埋め込み型医療装置およびリチウム電池
【課題】MRIスキャンが行われたときに従来の装置に比べて画像の歪曲を低減するINSのような埋め込み型医療装置を提供するというニーズが存在する。MRI画像の歪曲を最少にするために、構成要素に対して異なる材料を利用する改良された埋め込み型医療装置を提供するというニーズも存在する。さらに、従来のスキャン方法に比べて、歪曲が少ない画像を提供するMRIスキャンを実施するための改良法を提供するというニーズがある。
【解決手段】リチウム電池は、ハウジング、ならびにハウジング内に配置された第1の電極および第2の電極を備える。第1のタブはこの第1の電極に結合され、第2のタブはこの第2の電極に結合されている。ピンはこの第2のタブに結合され、ハウジングの外側の場所へと延びる。第1のタブ、第2のタブおよびピンのうちの少なくとも1つはバナジウムを含む材料から形成される。
【解決手段】リチウム電池は、ハウジング、ならびにハウジング内に配置された第1の電極および第2の電極を備える。第1のタブはこの第1の電極に結合され、第2のタブはこの第2の電極に結合されている。ピンはこの第2のタブに結合され、ハウジングの外側の場所へと延びる。第1のタブ、第2のタブおよびピンのうちの少なくとも1つはバナジウムを含む材料から形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
【0002】
本願は、米国特許法第119条第(e)項に基づいて、2006年3月24日出願の米国仮出願第60/785,881号および2006年9月29日出願の米国仮出願第60/827,621号の優先権を主張する。これらの開示の全体を、参照によって本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
本発明は、概して言えば、埋め込み型医療装置(IMD)の分野に関する。より具体的には、本発明は、核磁気共鳴画像法(MRI)の歪曲収差を低減するように意図された特徴を備える埋め込み型神経刺激(INS)装置のようなIMDに関する。
【0004】
埋め込み型神経刺激装置((implantable neurological stimulation device)(implantable neuro stimulator)またはINSと呼ばれることがある)は、ヒトの神経系または臓器に影響を及ぼすために使用される電気刺激信号を発生する。従来は、INSは、外科手術により患者の腹部、胸部または臀部上方領域の皮下ポケットに埋め込まれてきた。リード線の遠位端に備えられる電気接点は、所望の刺激位置(例えば、脊椎中の場所、または直接脳内に)に置かれ、リード線の近位端はINSに接続される。
【0005】
リード線の遠位端が直接に脳の部位に提供されている場合には、患者の頭部にINSを埋め込むことが所望されることがある。例えば、患者の頭部の頭皮の下に(頭蓋骨の表面上または頭蓋骨に形成したポケットもしくは切り取り部に)INSを埋め込むことが所望されることがある。
【0006】
INS装置のような医療装置を患者の体内に埋め込むことに伴う1つの困難は、かかる装置に使用される材料がMRIスキャンの間に生成される画像を変えるまたは歪める傾向にあることである。かかる歪曲は、装置のすぐ隣の周辺領域を越えて広がることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、MRIスキャンが行われたときに従来の装置に比べて画像の歪曲を低減するINSのような埋め込み型医療装置を提供するというニーズが存在する。MRI画像の歪曲を最少にするために、構成要素に対して異なる材料を利用する改良された埋め込み型医療装置を提供するというニーズも存在する。さらに、従来のスキャン方法に比べて、歪曲が少ない画像を提供するMRIスキャンを実施するための改良法を提供するというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態は、ハウジングと、このハウジング内に配置された第1の電極と、この第1の電極に結合された第1のタブと、このハウジング内に配置された第2の電極と、この第2の電極に結合された第1のタブとを備えるリチウム電池に関する。ピンはこの第2のタブに結合され、ハウジングの外側の場所へと延びる。第1のタブ、第2のタブおよびピンのうちの少なくとも1つはバナジウムを含む材料から形成されている。
【0009】
別の例示的な実施形態は、ハウジングと、正極に電気的に結合された第1の電流コレクタと、負極に電気的に結合された第2の電流コレクタとを備えるリチウム電池に関する。端子はこの第1の電流コレクタおよび第2の電流コレクタのうちの1つに結合されている。第1の電流コレクタ、第2の電流コレクタ、および端子のうちの少なくとも1つは、バナジウムおよびバナジウム合金からなる群から選択される材料を含む。
【0010】
別の例示的な実施形態は、人体に埋め込むように構成されたハウジングを備える埋め込み型医療装置に関する。リチウム電池はこのハウジング内に備えられ、バナジウム材料から形成された部材を備え、その部材は端子、および電極のためのタブからなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
例示的な実施形態によれば、MRI画像の歪曲を低減するように意図された特徴を備える埋め込み型医療装置(例えば、INS)が提供される。1つの例示的な実施形態によれば、その装置の1つ以上の要素は、画像の歪曲を低減するかまたは相殺するように意図した所定の透磁率を有する材料またはコーティングを利用してもよい。別の例示的な実施形態によれば、その装置の1つ以上の要素は、(例えば、種々の要素の厚みを減少させるかまたは変化させることにより)MRIスキャンの間に発生する渦電流の発生を低減するように構成されていてもよい。
【0012】
人体は、ほとんど水から構成されており、水は0.9999912の比透磁率を有している。従って、水はわずかに反磁性である(例えば、表1を参照)。
【0013】
【表1】
【0014】
人体がMRIスキャンを受けるとき、磁場が印加されたときに水と大きく異なる透磁率を有する材料は、得られるMRI画像の歪曲を引き起こすであろう。MRIスキャンの間に生成される比較的高い磁場強度において、その材料の透磁率と水の透磁率との差が大きいほど、画像の歪曲が大きいことが観察されている。
【0015】
例えば、図1(a)および図1(b)は、埋め込まれたINSなしのヒトの頭部を模擬するための水を満たした20cm×40cmの円柱ファントムの、(1.5テスラの磁場強度における)MRIスキャンの間に撮影された画像を示す。図1(c)および図1(d)は、その円柱の一方の側にテープ止めされたチタンの缶を備えた円柱ファントムの、スピンエコーMRIスキャン法を用いて撮影された画像である。領域5の画像の歪曲が、画像の中に比較的暗い場所として見える。図1(e)および図1(f)に示すように、グラジエントエコーMRIスキャンを使用するときには、かかる歪曲は大きくなる。
【0016】
【表2】
【0017】
表2は、比較的低磁場強度における種々の材料の比透磁率を列挙する(このデータは、http://www.matweb.comのような種々の公に利用可能な情報源から入手した)。表2からわかるように、チタンは1.00005の比透磁率を有するが、他方、鉄(鋼の主成分である)は280,000の比透磁率を有する。従って、INS中に鉄を含めると比較的顕著な画像の歪曲を引き起こすことが予想されるであろう。一般に、室温で強磁性である材料(鉄、コバルト、ニッケルなど)は、比較的高磁場強度において水の比透磁率をはるかに超える比透磁率を有し、従って水の透磁率に近い透磁率を有する材料よりもはるかに大きくMRI画像を歪曲させることが予想されるであろう。
【0018】
図2〜図3はこの原理のさらなる実例を提供する。チタン製の缶が円柱ファントムに結合されていた図1(c)〜図1(f)に示す比較的小さい歪曲とは対照的に、図2および図3は、チタン製の缶の代わりにフェライト材料(図2)およびステンレス鋼(図3)を使用した場合に生じるMRI画像の歪曲を示す(図2(a)、図2(b)、図3(a)および図3(b)は、図1(a)および図1(b)で示したのと同様に、コントロール画像である)。図2および図3に示すように、フェライト材料および鋼材料については、得られた画像の歪曲はチタン材料を使用した場合に生じたものよりもはるかに大きい。
【0019】
表2中のデータは、種々の材料の比透磁率を示しているが、本発明者らは、MRIスキャンで使用される比較的高磁場強度において特定の材料が異なる特性を示すかも知れないということを観察した。例えば、銅は低磁場強度ではわずかに反磁性であることを表2は示唆しているが、銅の透磁率はより高磁場強度では比較的常磁性であるように変わる傾向があることが観察されている。(例えば、埋め込み型医療装置を隙間調整する際に使用するための)以下に説明するような材料を選択する際には、MRIスキャンで使用される比較的高磁場強度に曝されたときにかかる材料が所望の効果をもたらすことを確認するために、材料の高磁場強度透磁率を評価するべきである。
【0020】
例示的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置は、従来の装置により呈示されるであろうMRI画像の歪曲よりも少ない画像の歪曲をもたらすように設計することができる。この目的を達成するために、種々の異なる設計基準が採用されてもよい。例えば、1つの例示的な実施形態によれば、装置に使用される強磁性材料(すなわち、ニッケル、コバルト、鉄、およびフェライト)の量は減少する可能性がある。すべての金属が何らかのMRI画像の歪曲を発生させるであろうと予想されるが、強磁性材料の量を減少させると、わずかに反磁性および常磁性である材料の量を減少させる場合よりも画像の歪曲に対してはより大きい効果があるであろう。
【0021】
イメージングの間に誘導される渦電流を最少にすることも所望される場合がある。渦電流は歪曲を引き起こすが、かかる歪曲は強磁性材料が引き起こす歪曲ほどには重大ではないと予測される。特定の装置に付随する渦電流を減少させることは、主に、従来の要素に比べて種々の要素の厚みを減少させるか変化させることにより、達成されるかも知れない。
【0022】
水の透磁率とは異なる透磁率を有する非強磁性材料を取り除くまたは隙間調整することも所望される場合がある。例えば、常磁性材料から作製された比較的大きい要素を、常磁性材料を相殺し画像の歪曲を低減するために反磁性材料で隙間調整してもよい。例示的な実施形態によれば、高磁場強度(例えば、1.5テスラまたは3テスラ)において水の透磁率とは異なる透磁率を有する材料(例えば、MRI画像化用途で見出されるもの)を、隙間調整してもよく、装置から取り除いてもよく、または重大な画像の歪曲を生じる可能性がより低い材料から作製してもよい。
【0023】
図4は、例示的な実施形態にかかる埋め込み型神経刺激(INS)装置の形態の埋め込み型医療装置100を示す。図4に示すように、装置100は電池10、コイル120(例えば、電池の再充電用、またはテレメトリ用)、配線盤またはハイブリッド130(例えば、半田付けされているかまたは別の方法で備えられている種々の電子要素を有する回路基板)、装置のエンクロージャ140(例えば、ハウジングまたはケーシング)、インターコネクト150、およびコネクタまたはヘッダー160(このコネクタは図4の右側に示すような開口を備える。この開口はリード線がその中へ導入されるように構成されている)を備える。
【0024】
図5〜図6は、装置100と併せて使用され得る電池10の要素の図解をさらに提供する。電池10は、種々の例示的な実施形態にかかる再充電不可の(すなわち一次の)、または再充電可能な(すなわち二次の)リチウムベースの電池であってよい。
【0025】
図5を参照して、電池10は、比較的薄肉の中空構造体の形態で提供される電池ケースまたはハウジング20を備える。この電池ケースまたはハウジング20は、提供される複数の要素を備えるように構成されている。ハウジング20から電池10の内部要素を分離するために、ハウジング20に隣接してまたはハウジング20に近接してライナー24が備えられる。カバーまたはキャップ22は、電池10の上面に備えられ、これはハウジング20に結合(例えば、溶接、接着など)されていてもよい。ヘッドスペース絶縁体26がハウジング20内に備えられ、ハウジング20内に備えられる電極への接続を作製する空間が提供される(付加的に、電池10のヘッドスペース領域からセル要素を分離するように働く図6に示すコイルライナ27が備えられていてもよい)。ブラケットの形態の部材または要素29が、負極の電流コレクタをケースおよび/またはハウジングへ結合するために備えられていてもよい。
【0026】
電池10は、ハウジング20に提供されるセル要素30を備える。セル要素30は少なくとも1つの正極および少なくとも1つの負極を備える。各々の電極は、タブの形態の部材または要素またはそれに結合された電流コレクタを有する。図5〜6に示すように、電極32は、それに結合したタブ34を有する正極であり、電極36は、それに結合したタブ38を有する負極である。かかる構成では、電池10はケースが負極である構成の電池である。電池が、ケースが正極であるかまたはケースが電気的に中性である構成の他の例示的な実施形態によれば、電極は逆にされる(例えば、電極32は負極であり、電極36は正極である)。
【0027】
正極の電流コレクタ34は、ピンまたは端子25(例えば、フィードスルーピン)であり、このピンまたは端子25は、それがカバー22に備えられる開口部または開口23を通って突き出るように備えられる。かかる実施形態では、このピンは電池のためのプラス端子として作用し、その遠位端でハイブリッド中に備えられた機構に(直接または間接的に)結合されていてもよい。ケースが電気的に中性であるかまたはケースが正極である電池の構成では、ピン25は、負極に備えられるタブに結合されていてもよい。
【0028】
セパレータ40は、中間すなわち電極間に備えられ、電解質50も(例えば、電池10のカバー22に備えられる注入口の形態の開口部または開口28を通して)ハウジング20中に提供される。
【0029】
埋め込み型医療装置用途で使用される従来のリチウム電池では、電池のハウジングはステンレス鋼のような金属で作製される。電池10により引き起こされる画像の歪曲を低減するために、ハウジング20は、実質的なMRI画像の歪曲をもたらす可能性がより低い材料(例えば、以下の材料の1つ以上:(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金(3000シリーズを含む);(2)ヒートシールできる縁を備えたアルミ箔/ポリマー複合材(すなわち、「ホイルパック」);(3)チタンおよびチタン合金(合金はグレード5、グレード9、グレード1およびSP700(Ti−4.5Al−3V−2Mo−2Fe)を含む);ならびに(4)銅および銅合金)から作製してもよい。
【0030】
電気化学的安定性のために、いくつかのケース材料は一方または他方の電池の極性において、または中立電位においてのみ使用すべきであることに注意するべきである。例えば、多くのリチウムベースの電池構成物では、ハウジング20がセルの負極にある場合、アルミニウムは不適切なハウジング材料であることがあり、ステンレス鋼またはチタンは正のセル極性には不適切であろう。このハウジング材料選択は、電池化学および材料安定性の知識に依存する。図20および図21はステンレス鋼製電池ケース(図20)およびアルミニウム電池ケース(図21)を撮影したMRI画像を示す。見てわかるように、アルミニウム製電池ケースが引き起こす歪曲の量はステンレス鋼製電池ケースが引き起こす歪曲よりも有意に少ない。
【0031】
電池10の他の要素も、重大なMRI画像の歪曲を引き起こす可能性がより小さい材料から形成されていてよい。例えば例示的な実施形態によれば、ピン25(従来はチタン合金またはニオブで作製されている)、タブ34、38およびブラケット29のような要素は、アルミニウム、銅、バナジウムまたはそれらの合金もしくは組合せから作製されてもよく、ヘッダーおよび注入口28はハウジング20に関して上で記載した材料の1つ以上から作製されていてもよい。
【0032】
ケースが負極である構成の電池の例示的な実施形態によれば、負極に結合されているタブ(例えば、図6に示すタブ38)はバナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。ケースが正極であるかまたは中性である構成の電池の別の例示的な実施形態によれば、ピン25および/または負極に結合されているタブ(かかる構成では電極が逆転しているので、これは図6に示すタブ34にあたることになる)は、バナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。別の例示的な実施形態によれば、正極の電位が約3.6ボルトを超えない(すなわち、バナジウムの腐蝕電位を超えない)場合には、正極に結合したタブはバナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。電池10の他の機構も、他の例示的な実施形態(例えば、ハウジング20またはカバー22)に従ってバナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。
【0033】
バナジウムを使用することの1つの有利な特徴は、MRI画像の歪曲を低減するのに有益であることに加えて、バナジウムは銅およびチタンの両方に溶接されてもよいことである(例えば、これにより、バナジウムを銅電極からチタンケースに溶接することができるように、チタンケースを使用してケースが負極である構成が可能になる)。他の適用では、アルミニウム正極からのインターコネクトをアルミニウムケースに溶接することができるケースが正極である構成を使用してもよい。
【0034】
ピン25をハイブリッド130に接続する導体は、アルミニウム、銅、チタン、バナジウムまたはこれらの合金から作製されてよい。あるいは、ピン25は、別個のコネクタを必要とすることなくハイブリッド130に直接接続されていてもよく、別の実施形態では、チタンまたはチタン合金のような非鉄の導体を使用してピン25をバルシールに接続してもよい。
【0035】
ピン25が密閉シールした電池に備えられている例示的な実施形態によれば、このピンはチタン合金(例えば、グレード5、グレード9またはSP700)で作製されていてよい。別の例示的な実施形態によれば、このピンはアルミニウムをも含むことができる。
【0036】
ピン25が非密閉シールされた電池に備えられている例示的な実施形態によれば、それはひだ状または「リベットが貫通する」ポリマーの絶縁ゴムを備えていてもよい。リベット部分は密閉シールされた電池について列挙したのと同一の材料であろう。このポリマーは、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンまたはHDPEのような低クリープ材料)であってもよく、ETFEであってもよい。
【0037】
例示的な実施形態によれば、負極活物質は、黒鉛、リチウム合金元素(例えば、アルミニウム、スズ、およびケイ素)ならびにこれらの組合せから選択してよく、正極活物質はLiCoO2;LiMxNi1−xO2(式中、Mはチタンまたはアルミニウムのような金属である);LiMn2O4;LiCoxMnyNizO2(式中、x+y+z=1である)およびこれらの組合せから選択してよい。
【0038】
埋め込み型医療装置100の種々の要素も、重大なMRI画像の歪曲を発生する可能性がより小さい材料から作製されてよい。例えば、装置100を組立てる際に従来使用されていたねじおよび位置決めねじブロックはステンレス鋼から作製されており、これらは高い鉄含量を有する。例示的な実施形態によれば、装置100は、生体適合性でありかつMRI画像を歪曲する傾向が低い材料(例えば、チタンまたはチタン合金、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリマー材料など)から形成されるコネクタを利用する。
【0039】
図4に示すもののような埋め込み型医療装置はまた、装置内に1つ以上の電気接点(示さず)を利用してもよい。現在は、かかる接点は、クロム、コバルト、モリブデンおよびニッケルを含む合金から作製されたハウジング内に白金ばね接点(バルシールと呼ばれている)の形態で提供されている。例示的な実施形態によれば、装置100は、ハウジングを製造するのに以前に使用されていた合金の代わりに、(例えば、約1.008と1.02との間の透磁率を有する)低透磁率のステンレス鋼を利用する。別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは白金または白金合金から作製されてよい。さらに別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは耐クリープ性のポリマー(例えば、ポリスルホンまたは熱可塑性ポリエーテルエーテルケトン(PEEKと呼ばれる))から作製されてよい。ポリマーを利用することの1つの有利な特徴は、そうすることによって、鉄材料の使用に起因する画像の歪曲が低減されるだけでなく、渦電流により生じる画像の歪曲も解消されるであろうことである。さらに別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは白金張りチタン材料から作製してもよい。
【0040】
配電盤またはハイブリッド130は、電子チップなどの種々の機構を備える。従来では、かかる要素は鉄材料(例えば、コイルまたは誘導子のためのコア)を利用してもよい。例示的な実施形態によれば、ハイブリッド130は鉄材料を使用することなく製造される(例えば、テレメトリおよび/または再充電アンテナはエアコアアンテナを利用してよい)。
【0041】
ハイブリッド130とともに利用される従来の結合パッドは、ニッケル200またはKovar(鉄、ニッケルおよびモリブデンの合金)から形成されていてよい。例示的な実施形態によれば、ハイブリッドとともに利用される結合パッドはチタン、白金、銅またはこれらの合金から形成されていてよい。
【0042】
装置100とともに利用されるコイル120は、従来は銅から形成されており、フェライトのコアを備えていた。銅は水の透磁率に近い透磁率を有しかつ優れた導体として作用するため、コイル120には銅を使用し続けることが望ましいであろう。例示的な実施形態によれば、従来の設計で使用されるフェライトコアを有する銅コイルの代わりに、空芯のある銅コイルが使用される。他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料(白金、アルミニウム)の輪のような部材または要素は、このコイルに隣接してまたはコイルに近接した位置に提供されてもよい。
【0043】
装置のエンクロージャ140は、従来は、水の透磁率に近い透磁率を有するグレード1のチタンから作製されていた。しかしながら、装置のエンクロージャ140は比較的大きい表面積を有するので、MRIスキャンの間に比較的顕著な渦電流をエンクロージャ140の上に生成する可能性があり、画像の歪曲が生じるかも知れない。MRIスキャンの間に形成される渦電流を低減するため、装置のエンクロージャは、より高い抵抗率を有するチタンから形成されてよい。例えば、例示的な実施形態によれば、装置のエンクロージャはグレード9のチタン(または高抵抗率を有するチタンの別のグレードもしくは合金)を利用してよい。
【0044】
他の例示的な実施形態によれば、異なる材料を使用して装置のエンクロージャ140を形成してもよい。例えば、例示的な実施形態によれば、エンクロージャをポリマーで構築し、密閉のためにダイヤモンド様のコーティングを使用して覆ってもよい。かかる構築物は、スキャンの間にエンクロージャ上に生成する渦電流および生成する画像の歪曲を有意に減少させると予想される。別の実施形態によれば、装置のエンクロージャ140は耐クリープ性のポリマー(例えば、熱可塑性ポリエーテルエーテルケトンまたはポリスルホン)を使用して構築してもよい。こうすれば、スキャンの間にエンクロージャ上に生成する渦電流を完全に解消するであろう。
【0045】
他の例示的な実施形態では、装置のエンクロージャ140は、スキャンの間に渦電流のループ領域を減少させる反射を生成するための種々の厚みを備えるように形成されてもよい。例えば、エンクロージャ140は、電気抵抗をさらに高め渦電流を最少にするために、周囲のエリアよりも薄いエリア(例えば、ゾーン、領域など)を備えて作製されてもよい。1つの例示的な実施形態によれば、エンクロージャ140は、ハウジングの複数のエリアまたは領域が様々な厚みを有するとして形成されるように、(例えば、チタンのハウジングが射出成形される)金属射出成形プロセスで製造されてよい。別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは実質的に均一な厚みを有してもよく、ハウジングの特定の領域の厚みを増すためにハウジングに結合された(例えば、溶接された)要素を有していてもよい(例えば、チタンのハウジングは、チタン、白金またはアルミニウムの細片材料がハウジングに溶接されていてもよい)。
【0046】
拡張部、テザー、または他のアクセサリが重大な画像の歪曲を生じさせない材料を使用して構築されてもよい。例えば、例示的な実施形態では、拡張部またはテザーは白金イリジウム充填材および接点を使用して構築されてもよい。
【0047】
例示的な実施形態によれば、INSのような埋め込み型医療装置の全体または一部分は、装置100が埋め込まれる生命体がMRIスキャンを受けるときに画像の歪曲を減少させるために、公知の透磁率を有する材料を使用して隙間調整されてもよい。例えば、全体を常磁性にする比透磁率を装置が有する場合、装置の常磁性を相殺するために反磁性の隙間調整材料を提供し、装置の全体の透磁率を水の透磁率に近づけることが有利であるかも知れない。隙間調整は、装置またはその一部分を隙間調整材料コーティングまたはめっき(例えば、耐食肉盛)することを含むどんな方法で行ってもよい(例えば、チタンハウジングを白金またはパラジウムで隙間調整してもよい)。隙間調整が達成されるかも知れない別の方法は、所望の隙間調整特性を有する要素を装置内に提供することである。医療装置を隙間調整するこれらの方法および他の方法を、添付の図面を参照して以下で説明する。装置を隙間調整するために使用する材料は、透磁率および生体適合性を含む種々の考慮事項に基づいて選択してよく、そのような材料としては、例えばチタン、パラジウム、白金、銀、銅、マンガン、アルミニウム、およびこれらの合金および組合せを挙げることができる。
【0048】
埋め込み型医療装置を隙間調整材料で隙間調整する目的は、水にできるだけ近い(そして装置が埋め込まれる生命体の透磁率にできるだけ近い)透磁率を有する装置を製造することであり、ある状況では、隙間調整材料を加えない場合よりもMRI画像の歪曲が少ないように、何らかの隙間調整材料を単に加えることで十分かも知れない。所定の状況において受け容れられるかまたは適切である受け容れられるMRI画像の歪曲の程度は、装置の埋め込み場所および他の要因に応じて変わるかも知れず、隙間調整材料の量は、その状況下で適切に少量の画像の歪曲を提供するのに十分であるように選択するべきである。
【0049】
例示的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置に加えられるべき適切な量の隙間調整材料を決定する方法としては、装置の試作品を作成し、装置の試作品の電磁的モデルを作成することを含む。次いで試作品を解析して、(例えば、磁場中の磁場摂動を見ることにより)装置の試作品の総体の比透磁率を決定してもよい。装置試作品の総体の比透磁率に基づき、隙間調整材料が常磁性のものであるべきか反磁性のものであるべきかを決定してもよい。次いで適切な隙間調整材料を選択し、装置試作品に添加してよい。装置試作品に隙間調整材料を加えたのち、装置を作リ直してその新しい総体の非透磁率を決定してもよい。隙間調整材料を再び加え、所望のレベルの総体透磁率に到達するまで装置を作り直してもよい。
【0050】
隙間調整材料の適切な配置を決定するために、装置のどの要素が画像の歪曲にとって最も大きな原因となりそうか(すなわち、「問題の要素」)をまず理解することが望ましい。隙間調整材料がその所望の機能を果たす能力を高めるために、問題の要素が一緒のグループにならず、むしろ離れて配置されるように装置を設計することが有益である場合がある。図7は2つの問題の要素202および204を備える回路基板またはハイブリッド200を示す。示すように、問題の要素202および204は近接または隣接しては備えられておらず、むしろそれらがハイブリッド200の反対の端部にあるように間隔を広げられており、これらの要素が引き起こす局在化した画像の歪曲の量を減少させる。問題の要素の具体的な配置および場所は、種々の実施形態に従って変わってもよい。
【0051】
別の例示的な実施形態では、これらの要素が引き起こす望ましくない効果をいくらかは局所的に打ち消しあうようにするために(例えば、効率的に問題の要素を「隙間調整する」ために)、問題の要素は反対の透磁率を有する他の要素に近接または隣接して備えられてもよい(例えば、常磁性の要素は1つ以上の反磁性の要素の次に備えられていてもよい)。例えば、図7に示すように、要素204が反磁性である場合は、要素206および208は常磁性であってもよい。
【0052】
他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料は埋め込み型医療装置内で使用される他の材料内に組み込まれていてもよい。例えば、図8に示すように、埋め込み型医療装置300は、ハイブリッドまたは回路基板310が備えられているハウジングまたはケーシング302を備える。ポッティング材料または充填材量320が装置300内に提供され、隙間調整材料がポッティング材料320中に提供または装填されてもよい。例示的な実施形態によれば、ポッティング材料は、エポキシまたはシリコーンゴムから作製され、その上に適切な隙間調整材料が備えられている(例えば、装置が全体として常磁性であれば、銀のような反磁性材料がポッティング材料中に組み込まれていてもよい)。
【0053】
図8に示した実施形態と同様に、種々の要素を装置300内に固定するために使用されるエポキシまたは他の接着剤は、その中に提供または装填される隙間調整材料を含んでいてもよい。隙間調整材料を装置300のハウジング302内に提供されるポッティング材料または接着剤の中に提供することの1つの有利な特徴は、隙間調整材料は占有されていない空間中またはすでに装置中で使用されている材料中に提供されるため、装置のサイズにはほとんどまたは全く影響を与えないことである。
【0054】
装置の他の要素も、隙間調整材料を装填されていてもよい。例えば、図4に示すように、絶縁体カップ170は、装置100の特定の要素を収容するために装置100中に備えられる。例示的な実施形態によれば、装置100の透磁率を改善するために、絶縁体カップ170は隙間調整材料を装填されていてもよい。
【0055】
他の例示的な実施形態によれば、装置のエンクロージャの全体または一部分は、隙間調整材料でコーティング、めっきまたは耐食肉盛されていてもよい。図9および図10は、2つの例示的な実施形態に従って、埋め込み型医療装置のハウジングにコーティング(例えば、めっき、耐食肉盛など)された隙間調整材料を示す。図9は、隙間調整材料410がハウジング402の外面または外表面に提供されているハウジングまたはケーシング402を有する装置400を示す。図10は、めっきまたはコーティング510がハウジング502の内面または内表面に提供されているハウジングまたはケーシング502を有する装置500を示す。例示的な実施形態によれば、図9および図10に示すハウジングは常磁性材料から作製されており、隙間調整材料は反磁性材料から作製されている。他の例示的な実施形態によれば、ハウジングは常磁性材料から作製され、隙間調整材料は反磁性材料から作製されていてもよい。
【0056】
隙間調整材料が装置のハウジングの外表面に提供される場合、めっき材料またはコーティング材料として選択される材料は装置が埋め込まれる生命体と生体適合性であることを確実にすることが望ましいことに注意するべきである。隙間調整材料の厚みは、種々の例示的な実施形態に従って変更されてもよい。例示的な実施形態によれば、隙間調整材料は、約0.005インチ(0.125mm)と0.040インチ(1mm)との間の厚みを有する。
【0057】
図9および図10は、ハウジングの外表面または内表面のいずれかに提供された隙間調整材料を示しているが、隙間調整材料は外表面および内表面の両方に提供されていてもよいこと(さらには、外表面および/または内表面の一部のみに隙間調整材料が提供されていてもよいこと)に注意するべきである。外表面および内表面に提供される隙間調整材料は、組成が同一であっても異なっていてもよい。さらに、2種以上の隙間調整材料をハウジングの外表面および/または内表面に提供してもよい(例えば、銀を外表面の一部分に提供し、チタンを別の部分に提供してもよい、など)。
【0058】
特定の実施形態によれば、埋め込み型医療装置についてのハウジングの内部および/または外部は、装置のエンクロージャが生じさせる画像の歪曲を最少にするのに十分な厚みまでチタンまたはチタン合金で少なくとも部分的にコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)される。別の具体的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置についてのハウジングの内部および/または外部は、装置のエンクロージャが生じさせる画像の歪曲を最少にするのに十分な厚み(例えば、約0.005インチ)まで銀または銀合金で少なくとも部分的にコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)される。
【0059】
図9および図10は装置のハウジングの内表面および/または外表面の全体が隙間調整材料でコーティングまたはめっきされている実施形態を示しているが、他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料またはめっき材料がハウジングまたはケーシングの一部分にのみ提供されていてもよいことに注意するべきである。図11に示すように、埋め込み型医療装置600は、ハウジングまたはケーシング620内に提供される電池610およびハイブリッドまたは回路基板620を備える。ハイブリッド620は、MRI画像における画像の歪曲を生成する最大の原因となる2つの要素622および624(すなわち、それらはいわゆる「問題の要素」である)を備える。隙間調整材料は、問題の要素622、624に近接または隣接した場所(隙間調整材料630および632の領域またはエリアとして示す)にのみハウジング上に提供されている。このように、隙間調整材料は、問題の要素が引き起こすMRI画像の歪曲の量を低減するのにもっとも有効かも知れない場所に配置される。かかる構成の1つの利点は、装置の十分な隙間調整をもたらすのに必要とされる隙間調整材料の量が実際に必要とされる量により近く調製され得ることであり、これにより、もしもハウジングの内表面および/または外表面の全体を隙間調整材料でコーティングした場合よりも、少ない隙間調整材料を使用するだけで済むことになろう。装置のハウジングに別個のコーティングまたはめっきの領域を提供することは、マスキング技術または任意の他の適切な技術を使用して達成してよい。
【0060】
隙間調整材料の厚みは、ハウジング内の具体的な場所に必要な隙間調整材料の具体的な量を含む種々の考慮事項に従って変動してよい。図12は、電池710およびハイブリッドまたは回路基板720が備えられているハウジングを有する埋め込み型医療装置700を示す。示した実施形態では、電池710はハイブリッド720よりもMRI画像の歪曲の原因とはならないように決定された。従って、電池710に隣接して提供される場合に比べて、より多量の隙間調整材料がハイブリッド720に近接または隣接して提供されている。これは、電池710に隣接して提供された第1の厚みを有する第1のめっきまたはコーティングされた隙間調整材料740、およびハイブリッド720に隣接して提供された第2のめっきまたはコーティングされた隙間調整材料750によって示されている。例示的な実施形態によれば、2つの隙間調整材料740および750は同一の組成を有する。他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料740および750は異なる組成を有する(例えば、隙間調整材料740は白金を含むが、他方で隙間調整材料750はアルミニウムを含む)。隙間調整材料の組成および選択されたコーティング/めっき厚みは、ハウジング内の具体的な領域における隙間調整の必要量に応じて種々の例示的な実施形態に従って変動する。
【0061】
特定の場合には、装置のハウジングにコーティングまたはめっきの形態で隙間調整材料を提供することは、装置の充電またはテレメトリに逆効果を及ぼすことがある。かかる場合には、かかる機能に影響を及ぼさないようにコーティングを提供することが望ましいかも知れない。例えば、図13〜図14は、例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置800の概略図を示す。装置800は、その上に提供された電池810およびハイブリッドまたは回路基板820を有するハウジングまたはケーシング802を備える。再充電コイルまたはテレメトリコイル812は電池810に近接して備えられる。ハウジング802のコーティングにより生じ得る逆効果を低減または排除するために、コーティングは再充電コイルまたはテレメトリコイル812に近接したハウジングのエリアに提供されてはいない。図14に示すように、コーティング830および832は電池に隣接して提供され、コーティング834および836はハイブリッド820に隣接して提供されている。領域840、842においてコーティング830、834の間およびコーティング832、836の間に空間が設けられ、領域844、846にはコーティングは施されていない。このように、再充電/テレメトリコイルに近接する領域840、842、844および846にはコーティングが施されていない。ハウジングを選択的にコーティングすることは、マスキングまたは他の適切な方法によって達成してよい。
【0062】
図9〜図14に示す装置のハウジングをめっきまたはコーティングすることは、任意の適切な方法(例えば、PVD、CVD、焼結など)により達成してよい。例示的な実施形態によれば、常磁性材料は物理的気相成長法によって装置のハウジングにコーティングされる。図11〜図14は装置のハウジングの内面にめっきすることを示しているが、同様の結果は、かかる装置の外表面をコーティングまたはめっきすることによっても得られるかもしれないことに注意するべきである(例えば、図11〜図14のハウジング内に示すコーティングは、代わりにハウジングの外表面に提供されてもよい)。
【0063】
図8〜図14に示した特徴は、所望に応じて組合わせてもよい。例えば、図14に示した実施形態は、(例えば、図12に示すように)異なる厚みを有するコーティングを備え、および/または(例えば、ハイブリッドに隣接する問題のエリアに関して図11に示すように)問題のエリアに隣接してコーティングが提供されるように修正されてもよい。隙間調整材料に装填されたポッティング材料をも使用してよい。かかる特徴の種々の組合せが可能であり、すべてのかかる組合せは本開示の範囲に含まれることが意図されている。
【0064】
ハウジングのような要素のすべてまたは一部分に隙間調整材料を提供するために、種々のコーティング方法のいずれを使用してもよい。例えば、ハウジングのすべてまたは一部分を隙間調整材料で完全にコーティングしてもよい。他の例示的な実施形態によれば、コーティングは、マスキングまたは現在公知または今後開発される可能性がある他の技術を使用して、種々のパターンのいずれをも有するように塗布してよい。図15は、(例えば、マスキング技術または他の適切な技術を使用して形成される)種々の実施形態に従って成分のすべてまたは一部分に塗布されてもよい4つのコーティングパターンを示しているが、多数の他のパターンが可能であるかも知れないことを理解するべきである。加えて、2種以上のパターンが同一の成分に塗布されてもよい。
【0065】
隙間調整材料でハウジングをめっきまたはコーティングする代わりに(またはそれに加えて)、隙間調整材料の構成要素(例えば、部材、要素など)は、溶接、半田付け、接着により、または任意の他の方法により、ハウジングに結合されてもよい。図16は、ハイブリッドまたは回路基板910を備えたハウジング902を有する埋め込み型医療装置900の略断面図を示す。2片の隙間調整材料920および922は、装置900の要素が占めていないエリアでハウジング902の内表面に結合されている。あらゆる数の隙間調整材料が、種々の実施形態にかかる種々のサイズ、形状、および/または構成のいずれをも有するハウジングに結合されていてもよい。
【0066】
図17は、別の実施形態にかかる埋め込み型医療装置1000の略平面図を示す。装置1000は、その外表面に溶接されたレール1010および1020を有する密閉シールされたハウジングまたはケーシング1002を備える。レール1010および1020は、例示的な実施形態に従ってチタンで作製されており、隙間調整材料はレールの中に装填されている。例示的な実施形態によれば、レールは約1mm〜4mmの厚みを有するが、レールのサイズ、形状および/または構成は他の例示的な実施形態に従って変わってもよい。他の例示的な実施形態によれば、レールはハウジングの内表面に結合されていてもよい。例示的な実施形態によれば、隙間調整材料は生体適合性材料の中に封入され、直接の組織への接触および腐食が回避される。
【0067】
他の隙間調整材料を、埋め込み型医療装置のハウジングまたはケーシングの外部に備えることもできる。例えば、図18は、ハウジングまたはケーシング1102の外表面に結合された隙間調整要素1110を有する、別の例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置1100を示す。例示的な実施形態によれば、隙間調整要素1110は、直接ハウジング1102に成形された隙間調整材料が装填されたポリマー材料である(例えば、装置のハウジングがチタンまたはチタン合金から作製されている場合、このポリマー材料は反磁性材料(例えば、銀または銀合金)を装填したエポキシであってよいが、具体的な構成物は他の例示的な実施形態に従い異なってもよく、加えて、このポリマー材料はハウジングの内表面に提供されてもよい)。別の例示的な実施形態によれば、要素1110はハウジング1102を囲むトランクである(例えば、このトランクは、隙間調整材料が中に組み込まれているシリコーンゴム(または類似の材料)トランクであってもよい)。さらに別の例示的な実施形態によれば、要素1110は、隙間調整材料を中に組み込んだパリレン(paralyne)コーティングである(この場合でも、パリレンコーティングがハウジングの内表面に提供されてもよいことに注意するべきである)。図18は完全にハウジング1102を囲うとして要素1110を示しているが、他の例示的な実施形態によれば、要素1110はハウジング1102を部分的にのみ囲っていてもよい(例えば、この要素がハウジング1102の外表面上の選択した場所にのみ提供されていてもよい)。
【0068】
医療装置のハウジングまたはケーシングのすべてまたは一部分を隙間調整する代わりに、またはそれに加えて、隙間調整材料を医療装置のハウジング内に備えられる構造体または要素に提供することもできる場合がある。例えば、電池10は装置のエンクロージャ140内に提供され、それゆえ装置100が埋め込まれる人体に直接接触しないため、電池10の外表面を隙間調整材料(例えば、反磁性材料)でめっきまたはコーティングすることが望ましいことがある。例示的な実施形態によれば、チタンまたはチタン合金の電池のハウジング20の内表面または外表面の少なくとも一部分は、ハウジング20が生じさせる画像の歪曲を低減するのに十分な厚み(例えば、約0.0001〜0.01インチ)まで銀または銀合金でコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)される。電池のハウジング20が銅または銅合金で作製されている別の例示的な実施形態によれば、ハウジング20は、ハウジング20が生じさせる画像の歪曲を低減するのに十分な厚み(例えば、約0.0001〜0.01インチ)までチタンまたはチタン合金でコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)されていてもよい。電池のハウジングの内表面および/または外表面のすべてもしくは一部分は、隙間調整材料でめっきまたはコーティングされていてもよく、そして図8〜図18に関連して本明細書中で説明したコーティング方法またはめっき方法は、具体的な電池構成において適切であるかも知れない場合に利用してよい(例えば、ハウジングの2つ以上の部分が、例えば埋め込み型医療装置の文脈で図12に示すように異なる量の隙間調整材料でめっきされていてもよい)ことに注意するべきである。
【0069】
別の例示的な実施形態によれば、非機能的な隙間調整要素(例えば、隙間調整部材または要素)がハイブリッドまたは回路基板(例えば、ハイブリッド200)に追加してハイブリッドを隙間調整してもよい。例えば、図7に示すように、ハイブリッドを隙間調整するために、隙間調整要素210(例えば、部材、要素など)は直接ハイブリッドに追加される。要素210はハイブリッドに対して電子的な目的を果たさず、実際は、ハイブリッド200を隙間調整するために備えられる「ダミー」要素(例えば、隙間調整材料のブロック)である。要素210はハイブリッド上の任意の適切な場所に(例えば、隙間調整することにより恩恵を受ける別の要素に隣接して、ハイブリッド上のブランクエリアなど)に備えられてよい。要素210のサイズ、形状および/または構成は、他の例示的な実施形態に応じて変わってよい。2つ以上のかかる要素をハイブリッド上に備えてもよいことも理解するべきである。ハイブリッド上に直接隙間調整要素を提供することの1つの有利な特徴は、(ハイブリッドは固定サイズを有し、隙間調整要素はハイブリッドの一方の側または両側のさもなくば未使用の空間をフィットするため)隙間調整要素を収容するために装置のサイズを大きくする必要がないことである。
【0070】
別の例示的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置は、装置が使用するための多数の金属要素を備えるヘッダーブロックを備える。図19は、ヘッダーブロック1210を備える装置1200の略平面図である。ヘッダーブロックに備えられる他の金属要素を隙間調整するために、そして/または装置全体を隙間調整するために、隙間調整要素1220および1230がヘッダーブロック内に提供されてもよい。ヘッダーブロック内に隙間調整要素を適用することの1つの有利な特徴は、隙間調整要素がヘッダーブロック中の金属要素に比較的近接して提供されることである。
【0071】
MRIスキャンのタイプも、歪曲を低減するように設計することができる。異なるタイプのスキャンにより、画像の歪曲に対して異なる効果を与えることができる。例えば、グラジエントエコーパルス系列は、画像の歪曲を緩和するためには不利であり、スピンエコー系列のほうが優れている。さらに、画像の歪曲に対処するために隙間調整と呼ばれる技術も使用することができる。画像の歪曲は、低静磁場強度機器ではより良好であるが、高静磁場強度機器ではより劣悪である。スキャンタイプ、画像処理、および隙間調整によって画像の歪曲を最少にするための方法を、以下に詳細に説明する。
【0072】
例示的な実施形態によれば、MRI機器および関連する画像処理システムは、インプラント(例えば、頭部のインプラント)から生じる画像の歪曲に対処するために使用される。これまでに考察した本発明の他の特徴の1つ以上を適用した後、調整することによりかかる装置から生じる歪曲をさらに低減できるかも知れず、特に、パルス系列の選択、特定の画像処理技術、および隙間調整がすべてインプラントから生じる歪曲に対処するまたはそれを緩和するために使用してもよい。
【0073】
金属製インプラントに由来する画像のアーチファクトは、パルス系列に非常に依存する。画像の歪曲を低減するために、特定のMRIパルス系列が選択されてもよい。診断用MRI画像化において一般的に使用されるパルス系列にはいくつかある。これらとしては、とりわけグラジエントエコーパルス系列、スピンエコーパルス系列、および高速スピンエコーパルス系列が挙げられる。スピンエコーパルス系列は、グラジエントエコー系列に比べて、性質上、磁場の歪曲によるアーチファクトの影響を受けにくい。それゆえ、インプラントに関連する画像の歪曲を低減するためにスピンエコー系列を選択してもよい。
【0074】
画像処理技術も、頭部に埋め込まれた装置に関連する画像の歪曲に対処するために利用することができる。例えば、画像処理ソフトウェアを利用して、公知の歪曲を補正してもよい。歪曲を補正するための画像処理技術の一般的な適用に加えて、好適な実施形態では、特定のインプラント装置に適用できる技術が利用される。かかる技術としては、特定の埋め込まれた装置に関連する歪曲を補正するための処理アルゴリズムにおいて公知の要因(例えば、材料組成、サイズ、および埋め込み位置)を使用することを挙げることができる。実際、必要な画像処理アルゴリズムは、必要な補正データを提供するためにファントム中に埋め込まれた特定の装置の画像を獲得することによって経験的に決定してもよい。
【0075】
頭部の画像の歪曲に対処するために利用することができるさらに別の画像化のアプローチは、画像化勾配のためのより広いバンド幅を使用することである。
【0076】
シミング技術も、インプラント(例えば、装置100)に起因する磁場の不均一性に対処するために利用することができる。理想的には、埋め込まれた装置の存在に関連する磁場勾配も、磁場の不均一性を補正するためのシムコイルを使用することによって対処することができる。シムコイルは、磁場の不均一性を能動的に補正するためにMRI機器またはNMR機器に対して設計され設置されている。シムコイルはこれを、電流がシムコイルを通って流れるときに「打ち消す」磁場を提供することにより行う。かかるシムコイル中の電流を調整して望ましくない勾配を打ち消すことは、「能動型シミング」として公知である。種々の能動型シミングアプローチが公知であり、特にNMR分光法で使用されている。しかしながら、MRIにNMRにおける磁場の不均一性を補正する能力に対するニーズが存在し、特にNMRのシミング原理および装置は本発明に従って応用することができる。
【0077】
特定の従来のMRI機器は、磁場中での患者の配置に起因する磁場の不均一性を補正するためにシムコイルを利用する。シムコイルは、患者に起因する一次勾配に対処すること、すなわち磁場中の患者の存在に起因して場所とともに磁場強度が一次的に変動するのを補正することを意図している。かかるシムコイルは、本発明の特定の実施形態にかかるアプローチを使用して、インプラントに起因する磁場の不均一性を調整するのに有用である場合がある。しかしながら、インプラント(特に、強磁性材料を含むインプラント)は、より高次の勾配、例えば磁場強度における二次変分を有する二次勾配を生じるかも知れない。一次勾配を補正するためにMRI機器で現在使用されている能動型シムコイルは、インプラントに伴う二次勾配には適切には対処しないかも知れない。従って、本発明の実施形態では、付加的なシムコイルを設置し、それをインプラントの存在を補正するために利用する。同様に、付加的なシムコイルは、所望のレベルの補正に応じて、高次の勾配を補正するために利用することができる。
【0078】
能動型シミングは、種々のシムコイルに供給される電流を変えて最良の勾配補正を達成することにより、手動で実施してよい。しかしながら、特に二次およびより高次の勾配を補正する場合には複数のシムコイル間の相互作用に起因してシミングの工程は複雑で退屈であるため、様々な程度の達成レベルでかかるシミングを自動化するためにコンピュータが使用されてきた。
【0079】
例示的な実施形態によれば、インプラントのためのカスタムシムが利用される。装置特性は公知であり、それゆえ能動型シミング技術により特別に対処することができるため、このカスタムシムを作成してもよい。好適な実施形態では、カスタムソフトウェアを利用して能動型シミングを自動化してもよく、カスタムソフトウェアを具体的な頭部装置および/または具体的なMRI機器に対してカスタマイズしてもよい。
【0080】
例示的な実施形態によれば、インプラントに関連する歪曲は、以下のようにして軽減される。インプラントを有している患者は、画像収集のためにMRI機器中に配置される。画像化に先立って、シムコイルを使用して磁場を調整し、インプラント(および患者)が生じさせる磁場の望ましくない勾配に対処する。この調整には、一次勾配に対処するためのシムコイルの使用を含んでいてもよく、一次、二次およびさらにより高次の勾配に対処するために複数のシムコイルを調整することを含んでいてもよい。磁場の不均一性が(手動によるか、またはカスタムシミングソフトウェアもしくは他の自動化技術を使用して自動的に)能動型シミングによって対処すると、好ましくはスピンエコーパルス系列を利用して画像を収集してもよい。データを収集すると、インプラントに関連する公知の歪曲を調整するように修正された従来の再構成技術を使用して(例えば、特定の埋め込み装置を調節するためのカスタム画像化プロセス作業の使用)画像を再構成してよい。
【0081】
埋め込み型神経刺激装置の文脈で埋め込み型医療装置を本明細書中に説明してきたが、他のタイプの埋め込み型医療装置(例として、埋め込み型除細動器、ペースメーカー、心臓除細動器、心筋収縮能変調器、薬物投与装置、診断用レコーダー、人工内耳など)も本明細書中に記載する特徴を使用することにより恩恵を受けることができることを理解するべきである。
【0082】
種々の例示的な実施形態で示した埋め込み型医療装置の構成および配置は例示のためにすぎないことに注意するべきである。本開示においていくつかのみの実施形態を詳細に説明してきたが、本開示を見た当業者は、新規な教示および本明細書中に記載した主題の利点から実質的に逸脱することなく多くの修正(例えば、サイズ、寸法、構造、形状および種々の要素の釣り合い、パラメータの値、取り付けの構成、使用する材料、色、配向などにおける変更)が可能であることを容易に認識するであろう。例えば、一体的に形成されるとして示した要素は、複数のパーツまたは要素から構成されていてもよく、要素の位置は逆になっていても、または別様に変更されていてもよく、不連続な要素または位置の性質もしくは数は改変または変更されていてもよい。従って、すべてのかかる修正は本発明の範囲内に含まれるということが意図されている。任意のプロセスまたは方法のステップの順序または順番は、別の実施形態に応じて変更または再構成してよい。種々の例示的な実施形態の設計、操作条件および構成において、本発明の範囲から逸脱することなく他の置き換え、修正、変更および省略を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(a)〜(f)は、チタン材料の使用により生じるMRI画像の歪曲を示す図である。
【図2】(a)〜(f)は、フェライト材料の使用により生じるMRI画像の歪曲を示す図である。
【図3】(a)〜(f)は、鋼材料の使用により生じるMRI画像の歪曲を示す図である。
【図4】例示的な実施形態にかかるINSの形態をした埋め込み型医療装置の切り取り斜視図である。
【図5】例示的な実施形態にかかる図4に示すINSのような、INSで使用するように構成された電池の部分切り取り斜視図である。
【図6】例示的な実施形態にかかる図5に示す電池の分解斜視図である。
【図7】MRI画像の歪曲を生じさせ得る構成要素が互いに隣接して備えられていないハイブリッドまたは回路基板の略平面図である。
【図8】ポッティング材料または接着剤が中に提供される隙間調整材料を含む例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図9】装置のハウジングの内面に提供されためっきとして提供される隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図10】装置のハウジングの外面に提供されためっきとして提供される隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図11】装置のハウジングまたはケーシングの一部分に備えられる隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図12】装置のハウジングに備えられた異なる厚みを有する隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図13】例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略平面図である。
【図14】再充電コイルまたはテレメトリコイルが提供されている場所とは別の場所に装置のハウジングにコーティングまたはめっきされた隙間調整材料を示す、図13に示す装置の略断面図である。
【図15】埋め込み型医療装置に隙間調整材料を提供するために使用してもよいいくつかの可能性のあるコーティングパターンまたはめっきパターンを示す図である。
【図16】装置のハウジングに結合された隙間調整要素を有する、例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図17】例示的な実施形態にかかる装置の外表面に備えられた隙間調整要素を有する、埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図18】別の例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図19】ヘッダーブロックに備えられた隙間調整要素を有する例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図20】ステンレス鋼で作製された電池のハウジングまたはケーシングのMRI画像である。
【図21】アルミニウムで作製された電池のハウジングまたはケーシングのMRI画像である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
【0002】
本願は、米国特許法第119条第(e)項に基づいて、2006年3月24日出願の米国仮出願第60/785,881号および2006年9月29日出願の米国仮出願第60/827,621号の優先権を主張する。これらの開示の全体を、参照によって本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
本発明は、概して言えば、埋め込み型医療装置(IMD)の分野に関する。より具体的には、本発明は、核磁気共鳴画像法(MRI)の歪曲収差を低減するように意図された特徴を備える埋め込み型神経刺激(INS)装置のようなIMDに関する。
【0004】
埋め込み型神経刺激装置((implantable neurological stimulation device)(implantable neuro stimulator)またはINSと呼ばれることがある)は、ヒトの神経系または臓器に影響を及ぼすために使用される電気刺激信号を発生する。従来は、INSは、外科手術により患者の腹部、胸部または臀部上方領域の皮下ポケットに埋め込まれてきた。リード線の遠位端に備えられる電気接点は、所望の刺激位置(例えば、脊椎中の場所、または直接脳内に)に置かれ、リード線の近位端はINSに接続される。
【0005】
リード線の遠位端が直接に脳の部位に提供されている場合には、患者の頭部にINSを埋め込むことが所望されることがある。例えば、患者の頭部の頭皮の下に(頭蓋骨の表面上または頭蓋骨に形成したポケットもしくは切り取り部に)INSを埋め込むことが所望されることがある。
【0006】
INS装置のような医療装置を患者の体内に埋め込むことに伴う1つの困難は、かかる装置に使用される材料がMRIスキャンの間に生成される画像を変えるまたは歪める傾向にあることである。かかる歪曲は、装置のすぐ隣の周辺領域を越えて広がることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、MRIスキャンが行われたときに従来の装置に比べて画像の歪曲を低減するINSのような埋め込み型医療装置を提供するというニーズが存在する。MRI画像の歪曲を最少にするために、構成要素に対して異なる材料を利用する改良された埋め込み型医療装置を提供するというニーズも存在する。さらに、従来のスキャン方法に比べて、歪曲が少ない画像を提供するMRIスキャンを実施するための改良法を提供するというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態は、ハウジングと、このハウジング内に配置された第1の電極と、この第1の電極に結合された第1のタブと、このハウジング内に配置された第2の電極と、この第2の電極に結合された第1のタブとを備えるリチウム電池に関する。ピンはこの第2のタブに結合され、ハウジングの外側の場所へと延びる。第1のタブ、第2のタブおよびピンのうちの少なくとも1つはバナジウムを含む材料から形成されている。
【0009】
別の例示的な実施形態は、ハウジングと、正極に電気的に結合された第1の電流コレクタと、負極に電気的に結合された第2の電流コレクタとを備えるリチウム電池に関する。端子はこの第1の電流コレクタおよび第2の電流コレクタのうちの1つに結合されている。第1の電流コレクタ、第2の電流コレクタ、および端子のうちの少なくとも1つは、バナジウムおよびバナジウム合金からなる群から選択される材料を含む。
【0010】
別の例示的な実施形態は、人体に埋め込むように構成されたハウジングを備える埋め込み型医療装置に関する。リチウム電池はこのハウジング内に備えられ、バナジウム材料から形成された部材を備え、その部材は端子、および電極のためのタブからなる群から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
例示的な実施形態によれば、MRI画像の歪曲を低減するように意図された特徴を備える埋め込み型医療装置(例えば、INS)が提供される。1つの例示的な実施形態によれば、その装置の1つ以上の要素は、画像の歪曲を低減するかまたは相殺するように意図した所定の透磁率を有する材料またはコーティングを利用してもよい。別の例示的な実施形態によれば、その装置の1つ以上の要素は、(例えば、種々の要素の厚みを減少させるかまたは変化させることにより)MRIスキャンの間に発生する渦電流の発生を低減するように構成されていてもよい。
【0012】
人体は、ほとんど水から構成されており、水は0.9999912の比透磁率を有している。従って、水はわずかに反磁性である(例えば、表1を参照)。
【0013】
【表1】
【0014】
人体がMRIスキャンを受けるとき、磁場が印加されたときに水と大きく異なる透磁率を有する材料は、得られるMRI画像の歪曲を引き起こすであろう。MRIスキャンの間に生成される比較的高い磁場強度において、その材料の透磁率と水の透磁率との差が大きいほど、画像の歪曲が大きいことが観察されている。
【0015】
例えば、図1(a)および図1(b)は、埋め込まれたINSなしのヒトの頭部を模擬するための水を満たした20cm×40cmの円柱ファントムの、(1.5テスラの磁場強度における)MRIスキャンの間に撮影された画像を示す。図1(c)および図1(d)は、その円柱の一方の側にテープ止めされたチタンの缶を備えた円柱ファントムの、スピンエコーMRIスキャン法を用いて撮影された画像である。領域5の画像の歪曲が、画像の中に比較的暗い場所として見える。図1(e)および図1(f)に示すように、グラジエントエコーMRIスキャンを使用するときには、かかる歪曲は大きくなる。
【0016】
【表2】
【0017】
表2は、比較的低磁場強度における種々の材料の比透磁率を列挙する(このデータは、http://www.matweb.comのような種々の公に利用可能な情報源から入手した)。表2からわかるように、チタンは1.00005の比透磁率を有するが、他方、鉄(鋼の主成分である)は280,000の比透磁率を有する。従って、INS中に鉄を含めると比較的顕著な画像の歪曲を引き起こすことが予想されるであろう。一般に、室温で強磁性である材料(鉄、コバルト、ニッケルなど)は、比較的高磁場強度において水の比透磁率をはるかに超える比透磁率を有し、従って水の透磁率に近い透磁率を有する材料よりもはるかに大きくMRI画像を歪曲させることが予想されるであろう。
【0018】
図2〜図3はこの原理のさらなる実例を提供する。チタン製の缶が円柱ファントムに結合されていた図1(c)〜図1(f)に示す比較的小さい歪曲とは対照的に、図2および図3は、チタン製の缶の代わりにフェライト材料(図2)およびステンレス鋼(図3)を使用した場合に生じるMRI画像の歪曲を示す(図2(a)、図2(b)、図3(a)および図3(b)は、図1(a)および図1(b)で示したのと同様に、コントロール画像である)。図2および図3に示すように、フェライト材料および鋼材料については、得られた画像の歪曲はチタン材料を使用した場合に生じたものよりもはるかに大きい。
【0019】
表2中のデータは、種々の材料の比透磁率を示しているが、本発明者らは、MRIスキャンで使用される比較的高磁場強度において特定の材料が異なる特性を示すかも知れないということを観察した。例えば、銅は低磁場強度ではわずかに反磁性であることを表2は示唆しているが、銅の透磁率はより高磁場強度では比較的常磁性であるように変わる傾向があることが観察されている。(例えば、埋め込み型医療装置を隙間調整する際に使用するための)以下に説明するような材料を選択する際には、MRIスキャンで使用される比較的高磁場強度に曝されたときにかかる材料が所望の効果をもたらすことを確認するために、材料の高磁場強度透磁率を評価するべきである。
【0020】
例示的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置は、従来の装置により呈示されるであろうMRI画像の歪曲よりも少ない画像の歪曲をもたらすように設計することができる。この目的を達成するために、種々の異なる設計基準が採用されてもよい。例えば、1つの例示的な実施形態によれば、装置に使用される強磁性材料(すなわち、ニッケル、コバルト、鉄、およびフェライト)の量は減少する可能性がある。すべての金属が何らかのMRI画像の歪曲を発生させるであろうと予想されるが、強磁性材料の量を減少させると、わずかに反磁性および常磁性である材料の量を減少させる場合よりも画像の歪曲に対してはより大きい効果があるであろう。
【0021】
イメージングの間に誘導される渦電流を最少にすることも所望される場合がある。渦電流は歪曲を引き起こすが、かかる歪曲は強磁性材料が引き起こす歪曲ほどには重大ではないと予測される。特定の装置に付随する渦電流を減少させることは、主に、従来の要素に比べて種々の要素の厚みを減少させるか変化させることにより、達成されるかも知れない。
【0022】
水の透磁率とは異なる透磁率を有する非強磁性材料を取り除くまたは隙間調整することも所望される場合がある。例えば、常磁性材料から作製された比較的大きい要素を、常磁性材料を相殺し画像の歪曲を低減するために反磁性材料で隙間調整してもよい。例示的な実施形態によれば、高磁場強度(例えば、1.5テスラまたは3テスラ)において水の透磁率とは異なる透磁率を有する材料(例えば、MRI画像化用途で見出されるもの)を、隙間調整してもよく、装置から取り除いてもよく、または重大な画像の歪曲を生じる可能性がより低い材料から作製してもよい。
【0023】
図4は、例示的な実施形態にかかる埋め込み型神経刺激(INS)装置の形態の埋め込み型医療装置100を示す。図4に示すように、装置100は電池10、コイル120(例えば、電池の再充電用、またはテレメトリ用)、配線盤またはハイブリッド130(例えば、半田付けされているかまたは別の方法で備えられている種々の電子要素を有する回路基板)、装置のエンクロージャ140(例えば、ハウジングまたはケーシング)、インターコネクト150、およびコネクタまたはヘッダー160(このコネクタは図4の右側に示すような開口を備える。この開口はリード線がその中へ導入されるように構成されている)を備える。
【0024】
図5〜図6は、装置100と併せて使用され得る電池10の要素の図解をさらに提供する。電池10は、種々の例示的な実施形態にかかる再充電不可の(すなわち一次の)、または再充電可能な(すなわち二次の)リチウムベースの電池であってよい。
【0025】
図5を参照して、電池10は、比較的薄肉の中空構造体の形態で提供される電池ケースまたはハウジング20を備える。この電池ケースまたはハウジング20は、提供される複数の要素を備えるように構成されている。ハウジング20から電池10の内部要素を分離するために、ハウジング20に隣接してまたはハウジング20に近接してライナー24が備えられる。カバーまたはキャップ22は、電池10の上面に備えられ、これはハウジング20に結合(例えば、溶接、接着など)されていてもよい。ヘッドスペース絶縁体26がハウジング20内に備えられ、ハウジング20内に備えられる電極への接続を作製する空間が提供される(付加的に、電池10のヘッドスペース領域からセル要素を分離するように働く図6に示すコイルライナ27が備えられていてもよい)。ブラケットの形態の部材または要素29が、負極の電流コレクタをケースおよび/またはハウジングへ結合するために備えられていてもよい。
【0026】
電池10は、ハウジング20に提供されるセル要素30を備える。セル要素30は少なくとも1つの正極および少なくとも1つの負極を備える。各々の電極は、タブの形態の部材または要素またはそれに結合された電流コレクタを有する。図5〜6に示すように、電極32は、それに結合したタブ34を有する正極であり、電極36は、それに結合したタブ38を有する負極である。かかる構成では、電池10はケースが負極である構成の電池である。電池が、ケースが正極であるかまたはケースが電気的に中性である構成の他の例示的な実施形態によれば、電極は逆にされる(例えば、電極32は負極であり、電極36は正極である)。
【0027】
正極の電流コレクタ34は、ピンまたは端子25(例えば、フィードスルーピン)であり、このピンまたは端子25は、それがカバー22に備えられる開口部または開口23を通って突き出るように備えられる。かかる実施形態では、このピンは電池のためのプラス端子として作用し、その遠位端でハイブリッド中に備えられた機構に(直接または間接的に)結合されていてもよい。ケースが電気的に中性であるかまたはケースが正極である電池の構成では、ピン25は、負極に備えられるタブに結合されていてもよい。
【0028】
セパレータ40は、中間すなわち電極間に備えられ、電解質50も(例えば、電池10のカバー22に備えられる注入口の形態の開口部または開口28を通して)ハウジング20中に提供される。
【0029】
埋め込み型医療装置用途で使用される従来のリチウム電池では、電池のハウジングはステンレス鋼のような金属で作製される。電池10により引き起こされる画像の歪曲を低減するために、ハウジング20は、実質的なMRI画像の歪曲をもたらす可能性がより低い材料(例えば、以下の材料の1つ以上:(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金(3000シリーズを含む);(2)ヒートシールできる縁を備えたアルミ箔/ポリマー複合材(すなわち、「ホイルパック」);(3)チタンおよびチタン合金(合金はグレード5、グレード9、グレード1およびSP700(Ti−4.5Al−3V−2Mo−2Fe)を含む);ならびに(4)銅および銅合金)から作製してもよい。
【0030】
電気化学的安定性のために、いくつかのケース材料は一方または他方の電池の極性において、または中立電位においてのみ使用すべきであることに注意するべきである。例えば、多くのリチウムベースの電池構成物では、ハウジング20がセルの負極にある場合、アルミニウムは不適切なハウジング材料であることがあり、ステンレス鋼またはチタンは正のセル極性には不適切であろう。このハウジング材料選択は、電池化学および材料安定性の知識に依存する。図20および図21はステンレス鋼製電池ケース(図20)およびアルミニウム電池ケース(図21)を撮影したMRI画像を示す。見てわかるように、アルミニウム製電池ケースが引き起こす歪曲の量はステンレス鋼製電池ケースが引き起こす歪曲よりも有意に少ない。
【0031】
電池10の他の要素も、重大なMRI画像の歪曲を引き起こす可能性がより小さい材料から形成されていてよい。例えば例示的な実施形態によれば、ピン25(従来はチタン合金またはニオブで作製されている)、タブ34、38およびブラケット29のような要素は、アルミニウム、銅、バナジウムまたはそれらの合金もしくは組合せから作製されてもよく、ヘッダーおよび注入口28はハウジング20に関して上で記載した材料の1つ以上から作製されていてもよい。
【0032】
ケースが負極である構成の電池の例示的な実施形態によれば、負極に結合されているタブ(例えば、図6に示すタブ38)はバナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。ケースが正極であるかまたは中性である構成の電池の別の例示的な実施形態によれば、ピン25および/または負極に結合されているタブ(かかる構成では電極が逆転しているので、これは図6に示すタブ34にあたることになる)は、バナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。別の例示的な実施形態によれば、正極の電位が約3.6ボルトを超えない(すなわち、バナジウムの腐蝕電位を超えない)場合には、正極に結合したタブはバナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。電池10の他の機構も、他の例示的な実施形態(例えば、ハウジング20またはカバー22)に従ってバナジウムまたはバナジウム合金から形成されていてもよい。
【0033】
バナジウムを使用することの1つの有利な特徴は、MRI画像の歪曲を低減するのに有益であることに加えて、バナジウムは銅およびチタンの両方に溶接されてもよいことである(例えば、これにより、バナジウムを銅電極からチタンケースに溶接することができるように、チタンケースを使用してケースが負極である構成が可能になる)。他の適用では、アルミニウム正極からのインターコネクトをアルミニウムケースに溶接することができるケースが正極である構成を使用してもよい。
【0034】
ピン25をハイブリッド130に接続する導体は、アルミニウム、銅、チタン、バナジウムまたはこれらの合金から作製されてよい。あるいは、ピン25は、別個のコネクタを必要とすることなくハイブリッド130に直接接続されていてもよく、別の実施形態では、チタンまたはチタン合金のような非鉄の導体を使用してピン25をバルシールに接続してもよい。
【0035】
ピン25が密閉シールした電池に備えられている例示的な実施形態によれば、このピンはチタン合金(例えば、グレード5、グレード9またはSP700)で作製されていてよい。別の例示的な実施形態によれば、このピンはアルミニウムをも含むことができる。
【0036】
ピン25が非密閉シールされた電池に備えられている例示的な実施形態によれば、それはひだ状または「リベットが貫通する」ポリマーの絶縁ゴムを備えていてもよい。リベット部分は密閉シールされた電池について列挙したのと同一の材料であろう。このポリマーは、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレンまたはHDPEのような低クリープ材料)であってもよく、ETFEであってもよい。
【0037】
例示的な実施形態によれば、負極活物質は、黒鉛、リチウム合金元素(例えば、アルミニウム、スズ、およびケイ素)ならびにこれらの組合せから選択してよく、正極活物質はLiCoO2;LiMxNi1−xO2(式中、Mはチタンまたはアルミニウムのような金属である);LiMn2O4;LiCoxMnyNizO2(式中、x+y+z=1である)およびこれらの組合せから選択してよい。
【0038】
埋め込み型医療装置100の種々の要素も、重大なMRI画像の歪曲を発生する可能性がより小さい材料から作製されてよい。例えば、装置100を組立てる際に従来使用されていたねじおよび位置決めねじブロックはステンレス鋼から作製されており、これらは高い鉄含量を有する。例示的な実施形態によれば、装置100は、生体適合性でありかつMRI画像を歪曲する傾向が低い材料(例えば、チタンまたはチタン合金、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンのようなポリマー材料など)から形成されるコネクタを利用する。
【0039】
図4に示すもののような埋め込み型医療装置はまた、装置内に1つ以上の電気接点(示さず)を利用してもよい。現在は、かかる接点は、クロム、コバルト、モリブデンおよびニッケルを含む合金から作製されたハウジング内に白金ばね接点(バルシールと呼ばれている)の形態で提供されている。例示的な実施形態によれば、装置100は、ハウジングを製造するのに以前に使用されていた合金の代わりに、(例えば、約1.008と1.02との間の透磁率を有する)低透磁率のステンレス鋼を利用する。別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは白金または白金合金から作製されてよい。さらに別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは耐クリープ性のポリマー(例えば、ポリスルホンまたは熱可塑性ポリエーテルエーテルケトン(PEEKと呼ばれる))から作製されてよい。ポリマーを利用することの1つの有利な特徴は、そうすることによって、鉄材料の使用に起因する画像の歪曲が低減されるだけでなく、渦電流により生じる画像の歪曲も解消されるであろうことである。さらに別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは白金張りチタン材料から作製してもよい。
【0040】
配電盤またはハイブリッド130は、電子チップなどの種々の機構を備える。従来では、かかる要素は鉄材料(例えば、コイルまたは誘導子のためのコア)を利用してもよい。例示的な実施形態によれば、ハイブリッド130は鉄材料を使用することなく製造される(例えば、テレメトリおよび/または再充電アンテナはエアコアアンテナを利用してよい)。
【0041】
ハイブリッド130とともに利用される従来の結合パッドは、ニッケル200またはKovar(鉄、ニッケルおよびモリブデンの合金)から形成されていてよい。例示的な実施形態によれば、ハイブリッドとともに利用される結合パッドはチタン、白金、銅またはこれらの合金から形成されていてよい。
【0042】
装置100とともに利用されるコイル120は、従来は銅から形成されており、フェライトのコアを備えていた。銅は水の透磁率に近い透磁率を有しかつ優れた導体として作用するため、コイル120には銅を使用し続けることが望ましいであろう。例示的な実施形態によれば、従来の設計で使用されるフェライトコアを有する銅コイルの代わりに、空芯のある銅コイルが使用される。他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料(白金、アルミニウム)の輪のような部材または要素は、このコイルに隣接してまたはコイルに近接した位置に提供されてもよい。
【0043】
装置のエンクロージャ140は、従来は、水の透磁率に近い透磁率を有するグレード1のチタンから作製されていた。しかしながら、装置のエンクロージャ140は比較的大きい表面積を有するので、MRIスキャンの間に比較的顕著な渦電流をエンクロージャ140の上に生成する可能性があり、画像の歪曲が生じるかも知れない。MRIスキャンの間に形成される渦電流を低減するため、装置のエンクロージャは、より高い抵抗率を有するチタンから形成されてよい。例えば、例示的な実施形態によれば、装置のエンクロージャはグレード9のチタン(または高抵抗率を有するチタンの別のグレードもしくは合金)を利用してよい。
【0044】
他の例示的な実施形態によれば、異なる材料を使用して装置のエンクロージャ140を形成してもよい。例えば、例示的な実施形態によれば、エンクロージャをポリマーで構築し、密閉のためにダイヤモンド様のコーティングを使用して覆ってもよい。かかる構築物は、スキャンの間にエンクロージャ上に生成する渦電流および生成する画像の歪曲を有意に減少させると予想される。別の実施形態によれば、装置のエンクロージャ140は耐クリープ性のポリマー(例えば、熱可塑性ポリエーテルエーテルケトンまたはポリスルホン)を使用して構築してもよい。こうすれば、スキャンの間にエンクロージャ上に生成する渦電流を完全に解消するであろう。
【0045】
他の例示的な実施形態では、装置のエンクロージャ140は、スキャンの間に渦電流のループ領域を減少させる反射を生成するための種々の厚みを備えるように形成されてもよい。例えば、エンクロージャ140は、電気抵抗をさらに高め渦電流を最少にするために、周囲のエリアよりも薄いエリア(例えば、ゾーン、領域など)を備えて作製されてもよい。1つの例示的な実施形態によれば、エンクロージャ140は、ハウジングの複数のエリアまたは領域が様々な厚みを有するとして形成されるように、(例えば、チタンのハウジングが射出成形される)金属射出成形プロセスで製造されてよい。別の例示的な実施形態によれば、ハウジングは実質的に均一な厚みを有してもよく、ハウジングの特定の領域の厚みを増すためにハウジングに結合された(例えば、溶接された)要素を有していてもよい(例えば、チタンのハウジングは、チタン、白金またはアルミニウムの細片材料がハウジングに溶接されていてもよい)。
【0046】
拡張部、テザー、または他のアクセサリが重大な画像の歪曲を生じさせない材料を使用して構築されてもよい。例えば、例示的な実施形態では、拡張部またはテザーは白金イリジウム充填材および接点を使用して構築されてもよい。
【0047】
例示的な実施形態によれば、INSのような埋め込み型医療装置の全体または一部分は、装置100が埋め込まれる生命体がMRIスキャンを受けるときに画像の歪曲を減少させるために、公知の透磁率を有する材料を使用して隙間調整されてもよい。例えば、全体を常磁性にする比透磁率を装置が有する場合、装置の常磁性を相殺するために反磁性の隙間調整材料を提供し、装置の全体の透磁率を水の透磁率に近づけることが有利であるかも知れない。隙間調整は、装置またはその一部分を隙間調整材料コーティングまたはめっき(例えば、耐食肉盛)することを含むどんな方法で行ってもよい(例えば、チタンハウジングを白金またはパラジウムで隙間調整してもよい)。隙間調整が達成されるかも知れない別の方法は、所望の隙間調整特性を有する要素を装置内に提供することである。医療装置を隙間調整するこれらの方法および他の方法を、添付の図面を参照して以下で説明する。装置を隙間調整するために使用する材料は、透磁率および生体適合性を含む種々の考慮事項に基づいて選択してよく、そのような材料としては、例えばチタン、パラジウム、白金、銀、銅、マンガン、アルミニウム、およびこれらの合金および組合せを挙げることができる。
【0048】
埋め込み型医療装置を隙間調整材料で隙間調整する目的は、水にできるだけ近い(そして装置が埋め込まれる生命体の透磁率にできるだけ近い)透磁率を有する装置を製造することであり、ある状況では、隙間調整材料を加えない場合よりもMRI画像の歪曲が少ないように、何らかの隙間調整材料を単に加えることで十分かも知れない。所定の状況において受け容れられるかまたは適切である受け容れられるMRI画像の歪曲の程度は、装置の埋め込み場所および他の要因に応じて変わるかも知れず、隙間調整材料の量は、その状況下で適切に少量の画像の歪曲を提供するのに十分であるように選択するべきである。
【0049】
例示的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置に加えられるべき適切な量の隙間調整材料を決定する方法としては、装置の試作品を作成し、装置の試作品の電磁的モデルを作成することを含む。次いで試作品を解析して、(例えば、磁場中の磁場摂動を見ることにより)装置の試作品の総体の比透磁率を決定してもよい。装置試作品の総体の比透磁率に基づき、隙間調整材料が常磁性のものであるべきか反磁性のものであるべきかを決定してもよい。次いで適切な隙間調整材料を選択し、装置試作品に添加してよい。装置試作品に隙間調整材料を加えたのち、装置を作リ直してその新しい総体の非透磁率を決定してもよい。隙間調整材料を再び加え、所望のレベルの総体透磁率に到達するまで装置を作り直してもよい。
【0050】
隙間調整材料の適切な配置を決定するために、装置のどの要素が画像の歪曲にとって最も大きな原因となりそうか(すなわち、「問題の要素」)をまず理解することが望ましい。隙間調整材料がその所望の機能を果たす能力を高めるために、問題の要素が一緒のグループにならず、むしろ離れて配置されるように装置を設計することが有益である場合がある。図7は2つの問題の要素202および204を備える回路基板またはハイブリッド200を示す。示すように、問題の要素202および204は近接または隣接しては備えられておらず、むしろそれらがハイブリッド200の反対の端部にあるように間隔を広げられており、これらの要素が引き起こす局在化した画像の歪曲の量を減少させる。問題の要素の具体的な配置および場所は、種々の実施形態に従って変わってもよい。
【0051】
別の例示的な実施形態では、これらの要素が引き起こす望ましくない効果をいくらかは局所的に打ち消しあうようにするために(例えば、効率的に問題の要素を「隙間調整する」ために)、問題の要素は反対の透磁率を有する他の要素に近接または隣接して備えられてもよい(例えば、常磁性の要素は1つ以上の反磁性の要素の次に備えられていてもよい)。例えば、図7に示すように、要素204が反磁性である場合は、要素206および208は常磁性であってもよい。
【0052】
他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料は埋め込み型医療装置内で使用される他の材料内に組み込まれていてもよい。例えば、図8に示すように、埋め込み型医療装置300は、ハイブリッドまたは回路基板310が備えられているハウジングまたはケーシング302を備える。ポッティング材料または充填材量320が装置300内に提供され、隙間調整材料がポッティング材料320中に提供または装填されてもよい。例示的な実施形態によれば、ポッティング材料は、エポキシまたはシリコーンゴムから作製され、その上に適切な隙間調整材料が備えられている(例えば、装置が全体として常磁性であれば、銀のような反磁性材料がポッティング材料中に組み込まれていてもよい)。
【0053】
図8に示した実施形態と同様に、種々の要素を装置300内に固定するために使用されるエポキシまたは他の接着剤は、その中に提供または装填される隙間調整材料を含んでいてもよい。隙間調整材料を装置300のハウジング302内に提供されるポッティング材料または接着剤の中に提供することの1つの有利な特徴は、隙間調整材料は占有されていない空間中またはすでに装置中で使用されている材料中に提供されるため、装置のサイズにはほとんどまたは全く影響を与えないことである。
【0054】
装置の他の要素も、隙間調整材料を装填されていてもよい。例えば、図4に示すように、絶縁体カップ170は、装置100の特定の要素を収容するために装置100中に備えられる。例示的な実施形態によれば、装置100の透磁率を改善するために、絶縁体カップ170は隙間調整材料を装填されていてもよい。
【0055】
他の例示的な実施形態によれば、装置のエンクロージャの全体または一部分は、隙間調整材料でコーティング、めっきまたは耐食肉盛されていてもよい。図9および図10は、2つの例示的な実施形態に従って、埋め込み型医療装置のハウジングにコーティング(例えば、めっき、耐食肉盛など)された隙間調整材料を示す。図9は、隙間調整材料410がハウジング402の外面または外表面に提供されているハウジングまたはケーシング402を有する装置400を示す。図10は、めっきまたはコーティング510がハウジング502の内面または内表面に提供されているハウジングまたはケーシング502を有する装置500を示す。例示的な実施形態によれば、図9および図10に示すハウジングは常磁性材料から作製されており、隙間調整材料は反磁性材料から作製されている。他の例示的な実施形態によれば、ハウジングは常磁性材料から作製され、隙間調整材料は反磁性材料から作製されていてもよい。
【0056】
隙間調整材料が装置のハウジングの外表面に提供される場合、めっき材料またはコーティング材料として選択される材料は装置が埋め込まれる生命体と生体適合性であることを確実にすることが望ましいことに注意するべきである。隙間調整材料の厚みは、種々の例示的な実施形態に従って変更されてもよい。例示的な実施形態によれば、隙間調整材料は、約0.005インチ(0.125mm)と0.040インチ(1mm)との間の厚みを有する。
【0057】
図9および図10は、ハウジングの外表面または内表面のいずれかに提供された隙間調整材料を示しているが、隙間調整材料は外表面および内表面の両方に提供されていてもよいこと(さらには、外表面および/または内表面の一部のみに隙間調整材料が提供されていてもよいこと)に注意するべきである。外表面および内表面に提供される隙間調整材料は、組成が同一であっても異なっていてもよい。さらに、2種以上の隙間調整材料をハウジングの外表面および/または内表面に提供してもよい(例えば、銀を外表面の一部分に提供し、チタンを別の部分に提供してもよい、など)。
【0058】
特定の実施形態によれば、埋め込み型医療装置についてのハウジングの内部および/または外部は、装置のエンクロージャが生じさせる画像の歪曲を最少にするのに十分な厚みまでチタンまたはチタン合金で少なくとも部分的にコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)される。別の具体的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置についてのハウジングの内部および/または外部は、装置のエンクロージャが生じさせる画像の歪曲を最少にするのに十分な厚み(例えば、約0.005インチ)まで銀または銀合金で少なくとも部分的にコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)される。
【0059】
図9および図10は装置のハウジングの内表面および/または外表面の全体が隙間調整材料でコーティングまたはめっきされている実施形態を示しているが、他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料またはめっき材料がハウジングまたはケーシングの一部分にのみ提供されていてもよいことに注意するべきである。図11に示すように、埋め込み型医療装置600は、ハウジングまたはケーシング620内に提供される電池610およびハイブリッドまたは回路基板620を備える。ハイブリッド620は、MRI画像における画像の歪曲を生成する最大の原因となる2つの要素622および624(すなわち、それらはいわゆる「問題の要素」である)を備える。隙間調整材料は、問題の要素622、624に近接または隣接した場所(隙間調整材料630および632の領域またはエリアとして示す)にのみハウジング上に提供されている。このように、隙間調整材料は、問題の要素が引き起こすMRI画像の歪曲の量を低減するのにもっとも有効かも知れない場所に配置される。かかる構成の1つの利点は、装置の十分な隙間調整をもたらすのに必要とされる隙間調整材料の量が実際に必要とされる量により近く調製され得ることであり、これにより、もしもハウジングの内表面および/または外表面の全体を隙間調整材料でコーティングした場合よりも、少ない隙間調整材料を使用するだけで済むことになろう。装置のハウジングに別個のコーティングまたはめっきの領域を提供することは、マスキング技術または任意の他の適切な技術を使用して達成してよい。
【0060】
隙間調整材料の厚みは、ハウジング内の具体的な場所に必要な隙間調整材料の具体的な量を含む種々の考慮事項に従って変動してよい。図12は、電池710およびハイブリッドまたは回路基板720が備えられているハウジングを有する埋め込み型医療装置700を示す。示した実施形態では、電池710はハイブリッド720よりもMRI画像の歪曲の原因とはならないように決定された。従って、電池710に隣接して提供される場合に比べて、より多量の隙間調整材料がハイブリッド720に近接または隣接して提供されている。これは、電池710に隣接して提供された第1の厚みを有する第1のめっきまたはコーティングされた隙間調整材料740、およびハイブリッド720に隣接して提供された第2のめっきまたはコーティングされた隙間調整材料750によって示されている。例示的な実施形態によれば、2つの隙間調整材料740および750は同一の組成を有する。他の例示的な実施形態によれば、隙間調整材料740および750は異なる組成を有する(例えば、隙間調整材料740は白金を含むが、他方で隙間調整材料750はアルミニウムを含む)。隙間調整材料の組成および選択されたコーティング/めっき厚みは、ハウジング内の具体的な領域における隙間調整の必要量に応じて種々の例示的な実施形態に従って変動する。
【0061】
特定の場合には、装置のハウジングにコーティングまたはめっきの形態で隙間調整材料を提供することは、装置の充電またはテレメトリに逆効果を及ぼすことがある。かかる場合には、かかる機能に影響を及ぼさないようにコーティングを提供することが望ましいかも知れない。例えば、図13〜図14は、例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置800の概略図を示す。装置800は、その上に提供された電池810およびハイブリッドまたは回路基板820を有するハウジングまたはケーシング802を備える。再充電コイルまたはテレメトリコイル812は電池810に近接して備えられる。ハウジング802のコーティングにより生じ得る逆効果を低減または排除するために、コーティングは再充電コイルまたはテレメトリコイル812に近接したハウジングのエリアに提供されてはいない。図14に示すように、コーティング830および832は電池に隣接して提供され、コーティング834および836はハイブリッド820に隣接して提供されている。領域840、842においてコーティング830、834の間およびコーティング832、836の間に空間が設けられ、領域844、846にはコーティングは施されていない。このように、再充電/テレメトリコイルに近接する領域840、842、844および846にはコーティングが施されていない。ハウジングを選択的にコーティングすることは、マスキングまたは他の適切な方法によって達成してよい。
【0062】
図9〜図14に示す装置のハウジングをめっきまたはコーティングすることは、任意の適切な方法(例えば、PVD、CVD、焼結など)により達成してよい。例示的な実施形態によれば、常磁性材料は物理的気相成長法によって装置のハウジングにコーティングされる。図11〜図14は装置のハウジングの内面にめっきすることを示しているが、同様の結果は、かかる装置の外表面をコーティングまたはめっきすることによっても得られるかもしれないことに注意するべきである(例えば、図11〜図14のハウジング内に示すコーティングは、代わりにハウジングの外表面に提供されてもよい)。
【0063】
図8〜図14に示した特徴は、所望に応じて組合わせてもよい。例えば、図14に示した実施形態は、(例えば、図12に示すように)異なる厚みを有するコーティングを備え、および/または(例えば、ハイブリッドに隣接する問題のエリアに関して図11に示すように)問題のエリアに隣接してコーティングが提供されるように修正されてもよい。隙間調整材料に装填されたポッティング材料をも使用してよい。かかる特徴の種々の組合せが可能であり、すべてのかかる組合せは本開示の範囲に含まれることが意図されている。
【0064】
ハウジングのような要素のすべてまたは一部分に隙間調整材料を提供するために、種々のコーティング方法のいずれを使用してもよい。例えば、ハウジングのすべてまたは一部分を隙間調整材料で完全にコーティングしてもよい。他の例示的な実施形態によれば、コーティングは、マスキングまたは現在公知または今後開発される可能性がある他の技術を使用して、種々のパターンのいずれをも有するように塗布してよい。図15は、(例えば、マスキング技術または他の適切な技術を使用して形成される)種々の実施形態に従って成分のすべてまたは一部分に塗布されてもよい4つのコーティングパターンを示しているが、多数の他のパターンが可能であるかも知れないことを理解するべきである。加えて、2種以上のパターンが同一の成分に塗布されてもよい。
【0065】
隙間調整材料でハウジングをめっきまたはコーティングする代わりに(またはそれに加えて)、隙間調整材料の構成要素(例えば、部材、要素など)は、溶接、半田付け、接着により、または任意の他の方法により、ハウジングに結合されてもよい。図16は、ハイブリッドまたは回路基板910を備えたハウジング902を有する埋め込み型医療装置900の略断面図を示す。2片の隙間調整材料920および922は、装置900の要素が占めていないエリアでハウジング902の内表面に結合されている。あらゆる数の隙間調整材料が、種々の実施形態にかかる種々のサイズ、形状、および/または構成のいずれをも有するハウジングに結合されていてもよい。
【0066】
図17は、別の実施形態にかかる埋め込み型医療装置1000の略平面図を示す。装置1000は、その外表面に溶接されたレール1010および1020を有する密閉シールされたハウジングまたはケーシング1002を備える。レール1010および1020は、例示的な実施形態に従ってチタンで作製されており、隙間調整材料はレールの中に装填されている。例示的な実施形態によれば、レールは約1mm〜4mmの厚みを有するが、レールのサイズ、形状および/または構成は他の例示的な実施形態に従って変わってもよい。他の例示的な実施形態によれば、レールはハウジングの内表面に結合されていてもよい。例示的な実施形態によれば、隙間調整材料は生体適合性材料の中に封入され、直接の組織への接触および腐食が回避される。
【0067】
他の隙間調整材料を、埋め込み型医療装置のハウジングまたはケーシングの外部に備えることもできる。例えば、図18は、ハウジングまたはケーシング1102の外表面に結合された隙間調整要素1110を有する、別の例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置1100を示す。例示的な実施形態によれば、隙間調整要素1110は、直接ハウジング1102に成形された隙間調整材料が装填されたポリマー材料である(例えば、装置のハウジングがチタンまたはチタン合金から作製されている場合、このポリマー材料は反磁性材料(例えば、銀または銀合金)を装填したエポキシであってよいが、具体的な構成物は他の例示的な実施形態に従い異なってもよく、加えて、このポリマー材料はハウジングの内表面に提供されてもよい)。別の例示的な実施形態によれば、要素1110はハウジング1102を囲むトランクである(例えば、このトランクは、隙間調整材料が中に組み込まれているシリコーンゴム(または類似の材料)トランクであってもよい)。さらに別の例示的な実施形態によれば、要素1110は、隙間調整材料を中に組み込んだパリレン(paralyne)コーティングである(この場合でも、パリレンコーティングがハウジングの内表面に提供されてもよいことに注意するべきである)。図18は完全にハウジング1102を囲うとして要素1110を示しているが、他の例示的な実施形態によれば、要素1110はハウジング1102を部分的にのみ囲っていてもよい(例えば、この要素がハウジング1102の外表面上の選択した場所にのみ提供されていてもよい)。
【0068】
医療装置のハウジングまたはケーシングのすべてまたは一部分を隙間調整する代わりに、またはそれに加えて、隙間調整材料を医療装置のハウジング内に備えられる構造体または要素に提供することもできる場合がある。例えば、電池10は装置のエンクロージャ140内に提供され、それゆえ装置100が埋め込まれる人体に直接接触しないため、電池10の外表面を隙間調整材料(例えば、反磁性材料)でめっきまたはコーティングすることが望ましいことがある。例示的な実施形態によれば、チタンまたはチタン合金の電池のハウジング20の内表面または外表面の少なくとも一部分は、ハウジング20が生じさせる画像の歪曲を低減するのに十分な厚み(例えば、約0.0001〜0.01インチ)まで銀または銀合金でコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)される。電池のハウジング20が銅または銅合金で作製されている別の例示的な実施形態によれば、ハウジング20は、ハウジング20が生じさせる画像の歪曲を低減するのに十分な厚み(例えば、約0.0001〜0.01インチ)までチタンまたはチタン合金でコーティング(例えば、耐食肉盛、めっきなど)されていてもよい。電池のハウジングの内表面および/または外表面のすべてもしくは一部分は、隙間調整材料でめっきまたはコーティングされていてもよく、そして図8〜図18に関連して本明細書中で説明したコーティング方法またはめっき方法は、具体的な電池構成において適切であるかも知れない場合に利用してよい(例えば、ハウジングの2つ以上の部分が、例えば埋め込み型医療装置の文脈で図12に示すように異なる量の隙間調整材料でめっきされていてもよい)ことに注意するべきである。
【0069】
別の例示的な実施形態によれば、非機能的な隙間調整要素(例えば、隙間調整部材または要素)がハイブリッドまたは回路基板(例えば、ハイブリッド200)に追加してハイブリッドを隙間調整してもよい。例えば、図7に示すように、ハイブリッドを隙間調整するために、隙間調整要素210(例えば、部材、要素など)は直接ハイブリッドに追加される。要素210はハイブリッドに対して電子的な目的を果たさず、実際は、ハイブリッド200を隙間調整するために備えられる「ダミー」要素(例えば、隙間調整材料のブロック)である。要素210はハイブリッド上の任意の適切な場所に(例えば、隙間調整することにより恩恵を受ける別の要素に隣接して、ハイブリッド上のブランクエリアなど)に備えられてよい。要素210のサイズ、形状および/または構成は、他の例示的な実施形態に応じて変わってよい。2つ以上のかかる要素をハイブリッド上に備えてもよいことも理解するべきである。ハイブリッド上に直接隙間調整要素を提供することの1つの有利な特徴は、(ハイブリッドは固定サイズを有し、隙間調整要素はハイブリッドの一方の側または両側のさもなくば未使用の空間をフィットするため)隙間調整要素を収容するために装置のサイズを大きくする必要がないことである。
【0070】
別の例示的な実施形態によれば、埋め込み型医療装置は、装置が使用するための多数の金属要素を備えるヘッダーブロックを備える。図19は、ヘッダーブロック1210を備える装置1200の略平面図である。ヘッダーブロックに備えられる他の金属要素を隙間調整するために、そして/または装置全体を隙間調整するために、隙間調整要素1220および1230がヘッダーブロック内に提供されてもよい。ヘッダーブロック内に隙間調整要素を適用することの1つの有利な特徴は、隙間調整要素がヘッダーブロック中の金属要素に比較的近接して提供されることである。
【0071】
MRIスキャンのタイプも、歪曲を低減するように設計することができる。異なるタイプのスキャンにより、画像の歪曲に対して異なる効果を与えることができる。例えば、グラジエントエコーパルス系列は、画像の歪曲を緩和するためには不利であり、スピンエコー系列のほうが優れている。さらに、画像の歪曲に対処するために隙間調整と呼ばれる技術も使用することができる。画像の歪曲は、低静磁場強度機器ではより良好であるが、高静磁場強度機器ではより劣悪である。スキャンタイプ、画像処理、および隙間調整によって画像の歪曲を最少にするための方法を、以下に詳細に説明する。
【0072】
例示的な実施形態によれば、MRI機器および関連する画像処理システムは、インプラント(例えば、頭部のインプラント)から生じる画像の歪曲に対処するために使用される。これまでに考察した本発明の他の特徴の1つ以上を適用した後、調整することによりかかる装置から生じる歪曲をさらに低減できるかも知れず、特に、パルス系列の選択、特定の画像処理技術、および隙間調整がすべてインプラントから生じる歪曲に対処するまたはそれを緩和するために使用してもよい。
【0073】
金属製インプラントに由来する画像のアーチファクトは、パルス系列に非常に依存する。画像の歪曲を低減するために、特定のMRIパルス系列が選択されてもよい。診断用MRI画像化において一般的に使用されるパルス系列にはいくつかある。これらとしては、とりわけグラジエントエコーパルス系列、スピンエコーパルス系列、および高速スピンエコーパルス系列が挙げられる。スピンエコーパルス系列は、グラジエントエコー系列に比べて、性質上、磁場の歪曲によるアーチファクトの影響を受けにくい。それゆえ、インプラントに関連する画像の歪曲を低減するためにスピンエコー系列を選択してもよい。
【0074】
画像処理技術も、頭部に埋め込まれた装置に関連する画像の歪曲に対処するために利用することができる。例えば、画像処理ソフトウェアを利用して、公知の歪曲を補正してもよい。歪曲を補正するための画像処理技術の一般的な適用に加えて、好適な実施形態では、特定のインプラント装置に適用できる技術が利用される。かかる技術としては、特定の埋め込まれた装置に関連する歪曲を補正するための処理アルゴリズムにおいて公知の要因(例えば、材料組成、サイズ、および埋め込み位置)を使用することを挙げることができる。実際、必要な画像処理アルゴリズムは、必要な補正データを提供するためにファントム中に埋め込まれた特定の装置の画像を獲得することによって経験的に決定してもよい。
【0075】
頭部の画像の歪曲に対処するために利用することができるさらに別の画像化のアプローチは、画像化勾配のためのより広いバンド幅を使用することである。
【0076】
シミング技術も、インプラント(例えば、装置100)に起因する磁場の不均一性に対処するために利用することができる。理想的には、埋め込まれた装置の存在に関連する磁場勾配も、磁場の不均一性を補正するためのシムコイルを使用することによって対処することができる。シムコイルは、磁場の不均一性を能動的に補正するためにMRI機器またはNMR機器に対して設計され設置されている。シムコイルはこれを、電流がシムコイルを通って流れるときに「打ち消す」磁場を提供することにより行う。かかるシムコイル中の電流を調整して望ましくない勾配を打ち消すことは、「能動型シミング」として公知である。種々の能動型シミングアプローチが公知であり、特にNMR分光法で使用されている。しかしながら、MRIにNMRにおける磁場の不均一性を補正する能力に対するニーズが存在し、特にNMRのシミング原理および装置は本発明に従って応用することができる。
【0077】
特定の従来のMRI機器は、磁場中での患者の配置に起因する磁場の不均一性を補正するためにシムコイルを利用する。シムコイルは、患者に起因する一次勾配に対処すること、すなわち磁場中の患者の存在に起因して場所とともに磁場強度が一次的に変動するのを補正することを意図している。かかるシムコイルは、本発明の特定の実施形態にかかるアプローチを使用して、インプラントに起因する磁場の不均一性を調整するのに有用である場合がある。しかしながら、インプラント(特に、強磁性材料を含むインプラント)は、より高次の勾配、例えば磁場強度における二次変分を有する二次勾配を生じるかも知れない。一次勾配を補正するためにMRI機器で現在使用されている能動型シムコイルは、インプラントに伴う二次勾配には適切には対処しないかも知れない。従って、本発明の実施形態では、付加的なシムコイルを設置し、それをインプラントの存在を補正するために利用する。同様に、付加的なシムコイルは、所望のレベルの補正に応じて、高次の勾配を補正するために利用することができる。
【0078】
能動型シミングは、種々のシムコイルに供給される電流を変えて最良の勾配補正を達成することにより、手動で実施してよい。しかしながら、特に二次およびより高次の勾配を補正する場合には複数のシムコイル間の相互作用に起因してシミングの工程は複雑で退屈であるため、様々な程度の達成レベルでかかるシミングを自動化するためにコンピュータが使用されてきた。
【0079】
例示的な実施形態によれば、インプラントのためのカスタムシムが利用される。装置特性は公知であり、それゆえ能動型シミング技術により特別に対処することができるため、このカスタムシムを作成してもよい。好適な実施形態では、カスタムソフトウェアを利用して能動型シミングを自動化してもよく、カスタムソフトウェアを具体的な頭部装置および/または具体的なMRI機器に対してカスタマイズしてもよい。
【0080】
例示的な実施形態によれば、インプラントに関連する歪曲は、以下のようにして軽減される。インプラントを有している患者は、画像収集のためにMRI機器中に配置される。画像化に先立って、シムコイルを使用して磁場を調整し、インプラント(および患者)が生じさせる磁場の望ましくない勾配に対処する。この調整には、一次勾配に対処するためのシムコイルの使用を含んでいてもよく、一次、二次およびさらにより高次の勾配に対処するために複数のシムコイルを調整することを含んでいてもよい。磁場の不均一性が(手動によるか、またはカスタムシミングソフトウェアもしくは他の自動化技術を使用して自動的に)能動型シミングによって対処すると、好ましくはスピンエコーパルス系列を利用して画像を収集してもよい。データを収集すると、インプラントに関連する公知の歪曲を調整するように修正された従来の再構成技術を使用して(例えば、特定の埋め込み装置を調節するためのカスタム画像化プロセス作業の使用)画像を再構成してよい。
【0081】
埋め込み型神経刺激装置の文脈で埋め込み型医療装置を本明細書中に説明してきたが、他のタイプの埋め込み型医療装置(例として、埋め込み型除細動器、ペースメーカー、心臓除細動器、心筋収縮能変調器、薬物投与装置、診断用レコーダー、人工内耳など)も本明細書中に記載する特徴を使用することにより恩恵を受けることができることを理解するべきである。
【0082】
種々の例示的な実施形態で示した埋め込み型医療装置の構成および配置は例示のためにすぎないことに注意するべきである。本開示においていくつかのみの実施形態を詳細に説明してきたが、本開示を見た当業者は、新規な教示および本明細書中に記載した主題の利点から実質的に逸脱することなく多くの修正(例えば、サイズ、寸法、構造、形状および種々の要素の釣り合い、パラメータの値、取り付けの構成、使用する材料、色、配向などにおける変更)が可能であることを容易に認識するであろう。例えば、一体的に形成されるとして示した要素は、複数のパーツまたは要素から構成されていてもよく、要素の位置は逆になっていても、または別様に変更されていてもよく、不連続な要素または位置の性質もしくは数は改変または変更されていてもよい。従って、すべてのかかる修正は本発明の範囲内に含まれるということが意図されている。任意のプロセスまたは方法のステップの順序または順番は、別の実施形態に応じて変更または再構成してよい。種々の例示的な実施形態の設計、操作条件および構成において、本発明の範囲から逸脱することなく他の置き換え、修正、変更および省略を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(a)〜(f)は、チタン材料の使用により生じるMRI画像の歪曲を示す図である。
【図2】(a)〜(f)は、フェライト材料の使用により生じるMRI画像の歪曲を示す図である。
【図3】(a)〜(f)は、鋼材料の使用により生じるMRI画像の歪曲を示す図である。
【図4】例示的な実施形態にかかるINSの形態をした埋め込み型医療装置の切り取り斜視図である。
【図5】例示的な実施形態にかかる図4に示すINSのような、INSで使用するように構成された電池の部分切り取り斜視図である。
【図6】例示的な実施形態にかかる図5に示す電池の分解斜視図である。
【図7】MRI画像の歪曲を生じさせ得る構成要素が互いに隣接して備えられていないハイブリッドまたは回路基板の略平面図である。
【図8】ポッティング材料または接着剤が中に提供される隙間調整材料を含む例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図9】装置のハウジングの内面に提供されためっきとして提供される隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図10】装置のハウジングの外面に提供されためっきとして提供される隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図11】装置のハウジングまたはケーシングの一部分に備えられる隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図12】装置のハウジングに備えられた異なる厚みを有する隙間調整材料を示す例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図13】例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略平面図である。
【図14】再充電コイルまたはテレメトリコイルが提供されている場所とは別の場所に装置のハウジングにコーティングまたはめっきされた隙間調整材料を示す、図13に示す装置の略断面図である。
【図15】埋め込み型医療装置に隙間調整材料を提供するために使用してもよいいくつかの可能性のあるコーティングパターンまたはめっきパターンを示す図である。
【図16】装置のハウジングに結合された隙間調整要素を有する、例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図17】例示的な実施形態にかかる装置の外表面に備えられた隙間調整要素を有する、埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図18】別の例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図19】ヘッダーブロックに備えられた隙間調整要素を有する例示的な実施形態にかかる埋め込み型医療装置の略断面図である。
【図20】ステンレス鋼で作製された電池のハウジングまたはケーシングのMRI画像である。
【図21】アルミニウムで作製された電池のハウジングまたはケーシングのMRI画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された第1の電極と、
前記第1の電極に結合された第1のタブと、
前記ハウジング内に配置された第2の電極と、
前記第2の電極に結合された第2のタブと、
前記第2のタブに結合され、前記ハウジングの外側の場所へ延びるピンと、
を備え、前記第1のタブ、前記第2のタブおよび前記ピンのうちの少なくとも1つはバナジウムを含む材料から形成されていることを特徴とする、リチウム電池。
【請求項2】
前記ピンがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記第2のタブがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項4】
前記第1のタブがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項5】
前記第2のタブおよび前記ピンがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項6】
前記バナジウムを含む材料がバナジウム合金である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項7】
さらに、前記第1のタブおよび前記第2のタブのうちの1つを前記ハウジングに結合するために前記ハウジング内に提供されたブラケットを備え、前記ブラケットがバナジウムを含む材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項8】
前記ハウジングがアルミニウム、チタン、銅、およびこれらの合金ならびに組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項9】
前記ハウジングがアルミ箔およびポリマー複合材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電池を備える、埋め込み型医療装置。
【請求項11】
埋め込み型神経刺激装置である、請求項10に記載の埋め込み型医療装置。
【請求項12】
除細動器、ペースメーカー、心臓除細動器、心筋収縮能変調器、薬物投与装置、診断用レコーダー、人工内耳からなる群から選択される、請求項10に記載の埋め込み型医療装置。
【請求項1】
リチウム電池であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された第1の電極と、
前記第1の電極に結合された第1のタブと、
前記ハウジング内に配置された第2の電極と、
前記第2の電極に結合された第2のタブと、
前記第2のタブに結合され、前記ハウジングの外側の場所へ延びるピンと、
を備え、前記第1のタブ、前記第2のタブおよび前記ピンのうちの少なくとも1つはバナジウムを含む材料から形成されていることを特徴とする、リチウム電池。
【請求項2】
前記ピンがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記第2のタブがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項4】
前記第1のタブがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項5】
前記第2のタブおよび前記ピンがバナジウムを含む材料から形成されている、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項6】
前記バナジウムを含む材料がバナジウム合金である、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項7】
さらに、前記第1のタブおよび前記第2のタブのうちの1つを前記ハウジングに結合するために前記ハウジング内に提供されたブラケットを備え、前記ブラケットがバナジウムを含む材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項8】
前記ハウジングがアルミニウム、チタン、銅、およびこれらの合金ならびに組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項9】
前記ハウジングがアルミ箔およびポリマー複合材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電池を備える、埋め込み型医療装置。
【請求項11】
埋め込み型神経刺激装置である、請求項10に記載の埋め込み型医療装置。
【請求項12】
除細動器、ペースメーカー、心臓除細動器、心筋収縮能変調器、薬物投与装置、診断用レコーダー、人工内耳からなる群から選択される、請求項10に記載の埋め込み型医療装置。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1】
【図2】
【図3】
【公表番号】特表2009−531832(P2009−531832A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502887(P2009−502887)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/007251
【国際公開番号】WO2007/112004
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/007251
【国際公開番号】WO2007/112004
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】
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