基材の接着方法及びインクジェットヘッドの製造方法
【課題】基材間の接着剤層中の気泡の残留を抑制し、接着剤層の均一性を高め、且つ、生産性が高く、基材の大判化にも対応可能な基材の接着方法及びインクジェットヘッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】接着されるべき第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、第1の基材上に第2の基材を接着剤を介して重ね合わせることにより、第1の基材と第2の基材との間に接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、気泡を溶解した後、接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、接着剤を硬化して第1の基材及び第2の基材を相互に一体化する。
【解決手段】接着されるべき第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、第1の基材上に第2の基材を接着剤を介して重ね合わせることにより、第1の基材と第2の基材との間に接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、気泡を溶解した後、接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、接着剤を硬化して第1の基材及び第2の基材を相互に一体化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材間に気泡の残存がなく均一な接着剤層を形成することのできる基材の接着方法及びその接着方法を使用したインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インクに圧力変化を付与することによりノズルから吐出させる。インクに圧力変化を付与する方法としては、電圧を印加することにより機械的に変形を生ずる圧電素子を用いる方法や、ヒーターを用いてインクを加熱することにより発生する気泡の膨張作用を利用する方法等、様々な方法が知られている。
【0003】
圧電素子を用いたインクジェットヘッドの一例を図1に示す。このインクジェットヘッドは、駆動壁14とインクチャネル13とを交互に並設したアクチュエータ基板10を有しており、駆動壁14を圧電素子で形成することにより、該駆動壁14をせん断変形させ、インクチャネル13内のインクをノズルプレート20に設けられたノズル21から吐出させるようにしている。アクチュエータ基板10は、駆動壁14を低電圧で大きくせん断変形させることができるように、図2に示すように、それぞれ分極方向(矢印で示す)を反対方向に向けた薄手の圧電材料基板11と厚手の圧電材料基板12との2枚を熱硬化性接着剤を用いて接着して積層物1を作成し、その後、ダイヤモンドブレード100を用いて、積層物1の一端から他端に向けて、薄手の圧電材料基板11から厚手の圧電材料基板12の中途部に亘る深さで多数の平行な溝を切削加工することで、インクチャネル13とその間に切り残された分極方向が異なる圧電材料基板11と12からなる駆動壁14とを並設している。
【0004】
アクチュエータ基板10の上面には、インク流通口31が設けられたカバー基板30が接合されると共に、該カバー基板30の上面には、インク流通口31を覆うようにインクマニホールド40が接合され、アクチュエータ基板10とカバー基板30の前端面に亘ってノズルプレート20が接合される。
【0005】
各駆動壁14の側面には駆動電極15が設けられており、各インクチャネル13の後端の浅溝部13aを介してアクチュエータ基板10の後端上面に引き出されており、この後端上面において図示しないFPC等が接合されることで図示しない駆動回路から信号電圧が印加される。ここで、例えば、図3に示すように、一つのインクチャネル13内の駆動電極15に所定の信号電圧を印加し、その両隣のインクチャネルの駆動電極15を接地すると、信号電圧が印加された駆動電極15が設けられている両駆動壁14、14にその圧電材料の分極方向と直角方向の電界が生じ、各圧電材料がそれぞれ反対方向にせん断変形し、インクチャネル13内の容積を拡大する。そして、信号電圧の印加を停止すると、各駆動壁14、14が復帰する際にインクチャネル13内のインクに圧力を与え、インクをノズル21から吐出する。
【0006】
ところで、このようなインクジェットヘッドのアクチュエータ基板10を形成する際の圧電材料基板11、12を接着する場合に限らず、一般に、剛性を有する平板状の基材同士を接着剤を用いて接着しようとするとき、互いの接着面全面をほぼ同時に対向させることになるため、接着面に気泡を挟み込んでしまう場合が多い。このようなものを切断して所定の大きさに加工したり、溝を加工したりする場合、接着面に挟み込まれた気泡部分近傍を切断するとき、ダイヤモンドブレード等の切削器具の切削抵抗によって、基材が切断面から剥離してしまうことがある。
【0007】
特に、上記したインクジェットヘッドのアクチュエータ基板10を作成する場合、一般に圧電材料基板11、12にはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の切削抵抗に弱いセラミックス基板が用いられる上に、インクチャネル13はわずか数十μmという極めて微細なピッチで加工されるため、圧電材料基板11と12との間の接着面に気泡が残留していると、上記した理由によって加工時に駆動壁14が破壊してしまうおそれがある。また、破壊しないまでも、気泡が点在することによって、圧電材料基板11と12との間の接着性の均一性が得られなくなり、駆動特性のばらつきを発生させる原因となる。
【0008】
これには接着剤層を厚く形成することによって接着強度を高めることで、接着剤層中に気泡が存在していても加工時に駆動壁の破壊が生じないようにすることもできるが、図10(a)(b)からわかるように、インクジェットヘッドの場合、接着剤層が厚くなると、駆動電圧が高くなり、駆動パルス幅も大きくなってしまい、低電圧で高速駆動させることが困難となってくる。これは、インクジェットヘッドの場合、接着剤層が駆動壁のせん断変形時の動作エネルギーを吸収してしまうためである。従って、インクジェットヘッドを低電圧で高速駆動させるには、接着剤層を高硬度で薄層化することが望まれる。
【0009】
また、駆動壁14を構成する圧電材料基板11と12との間に気泡が残留している場合、駆動壁14の側面の駆動電極15をめっき法等によって形成すると、電極金属が気泡内に入り込むことによって隣接するインクチャネル14内の駆動電極15と繋がってしまう。たとえ電極金属が入り込むようなことがなくても、気泡内にインクが浸入することによってショートが生じるおそれがあり、いずれにしても信号電圧を印加することができなくなってしまう問題がある。
【0010】
そこで、従来、予熱して粘度を低くした接着剤を、接着面に塗布することにより接着剤の厚みを薄くして接着剤中に残量する気泡を少なくし、接合後、接合方向に加圧すると共に接着剤の粘度が最も低くなる温度まで昇温し、接着剤の厚みをより一層薄くして接着剤中に気泡が残留しないようにすることが、特許文献1に記載されている。
【0011】
また、接着剤を基材の接着面に塗布する前に、遠心脱泡処理することで、接着剤中の気泡除去だけでなく、加熱処理時の接着剤中に含まれる微細な気泡の膨張発泡を抑えるようにすると共に、基材の接着面に塗布した熱硬化性接着剤を準安定化(Bステージ化)した後、基材同士を重ね合わせ、接着面方向において一端から他端に向かって順次圧力をかけ、その後、接着剤を硬化して基材同士を相互に一体化することにより、基材同士の位置ずれがなく、接着面に気泡を含まないようにすることが、特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平9−123466号公報
【特許文献2】特開2000−190511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の方法では、接着すべき部材が大きくなると、接着面の中心付近に気泡が残留し易いばかりでなく、接合時の接着剤の粘度を低くしているために相互に位置ずれを生じ易い問題がある。
【0013】
一方、特許文献2に記載の方法では、接着剤を準安定化した後に接合するため、位置ずれの問題は生じないと考えられるが、接着剤を基材の接着面に塗布する前に予め遠心脱泡処理したり、接着剤を塗布後に準安定化するための時間や手間が量産化を考慮すると生産性向上を図る上での課題となる。
【0014】
また、接着剤層の均一性が十分でなく、特にインクジェットヘッドの製造における圧電材料基板同士を接着する場合のような、接着剤層厚みがヘッドの性能に相関する箇所の接着においては、各インクチャネルにおける駆動性能のばらつきに繋がる問題がある。更に、量産性を上げるために基板を大判化すると、その影響は顕著になると推定される。また、量産時に接着剤物性ばらつき等でBステージ状態に変動があった場合には、脱泡が不十分になる可能性もあり、品質に影響を与える可能性が考えられる。
【0015】
また、この特許文献2に記載の方法では、接着剤の厚みを制御することは、接着剤層の脱泡の原理より困難であると考えられる。
【0016】
しかしながら、近年、インクジェットのスループットの観点からラインヘッド化や、また、高精細描画の観点から高精度化といった要求が高まっており、基板を大判化して長尺で生産性の高いインクジェットヘッドを生産しても、各インクチャネルの駆動性能のばらつきのない製造方法が求められている。
【0017】
そこで、本発明の課題は、以上の従来事情に鑑みてなされたものであり、基材間の接着剤層中の気泡の残留を抑制し、接着剤層の均一性を高め、且つ、生産性が高く、基材の大判化にも対応可能な基材の接着方法及びその接着方法を使用したインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の発明は、接着されるべき第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化することを特徴とする基材の接着方法である。
【0020】
請求項2記載の発明は、前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項1記載の基材の接着方法である。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項1又は2記載の基材の接着方法である。
【0022】
請求項4記載の発明は、前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項1、2又は3記載の基材の接着方法である。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法である。
【0024】
請求項6記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法である。
【0025】
請求項7記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法である。
【0026】
請求項8記載の発明は、前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の基材の接着方法である。
【0027】
請求項9記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法である。
【0028】
請求項10記載の発明は、前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項9記載の基材の接着方法である。
【0029】
請求項11記載の発明は、前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の基材の接着方法である。
【0030】
請求項12記載の発明は、多数のインクチャネルを平行に有し、各インクチャネル間の駆動壁を少なくとも2種類の材料で構成すると共に、該少なくとも2種類の材料のうちの少なくとも1種類が圧電材料であり、該圧電材料の変形によって各インクチャネル内のインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、前記少なくとも2種類の材料を構成する第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化した後、前記第1の基材及び前記第2の基材に亘って前記複数のインクチャネルを溝加工することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0031】
請求項13記載の発明は、前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項12記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0032】
請求項14記載の発明は、前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項12又は13記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0033】
請求項15記載の発明は、前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項12、13又は14記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0034】
請求項16記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0035】
請求項17記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0036】
請求項18記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0037】
請求項19記載の発明は、前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項16、17又は18記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0038】
請求項20記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0039】
請求項21記載の発明は、前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項20記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0040】
請求項22記載の発明は、前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0041】
請求項23記載の発明は、前記接着剤は、第2加熱温度が前記圧電材料のキューリー点よりも低い温度で熱硬化性を持つことを特徴とする請求項12〜22のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、基材間の接着剤層中の気泡の残留を抑制し、接着剤層の均一性を高め、且つ、生産性が高く、基材の大判化にも対応可能な基材の接着方法及びその接着方法を使用したインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について説明するが、ここでは、接着されるべき第1の基材及び第2の基材が、図1〜図3において説明したインクジェットヘッドにおける圧電材料基板11及び12である場合について説明する。なお、上述したインクジェットヘッドの構成及びその製造方法と同一の構成及び製造方法の箇所については詳細な説明を省略する。
【0044】
まず、アクチュエータ基板10を構成する圧電材料基板11(第1の基材)と圧電材料基板12(第2の基材)とを接着剤を用いて接合するに先立ち、接着面の濡れ性改善処理を施しておくことが好ましい。濡れ性改善処理は、各圧電材料基板11、12をそれぞれホルダーにセットしてアルカリ洗浄液槽、第1リンス槽、第2リンス槽、乾燥機がセットされた一般的な枚葉式精密超音波洗浄装置で洗浄乾燥することによって行うことができる。なお、洗浄方法は、接着面の濡れ性が確保されれば良く、ドライ処理法の一つでもあるプラズマ洗浄装置を使用することもできる。洗浄液の一例を挙げれば、常磐化学工業株式会社製のバンライズD−20を2%の濃度で使用し、各液槽の液温を38℃とすることである。
【0045】
次に、図4に示すように、濡れ性改善処理を施した圧電材料基板11における圧電材料基板12との接着面11aに熱硬化性接着剤を塗布する。図中、斜線で示す領域Aは接着剤の塗布領域を示しているが、本発明において、この接着剤の塗布は、この塗布領域Aにおいて接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布することが重要である。
【0046】
ここで、所定のパターンとは、2枚の圧電材料基板11、12を接着剤を挟んで重ね合わせた時に、塗布された接着剤が、接着面11a上において接着剤が存在しない部位の周囲を取り囲むことによって、基板間に規則的に無数の空気(気泡)を包み込む形になるような形態のことである。このようにすることで、接着面に均一の厚みで接着剤を塗布形成することができ、それにより形成される接着剤層を薄くすることが可能となると共に、後述するように基板間の気泡を溶解して消失し易くすることができる。
【0047】
接着剤をこのような所定のパターン状に形成するには、接着剤を接着面に対してドット状に塗布することで、ドット状の接着剤が存在する部位と存在しない部位とをパターン状に形成することを挙げることができ、また好ましい。例えば、図5(a)に示すように、400μmφのドット状の接着剤A1を、ピッチ1mmで、縦横に碁盤目状に規則正しく整列させて70mm×50mmの圧電材料基板11の接着面11aに形成した場合、約5000個のドット状の接着剤A1が存在する部位と接着剤が存在しない部位A2とを規則正しく形成することができる。この場合、後工程において圧電材料基板11の接着面11aにもう一方の圧電材料基板12を重ね合わせると、図6及び図7に示すように、ドット状の接着剤A1が若干押し潰されて周囲に広がり、隣接する接着剤A1同士が繋がるようになって、接着剤が存在しない部位A2の周囲を取り囲むことにより、接着面11aに無数の気泡A3を包み込むようにすることができる。
【0048】
ドット状の接着剤A1によって、接着剤A1が存在する部位と存在しない部位A2とが所定のパターン状に形成されるように塗布する場合、縦横に碁盤目状に配置するものに限らず、図5(b)に示すように千鳥状に配置することも好ましい。
【0049】
また、同様に、圧電材料基板11の接着面11aに接着剤A1が存在する部位と接着剤が存在しない部位A2とを所定のパターン状に塗布形成するには、接着剤A1が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することもできる。図5(c)はストライプ状の接着剤A1を縦横に規則的に交叉させて格子状とした例を示している。このような格子状とする場合は斜め格子状としてもよい。要するに、圧電材料基板11の接着面11aに塗布される接着剤A1に、2枚の圧電材料基板11、12を接着剤を介して重ね合わせた時に、基板間に規則的に無数の気泡を包み込むような形態になるように、接着剤A1が存在する部位と存在しない部位A2とを形成すればよい。本発明では、このように2枚の圧電材料基板11、12を重ね合わせた際に形成される基板間の接着剤層に規則正しい無数の気泡を形成することができるように接着剤を塗布形成することが重要となる。
【0050】
図5(a)(b)に示すように接着剤A1をドット状とした場合、その接着剤形状の最大径は1mm以下とすることが好ましい。1mmを越えるようになると、各接着剤A1の厚みが大きくなって、それによって形成される基板間の接着剤層の厚みが厚くなる傾向がある。また、後述する気泡を溶解するのにかかる時間も長くなる。特に気泡を効率良く溶解するためには、接着剤形状は小径とすることが好ましいことから、更に好ましい最大径は500μm以下、より好ましくは200μm以下とすることである。
【0051】
また、接着剤A1を図5(c)に示すように互いに交叉するストライプ状とした場合、その幅は1mm以下とすることが好ましい。1mmを越えるようになると、上記同様に各接着剤A1の厚みが大きくなって、それによって形成される基板間の接着剤層の厚みが厚くなる傾向がある。また、後述する気泡を溶解するのにかかる時間も長くなる。特に気泡を効率良く溶解するためには、ストライプの幅は小幅とすることが好ましいことから、更に好ましい幅は500μm以下、より好ましくは200μm以下とすることである。
【0052】
各ドット又は各ストライプによる接着剤A1の高さ(厚み)及び接着剤A1相互の間隔(ピッチ)は、2枚の圧電材料基板11、12を重ね合わせた時に、基板間に規則的に無数の気泡を包み込む形となるように、その径又は幅に応じて適宜決定することができる。
【0053】
なお、2枚の圧電材料基板11、12を重ね合わせたときの接着剤のはみ出しを抑制するため、図4に示すように、圧電材料基板11の接着面11aの外周縁から一定の幅に亘って、接着剤を塗布しない領域Bを形成しておくことが好ましい。
【0054】
圧電材料基板11の接着面11aに、このように接着剤を所定のパターン状に形成されるように塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布装置又は塗布手段を適宜採用することにより行うことができるが、作業性及びパターン形成の容易性の観点から、スクリーン印刷法にて塗布することが好ましい。スクリーン印刷機は、例えばニューロング精密工業(株)製のLS150を用いることができ、スクリーン版としては、メッシュ(株)製のEX305TYBを好ましく使用することができる。
【0055】
本発明において用いられる熱硬化性接着剤としては、接着すべき基材に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、インクジェットヘッドの製造においては、インクと接触したときに溶融しない又はインクを変質させないものが好ましく、上記のようにスクリーン印刷を行う場合には、これに加えてスクリーン印刷適性を有するものを用いることが好ましい。
【0056】
また、熱硬化性接着剤は、圧電材料基板11の接着面11aに塗布される時の粘度が1000cp以上であり、後述する第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であるものが好ましい。塗布時に1000cp以上であることにより、接合時の位置ずれを抑制することができると共に、第1加熱温度で加熱した際に粘度が低下するので、後に基板相互を加圧することで接着剤層を薄膜化し易くすることができる。
【0057】
このような諸条件を満たす熱硬化性接着剤としては、例えば、EPOXY TECHNOLOZY社製のEPOTEK353ND、日本エイブルスティック社製のエポキシ系84−3、エコボンド、田岡化学工業社製のテクノダインAH−3041等が挙げられる。これら接着剤は、本発明においては塗布前に予め脱泡処理しておく必要はない。
【0058】
次に、以上のようにして圧電材料基板11の接着面11a上に熱硬化性接着剤を所定のパターン状に塗布形成した後、もう一方の圧電性材料基板12をこの接着面11a上に重ね合わせる。但し、ここで重ね合わせた圧電材料基板11、12に対して圧力は掛けない。このとき、圧電材料基板11の接着面11aに所定のパターン状に塗布形成された接着剤A1は、図5(a)のようにドット状の接着剤A1を縦横に碁盤目状に配置した場合を例にとると、重ね合わせた圧電材料基板12の重さによって、図6に示すように若干押し潰されて周囲に広がり、隣接する接着剤A1同士が繋がるようになる。これにより、接着剤が存在しない部位A2は、その周囲が接着剤A1で包囲されると共に上下が圧電材料基板11、12によって覆われる。従って、圧電材料基板11、12間には、図7に示すように、塗布時に接着剤が存在しない部位A2とされた部位が無数の気泡A3として規則的に包み込まれる形とされ、接着剤A1と気泡A3とがパターン状に配置されるようになる。
【0059】
次に、重ね合わせた圧電材料基板11、12の積層物1を、接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱する。これにより、基板間に存在する接着剤A1の粘度を下げ、且つ気泡A3の気体の温度を上げて接着剤A1中の空気の拡散係数を上げる。この第1加熱温度での加熱条件としては、例えば接着剤がEPOTEK353NDの場合、約70℃で5分間程度の加熱を行うことが好ましい。
【0060】
この第1加熱温度で加熱する工程以降の工程は、図8に示すように、加熱、減圧、加圧の制御が可能な真空加圧ラミネーターに投入することによって行うことが好ましい。このような真空加圧ラミネーターとしては、株式会社名機製作所の真空ラミネーター:MVLP600を好ましく用いることができる。
【0061】
図8は真空加圧ラミネーターのラミネート部200の模式図である。ラミネート部200は、開閉可能な上型枠201及び下型枠202内にチャンバー203を形成しており、各型枠201、202の内面には、それぞれヒーターが内蔵された上熱盤204及び下熱盤205が設けられている。
【0062】
下型枠202には、下熱盤205の上方を覆うようにダイアフラム(ゴム膜)206が設けられており、下型枠202との間で下熱盤205を封止し、両型枠201、202を型閉めした際、このダイアフラム206によってチャンバー203を上室203aと下室203bとに区画するようになっている。
【0063】
上型枠201及び下型枠202は、それぞれ開口207、208を介して適宜の加圧手段及び減圧手段(いずれも図示せず)と接続しており、上記チャンバー203の上室203a内と下室203b内とをそれぞれ個別に加圧もしくは減圧可能とされている。
【0064】
このような真空加圧ラミネーターのラミネート部200において、圧電材料基板11、12の積層物1を上室203a内のダイアフラム206上に載置し、型閉めした後、上熱盤204及び下熱盤205をそれぞれ上記第1加熱温度まで加熱することで、チャンバー203の上室203a内の積層物1を加熱する。このとき、下型枠202の開口208から真空引きを行うことにより、チャンバー203の下室203b内を減圧すると、図8に示すようにダイアフラム206は下熱盤205上に密着するので、積層物1に対して無加圧の状態で、上記第1加熱温度の加熱を行うことができる。
【0065】
ここで、この加熱と同時にあるいは加熱後に、上型枠201の開口207からも真空引きを行うと、チャンバー203の上室203a内は減圧され、これにより積層物1を減圧状態とすることができる。本発明では、この第1加熱温度での加熱と減圧状態とによって、基板間の気泡を接着剤A1中に溶解させ、消失させるものである。
【0066】
この気泡の溶解消失の理論について説明する。図11に示すように、48mm×68mmの大きさの2枚のPZT基板300間の溶媒樹脂400の中心に存在する気泡500が端部に拡散する速度ついて、これを42mmRの円柱の中心に気泡500が存在するものと仮定すると、真空度3Torrにおける気泡500が溶媒樹脂400中に拡散する拡散速度NAは以下の式で与えられる。
【0067】
NA=A1mDABΔC/(r2−r1)
ここで、
DAB:拡散係数・・・Wilke-Changの推定式で算出
但し、
DAB=7.4*10−8*(φMB)0.5*T/ηB*VA0.6(cm2/s)
MB:溶媒Bの分子量 340(エポキシ樹脂/常温液体)
T:絶対温度 20℃
ηB:溶媒Bの粘度 10cp
VA:標準沸点における溶質Aの分子容 29.9(cm3/gmol)
φ:溶媒Bの会合度 1
ΔC:不飽和度・・・水に対する空気の不飽和度(常温/757Torr)を代用
A1m:対数平均面積
従って、
NA=0.28(cm2)*6.1*10−6(cm2/s)*0.76*10−3(mol/cm3)/4.17(cm)=0.31*10−9(mol/s)=6.9*10−6(cc/s)
となる。
【0068】
ここで、気泡500の空気量V=1.2*10−5(cc)とすると、気泡500の拡散時間は、V/NA≒1.6(s)と短時間であることがわかる。従って、気泡500は、所定の温度及び減圧状態とされることで、短時間のうちに溶媒樹脂400中に溶解されて消失することがわかる。
【0069】
本発明における積層物1は、上記のように第1加熱温度で加熱されているので、基板間に存在する接着剤A1の粘度が下がり、且つ気泡A3の気体の温度が上がることにより接着剤A1中の空気の拡散係数が上げられているので、所定の時間で減圧状態とされることで、基板間に接着剤A1によって包み込まれて規則的に配置された無数の気泡A3が接着剤A1内に拡散されて溶解消失する。上記加熱後とは、このように接着剤A1の粘度が下がり、且つ気泡A3の気体の温度が上がったままの状態でという意味である。
【0070】
積層物1をこのように減圧状態とする際の条件は、一般に真空度2Torr〜30Torr、減圧時間は10sec〜60secとされるが、圧電材料基板11の接着面11aにパターン状に塗布形成される各接着剤A1の大きさやピッチ、粘度、基板間に包み込まれる気泡A3の量、基板の大きさ等の諸条件に応じて適宜調整することができる。例えば、接着剤A1のピッチが大きい場合は、接着剤層が薄くなり、接着剤A1中に気泡A3が溶解しにくくなるため、減圧時間を長めに設定すれはよい。
【0071】
以上のようにして積層物1を減圧状態にし、気泡A3を溶解消失させた後、両型枠201、202の各開口207、208からの真空引きを停止し、次いで、図9に示すように下型枠202の開口208からチャンバー203の下室203b内に圧縮空気を供給すると、ダイアフラム206が膨張して積層物1を上型枠201の上熱盤204に対して押しつける。これにより、積層物1に対してその接着面方向に向かって均一に圧力をかけることができる。
【0072】
本発明によれば、基板間の気泡A3は、上記したように積層物1を所定時間減圧状態とすることによって溶解消失される。従って、この積層物1に対して均一に圧力をかける作業工程は、気泡A3の溶解消失を目的とするものではなく、積層物1に均一に圧力をかけることによって、基板間の接着剤層の膜厚を均一化すると共に、加圧条件を適宜調整することによって、接着剤層の膜厚を所望の厚みに調整することを目的としている。
【0073】
このときの加圧力は、一般に0.5MPa〜1.5MPaとすることができるが、圧電材料基板11の接着面11aにパターン状に塗布形成される各接着剤A1の大きさやピッチ、粘度、基板間に包み込まれる気泡A3の量、基板の大きさ、目的とする接着剤層の厚み等の諸条件に応じて適宜調整することができる。接着剤層の平均厚みは、インクジェットヘッドを構成する圧電材料基板11と12の間の場合、低電圧で高速駆動を行う観点から、0.5μm〜3.0μmとすることが好ましい。平均厚みとは、圧電材料基板11、12の凹凸を考慮した平均値をいう。
【0074】
この後、上熱盤204及び下熱盤205の温度を上げることで、積層物1を接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、接着剤A1を硬化して圧電材料基板11と12とを相互に一体化する。この第2加熱温度での加熱条件は、インクジェットヘッドを構成する圧電材料基板11と12の接合時には分極の消失を避けるため、圧電材料のキューリー点よりも低い温度とする必要がある。従って、接着剤にはこの圧電材料のキューリー点よりも低い温度で熱硬化性を持つものを使用することが好ましい。例えば接着剤A1がEPOTEK353NDの場合、約100℃で20分間程度の加熱を行うことで熱硬化性を持つため、圧電材料基板11、12がPZTである場合に好ましく使用することができる。
【0075】
この第2加熱温度で加熱する際は、加熱と同時に積層物1に対してその接着面方向に向かって均一に圧力をかけることが好ましい。これは上記した加圧工程をそのまま継続することによって行うことができる。積層物1を第2加熱温度で加熱する際も均一に圧力をかけることで、接着剤硬化時の気泡の再混入を抑制することができると共に、接着剤層の厚みをより均一化することができる。
【0076】
その後、このようにして接着剤が硬化された圧電材料基板11、12の積層物1に対して、図2に示したように、ダイヤモンドブレード100によって互いに平行な多数のインクチャネル13を切削加工する。このとき、積層物1の接着剤層には気泡が含まれておらず、且つ極く薄い接着剤層でありながらも十分な強度で接着されたものとなっているから、切削抵抗によっても両基板11、12が剥離したり、切り残された駆動壁14が破壊されることなく、各インクチャネル13と分極方向の異なる上下2種類の圧電材料からなる各駆動壁14を容易に形成することができる。しかも、接着剤層を薄くすることができることで、駆動壁14のせん断変形時の動作エネルギーを接着剤層が吸収してしまうことがなく、インク吐出を効率良く行うことができる。
【0077】
また、接着剤層に気泡が残留していないため、駆動電極15の形成時に気泡を通って隣接する電極金属同士が繋がって形成されてしまう問題もなくなり、信頼性の高いインクジェットヘッドを製造することができる。
【0078】
なお、本発明に係る基材の接着方法は、以上説明したインクジェットヘッドの製造に適用するものに限らず、接着剤層を介して接着される基材間に気泡が残留しないようにすることが製品の性能上特に好ましいような基材の接着方法に広く適用することができる。このようなインクジェットヘッドの製造以外の適用例としては、光学素子の貼り合せや液晶パネルの製造等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
大きさが70mm×50mm、厚みが0.7mmのPZTからなる圧電材料基板を用意し、その一面(接着面)に、ニューロング精密工業(株)製のスクリーン印刷機「LS150」を用いて、ドット状の接着剤(EPOXY TECHNOLOZY社製:EPOTEK353ND)を碁盤目状に塗布することで、接着剤が存在する部位と存在しない部位とをパターン状に形成した。各接着剤のドット径、ドットピッチ及びドット高さは表1に記載の通りである。
【0080】
この圧電材料基板の接着面に、大きさが70mm×50mm、厚みが0.155mmの透明なガラス基板を重ね合わせ、株式会社名機製作所の真空ラミネーター「MVLP600」を用いて、第1加熱温度70℃で5分間加熱した後、減圧状態とし、その接着面方向に向かって均一に圧力を掛けると同時に第2加熱温度100℃で20分間の加熱を行って接着剤層を硬化した。
【0081】
なお、ガラス基板の接合時、各ドット状の接着剤が若干押し潰されて周囲に広がることにより、各接着剤が隣接する接着剤と繋がり、その間に気泡が包み込まれる状態が接着面全体に亘って確認された。
【0082】
また、各基板の真空度、真空処理時間及び加圧力は表1に示す通りである。
【0083】
(実施例2)
真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同一とした。
【0084】
(実施例3)
接着剤の塗布パターンを千鳥状とすると共に、真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同一とした。
【0085】
(実施例4)
真空処理時間と加圧力を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同一とした。
【0086】
(実施例5)
接着剤のドット径、ドットピッチ及び加圧力を表1に示す通り変更した以外は実施例1同一とした。
【0087】
(実施例6)
接着剤のドット径、ドットピッチ、加圧力及び真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1同一とした。
【0088】
(実施例7)
接着剤のドットピッチ、ドット高さ及び真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1同一とした。
【0089】
(比較例1)
圧電材料基板とガラス基板とを接合後、減圧状態としなかった(大気圧:760Torrとした)以外は実施例1と同一とした。
【0090】
(比較例2)
圧電材料基板とガラス基板とを接合後、加圧しなかった以外は実施例3と同一とした。
【0091】
(比較例3)
圧電材料基板とガラス基板とを接合後、第1加熱温度で加熱しなかった以外は実施例2と同一とした。
【0092】
(比較例4)
接着剤のドット径、ドットピッチ及びドット高さを表1に示す通り変更した以外は実施例2と同一とした。なお、ここでは、接着剤塗布後、圧電材料基板とガラス基板とを接合して接着剤が若干押し潰されても、隣接する接着剤同士の繋がりは発生せず、接着剤によって気泡が包み込まれる状態にはなっていなかった。
【0093】
<評価>
各実施例及び比較例において評価した項目は、気泡の残留量、接着剤層の均一性及び接着剤厚みを評価した。
【0094】
気泡の残留量は、ガラス基板面より顕微鏡で観察し、気泡の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
【0095】
○:まったく気泡が存在しない。
△:基板接合時の気泡の位置の一部に気泡が残留している。
×:基板接合時の気泡の位置にすべて気泡が残留している。
【0096】
接着剤層の均一性は、接着剤硬化後の基板を縦、横均等に2分割し、切断面の接着剤層厚みを顕微鏡にて10点測定した。なお、圧電材料基板は、表面粗さ(Rz)が2μmのものを使用し、接着剤層厚みは、その凹凸を考慮した平均厚みとした。評価基準は以下の通りである。
【0097】
○:接着剤層厚みのMAXとMINの差が0.5μm以下である。
△:接着剤層厚みのMAXとMINの差が0.5μmを越えて2μm未満である。
×:接着剤層厚みのMAXとMINの差が2μm以上である。
【0098】
接着剤層厚みは、上記接着剤層の均一性の評価における平均厚みを算出した。各結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1からわかるように、実施例1〜7では、ドット状の接着剤の塗布の後、ガラス基板を接合した際、ガラス基板の重さによって各ドット状の接着剤が若干押し潰され、隣接するドット状の接着剤同士が繋がることで、基板間に無数の気泡が包み込まれる状態となっており、これを第1加熱温度で加熱と同時に減圧状態とすることで、接着剤層中の気泡が溶解消失されるので、接着剤層中には一部に見られるか(実施例1)又はまったく見られなかった(実施例2〜7)。
【0101】
その後、接着面方向に向かって均一に圧力をかけて第2加熱温度で加熱して硬化することで、ほぼ均一な接着剤層を形成することができた。
【0102】
しかし、比較例1では、基板の重ね合わせ後に減圧状態を経なかったため、気泡を溶解消失させることができず、気泡の残留及び接着剤層の不均一性が発生した。
【0103】
また、比較例2では、減圧状態とした後、接着剤を硬化する際に加圧を行わなかったため、接着剤層が不均一性が見られた。接着剤層が不均一となると、インクジェットヘッドの駆動ばらつきの発生に繋がるため、インクジェットヘッドのアクチュエータ基板とするには不適であった。
【0104】
更に、比較例3では、基板の重ね合わせ後に第1加熱温度での加熱を行わなかったため、接着剤中の空気の拡散係数が上がらず、減圧状態としても、基板間の気泡を接着剤内に拡散して溶解させることが不十分となり、気泡残留が見られ、接着剤層も不均一であった。
【0105】
また、比較例4では、接着剤を塗布した後に基板を重ね合わせても、隣接する接着剤同士の繋がりは発生せず、接着剤によって気泡が包み込まれる状態にはなっていなかったため、減圧状態としても、基板間の気泡を接着剤内に拡散して溶解させることが不十分となり、気泡残留が見られ、接着剤層も不均一であった。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】インクジェットヘッドの断面を示す分解斜視図
【図2】インクチャネルの加工の様子を示す説明図
【図3】インクジェットヘッドの駆動を示す説明図
【図4】接着剤を塗布した圧電材料基板の接着面を示す平面図
【図5】(a)はドット状の接着剤を縦横に碁盤目状に規則正しく配置したパターン、(b)はドット状の接着剤を千鳥状に配置したパターン、(c)はストライプ状の接着剤を縦横に交叉させて格子状に位置したパターンをそれぞれ示す平面図
【図6】基板を重ね合わせた際の隣接するドット状の接着剤同士が繋がった状態を示す平面図
【図7】基板を重ね合わせた際の隣接するドット状の接着剤同士が繋がった状態を示す断面図
【図8】ラミネート部内に積層物を載置して減圧した状態を示す説明図
【図9】ラミネート部内に積層物を載置して加圧した状態を示す説明図
【図10】(a)は駆動電圧、接着剤層の厚み及び接着剤硬度の関係を示すグラフ、(b)は駆動パルス幅、接着剤層の厚み及び接着剤硬度の関係を示すグラフ
【図11】気泡の溶解消失の理論を説明する図
【符号の説明】
【0107】
1:積層物
10:アクチュエータ基板
11、12:圧電材料基板
11a:接着面
13:インクチャネル
14:駆動壁
15:駆動電極
20:ノズルプレート
21:ノズル
30:カバー基板
31:インク流通口
40:インクマニホールド
100:ダイヤモンドブレード
200:ラミネート部
A:接着剤の塗布領域
A1:接着剤
A2:接着剤が存在しない部位
A3:気泡
B:接着剤を塗布しない領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材間に気泡の残存がなく均一な接着剤層を形成することのできる基材の接着方法及びその接着方法を使用したインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インクに圧力変化を付与することによりノズルから吐出させる。インクに圧力変化を付与する方法としては、電圧を印加することにより機械的に変形を生ずる圧電素子を用いる方法や、ヒーターを用いてインクを加熱することにより発生する気泡の膨張作用を利用する方法等、様々な方法が知られている。
【0003】
圧電素子を用いたインクジェットヘッドの一例を図1に示す。このインクジェットヘッドは、駆動壁14とインクチャネル13とを交互に並設したアクチュエータ基板10を有しており、駆動壁14を圧電素子で形成することにより、該駆動壁14をせん断変形させ、インクチャネル13内のインクをノズルプレート20に設けられたノズル21から吐出させるようにしている。アクチュエータ基板10は、駆動壁14を低電圧で大きくせん断変形させることができるように、図2に示すように、それぞれ分極方向(矢印で示す)を反対方向に向けた薄手の圧電材料基板11と厚手の圧電材料基板12との2枚を熱硬化性接着剤を用いて接着して積層物1を作成し、その後、ダイヤモンドブレード100を用いて、積層物1の一端から他端に向けて、薄手の圧電材料基板11から厚手の圧電材料基板12の中途部に亘る深さで多数の平行な溝を切削加工することで、インクチャネル13とその間に切り残された分極方向が異なる圧電材料基板11と12からなる駆動壁14とを並設している。
【0004】
アクチュエータ基板10の上面には、インク流通口31が設けられたカバー基板30が接合されると共に、該カバー基板30の上面には、インク流通口31を覆うようにインクマニホールド40が接合され、アクチュエータ基板10とカバー基板30の前端面に亘ってノズルプレート20が接合される。
【0005】
各駆動壁14の側面には駆動電極15が設けられており、各インクチャネル13の後端の浅溝部13aを介してアクチュエータ基板10の後端上面に引き出されており、この後端上面において図示しないFPC等が接合されることで図示しない駆動回路から信号電圧が印加される。ここで、例えば、図3に示すように、一つのインクチャネル13内の駆動電極15に所定の信号電圧を印加し、その両隣のインクチャネルの駆動電極15を接地すると、信号電圧が印加された駆動電極15が設けられている両駆動壁14、14にその圧電材料の分極方向と直角方向の電界が生じ、各圧電材料がそれぞれ反対方向にせん断変形し、インクチャネル13内の容積を拡大する。そして、信号電圧の印加を停止すると、各駆動壁14、14が復帰する際にインクチャネル13内のインクに圧力を与え、インクをノズル21から吐出する。
【0006】
ところで、このようなインクジェットヘッドのアクチュエータ基板10を形成する際の圧電材料基板11、12を接着する場合に限らず、一般に、剛性を有する平板状の基材同士を接着剤を用いて接着しようとするとき、互いの接着面全面をほぼ同時に対向させることになるため、接着面に気泡を挟み込んでしまう場合が多い。このようなものを切断して所定の大きさに加工したり、溝を加工したりする場合、接着面に挟み込まれた気泡部分近傍を切断するとき、ダイヤモンドブレード等の切削器具の切削抵抗によって、基材が切断面から剥離してしまうことがある。
【0007】
特に、上記したインクジェットヘッドのアクチュエータ基板10を作成する場合、一般に圧電材料基板11、12にはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の切削抵抗に弱いセラミックス基板が用いられる上に、インクチャネル13はわずか数十μmという極めて微細なピッチで加工されるため、圧電材料基板11と12との間の接着面に気泡が残留していると、上記した理由によって加工時に駆動壁14が破壊してしまうおそれがある。また、破壊しないまでも、気泡が点在することによって、圧電材料基板11と12との間の接着性の均一性が得られなくなり、駆動特性のばらつきを発生させる原因となる。
【0008】
これには接着剤層を厚く形成することによって接着強度を高めることで、接着剤層中に気泡が存在していても加工時に駆動壁の破壊が生じないようにすることもできるが、図10(a)(b)からわかるように、インクジェットヘッドの場合、接着剤層が厚くなると、駆動電圧が高くなり、駆動パルス幅も大きくなってしまい、低電圧で高速駆動させることが困難となってくる。これは、インクジェットヘッドの場合、接着剤層が駆動壁のせん断変形時の動作エネルギーを吸収してしまうためである。従って、インクジェットヘッドを低電圧で高速駆動させるには、接着剤層を高硬度で薄層化することが望まれる。
【0009】
また、駆動壁14を構成する圧電材料基板11と12との間に気泡が残留している場合、駆動壁14の側面の駆動電極15をめっき法等によって形成すると、電極金属が気泡内に入り込むことによって隣接するインクチャネル14内の駆動電極15と繋がってしまう。たとえ電極金属が入り込むようなことがなくても、気泡内にインクが浸入することによってショートが生じるおそれがあり、いずれにしても信号電圧を印加することができなくなってしまう問題がある。
【0010】
そこで、従来、予熱して粘度を低くした接着剤を、接着面に塗布することにより接着剤の厚みを薄くして接着剤中に残量する気泡を少なくし、接合後、接合方向に加圧すると共に接着剤の粘度が最も低くなる温度まで昇温し、接着剤の厚みをより一層薄くして接着剤中に気泡が残留しないようにすることが、特許文献1に記載されている。
【0011】
また、接着剤を基材の接着面に塗布する前に、遠心脱泡処理することで、接着剤中の気泡除去だけでなく、加熱処理時の接着剤中に含まれる微細な気泡の膨張発泡を抑えるようにすると共に、基材の接着面に塗布した熱硬化性接着剤を準安定化(Bステージ化)した後、基材同士を重ね合わせ、接着面方向において一端から他端に向かって順次圧力をかけ、その後、接着剤を硬化して基材同士を相互に一体化することにより、基材同士の位置ずれがなく、接着面に気泡を含まないようにすることが、特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平9−123466号公報
【特許文献2】特開2000−190511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の方法では、接着すべき部材が大きくなると、接着面の中心付近に気泡が残留し易いばかりでなく、接合時の接着剤の粘度を低くしているために相互に位置ずれを生じ易い問題がある。
【0013】
一方、特許文献2に記載の方法では、接着剤を準安定化した後に接合するため、位置ずれの問題は生じないと考えられるが、接着剤を基材の接着面に塗布する前に予め遠心脱泡処理したり、接着剤を塗布後に準安定化するための時間や手間が量産化を考慮すると生産性向上を図る上での課題となる。
【0014】
また、接着剤層の均一性が十分でなく、特にインクジェットヘッドの製造における圧電材料基板同士を接着する場合のような、接着剤層厚みがヘッドの性能に相関する箇所の接着においては、各インクチャネルにおける駆動性能のばらつきに繋がる問題がある。更に、量産性を上げるために基板を大判化すると、その影響は顕著になると推定される。また、量産時に接着剤物性ばらつき等でBステージ状態に変動があった場合には、脱泡が不十分になる可能性もあり、品質に影響を与える可能性が考えられる。
【0015】
また、この特許文献2に記載の方法では、接着剤の厚みを制御することは、接着剤層の脱泡の原理より困難であると考えられる。
【0016】
しかしながら、近年、インクジェットのスループットの観点からラインヘッド化や、また、高精細描画の観点から高精度化といった要求が高まっており、基板を大判化して長尺で生産性の高いインクジェットヘッドを生産しても、各インクチャネルの駆動性能のばらつきのない製造方法が求められている。
【0017】
そこで、本発明の課題は、以上の従来事情に鑑みてなされたものであり、基材間の接着剤層中の気泡の残留を抑制し、接着剤層の均一性を高め、且つ、生産性が高く、基材の大判化にも対応可能な基材の接着方法及びその接着方法を使用したインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の発明は、接着されるべき第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化することを特徴とする基材の接着方法である。
【0020】
請求項2記載の発明は、前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項1記載の基材の接着方法である。
【0021】
請求項3記載の発明は、前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項1又は2記載の基材の接着方法である。
【0022】
請求項4記載の発明は、前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項1、2又は3記載の基材の接着方法である。
【0023】
請求項5記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法である。
【0024】
請求項6記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法である。
【0025】
請求項7記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法である。
【0026】
請求項8記載の発明は、前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の基材の接着方法である。
【0027】
請求項9記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法である。
【0028】
請求項10記載の発明は、前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項9記載の基材の接着方法である。
【0029】
請求項11記載の発明は、前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の基材の接着方法である。
【0030】
請求項12記載の発明は、多数のインクチャネルを平行に有し、各インクチャネル間の駆動壁を少なくとも2種類の材料で構成すると共に、該少なくとも2種類の材料のうちの少なくとも1種類が圧電材料であり、該圧電材料の変形によって各インクチャネル内のインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、前記少なくとも2種類の材料を構成する第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化した後、前記第1の基材及び前記第2の基材に亘って前記複数のインクチャネルを溝加工することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
【0031】
請求項13記載の発明は、前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項12記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0032】
請求項14記載の発明は、前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項12又は13記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0033】
請求項15記載の発明は、前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項12、13又は14記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0034】
請求項16記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0035】
請求項17記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0036】
請求項18記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0037】
請求項19記載の発明は、前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項16、17又は18記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0038】
請求項20記載の発明は、前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0039】
請求項21記載の発明は、前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項20記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0040】
請求項22記載の発明は、前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【0041】
請求項23記載の発明は、前記接着剤は、第2加熱温度が前記圧電材料のキューリー点よりも低い温度で熱硬化性を持つことを特徴とする請求項12〜22のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、基材間の接着剤層中の気泡の残留を抑制し、接着剤層の均一性を高め、且つ、生産性が高く、基材の大判化にも対応可能な基材の接着方法及びその接着方法を使用したインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について説明するが、ここでは、接着されるべき第1の基材及び第2の基材が、図1〜図3において説明したインクジェットヘッドにおける圧電材料基板11及び12である場合について説明する。なお、上述したインクジェットヘッドの構成及びその製造方法と同一の構成及び製造方法の箇所については詳細な説明を省略する。
【0044】
まず、アクチュエータ基板10を構成する圧電材料基板11(第1の基材)と圧電材料基板12(第2の基材)とを接着剤を用いて接合するに先立ち、接着面の濡れ性改善処理を施しておくことが好ましい。濡れ性改善処理は、各圧電材料基板11、12をそれぞれホルダーにセットしてアルカリ洗浄液槽、第1リンス槽、第2リンス槽、乾燥機がセットされた一般的な枚葉式精密超音波洗浄装置で洗浄乾燥することによって行うことができる。なお、洗浄方法は、接着面の濡れ性が確保されれば良く、ドライ処理法の一つでもあるプラズマ洗浄装置を使用することもできる。洗浄液の一例を挙げれば、常磐化学工業株式会社製のバンライズD−20を2%の濃度で使用し、各液槽の液温を38℃とすることである。
【0045】
次に、図4に示すように、濡れ性改善処理を施した圧電材料基板11における圧電材料基板12との接着面11aに熱硬化性接着剤を塗布する。図中、斜線で示す領域Aは接着剤の塗布領域を示しているが、本発明において、この接着剤の塗布は、この塗布領域Aにおいて接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布することが重要である。
【0046】
ここで、所定のパターンとは、2枚の圧電材料基板11、12を接着剤を挟んで重ね合わせた時に、塗布された接着剤が、接着面11a上において接着剤が存在しない部位の周囲を取り囲むことによって、基板間に規則的に無数の空気(気泡)を包み込む形になるような形態のことである。このようにすることで、接着面に均一の厚みで接着剤を塗布形成することができ、それにより形成される接着剤層を薄くすることが可能となると共に、後述するように基板間の気泡を溶解して消失し易くすることができる。
【0047】
接着剤をこのような所定のパターン状に形成するには、接着剤を接着面に対してドット状に塗布することで、ドット状の接着剤が存在する部位と存在しない部位とをパターン状に形成することを挙げることができ、また好ましい。例えば、図5(a)に示すように、400μmφのドット状の接着剤A1を、ピッチ1mmで、縦横に碁盤目状に規則正しく整列させて70mm×50mmの圧電材料基板11の接着面11aに形成した場合、約5000個のドット状の接着剤A1が存在する部位と接着剤が存在しない部位A2とを規則正しく形成することができる。この場合、後工程において圧電材料基板11の接着面11aにもう一方の圧電材料基板12を重ね合わせると、図6及び図7に示すように、ドット状の接着剤A1が若干押し潰されて周囲に広がり、隣接する接着剤A1同士が繋がるようになって、接着剤が存在しない部位A2の周囲を取り囲むことにより、接着面11aに無数の気泡A3を包み込むようにすることができる。
【0048】
ドット状の接着剤A1によって、接着剤A1が存在する部位と存在しない部位A2とが所定のパターン状に形成されるように塗布する場合、縦横に碁盤目状に配置するものに限らず、図5(b)に示すように千鳥状に配置することも好ましい。
【0049】
また、同様に、圧電材料基板11の接着面11aに接着剤A1が存在する部位と接着剤が存在しない部位A2とを所定のパターン状に塗布形成するには、接着剤A1が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することもできる。図5(c)はストライプ状の接着剤A1を縦横に規則的に交叉させて格子状とした例を示している。このような格子状とする場合は斜め格子状としてもよい。要するに、圧電材料基板11の接着面11aに塗布される接着剤A1に、2枚の圧電材料基板11、12を接着剤を介して重ね合わせた時に、基板間に規則的に無数の気泡を包み込むような形態になるように、接着剤A1が存在する部位と存在しない部位A2とを形成すればよい。本発明では、このように2枚の圧電材料基板11、12を重ね合わせた際に形成される基板間の接着剤層に規則正しい無数の気泡を形成することができるように接着剤を塗布形成することが重要となる。
【0050】
図5(a)(b)に示すように接着剤A1をドット状とした場合、その接着剤形状の最大径は1mm以下とすることが好ましい。1mmを越えるようになると、各接着剤A1の厚みが大きくなって、それによって形成される基板間の接着剤層の厚みが厚くなる傾向がある。また、後述する気泡を溶解するのにかかる時間も長くなる。特に気泡を効率良く溶解するためには、接着剤形状は小径とすることが好ましいことから、更に好ましい最大径は500μm以下、より好ましくは200μm以下とすることである。
【0051】
また、接着剤A1を図5(c)に示すように互いに交叉するストライプ状とした場合、その幅は1mm以下とすることが好ましい。1mmを越えるようになると、上記同様に各接着剤A1の厚みが大きくなって、それによって形成される基板間の接着剤層の厚みが厚くなる傾向がある。また、後述する気泡を溶解するのにかかる時間も長くなる。特に気泡を効率良く溶解するためには、ストライプの幅は小幅とすることが好ましいことから、更に好ましい幅は500μm以下、より好ましくは200μm以下とすることである。
【0052】
各ドット又は各ストライプによる接着剤A1の高さ(厚み)及び接着剤A1相互の間隔(ピッチ)は、2枚の圧電材料基板11、12を重ね合わせた時に、基板間に規則的に無数の気泡を包み込む形となるように、その径又は幅に応じて適宜決定することができる。
【0053】
なお、2枚の圧電材料基板11、12を重ね合わせたときの接着剤のはみ出しを抑制するため、図4に示すように、圧電材料基板11の接着面11aの外周縁から一定の幅に亘って、接着剤を塗布しない領域Bを形成しておくことが好ましい。
【0054】
圧電材料基板11の接着面11aに、このように接着剤を所定のパターン状に形成されるように塗布する方法は特に限定されず、公知の塗布装置又は塗布手段を適宜採用することにより行うことができるが、作業性及びパターン形成の容易性の観点から、スクリーン印刷法にて塗布することが好ましい。スクリーン印刷機は、例えばニューロング精密工業(株)製のLS150を用いることができ、スクリーン版としては、メッシュ(株)製のEX305TYBを好ましく使用することができる。
【0055】
本発明において用いられる熱硬化性接着剤としては、接着すべき基材に応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、インクジェットヘッドの製造においては、インクと接触したときに溶融しない又はインクを変質させないものが好ましく、上記のようにスクリーン印刷を行う場合には、これに加えてスクリーン印刷適性を有するものを用いることが好ましい。
【0056】
また、熱硬化性接着剤は、圧電材料基板11の接着面11aに塗布される時の粘度が1000cp以上であり、後述する第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であるものが好ましい。塗布時に1000cp以上であることにより、接合時の位置ずれを抑制することができると共に、第1加熱温度で加熱した際に粘度が低下するので、後に基板相互を加圧することで接着剤層を薄膜化し易くすることができる。
【0057】
このような諸条件を満たす熱硬化性接着剤としては、例えば、EPOXY TECHNOLOZY社製のEPOTEK353ND、日本エイブルスティック社製のエポキシ系84−3、エコボンド、田岡化学工業社製のテクノダインAH−3041等が挙げられる。これら接着剤は、本発明においては塗布前に予め脱泡処理しておく必要はない。
【0058】
次に、以上のようにして圧電材料基板11の接着面11a上に熱硬化性接着剤を所定のパターン状に塗布形成した後、もう一方の圧電性材料基板12をこの接着面11a上に重ね合わせる。但し、ここで重ね合わせた圧電材料基板11、12に対して圧力は掛けない。このとき、圧電材料基板11の接着面11aに所定のパターン状に塗布形成された接着剤A1は、図5(a)のようにドット状の接着剤A1を縦横に碁盤目状に配置した場合を例にとると、重ね合わせた圧電材料基板12の重さによって、図6に示すように若干押し潰されて周囲に広がり、隣接する接着剤A1同士が繋がるようになる。これにより、接着剤が存在しない部位A2は、その周囲が接着剤A1で包囲されると共に上下が圧電材料基板11、12によって覆われる。従って、圧電材料基板11、12間には、図7に示すように、塗布時に接着剤が存在しない部位A2とされた部位が無数の気泡A3として規則的に包み込まれる形とされ、接着剤A1と気泡A3とがパターン状に配置されるようになる。
【0059】
次に、重ね合わせた圧電材料基板11、12の積層物1を、接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱する。これにより、基板間に存在する接着剤A1の粘度を下げ、且つ気泡A3の気体の温度を上げて接着剤A1中の空気の拡散係数を上げる。この第1加熱温度での加熱条件としては、例えば接着剤がEPOTEK353NDの場合、約70℃で5分間程度の加熱を行うことが好ましい。
【0060】
この第1加熱温度で加熱する工程以降の工程は、図8に示すように、加熱、減圧、加圧の制御が可能な真空加圧ラミネーターに投入することによって行うことが好ましい。このような真空加圧ラミネーターとしては、株式会社名機製作所の真空ラミネーター:MVLP600を好ましく用いることができる。
【0061】
図8は真空加圧ラミネーターのラミネート部200の模式図である。ラミネート部200は、開閉可能な上型枠201及び下型枠202内にチャンバー203を形成しており、各型枠201、202の内面には、それぞれヒーターが内蔵された上熱盤204及び下熱盤205が設けられている。
【0062】
下型枠202には、下熱盤205の上方を覆うようにダイアフラム(ゴム膜)206が設けられており、下型枠202との間で下熱盤205を封止し、両型枠201、202を型閉めした際、このダイアフラム206によってチャンバー203を上室203aと下室203bとに区画するようになっている。
【0063】
上型枠201及び下型枠202は、それぞれ開口207、208を介して適宜の加圧手段及び減圧手段(いずれも図示せず)と接続しており、上記チャンバー203の上室203a内と下室203b内とをそれぞれ個別に加圧もしくは減圧可能とされている。
【0064】
このような真空加圧ラミネーターのラミネート部200において、圧電材料基板11、12の積層物1を上室203a内のダイアフラム206上に載置し、型閉めした後、上熱盤204及び下熱盤205をそれぞれ上記第1加熱温度まで加熱することで、チャンバー203の上室203a内の積層物1を加熱する。このとき、下型枠202の開口208から真空引きを行うことにより、チャンバー203の下室203b内を減圧すると、図8に示すようにダイアフラム206は下熱盤205上に密着するので、積層物1に対して無加圧の状態で、上記第1加熱温度の加熱を行うことができる。
【0065】
ここで、この加熱と同時にあるいは加熱後に、上型枠201の開口207からも真空引きを行うと、チャンバー203の上室203a内は減圧され、これにより積層物1を減圧状態とすることができる。本発明では、この第1加熱温度での加熱と減圧状態とによって、基板間の気泡を接着剤A1中に溶解させ、消失させるものである。
【0066】
この気泡の溶解消失の理論について説明する。図11に示すように、48mm×68mmの大きさの2枚のPZT基板300間の溶媒樹脂400の中心に存在する気泡500が端部に拡散する速度ついて、これを42mmRの円柱の中心に気泡500が存在するものと仮定すると、真空度3Torrにおける気泡500が溶媒樹脂400中に拡散する拡散速度NAは以下の式で与えられる。
【0067】
NA=A1mDABΔC/(r2−r1)
ここで、
DAB:拡散係数・・・Wilke-Changの推定式で算出
但し、
DAB=7.4*10−8*(φMB)0.5*T/ηB*VA0.6(cm2/s)
MB:溶媒Bの分子量 340(エポキシ樹脂/常温液体)
T:絶対温度 20℃
ηB:溶媒Bの粘度 10cp
VA:標準沸点における溶質Aの分子容 29.9(cm3/gmol)
φ:溶媒Bの会合度 1
ΔC:不飽和度・・・水に対する空気の不飽和度(常温/757Torr)を代用
A1m:対数平均面積
従って、
NA=0.28(cm2)*6.1*10−6(cm2/s)*0.76*10−3(mol/cm3)/4.17(cm)=0.31*10−9(mol/s)=6.9*10−6(cc/s)
となる。
【0068】
ここで、気泡500の空気量V=1.2*10−5(cc)とすると、気泡500の拡散時間は、V/NA≒1.6(s)と短時間であることがわかる。従って、気泡500は、所定の温度及び減圧状態とされることで、短時間のうちに溶媒樹脂400中に溶解されて消失することがわかる。
【0069】
本発明における積層物1は、上記のように第1加熱温度で加熱されているので、基板間に存在する接着剤A1の粘度が下がり、且つ気泡A3の気体の温度が上がることにより接着剤A1中の空気の拡散係数が上げられているので、所定の時間で減圧状態とされることで、基板間に接着剤A1によって包み込まれて規則的に配置された無数の気泡A3が接着剤A1内に拡散されて溶解消失する。上記加熱後とは、このように接着剤A1の粘度が下がり、且つ気泡A3の気体の温度が上がったままの状態でという意味である。
【0070】
積層物1をこのように減圧状態とする際の条件は、一般に真空度2Torr〜30Torr、減圧時間は10sec〜60secとされるが、圧電材料基板11の接着面11aにパターン状に塗布形成される各接着剤A1の大きさやピッチ、粘度、基板間に包み込まれる気泡A3の量、基板の大きさ等の諸条件に応じて適宜調整することができる。例えば、接着剤A1のピッチが大きい場合は、接着剤層が薄くなり、接着剤A1中に気泡A3が溶解しにくくなるため、減圧時間を長めに設定すれはよい。
【0071】
以上のようにして積層物1を減圧状態にし、気泡A3を溶解消失させた後、両型枠201、202の各開口207、208からの真空引きを停止し、次いで、図9に示すように下型枠202の開口208からチャンバー203の下室203b内に圧縮空気を供給すると、ダイアフラム206が膨張して積層物1を上型枠201の上熱盤204に対して押しつける。これにより、積層物1に対してその接着面方向に向かって均一に圧力をかけることができる。
【0072】
本発明によれば、基板間の気泡A3は、上記したように積層物1を所定時間減圧状態とすることによって溶解消失される。従って、この積層物1に対して均一に圧力をかける作業工程は、気泡A3の溶解消失を目的とするものではなく、積層物1に均一に圧力をかけることによって、基板間の接着剤層の膜厚を均一化すると共に、加圧条件を適宜調整することによって、接着剤層の膜厚を所望の厚みに調整することを目的としている。
【0073】
このときの加圧力は、一般に0.5MPa〜1.5MPaとすることができるが、圧電材料基板11の接着面11aにパターン状に塗布形成される各接着剤A1の大きさやピッチ、粘度、基板間に包み込まれる気泡A3の量、基板の大きさ、目的とする接着剤層の厚み等の諸条件に応じて適宜調整することができる。接着剤層の平均厚みは、インクジェットヘッドを構成する圧電材料基板11と12の間の場合、低電圧で高速駆動を行う観点から、0.5μm〜3.0μmとすることが好ましい。平均厚みとは、圧電材料基板11、12の凹凸を考慮した平均値をいう。
【0074】
この後、上熱盤204及び下熱盤205の温度を上げることで、積層物1を接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、接着剤A1を硬化して圧電材料基板11と12とを相互に一体化する。この第2加熱温度での加熱条件は、インクジェットヘッドを構成する圧電材料基板11と12の接合時には分極の消失を避けるため、圧電材料のキューリー点よりも低い温度とする必要がある。従って、接着剤にはこの圧電材料のキューリー点よりも低い温度で熱硬化性を持つものを使用することが好ましい。例えば接着剤A1がEPOTEK353NDの場合、約100℃で20分間程度の加熱を行うことで熱硬化性を持つため、圧電材料基板11、12がPZTである場合に好ましく使用することができる。
【0075】
この第2加熱温度で加熱する際は、加熱と同時に積層物1に対してその接着面方向に向かって均一に圧力をかけることが好ましい。これは上記した加圧工程をそのまま継続することによって行うことができる。積層物1を第2加熱温度で加熱する際も均一に圧力をかけることで、接着剤硬化時の気泡の再混入を抑制することができると共に、接着剤層の厚みをより均一化することができる。
【0076】
その後、このようにして接着剤が硬化された圧電材料基板11、12の積層物1に対して、図2に示したように、ダイヤモンドブレード100によって互いに平行な多数のインクチャネル13を切削加工する。このとき、積層物1の接着剤層には気泡が含まれておらず、且つ極く薄い接着剤層でありながらも十分な強度で接着されたものとなっているから、切削抵抗によっても両基板11、12が剥離したり、切り残された駆動壁14が破壊されることなく、各インクチャネル13と分極方向の異なる上下2種類の圧電材料からなる各駆動壁14を容易に形成することができる。しかも、接着剤層を薄くすることができることで、駆動壁14のせん断変形時の動作エネルギーを接着剤層が吸収してしまうことがなく、インク吐出を効率良く行うことができる。
【0077】
また、接着剤層に気泡が残留していないため、駆動電極15の形成時に気泡を通って隣接する電極金属同士が繋がって形成されてしまう問題もなくなり、信頼性の高いインクジェットヘッドを製造することができる。
【0078】
なお、本発明に係る基材の接着方法は、以上説明したインクジェットヘッドの製造に適用するものに限らず、接着剤層を介して接着される基材間に気泡が残留しないようにすることが製品の性能上特に好ましいような基材の接着方法に広く適用することができる。このようなインクジェットヘッドの製造以外の適用例としては、光学素子の貼り合せや液晶パネルの製造等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
大きさが70mm×50mm、厚みが0.7mmのPZTからなる圧電材料基板を用意し、その一面(接着面)に、ニューロング精密工業(株)製のスクリーン印刷機「LS150」を用いて、ドット状の接着剤(EPOXY TECHNOLOZY社製:EPOTEK353ND)を碁盤目状に塗布することで、接着剤が存在する部位と存在しない部位とをパターン状に形成した。各接着剤のドット径、ドットピッチ及びドット高さは表1に記載の通りである。
【0080】
この圧電材料基板の接着面に、大きさが70mm×50mm、厚みが0.155mmの透明なガラス基板を重ね合わせ、株式会社名機製作所の真空ラミネーター「MVLP600」を用いて、第1加熱温度70℃で5分間加熱した後、減圧状態とし、その接着面方向に向かって均一に圧力を掛けると同時に第2加熱温度100℃で20分間の加熱を行って接着剤層を硬化した。
【0081】
なお、ガラス基板の接合時、各ドット状の接着剤が若干押し潰されて周囲に広がることにより、各接着剤が隣接する接着剤と繋がり、その間に気泡が包み込まれる状態が接着面全体に亘って確認された。
【0082】
また、各基板の真空度、真空処理時間及び加圧力は表1に示す通りである。
【0083】
(実施例2)
真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同一とした。
【0084】
(実施例3)
接着剤の塗布パターンを千鳥状とすると共に、真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同一とした。
【0085】
(実施例4)
真空処理時間と加圧力を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同一とした。
【0086】
(実施例5)
接着剤のドット径、ドットピッチ及び加圧力を表1に示す通り変更した以外は実施例1同一とした。
【0087】
(実施例6)
接着剤のドット径、ドットピッチ、加圧力及び真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1同一とした。
【0088】
(実施例7)
接着剤のドットピッチ、ドット高さ及び真空処理時間を表1に示す通り変更した以外は実施例1同一とした。
【0089】
(比較例1)
圧電材料基板とガラス基板とを接合後、減圧状態としなかった(大気圧:760Torrとした)以外は実施例1と同一とした。
【0090】
(比較例2)
圧電材料基板とガラス基板とを接合後、加圧しなかった以外は実施例3と同一とした。
【0091】
(比較例3)
圧電材料基板とガラス基板とを接合後、第1加熱温度で加熱しなかった以外は実施例2と同一とした。
【0092】
(比較例4)
接着剤のドット径、ドットピッチ及びドット高さを表1に示す通り変更した以外は実施例2と同一とした。なお、ここでは、接着剤塗布後、圧電材料基板とガラス基板とを接合して接着剤が若干押し潰されても、隣接する接着剤同士の繋がりは発生せず、接着剤によって気泡が包み込まれる状態にはなっていなかった。
【0093】
<評価>
各実施例及び比較例において評価した項目は、気泡の残留量、接着剤層の均一性及び接着剤厚みを評価した。
【0094】
気泡の残留量は、ガラス基板面より顕微鏡で観察し、気泡の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
【0095】
○:まったく気泡が存在しない。
△:基板接合時の気泡の位置の一部に気泡が残留している。
×:基板接合時の気泡の位置にすべて気泡が残留している。
【0096】
接着剤層の均一性は、接着剤硬化後の基板を縦、横均等に2分割し、切断面の接着剤層厚みを顕微鏡にて10点測定した。なお、圧電材料基板は、表面粗さ(Rz)が2μmのものを使用し、接着剤層厚みは、その凹凸を考慮した平均厚みとした。評価基準は以下の通りである。
【0097】
○:接着剤層厚みのMAXとMINの差が0.5μm以下である。
△:接着剤層厚みのMAXとMINの差が0.5μmを越えて2μm未満である。
×:接着剤層厚みのMAXとMINの差が2μm以上である。
【0098】
接着剤層厚みは、上記接着剤層の均一性の評価における平均厚みを算出した。各結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1からわかるように、実施例1〜7では、ドット状の接着剤の塗布の後、ガラス基板を接合した際、ガラス基板の重さによって各ドット状の接着剤が若干押し潰され、隣接するドット状の接着剤同士が繋がることで、基板間に無数の気泡が包み込まれる状態となっており、これを第1加熱温度で加熱と同時に減圧状態とすることで、接着剤層中の気泡が溶解消失されるので、接着剤層中には一部に見られるか(実施例1)又はまったく見られなかった(実施例2〜7)。
【0101】
その後、接着面方向に向かって均一に圧力をかけて第2加熱温度で加熱して硬化することで、ほぼ均一な接着剤層を形成することができた。
【0102】
しかし、比較例1では、基板の重ね合わせ後に減圧状態を経なかったため、気泡を溶解消失させることができず、気泡の残留及び接着剤層の不均一性が発生した。
【0103】
また、比較例2では、減圧状態とした後、接着剤を硬化する際に加圧を行わなかったため、接着剤層が不均一性が見られた。接着剤層が不均一となると、インクジェットヘッドの駆動ばらつきの発生に繋がるため、インクジェットヘッドのアクチュエータ基板とするには不適であった。
【0104】
更に、比較例3では、基板の重ね合わせ後に第1加熱温度での加熱を行わなかったため、接着剤中の空気の拡散係数が上がらず、減圧状態としても、基板間の気泡を接着剤内に拡散して溶解させることが不十分となり、気泡残留が見られ、接着剤層も不均一であった。
【0105】
また、比較例4では、接着剤を塗布した後に基板を重ね合わせても、隣接する接着剤同士の繋がりは発生せず、接着剤によって気泡が包み込まれる状態にはなっていなかったため、減圧状態としても、基板間の気泡を接着剤内に拡散して溶解させることが不十分となり、気泡残留が見られ、接着剤層も不均一であった。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】インクジェットヘッドの断面を示す分解斜視図
【図2】インクチャネルの加工の様子を示す説明図
【図3】インクジェットヘッドの駆動を示す説明図
【図4】接着剤を塗布した圧電材料基板の接着面を示す平面図
【図5】(a)はドット状の接着剤を縦横に碁盤目状に規則正しく配置したパターン、(b)はドット状の接着剤を千鳥状に配置したパターン、(c)はストライプ状の接着剤を縦横に交叉させて格子状に位置したパターンをそれぞれ示す平面図
【図6】基板を重ね合わせた際の隣接するドット状の接着剤同士が繋がった状態を示す平面図
【図7】基板を重ね合わせた際の隣接するドット状の接着剤同士が繋がった状態を示す断面図
【図8】ラミネート部内に積層物を載置して減圧した状態を示す説明図
【図9】ラミネート部内に積層物を載置して加圧した状態を示す説明図
【図10】(a)は駆動電圧、接着剤層の厚み及び接着剤硬度の関係を示すグラフ、(b)は駆動パルス幅、接着剤層の厚み及び接着剤硬度の関係を示すグラフ
【図11】気泡の溶解消失の理論を説明する図
【符号の説明】
【0107】
1:積層物
10:アクチュエータ基板
11、12:圧電材料基板
11a:接着面
13:インクチャネル
14:駆動壁
15:駆動電極
20:ノズルプレート
21:ノズル
30:カバー基板
31:インク流通口
40:インクマニホールド
100:ダイヤモンドブレード
200:ラミネート部
A:接着剤の塗布領域
A1:接着剤
A2:接着剤が存在しない部位
A3:気泡
B:接着剤を塗布しない領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着されるべき第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化することを特徴とする基材の接着方法。
【請求項2】
前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項1記載の基材の接着方法。
【請求項3】
前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項1又は2記載の基材の接着方法。
【請求項4】
前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項1、2又は3記載の基材の接着方法。
【請求項5】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法。
【請求項6】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法。
【請求項7】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法。
【請求項8】
前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の基材の接着方法。
【請求項9】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法。
【請求項10】
前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項9記載の基材の接着方法。
【請求項11】
前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の基材の接着方法。
【請求項12】
多数のインクチャネルを平行に有し、各インクチャネル間の駆動壁を少なくとも2種類の材料で構成すると共に、該少なくとも2種類の材料のうちの少なくとも1種類が圧電材料であり、該圧電材料の変形によって各インクチャネル内のインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記少なくとも2種類の材料を構成する第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化した後、前記第1の基材及び前記第2の基材に亘って前記複数のインクチャネルを溝加工することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項12記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項12又は13記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項12、13又は14記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項16、17又は18記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項20】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項21】
前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項20記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項22】
前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項23】
前記接着剤は、第2加熱温度が前記圧電材料のキューリー点よりも低い温度で熱硬化性を持つことを特徴とする請求項12〜22のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項1】
接着されるべき第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化することを特徴とする基材の接着方法。
【請求項2】
前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項1記載の基材の接着方法。
【請求項3】
前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項1又は2記載の基材の接着方法。
【請求項4】
前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項1、2又は3記載の基材の接着方法。
【請求項5】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法。
【請求項6】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法。
【請求項7】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項5記載の基材の接着方法。
【請求項8】
前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の基材の接着方法。
【請求項9】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基材の接着方法。
【請求項10】
前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項9記載の基材の接着方法。
【請求項11】
前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の基材の接着方法。
【請求項12】
多数のインクチャネルを平行に有し、各インクチャネル間の駆動壁を少なくとも2種類の材料で構成すると共に、該少なくとも2種類の材料のうちの少なくとも1種類が圧電材料であり、該圧電材料の変形によって各インクチャネル内のインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記少なくとも2種類の材料を構成する第1の基材及び第2の基材のうちの第1の基材の接着面に、熱硬化性の接着剤を、該接着剤が存在する部位と存在しない部位とが所定のパターン状に形成されるように塗布した後、前記第1の基材上に前記第2の基材を前記接着剤を介して重ね合わせることにより、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記接着剤と気泡とをパターン状に配置させ、前記接着剤の硬化温度未満の第1加熱温度で加熱と同時にあるいは加熱後に、減圧状態にし、前記気泡を溶解した後、前記接着面方向に向かって均一に圧力をかけ、その後、前記接着剤の硬化温度以上の第2加熱温度で加熱し、前記接着剤を硬化して前記第1の基材及び前記第2の基材を相互に一体化した後、前記第1の基材及び前記第2の基材に亘って前記複数のインクチャネルを溝加工することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記第2加熱温度で加熱と同時に、前記第1の基材及び前記第2の基材の接着面方向に向かって均一に圧力をかけることを特徴とする請求項12記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記第1の基材の接着面に前記接着剤をスクリーン印刷法にてパターン状に塗布することを特徴とする請求項12又は13記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第1の基材と前記第2の基材とを重ね合わせた後、該第1の基材及び第2の基材を真空ラミネーター装置にて減圧することを特徴とする請求項12、13又は14記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を多数のドット状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を縦横に碁盤目状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を千鳥状に配置することを特徴とする請求項16記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記ドット状の接着剤形状の最大径が、1mm以下であることを特徴とする請求項16、17又は18記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項20】
前記第1の基材の接着面に、前記接着剤が存在する部位を互いに交叉するストライプ状に配置することを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項21】
前記ストライプ状の接着剤の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項20記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項22】
前記接着剤は、前記第1の基材の接着面に塗布される時の粘度が1000cp以上であり、前記第1加熱温度で加熱した際の粘度が100cp以下であることを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項23】
前記接着剤は、第2加熱温度が前記圧電材料のキューリー点よりも低い温度で熱硬化性を持つことを特徴とする請求項12〜22のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−36865(P2006−36865A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216473(P2004−216473)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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