説明

埋設管体の背面充填方法

【課題】軌道及び地盤への影響を抑制するようにした。
【解決手段】軌道20下の地盤2の所定範囲に地盤改良体2Aを施工し、鋼製エレメント10の断面とその断面の上方の地盤改良体2Aの一部との領域を掘削し、上部の所定箇所に筒状袋30を固定してなる鋼製エレメント10を掘削した領域に設置し、鋼製エレメント10の筒状袋30に無収縮モルタル31を充填して膨張させ、その膨張した筒状袋30を地盤2の下面2aに密着させて鋼製エレメント10の上方の地盤2を支持し、充填した筒状袋30、30同士に挟まれた背面隙間Sに裏込め材40を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路下や軌道下などの地盤を非開削工法により掘削して、埋設管体を設置する際の埋設管体の背面充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道下などにおいて構造物を構築する場合に、軌道を移設することなく非開削工法によって施工する方法がある。この施工方法では、例えば断面矩形状をなす複数の埋設管体が軌道に対して直交する方向に埋設され、これらの埋設管体は構造物の構築領域の外周を囲うように連結して配置されている。そして、複数の埋設管体によって囲まれた内空部を掘削して構造物を構築する工法が、例えば特許文献1に提案されている。
特許文献1は、アンダーパス(構造物)の外殻部に設置される埋設管体の先端にスクリューオーガ(カッタ)を有する掘削装置を備え、そのカッタの回転と共に、掘削装置および埋設管体を牽引ジャッキで牽引しながら推進させるものである。つまり推進に伴って所定の長さをなす単体の埋設管を順次継ぎ足しながらその軸方向に延設し、さらに先行して設けられた埋設管体に隣接させて後続する埋設管体に沿わせるようにして設置することで構造物の外殻部を形成するものである。
【特許文献1】特許第2966765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、地中に障害物や掘削装置による掘削が困難となる地盤が存在する場合には、スムーズな推進ができなくなり、人力掘削により施工する場合がある。その際、円滑な推進のために掘削される断面を埋設管体の断面より大きくすることがある。そのため、埋設した埋設管体と地盤との間に背面隙間が形成されることになる。この背面隙間への裏込め材を注入するタイミングは、挿入中(掘進中)の埋設管体側に裏込め材を流出させないようにするため、裏込め注入される対象の埋設管体に隣接される埋設管体を挿入設置させてから、対象とされる埋設管体に裏込め注入を行うタイミングが望ましい。例えば、埋設管体の設置完了から裏込め注入されるまでには、1日〜2日程度の時間を要する。したがって、裏込め注入されることなく背面隙間が存在する間は、地盤が沈下して上方の軌道に変位が発生するおそれがある。とくに軌道下の埋設管体までの土被りが1m程度の低土被りの場合に、埋設管体と軌道との間の地盤の強度が不足していたり、走行する列車の振動により地盤が噴泥化することがあり、軌道への影響が大きくなる。そのため、これらの施工中には、列車の通行がない夜間の時間帯などに例えば作業日毎という頻度で軌道整備を行う必要があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、軌道及び地盤への影響を抑制するための埋設管体の背面充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る埋設管体の背面充填方法は、地盤に埋設管体を設置する際の埋設管体の背面充填方法であって、埋設管体を設置する前に、地盤の所定範囲に地盤改良体を施工する工程と、地盤改良体の一部を含む地盤において、少なくとも埋設管体の断面とその上方の一部に形成されてなる背面隙間との領域を掘削する工程と、上部の所定箇所に筒状袋を固定してなる埋設管体を、掘削した領域の底盤部に設置する工程と、掘削した領域に設置した埋設管体の筒状袋に充填材を充填して膨張させ、膨張した筒状袋を地盤に密着させて埋設管体の上方の地盤を支持する工程と、充填した筒状袋同士に挟まれた空隙に裏込め材を注入する工程とを備えていることを特徴としている。
本発明では、地盤改良体を含む地盤中に掘削した領域に埋設管体を設置した後、埋設管体と地盤との間の背面隙間において筒状袋に充填材を充填して膨張させることで、充填した筒状袋同士に挟まれた背面隙間に裏込め材を注入するまでの間、充填材で膨張させた筒状袋によって地盤を下方より支持することができ、地盤の沈下や軌道の変位を抑止することができる。
【0006】
また、本発明に係る埋設管体の背面充填方法では、筒状袋は、埋設管体の軸方向に連続して設けられていることが好ましい。
本発明では、埋設管体と地盤との間において筒状袋に充填材が充填され、その筒状袋が地盤の下面に密着し、埋設管体の軸方向に連続する支点が形成され、高い支持力が確保される。また、この軸方向に連続する筒状袋は、筒状袋同士の間の背面隙間に注入される裏込め材を、この背面隙間より外方にほとんど流出させることなく所定範囲内で確実に注入することができる。
【0007】
また、本発明に係る埋設管体の背面充填方法では、筒状袋は、少なくとも埋設管体の上部両側に設けられていることが好ましい。
本発明では、隣接する埋設管体側への流出を避けて埋設管体の上部の範囲に限定して確実に裏込め材を注入することができる。
【0008】
また、本発明に係る埋設管体の背面充填方法では、充填材は、無収縮早強性のグラウト材であることが好ましい。
本発明では、充填材が早強性を有することから、筒状袋に充填材を充填した後の早い段階で膨張した筒状袋が地盤を下方から支持した状態となり、地盤を安定した状態で維持することができる。
【0009】
また、本発明に係る埋設管体の背面充填方法では、筒状袋は、伸縮可能な材料であることが好ましい。
本発明では、筒状袋は、横方向、すなわち筒状袋の周方向への伸度が大きいことから、充填材が充填されて膨張したときに偏平状になり埋設管体と地盤との両者に対して確実に密着することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の埋設管体の背面充填方法によれば、埋設管体の設置後に、埋設管体と地盤との間に形成される背面隙間において筒状袋に充填材を充填して膨張させることで、充填した筒状袋同士に挟まれた空隙に裏込め材を注入するまでの間、地盤を下方より支持することで地盤の沈下を防止できる。そのため、軌道及び地盤への影響が低減され、軌道の変位を抑止することができると共に、軌道整備の頻度を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態による埋設管体の背面充填方法について、図1及び図4に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による軌道直下における構造物の施工状態を示す全体概要図、図2は地盤改良体と鋼製エレメントの配置状態を示す図、図3は鋼製エレメントの背面充填方法の施工状態を示す図、図4は鋼製エレメントに固定される筒状袋を示す図、図5(a)、(b)は鋼製エレメントの背面充填方法を示す工程説明図、図6(a)、(b)は図5(b)に続く鋼製エレメントの背面充填方法を示す工程説明図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態による埋設管体の背面充填方法は、軌道下に道路などの構造物1を構築して立体交差させる工事に適用されるものである。この構造物1は、軌道20の下の地盤2中において、軌道20に対して略直交する方向(図1の紙面に直交する方向)に断面視四角形状(例えば略1m角の断面正方形状)をなす複数の鋼製エレメント10A、10B、…(埋設管体)を埋設した構造をなしている。そして、本実施の形態では、軌道20直下に埋設される鋼製エレメント10A、10B、…までの土被りを略1m程度の低土被りとする。なお、これら複数の鋼製エレメント10A、10B、…は、必要に応じ、総称して符号10で示す。
【0013】
先ず、本実施の形態による鋼製エレメント10を構築する箇所における軌道20と地盤2について説明する。
図2及び図3に示すように、軌道20は、レール21と、枕木22と、これらを支持する道床バラスト23とからなる。そして、道床バラスト23は、後述する地盤改良体2A上に設けられている。
地盤2は、鋼製エレメント10の施工に先行して、軌道20直下で構造物1の上端位置に配置される鋼製エレメント10、10、…にオーバーラップさせる程度の深さまで、路盤改良材に置換してなる地盤改良体2Aが施工されている。路盤改良材としては、セメントと高炉スラグとを原料とした高支持力を有する路盤材などが用いられ、例えば特開2004−339784号公報に記載されている透水性スラグモルタルを採用することができる。この路盤改良材は水砕スラグを主成分とし、初期強度や長期強度を安定させるための特殊固化材を配合して均一な強度を持たせるものである。
このように地盤改良体2Aに置換しておくことで、鋼製エレメント10の施工時は勿論、構造物1(図1参照)の完成後に列車の振動による噴泥化を防止することができ、軌道20の安定化を図ることができる。
【0014】
また、図2に示すように、地盤改良体2Aには、軌道20に対して直交する方向にタイロッド3が挿通されている。このタイロッド3は、その両端3a、3bを介して緊張して地盤改良体2Aを締め付けることによりプレストレスを導入した状態とするものである。そして、タイロッド3は、とくに図示はしないが軌道20の延設方向に所定の間隔をもって複数設けられている。このように、地盤改良体2Aに加えてタイロッド3を設けることで、さらなる地盤改良体2Aの強度向上を図ることができる。
【0015】
次に、構造物1を構成している鋼製エレメント10A、10B、…の構成について説明する。
図1及び図2に示すように、鋼製エレメント10は、複数の単体エレメントを延長方向に連結させて構築され、構造物1の構築領域(本実施の形態では矩形状)の外側を囲うように互いに隣接配置されている。
そして、図3に示すように、各鋼製エレメント10は、断面視で角部に鋼製エレメント10の軸方向に対して直角方向に力を伝達する嵌合継手10a、10a、…を備えている。横方向に隣接する鋼製エレメント10、10同士は、夫々の嵌合継手10a、10aを嵌合させることで互いに連結されている(図4参照)。また、単体エレメントにおける軸方向への連結は、エレメント外殻部の内側角部に設けられた連結孔10b、10b、…に連結部材(図示省略)を挿通させることで連結されている。ここで、鋼製エレメント10を埋設するための掘削領域は、断面視で鋼製エレメント10(嵌合継手10aを含む)が設置可能な断面、及びその断面の上方の断面(すなわち背面隙間S)とされる。この背面隙間Sは、余掘り領域であって、本実施の形態では地盤改良体2Aの領域の一部となっている。
【0016】
図3に示すように、鋼製エレメント10の断面視で両上面側部10c、10cには、鋼製エレメント10の軸方向に延在してなる筒状袋30、30が固定されている。筒状袋30は、鋼製エレメント10の挿入時、又は鋼製エレメント10の製作時において萎んだ状態で取り付けられている。なお、本実施の形態による筒状袋30には、例えばポリエステル、ナイロンなど伸縮可能な材料が用いられ、とくに強度が大きく、止水効果の高い材料が使用されている。さらに具体的な筒状袋30として、例えば「グラウトジャケット」(商標登録、繊維土木開発社製)などを採用することができる。このグラウトジャケットからなる筒状袋30は、その周方向の延び量と筒状袋30の外径寸法との比(伸度)が50%以上を有し、同じく軸方向の延び量と筒状袋30の長さ寸法との比(伸度)が30%以下の伸度を有している。
【0017】
そして、筒状袋30は、鋼製エレメント10が地盤2中に設置された後で、筒状袋30の内部に無収縮モルタル31を例えば筒状袋30の軸方向一端側から充填させると、背面隙間S内で筒状袋30が略円柱形状に膨張する構成となっている(図4参照)。なお、図3では、筒状袋30の上面が地盤2の下面2aに当接し、上下方向に潰れた偏平な状態となっている。ここで、本実施の形態では、筒状袋30に充填される無収縮モルタル31として、例えば圧縮強度が材齢1日で30N/mm程度となる無収縮早強性を有するグラウト材が使用されている。
【0018】
次に、鋼製エレメントの背面充填方法の施工手順について、図4乃至図6などを参照しながら説明する。
ここで、図4は鋼製エレメント10の背面充填の施工状態を示したものであり、図中右側に配置される鋼製エレメント10Aから順に符号10B、10Cの鋼製エレメントが施工され、符号T1の作業工程から順に符号T2、T3の作業工程が行なわれる。
図5(a)に示すように、予め施工されている地盤改良体2Aを含む地盤2において、第1鋼製エレメント10Aを設置するための領域(掘削領域R1)を人力などによって掘削する。このとき、所定位置に設置される第1鋼製エレメント10Aの上方領域に位置する地盤改良体2Aの一部(背面隙間S)が予め余掘りされる。なお、このときの余掘り量は、図3に示す嵌合継手10aの上端部から例えば約3cm程度上方の位置までの高さ寸法が目安とされている。また、鋼製エレメント10の側部は、必要に応じて余掘りしてもよい。さらに、鋼製エレメント10の少なくとも中央部の下方は決して余掘りせず、鋼製エレメント10の下面付近までの掘削にとどめて底盤部2bを形成しておき、鋼製エレメント10自体が沈下しないようにする。
【0019】
次いで、図5(b)に示すように、掘削領域R1の底盤部2bに第1鋼製エレメント10Aを設置する。ここで、鋼製エレメント10の設置方法として、例えば鋼製エレメント10を延設方向の始点側(例えば、図2において鋼製エレメント10の紙面右側)から終点側(前記始点の反対側)に向けて掘削排土しながら挿入させる方法がある。この場合、予め終点側に牽引装置(図示省略)を設置しておき、その牽引装置により鋼製エレメント10を牽引する。
この牽引装置を用いる方法についてさらに具体的に説明すると、第1鋼製エレメント10Aにおける各単体エレメントは、掘削領域R1の始点側から終点側に向けて牽引されるとともに、掘削領域Rの軸方向に押し込ませることで順次継ぎ足される。このとき、軸方向に連結される各単体エレメント同士は、連結孔10b(図3参照)に図示しない連結部材(ボルト等)を挿通させることで互いに連結される。なお、各単体エレメント同士は溶接で連結してもよい。
なお、挿入されるは、鋼製エレメント10と地盤改良体2Aとの間には余掘りによって背面隙間Sが形成されることから、鋼製エレメント10を牽引する際の地盤改良体2Aに対する摩擦が小さくなって抵抗を抑制することができることから、牽引し易くなっている。
【0020】
次いで、図5(b)に示すように、第1鋼製エレメント10Aの挿入完了後に、第一鋼製エレメント10Aの上部両側10c、10cに固定されている筒状袋30、30に無収縮モルタル31を充填させる。そうすると、膨張した筒状袋30は、地盤改良体2Aの下面2aに密着した状態となる。筒状袋30は、上述したように周方向へ伸びる伸度が大きいことから、第1鋼製エレメント10Aと地盤2(地盤改良体2A)とに対して確実に密着する。そして、膨張した筒状袋30は、鋼製エレメント10の軸方向に連続する地盤2に対する支点を形成することができる。すなわち、地盤2は、膨張した筒状袋30によって下方より支持された状態となる。
【0021】
次に、図6(a)に示すように、上述した第1鋼製エレメント10Aと同様に、第1の鋼製エレメント10Aの横方向に隣接配置される第2鋼製エレメント10Bを設置するための掘削領域R2を掘削し、その掘削領域R2に第2鋼製エレメント10Bを上述した挿入方法により設置する。つまり、第2鋼製エレメント10Bを挿入する際には、その嵌合継手10aを先行して配置された第1鋼製エレメント10Aの嵌合継手10aに嵌合させた状態で挿入される。
【0022】
続いて、図6(b)に示すように、第2鋼製エレメント10Bの上部に設けられた筒状袋30に無収縮モルタル31を充填し、筒状袋30を膨張させる。その後、第1鋼製エレメント10A上の充填した筒状袋30、30同士に挟まれた背面隙間Sに裏込め材40を注入する。なお、裏込め材40としては、流動性と固化後所定強度とを有するものであればとくに限定されないが、耐久性を有する無機系の可塑性注入材が好ましい。
【0023】
そして、裏込め材40の注入手順は、第1鋼製エレメント10Aの内側、又は第1鋼製エレメント10Aの軸方向に連続する背面隙間Sの始点側(或いは終点側)から注入される。第1鋼製エレメント10Aの上方に位置する地盤2(地盤改良体2A)は、裏込め材40を注入して背面隙間Sを閉塞することによって、沈下が防止され、安定した地盤となる。
また、筒状袋30が鋼製エレメント10の軸方向に連続して設けられていることから、注入時の裏込め材40が筒状袋30、30同士に囲われる背面隙間Sから外方にほとんど流出させずに確実に注入することができる。
【0024】
さらに、図6(a)及び(b)に示すように、第1鋼製エレメント10Aの背面隙間S1に対する裏込め材40の注入のタイミングは、挿入中の第2鋼製エレメント10B側への裏込め材40の流出を極力少なくするため、第2鋼製エレメント10Bを挿入して筒状袋30に無収縮モルタル31を充填して膨張させた後に、第1鋼製エレメント10Aに対して裏込め注入を行うことが好ましい。これは、例えば裏込め材40が外方に流出した場合において、第1鋼製エレメント10Aの第2鋼製エレメント10B側の嵌合継手10a内と図5(b)に示す符号Pの領域に流入し、第2鋼製エレメント10Bを挿入する際の障害となることを防ぐためである。また、隣接される第2鋼製エレメント10Bの筒状袋30の膨張を妨げないためである。
【0025】
上述したタイミングで裏込め注入すると、第1鋼製エレメント10Aの挿入完了から裏込め注入完了までには例えば1日〜2日程度の時間がかかることになるが、この期間、筒状袋30に充填された無収縮モルタル31が上述したように早強性(例えば、材齢1日で30N/mm程度の圧縮強度)を有することから、無収縮モルタル31が充填されて膨張した筒状袋30が地盤2(地盤改良体2A)を支持し、その地盤2は安定した状態で維持される。このようなことから、後続配置される第2鋼製エレメント10B上の筒状袋30、30に無収縮モルタル31が充填されて、その筒状袋30によって上方の地盤2が支持されたた後であれば、どのタイミングで第1鋼製エレメント10Aの背面隙間Sに裏込め注入してもかまわない。もちろん、早急に裏込め材40を注入する必要がある場合には、その裏込め材40の注入対象とされる鋼製エレメント10の筒状袋30を膨張させた後に即座に裏込め材40を注入してもよい。
【0026】
このような充填方法を採用することで、本実施の形態のように鋼製エレメント10の土被りが略1m程度の低土被りの施工条件であっても地盤2(地盤改良体2A)を安定させることができる。
また、軌道20下の地盤2が支持力を有する地盤改良体2Aに置換されていることから、構造物1の完成後において、列車の振動による噴泥化が防止され、軌道20の安定化を図ることができ、従来ほとんど毎日行われていた構築後の軌道整備の頻度を、例えば2ヶ月おきに1度の頻度と少なくすることができる。
さらにまた、図2に示すように、路盤改良材に改良された地盤改良体2Aにタイロッド3を設け、その両端3a、3bを締め付けて地盤2に係止させて緊張し、地盤2に圧縮力を与えることで、地盤2の変位を抑制させることができる。なお、タイロッド3は、必要に応じて複数段となるように配置させてもかまわない。
なお、本実施の形態では、図6(a)及び(b)に示す第1鋼製エレメント10Aにおいて、紙面に向かって左側に隣接する第2鋼製エレメント10Bの背面充填方法について説明したが、第1鋼製エレメント10Aの右側に鋼製エレメントが隣接される場合についても前述した背面充填方法の施工手順と同様に施工することができる。すなわち、第1鋼製エレメント10Aの両側に鋼製エレメントが設置される場合、第1鋼製エレメント10Aにおける裏込め充填のタイミングは、両側の鋼製エレメントが設置され、その鋼製エレメントの筒状袋30を膨張させた後とされる。
【0027】
上述した本実施の形態による埋設管体の背面充填方法では、鋼製エレメント10の設置後に、鋼製エレメント10と地盤2との間に形成される上方背面隙間Sにおいて筒状袋30に無収縮モルタル31を充填して膨張させることで、鋼製エレメント10と地盤改良体2Aとの間に形成される空隙S1に裏込め材40を注入するまでの間、地盤2(地盤改良体2A)を下方より支持することで地盤2の沈下を防止できる。そのため、軌道20及び地盤2(地盤改良体2A)への影響が低減され、軌道20の変位を抑止することができると共に、軌道整備の頻度を低減させることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態による埋設管体の背面充填方法について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施の形態では鋼製エレメント10の上部両側10c、10cの二箇所に筒状袋30、30を設けているが、必ずしも二箇所であることに限定されることはない。例えば、土被りの大きさや改良地盤強度によっては二箇所のみでは支持力不足となるような場合には、さらに筒状袋30を増加して支持力を高めるようにすることが好ましく、条件に応じて適宜設定すればよい。
また、軌道20であることに限定されず、道路や他の用途の施設であってもよい。
さらに、鋼製エレメント10の形状、大きさ、継手の構成、挿入手段(牽引方法)などは、本実施の形態の構成に限定されることはない。例えば鋼製エレメント10の形状は、本実施の形態にある正方形状に限らず、台形、長方形などの形状であってもよい。そして、本実施の形態では埋設管体に鋼製エレメント10、すなわち鋼管を使用しているが、このような鋼管に限らず、例えばコンクリート製やコンクリートと鋼材との合成材料からなる管体であってもかまわない。
【0029】
そして、本実施の形態では筒状袋30は鋼製エレメント10の軸方向に連続された形状としているが、例えば所定長さをもって分割、或いは接続部を有して一部分割された筒状袋であってもよい。但し、この場合には無収縮モルタル31の充填を必ずしも鋼製エレメント10の一端側となるとは限らないことから、その充填口の設置位置などの検討が必要となる。
また、本実施の形態では軌道20の下に構築される構造物を道路としているが、このような構造物に限定されることはなく、例えば歩道、鉄道、上下水道、送電路、通信路などの構造物であってもかまわない。
さらに、本実施の形態では地盤改良体2Aとして路盤改良材に置換しているが、このような地盤改良体2Aに限定されることはなく、種々の地盤改良方法を、状況に応じて適宜選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態による軌道直下における構造物の施工状態を示す全体概要図である。
【図2】地盤改良体と鋼製エレメントの配置状態を示す図である。
【図3】鋼製エレメントの背面充填方法の施工状態を示す図である。
【図4】鋼製エレメントに固定される筒状袋を示す図である。
【図5】(a)、(b)は鋼製エレメントの背面充填方法を示す工程説明図である。
【図6】(a)、(b)は図5(b)に続く鋼製エレメントの背面充填方法を示す工程説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 構造物
2 地盤
2A 地盤改良体
3 タイロッド
10 鋼製エレメント(埋設管体)
20 軌道
30 筒状袋
31 無収縮モルタル(充填材)
40 裏込め材
S 背面隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設管体を設置する際の埋設管体の背面充填方法であって、
前記埋設管体を設置する前に、前記地盤の所定範囲に地盤改良体を施工する工程と、
前記地盤改良体の一部を含む前記地盤において、少なくとも前記埋設管体の断面とその上方の一部に形成されてなる背面隙間との領域を掘削する工程と、
上部の所定箇所に筒状袋を固定してなる前記埋設管体を、前記掘削した領域の底盤部に設置する工程と、
前記掘削した領域に設置した前記埋設管体の前記筒状袋に充填材を充填して膨張させ、該膨張した前記筒状袋を前記地盤に密着させて前記埋設管体の上方の前記地盤を支持する工程と、
前記充填した前記筒状袋同士に挟まれた前記背面隙間に裏込め材を注入する工程と、
を備えていることを特徴とする埋設管体の背面充填方法。
【請求項2】
前記筒状袋は、前記埋設管体の軸方向に連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の埋設管体の背面充填方法。
【請求項3】
前記筒状袋は、少なくとも前記埋設管体の上部両側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋設管体の背面充填方法。
【請求項4】
前記充填材は、無収縮早強性のグラウト材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の埋設管体の背面充填方法。
【請求項5】
前記筒状袋は、伸縮可能な材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の埋設管体の背面充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163597(P2008−163597A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352437(P2006−352437)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(398009122)京成電鉄株式会社 (2)
【出願人】(592195089)京成建設株式会社 (2)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】