説明

埋め込み配線を有する半導体装置及び埋め込み配線の製造方法

【課題】ディッシングを抑制できる太幅の埋め込み配線を有する半導体装置、及びディッシングを抑制できる太幅の埋め込み配線の簡易な製造方法を提供する。
【解決手段】金属製埋め込み配線を有する半導体装置であって、該埋め込み配線の表面の長さ方向に、所定値以下の間隔で、該金属よりも硬度の高い金属材料からなるバリア線6が配設されていることを特徴とする半導体装置及びその埋め込み配線の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み配線を有する半導体装置及び埋め込み配線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置においては、微細化、多層化のためダマシン法と呼ばれるCMP(化学的機械的研磨)を用いた埋め込み配線形成法が広く用いられている。半導体装置の多層化にあたっては、各層の高度の平坦性を確保する必要があるが、このCMPにより高度の平坦性を実現できるからである。
【0003】
しかしこのCMPを用いるにあたり、Cuを材料とする太幅配線や配線密度の異なる領域が混在する半導体装置においては、研磨時に一部の配線や太幅配線にディッシングと呼ばれる段差が発生する。そのため、研磨剤や研磨パッドの組成や材質を工夫したり、研磨圧力を調整することによりディッシングを抑制している。
【0004】
また特許文献1(特開2004−63995)では、ディッシングの発生を抑制する手段として、所定幅の埋め込み配線と所定幅を超える埋め込み配線とについて、めっき工程と研磨工程をそれぞれ独立して行う方法を開示している。
【0005】
また特許文献2(特開2000−68277)では、広い金属領域を金属ストライプに分割する設計ステップを含む半導体装置の製造方法が開示されている。また特許文献3(特開2000−3912)には、配線密度の大きな領域と小さな領域とで、銅膜とストッパ膜の量を変えることにより、CMP法による研磨時のエロージョン又はディッシングを防止する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−63995号公報
【特許文献2】特開2000−68277号公報
【特許文献3】特開2000−3912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダマシン法を用いた埋め込み配線は、その良好な特性から一般にCuを配線材料に用いて形成される。しかしCuは硬度が比較的低く、CMP工程において、特に配線幅が大きい太幅配線にディッシングという段差が発生することが知られている。
【0008】
半導体装置のこのような埋め込み配線には、その周囲にCMPストッパ膜と呼ばれる、配線となる金属よりも硬度の大きいバリア膜が形成されており、これがCuの過剰な研磨を防止する。しかし太幅配線では、CMPストッパ膜間の幅が大きいため、CMPストッパ膜から遠ざかるにつれ、研磨パッドのたわみや研磨剤の抉り出しの影響を受け、配線中央部の金属が過剰に研磨され、ディッシングが発生する。
【0009】
このようなディッシングを抑制する特許文献1に記載の方法では、太幅配線のディッシングを抑制することができるものの、配線の幅や配線密度が異なる部分が増加するにつれて、独立して形成しなければならない領域、即ち工程が増加してしまう。
【0010】
また特許文献2に開示された方法は、独立した細い配線を複数組み合わせて太幅配線の代用とするものである。また特許文献3に開示された方法では、太幅配線に対応することができない。
【0011】
本発明は、ディッシングを抑制できる太幅の埋め込み配線を有する半導体装置、及びディッシングを抑制できる太幅の埋め込み配線の簡易な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の視点において、本発明に係る半導体装置は、金属製埋め込み配線を有する半導体装置であって、該埋め込み配線の表面の長さ方向に、所定値以下の間隔で、該金属よりも硬度の高い金属材料からなるバリアメタル線が配設されていることを特徴とする。ここでバリアメタルとは、配線金属が絶縁層に拡散することを防ぐためのものを含むが、主として配線をCMP法で形成する際にディッシングを抑制する効果を持つものである。バリアメタル線とは、バリアメタルが配線表面において線状に現れるものを言う。
【0013】
第2の視点において、本発明に係る半導体の埋め込み配線の製造方法は、絶縁膜上に所定値以下の間隔をおいて、該所定値以下の幅の第1のトレンチを形成し、該第1のトレンチ内面にバリアメタル膜を形成する工程と、該第1のトレンチ内に配線金属を堆積させる工程と、該第1のトレンチ内に堆積させた金属配線をハードマスクとして用いて、該第1のトレンチの間の前記絶縁層に第2のトレンチをエッチングにより形成し、該第2のトレンチ内面にバリアメタル膜を形成する工程と、該第2のトレンチ内及び該第1のトレンチ内の金属配線の上に配線金属を堆積させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半導体装置の埋め込み配線は、効果的にCMP工程におけるディッシングを防止できる。また、本発明に係る半導体装置の埋め込み配線の製造方法により、任意の異なる配線幅を持つ太幅配線や異なる配線密度を含む埋め込み配線であっても、2段階で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る半導体装置の埋め込み配線の一構造例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の埋め込み配線の一製造方法例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の埋め込み配線の一製造方法例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の埋め込み配線の一製造方法例を示す概略断面図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の埋め込み配線の他の構造例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の視点において、前記埋め込み配線は、前記金属を該金属よりも硬度の高い金属材料からなるバリアメタルで底面及び側面を被覆した配線要素を長さ方向に複数配置してなり、隣接する該配線要素は互いに該バリアメタル同士が少なくとも一部において接触しており、該複数の配線要素の幅がいずれも前記所定値以下であることが好ましい。
【0017】
前記所定値は、化学的機械的研磨(CMP)工程において発生する前記埋め込み配線の前記金属のディッシングの深さが、所定の制限値以下となる幅値であることが好ましい。金属のディッシングの深さの制限値とは、埋め込み配線の抵抗値に悪影響を与えず、かつその後の半導体装置製造工程で問題とならない程度のディッシングの深さである。また、ディッシングの深さがこのような制限値以下となるような配線幅は、研磨剤、研磨パッドの種類や研磨圧力、時間等のCMP条件や配線の設計条件によって経験的に定められる値である。
【0018】
前記埋め込み配線の前記金属は銅であることが好ましい。
【0019】
前記埋め込み配線は、化学的機械的研磨法を用いて形成されることが好ましい。
【0020】
第2の視点において、前記第1のトレンチ内に堆積させた配線金属をCMPにより平坦化する工程と、前記第2のトレンチ内及び該第1のトレンチ内の金属配線の上に堆積させた配線金属をCMPにより平坦化する工程と、をさらに含むことが好ましい。
【0021】
また、前記第2のトレンチをエッチングにより形成し、該第2のトレンチ内面にバリアメタル膜を形成する工程以降において、同時に細幅配線を形成する位置にも細幅配線用トレンチを形成し、該細幅配線用トレンチ内面にバリアメタル膜を形成し、該細幅配線用トレンチ内に配線金属を堆積させることが好ましい。この場合、2段階目のCMPにおいて配線金属が全体として平坦化される。
【実施例】
【0022】
(構造例1)
本発明に係る半導体装置の、埋め込み配線の構造とその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の構造例1に係る半導体装置の「太幅配線」(A領域)の構造を示す幅方向の概略断面図である。なお、図1には本発明に係る太幅配線ではない「通常配線」(ディッシングの問題が生じない細幅の配線)も比較のために図示している(B領域)。後述のように、この「通常配線」も本発明に係る太幅配線と同時に形成することができる。図1は配線の幅方向の断面図であるが、この太幅配線の表面は、太幅配線全体が長さ方向にわたってバリア(メタル)線6で複数の領域に区切られている構造になっている。
【0024】
図1に示すように、構造例1に係る太幅配線は、所定の値以下の幅を持つ複数の配線要素が接触して配列されている構造となっている。所定の値とは、公知のCMP処理によっても配線のディッシングが発生しない、又はその後の半導体製造工程に影響を与えない程度のディッシングに抑制できる幅値である。これは研磨剤、研磨パッドや研磨圧力等の研磨条件や、半導体の構成、配線形状等の研磨対象に相関して定められる値である。なお、各配線要素の幅は必ずしも同じでなくとも良い。製造に最も適したように区切ることができる。
【0025】
構造例1の各配線要素は、それぞれ上面を除いた周囲が金属膜(バリアメタル)6によって覆われており、これがCMPストッパ膜としての機能を果たすとともに、隣接する配線要素がこのバリアメタル6で接触することにより、全体として1つの太幅配線を構成している。従ってバリアメタル6は導電性が良いことが条件となる。また、CMPストッパ膜の機能を果たすべく、配線材料よりも硬度が大きい必要がある。この硬度は、配線材料との硬度比が十分満足するように設定される。構造例1では、配線表面から見ると、このバリアメタルの接触部分が配線の表面に現れて、バリアメタル線6で太幅配線を並列した複数の配線領域に仕切ったような構造となっている。
【0026】
(構造例2、3)
なお、本発明に係る半導体装置の太幅配線はこのように内部まで仕切りされていてもよいし、また表面領域のみがバリアメタル線で仕切りされていてもよい。したがって例えば、図5(a)や(b)のような構造でも良い。このような構造でも、CMP工程におけるディッシングを抑制するために十分な効果があることは当然である。
【0027】
(製造方法例)
次に構造例1の製造方法を説明する。なお、以下の説明図面において、本発明とは直接関係のない通常配線についても、同時に形成可能であることを説明するために図示している。図中のAは太幅配線を形成する領域を、Bは通常配線を形成する領域を示す。本製造方法では事前に、配線を形成する際のCMP工程条件を加味して、ディッシングが発生しない(又は後の工程に影響しない程度のディッシングしか発生しない)配線幅を決定しておく必要がある。そして各幅をこの幅以下となるようにした配線要素に仕切りする。
【0028】
太幅配線をどのように区切るか決定した後、図2(a)に示すように、まず第1絶縁膜1を形成し、太幅配線の各配線要素に該当する位置(及び通常配線に該当する位置)にプラグ3を形成する。プラグ3は、各配線要素すべてに対応して形成してもよく、また下層の配線に接続する部分等の必要部分のみに形成しても良い。図では、各配線要素すべてに対応してプラグ3を形成する例を示している。
【0029】
次に、図2(b)に示すように、プラグ3を形成した第1絶縁膜1の上に、第2絶縁膜2を形成する。第1及び第2の絶縁膜1、2は公知の材料でよく、同一の材料でかまわない。ここまでは従来の配線形成法と同様である。
【0030】
次に、図2(c)に示すように、第2絶縁膜2の上にフォトレジスト4を形成し、フォトリソグラフィーにより、太幅配線の配線要素のうち1つおきの配線要素に相当する位置を開口したパターンを作成し、第2絶縁膜2に第1トレンチ5をプラグ3に達するまでドライエッチングで形成する。
【0031】
次に、図3(d)に示すように、フォトレジスト4を除去し、第2絶縁膜2の上にCMPストッパ膜(バリアメタル)となる金属膜6を堆積させる。堆積させる方法は、材料にもよるがスパッタリング、めっき、CVD等の公知の方法でよい。この金属膜材料としては、硬度及び導電性を考慮し、TaN(タンタルナイトライド)等が挙げられる。TaNは、モース硬度で8.0、比抵抗値が135μΩ・cm(20℃)と本発明に用いるバリアメタルとして好適な特性を有する。このバリアメタルは、配線形成後には太幅配線を区切るバリア線となる部分である。次に金属膜の上にCu膜7を、第1トレンチ5全体を埋めてさらに堆積させる。この堆積方法も、めっき等の公知の方法でよい。
【0032】
次に、図3(e)に示すように、第2絶縁膜2が露出するまでCu膜7及び金属膜6をCMPにより研磨する。第1トレンチ5の幅はディッシングが問題とならない幅に設定されているので、この工程でCu膜7が過大にディッシングされることはない。ここまでの工程で、第1トレンチ5を埋めて形成される第1段階の配線要素10が完成する。
【0033】
次に、太幅配線の残りの部分(第2段階の配線要素に相当する部分)と、通常配線を形成する。図3(f)に示すように、第1トレンチ5を埋めた第1段階の配線要素10が形成された第2絶縁膜2の上に再びフォトレジスト14を形成し、太幅配線の残りの範囲に第2トレンチ11と、通常配線に相当する範囲に通常配線用トレンチ12をそれぞれプラグ3に達するまでドライエッチングで形成する。このとき、第2トレンチ11を形成する太幅配線の残りの範囲は、フォトレジストのパターニングは必要なく、第1トレンチ5に形成した第1段階の配線要素10をマスクの代わりに用いることができる。
【0034】
次に、図4(g)に示すように、フォトレジスト14を除去し、再度全面にCMPストッパ膜(バリアメタル)となる金属膜20を堆積させる。さらに金属膜20の上にCu膜21を、第2トレンチ11及び通常配線に相当する範囲のトレンチ12全体を埋めてさらに堆積させる。
【0035】
そして図4(h)に示すように、第2絶縁膜2が露出するまでCu膜21及び金属膜20をCMPにより研磨する。これにより、第2段階の配線要素15が形成され、同時に隣接した配線要素10、15同士が接触した太幅配線A(及び通常配線B)の形成が完了する。
【0036】
このように、本発明に係る太幅配線の製造方法では、太幅配線を所定の値以下の任意の幅の配線要素に区切って、1つおきに形成することにより、2段階目の配線要素は先に形成した配線要素をマスクとするセルフアライン法で形成できる。また、幅の異なる太幅配線でも任意の配線要素に区切って形成すればよいため、多種多様な配線が混在する半導体装置の配線でも、2段階で製造することが可能である。なお、セルフアライン法によれば、第1段階で形成した配線要素の間を埋めて第2段階で配線要素を形成するので、配線要素の間に間隙が生じることもない。
【0037】
以上、本発明を上記実施形態及び実施例に即して説明したが、本発明は上記の構成ないし各工程の数値条件や使用材質等にのみ制限されるものではなく、本発明の範囲内で当業者であればなしうるであろう各種変形、修正特に記載した各要素の異なった組み合わせ等を含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0038】
1 第1絶縁膜
2 第2絶縁膜
3 プラグ
4、14 フォトレジスト
5 第1トレンチ
6、20 金属膜(CMPストッパ膜、バリアメタル線)
7、21 Cu膜
10 第1段階の配線要素
11 第2トレンチ
12 通常配線用トレンチ
15 第2段階の配線要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製埋め込み配線を有する半導体装置であって、
該埋め込み配線の表面の長さ方向に、所定値以下の間隔で、該金属よりも硬度の高い金属材料からなるバリアメタル線が配設されていることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
前記埋め込み配線は、前記金属を該金属よりも硬度の高い金属材料からなるバリアメタルで底面及び側面を被覆した配線要素を長さ方向に複数配置してなり、
隣接する該配線要素は互いに該バリアメタル同士が少なくとも一部において接触しており、
該複数の配線要素の幅がいずれも前記所定値以下である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記所定値は、化学的機械的研磨工程において発生する前記埋め込み配線の前記金属のディッシングの深さが、所定の制限値以下となる幅値であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記埋め込み配線の前記金属は銅であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記埋め込み配線は、化学的機械的研磨法を用いて形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項6】
絶縁膜上に所定値以下の間隔をおいて、該所定値以下の幅の第1のトレンチを形成し、該第1のトレンチ内面にバリアメタル膜を形成する工程と、
該第1のトレンチ内に配線金属を堆積させる工程と、
該第1のトレンチ内に堆積させた金属配線をハードマスクとして用いて、該第1のトレンチの間の前記絶縁層に第2のトレンチをエッチングにより形成し、該第2のトレンチ内面にバリアメタル膜を形成する工程と、
該第2のトレンチ内及び該第1のトレンチ内の金属配線の上に配線金属を堆積させる工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の埋め込み配線の製造方法。
【請求項7】
前記第1のトレンチ内に堆積させた配線金属を化学的機械的研磨法により平坦化する工程と、
前記第2のトレンチ内及び該第1のトレンチ内の金属配線の上に堆積させた配線金属を化学的機械的研磨法により平坦化する工程と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2のトレンチをエッチングにより形成し、該第2のトレンチ内面にバリアメタル膜を形成する工程以降において、同時に細幅配線を形成する位置にも細幅配線用トレンチを形成し、該細幅配線用トレンチ内面にバリアメタル膜を形成し、該細幅配線用トレンチ内に配線金属を堆積させることを特徴とする、請求項6又は7に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−49403(P2011−49403A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197271(P2009−197271)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】