説明

地図変化検出装置、地図変化検出方法およびプログラム

【課題】ステレオ画像から得られる3次元データを用いて2次元地図上の家屋、建築物などの変化を検出する。
【解決手段】地図に記載される対象となる地物の変化を検出する変化検出装置100であって、複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオ処理部50と、ステレオ処理部50で抽出したデジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ計算部60と、地物高さ計算部60で抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、対象となる地物の変化を検出する滅失判定部80又は新築判定部90と、を備える。高所領域抽出部70は、地物高さデータのうち所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を抽出し、該高所領域と地図データとを比較して、対象となる地物の変化を検出してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上の家屋、建築物などの変化を検出する地図変化検出装置に関し、特にステレオ画像から得られるデジタル表層モデルデータを用いて2次元地図上の家屋、建築物などの変化を検出する地図変化検出装置、地図変化検出方法および地図変化検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図の変化を検出する方法として、航空写真上に地図を投影し、目視により地図上の建築物と航空写真上の建築物を1件ずつ比較することで、家屋の変化を検出する方法がある。しかし、この手法では、地図上の建築物の変化をすべて目視により調査するために多大なコストがかかり、また、人手による作業のために検出漏れが発生するという問題があった。
【0003】
地図の変化とは、建物の滅失または建物の新築を原因とする変化を指す。建物の滅失とは、建物がなくなり更地になることをいう。また、建物の新築とは、更地に新たな建物が追加されることをいう。
【0004】
このような事情から、例えば、特開2002−63580号公報(特許文献1)に記載されているように、航空写真や衛星画像などを用いた地図変化検出方法が提案されている。特許文献1には、航空写真や衛星画像によって同一地域を撮像した2種類以上の画像を利用し、地図上の家屋形状から作成した不定形窓と一致する建物を画像中から自動的に探し、不定形窓が存在しない場合は建物が消失していることを知らせるイメージマッチング方法が記載されている。
【0005】
その他、新旧の画像データ又はレーザデータから建物などの変化を判定する技術が、特許文献2、特許文献5、6に記載されている。また、特許文献3及び4には、地図と画像データを照合して、新規地物を検出するなどの変化を判定する技術が記載されている。
【0006】
なお、特許文献7には、ステレオ画像から3次元の数値データを求める方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−63580号公報
【特許文献2】特開2004−117245号公報
【特許文献3】特開2004−198530号公報
【特許文献4】特開2005−234603号公報
【特許文献5】特開2007−3244号公報
【特許文献6】特開2007−34808号公報
【特許文献7】特開平03−167678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の関連する技術においては、以下に述べるような問題点があった。
特許文献1を一例とする関連する技術においては、地図変化の検出漏れが発生する場合がある。その理由は、イメージマッチングの結果から建物の滅失を判定するので、類似形状の家屋が多数存在する場合にはイメージマッチングに失敗するため、本来の滅失家屋が検出されない場合があるからである。
【0009】
また、地図上に建物が存在することが前提であるため、地図上に存在しない建物が新しく作られているような、建物の新築を検出することができないという問題がある。そのため、地図の更新作業を行なう際には、新築である建物を目視により調査する必要があり、調査のために多大なコストがかかること、また、人手による作業のために検出漏れが発生するという問題は引き続き残っている。
【0010】
本発明の目的は、上記の問題を解消し、変化の検出にかかるコストを抑え、漏れの少ない検出を行なうために、地図上の建築物の変化を自動的に検出し、変化のある建築物の箇所のみを検出する地図変化検出装置、地図変化検出方法、および地図変化検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る地図変化検出装置は、地図に記載される対象となる地物の変化を検出する地図変化検出装置であって、複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、該所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオマッチング処理手段と、前記ステレオマッチング処理手段で抽出した前記デジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ抽出手段と、前記地物高さ抽出手段で抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出する変化検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記変化検出手段は、前記地物高さデータのうち所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を抽出し、該高所領域と前記地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする。
【0013】
前記変化検出手段は、前記地図データに対象となる地物が存在しない地点において、前記地物高さデータが正である場合、又は、前記地図データに対象となる地物が存在する地点において、前記地物高さデータが所定の値以下である場合に、前記対象となる地物の変化を検出するように構成してもよい。
【0014】
好ましくは、前記変化検出手段は、前記地図データに対象となる地物が存在しない領域において、前記高所領域の1つの部分集合が所定の密度を超え、かつ所定の面積を超える場合に、前記対象となる地物の変化を検出する。
【0015】
好ましくは、前記変化検出手段は、前記地図データの任意の地物内において、前記高所領域が所定の面積以下の場合に、該地物の変化を検出する。
【0016】
本発明の第2の観点に係る地図変化検出方法は、地図上の所定領域に含まれる対象となる地物の変化を検出する地図変化検出方法であって、複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、該所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオマッチング処理ステップと、前記ステレオマッチング処理ステップで抽出した前記デジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ抽出ステップと、前記地物高さ抽出ステップで抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出する変化検出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記変化検出ステップは、前記地物高さデータのうち所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を抽出し、該高所領域と前記地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする。
【0018】
前記変化検出ステップは、前記地図データに対象となる地物が存在しない地点において、前記地物高さデータが正である場合、又は、前記地図データに対象となる地物が存在する地点において、前記地物高さデータが所定の値以下である場合に、前記対象となる地物の変化を検出するよう構成してもよい。
【0019】
好ましくは、前記変化検出ステップは、前記地図データに対象となる地物が存在しない領域において、前記高所領域の1つの部分集合が所定の密度を超え、かつ所定の面積を超える場合に、前記対象となる地物の変化を検出する。
【0020】
好ましくは、前記変化検出ステップは、前記地図データの任意の地物内において、前記高所領域が所定の面積以下の場合に、該地物の変化を検出する。
【0021】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、コンピュータを、複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、該所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオマッチング処理手段と、前記ステレオマッチング処理手段で抽出した前記デジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ抽出手段と、前記地物高さ抽出手段で抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、地図に記載される対象となる地物の変化を検出する変化検出手段と、して機能させることを特徴とする
【0022】
地物とは地表面上に存在する建築物や樹木などの地物の総称である。デジタル表層モデルデータ(Digital Surface Model Data:以下、DSMデータという)とは、3次元の座標系により地表の凹凸を表現したものである。ステレオマッチング処理とは、異なる視点から撮影した複数の画像について、同一の点を撮像している各画像中の対応点を求め、その視差を用いて三角測量の原理によって対象までの奥行きや形状を求める処理のことである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の地図変化検出装置によれば、画像から得られるDSMデータから地図上の対象の変化を高速で自動的に検出するため、低コストで漏れの少ない変化検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。本実施例では、地図上の所定領域に含まれる対象の変化を、同地域を上空から撮影した複数の画像データから検出する。
【0025】
本実施例では、地図中の建物の変化の検出について説明する。図1は、本発明の実施例に係る変化検出装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
変化検出装置100は、航空画像データ入力部10と、メッシュデータ入力部20と、地図データ入力部30と、判定規則入力部40と、判定規則記憶部41と、ステレオ処理部50と、地物高さ計算部60と、高所領域抽出部70と、滅失判定部80と、新築判定部90と、変化検出プログラム110とを備える。
【0027】
航空画像データ入力部10は、画像データを入力する機能を有し、ステレオマッチング処理に使用する複数の航空画像データを入力する。航空画像とは、デジタル画像に変換された航空写真の画像である。
【0028】
図9は、航空画像データに変換される航空写真の一例を模式的に示す。図9に示される航空写真は、上空を飛行する航空機から連続撮影された、航空写真101Aと航空写真101Bから構成される。航空写真101Aと航空写真101Bとは、航空機の進行方向について60%オーバーラップして撮影されたものである。
【0029】
本実施例における航空画像は、航空写真101A、航空写真101Bを一例とする航空写真がデジタル変換されて生成された画像である。本発明に用いる画像は、航空画像に限定されるものではなく、デジタル化された衛星写真による画像や、一般的なデジタルカメラで撮影したデジタル画像や、一般的なアナログカメラで撮影したアナログ写真をスキャニングでデジタル化したデジタル画像などであってもよい。
【0030】
メッシュデータ入力部20は、所定の領域の地表面の標高を記録したメッシュデータを入力する機能を有し、変化検出を行う領域のメッシュデータを入力する。メッシュデータとは、地表面を格子状に区切ってそれぞれのマス目の標高値を表すデータである。
【0031】
後述するように、地物高さ計算部60においては、DSMデータとメッシュデータとの差から、地物高さデータを抽出する。したがって、メッシュデータは、DSMデータと同一の格子形状を含むことが望ましい。
【0032】
地図データ入力部30は、地図データを入力する機能を有し、変化検出を行う領域の地図データを入力する。地図データは地図上の家屋、道路、樹木、その他の位置、形、大きさなどの情報を保持しているデータである。
【0033】
図10は、地図データの一例を示す図である。図10に示される地図データは、建物201Aおよび街区201Bから成り、両者の頂点座標には経度と緯度の情報が付与されている。建物201Aおよび街区201Bには、両者の頂点の接続情報であるベクタ情報が含まれるが、頂点間の線分に関する情報は含まれていない。
【0034】
本実施例では、例えば図10に示す地図のデジタルデータを用いる。図10は本発明に用いる地図データの一例である。本発明に用いる地図データは、建物や街区の輪郭の各座標の経度緯度の情報を有するラスタ情報地図や、樹木、等高線、電線等を含む地図であってもよい。また、個々の建物201Aおよび街区201Bには、住所や築年数、面積等の情報が付与されていてもよい。
【0035】
判定規則入力部40は、判定規則を入力する機能を有し、変化検出を行う際の閾値を入力する。判定規則入力部40により入力した判定規則は、判定規則記憶部41に保存され、変化検出を行う際には判定規則を判定規則記憶部41より適時取得する。
【0036】
判定規則入力部40に入力する判定規則は、所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を取得する際の高所抽出閾値、判定種別、滅失判定を行う際の滅失判定閾値、新築判定を行う場合の新築判定閾値などを含む。
【0037】
ステレオ処理部50は、複数の航空画像データに対してステレオマッチング処理を行い、三角測量の原理によって、DSMデータを生成する。例えば、一組の航空写真101A、航空写真101B間では、対応する地物の位置が、所定の位置ずれ(視差)を生じているので、ステレオマッチング処理は、この位置ずれを計測することにより、地物の表層の高さを含む標高値を有する高さデータを求める。
【0038】
上記位置ずれの量は、通常2つの画像の中で、対応する付近の小領域の画像相関をとり、相関係数が最大となる位置から測定される。取得された画像全体にわたって画像相関の処理を行うことにより、一定間隔の格子形状ごとに標高値を面的に計測することでDSMデータが生成される。DSMデータは、ステレオマッチング処理で求めた上記標高値を有する高さデータを含む。したがって、DSMデータは、例えば、建物の最表層の高さデータを含む。
【0039】
なお、ステレオマッチング処理を行うための手法には、一般的な特徴量を求めて対応付けるものや、左右画像の相関を求めるものなど、様々なものが存在するが、本実施例におけるステレオマッチング処理に使用される手法に制限はない。例えば、特公平8−16930に記載のステレオマッチング処理を使用してもよい。
【0040】
地物高さ計算部60は、地物高さを計算する機能を有し、DSMデータとメッシュデータとの差から地物高さデータを計算する。地物高さデータとは、DSMデータとメッシュデータとの差分から得られる、地物のみの高さを含むデータである。よって、斜面に立つ地物の場合は、地物高さが傾いて得られる場合がある。
【0041】
高所領域抽出部70は、地物高さデータから所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を抽出する機能を有する。高所領域抽出部70は、判定規則記憶部41から入力した高所抽出閾値と、地図データ入力部30から入力した地図データとを用いて、高所領域とそれ以外を分ける抽出済み地物高さデータを生成する。抽出済み地物高さデータとは、ユーザが指定した閾値より低い箇所の高さを0とした地物高さのデータである。高所領域とは、抽出済み地物高さデータのうち、高さが0より大きい箇所の領域のことである。
【0042】
また、高所領域抽出部70は、判定規則記憶部41から取得した判定種別に基づき、地図上の建物内側高所領域の面積または建物外側高所領域の面積を抽出する。ここで、建物内側高所領域とは、高所領域のうち、地図上の建物の内側にのみ存在する高所領域のことである。建物外側高所領域とは、高所領域のうち、地図上の建物の外側にのみ存在する高所領域のことである。
【0043】
滅失判定部80は、地図上の建物が滅失であるかどうかの判定を行う機能を有し、建物内側高所領域の面積が、判定規則記憶部41から入力した面積以上かどうかを判定することで滅失の有無を判定する。
【0044】
新築判定部90は、領域中の建物外側高所領域が新築であるかどうかの判定を行う機能を有し、建物外側高所領域の面積が、判定規則記憶部41から入力した面積以上かどうかを判定することで新築の有無を判定する。
【0045】
変化検出プログラム110は、変化検出装置100の上記各構成要素の各機能について、回路部品に実装されてハードウェア的に実現し、または、コンピュータ処理装置上で実行されることにより、ソフトウェア的に実現することができる。
【0046】
図2は、本実施例に係る高所領域抽出部70の構成の一例を示すブロック図である。高所領域抽出部70は、高所抽出処理部71と、判定種別処理部72と、建物内側判定部73と、建物内側高所領域面積計算部74と、建物外側判定部75と、建物外側高所領域ラベリング部76と、建物外側高所領域面積計算部77とを備えている。
【0047】
高所抽出処理部71は、地物高さデータから閾値以上の高所領域を抽出する機能を有し、判定規則記憶部41から取得した高所抽出閾値よりも高い地物高さデータを抽出する。
【0048】
判定種別処理部72は、判定種別により処理の流れを分ける機能を有し、判定規則記憶部41から取得した判定種別により、抽出済みの地物高さデータを使用した処理の流れを滅失判定用と新築判定用に分ける。
【0049】
建物内側判定部73は、抽出済みの地物高さデータから建物内側の高所領域のみを抽出する機能を有し、画素単位で地物高さデータが建物内側かどうかを判定し、建物内側にある地物高さデータからなる建物内側高所領域を抽出する。ここで、画素とは、画像データ、DSMデータ、メッシュデータ、地物高さデータが有する色情報、経緯度および高さ情報、輝度値等の領域の最小単位である。
【0050】
建物内側高所領域面積計算部74は、建物内側高所領域の面積を計算する機能を有し、地図上の建物ごとに存在する建物内側高所領域について、それぞれの建物ごとに高所領域の面積を計算する。
【0051】
建物外側判定部75は、抽出済みの地物高さデータから建物外側の高所領域のみを抽出する機能を有し、画素単位で地物高さデータが建物外側かどうかを判定し、建物外側にある地物高さデータからなる建物外側高所領域を抽出する。
【0052】
建物外側高所領域ラベリング部76は、建物外側高所領域をラベリング処理する機能を有し、建物外側にある高所領域についてラベル付けを行なう。ラベリング処理とは、隣接している2つの画素が建物外側高所領域である際に、両画素間に同一のラベルを与える処理であり、近隣の抽出画素を一まとまりの領域として抽出する処理である。
【0053】
建物外側高所領域面積計算部77では、建物外側高所領域の面積を計算する機能を有し、ラベル付けされた建物外側の高所領域について、それぞれのラベルごとに高所領域の面積を計算する。
【0054】
図3は、本実施例に係る変化検出装置100の物理的な構成の一例を示すブロック図である。本発明に係る変化検出装置100は、一般的なコンピュータ装置と同様のハードウェア構成によって実現することができ、CPU(Central Processeing Unit)201、主記憶部202、提示部203、入力部204、インタフェース部205、補助記憶部206及びシステムバス207から構成される。主記憶部202、提示部203、入力部204、インタフェース部205及び補助記憶部206はいずれもシステムバス207を介してCPU201に接続されている。
【0055】
CPU201は、補助記憶部206に記憶されているプログラムに従って、上記の変化検出の処理を実行する。
【0056】
主記憶部202は、RAM(Random Access Memory)等のメインメモリであり、データの作業領域やデータの一時退避領域に用いられる。提示部203は、ディスプレイやプリンタ、スピーカ等を含み、変化検出装置100の処理結果を提示する。入力部204は、キーボードやマウス等から構成され、オペレータの指示を入力する。インタフェース部205は、周辺機器と接続してデータの送受信を行なう。
【0057】
補助記憶部206は、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリから構成され、前記の処理をCPU201に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、CPU201の指示に従って、このプログラムが記憶するデータをCPU201に供給し、CPU201から供給されたデータを記憶する。
【0058】
本発明による変化検出装置100は、上記の変化検出の機能を実現する回路を組み込んだLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア部品から構成される回路を実装して、電子回路として構成することができる。また、上記の各機能を行う変化検出プログラム110を、コンピュータ処理装置上のCPU201で実行することにより、ソフトウェア的に変化検出装置100を実現することができる。その場合、CPU201は、補助記憶部206に格納されている変化検出プログラム110を、主記憶部202にロードして実行し、各部の動作を制御して上記の各機能を行わせることによって、変化検出装置100をソフトウェア的に実現する。
【0059】
次に、図4〜図8Gのフローチャートを参照して本実施例に係る変化検出装置100の動作について説明する。なお、上述のように、変化検出装置100の動作は、変化検出プログラム110が、主記憶部202、提示部203、入力部204、インタフェース部205及び補助記憶部206を資源として用いて、CPU201の上で動作することによって行う。
【0060】
図4は、本発明の実施例に係る変化検出処理の動作の一例を示すフローチャートである。地物高さ計算部60は、ステレオ処理部50により作成されたDSMデータと、メッシュデータ入力部20により入力されたメッシュデータとを用いて地物高さデータを作成する(ステップS1)。地物高さ計算部60は、地物高さデータを高所領域抽出部70に渡す。高所領域抽出部70は、地図データ入力部30を介して地図上建物データを取得する(ステップS2)。地物高さデータを受け取った高所領域抽出部70は、所定の閾値以上の高さである高所領域を抽出する(ステップS3)。
【0061】
高所領域抽出部70と滅失判定部80及び新築判定部90は、高所領域、地図上建物データ及び所定の閾値を用いた方法で、変化の判定処理を行う(ステップS4)。高所領域抽出部70は、滅失判定と新築判定のそれぞれの場合に応じた高所領域の面積を計算する。そして、滅失判定部80または新築判定部90は、所定の閾値を用いた方法に従って変化の検出を行なう。
【0062】
高所領域抽出部70は、ステップS4において、判定規則記憶部41に予め保持されている高所抽出閾値および判定種別に従って、滅失判定と新築判定のそれぞれの場合に応じた高所領域の面積を計算する。また、高所領域抽出部70は、ステップS4において、判定規則記憶部41に予め保持されている滅失判定閾値および新築判定閾値に従って、滅失判定と新築判定のそれぞれの場合に応じた高所領域の面積を計算する。そして、それらの結果に基づいて、滅失判定部80は、建物の滅失判定を行い、また新築判定部90は、建物の新築判定を行う。
【0063】
図5は、図4のステップS1に示された、地物高さデータを取得する動作の一例を示すフローチャートである。
【0064】
まず、航空画像データ入力部10が、複数の航空画像データを入力する(ステップP1)。この際、入力する複数の航空画像データは、異なる撮影地点から撮影された航空画像データである。例えば、図9に示す航空写真101Aの画像データと、航空写真101Bの画像データとを入力する。なお、入力する航空画像データは、地図の変化を検出するために、地図を作成したデータを確定した後に撮影したものである。
【0065】
ステレオ処理部50は、航空画像データ入力部10から複数の航空画像を入力し、ステレオマッチング処理を行い、DSMデータを抽出する(ステップP2)。一方、メッシュデータ入力部20は、変化検出対象地域のメッシュデータを入力する(ステップP3)。
【0066】
地物高さ計算部60は、ステレオ処理部50にて抽出したDSMデータと、メッシュデータ入力部20にて入力したメッシュデータとを入力し、画素単位でDSMデータとメッシュデータとの差分を取り、地物高さデータの抽出を行なう(ステップP4)。
以上により、図4のステップS1に示された地物高さデータの取得を行なうことができる。
【0067】
図6は、図4のステップS2に示された、地図上の建物データを取得する動作の一例を示すフローチャートである。
【0068】
地図データ入力部30が、地図上の建物データを入力する(ステップQ1)。入力する地図データは、家屋や道路などの地物の情報が保持されているものである。地図データは、地図データ中の地物に経度緯度等の位置情報が付与されているか、地図が表している範囲と実世界の特定範囲とを対応付ける情報が付与されている必要がある。
【0069】
次に、地図データには道路や街区等の情報が含まれるため、地図データから建物データのみを抽出する(ステップQ2)。以上により、図4のステップS2に示された地図上建物データの取得を行なう。
【0070】
図4のステップS3に示された高所領域の抽出処理は、高所領域抽出部70の高所抽出処理部71(図2参照)の処理である。図7は高所抽出処理部71において、高所領域抽出処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【0071】
高所抽出処理部71は、判定規則記憶部41に予め保持されている高所抽出閾値を入力する(ステップR1)。そして、注目画素を指し示す初期値を設定する(ステップR2)。注目画素とは、現在処理を行なっている画素を指し、任意の画素を最初の注目画素として初期化する。
【0072】
次に、注目画素について、その画素の地物高さデータが高所抽出閾値以上かどうか判定する(ステップR3)。注目画素の地物高さデータが高所抽出閾値未満である場合は(ステップR3;NO)、その画素の地物高さの値を0とする(ステップR4)。また、注目画素の地物高さデータが高所抽出閾値以上である場合は(ステップR3;YES)、その画素の地物高さの値をそのままとする。
【0073】
次に、全ての画素に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップR5)。全ての画素に対して処理が行なわれていない場合は(ステップR5;NO)、注目画素を他の未処理の画素に移し(ステップR6)、ステップR3の処理を再び実行する。全ての画素に対して処理が行なわれている場合は(ステップR5;YES)、高所領域の抽出処理を終了する。
【0074】
以上により、地物高さデータから、ユーザが指定した閾値以上の高さの領域のみを保持する、抽出済み地物高さデータを生成することができる。
【0075】
次に、図4のフローチャートの判定処理(ステップS4)の動作を詳細に説明する。図8A〜図8Gは、ステップS4の判定処理の動作を各部の処理に分けて説明するフローチャートである。
【0076】
図8Aは、高所領域抽出部70において、判定種別処理の動作の一例を示すフローチャートである。判定種別処理部72(図2参照)は、判定規則記憶部41に予め保持されている判定種別を入力する(ステップA1)。そして、入力された判定種別が新築か滅失かを判定する(ステップA2)。
【0077】
入力された判定種別が滅失である場合は(ステップA2;NO)、この後の処理については滅失判定を行なうものとする(ステップA3)。入力された判定種別が新築である場合は(ステップA2;YES)、この後の処理については新築判定を行なうものとする(ステップA4)。
【0078】
以上により、ユーザが入力した判定種別により、滅失判定または新築判定の処理を分けることができる。
【0079】
図8Bは、高所領域抽出部70において、建物内側判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
建物内側判定部73(図2参照)は、抽出済み地物高さデータについて、高さが0より大きい画素を選択する(ステップB1)。すなわち、図7の処理において高所抽出閾値未満の高さを有する画素については、地物高さデータを0としたことから、ここで処理を行なう対象の画素は、高所抽出閾値以上の地物高さデータの画素である。
【0080】
建物内側判定部73は、抽出済み地物高さデータの全ての画素について、有効または無効のデータを保持するようにし、全て無効の状態で初期化を行なう(ステップB2)。また、図7のステップR2と同様に、注目画素を指し示す初期値を設定する(ステップB3)。
【0081】
次に、注目建物を指し示す初期値を設定する(ステップB4)。注目建物とは、現在処理を行なっている変化検出対象地域内の建物の事であり、任意の建物を最初の注目建物として初期化する。
【0082】
次に、注目画素が注目建物の内側かどうか判定を行なう(ステップB5)。記号⊂は、注目画素が注目建物の範囲に含まれることを表す。ここで、注目画素が注目建物の内側かどうかを判定する方法として、注目画素から注目建物の端点へのベクトルを用いる方法、注目画素を通る直線と注目建物の輪郭との交点数を数える方法等があるが、方法については限定しない。
【0083】
注目画素が注目建物の内側である場合は(ステップB5;YES)、その画素の抽出済み地物高さデータは有効とする(ステップB6)。注目画素が注目建物の外側である場合は(ステップB5;NO)、その画素の抽出済み地物高さデータは無効のままとする。
【0084】
次に、全ての建物に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップB7)。全ての建物に対して処理が行なわれていない場合は(ステップB7;NO)、注目建物を他の未処理の建物に移し(ステップB8)、ステップB5の処理を再び実行する。
【0085】
全ての建物に対して処理が行なわれている場合は(ステップB7;YES)、全ての画素に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップB9)。全ての画素に対して処理が行なわれていない場合は(ステップB9;NO)、注目画素を他の未処理の画素に移し(ステップB10)、ステップB4の処理を再び実行する。全ての画素に対して処理が行なわれている場合は(ステップB9;YES)、建物内側判定処理を終了する。
【0086】
以上により、抽出済み地物高さデータから、地図上の建物の内側にある高さの領域のみを抽出した、建物内側高所領域を取得することができる。
【0087】
図8Cは、高所領域抽出部70において、建物内側高所領域の面積を計算する動作の一例を示すフローチャートである。
建物内側高所領域面積計算部74(図2参照)は、注目建物を指し示す初期値を設定する(ステップC1)。注目建物中の画素について、注目画素を指し示す初期値を設定する(ステップC2)。注目建物中の高所領域について、変数“面積”を0として初期化し、注目建物中の変数“高さ総和”を0として初期化する(ステップC3)。
【0088】
次に、注目画素について、有効画素かどうか判定する(ステップC4)。注目画素が有効画素でないならば(ステップC4;NO)、何も処理を行なわない。注目画素が有効であるならば(ステップC4;YES)、変数“面積”に地上解像度の二乗すなわち1画素あたりの面積を加算する(ステップC5)。地上解像度とは、1画素あたりの実世界の距離のことである。また、変数“高さ総和”に有効画素の地物の高さを加算する(ステップC6)。ステップC6及びC7の記号+=は、左辺の変数の値に右辺の値を加算して、改めて左辺の変数に格納することを表す。
【0089】
建物内側高所領域面積計算部74は、注目建物中の全ての画素について処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップC7)。全ての画素について処理を行なっていない場合は(ステップC7;NO)、注目建物中の未処理の画素を注目画素とし(ステップC8)、ステップC4の処理を再び実行する。注目建物中の全ての画素について処理を行なったら(ステップC7;YES)、高さ総和の値を注目建物中の有効画素の数で除して、高さ平均値を取得する(ステップC9)。
【0090】
次に、図8BのステップB7と同様に、全ての建物に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップC10)。全ての建物に対して処理が行なわれていない場合は(ステップC10;NO)、注目建物を他の未処理の建物に移し(ステップC11)、ステップC2の処理を再び実行する。全ての建物に対して処理が行なわれている場合は(ステップC10;YES)、建物内側高所領域の面積計算処理を終了する。
【0091】
以上により、建物内側高所領域から、建物内側高所領域の面積を取得することができる。
【0092】
図8Dは、高所領域抽出部70において、建物外側判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
建物外側判定部75(図2参照)は、抽出済み地物高さデータについて、図8BのステップB1と同様に、高さが0より大きい画素を選択する(ステップD1)。そして、抽出済み地物高さデータの全ての画素について、有効または無効のデータを保持するようにし、全て有効の状態で初期化を行なう(ステップD2)。そして、注目画素を指し示す初期値を設定する(ステップD3)。また、図8BのステップB4と同様に、注目建物を指し示す初期値を設定する(ステップD4)。
【0093】
次に、図8BのステップB5と同様に、注目画素が注目建物の内側かどうか判定を行なう(ステップD5)。注目画素が注目建物の内側である場合は(ステップD5;YES)、その画素の抽出済み地物高さデータを無効とする(ステップD6)。注目画素が注目建物の外側である場合は(ステップD5;NO)、その画素の抽出済み地物高さデータを有効のままとする。
【0094】
次に、全ての建物に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップD7)。全ての建物に対して処理が行なわれていない場合は(ステップD7;NO)、注目建物を他の未処理の建物に移し(ステップD8)、ステップD5の処理を再び実行する。
【0095】
全ての建物に対して処理が行なわれている場合は(ステップD7;YES)、全ての画素に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップD9)。全ての画素に対して処理が行なわれていない場合は(ステップD9;NO)、注目画素を他の未処理の画素に移し(ステップD10)、ステップD4の処理を再び実行する。全ての画素に対して処理が行なわれている場合は(ステップD9;YES)、建物外側判定処理を終了する。
【0096】
以上により、抽出済み地物高さデータから、地図上の建物の外側にある高さの領域のみを抽出した、建物外側高所領域を取得することができる。また、高所領域抽出部70において、建物外側判定部75の次に建物外側高所領域ラベリング部76の処理を行ない、建物外側高所領域についてラベル付けを行なう。
【0097】
図8Eは、高所領域抽出部70において、建物外側高所領域の面積を計算する動作の一例を示すフローチャートである。
建物外側高所領域面積計算部77(図2参照)は、まず、注目ラベルを指し示す初期値を設定する(ステップE1)。注目ラベルとは、現在処理を行なっている変化検出対象地域内において抽出された建物外側高所領域のラベルであり、任意のラベルを最初の注目ラベルとして初期化する。
【0098】
次に、注目ラベル中の画素について、注目画素を指し示す初期値を設定する(ステップE2)。注目ラベル中の高所領域について、変数“面積”を0として初期化し、注目ラベル中の変数“高さ総和”を0として初期化する(ステップE3)。
【0099】
建物外側高所領域面積計算部77は、注目画素について、有効画素かどうか判定する(ステップE4)。注目画素が有効画素でないならば(ステップE4;NO)、何も処理を行なわない。注目画素が有効であるならば(ステップE4;YES)、図8CのステップC5と同様に、変数“面積”に地上解像度の二乗、すなわち1画素あたりの面積を加算する(ステップE5)。また、図8CのステップC6と同様に、変数“高さ総和”に有効画素の地物の高さを加算する(ステップE6)。
【0100】
次に、注目ラベル中の全ての画素について処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップE7)。全ての画素について処理を行なっていない場合は(ステップE7;NO)、注目ラベル中の未処理の画素を注目画素として(ステップE8)、ステップE4の処理を再び実行する。注目ラベル中の全ての画素について処理を行なった場合は(ステップE7;YES)、高さ総和の値を注目ラベル中の有効画素の数で除して、高さ平均値を取得する(ステップE9)。
【0101】
注目ラベルの画素の平均高さを算出したのちに、全てのラベルに対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップE10)。全てのラベルに対して処理が行なわれていない場合は(ステップE10;NO)、注目ラベルを他の未処理のラベルに移し(ステップE11)、ステップE2の処理を再び実行する。全てのラベルに対して処理が行なわれている場合は(ステップE10;YES)、建物外側高所領域の面積計算処理を終了する。
【0102】
以上により、建物外側高所領域から、建物外側高所領域の面積を取得することができる。
【0103】
図8Fは、図4のステップS4に示された判定処理のうち、滅失判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
滅失判定部80は、判定規則記憶部41に予め保持されている滅失判定閾値を入力する(ステップF1)。図8BのステップB4と同様に、注目建物を指し示す初期値を設定する(ステップF2)。そして、注目建物の高所領域の面積を、高所領域抽出部70において計算した値から入力する(ステップF3)。
【0104】
次に、注目建物の高所領域の面積が閾値以上かどうか判定を行なう(ステップF4)。ここで、判定に用いる閾値は面積でなくてもよい。閾値は、注目建物の面積に対する高所領域の面積の割合としてもよい。注目建物の高所領域の面積が閾値未満である場合は(ステップF4;NO)、その建物は滅失建物とする(ステップF5)。注目建物の高所領域の面積が閾値以上である場合は(ステップF4;YES)、その建物は変化無し建物とする(ステップF6)。
【0105】
滅失判定部80は、全ての建物に対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップF7)。全ての建物に対して処理が行なわれていない場合は(ステップF7;NO)、注目建物を他の未処理の建物に移し(ステップF8)、ステップF3の処理を再び実行する。全ての建物に対して処理が行なわれている場合は(ステップF7;YES)、滅失判定処理を終了する。
【0106】
以上により、建物内側高所領域の面積から、地図上の対象領域について、対象領域中の滅失建物の検出を行なうことができる。
【0107】
図8Gは、図4のステップS4に示された判定処理のうち、新築判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
新築判定部90は、判定規則記憶部41に予め保持されている新築判定閾値を入力する(ステップG1)。図8EのステップE1と同様に、注目ラベルを指し示す初期値を設定する(ステップG2)。そして、注目ラベルの高所領域の面積を、高所領域抽出部70において計算した値から入力する(ステップG3)。
【0108】
次に、注目ラベルの高所領域の面積が閾値以上かどうか判定を行なう(ステップG4)。ここで、判定に用いる閾値は面積でなくてもよい。閾値は、注目ラベルの面積に対する高所領域の面積の割合としてもよい。注目ラベルの高所領域の面積が閾値未満である場合は(ステップG4;NO)、そのラベルは無効とする(ステップG5)。注目ラベルの高所領域の面積が閾値以上である場合は(ステップG4;YES)、そのラベルは新築建物とする(ステップG6)。一般的には、一定の面積以上の注目ラベルについて、注目ラベルの面積に対する高所領域の面積の割合が所定の値以上の場合に新築建物とする。
【0109】
新築判定部90は、図8EのステップE10と同様に、全てのラベルに対して処理を行なったかどうか判定を行なう(ステップG7)。全てのラベルに対して処理が行なわれていない場合は(ステップG7;NO)、注目ラベルを他の未処理の建物に移し(ステップG8)、ステップG3の処理を再び実行する。全てのラベルに対して処理が行なわれている場合は(ステップG7;YES)、新築判定処理を終了する。
【0110】
以上により、建物外側高所領域の面積から、地図上の対象領域について、新築建物の検出を行なうことができる。
【0111】
以上説明した実施例によれば、以下の効果を達成する。
第1に、地物の高さから地図上の地物の滅失を検出することができる。その理由は、航空画像データに対してステレオマッチング処理および地物高さ計算処理により得られる地物高さデータと地図とを比較することにより、地物の高さと地図の情報とを高精度で対応付けることができるからである。
【0112】
第2に、地物の高さから新築を検出することができる。その理由は、航空画像データに対してステレオマッチング処理および地物高さ計算処理により得られる地物高さデータより高所領域を抽出することによって、地図上に存在しない地物の情報を検出することができるからである。
【0113】
第3に、人手作業による検出漏れを防ぐことができる。その理由は、検出作業を自動化することにより、人手による作業が不要となるからである。
【0114】
第4に、低コストで地図上の地物の変化を判定することができる。その理由は、検出作業を自動化することにより、人手よりも高速に検出作業を処理することが可能となるからである。
【0115】
(適用例)
次に説明する適用例は、本発明の実施例として示した変化検出装置を具体的に適用した一例である。適用例では、実施例と同様の基本構成および基本動作を採用する。以下、実施例との相違点について主に説明し、実施例と共通する構成および動作については説明を適宜省略する。
【0116】
図11〜図15を参照して、抽出済み地物高さデータを抽出するまでの過程について詳細に説明する。
図11は、実世界の地上の状態の一例を示す模式図である。図11は、実世界の一部の断面を示したものであり、起伏のある地形の上に地物が存在する。
【0117】
図12は、図11に示した実世界の一部を撮影した航空画像から、ステレオマッチング処理により生成したDSMデータを示す模式図である。DSMデータは、最表面の高さデータを表すため、屋根等で隠された地表面については、屋根の高さデータを含む。
【0118】
図13は、メッシュデータの一例を示す模式図である。メッシュデータは、高さデータのうち、地表面のみの高さ(標高)データを含む。
図14は、地物高さデータの一例を示す模式図である。図14に描かれている点線は、ユーザが指定した高所抽出閾値の高さを表す。
【0119】
図15は、抽出済み地物高さデータの一例を示す模式図である。抽出済み地物高さデータは、図14に描かれている高所抽出閾値未満の高さを0としたものである。よって、図14に描かれていた、低い建物や車両が除去されていることが分かる。
【0120】
図16〜図25を参照して、図4のフローチャートを適用した場合の処理結果について詳細に説明する。図16〜図21に描かれている数字は各画素における高さ、黒い太線で囲まれた箇所は地図上の建物の位置である。
【0121】
図16は、実際のDSMデータの一例を示す模式図である。図16の各点における高さは、ステレオ処理部50の処理により得られる結果であり、標高値に建物の高さを加えたものである。
【0122】
図17は、実際のメッシュデータの一例を示す模式図である。図17の各画素における高さは、メッシュデータ入力部20に入力された値であり、標高値である。
【0123】
図18は、実際の地物高さデータの一例を示す模式図である。図18の各画素における高さは、地物高さ計算部60の処理により得られる結果である。地物高さは、図16の値から図17の値を引いたものであり、実世界における地物の高さを表している。
【0124】
図19は、実際の抽出済み地物高さデータの一例を示す模式図である。図19の各画素における高さは、高所抽出処理部71の処理により得られる結果である。図19では、高所抽出閾値を2とし、図18の地物高さのうち、2未満の地物高さを0としたものである。図19の地物高さのうち、地物である黒い太線で囲まれた領域内で、抽出済み地物高さが0より大きい箇所が、建物内側高所領域である。
【0125】
抽出済み地物高さデータは、閾値以上の高さの画素のみを抽出するため、家屋輪郭と同じ形で抽出されない場合がある。例えば、屋上面の高さが一定でない家屋等の場合は、高さが低い箇所については抽出済み地物高さデータには含まれない。また、実際には建物が存在するが、建物の高さが閾値未満の場合も同様に、抽出済み地物高さデータには含まれない。
【0126】
図19の地物高さのうち、地物である黒い太線で囲まれた領域外で、抽出済み地物高さが0より大きい箇所が、建物外側高所領域である。
【0127】
図23は図19の検出結果の一例を示す模式図である。図23では、図10に示される地図データの上に、高所領域データ301を描いたものである。ステレオマッチング処理により得られるDSMデータには、停車中の車両等の高さが含まれるが、地図上の街区201Bを用いて、注目画素が街区201Bの内側にない場合は、地物高さデータを0とすることで、道路上の地物高さデータの抽出を行なわないものとしてもよい。
【0128】
図20は、実際の滅失検出結果の一例を示す模式図である。図20は滅失判定部80の処理により得られる結果である。図20では、破線で囲まれた領域が滅失建物を表す。図20の例では、滅失判定閾値として、建物内側高所領域の面積が建物の面積に占める割合が50%未満の建物を滅失として、それ以外の建物を変化無しとして検出している。
【0129】
具体的には、図20の左上にある滅失として検出された建物、および左下にある滅失として検出された建物は、建物内側高所領域の面積が0であるため、滅失として検出されている。また、図20の左上にある変化無しとして検出された建物には、高さが0である画素が存在するが、建物内側高所領域の面積が建物の面積に占める割合は93.75%であり、滅失判定閾値として設定した50%の条件よりも大きいため、変化無しとして検出されている。
【0130】
図24は、滅失建物の検出結果の一例を示す模式図である。図24では、図23に示される地図データと抽出済み地物高さデータのうち建物201Aについて、地図上滅失建物401Aを一点鎖線で、地図上変化無し建物401Bを実線で描いたものである。
【0131】
上記の通り、建物内側高所領域は必ずしも地図上の建物形状とは一致しないが、滅失判定閾値により、地図上の対象地域内の全ての建築物について、建物内側高所領域の面積の割合が閾値以上かどうか判定することで、精度の高い滅失判定を行なうことが可能となる。
【0132】
図21は、実際の新築検出結果の一例を示す模式図である。図21は新築判定部90の処理により得られる結果である。図21では、一点鎖線で囲まれた領域が新築建物であることを示す。図21の例では、新築判定閾値として、建物外側高所領域の面積が2画素以上の建物を新築として検出している。
【0133】
具体的には、図21の右側にある新築として検出された領域は、建物内側高所領域の面積が10であり、新築判定閾値として設定した2画素以上の条件よりも大きいため、新築として検出されている。
【0134】
図25は、新築建物の検出結果の一例を示す模式図である。図25では、図23に示される地図データと抽出済み地物高さデータの上に、地図上新築建物501を二点鎖線で描いたものである。新築判定閾値を用いることにより、樹木や車両等の領域が小さい建物外側高所領域を新築ではないと判定することで、精度の高い新築判定を行なうことが可能となる。
【0135】
図22は、実際の地図変化検出結果の一例を示す模式図である。図22は、変化検出装置100の出力結果であり、地図上の建物の通し番号、変化の種類、緯度および経度の情報が表されている。
【0136】
図22では、建物の位置情報として緯度および経度を使用しているが、例えば、位置を平面上に投影した平面直角座標系など、実世界との位置の紐付けが可能な表現方法であれば使用してもよい。また、図22では、検出結果を表にして出力しているが、変化の内容と実世界との位置の紐付けが可能な表現方法であればよく、出力方法を限定するものではない。
【0137】
本発明によると、以下の効果が達成される。
第1に、地物高さ抽出手段を備えていることにより、DSMデータと地図データとの比較が可能となり、建築物の高さを考慮した変化検出により、検出漏れの少ない滅失の判定を行なうことができる。
【0138】
第2に、ステレオマッチング処理により得られるDSMデータと地図データとの比較により、従来イメージマッチング等の方法で行なっていた検出方法では検出できなかった新築領域の検出ができる。
【0139】
第3に、ユーザがデータと判定規則を入力した後は自動的に地図変化検出結果を取得することができるため、目視での検出に比べて大幅なコストの削減を行なうことができる。
【0140】
第4に、地物の高さデータと地図との比較により、地物の箇所を正確に特定して検出を行なうことができるため、目視での検出で発生していた検出漏れを防ぐことができる。
【0141】
第5に、地図中の建築物ごとに高所領域の平均高さを計算することで、建築物の高さを推定することが可能となり、更新された地図を元に再び地図変化検出を行なった場合には、高さデータの比較により建築物の増改築の検出が可能となる。
【0142】
本発明は、地図変化の検出漏れが発生するという問題と、建物の新築を検出することができないという問題を解決し、コストを抑えて対象の変化を検出することができる。
【0143】
以上、好ましい実施例および適用例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも、上記実施例および適用例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。例えば、本実施例では地物の場合について説明したが、所定領域について描かれた地図に含まれる対象であれば、対象は地物に限定されない。
【0144】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更及び修正が可能である。
【0145】
CPU201、主記憶部202、提示部203、入力部204、インタフェース部205、補助記憶部206及びシステムバス207などから構成される変化検出装置100の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する変化検出装置100を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで変化検出装置100を構成してもよい。
【0146】
また、変化検出装置100の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0147】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施例に係る変化検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る変化検出装置の高所領域抽出部の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る変化検出装置の物理的な構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係る変化検出処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】地物高さデータを取得する動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】地図上の建物データを取得する動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】高所領域抽出処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8A】判定種別処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8B】建物内側判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8C】建物内側高所領域の面積を計算する動作の一例を示すフローチャートである。
【図8D】建物外側判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8E】建物外側高所領域の面積を計算する動作の一例を示すフローチャートである。
【図8F】滅失判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8G】新築判定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】入力に用いる航空写真の一例を示す模式図である。
【図10】入力に用いる地図データの一例を示す模式図である。
【図11】実世界の地上の状態の一例を示す模式図である。
【図12】DSMデータの一例を示す模式図である。
【図13】メッシュデータの一例を示す模式図である。
【図14】地物高さデータの一例を示す模式図である。
【図15】抽出済み地物高さデータの一例を示す模式図である。
【図16】適用例におけるDSMデータの一例を示す模式図である。
【図17】適用例におけるメッシュデータの一例を示す模式図である。
【図18】適用例における地物高さデータの一例を示す模式図である。
【図19】適用例における抽出済み地物高さデータの一例を示す模式図である。
【図20】適用例における滅失検出結果の一例を示す模式図である。
【図21】適用例における新築検出結果の一例を示す模式図である。
【図22】適用例における地図変化検出結果の一例を示す模式図である。
【図23】地物高さデータの一例を示す模式図である。
【図24】滅失判定結果の一例を示す模式図である。
【図25】新築判定結果の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0149】
10 航空画像データ入力部
20 メッシュデータ入力部
30 地図データ入力部
40 判定規則入力部
41 判定規則記憶部
50 ステレオ処理部
60 地物高さ計算部
70 高所領域抽出部
71 高所抽出処理部
72 判定種別処理部
73 建物内側判定部
74 建物内側高所領域面積計算部
75 建物外側判定部
76 建物外側高所領域ラベリング部
77 建物外側高所領域面積計算部
80 滅失判定部
90 新築判定部
100 変化検出装置
110 変化検出プログラム
201 CPU
202 主記憶部
203 提示部
204 入力部
205 インタフェース部
206 補助記憶部
207 システムバス
101A、101B 航空写真
201A 地図上建築物
201B 地図上街区
301 高所領域
401A 地図上滅失建物
401B 地図上変化無し建物
501 地図上新築建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図に記載される対象となる地物の変化を検出する地図変化検出装置であって、
複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、該所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオマッチング処理手段と、
前記ステレオマッチング処理手段で抽出した前記デジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ抽出手段と、
前記地物高さ抽出手段で抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出する変化検出手段と、
を備えることを特徴とする地図変化検出装置。
【請求項2】
前記変化検出手段は、前記地物高さデータのうち所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を抽出し、該高所領域と前記地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の地図変化検出装置。
【請求項3】
前記変化検出手段は、
前記地図データに対象となる地物が存在しない地点において、前記地物高さデータが正である場合、又は
前記地図データに対象となる地物が存在する地点において、前記地物高さデータが所定の値以下である場合に、
前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の地図変化検出装置。
【請求項4】
前記変化検出手段は、前記地図データに対象となる地物が存在しない領域において、前記高所領域の1つの部分集合が所定の密度を超え、かつ所定の面積を超える場合に、前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする請求項2に記載の地図変化検出装置。
【請求項5】
前記変化検出手段は、前記地図データの任意の地物内において、前記高所領域が所定の面積以下の場合に、該地物の変化を検出することを特徴とする請求項2に記載の地図変化検出装置。
【請求項6】
地図上の所定領域に含まれる対象となる地物の変化を検出する地図変化検出方法であって、
複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、該所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオマッチング処理ステップと、
前記ステレオマッチング処理ステップで抽出した前記デジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ抽出ステップと、
前記地物高さ抽出ステップで抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出する変化検出ステップと
を備えることを特徴とする地図変化検出方法。
【請求項7】
前記変化検出ステップは、前記地物高さデータのうち所定の値以上の高さを有する地点の集合である高所領域を抽出し、該高所領域と前記地図データとを比較して、前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする請求項4に記載の地図変化検出方法。
【請求項8】
前記変化検出ステップは、
前記地図データに対象となる地物が存在しない地点において、前記地物高さデータが正である場合、又は
前記地図データに対象となる地物が存在する地点において、前記地物高さデータが所定の値以下である場合に、
前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする請求項4又は5に記載の地図変化検出方法。
【請求項9】
前記変化検出ステップは、前記地図データに対象となる地物が存在しない領域において、前記高所領域の1つの部分集合が所定の密度を超え、かつ所定の面積を超える場合に、前記対象となる地物の変化を検出することを特徴とする請求項7に記載の地図変化検出方法。
【請求項10】
前記変化検出ステップは、前記地図データの任意の地物内において、前記高所領域が所定の面積以下の場合に、該地物の変化を検出することを特徴とする請求項7に記載の地図変化検出方法。
【請求項11】
コンピュータを、
複数の異なる位置から所定の領域を撮影した複数の画像を入力として、該所定の領域の表層を3次元座標で表したデジタル表層モデルデータを抽出するステレオマッチング処理手段と、
前記ステレオマッチング処理手段で抽出した前記デジタル表層モデルデータから、地表面の標高を差し引いた地物高さを抽出する地物高さ抽出手段と、
前記地物高さ抽出手段で抽出した地物高さデータと地図データとを比較して、地図に記載される対象となる地物の変化を検出する変化検出手段と、
して機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図8E】
image rotate

【図8F】
image rotate

【図8G】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2008−298631(P2008−298631A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145971(P2007−145971)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】