伝播時間及び超音波の伝播速度に基づき別のセンサ装置101aに対するセンサ装置101aの変位を算出する変位算出手段として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中の土の変位を測定する地中変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや地下空間の掘削、地盤の掘削、又は、斜面の形成のための切土若しくは盛土等を行う際、掘削した地山又は盛土の崩壊を防ぐために、地山又は盛土の変位が測定・監視される。
例えば、特許文献1には、トンネルの掘削方向である切羽前方の地山の変位を測定するための測定装置が記載されている。
【0003】
特許文献1の測定装置は、変位記録計と変位ロッドとから構成され、切羽前方に削孔された測定用のボアホール内に挿入される。
変位記録計は、これに接続される変位ロッドの変位を検出し、検出した変位データを記録するもので、ボアホールの最深部に設置・固定される。変位ロッドは、その一端である前端が変位記録計に固定され、他端である後端が測定点アンカーによって変位記録計より切羽側の所定の測定点でボアホール内に固定される。また、測定点が複数ある場合、各測定点に対して変位ロッドがそれぞれ設けられ、各変位ロッドの後端は対応する測定点においてボアホールに固定される。
【0004】
そして、切羽前方の地山が変位したとき変位ロッドが伸縮するため、変位記録計は、各ロッドの測定点と変位記録計との間の距離の変動を測定することによって、各測定点での地山の変位量を検出し記録する。さらに、変位記録計が検出し記録した地山の変位量は、変位記録計から切羽側に引き出された信号ケーブルをモニター等に接続することによって確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−316117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の測定装置では、ボアホールが深くなり測定点と変位記録計との距離が長くなるつまり変位ロッドが長くなると、自重により変位ロッドに撓みが生じるため、地山の変位量が変位ロッドの伸縮量として正確に反映されず、正確な変位量を検出することができないことがある。また、ボアホールが深くなり測定点が多くなると変位ロッドの数量が増加するため、測定装置が大型化してボアホール径も大きくなり、それによって、ボアホールの削孔コストが上昇し、さらに、ボアホールの崩壊の危険性も高まる。このため、特許文献1の測定装置では、深度が大きいボアホールでの地山の変位測定には適しておらず、地山の変位の測定範囲が制限されるという問題がある。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、測定範囲の制限を受けることなく地中の土の変位を測定することを可能にする地中変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明に係る地中変位測定装置は、ボアホール内に互いに間隔をあけて設置される複数のセンサ装置を備え、センサ装置が、進行波を発信する進行波発信手段と、進行波を検知する進行波受信手段と、センサ装置及び別のセンサ装置の間で進行波を発信してから進行波を検知するまでの伝播時間を検出する伝播時間検出手段と、伝播時間検出手段によって検出された伝播時間及び進行波の伝播速度に基づき別のセンサ装置に対するセンサ装置の変位を算出する変位算出手段とを有する。
【0009】
センサ装置は、センサ装置の傾斜量を検出する傾斜量検出手段を有し、センサ装置の変位算出手段は、伝播時間検出手段によって検出された伝播時間及び進行波の伝播速度から算出するセンサ装置及び別のセンサ装置の間の距離と、傾斜量検出手段によって検出されたセンサ装置の傾斜量とに基づき別のセンサ装置に対するセンサ装置の変位を算出してもよい。
【0010】
進行波は、超音波であり、センサ装置の伝播時間検出手段は、別のセンサ装置の進行波発信手段から超音波が発信されてからセンサ装置の進行波受信手段が上記超音波を検知するまでの伝播時間を検出してもよい。
さらに、センサ装置は、時計と、別のセンサ装置との間で情報を送信及び受信可能な通信手段とを有し、センサ装置は、通信手段を介して時計の時刻と別のセンサ装置における時計の時刻とを時刻同期させて、進行波発信手段から超音波を発信させてもよい。
一方、進行波は、光波であり、センサ装置は、光波を反射可能な反射部を有し、センサ装置の伝播時間検出手段は、センサ装置の進行波発信手段から光波が発信されてから、発信された光波が別のセンサ装置の反射部に反射した後、センサ装置の進行波受信手段が上記光波を検知するまでの伝播時間を検出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る地中変位測定装置によれば、測定範囲の制限を受けることなく地中の土の変位を測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る地中変位測定装置のボアホール内での全体配置図である。
【図2】図1のセンサ装置の構成を示す模式断面図である。
【図3】実施の形態1に係る地中変位測定装置が地中の土の変位を測定する流れを示すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る地中変位測定装置が地中の土の変位を測定する流れを示すフロー図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る地中変位測定装置におけるセンサ装置の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、図1及び2を用いて、この発明の実施の形態1に係る地中変位測定装置101の構成を説明する。なお、以下の実施の形態では、トンネルの切羽の前方すなわち掘削方向の地山の変位を測定するために、地中変位測定装置を使用した場合の例について説明する。
【0014】
図1を参照すると、トンネル1の切羽2からその前方の地山には、トンネルの掘削方向に向かって直線状の細長いボアホール3が水平且つ平行に複数削孔される。さらに、各ボアホール3の内部には、地中変位測定装置101の複数のセンサ装置101aが順次挿入されてボアホール3の長手方向に一定の間隔dをあけて一列に配置される。
そして、本実施の形態1では、センサ装置101aは、1つのボアホール3に対して、ボアホール3の最深部3dから4つ設置されるものとする。そして、ボアホール3の複数のセンサ装置101aのうち、最深部3dに設置されたものをセンサ装置番号を4とする第四センサ装置101a4と呼ぶ。さらに、第四センサ装置101a4から切羽2に向かって順次設置されているセンサ装置101aをそれぞれ、センサ装置番号を3とする第三センサ装置101a3、センサ装置番号を2とする第二センサ装置101a2、及びセンサ装置番号を1とする第一センサ装置101a1と呼ぶ。
【0015】
また、図2を参照すると、ボアホール3に設置されているセンサ装置101aの詳細な構成が示されている。
センサ装置101aは、筒状の側部10aと側部10aの両端を閉じている端部10b及び10cとによって形成される筐体10を有している。
そして、センサ装置101aは、筐体10の端部10bを切羽2側とし、端部10cを最深部3d側として、ボアホール3に挿入されている。
【0016】
センサ装置101aは、筐体10の内部における端部10c側に進行波である超音波を発生する超音波発信器11を有し、超音波発信器11における超音波を発信するための超音波発信部11aを端部10cから外部に突出させている。そして、超音波発信器11は、筐体10の内部に設けられた制御装置20と電気的に接続され、制御装置20の制御によって超音波を発生する。
【0017】
また、センサ装置101aは、筐体10の内部における端部10b側に超音波を検知して受信する超音波受信器12を有し、超音波受信器12における超音波を検知・受信するための超音波受信部12aを端部10bから外部に突出させている。そして、超音波受信器12は、制御装置20と電気的に接続され、超音波の受信の有無を示す信号を制御装置20に送る。
ここで、超音波発信器11は進行波発信手段を構成し、超音波受信器12は進行波受信手段を構成している。
【0018】
また、センサ装置101aは、筐体10の内部に通信手段である無線機13を有し、無線機13における電波を送受信するためのアンテナ13aを筐体10の端部10bから外部に突出させている。そして、無線機13は、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20の制御によって情報を送信し、また受信した情報を制御装置20に送る。
【0019】
また、センサ装置101aは、筐体10の内部に二軸傾斜センサ14を有している。二軸傾斜センサ14は、端部10bから端部10cに向かう水平方向の軸(X軸とする)と、紙面上で手前方向から奥行き方向に向かうX軸に垂直な水平方向の軸(Y軸とする)とに対して、筐体10の側部10aの中心軸10CLの傾斜角を検出するものである。二軸傾斜センサ14は、制御装置20と電気的に接続され、検出した傾斜角度情報を制御装置20に送る。
ここで、二軸傾斜センサ14は、傾斜量検出手段を構成している。
【0020】
また、センサ装置101aは、筐体10の内部に、筐体10の外部の温度を測定するための温度センサ15、時刻を測定するための時計16、及び各種情報を記憶するためのデータ収録器17を有し、温度センサ15、時計16及びデータ収録器17はいずれも制御装置20と電気的に接続されている。そして、温度センサ15は測定した温度情報を制御装置20に送り、時計16は時刻情報を制御装置20に送る。また、制御装置20は、取得した情報をデータ収録器17に送信してデータとして記憶させると共に、データ収録器17に記憶されているデータを取り出すことができる。
【0021】
また、センサ装置101aは、筐体10の内部に制御装置20に電力を供給するための電源として電池18を有している。そして、制御装置20は、電池18から供給される電力を、超音波発信器11、超音波受信器12、無線機13、二軸傾斜センサ14、温度センサ15、時計16及びデータ収録器17に対してこれらを動作させるために供給する。さらに、センサ装置101aの制御装置20は、電池18の電圧を測定しており、測定した電圧値をデータ収録器17に記憶させる。
【0022】
図1に戻り、センサ装置101aは、トンネル1の内部又は外部において地中変位測定装置101と離れて設置されたワークステーション等の管理装置100と、付属の無線機13(図2参照)を介して無線通信することができる。そして、地山の変位の監視を担当する監視者は、管理装置100を使用することによって、センサ装置101aの制御装置20(図2参照)を制御し、センサ装置101aを動作させることができる。
【0023】
次に、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る地中変位測定装置101の動作を説明する。
図1を参照すると、地山の変位の監視を担当する監視者は、管理装置100を操作して、地中変位測定装置101の各センサ装置101aを起動させる。
【0024】
このとき、管理装置100からは、センサ装置101aのうちの第一センサ装置101a1に対して起動指令が無線を介して送信され、第一センサ装置101a1が無線機13(図2参照)を介して起動指令を受信して起動する。次に、第一センサ装置101a1は、無線機13を介して第二センサ装置101a2に起動指令を送信して起動させ、さらに、起動した第二センサ装置101a2が第三センサ装置101a3を、そして、第三センサ装置101a3が第四センサ装置101a4を順次起動させる。
【0025】
さらに、監視者は、変位測定を実施するために管理装置100を操作して、第一センサ装置101a1に対して地山の変位の測定を実施させる指令を、無線を介して送信する。この指令は、変位測定を実施する度に送信されて変位測定を一回実施させる内容のものであってもよく、一回の送信で所定の時間毎に変位測定を実施させる内容のもの、又は、一回の送信で連続的に変位測定を実施させる内容のものであってもよい。
【0026】
そして、地山の変位の測定を実施する際、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4は、図3に示すフローチャートに従って動作する。
図3を参照すると、ステップS1では、管理装置100(図1参照)から地山の変位の測定を実施する指令が送信され、第一センサ装置101a1(図1参照)の制御装置20(図2参照)は、無線機13(図2参照)を介して指令を受信する。
なお、以下のステップS2〜ステップS9については、センサ装置番号Nを初期値の1とする第一センサ装置101a1とセンサ装置番号N+1を2とする第二センサ装置101a2との動作に関して説明する。
【0027】
ステップS1から進むステップS2において、センサ装置番号N(N=1)の第一センサ装置101a1の制御装置20は、センサ装置番号N+1(N+1=2)の第二センサ装置101a2(図1参照)に対して、変位の測定の実施の指令を無線機13を介して送信する。このとき、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第一センサ装置101a1に対して、上記指令を受信したことを示す信号を第二センサ装置101a2の無線機13を介して送信する。
ステップS2から進むステップS3において、第一センサ装置101a1の制御装置20は、第二センサ装置101a2からの信号を受信した場合、ステップS4に進み、受信できない場合、ステップS10に進む。なお、第一センサ装置101a1では、制御装置20は、第二センサ装置101a2からの信号を受信できるため、ステップS4に進む。
【0028】
ステップS4において、第一センサ装置101a1の制御装置20は、第二センサ装置101a2に対して、変位の測定を実施するにあたり互いの時計16(図2参照)の時刻を合わせるために、つまり時刻同期させるために、第一センサ装置101a1の時計16が示す現時刻T0の情報を含む時刻同期信号を、無線機13を介して送信する。
【0029】
次に、ステップS4から進むステップS5において、第二センサ装置101a2の制御装置20は、無線機13を介して受信した時刻同期信号に含まれる現時刻T0に合わせて第二センサ装置101a2の時計16を設定し、この時計16と第一センサ装置101a1の時計16とを時刻同期させる。
【0030】
さらに、ステップS5から進むステップS6において、第一センサ装置101a1の制御装置20は、時刻同期信号の送信時である送信した現時刻T0から所定の時間t1経過後に、第二センサ装置101a2の超音波受信器12(図2参照)に向けられている超音波発信器11(図2参照)を使用して、超音波を発信する。そして、発信された超音波は、反射等の作用を受けることなく、第二センサ装置101a2の超音波受信器12まで直接到達することができるため、減衰することなく第二センサ装置101a2の超音波受信器12に受信される。
【0031】
ステップS6から進むステップS7において、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第一センサ装置101a1からの超音波を受信すると、受信した時点の時刻T1を第二センサ装置101a2の時計16から取得する。さらに、第二センサ装置101a2の制御装置20は、超音波の発信時刻を同期時刻を基準として算出する、つまり第一センサ装置101a1との時刻同期により設定した現時刻T0からの所定の時間t1経過後の時刻T0+t1を超音波の発信時刻として算出する。また、第二センサ装置101a2の温度センサ15(図2参照)は、第一センサ装置101a1から第二センサ装置101a2に超音波が伝播するボアホール3の内部の温度を測定しており、この温度センサ15による温度の測定値を第二センサ装置101a2の制御装置20は取得する。
【0032】
そして、第二センサ装置101a2の制御装置20は、予め記憶している超音波の伝播速度を取得した温度の測定値で補正して補正伝播速度を算出し、また、同期時刻を基準とする超音波の発信時刻T0+t1及び超音波の受信時刻T1より、第一センサ装置101a1から第二センサ装置101a2へ超音波が到達するまでに要した超音波伝播時間を算出する。さらに、第二センサ装置101a2の制御装置20は、算出した超音波の補正伝播速度と算出した超音波伝播時間とから、第二センサ装置101a2と第一センサ装置101a1との間の距離d1を算出する。これによって、第二センサ装置101a2と第一センサ装置101a1との間について、当初の距離dに対する距離d1の変化量つまり伸縮変位が算出される。
【0033】
また、第二センサ装置101a2の制御装置20は、上述のようにして取得した各情報及び算出した各数量を第二センサ装置101a2のデータ収録器17(図2参照)にデータとして記憶させる。そして、第二センサ装置101a2の制御装置20は、ステップS8に進む。
ここで、制御装置20は、伝播時間検出手段及び変位算出手段を構成している。
【0034】
ステップS8では、第二センサ装置101a2の制御装置20は、二軸傾斜センサ14から、X軸及びY軸についての自身の中心軸10CLの傾斜角度情報を取得する(図2参照)。
さらに、第二センサ装置101a2の制御装置20は、取得した第二センサ装置101a2の傾斜角度情報と、ステップS7において算出した距離d1とから、第一センサ装置101a1に対する第二センサ装置101a2の相対沈下量を算出する。なお、相対沈下量は、第一センサ装置101a1より第二センサ装置101a2が低くなっている(沈下している)場合は正の値をとり、高くなっている(隆起している)場合は負の値をとる。さらに、第二センサ装置101a2の傾斜角度情報と、距離d1とから算出される相対沈下量は、第二センサ装置101a2の水平方向の変位を含んで三次元的な変位として算出することもできる。
また、第二センサ装置101a2の制御装置20は、上述のようにして取得した情報及び算出した数量のそれぞれを第二センサ装置101a2のデータ収録器17に記憶させる。そして、第二センサ装置101a2の制御装置20は、ステップS9に進む。
【0035】
ステップS9では、第二センサ装置101a2の制御装置20は、自身のセンサ装置番号をNとした第Nセンサ装置としてステップS2に進む。
ステップS2では、センサ装置番号N(N=2)の第二センサ装置101a2の制御装置20は、センサ装置番号N+1(N+1=3)の第三センサ装置101a3(図1参照)に対して、変位の測定の実施の指令を無線機13を介して送信する。このとき、第三センサ装置101a3の制御装置20は、第二センサ装置101a2に対して、上記指令を受信したことを示す信号を送信する。そして、ステップS2から進むステップS3では、第二センサ装置101a2の制御装置20は、ステップS4に進む。
【0036】
第二センサ装置101a2の制御装置20は、第三センサ装置101a3と共に、ステップS4〜ステップS9の処理を上述と同様にして繰り返す。そして、第三センサ装置101a3の制御装置20は、ステップS7では、第三センサ装置101a3と第二センサ装置101a2との間の距離及び伸縮変位を算出し、ステップS8では、第二センサ装置101a2に対する第三センサ装置101a3の相対沈下量を算出する。さらに、第三センサ装置101a3の制御装置20は、ステップS9では、自身のセンサ装置番号をNとした第Nセンサ装置としてステップS2に進む。
【0037】
ステップS9から進むステップS2では、センサ装置番号N(N=3)の第三センサ装置101a3の制御装置20は、センサ装置番号N+1(N+1=1)の第四センサ装置101a4(図1参照)に対して、変位の測定の実施の指令を無線機13を介して送信する。このとき、第四センサ装置101a4の制御装置20は、第三センサ装置101a3に対して、上記指令を受信したことを示す信号を送信する。そして、ステップS2から進むステップS3では、第三センサ装置101a3の制御装置20は、ステップS4に進む。
【0038】
第三センサ装置101a3の制御装置20は、第四センサ装置101a4と共に、ステップS4〜ステップS9の処理を上述と同様にして繰り返す。そして、第四センサ装置101a4の制御装置20は、ステップS7では、第四センサ装置101a4と第三センサ装置101a3との間の距離及び伸縮変位を算出し、ステップS8では、第三センサ装置101a3に対する第四センサ装置101a4の相対沈下量を算出する。さらに、第四センサ装置101a4の制御装置20は、ステップS9では、自身のセンサ装置番号をNとした第Nセンサ装置としてステップS2に進む。
【0039】
さらに、ステップS2では、センサ装置番号N(N=4)の第四センサ装置101a4の制御装置20は、変位の測定の実施の指令を無線機13を介して送信するが、ステップS2から進むステップS3において、指令を受信したことを示す信号を受信できないため、ステップS10に進む。
そして、ステップS10において、第四センサ装置101a4の制御装置20は、自身のセンサ装置番号N(N=4)がNの最小値Nmin(最小値Nmin=1)であるか否かを判定し、センサ装置番号Nが最小値Nminである場合にステップS14に進み、センサ装置番号Nが最小値Nminでない場合にステップS11に進む。なお、第四センサ装置101a4ではそのセンサ装置番号Nが最小値Nminでないため、制御装置20はステップS11に進む。
【0040】
ステップS10から進むステップS11において、第N(N=4)センサ装置である第四センサ装置101a4では、制御装置20は、データ収録器17に記憶している第四センサ装置101a4に関するデータを、無線機13を介して、第N−1(N−1=3)センサ装置である第三センサ装置101a3に送信する。このとき、二軸傾斜センサ14によって検出された第四センサ装置101a4の傾斜角度情報、第四センサ装置101a4及び第三センサ装置101a3間の距離情報、第四センサ装置101a4の相対沈下量情報、第四センサ装置101a4の温度センサ15によって測定された温度情報、第四センサ装置101a4の電池18の電圧情報等のデータが送信される。
【0041】
ステップS11から進むステップS12において、第三センサ装置101a3では、制御装置20は、無線機13を介して受信した第四センサ装置101a4からのデータを、第三センサ装置101a3のデータ収録器17に記憶させ、ステップS13に進む。
【0042】
ステップS13では、第三センサ装置101a3の制御装置20は、自身のセンサ装置番号をN(N=3)とした第Nセンサ装置として、ステップS10に進み、第N−1(N−1=2)センサ装置となる第二センサ装置101a2と共に、ステップS10〜ステップS13の処理を上述と同様にして繰り返す。
このとき、第三センサ装置101a3の制御装置20は、ステップS10ではセンサ装置番号Nが最小値NminでないためステップS11に進み、ステップS11では、データ収録器17に記憶されている第三センサ装置101a3及び第四センサ装置101a4に関するデータを第二センサ装置101a2に送信する。さらに、ステップS12では、第二センサ装置101a2の制御装置20が受信したデータをデータ収録器17に記憶させる。そして、ステップS13では、第二センサ装置101a2の制御装置20が自身のセンサ装置番号をN(N=2)とした第Nセンサ装置としてステップS10に進む。
【0043】
その後、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第N−1(N−1=1)センサ装置となる第一センサ装置101a1と共に、ステップS10〜ステップS13の処理を上述と同様にして繰り返す。
このとき、第二センサ装置101a2の制御装置20は、ステップS10ではセンサ装置番号Nが最小値NminでないためステップS11に進み、ステップS11では、データ収録器17に記憶されている第二センサ装置101a2〜第四センサ装置101a4に関するデータを第一センサ装置101a1に送信する。さらに、ステップS12では、第一センサ装置101a1の制御装置20が受信したデータをデータ収録器17に記憶させる。そして、ステップS13では、第一センサ装置101a1の制御装置20が自身のセンサ装置番号をN(N=1)とした第Nセンサ装置としてステップS10に進む。さらに、ステップS10において、第一センサ装置101a1の制御装置20は、センサ装置番号Nが最小値NminであるためステップS14に進む。
【0044】
ステップS14において、第一センサ装置101a1では、制御装置20は、データ収録器17に記憶されている第二センサ装置101a2〜第四センサ装置101a4に関する受信データと、第一センサ装置101a1で測定しデータ収録器17に記憶させていた第一センサ装置101a1に関するデータを、無線機13を介して管理装置100に送信する。
【0045】
ステップS14から進むステップS15において、管理装置100は、第一センサ装置101a1から受信したデータを結合させて演算する。すなわち、管理装置100は、各センサ装置101aの傾斜角度情報、センサ装置101a同士の間の距離情報、センサ装置101a同士の間の相対沈下量情報、各センサ装置101aでの温度情報等から、各センサ装置101aの絶対的な変位量を二次元的又は三次元的に算出する。そして、管理装置100は、各センサ装置101aの位置を測点として、各測点における地山の変位量を管理装置100に付属するモニター装置上に表及び図で表示し、また、第一センサ装置101a1から受信した各センサ装置101aにおける電池18の電圧値から、電池18の電気残量をモニター装置に表示することもできる。
【0046】
上述のステップS1〜ステップS15に示すように、地中変位測定装置101では、隣り合うセンサ装置101a同士の間で、超音波及び無線電波の送受信を行うように動作する。このため、センサ装置101aにおいて、超音波及び無線電波の誤受信を防ぐことができ、誤受信に起因する変位の測定結果の誤りを防ぐことが可能となる。
【0047】
また、上述の説明から、この発明に係る地中変位測定装置101は、ボアホール3内に互いに間隔をあけて設置される複数のセンサ装置101aを備える。センサ装置101aは、超音波を発信する超音波発信器11と、超音波を検知する超音波受信器12と、制御装置20とを有している。さらに、センサ装置101aの制御装置20は、センサ装置101a及び別のセンサ装置101aの間で超音波発信器11が超音波を発信してから超音波受信器12が超音波を検知するまでの伝播時間を検出する伝播時間検出手段として作用し、検出した超音波の伝播時間及び超音波の伝播速度に基づき別のセンサ装置101aに対するセンサ装置101aの変位を算出する変位算出手段として作用する。さらに、センサ装置101aの制御装置20は、伝播時間を検出する際、別のセンサ装置101aの超音波発信器11から超音波が発信されてからセンサ装置101aの超音波受信器12がその超音波を検知するまでの伝播時間を検出する。
【0048】
このとき、センサ装置101aは、間隔をあけて隣り合う別のセンサ装置101aから発信される超音波を直接検知するまでの超音波の伝播時間及び超音波の伝播速度に基づき別のセンサ装置101aとの距離を算出することによって、別のセンサ装置101aに対する伸縮変位を検出することができる。そして、センサ装置101aを複数設置することによって、センサ装置101a同士の距離を過度に長くせずに変位測定を行うことができるため、地中変位測定装置101は、深度の大きいボアホール3に適用することができる。さらに、センサ装置101aは、ボアホール3の軸方向について両側の端部10b及び10cに超音波発信器11又は超音波受信器12を備えればよい構造であるため、その径を小さいものとすることができ、そして、隣接するセンサ装置101a同士の間は、超音波が伝播すればよく、これらをつなぐケーブル及びロッドを必要とせず非接触である。よって、センサ装置101aは、ボアホール3の径を小径とすることができる。従って、地中変位測定装置101は、小径で深度が大きいボアホール3を使用した地山の変位測定を可能とするため、測定範囲の制限を受けることなく地中の土の変位を測定することを可能にする。
【0049】
また、地中変位測定装置101は、トンネル1の施工のように切羽2がボアホール3の最深部3dに向かって進行する場合、切羽2の進行に伴い切羽2近傍のセンサ装置101aが除去された場合でも、ボアホール3内に残存するセンサ装置101aのみによって、地山の変位測定を行うことができる。つまり、地中変位測定装置101は、トンネル1の施工の進捗と並行したリアルタイムな地山の変位測定を行うことができる。
【0050】
また、地中変位測定装置101において、センサ装置101aは、別のセンサ装置101aとの間で情報を送信及び受信可能な無線機13を有している。このとき、無線機13によってセンサ装置101a同士の間、並びに、センサ装置101aとボアホール3外部との間での情報の送受信が可能になる。よって、各センサ装置101aに関する情報を外部に取り出すことができるため、トンネル1の掘削作業と並行したリアルタイムな地山の変位測定が容易になる。
【0051】
また、地中変位測定装置101において、センサ装置101aは、時計16を有し、センサ装置101aは、無線機13を介して時計16の時刻と別のセンサ装置101aにおける時計16の時刻とを時刻同期させて、超音波発信器11から超音波を発信させる。このとき、隣り合うセンサ装置101a同士で時刻同期させた後、所定の時間経過後に超音波を発信させることによって、隣り合うセンサ装置101a同士間における超音波の伝播時間を正確に測定することができ、それにより、隣り合うセンサ装置101a同士間の距離を正確に算出することが可能になる。つまり、センサ装置101aの変位の算出精度が向上する。
【0052】
また、地中変位測定装置101において、センサ装置101aは、センサ装置101aの傾斜量を検出する二軸傾斜センサ14を有し、センサ装置101aの制御装置20は、検出された超音波の伝播時間及び超音波の伝播速度から算出するセンサ装置101a及び別のセンサ装置101aの間の距離と、二軸傾斜センサ14によって検出されたセンサ装置101aの傾斜量とに基づき別のセンサ装置101aに対するセンサ装置101aの変位を算出する。センサ装置101a同士の間における超音波の伝播時間及び超音波の伝播速度から算出されるセンサ装置101a同士の間の距離とセンサ装置101aの傾斜量とから、別のセンサ装置101aに対するセンサ装置101aの沈下量を算出することができる。よって、別のセンサ装置101aに対するセンサ装置101aの二次元的又は三次元的な変位を算出することが可能になる。
【0053】
また、地中変位測定装置101は、ボアホール3の外部に設けられ、且つセンサ装置101aから無線機13を介して情報を受け取り、センサ装置101aそれぞれに関する情報を結合する管理装置100を備える。ボアホール3の外部の管理装置100が各センサ装置101aに関する情報を結合することによって、センサ装置101aに情報を演算するための装置が不要となるため、センサ装置101aの小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0054】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る地中変位測定装置は、実施の形態1の地中変位測定装置101において、管理装置100から無線を介して発信される指令によって、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4がそれぞれ各測定値を計測し、計測値及び計測値から算出した算出値を管理装置100に常に送信していたものを、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4が自立的に、各測定値の計測及び算出値の算出を周期的に実施するようにしたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0055】
また、この発明の実施の形態2に係る地中変位測定装置の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。このため、実施の形態2に係る地中変位測定装置の動作について、以下に説明する。
実施の形態2に係る地中変位測定装置では、実施の形態1の地中変位測定装置101と同様にしてボアホール3に設置された第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4は、図4に示すフローチャートに従って動作し、地山の変位の測定を実施する。
【0056】
図1、2及び4をあわせて参照すると、ボアホール3に設置されたセンサ装置101aのうちトンネル1の切羽2に最も近い、つまりセンサ装置番号Nが最も小さい第一(N=1)センサ装置101a1が、自身が備える時計16の測定する時刻に基づき、所定の周期時間毎に地山の変位測定を開始する。すなわち、第一センサ装置101a1の制御装置20は、ステップS201において、所定の周期時間毎に、隣の第二センサ装置101a2に対して、変位の測定の実施の指令を無線機13を介して送信する。このとき、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第一センサ装置101a1に対して、上記指令を受信したことを示す信号を自身の無線機13を介して送信する。
なお、以下のステップS202〜ステップS209については、センサ装置番号Nを1とする第一センサ装置101a1とセンサ装置番号N+1を2とする第二センサ装置101a2との動作に関して説明する。
【0057】
ステップS201から進むステップS202において、センサ装置番号N(N=1)の第一センサ装置101a1の制御装置20は、センサ装置番号N+1(N+1=2)の第二センサ装置101a2からの信号を受信した場合、ステップS203に進み、受信できない場合、ステップS210に進む。なお、第一センサ装置101a1の制御装置20は、第二センサ装置101a2からの信号を受信できるため、ステップS203に進む。
【0058】
ステップS203では、実施の形態1のステップS4と同様にして、第一センサ装置101a1の制御装置20は、第二センサ装置101a2に対して、互いの時計16を時刻同期させるために、第一センサ装置101a1の時計16が示す現時刻の情報を含む時刻同期信号を無線機13を介して送信する。
ステップS203から進むステップS204において、実施の形態1のステップS5と同様にして、第二センサ装置101a2の制御装置20は、受信した時刻同期信号に基づき、自身の時計16と第一センサ装置101a1の時計16とを時刻同期させる。
【0059】
ステップS204から進むステップS205において、実施の形態1のステップS6と同様にして、第一センサ装置101a1の制御装置20は、時刻同期信号を送信した時刻から所定の時間経過後に、第二センサ装置101a2の超音波受信器12に対して、超音波発信器11から超音波を発信する。
【0060】
ステップS205から進むステップS206において、実施の形態1のステップS7と同様にして、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第一センサ装置101a1からの超音波を受信した時刻と、同期時刻を基準とした超音波の発信時刻と、温度センサ15による温度で補正した超音波の補正伝播速度とから、第二センサ装置101a2と第一センサ装置101a1との間の距離及び伸縮変位を算出する。さらに、第二センサ装置101a2の制御装置20は、取得した各情報及び算出した各数量を自身のデータ収録器17に記憶させ、ステップS207に進む。
【0061】
ステップS207では、実施の形態1のステップS8と同様にして、第二センサ装置101a2の制御装置20は、二軸傾斜センサ14から取得するX軸及びY軸についての自身の傾斜角度情報と、ステップS206において算出した距離とから、第一センサ装置101a1に対する第二センサ装置101a2の相対沈下量を算出して、自身のデータ収録器17に記憶させ、ステップS208に進む。
【0062】
ステップS208では、第二センサ装置101a2の制御装置20は、自身のセンサ装置番号をN(N=2)とした第Nセンサ装置としてステップS209に進み、ステップS209では、第二センサ装置101a2の制御装置20は、隣のセンサ装置番号がN+1(N+1=3)である第三センサ装置101a3に対して、変位の測定の実施の指令を無線機13を介して送信する。このとき、第三センサ装置101a3の制御装置20は、第二センサ装置101a2に対して、上記指令を受信したことを示す信号を自身の無線機13を介して送信する。
【0063】
ステップS209から進むステップS202において、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第三センサ装置101a3からの信号を受信してステップS203に進み、さらに、ステップS203〜ステップS208の処理を、第三センサ装置101a3と共に、上述と同様にして繰り返す。そして、ステップS209において、センサ装置番号N(N=3)の第三センサ装置101a3の制御装置20は、隣のセンサ装置番号がN+1(N+1=4)である第四センサ装置101a4に対して、変位の測定の実施の指令を送信し、さらに、ステップS202において、第四センサ装置101a4からの信号を受信してステップS203に進み、ステップS203〜ステップS208の処理を、第四センサ装置101a4と共に、上述と同様にして繰り返す。さらにまた、ステップS209において、センサ装置番号N(N=4)の第四センサ装置101a4の制御装置20は、変位の測定の実施の指令を送信するが、ステップS202において、指令を受信したことを示す信号を受信できないため、ステップS210に進む。
【0064】
ステップS210において、第四センサ装置101a4の制御装置20は、センサ装置番号N(N=4)がNの最小値Nmin(最小値Nmin=1)でないことを判定し、ステップS211に進む。
ステップS211において、実施の形態1のステップS11と同様にして、第四センサ装置101a4の制御装置20は、データ収録器17に記憶している第四センサ装置101a4に関するデータを、無線機13を介して第N−1(N−1=3)センサ装置である第三センサ装置101a3に送信する。
ステップS211から進むステップS212において、実施の形態1のステップS12と同様にして、第三センサ装置101a3の制御装置20は、受信した第四センサ装置101a4からのデータを、自身のデータ収録器17に記憶させ、ステップS213に進む。
【0065】
ステップS213において、実施の形態1のステップS13と同様にして、第三センサ装置101a3の制御装置20は、自身を第N(N=3)センサ装置として、ステップS210に進み、第N−1(N−1=2)センサ装置となる第二センサ装置101a2と共に、ステップS210〜ステップS213の処理を上述と同様にして繰り返す。このとき、ステップS211では、第三センサ装置101a3の制御装置20は、第三センサ装置101a3及び第四センサ装置101a4に関するデータを第二センサ装置101a2に送信し、ステップS212では、第二センサ装置101a2の制御装置20が受信したデータを自身のデータ収録器17に記憶させる。
【0066】
さらに、ステップS213において、第二センサ装置101a2の制御装置20は、自身を第N(N=2)センサ装置として、ステップS210に進み、第N−1(N−1=1)センサ装置となる第一センサ装置101a1と共に、ステップS210〜ステップS213の処理を上述と同様にして繰り返す。このとき、ステップS211では、第二センサ装置101a2の制御装置20は、第二センサ装置101a2〜第四センサ装置101a4に関するデータを第一センサ装置101a1に送信し、ステップS212では、第一センサ装置101a1の制御装置20が受信したデータを自身のデータ収録器17に記憶させる。
【0067】
さらにまた、ステップS213において、第一センサ装置101a1の制御装置20は、自身を第N(N=1)センサ装置として、ステップS210に進み、ステップS210では、自身のセンサ装置番号Nが最小値Nminであると判定し、ステップS214に進む。
そして、ステップS214において、第一センサ装置101a1の制御装置20は、管理装置100からデータ送信の要求がなされているか否かを判定し、データ送信の要求がなされている場合、ステップS215に進み、データ送信の要求がなされていない場合、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4に関する情報をそのデータ収録器17に記憶させた状態で、地山の変位測定に関する一連の処理を一旦終了する。そして、所定の周期時間経過後、第一センサ装置101a1の制御装置20は、ステップS201の処理を再び開始する。
【0068】
また、ステップS214から進むステップS215では、第一センサ装置101a1の制御装置20は、そのデータ収録器17に記憶させた第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4に関する情報を、無線機13を介して管理装置100に送信し、地山の変位測定に関する一連の処理を一旦終了する。
なお、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4に記憶されたデータは、トンネルの掘削の進捗に伴ってボアホール3から順次撤去されたセンサ装置から取得してもよい。
また、この発明の実施の形態2に係る地中変位測定装置のその他の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
上述で説明するように、実施の形態2における地中変位測定装置によれば、上記実施の形態1の地中変位測定装置101と同様な効果が得られる。
また、実施の形態2における地中変位測定装置によれば、管理装置100を第一センサ装置101a1と無線通信可能な領域に配置する必要がない、つまり管理装置100をトンネル1内の掘削現場に常時設置しておく必要がなく、地山の変位測定に関する情報が必要な場合に、第一センサ装置101a1と無線通信可能な位置に管理装置100を運ぶ、又は、管理装置100と無線通信可能な位置に第一センサ装置101a1を運べばよい。そして、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4がそれぞれ、自身より最深部3d側のボアホール3の変位に関する情報の収集及び管理を自立的に行うことができる。
【0070】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る地中変位測定装置301は、実施の形態1の地中変位測定装置101において、各センサ装置101a間の距離を測定するために超音波を使用していたものを、光波を使用するようにしたものである。
【0071】
図5を参照すると、地中変位測定装置301のセンサ装置301aは、実施の形態1の地中変位測定装置101のセンサ装置101aと同様にして、筐体10の内部に、無線機13、二軸傾斜センサ14、時計16、データ収録器17、電池18及び制御装置20を有しており、超音波発信器11、超音波受信器12及び温度センサ15を有していない。
さらに、センサ装置301aは、筐体10の内部における端部10b側にレーザー光等の光波を発信し且つ光波を検知する光学式距離計311を有し、光学式距離計311における光波を発信及び検知するため光波受発信部311aを端部10bから外部に突出させている。
また、センサ装置301aは、筐体10の端部10cの外側に光波を反射するミラーからなる光波反射部312を有している。光波反射部312は、ボアホール3の最深部3d側の表面312aで光波を反射することができる。
【0072】
そして、センサ装置301aの光学式距離計311は、光波受発信部311aから発信された光波が隣のセンサ装置301aの光波反射部312で反射して戻り、反射した光波が光波受発信部311aで再び検知されるまでの伝播時間と、光波の伝播速度とから、センサ装置301aと隣のセンサ装置301aとの間の距離を算出する。このため、センサ装置301aは、実施の形態1のセンサ装置101aのように隣のセンサ装置301aとの間で時計の時刻同期を行うことなく、距離の算出を行うことができる。つまり、光学式距離計311は、進行波発信手段、進行波受信手段、及び伝播時間検出手段を構成している。そして、制御装置20は、光学式距離計311によって算出されたセンサ装置301a及び隣のセンサ装置101aの間の距離と、二軸傾斜センサ14によって検出されたセンサ装置101aの傾斜角度情報とから、センサ装置101aの変位を算出する。
【0073】
また、この発明の実施の形態3に係る地中変位測定装置301のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
上述で説明するように、実施の形態3における地中変位測定装置301によれば、上記実施の形態1の地中変位測定装置101と同様な効果が得られる。
【0074】
また、実施の形態1〜3において、地中変位測定装置は、各センサ装置101a,301a同士の間における距離の伸縮量及び沈下量から、各センサ装置101a,301aの変位を算出していたが、これに限定されるものでない。地中変位測定装置は、各センサ装置101a,301a同士の間における距離の伸縮量又は沈下量のいずれかを、センサ装置101a,301aの変位とするものであってもよい。
また、実施の形態1〜3において、各センサ装置101a,301aが自身の変位を算出していたが、これに限定されるものでなく、測定データをすべて管理装置100に送信し、管理装置100が、各センサ装置101a,301aにおける変位を算出するようにしてもよい。
【0075】
また、実施の形態1〜3において、センサ装置101a,301aの傾斜を検出するために二軸傾斜センサ14を使用していたが、これに限定されるものでない。傾斜を検出するセンサは、一つの軸に対する傾斜角を検出する一軸傾斜センサ又は3つの軸に対する傾斜角を検出する三軸傾斜センサであってもよい。
また、実施の形態1〜3において、各センサ装置101a,301aには、筐体10の端部10bにのみ無線機13のアンテナ13aを設けていたが、これに限定されるものでなく、端部10bに対向する端部10cにもアンテナを設けてもよい。これによって、各センサ装置101a同士の無線通信の感度を向上させることが可能になる。
【0076】
また、実施の形態1〜3において、各センサ装置101a,301a同士は、無線通信を介してデータの送受信を行っていたが、これに限定されるものでなく、各制御装置20同士を接続する有線による通信を介して、データの送受信を行ってもよい。なお、データの送受信を有線通信とすることによって、妨害電波等の周辺環境の変化にかかわらず安定したデータの送受信が可能となると共に、センサ装置101a,301aのコストを低く抑えることが可能になる。なお、管理装置100とセンサ装置101a,301aとの間の通信も無線通信に限定されるものでなく、有線通信であってもよい。
また、実施の形態1及び2において、第一センサ装置101a1〜第四センサ装置101a4はそれぞれ、それ自身に関するデータと、自身よりセンサ装置番号Nが大きいボアホール3の最深部3d側のセンサ装置に関するデータとを記憶していたが、これに限定されるものでなく、全てのセンサ装置に関するデータを常に記憶するようにしてもよい。これにより、センサ装置が故障した場合でも記憶データの消失を防ぐことができる。また、上記構成は、実施形態3のセンサ装置301aでも同様である。
【0077】
また、実施の形態1〜3において、地中変位測定装置は、トンネル1の切羽2前方の地山変位の測定に使用されていたが、これに限定されるものでない。地中変位測定装置は、地下空間や地盤の掘削箇所の地山、斜面を切土した地山、又は盛土における地中の土の変位の測定に使用されてもよい。また、地中変位測定装置は、水平なボアホール3に設置されていたがこれに限定されるものでなく、鉛直又は斜め方向のボアホールに設置されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
3 ボアホール、11 超音波発信器(進行波発信手段)、12 超音波受信器(進行波受信手段)、13 無線機(通信手段)、14 二軸傾斜センサ(傾斜量検出手段)、16 時計、20 制御装置(伝播時間検出手段、変位算出手段)、101,301 地中変位測定装置、101a,301a センサ装置、311 光学式距離計(進行波発信手段、進行波受信手段、伝播時間検出手段)、312 光波反射部(反射部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアホール内に互いに間隔をあけて設置される複数のセンサ装置を備え、
前記センサ装置が、
進行波を発信する進行波発信手段と、
進行波を検知する進行波受信手段と、
前記センサ装置及び別の前記センサ装置の間で進行波を発信してから前記進行波を検知するまでの伝播時間を検出する伝播時間検出手段と、
前記伝播時間検出手段によって検出された伝播時間及び進行波の伝播速度に基づき別の前記センサ装置に対する前記センサ装置の変位を算出する変位算出手段と
を有する地中変位測定装置。
【請求項2】
前記センサ装置は、前記センサ装置の傾斜量を検出する傾斜量検出手段を有し、
前記センサ装置の前記変位算出手段は、前記伝播時間検出手段によって検出された伝播時間及び前記進行波の伝播速度から算出する前記センサ装置及び別の前記センサ装置の間の距離と、前記傾斜量検出手段によって検出された前記センサ装置の傾斜量とに基づき別の前記センサ装置に対する前記センサ装置の変位を算出する請求項1に記載の地中変位測定装置。
【請求項3】
前記進行波は、超音波であり、
前記センサ装置の前記伝播時間検出手段は、別の前記センサ装置の前記進行波発信手段から超音波が発信されてから前記センサ装置の前記進行波受信手段が前記超音波を検知するまでの伝播時間を検出する請求項1または2に記載の地中変位測定装置。
【請求項4】
前記センサ装置は、時計と、別の前記センサ装置との間で情報を送信及び受信可能な通信手段とを有し、
前記センサ装置は、前記通信手段を介して前記時計の時刻と別の前記センサ装置における前記時計の時刻とを時刻同期させて、前記進行波発信手段から超音波を発信させる請求項3に記載の地中変位測定装置。
【請求項5】
前記進行波は、光波であり、
前記センサ装置は、光波を反射可能な反射部を有し、
前記センサ装置の前記伝播時間検出手段は、前記センサ装置の前記進行波発信手段から光波が発信されてから、発信された前記光波が別の前記センサ装置の前記反射部に反射した後、前記センサ装置の前記進行波受信手段が前記光波を検知するまでの伝播時間を検出する請求項1または2に記載の地中変位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96815(P2013−96815A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239300(P2011−239300)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(500519987)株式会社ジェイアール総研情報システム (14)
【出願人】(511264766)株式会社エス・ケー・ラボ (2)
【Fターム(参考)】