説明

地表伸縮計測装置

【課題】計測結果の確認時に不用意に計測線にさわることなく、不要な警報の発生を抑制することができ、また、どのような設置環境においても計測結果を確認することのできる地表伸縮計測装置を提供する。
【解決手段】杭の移動量をワイヤ22及び計測線7を介して計測部にて計測する。作業者は、ボタン4,5,6を操作して計測結果を液晶表示部3に表示し確認する。そして、作業者がそれらのグラフ或いは計測値データ等の計測結果を確認する場合には、ボタン4,5,6を操作して、液晶表示部3の表示方向を180°回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表伸縮計測装置に係り、特に表示構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斜面の地滑り災害の観測対応において、地表面の移動量を計測する地表伸縮計測装置が用いられている。地表伸縮計測装置は、例えば、特許文献1のように地すべりの可能性のある谷側斜面(移動側)に固定される杭等の固定具と対峙するようにして、非地滑り側である山側斜面(固定側)に固定される。また、地表伸縮計測装置と固定具との間に所定の張力をかけて計測線が張設される。そして、地表伸縮計測装置は、地すべり等により地表伸縮計測装置に付加される計測線の伸縮により地表面の移動量を計測し、側面に設けられた表示部に当該計測値である移動量を数値データ化或いはグラフ化した計測結果を表示する。更に地表伸縮計測装置は、計測値が予め設定された警報値を越えると地表伸縮計測装置に接続された警報装置から警報を発するように警報装置に警報装置制御信号を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−162308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の地表伸縮計測装置では、表示部は当該装置の側面に設けられている。そして、計測線は表示部と隣り合う側面に接続されている。
このようなことから、例えば、作業者が谷側斜面の地表面移動量の計測値を急な斜面に設置された地表伸縮計測装置の表示部にて確認するような場合に、地表伸縮計測装置の表示部が作業者が登坂する側と反対側の側面にあると、作業者が表示部を確認する際に表示部側に移動する必要がある。
【0005】
しかしながら、作業者の表示部側への移動時には、足場が悪いことにより転倒等により作業者が不用意に計測線に接触する虞があり、地表面の移動量の誤計測、ひいては誤計測による警報装置の誤作動を引き起こすことになる。また、地表伸縮計測装置は、地表面移動量を計測する環境によっては、切り立った岩盤や、壁面或いは樹木等の近くに設置されるため、計測結果の確認のため作業者が地表伸縮計測装置の表示部側に回り込めないことがある。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、計測結果の確認時に不用意に計測線にさわることなく、不要な警報の発生を抑制することができ、また、どのような設置環境においても計測結果を確認することのできる地表伸縮計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の地表伸縮計測装置では、一端が筐体の側壁を挿通し前記筐体外に延びる計測線と、前記筐体内に収納され、前記計測線の他端が接続され前記計測線の伸縮を計測する計測手段と、前記筐体の上面に配設され、前記計測手段の計測結果を表示する表示手段と、前記筐体の上面に配設され、前記表示手段の表示を切り換える表示方向切換手段とを備え、前記表示手段の表示を前記計測線の延伸方向に対して、左側方向視或いは右側方向視に表示を切り換えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の地表伸縮計測装置では、請求項1において、前記筐体の上面に配設され、一方で数値を増加させ、他方で数値を減少させる機能を有し数値を入力する一対の数値入力手段を備え、前記一対の数値入力手段は、前記表示方向切換手段により前記表示手段の表示方向が切り換えられると、前記一方と前記他方との機能を切り替えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の地表伸縮計測装置では、請求項2において、警報を発する警報信号を出力する警報出力手段を備え、前記一対の数値入力手段は、前記警報出力手段から警報信号の出力を開始する警報出力開始値を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、筐体上面に配設される表示方向切換手段にて、計測線の延伸方向に対して、左側方向視或いは右側方向視に表示手段の表示方向を切り換えられるようにしているので、作業者が表示方向切換手段を操作することにより任意に表示方向を変更することができる。例えば、作業者が表示手段の表示を確認するために足場の悪い斜面を登坂するような場合に、作業者が登坂してきた方向とは異なる方向に表示手段が表示され容易に確認することができなくても表示方向切換手段を操作して、作業者が地表伸縮計測装置の周囲を移動することなく表示を容易に確認できるような表示方向にすることができる。従って、作業者が移動することにより計測線及び計測線より被測定箇所に延びるワイヤ等と不用意に接触することを防止することができ、不要な警報を発することを抑制することができる。また、表示方向を切り換えることができるので、例えば、作業者が地表伸縮計測装置の表示手段側に回り込めない切り立った岩盤や、壁面或いは樹木等の近くのような環境に地表伸縮計測装置を設置しても、作業者が容易に計測結果を確認することができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、表示方向切換手段にて表示手段の表示方向を切り換えることに合わせ、一対の数値入力手段の一方と他方との機能を切り替えるようにしているので、作業者が表示手段の表示方向を切り換えても、表示方向に対する一対の数値入力手段の操作が変わらない。例えば、表示方向に対して上側となる数値入力手段の機能が、数値入力時に数値を増加させる機能であれば、表示方向が反転しても表示方向に対して上側となる数値入力手段は、数値を増加させる機能となり常に同一となるので容易に数値を入力することができる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、一対の数値入力手段によって警報出力開始値を設定するようにしているので、表示方向が切り換えられても容易に警報出力開始値を入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る地表伸縮計測装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る地表伸縮計測装置の上面視図である。
【図3】図2の矢視Aにおける側面図である。
【図4】本発明に係る地表伸縮計測装置の液晶表示部の表示の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る地表伸縮計測装置の設置の一実施例を示す斜視図である。
【図6】図5のB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まずは、本発明に係る地表伸縮計測装置の概略構成について説明する。
図1は、本発明に係る地表伸縮計測装置の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、地表伸縮計測装置の上面視図である。また、図3は、図2の矢視Aにおける側面図である。また、図4は、液晶表示部の表示の一例を示す図である。なお、図中太矢印は、計測線の作動方向を示す。
【0014】
図1、図2及び図3に示すように、地表伸縮計測装置1は、本体(筐体)2と、計測結果及び当該装置の状態等を表示する液晶表示部(表示手段)3と、ボタン(表示方向切換手段)4,5,6と、一端を本体2の内部に配設された図示しない計測部(計測手段)に接続されるステンレスの計測線7と、地表伸縮計測装置1を固定する複数の固定部8と、メモリ挿入部9と、通信ポート10と、複数のリチウム電池11と、警報出力部(警報出力手段)12と、計測部7で計測された計測値を記憶する図示しない記憶部とで構成されている。
【0015】
液晶表示部3は、本体2の上面2aに配設されている。そして、液晶表示部3は、図4に示すように、計測線7の作動方向(延伸方向)に対して、鉛直方向から認識可能となるように計測結果及び当該装置の状態等を表示する機能を有している。
【0016】
ボタン4,5,6は、図2に示すように、本体2の上面2aであって、液晶表示部3の横に計測線7の作動方向に対して、鉛直方向にそれぞれ並べられて配設されている。ボタン(数値入力手段)4及びボタン(数値入力手段)6は、液晶表示部3に表示された項目の選択或いは警報を開始する警報値を調整や、地表伸縮計測装置1に内蔵される時計の時刻等の数値を変更する機能を有している。また、ボタン5は、ボタン4或いはボタン6で選択された項目の決定或いは液晶表示部3の表示項目を切り換える機能を有している。詳しくは、ボタン5を所定時間以上押すと、例えば、戻る、機器設定、警報設定及び警報履歴等の項目が液晶表示部3に縦に並んで表示されるメインメニューが表示される。なお、現在選択されている項目が抜き文字となり反転されて表示される。ここで、ボタン4或いはボタン6を押すと押したボタン側の項目が抜き文字となり反転表示され選択される。そして、項目選択後にボタン5を所定時間より短く押すとその選択項目が決定される。
【0017】
図2の状態で液晶表示部3が図4(a)のとおり表示されている場合での操作の一例を説明する。ボタン5を所定時間以上押し、液晶表示部3に図示しないメインメニューが表示される。そして、ボタン4或いはボタン6を操作してメインメニュー中の図示しない警報設定項目を選択しボタン5を押し決定し、警報を開始する警報値を設定する表示に進む。そして、当該警報値を設定する表示にてボタン4を押すと警報値が増加し、ボタン6を押すと警報値が減少する。ボタン4或いはボタン6を操作し、警報値を設定後、ボタン5を押して警報値が決定される。また、メインメニューで図示しない機器設定をボタン4或いはボタン6を操作して選択しボタン5を押し決定をすると、更に時計変更、総移動変更、液晶反転等の図示しないサブメニューが表示される。再度ボタン4或いはボタン6を操作してサブメニューの液晶反転を選択し、ボタン5を押し決定すると、図4(b)に示すように液晶表示部3の表示方向が180°回転する。また、液晶表示部3の表示方向変更に合わせて前述の警報値設定でのボタン4の機能とボタン6の機能とが切り替わる。詳しくは、液晶表示部3の表示方向が変更されて、図2の状態で液晶表示部3が図4(a)の表示から図4(b)の表示となると、表示が図4(a)である場合には、警報設定表示にてボタン4を押すと警報値が増加し、ボタン6を押すと警報値が減少するが、ボタン4を押すと警報値が減少し、ボタン6を押すと警報値が増加するようになる。
【0018】
計測線7の他端は、本体2の一側面(側壁)2bから本体2の外に延びている。そして、計測線7の他端には、ワイヤ等を接続する接続具14が取り付けられている。
複数の固定部8は、本体2の下面2dより計測線7の作動方向(延伸方向)に対して、鉛直方向に突出するようにそれぞれ設けられている。
メモリ挿入部9は、図示しない記憶部に記憶された地表伸縮計測装置1での計測結果を外部に持ち出すために、外部メモリを挿入し、計測結果を外部メモリに転送するためのものである。
【0019】
通信ポート10は、他の制御機器と通信を行うためのケーブルを接続するものである。 複数のリチウム電池11は、液晶表示部3及び計測部等に電力を供給する主電源と主電源の電池容量低下時に電力を供給する補助電源とを構成している。
警報出力部12は、他の警報装置に警報装置制御信号を出力するためのケーブルを接続するためのものである。
【0020】
これらのメモリ挿入部9、通信ポート10、リチウム電池11及び警報出力部12は、計測線7が配設される側の反対の側面2cに配設されている。そして、リチウムイオン電池11と警報出力部12は、アクリル板13で覆われている。
次に、このように構成される本発明に係る地表伸縮計測装置1の地滑り警戒地等での設置について説明する。
【0021】
図5は、地表伸縮計測装置1の設置の一実施例を示す斜視図である。また、図6は、図5のB部の拡大図である。
図5及び図6に示すように、地表伸縮計測装置1は、複数の固定部8を介して取付台20上に設置される。そして、取付台20は、地滑り等の発生の虞の無い斜面上に設置される。
【0022】
一方、地滑り等の発生を検出したい斜面上には、杭21が設置されている。当該杭21には、ワイヤ22の一端が取り付けられている。そして、当該ワイヤ22他端は、地表伸縮計測装置1の計測線7に接続具14を介して所定の張力を有するように接続される。また当該ワイヤ22は、設置後に鳥等の接触による誤作動を防ぐために硬質のパイプ23内を挿通されている。そして、パイプ23は、複数の支持杭24で支持されている。
【0023】
地表伸縮計測装置1は、当該装置1を雨水等から保護するためのカバー25が被せられている。また、カバー25には、地表伸縮計測装置1の計測線7或いはワイヤ22が挿通を可能とする挿通部25aが形成されている。
次に、このように設置された地表伸縮計測装置1の作用及び効果について説明する。
【0024】
例えば、地滑り発生時には、地滑りが発生し杭21が移動すると、杭21に取り付けられたワイヤ22により計測線7が伸縮する。計測線7の一端には計測部が接続されており、当該計測部にて計測線7の伸縮量、即ち杭21の移動量が計測される。計測された移動量が予め設定された警報値を越えると警報を発するように警報出力部12より警報装置制御信号が出力される。
【0025】
また、通常時には、地表伸縮計測装置にて、杭21の移動量をワイヤ22及び計測線7を介して計測部にて常時計測する。作業者は、ボタン4,5,6を操作し、メインメニュー及びサブメニューを呼び出して計測した移動量を週単位での移動量グラフ、日単位での移動量グラフ、時間単位での移動量グラフ、或いはそれらの計測値データ等の計測結果として液晶表示部3に表示させ、杭21の移動量を確認する。そして、作業者は、それらのグラフ或いは計測値データ等の計測結果を確認する場合には、ボタン4,5,6を操作し、メインメニューより機器設定項目を選択し、更にサブメニューより液晶反転項目を選択して、図4に示すように液晶表示部3の表示方向を180°回転させ、作業者が容易に計測結果の確認を行える方向に変更する。
【0026】
このように本発明に係る地表伸縮計測装置1では、作業者が計測結果を液晶表示部3で確認する際にボタン4,5,6を操作し項目を選択することにより、作業者が容易に表示方向を切り換えることができるので、例えば、作業者が足場の悪い斜面を登坂して計測結果を確認するような場合や、地表伸縮計測装置1が切り立った岩盤や、壁面或いは樹木等の近くに設置され作業者が地表伸縮計測装置1の液晶表示部3側に回り込めないような場合に、作業者が容易に確認できる表示方向とすることで、作業者が移動することなく、計測結果を確認することができる。
【0027】
従って、作業者の移動を無くすことができるので、作業者が不用意に計測線7及びワイヤ22等と接触することを防止することができ、不要な警報を発することを抑制することができる。
また、液晶表示部3の表示方向を切り換えることができるので、上記の如く、例えば、作業者が地表伸縮計測装置1の液晶表示部3側に回り込めない切り立った岩盤や、壁面或いは樹木等の近くのような環境に地表伸縮計測装置1を設置することができる。
また、液晶表示部3の表示方向切換に合わせて、警告値設定でのボタン4の機能とボタン6の機能とが切り替わるので、液晶表示部3の表示方向にとらわれずに容易に警報値を設定することができる。
【0028】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の実施形態は上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、ボタン4,5,6を操作して液晶表示部3の表示方向の切り替えを行うようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、表示方向を切り換える専用のボタン或いはスイッチを設け、当該ボタン或いはスイッチの操作で表示方向の切り換えを行うようにしても良く、更に容易に表示方向の切り換えを行うことができる。
【0029】
また、液晶表示部3の表示方向の切り替えを作業者が手動で切り換えるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、赤外線センサ等を本体2の他側面2dにそれぞれ配設し、作業員を感知した赤外線センサが配設された他側面2d側より容易に確認できるように液晶表示部3の表示方向を切り換えるようにしても良く、この場合、作業者は、何ら操作をすることなく表示方向を切り換えることができるので、容易に計測結果を確認することができる。また、地表伸縮計測装置1を操作する必要がなく、作業者の接触により地表伸縮計測装置1が移動することを抑制することができるので、計測精度を向上させつつ、不要な警報を発することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 地表伸縮計測装置
2 本体(筐体)
2b 側面(側壁)
3 液晶表示部(表示手段)
4、5,6 ボタン(表示方向切換手段、数値入力手段)
7 計測線(計測線)
12 警報出力部(警報出力手段)
21 杭
22 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が筐体の側壁を挿通し前記筐体外に延びる計測線と、
前記筐体内に収納され、前記計測線の他端が接続され前記計測線の伸縮を計測する計測手段と、
前記筐体の上面に配設され、前記計測手段での計測結果を表示する表示手段と、
前記筐体の上面に配設され、前記表示手段の表示方向を切り換える表示方向切換手段とを備え、
前記表示手段の表示を前記計測線の延伸方向に対して、左側方向視或いは右側方向視に表示方向を切り換えることを特徴とする地表伸縮計測装置。
【請求項2】
前記筐体の上面に配設され、一方で数値を増加させ、他方で数値を減少させる機能を有し数値を入力する一対の数値入力手段を備え、
前記一対の数値入力手段は、前記表示方向切換手段により前記表示手段の表示方向が切り換えられると、前記一方の機能と前記他方の機能とが入れ替わることを特徴とする、請求項1に記載の地表伸縮計測装置。
【請求項3】
警報を発する警報信号を出力する警報出力手段を備え、
前記一対の数値入力手段は、前記警報出力手段から警報信号の出力を開始する警報出力開始値を設定することを特徴とする、請求項2に記載の地表伸縮計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3109(P2013−3109A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137697(P2011−137697)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(593199471)株式会社オサシ・テクノス (3)
【Fターム(参考)】