説明

基板に微粒子の薄層を形成する方法

本発明は、微粒子と分散剤を含む組成物の層を基板に適用し、層を帯電ガスで処理して、分散剤を層から除去し、誘導加熱して、微粒子の機能結合を形成することにより、微粒子の薄層を基板に形成する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に微粒子の層を形成する方法、特に、構成部品およびデバイスの微細加工に用いる、基板にナノメートルサイズの微粒子の薄層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほぼ全ての電子および光学デバイスにはパターン形成が必要である。マイクロ電子デバイスは、必要なパターンを形成するのに、フォトリソグラフィープロセスにより作製されてきた。この技術は、導体、絶縁体、または半導体材料の薄膜を、基板上に堆積し、ネガまたはポジのフォトレジストを、材料の露出面にコートするものである。レジストに、所定のパターンで照射し、レジストの照射または非照射部分を表面から洗い流して、所定のパターンのレジストを表面に作製する。導電性金属材料のパターンを形成するには、所定のレジストパターンで被覆されていない金属材料をエッチングまたは除去する。次に、レジストパターンを除去して、金属材料のパターンを得る。しかしながら、フォトリソグラフィーは、複雑で、プラスチックエレクトロニクスの印刷では費用のかかり過ぎる多工程プロセスである。
【0003】
接触印刷は、パターン化材料を形成するのに、柔軟性のある非リソグラフィー法である。接触印刷には、潜在的に、従来のフォトリソグラフィー技術を超える大きな利点がある。接触印刷は、電子部品アセンブリにおいて、プラスチックエレクトロニクス上に比較的高解像度のパターンを形成できるからである。マイクロ接触印刷には、基板表面に付与されるミクロン寸法のパターンを可能にする高解像度技術という特徴がある。マイクロ接触印刷はまた、フォトリソグラフィーシステムよりも経済的である。手順的にあまり複雑でなく、最終的にスピンコーティング機器または続いて開発工程を必要としないからである。さらに、マイクロ接触印刷は、オープンリール式電子部品アセンブリ操作に潜在的に適しており、フォトリソグラフィーおよびe−電子リソグラフィー(約数十ナノメートルの解像度が望ましい従来より用いられている技術)等の他の技術よりも高処理量の生産が可能となる。多数の画像を、オープンリール式アセンブリ操作において、マイクロ接触印刷を用いて、単一スタンプから印刷することができる。
【0004】
接触印刷は、無線タグ(RFID)、センサ、メモリおよびバックパネルディスプレイ等のマイクロ電子デバイスの製造におけるフォトリソグラフィーに代わる可能性がある。分子種を形成する自己組織化単分子膜(SAM)を、基板に転写するというマイクロ接触印刷の能力はまた、金属のパターン化無電解堆積にも用途が見出されている。SAM印刷は、高解像度のパターンを作製することができるが、通常、金または銀の金属パターンを、チオールの化学により形成することに限られている。複数のバリエーションがあるものの、SAM印刷においては、エラストマースタンプに与えられたポジのレリーフパターンが基板に着色される。典型的にポリジメチルシロキサン(PDMS)でできたエラストマースタンプのレリーフパターンは、チオール材料により着色される。典型的に、チオール材料は、アルカンチオール材料である。基板は、金または銀の金属薄膜でブランケットコートされてから、金コートされた基板がスタンプと接触する。スタンプのレリーフパターンの金属膜との接触の際、所望のマイクロ回路パターンを有するチオール材料の単層が、金属膜に転写される。アルカンチオールは、自己組織化プロセスにより、金属に秩序ある単層を形成する。その結果、SAMは密集し、金属に良好に接合する。このように、SAMは、着色基板を、金属エッチング溶液に浸漬すると、エッチングレジストとして作用し、SAM保護金属領域以外は全て、下にある基板からエッチングされる。SAMは、剥離されて、所望のパターンの金属が残る。
【0005】
チオールの化学的性質を利用して印刷したときに、20nmのフィーチャーが得られることが示されているが、僅かの金属に限られており、オープンリール式のプロセスと適合しない。対照的に、機能材料の直接レリーフ印刷では、約50ミクロン以下、特に、1〜5ミクロンの解像度の機能材料のパターンを形成することは難しい。
【0006】
印刷可能な電子デバイスにおいて、導電層またはパターンを基板に作製するのに、金属ナノ粒子インクが現在用いられている。金属線を基板にパターニングした後、界面活性剤を除去し、粒子を、熱焼結プロセスで焼結して、高導電性金属パターンを形成する。しかし、熱焼結プロセスは、典型的に、200℃以上でなされ、プラスチック基板は熱により変形する可能性があるため、プラスチック基板には適用できない。プラスチック基板の変形または歪みによって、電子デバイスの機能や適合性が破壊される可能性がある。それでもなお、低価格および/または安価な電子デバイスにポリマーまたはプラスチック基板を用いるのが望ましい。
【0007】
金属粒子を焼結するのに、パターン化基板の誘導加熱もまた用いられてきた。しかしながら、誘導加熱は、金属粒子間の有機成分を除去するのに効率的でなく、長い時間を要する可能性がある。
【0008】
微粒子層を基板に形成する方法を提供することが望まれている。導電性金属インクからの微粒子の薄層を基板、特に、プラスチック基板に形成するのが望ましい。電子デバイスに用いる金属ナノ粒子の薄層に導電性経路を形成するのが望ましい。プラスチック基板の熱変形を排除するのに十分に低い温度で、金属ナノ粒子インクの機能経路を焼結または少なくとも形成することも望ましい。
【0009】
基板に機能材料のパターンを形成する方法を提供することも望まれている。機能材料のパターンを基板に直接形成する方法が望ましい。プラスチック基板に、導電性材料のパターンを、金属ナノ粒子インクから形成するのが望ましい。電子デバイスに用いる導電性経路を形成するために、金属ナノ粒子インクのパターンの機能経路を焼結または少なくとも形成するのが望ましい。プラスチック基板の歪みを排除するのに十分に低い温度で、金属ナノ粒子インクの導電性経路を形成するのが望ましい。エラストマースタンプによるマイクロコンタクトプリンティングの容易さを有し、50ミクロン以下の解像度を再現できる方法も望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、分散剤に分散した微粒子を含む組成物の層を基板に適用する工程、層を帯電ガスで処理して分散剤を層から除去する工程、誘導加熱して微粒子の作用結合(operative connection)を形成する工程を含む微粒子の薄層を基板に形成する方法を提供する。
【0011】
本発明の他の態様は、レリーフ構造を有するエラストマースタンプを提供工程、微粒子および分散剤を含む組成物をレリーフ構造に適用する工程、レリーフ構造から組成物を基板に選択的に転写して、パターンを形成する工程、組成物を帯電ガスで処理して、分散剤を除去する工程、及び、誘導加熱して、微粒子の機能結合を形成する工程により、機能パターンを、基板に形成する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、微粒子の層、特に、薄層を、基板に形成する方法を提供する。本発明はまた、微粒子のパターンを基板に形成する方法も提供する。微粒子は、これらに限られるものではないが、電子、光学、感覚および診断用途をはじめとする様々な用途のデバイスおよび構成部品に用いる機能材料である。本方法は、機能材料としての微粒子の層またはパターンを基板、特に、ポリマーまたはプラスチック基板に形成することに適用可能である。本方法で、一実施形態においては微粒子の層を、他の実施形態においては微粒子のパターンを、様々な基板、特に、ポリマーまたはプラスチック材料でできた基板に形成することができる。本方法では、微粒子の機能経路を、基板に、基板を歪ませることなく、形成することができる。
【0013】
本方法は、50ミクロン未満のライン解像度で、広い領域にわたって、微粒子パターンを形成することができ、特に、超小型回路を形成することができる。ある実施形態において、1〜5ミクロンの微細ライン解像度を、本方法により得ることができる。本方法は、微粒子をパターンとして転写するのに、レリーフ構造を有するエラストマースタンプによる印刷のし易さを利用することができる。本方法は、通常のマイクロコンタクトプリンティングに付随する画像の忠実性および解像度を保持しながら、機能材料のライン間に、クリーンな、フィーチャーのない(開口)背景領域を与えるものである。本方法によって、ミクロンの解像度で、比較的広い領域にわたって、様々な微粒子材料の印刷が可能となる。本方法によってまた、下にある1つ以上の層の機能を阻害せずに、連続したオーバーレイの印刷が可能となる。本方法は、高速製造プロセス、特に、電子デバイスおよび構成部品の製造のためのオープンリール式のプロセスに適用することができる。
【0014】
本方法は、微粒子の層を基板に形成するものである。本方法は、界面活性剤またはキャリアに分散された微粒子を含む組成物の層を、基板に適用することを含む。基板の微粒子層は、構成部品またはデバイスに、作用機能を与える。ある実施形態において、層は、基板の全て、または基板の作用部分のみを覆うように接触させることができる。ある実施形態において、層は、基板の作用経路のパターンとすることができる。
【0015】
微粒子は、基板に適用され処理されると、様々な構成部品およびデバイスの動作を促す機能の材料である。微粒子はまた、本明細書においては機能材料とも呼ばれる。微粒子として用いる材料は、分散剤(界面活性剤またはポリマーバインダー等)により分散または懸濁され、任意の好適な手段により基板に適用され、帯電ガス粒子により処理されて材料の本来の機能特性を損なうことなく分散剤が除去される粒子へと材料を形成できる限りは、限定されない。微粒子は、活性材料または不活性材料とすることができる。活性材料としては、これらに限られるものではないが、電気的に活性な材料および光活性材料が挙げられる。本明細書で用いる「電気的に活性」および「光活性」という用語は、電磁場、電位、太陽またはその他エネルギー放射線またはこれらの任意の組み合わせといった刺激に応答して所定の活性を示す材料を指す。不活性材料としては、これらに限られるものではないが、誘電材料等の絶縁材料、平坦化材料、バリア材料および閉じ込め材料等が挙げられる。一実施形態において、平坦化材料は、カラーフィルタの画素のパターンの上部に印刷されて、全画素を同じ高さにする。一実施形態において、バリア材料は、カソード中の電荷によって、有機発光ダイオード(OLED)の発光ポリマー層への電荷注入が促されるようにバリアを形成する印刷パターンである。一実施形態において、閉じ込め材料はパターンとして印刷されて、後に適用された液体の膨張を、閉じ込め材料のパターンにより画定される特定の領域までに制限する。不活性材料用の機能材料は、上述した実施形態に用いたもののみに限定されない。ある実施形態において、活性材料および不活性材料は無機材料である。他の実施形態において、活性材料および不活性材料は、無機材料と有機材料の複合体であってよい。
【0016】
機能材料は、実質的に同じ材料で構成された均一または実質的に均一なものである必要はない。ある実施形態において、機能材料は均一である。他の実施形態において、機能材料は、均一な粒子の混合物とすることができる。他の実施形態において、機能材料は、粒子の多成分複合体とすることができる。
【0017】
微粒子は限定されず、例えば、導電性材料、半導電性材料および誘電材料が挙げられる。微粒子として用いる導電性材料としては、これらに限られるものではないが、金属、例えば、銀、金、銅およびパラジウム、金属錯体、金属合金、金属酸化物、例えば、酸化インジウム錫等が例示される。半導体材料としては、これらに限られるものではないが、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、酸化亜鉛およびセレン化亜鉛が例示される。
【0018】
典型的に、印刷可能な半導体材料および誘電性材料はポリマーであるが、半導体および誘電性材料が粒子または微粒子へと形成または作製されて界面活性剤に分散できる限りは、これらの材料は本発明において用いるのに包含される。微粒子半導体材料は、Volkmanら、「A Novel Transparent Air−Stable Printable n−type Semiconductor Technology Using ZnO Nanoparticles」IEEE、2004年に記載されている。他の材料、例えば、これらに限られるものではないが、光活性材料が微粒子の粒子へと形成または作製されて界面活性剤に分散でき、その本来の機能特性が帯電ガスストリームによる処理で損なわれない限りは、これらの材料も本発明において用いるのに包含される。「光活性」という用語は、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、着色または感光性を示す任意の材料を意味するものとする。この用語には、特に、染料、蛍光増白剤、フォトルミネッセント材料、化学放射線に反応性のある化合物および光開始剤が含まれるものとする。
【0019】
本方法において機能材料として用いる微粒子は、500nm未満のサイズを有する粒子を含む。ある実施形態において、微粒子は平均粒径が500nm未満であり、平均粒径が数平均基準で500nm未満であれば、微粒子は500nmより大きい、および小さい個々の粒子を含有していてもよい。ある実施形態において、微粒子は、ナノメートル(nm)で測定されるサイズの微細粒子であるナノ粒子で構成される。ナノ粒子は、少なくとも1つの500nm未満の寸法を有する粒子を含む。ある実施形態において、ナノ粒子の直径は約1〜500nmである。一実施形態において、ナノ粒子の直径は約2〜100nmである。他の実施形態において、粒子の直径は約20〜200nmである。サイズ範囲の下端では、ナノ粒子はクラスタと呼ばれる。ナノ粒子の形状は限定されず、ナノスフェア、ナノロッドおよびナノカップを含む。半導体材料で作製されたナノ粒子は、粒子が電子エネルギーレベルの量子化がなされる十分に小さい(典型的に、10nm未満の)場合には、量子ドットとも呼ばれる。半導体材料には、発光量子ドットが含まれる。バルク材料はそのサイズに係らず一定した物理特性を有するが、ナノ粒子については、このことは当てはまらないことが多い。例えば、半導体粒子における量子閉じ込め、ある金属粒子においては表面プラズモン共鳴(SPR)または局所表面プラズモン共鳴、および磁気材料においては超常磁性等のサイズ依存特性が観察される。微粒子としては、これらに限られるものではないが、半固体ナノ粒子、例えば、ナノ結晶、混成構造、例えば、コア−シェルナノ粒子が挙げられる。微粒子としては、カーボンのナノ粒子、例えば、カーボンナノチューブ、導電性カーボンナノチューブおよび半導体カーボンナノチューブが挙げられる。金、銀および銅の金属ナノ粒子および分散液は、NanotechnologiesおよびAdvanced Nano Products Co., Ltd.(ANP)より市販されている。ある実施形態において、微粒子組成物は、組成物の総重量を基準として、99〜1重量%の微粒子(固形分)を含むことができる。
【0020】
微粒子を分散剤、例えば、界面活性剤および/またはバインダーにより溶液に分散または懸濁すると、基板の適用のための組成物が形成される。分散剤は、分散剤または懸濁液として微粒子を維持して粒子が凝集しないようにする。組成物に用いる分散剤は限定されない。ある実施形態において、分散剤は、非イオン界面活性剤およびイオン性界面活性剤、例えば、アニオン、カチオン、両性イオン(二重電荷)界面活性剤とすることができる。界面活性剤の混合物も好適である。界面活性剤は、両親媒性、すなわち、界面活性が疎水性基と親水性基の両方を含むものとすることができる。他の実施形態において、分散剤はポリマーバインダーまたはポリマーバインダーの組み合わせとすることができる。好適なポリマーバインダーは、これらに限られるものではないが、分子量(Mw)が1000〜40,000のポリビニルピロリドン(PVP)および分子量(Mw)が1000〜40,000のポリビニルアルコールが挙げられる。好適な分散剤の他の例は、ドイツのBYK Co.より市販されているBYKシリーズの1つ、または2つ以上の分散剤の混合物である。分散剤は、界面活性剤および/またはバインダーの1つまたは混合物とすることができる。ある実施形態において、微粒子組成物は、組成物の総重量を基準として、1〜99重量%の分散剤を含むことができる。ある他の実施形態において、微粒子組成物は、組成物の総重量を基準として、分散剤の1〜10重量%を含むことができる。
【0021】
組成物は、選択した適用方法で使用するのに好適な濃度まで、液体によりさらに希釈することができる。希釈剤と呼ばれる組成物に用いる液体は、限定されず、有機化合物および水性化合物を含むことができる。一実施形態において、液体は、アルコール系化合物である有機化合物である。液体は、分散剤の溶剤であってもよく、本方法の工程を実施するのに十分な溶液中の材料をさらに分散または懸濁できるキャリアであってもよい。液体は、機能材料の分散剤またはキャリアの溶剤として1つまたは2つ以上の化合物を含んでいてよい。一実施形態において、液体は、微粒子組成物のための1つの溶剤を含む。他の実施形態において、液体溶液は、機能材料のための1つのキャリア化合物を含む。他の実施形態において、液体は、微粒子組成物のための2つの溶剤、すなわち、共溶媒混合物を含む。ある実施形態において、微粒子組成物は、微粒子、分散剤および液体希釈剤を含む組成物の総重量を基準として、1〜80重量%の微粒子(固体)を含む。
【0022】
微粒子および分散剤および任意で液体を含む組成物は、少なくともある実施形態においては基板を濡らして層を形成し、ある実施形態においては基板へのパターン状適用のためのスタンプ表面を濡らし、ある実施形態においてはマスキング材料のあるパターンを有する基板の外側表面の少なくともマスキングされていない(開口)領域を濡らすことが、できるべきである。
【0023】
基板は、限定されず、少なくとも微粒子組成物の層が形成できるのであれば、プラスチック、ポリマーフィルム、金属、シリコン、ガラス、布帛、紙およびこれらの組み合わせとすることができる。基板は不透明または透明とすることができる。基板は剛性または可撓性とすることができる。基板は、微粒子組成物のパターンを基板に形成する前に、他の材料の1つ以上の層および/または他の材料の1つ以上のパターンを含んでいてもよい。基板の表面は、接着促進表面、例えば、プライマー層を含むことができ、または接着層または微粒子の基板への接着を促すための処理をすることができる。基板についてのある実施形態には、例えば、ポリマー、ガラスまたはセラミック基板上に金属フィルムのあるもの、ポリマー基板上に1枚または複数の導電性フィルム、その上に金属フィルムのあるもの、ポリマー基板上に半導体フィルム、その上に金属フィルムのあるものが含まれる。好適な基板のさらなる例としては、例えば、ガラス、酸化インジウム錫コートガラス、酸化インジウム錫コーティングのポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、シリコンおよび金属ホイルが挙げられる。基板は、1つ以上の電荷注入層、電荷輸送層およびパターンが転写される半導体層を含むことができる。
【0024】
本方法は、自立形フィルムを形成することができ、約60℃より高い温度で歪む、変形する、または寸法不安定となるプラスチックまたはポリマー材料に特に好適である。本方法は、ポリマーフィルムが歪む、または変形する温度より低温度で、ポリマー基板の微粒子に機能経路を形成することができる。ある実施形態において、ポリマーフィルムが歪む、または変形する温度は、ガラス転移温度である。ある実施形態においてポリマーフィルムは、約140℃で歪む、または変形し得る。他の実施形態において、ポリマーフィルムは、約190℃で歪む、または変形し得る。他の実施形態において、ポリマーフィルムは、約230℃で歪む、または変形し得る。これらのポリマーフィルムには、電子デバイスの導電性経路において金属系微粒子を焼結するのに必要な高温での、様々なプロセス工程を実施できない。本発明は、フィルムが歪む、または変形する温度以下でポリマーフィルム基板に金属系微粒子を焼結する方法を提供する。
【0025】
基板として好適な自立形フィルムを形成できるポリマー材料としては、これらに限られるものではないが、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、および熱可塑性材料、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミドおよびポリエステルが含まれる。ある実施形態において、基板は、ポリエチレン、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートのフィルムを含む。典型的に、基板の厚さは、2〜50ミル(0.0051〜0.13cm)である。典型的に、基板はシートフィルムの形態にあるか、またはウェブとすることができるが、これらの形態に限定されない。
【0026】
微粒子組成物を層として適用する方法は、限定されず、例えば、インジェクション、注入、液体キャスティング、噴射、浸漬、スプレー、蒸着およびコーティングが挙げられる。好適なコーティング方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、ローラーコーティングおよびドクターブレードコーティングが挙げられる。微粒子組成物はまた、スタンプまたは印刷フォームから基板への転写により、パターン化層として適用することもできる。任意の方法により適用される微粒子組成物の層は、帯電ガス粒子による層の処理によって、層から分散剤を除去するのに十分薄いものでなければならない。
【0027】
微粒子組成物の層の厚さは、適用するとき、約500nm未満である。ある実施形態において、層の厚さは約1〜500nmである。ある実施形態において、層の厚さは約1〜200nmである。ある実施形態において、層の厚さは約50〜100nmである。
【0028】
本発明の方法において、微粒子組成物の基板への適用は、典型的に、室温、すなわち、17〜30℃(63〜86°F)でなされるが、これに限定されない。本発明の方法は、エラストマースタンプ、微粒子組成物、基板および基板のパターンを形成する能力に熱が悪影響を及ぼさないのであれば、100℃までの高温で行うこともできる。
【0029】
微粒子組成物の層を帯電ガス粒子で処理すると、分散剤が層から除去または実質的に除去されて、基板の微粒子の機能経路が得られる。微粒子組成物中の液体をまず、乾燥により基板(またはスタンプ)へ適用した後、蒸発により飛ばす、または基板への適用後、低温加熱(約65℃まで)により飛ばすことができる。しかしながら、乾燥では、分散剤は微粒子組成物から除去されず、分散剤は、微粒子と共に残ることが多く、微粒子の機能経路は作用しない。
【0030】
基板上の微粒子組成物の層またはパターンの処理は、組成物に帯電ガスのストリームを与えるものであり、プラズマ処理と呼ばれる。十分なエネルギーがガスに加わると、ガスはイオン化され、プラズマ状態に入る。プラズマを形成するためにガスに供給される励起エネルギーは、放電、直流、無線周波数、マイクロ波または電磁放射線のその他形態からのものとすることができる。エネルギーは、最も一般的には、2つの電極間の電場の形成によりガスに結合される。ある実施形態において、プラズマは、波キャビティにおける誘導結合またはマイクロ波エネルギーを用いて生成することができる。
【0031】
電力を加えてプラズマを生成することができる。ある実施形態において、電力は、約50〜約1500ワットであり、これは約125〜4000mW/cm2の電力密度に変換される。電力密度は、基板の単位面積当たりの電力である。ある実施形態において、電力は約100〜約900ワットである。直流電圧は、約10〜1000Vの範囲内であり、電力密度は約10〜5000mW/cm2の範囲内である。電圧および電力密度の下限だと、プラズマの持続が難しくなる、または許容されない低処理率となる恐れがある。電圧および電力密度の上限だと、強すぎて、処理が制御不能、再現性がなくなる(製造にとって重要)、あるいは許容されない低選択性となる恐れがある。一実施形態において、直流バイアス電圧は、約100〜350Vの範囲、電力は約100〜900ワットの範囲とする。電圧および電力のランプ速度は極めて早い。電圧および電力は、通常の電気スイッチと同様に典型的にオン・オフされるからである。
【0032】
プラズマ処理に好適なガスとしては、これらに限られるものではないが、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素、空気、亜酸化窒素、アンモニア、二酸化炭素、酸素およびこれらの組み合わせが挙げられる。ある実施形態において、プラズマ処理は、酸素ガスにより実施される。ある実施形態において、プラズマ処理は、アルゴンガス、またはアルゴンと酸素の組み合わせにより実施される。
【0033】
プラズマ処理は、大気条件で実施でき、またはプラズマを低圧または真空条件に維持することのできるチャンバ内で行ってよい。処理工程において、チャンバへの供給ガスフローおよび圧力は安定化させる。圧力は、約10ミリトル〜760トルの範囲内である。これらの圧力で、供給ガスは、約10〜1000標準立方センチメートル毎分(「sccm」)の範囲の速度で流れる。他の実施形態において、圧力は、約35〜500ミリトルの範囲、供給ガスは約10〜50sccmの範囲の速度で流れる。さらなる実施形態において、圧力は、約10ミリトル〜760トルの範囲内である。
【0034】
プラズマ処理中、基板の微粒子組成物の層は、プラズマに直接露光しても、またはプラズマアップストリームを導入することにより、プラズマに間接的に露光してもよい。このダウンストリームプラズマ配向では、プラズマは、基板の微粒子組成物の位置から離れた位置で生成される。イオンおよび電子の再結合は、プラズマゾーンのすぐ外側でなされ、長寿命準安定ラジカルは、再結合ゾーンからさらにダウンストリームに位置する基板の組成物に達し、分散剤の除去および機能層の形成を促す。
【0035】
作用パラメータは、用いるリアクタの種類、チャンバのサイズおよび/または処理する基板の組成物層のサイズに応じて異なる。
【0036】
微粒子組成物の層またはパターンのプラズマ処理によって、微粒子組成物から分散剤が除去され、微粒子材料の作用経路または機能経路が形成される。基板の組成物層は、分散剤を除去し、微粒子材料が基板の機能層または作用層(operative layer)または機能経路または作用経路(operative pathway)を作製するのに十分な時間にわたってプラズマ処理される。ある実施形態において、組成物層に約0.1〜30分のプラズマ処理を行うと、分散剤が除去され、機能経路を作製することができる。ある実施形態において、組成物層に0.2〜2分間のプラズマ処理を行うことができる。他の実施形態において、組成物層に、0.5〜5分間のプラズマ処理を行うことができる。組成物層には、連続的または間欠的にプラズマ処理を行うことができる。電力と共にガスプラズマ処理の時間によって、処理中にプラズマチャンバに供給されるエネルギーが決まる。一実施形態において、ガス、圧力、流速、電力密度および電圧は、処理プロセス中、時間の経過によって変えることができる。ある実施形態において、プラズマガスを生成するのに用いるエネルギー源によってまた、組成物層の誘導加熱も行うことができる。ある実施形態において、組成物層の誘導加熱にエネルギーの別個の源が必要となるように、プラズマガスが形成される。
【0037】
あらゆる市販のプラズマガスシステムが本発明で用いるのに好適である。市販のプラズマガスシステムの一例は、プラズマを生成するのにマイクロ波エネルギーを用いるPlasmatic System, Inc.製Plasma−Preen System、型番II 973である。市販のプラズマガスシステムの他の例は、プラズマを生成するのに無線周波数エネルギーを用いる反応性イオンチャンバ、SEMI Group製PE/PECVD System 1000である。プラズマ処理の一実施形態において、プラズマは、操作の典型的な圧力範囲が10ミリトル〜1トルである反応性イオンエッチャー(RIE)と呼ばれる容量結合プラズマエッチャーで形成される。1ミリトルまで落とした低圧で操作するには、高いシース電圧が伴い、必要とされる加える電力は非常に高い。これによって、基板表面の微粒子組成物の層の激しいイオン衝突が生じる。基板のバイアス電圧を、プラズマを形成し維持するのに必要とされる加えられた電圧から分離するには、誘導結合プラズマ(ICP)システムが必要になる。ICPシステムにおいて、プラズマは、チャンバの上部の共鳴誘導コイルを介して生成される。同じチャンバの下方において、基板の下に台座を配置し、他の電源を用いて別個に動力を加えることができる。一組のソレノイドを上部チャンバに用いて、電子を閉じ込め、プラズマの導電性を調節することもでき、1〜50ミリトルの圧力で上部チャンバに均一なプラズマが生成される。イオン化の度合いおよび活性化度を非常に高くすることができ、高反応性プラズマが生成される。下部チャンバにおいて、基板台座は、所望のシース電圧に応じて、電力を加えないか、電力を加えるかのいずれかとすることができる。
【0038】
プラズマ処理の他の実施形態において、マイクロ波キャビティおよびマイクロ波電子サイクロトロン共鳴(uECR)により、低圧プラズマ生成技術を用いてプラズマを生成する。ECRプラズマは、1ミリトルより低くても操作され、イオン化効率も高い。これは、電子のサイクロトロン周波数およびマイクロ波励起場間の共鳴による。基板にはまた、必要であれば、イオン衝突を増やすために電源を用いて独立にバイアスをかけることもできる。
【0039】
ヘリコンプラズマ源もまた、低圧プラズマ処理に用いられる。この場合、無線周波数波はアンテナから生成される。ソレノイド磁場もまた、無線周波数(RF)場に加えられる。RF波より小さな波長の右手円偏光ヘリコンがプラズマを通過して、ガスをイオン化する。
【0040】
本発明のプロセスにおいて実現されるプラズマ処理は、ミリトル未満の圧力範囲まで落としたプラズマのこれらの具現化のいずれかを含むものまで拡大される。
【0041】
他の実施形態において、処理には、基板の微粒子組成物層に紫外線を存在させて、オゾンガスを与えることが含まれる。オゾンは、酸素の同素形態であり、酸素ガスに放電を加えることにより形成される。紫外線−オゾン処理は、紫外線照射とオゾンの組み合わせを用いて微粒子組成物層から分散剤を除去するものである。約150〜約300nmの波長の紫外線を存在させたオゾンは、酸素分子および原子酸素へと分解する。同様に、有機成分が、紫外線により励起または解離する。原子酸素は、高反応性で、分散剤の励起した有機分子を、分散剤を組成物から除去する二酸化炭素、水、窒素等の揮発性生成物へと酸化する。ある実施形態において、UV−オゾン処理によって、分散剤が組成物層から十分に除去されて、層のその後の誘導加熱によって基板に作用結合または機能結合が形成される。ある実施形態において、UV−オゾン処理と同時またはその最中に層の誘導加熱を実施すると有用である。
【0042】
ある実施形態において、ガスをプラズマ状態まで励起するためのエネルギー源によってまた、基板の微粒子を加熱して、基板に作用結合または機能結合を形成することもできる。この実施形態において、帯電ガスによる処理および微粒子の加熱は同時または実質的に同時になされる。特に、マイクロ波エネルギーまたは無線周波数エネルギー等の電磁エネルギーを用いてプラズマを形成するときは、基板の微粒子の誘導によって加熱がなされる。マイクロ波エネルギーは、約300メガヘルツ〜約20ギガヘルツの周波数に対応する、典型的に約0.3〜約30センチメートルの波長を有する電磁波である。マイクロ波エネルギーを赤外および電波と区別する明確な境界はないことに留意する。無線周波数エネルギーは、約5メガヘルツ〜約300メガヘルツのコヒーレント電磁放射線の周波数である。誘導加熱は、誘導電流による材料の温度の増加である。誘導加熱は、高周波交流電流が誘導コイルを通過するときに生成される。この高周波交流電流が、次に、コイルの領域に高周波磁場を形成し、微粒子等の金属中に渦電流およびヒステリシス電流を誘導する。微粒子組成物の加熱は、電流通過に対する金属微粒子の抵抗により生じる。誘導加熱によって、基板を大幅に加熱することなく、微粒子を選択的に加熱することができる。たいていの実施形態において、基板は誘導電磁エネルギーに対してあまり感度がないためである。ある実施形態において、微粒子層に作用結合または機能結合を与えるのに十分な時間にわたって、組成物層の誘導加熱を連続的に行うことができる。他の実施形態において、微粒子層に作用結合または機能結合を与えるのに十分な間欠的な時間にわたって、組成物層の誘導加熱を行うことができる。非加熱期間により中断する間欠的な誘導加熱によって、微粒子層の作用結合を形成する間の基板の加熱が最少になる。誘導加熱の各間欠期間は、同じ、または異なる長さの時間とすることができる。誘導加熱期間に中断される休みの期間は、間欠的な誘導加熱時間より短い、同じまたは長い時間とすることができる。間欠的な誘導加熱は、基板の温度を基板が変形または歪む温度より低い温度に維持することができる。基板の組成物層が、連続的または間欠的に処理、かつ/または誘導加熱され得るかどうかは、誘導エネルギーの出力、チャンバにおける基板の位置および配置、微粒子組成物および基板の材料に、ある程度依存している。ある実施形態において、微粒子層またはパターンを有する基板は、基板を冷却し、生じる恐れのある基板の加熱に抗するために、プラズマ処理中に冷却されるプラットフォーム上にあることができる。たいていの実施形態において、プラットフォームは、プラズマガスを生成するデバイスのチャンバに配置される。
【0043】
微粒子が金属または金属系材料である実施形態において、誘導加熱によって、基板の微粒子の作用結合または機能結合、すなわち、導電性結合が形成される。焼結は、金属粉末の加熱によるコヒーレント結合塊の形成である。ある実施形態において、特に、微粒子の大きな粒子については、粒子は溶融せずに焼結する。ある実施形態において、誘導加熱で粒子を溶融することができる。本実施形態の一例は、約6nm未満の粒子サイズ直径を有する銀微粒子は、誘導加熱により溶融する。同じまたは異なる粒子サイズ直径を有する他の金属系微粒子についてもまた、誘導加熱の際に溶融することが考えられる。実際には、分散剤は処理により除去されているため、誘導加熱によって微粒子が焼結される。金属微粒子の直径が約5nm未満のナノメートルのサイズであるとき、誘導加熱によって、微粒子を溶融することもできる。
【0044】
無線周波数エネルギーを有するプラズマを生成するプラズマシステムは、2つの異なる加熱メカニズムを提供する。1つのメカニズムは、プラズマ中に生成されバイアス磁場を通して加速されたイオンによる、基板(および微粒子組成物層)の単純な衝突によるものである。第2のメカニズムは、特に粒子が導電性であるときの、プラズマを励起する無線周波場による微粒子組成物のRF加熱による。何らかの特定の理論に束縛されるものではないが、電磁波は、基板表面に対して法線の方向に、指数関数的に減衰する。周波数が光学周波数をはるかに下回る場合には、表皮厚さδまたは場が表面でその値の1/eまで落ちた深さは、
δ=平方根(2/ωgμ)
(式中、
ω=2πf、
g=導電率(銀について約3×10^7mhos/m)、
μ=透過率(銀について約4π×10^−7)、
f=ヘルツでの周波数である)
で近似される。これは、13.5MHzで微粒子が銀で構成された実施形態の表皮厚さが約0.25ミクロンであることを意味する。このように、フィルム厚さが1ミクロンよりかなり厚い場合には、一部のみが電場により直接加熱される。この式は、周波数が低いと、表皮厚さが深くなり、より効率的に加熱されることを示している。代替案としては、導電性粒子で構成された微粒子を、高周波磁場において加熱するものがある。エネルギーの結合がより効率的になる。しかしながら、欠点は、ナノスケール粒子において渦電流を効率的に励起するのに必要な高周波が非常に高いであることである。
【0045】
変形実施形態において、プラズマの形成は、放電、直流または電磁放射線のその他の形態(マイクロ波またはRF以外)等他の手段により誘導され、誘導加熱のための別個の源は、微粒子を独立して加熱し、基板に作用結合を形成するために処理ユニットに関連付けることができると考えられる。ある実施形態において、帯電ガスによる処理と微粒子の加熱は、同時に行うことができ、または分散剤の全てまたは大半を除去した直後に微粒子の加熱を行うよう、好適な時間ずらすことができる。
【0046】
微粒子組成物のパターン状適用
ある実施形態において、基板に微粒子のパターン層を形成するために、基板に微粒子組成物を適用するためのスタンプまたは印刷フォームを提供する。基板の微粒子のパターンによって、構成部品またはデバイスに作用機能を提供することができる。ある実施形態において、スタンプは、隆起表面(raised surfaces)とリセス表面(recessed furfaces)とを備えたレリーフ構造を有する。典型的に、レリーフ構造は、複数の隆起表面と複数のリセス表面を有する。ある実施形態において、スタンプのレリーフ構造は、基板に微粒子を印刷するための隆起表面のパターンを形成する。ある実施形態において、スタンプのレリーフ構造の隆起表面は、基板に最終的に形成される微粒子のパターンを表わし、リセス表面は、基板のバックグラウンドまたはフィーチャーのない領域を表わす。他の実施形態において、スタンプのレリーフ構造のリセス表面は、基板に最終的に形成される微粒子のパターンを表わし、隆起表面は基板のバックグラウンドまたはフィーチャーのない領域を表わす。これらの実施形態において、微粒子組成物は、スタンプから基板へ直接転写または印刷される。
【0047】
ある実施形態において、スタンプのレリーフ構造は、基板にマスキング材料を印刷する隆起表面のパターンを形成し、微粒子組成物が、基板の少なくともマスキング材料を有していない領域に適用される。これらの実施形態において、微粒子組成物は、上述した任意の方法により、少なくとも開口領域に適用できるか、またはマスキング材料パターンの上の層として適用することができる。これらの実施形態において、マスキング材料は、スタンプから基板に転写または印刷され、微粒子組成物のパターンはマスキング材料の除去後、(間接的に)形成される。
【0048】
ある実施形態において、スタンプは、エラストマー材料、あるいは熱または放射線による成型または硬化の結果、エラストマーとなる組成物で構成されている。直接印刷の実施形態における微粒子組成物および間接印刷の実施形態におけるマスキング材料は、これらに限られるものではないが、インジェクション、注入、液体キャスティング、噴射、浸漬、スプレー、蒸着およびコーティングをはじめとする任意の好適な方法により、スタンプのレリーフ構造の少なくとも隆起表面に適用することができる。コーティングの好適な方法としては、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、ローラーコーティングおよびドクターブレードコーティングが例示される。微粒子組成物またはマスキング材料は、スタンプのレリーフ構造の少なくとも隆起表面に層を形成できるものでなければならない。エラストマースタンプの特定の特性、例えば、スタンプ材料の耐溶剤性、マスキング材料または機能材料の組成物の特定の特性、例えば、溶剤の沸点および溶剤中の機能材料の溶解度は、層を形成して、パターンとして基板に転写する特定のマスキング材料または機能材料の能力に影響する可能性があるが、機能材料とエラストマースタンプの適切な組み合わせを判断することは、マイクロコンタクトプリンティングの当業者であれば分かることである。
【0049】
一実施形態において、微粒子組成物またはマスキング材料をスタンプに適用して、スタンプのレリーフ構造に層を形成する。すなわち、微粒子組成物またはマスキング材料は、1つまたは複数の隆起表面および1つまたは複数のリセス表面に層を形成する。スタンプの微粒子組成物またはマスキング材料層は、連続または不連続とすることができる。マスキング材料層の厚さは、材料を印刷して、基板上でマスキングとして機能するのであれば、特に限定されない。一実施形態において、マスキング材料層の厚さは、典型的に、スタンプのレリーフ高さ(隆起表面とリセス表面との差)より薄い。一実施形態において、スタンプのマスキング材料層は、0.01〜1ミクロンである。基板に転写される微粒子組成物層が、約200nm以下であれば、スタンプの微粒子組成物層の厚さは特に限定されない。
【0050】
微粒子組成物またはマスキング材料を、スタンプの少なくとも隆起表面に適用した後、微粒子組成物またはマスキング材料を、任意で乾燥して、基板へ転写する前に、キャリアまたは溶剤の一部または全てを除去する。乾燥は、ガスジェットの使用、吸収材によるブロッティング、室温または高温での蒸発等をはじめとする任意のやり方で行ってよい。一実施形態において、微粒子組成物またはマスキング材料は、転写前は、溶剤またはキャリアを実質的に含まず、隆起表面にフィルムを形成する。
【0051】
比較的低沸点の機能材料用溶剤を選択し、かつ/または機能材料の組成物の非常に薄い層(すなわち、約1ミクロン未満)を適用することにより、効率的な乾燥を補助することができる。レリーフ構造に従った機能材料のパターンが基板に転写されれば、液体は、組成物層から十分に除去される。一実施形態において、スタンプの機能材料のフィルムの厚さは、0.001〜2ミクロンである。他の実施形態において、スタンプの機能材料のフィルム層の厚さは、0.01〜1ミクロンである。
【0052】
マスキング材料の選択は、最終的にパターン化される機能材料(すなわち、微粒子)によりなされる。マスキング材料は、典型的に、スタンプへの適用のために溶液中に分散、分解または懸濁される。機能材料も、典型的に、基板への適用のために溶液中に分散、溶解または懸濁される。機能材料に用いる溶液の種類によって、有機、水溶性またはアルコールベースの化合物にせよ、マスキング材料と、マスキング材料が分散、溶解または懸濁される対応の溶液が決まる。マスキング材料は、機能材料が用いるのと同じまたは実質的に同じまたは同様の溶液を用いてはならない。溶液は、機能材料またはマスキング材料のエラストマースタンプとのコンタクトプリンティングに十分であれば、溶剤であっても、キャリア化合物であってもよい。
【0053】
特定の実施形態において、マスキング材料の溶液は、機能材料の溶液と非相溶性または実質的に非相溶性である。すなわち、一実施形態において、機能材料が、有機化合物による溶液中にある場合には、マスキング材料は、有機溶剤と非相溶性または実質的に非相溶性となるように選択される(すなわち、マスキング材料は、水性またはアルコール溶液中に分散、溶解または懸濁する)。一実施形態において、機能材料が、水性またはアルコール化合物による溶液中にある場合には、マスキング材料は、水性またはアルコール溶液に非相溶性となるように選択される(すなわち、マスキング材料は、有機材料中に分散、溶解または懸濁する)。一実施形態において、マスキング材料および機能材料は、非相溶性または実質的に非相溶性であり、基板上のマスキング材料のパターンに適用されたとき、機能材料は、マスキング材料のパターンを変更したり、分解したり、その他影響を与えない、または実質的に変更、分解、その他影響を与えないようなものとする。他の実施形態において、マスキング材料および機能材料は、非相溶性または実質的に非相溶性で、機能材料およびマスキング材料は、互いに隣接したときに、混ざったり、溶解したりしないようなものとする。パターンを変更または分解する例としては、マスキング材料の溶解または膨潤および基板からのマスキング材料の持ち上げ(機能材料と接触したときの)、機能材料の溶解または膨潤および基板からの機能材料の持ち上げが挙げられる。マスキング材料および機能材料の両方が、同じ一般的な溶液を用いる、例えば、両方とも有機溶液を用いる、両方ともアルコール溶液を用い、それでも非相溶性または実質的に非相溶性であってもよいものと考えられる。この場合、マスキング材料溶液と機能材料溶液との溶解度は十分異なるものとし、機能材料の適用により、基板上のマスキング材料パターンに悪影響を及ぼさず、マスキング材料の除去が、機能材料パターンの形成に悪影響を及ぼさないのであれば、マスキング材料と機能材料とは、実質的に非相溶性と考えられる。マスキング材料は、(1)スタンプのレリーフ構造の少なくとも隆起表面に層を形成し、(2)レリーフ構造によるパターンを基板に転写し、(3)機能材料のパターンに悪影響を及ぼすことなく基板から除去(存在する場合には、下にある層に影響を与えることなく)できるものでなければならない。エラストマースタンプの特定の特性は、層を形成して基板へ転写する特定のマスキング材料の能力に影響するが、マイクロ接触印刷の当業者であれば、マスキング材料とエラストマースタンプとの適切な組み合わせを決められる。一実施形態において、マスキング材料によってまた、機能材料は、マスキングパターンの全体または一部を被覆することもできる。
【0054】
マスキング材料として好適な材料は、マスキング材料が上記の要件に適合するのであれば、限定されない。(水性または水溶液中にある機能材料の)マスキング材料として用いるのに好適な材料としては、これらに限られるものではないが、アクリロニトリルホモポリマーおよびコポリマー、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンエラストマー、ポリ(アクリロニトリル)、スチレンホモポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリスチレンおよびポリ(スチレン−アクリロニトリル)コポリマー、アクリレートおよびメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリアクリレート、ポリ(エチルメタクリレート)およびポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリチオフェン、置換および非置換ポリフェニレン−ビニレンホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(n−ヘキシルイソシアネート)、ポリ(1,4−フェニレンビニレン)、エポキシベース系、ポリ(n−カルバゾール)、ポリノルボルネンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)およびこれらの組み合わせおよびコポリマーが例示される。
【0055】
(有機溶液中にある機能材料の)マスキング材料として用いるのに好適な材料としては、これらに限られるものではないが、アルキド樹脂、ゼラチン、ポリ(アクリル酸)、ポリペプチド、プロテイン、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシポリスチレン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(スチレン−コ−ビニルピリジン)、ポリ(ブチルアクリレート−コ−ビニルピリジン)、アリールアミンおよびフッ素化アリールアミン、セルロースおよびセルロース誘導体、アクリレートおよび/またはメタクリレートエマルジョンの分散液ならびにこれらの組み合わせおよびコポリマーが例示される。
【0056】
マスキング材料の、レリーフ構造の隆起表面から基板への転写によって、基板上にマスキング材料のパターンが作製され、これに対応して、基板の開口領域のパターンが形成される。転写はまた、印刷とも呼ばれる。隆起表面のマスキング材料を基板と接触させると、マスキング材料が転写して、スタンプを基板から分離すると、マスキング材料のパターンが形成される。一実施形態において、隆起表面に配置されたマスキング材料の全てまたは実質的に全てが、基板に転写される。微粒子組成物のレリーフ構造の隆起表面から基板への転写によって、基板に微粒子組成物のパターンが形成される。隆起表面の微粒子組成物を基板と接触させると、微粒子組成物が転写されて、スタンプを基板から分離するときに、基板にパターンが形成される。一実施形態において、隆起表面に配置された微粒子組成物の全てまたは実質的に全てが、基板に転写される。
【0057】
任意で、圧力をスタンプに加えて、機能材料またはマスキング材料の基板への接触および完全な転写を確保してもよい。材料を基板に転写させるのに用いる好適な圧力は、5lbs./cm2未満、好ましくは1lbs./cm2未満、より好ましくは0.1〜0.9lbs./cm2、最も好ましくは約0.5lbs./cm2である。材料の基板への転写は、任意のやり方で行ってよい。材料の転写は、スタンプのレリーフ表面を基板へ動かす、基板をスタンプのレリーフ表面に動かす、または基板とレリーフ表面の両方を動かして接触させることによる。一実施形態において、材料は手動で転写される。他の実施形態において、材料の転写は、例えば、コンベヤーベルト、オープンリール式プロセス、直接駆動の転写固定具またはパレット、鎖、ベルトまたはギア駆動固定具またはパレット、摩擦ローラ、印刷プレスまたはロータリ装置により自動化される。
【0058】
基板からのスタンプの分離は、これらに限られるものではないが、ピーリング、ガス噴射、液体噴射、機械的デバイス等をはじめとする任意の好適な手段により実施してよい。
【0059】
マスキング材料を使用する実施形態において、マスキング材料のパターンを基板上に形成した後、機能材料(すなわち、微粒子組成物)を基板に、少なくとも開口領域またはマスキングパターン間の領域に適用する。一実施形態において、機能材料を適用して、基板の表面、すなわち、基板上のマスキングパターンおよび開口領域を被覆する。他の実施形態において、機能材料を選択的に適用して、基板上の少なくとも開口領域(マスキング材料のパターンがない)を被覆する。機能材料は、前述した任意の好適な方法により基板に適用することができる。
【0060】
微粒子組成物が基板に適用された後に、微粒子組成物がパターン状に直接印刷される実施形態において、微粒子組成物を乾燥すると、マスキングパターンの基板からの除去および処理といった後の工程の前に、液体(溶剤またはキャリア)の一部または全てを除去することができる。乾燥は、ガス噴射の使用、吸収材による吸い取り、室温または高温での蒸発等をはじめとする任意のやり方で行うことができる。一実施形態において、微粒子組成物は、実質的に液体を含まず、基板表面にフィルムを形成する。基板の微粒子組成物のパターンを帯電ガスで処理して分散剤を除去し、誘導加熱して微粒子の機能経路を基板に形成する。
【0061】
特定の実施形態において、機能材料を基板に適用し、フィルムを形成した後、マスキングパターンを基板から除去する。マスキング材料のパターンの除去は、これらに限られるものではないが、溶剤溶液による浸漬または湿潤、レーザー線への露光、接着剤を外側表面と接触させて接着剤を基板から分離してマスキング材料を基板から転写することをはじめとする任意の方法により実施することができる。溶剤による除去によって、マスキングパターンの全体または一部の溶剤溶液へのリフト、膨張、溶解、分散またはこれらの組み合わせが生じる。マスキング材料の除去は、任意で、超音波処理、すなわち、強い音波を溶剤溶液に適用することにより補助してもよい。マスキング材料を接着剤により除去する実施形態において、接着剤は、マスキング材料と基板間の界面の接着力に勝り、マスキング材料を基板から転写する十分な強度だが、機能材料と基板間の界面の接着力には勝らず、機能材料のパターンを、接着剤が基板から分離する際に転写するような強度を有している。接着剤は、外側表面との接触と基板からの分離を1回以上繰り返すと、マスキング材料の全てを除去することができる。
【0062】
マスキング材料のパターンの全てまたは一部を覆う機能材料は、マスキング材料と同時に除去しても、マスキング材料の除去とは別に除去してもよい。マスキング材料の除去は、基板(またはマスキング材料でない下にある層を備えた)と接触する機能材料を妨害または阻害してはならない。機能材料の適用により、基板上のマスキングパターンと開口領域との両方に、基板上の層を形成した場合には、マスキングパターン(および上にある機能材料)の除去の結果、機能材料のパターンが基板上に形成される。
【0063】
機能材料を適用して基板の少なくとも1つまたは複数の(マスキング材料のパターンのない)開口領域を選択的に覆う実施形態において、基板の機能材料の帯電ガスによる処理および誘導加熱は、マスキング材料の有無を問わずに行うことができる。
【0064】
スタンプ
スタンプは、マイクロコンタクトプリンティングの当業者に知られた従来のやり方で形成することができる。例えば、スタンプは、レリーフ形態を示す(スタンプのレリーフ構造の反対である)表面を有するマスターで材料の層を成型および硬化することにより製造してよい。スタンプは、化学線、加熱またはこれらの組み合わせに晒すことにより硬化してもよい。ある実施形態において、スタンプは、エラストマー材料の層を含み、これは、エラストマー層、硬化層または硬化エラストマー層と呼ばれる。スタンプはまた、例えば、レリーフ構造を生成するやり方で材料をアブレートまたはエングレーブすることにより作製することもできる。スタンプのレリーフ構造は、隆起表面が基板と選択的に接触するのに十分なリセス表面からの高さを隆起表面が有するようなものである。リセス表面から隆起表面までの高さはまた、レリーフ深さとも呼ばれる。一実施形態において、隆起表面は、リセス表面から約0.2〜20ミクロンの高さを有している。他の実施形態において、隆起表面は、リセス表面から約0.2〜2ミクロンの高さを有している。スタンプを形成するエラストマー層の厚さは、レリーフ構造が印刷用の層に形成できる限りは、特に限定されない。一実施形態において、エラストマー層の厚さは、1〜51ミクロンである。他の実施形態において、エラストマー層の厚さは5〜25ミクロンである。
【0065】
ある実施形態において、スタンプは、弾性率が10メガパスカル未満のエラストマー層を有する。ある実施形態において、エラストマー層を有するスタンプから、少なくとも10メガパスカル、好ましくは10メガパスカルより大きい弾性率を有するスタンプが得られる。弾性率は、応力の増分対歪みの増分の比である。本発明の方法について、弾性率は、低歪みだと応力と歪みの関係が線形で、材料が応力および歪みから回復可能なヤング率である。弾性率はまた、弾性係数とも呼ばれる。弾性率は、当業者に周知の機械的特性である。弾性率および材料のその他の機械的特性、その分析についての記載は、Marks’ Standard Handbook for Mechanical Engineers, eds. Avalone, E.およびBaumeister III,T.,第9版、5章、McGraw Hill,1987年にある。エラストマースタンプの弾性率を求めるのに好適な方法は、OliverおよびPharrによるJ.Mater.Res.7,1564(1992年)に記載されている。この方法は、薄いエラストマー層、例えば、厚さ51ミクロン未満のスタンプを形成するエラストマー層の弾性率を求めるのに特に向いている。印刷スタンプの弾性率は、試料表面に対して法線で、既知の寸法を備えた圧子先端を備えた貫入試験機(圧子)で測定することができる。あるプリセット値まで増大する荷重をかけることにより、圧子の先端は試料に打ち込まれる。その後、試料の部分的または完全な弛緩が生じるまで、荷重を徐々に減じていく。試料の多数回の貫入を行うことができる。荷重/無荷重および変位を試験プロセス全体にわたって記録し続けて荷重変位曲線を生成し、それから、弾性率およびその他の機械的特性を求めることができる。各貫入についての荷重/無荷重曲線の分析は、J.Mater.Res.に最初に紹介されたOliverとPharrにより記載された方法に従って行うことができる。
【0066】
スタンプを形成する材料は、スタンプの少なくとも隆起部分を基板表面に適合させて、微粒子の完全な移動を促進するために、エラストマーである。ある実施形態において、少なくとも10メガパスカル(Mpa)の弾性率を有するエラストマースタンプを用いると、50ミクロン未満の解像度の基板に微粒子のフィーチャーを、特に、ダイレクトコンタクトプリンティングにより、形成できる能力が与えられる。一実施形態において、エラストマースタンプの弾性率は少なくとも11メガパスカルである。一実施形態において、エラストマースタンプの弾性率は少なくとも15メガパスカルである。他の実施形態において、エラストマースタンプの弾性率は少なくとも20メガパスカルである。他の実施形態において、エラストマースタンプの弾性率は少なくとも40メガパスカルである。
【0067】
スタンプは、微粒子のパターンを基板にレリーフ印刷することにより再現することのできる任意の材料または材料の組み合わせから作製することができる。エラストマースタンプを形成するのに好適なポリマー材料としては、これらに限られるものではないが、例えば、フルオロポリマー、重合可能なフッ素化化合物、エポキシポリマー、共役ジオレフィン炭化水素のポリマー、例えば、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエンおよびブタジエン/アクリロニトリル、A−B−A型ブロックコポリマーのエラストマーブロックポリマーであって、Aは非エラストマーブロックを表わし、好ましくはビニルポリマー、最も好ましくはポリスチレン、Bはエラストマーブロックを表わし、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレン、およびアクリレートポリマーが挙げられる。A−B−Aブロックコポリマーとしては、これらに限られるものではないが、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)およびポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)が例示される。エラストマースタンプを形成するのに好適な他の材料としては、シリコーンポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。エラストマースタンプに用いる材料の選択は、ある程度、機能材料およびスタンプに適用される/スタンプにより適用される液体の組成によって異なる。例えば、エラストマースタンプのために選択される材料は、組成物、特に、液体と接触する際、耐膨張性がなければならない。フルオロポリマーは、典型的に、耐有機溶剤性である(機能材料について)。機能材料で用いるクロロホルム等の特定の溶剤は、PDMS等のシリコーン系スタンプを膨張させる傾向がある。スタンプの膨張によって、基板に微細解像度のパターンを生成する能力が変化する。ポリマー材料はエラストマー、または硬化に際してエラストマーとなるものであってよい。ポリマー材料自体が感光性である、かつ/または組成物を感光性とする1つ以上の添加剤と共に、ポリマー材料が組成物に含まれていてもよい。
【0068】
一実施形態において、エラストマースタンプを形成する材料は感光性で、化学線に露光するとレリーフ構造が形成できる。「感光性」という用語には、感光性組成物が、化学線に応答して、1つ以上の反応、特に光化学反応を開始することのできる任意のシステムが含まれる。化学線に露光すると、モノマーおよび/またはオリゴマーの連鎖成長重合が、縮合機構か、フリーラジカル付加重合のいずれかにより誘導される。全ての光重合可能な機構が考えられるが、エラストマースタンプ材料として有用な感光性組成物が、1つ以上の末端エチレン性不飽和基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーのフリーラジカル開始付加重合について説明する。これについて、光開始系は、化学線に露光すると、モノマーおよび/またはオリゴマーの重合を開始するのに必要なフリーラジカルの源として作用し得る。
【0069】
組成物は、光開始付加重合によりポリマーを形成できる少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含有するため、組成物は感光性である。感光性組成物はまた、光重合を誘導するのに化学線により活性化される開始系も含有していてよい。重合可能な化合物は、末端でないエチレン性不飽和基を有する、かつ/または組成物は、架橋を促進するモノマー等の1つ以上のその他の成分を含有していてもよい。このように、「光重合」という用語は、光重合可能、光架橋可能またはその両方である系を含むものとする。本明細書で用いる光重合はまた硬化とも称す。エラストマースタンプを形成する感光性組成物は、1つ以上の構成成分および/または添加剤を含んでいてもよく、これらに限られるものではないが、光開始剤、1つ以上のエチレン性不飽和化合物(モノマーとも呼ぶ)、フィラー、界面活性剤、熱重合防止剤、処理助剤、酸化防止剤、感光剤等、組成物を安定化またはそうでなく増強させるものが挙げられる。
【0070】
光開始剤は、化学線に感度があり、過剰の停止反応なしで重合を開始するフリーラジカルを生成する任意の単一の化合物または化合物の組み合わせとすることができる。光開始剤、特に、フリーラジカル光開始剤、これらに限られるものではないが、ケトン、キノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、過酸化物、ビイミダゾール、トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド誘導体およびミヒラーズケトン等の既知の部類のいずれを用いてもよい。一実施形態において、光開始剤は、芳香族ケトンタイプの既知のフッ素を含まない光開始剤をベースとするフッ素化光開始剤を含むことができる。あるいは、光開始剤は、化合物の混合物であってよく、そのうちの1つは、放射線により活性化される増感剤により引き起こされると、フリーラジカルを与える。液体光開始剤は、組成物に良好に分散するため、特に好適である。開始剤は紫外線に感度があるのが好ましい。光開始剤は、感光性組成物の重量を基準として、0.001%〜10.0%の量で通常存在する。
【0071】
化学線により活性化される組成物に用いることのできるモノマーは当該技術分野において周知されており、これらに限られるものではないが、付加重合エチレン性不飽和化合物が挙げられる。付加重合化合物はまたオリゴマーであってよく、単一オリゴマーまたはオリゴマー混合物とすることができる。組成物は、単一モノマーまたはモノマーの組み合わせを含有することができる。付加重合可能なモノマー化合物は、組成物の重量当たり5%未満、好ましくは3%未満の量で存在し得る。
【0072】
一実施形態において、エラストマースタンプは、化学線に露光すると重合して、フッ素化エラストマー系材料を形成するフッ素化化合物を含む感光性組成物で構成される。好適なエラストマー系フッ素化化合物としては、これらに限られるものではないが、重合反応により重合または架橋可能なパーフルオロポリエーテル、フルオロオレフィン、フッ素化熱可塑性エラストマー、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化モノマーおよびフッ素化オリゴマーが挙げられる。一実施形態において、フッ素化化合物は、反応して重合し、フッ素化エラストマー材料を形成する1つ以上の末端エチレン性不飽和基を有する。エラストマー系フッ素化化合物は、単一重合であるか、またはポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミドその他と共重合して、使用に好適な印刷フォーム前駆体および/またはスタンプの所望の特性を得ることができる。化学線への露光は、高圧および/または室温より高い高温の適用は必要なく、フッ素化化合物が重合して、印刷スタンプとして用いることができるのに十分なものとする。化学線に露光することにより硬化するフッ素化化合物を含有する組成物の利点は、PDMS系システム等の熱的に硬化する組成物に比べたときに特に、組成物が比較的早く(例えば、1分以内に)硬化し、単純なプロセス開発であることである。
【0073】
一実施形態において、エラストマースタンプは、フッ素化化合物がパーフルオロポリエーテル(PFPE)化合物である感光性組成物の層を含む。パーフルオロポリエーテル化合物は、パーフルオロエーテルセグメント、すなわち、パーフルオロポリエーテルを少なくとも主要部分として含む化合物である。PFPE化合物に存在するパーフルオロエーテルセグメントの主要部分は、PFPE化合物の総重量を基準として、80重量パーセント以上である。パーフルオロポリエーテル化合物はまた、フッ素化されていない炭化水素または炭化水素エーテルである1つ以上の伸張セグメントも含み、かつ/またはフッ素化されているが、過フッ素化されていない炭化水素または炭化水素エーテルである。一実施形態において、パーフルオロポリエーテル化合物は、パーフルオロポリエーテルセグメントの少なくとも主要部分、末端光反応性セグメントおよびフッ素化されていない炭化水素の任意の伸張セグメントを含む。パーフルオロポリエーテル化合物は、化合物を化学線に反応性とさせる1つ以上の末端エチレン性不飽和基(すなわち、光反応セグメント)により官能化されている。光反応性セグメントはまた、光重合可能なセグメントとも呼ばれる。
【0074】
パーフルオロポリエーテル化合物は限定されず、鎖状および分岐構造を含むが、パーフルオロポリエーテル化合物の鎖状骨格構造が好ましい。PFPE化合物はモノマーであってよいが、典型的には、オリゴマーで室温で液体である。パーフルオロポリエーテル化合物は、オリゴマーパーフルオロエーテルセグメントを有するオリゴマー二官能性モノマーと考えられる。パーフルオロポリエーテル化合物は、光化学的に重合して、スタンプのエラストマー層を与える。PFPE系材料の利点は、PFPEが高度にフッ素化されていて、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサンおよびアセトニトリル等の有機溶剤に対して耐膨張性があり、特に、マイクロコンタクトプリンティング技術に用いるのに望ましいことである。
【0075】
任意で、エラストマースタンプは、可撓性フィルム、好ましくは可撓性ポリマーフィルムの支持体を含んでいてもよい。可撓性支持体は、曲がったり歪んだりすることなく、スタンプのエラストマーレリーフ表面を、印刷可能な電子基板に適合、または実質的に適合可能である。支持体はまた、マスターからスタンプを剥がす際、スタンプのエラストマー層と共に曲がることができるほど十分に可撓性である。支持体は、スタンプの作製および使用状態全てにわたって、非反応性で安定なままであるフィルムを形成する任意のポリマー材料とすることができる。好適なフィルム支持体としては、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミドおよびポリエステル等の熱可塑性材料が例示される。好ましいのは、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート等のポリエチレンのフィルムである。同じく、支持体に含まれるのは、可撓性ガラスである。典型的に、支持体の厚さは2〜50ミル(0.0051〜0.13cm)である。典型的に、支持体は、シートフィルムの形態にあるが、この形態に限定されない。一実施形態において、支持体は、感光性組成物が重合する化学線を通す、または実質的に通す。
【0076】
任意で、エラストマースタンプは、微粒子適用前、レリーフ表面に1つ以上の層を含む。1つ以上の層は、例えば、スタンプから基板までの微粒子の移動を補助する。追加の層として用いるのに好適な材料の一例としては、フッ素化化合物が挙げられる。一実施形態において、追加の層は、微粒子の基板への移動後、エラストマースタンプに残る。
【0077】
微粒子組成物の非パターン状適用
ある実施形態において、微粒子組成物は、層として、基板に適用され、パターンは、フォトレジストを用いて形成される。微粒子組成物は、上述した任意の好適な方法により、基板上に層を形成することができる。フォトレジストは、画像を基板に転写するのに用いる感光性フィルムである。フォトレジストの層を基板に形成し、フォトレジスト層を、フォトマスクを通して活性放射線源に露光する。フォトマスクは、活性放射線を通さない領域と、活性放射線を通す他の領域とを有する。活性放射線に露光すると、フォトレジスト層の光誘導された化学的または物理的変換がなされて、フォトマスクのパターンをフォトレジストコートされた基板に転写する。フォトレジストは、好適な現像剤で現像されて、基板の選択的処理を可能とする画像を提供する。フォトレジストは、周知の感光性組成物であり、印刷回路材料の形成、リソグラフィー印刷版および補強加工用途に有用である。光回路を作製する通常のフォトレジストの使用については、「Photoresist−Materials And Processes」W.S.DeForest著、McGraw−Hill,Inc.発行、1975年および「Printed Circuits Handbook」、Clyde F.Coombs,Jr.,編、McGraw−Hill,1988年(第3版)に記載されている。
【0078】
本発明に用いるフォトレジスト組成物は、フォトレジストが微粒子被覆基板の層上に配置された好適なパターン層を形成することができれば、特に限定されない。フォトレジスト組成物はまた、帯電ガスプラズマに十分な抵抗性もなければならず、フォトレジストパターンにより被覆された微粒子層の領域は、帯電ガスプラズマによる処理から保護されるようにする。好適なフォトレジスト組成物は、ネガ作動性光重合可能および光架橋可能または光二量化システムおよびポジ作動性光可溶性システムが挙げられる。ポジ作動性システムにおいて、化学線に露光される領域は、後露光処理(すなわち、現像)工程で除去され、ネガ作動性システムにおいては、化学線に露光されない領域が除去される。ネガ作動性システムにおいて、化学線への露光によって、重合および/または架橋反応が開始され、好適な現像剤溶剤における材料の不溶化をもたらす。フォトレジスト組成物は、概して、バインダー、重合および/または架橋可能なモノマーまたはオリゴマー材料、ならびに光開始剤を含有する。フォトレジストは、液体組成物として、またはドライフィルムとして、基板の微粒子層に適用することができる。液体フォトレジストは、微粒子コート基板への適用後除去される液体キャリアを含んでいてもよい。ドライフィルムレジストは、固体(ドライフィルム)コーティング層として、微粒子コート基板に適用することができる。典型的なドライフィルムは、光画像形成可能な組成物でコートされ、後に組成物液体キャリアが除去される、ベースまたはキャリアシートを含む。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ドライフィルムレジストの一般的なキャリアシートである。フォトレジストは、水性現像可能または水性処理可能または溶剤現像可能な組成物とすることができる。フォトレジストは、化学的に増幅されたレジストであってよく、化学線に露光すると、溶解度の変化に関係する二次化学反応を生じるため、利用可能な放射線が非常に効率よく用いられる。
【0079】
本発明において、フォトレジストは、基板の微粒子組成物層に適用され、フォトマスクを通して、化学線に像様露光される。フォトレジスト層の厚さは限定されないが、典型的に、1〜5ミクロンの範囲である。フォトレジスト層が薄すぎると、フォトレジストは、帯電ガスプラズマにより完全に除去されて、下にある微粒子層を十分に保護しない恐れがある。フォトレジスト層が厚すぎると、帯電ガスプラズマで、分散剤を微粒子層から、フォトレジストパターンで、またはその端部に沿って除去することが難しく、微粒子層の機能パターンの解像度が乏しくなる可能性がある。フォトレジストを好適な現像剤で現像して、基板の微粒子組成物層に、またはその上に所望のパターンの画像を提供し、微粒子組成物層に開口した対応の領域を形成する。フォトレジストパターンを備えた微粒子組成物層を有する基板を処理し加熱する。レジストパターンにより被覆されていない微粒子、すなわち、開口領域を、帯電ガスにより処理して分散剤を組成物層から除去し、誘導加熱して微粒子の作用結合を形成、すなわち、機能化する。レジストパターンにより被覆された微粒子は、実質的に、処理および加熱に影響されない。帯電ガスプラズマによる処理によって、フォトレジスト材料が(一部)除去されることが分かっていることに注意すべきである。しかしながら、フォトレジストパターンが、微粒子層を処理して分散剤を除去し、微粒子の作用結合を形成するのに十分な時間にわたって無傷なままでいれば、これは許容される。フォトレジスト材料の適切な選択およびフォトレジストの好適な層厚さでの適用によって、フォトレジストの帯電ガスプラズマへの影響が少なくなる。帯電ガスによる処理後、フォトレジストパターンは、通常のフォトレジスト除去方法または洗出しにより除去することができる。
【0080】
他のある実施形態において、微粒子組成物は、層として基板に適用され、パターンは、微粒子組成物の層の上に、または層に配置されたポリマー材料の適用により形成される。微粒子組成物の層は、上述した任意の好適な方法により基板に形成することができる。上述したようなスタンプまたは印刷フォームは、ポリマー材料をパターン状に、微粒子組成物の層に、またはその上に適用する。ポリマー材料はまた、マスキング材料とも呼ばれる。ポリマー材料は、(1)スタンプのレリーフ構造の少なくとも隆起表面に層を形成し、(2)レリーフ構造に従ったパターンを微粒子層に転写し、(3)微粒子層に悪影響を及ぼすことなく微粒子層から除去し、(4)ポリマー材料のパターンにより被覆された微粒子層の領域が帯電ガスによる処理から保護されるよう、帯電ガスプラズマに十分耐えるものでなければならない。好適なポリマー材料としては、上述したとおり、マスキング材料(基板に)として用いるのに好適な材料が挙げられる。ポリマー材料の微粒子層に対する状態および適用は、マスキング材料の基板への適用について上述した状態および適用と同じ、または実質的に同じにすることができる。微粒子層のポリマーマスキング材料のパターンは、微粒子層に対して開口し、対応領域を形成し、これを、帯電ガスにより処理して層から分散剤を除去し誘導加熱すると、微粒子の作用結合が形成、すなわち、機能化される。ポリマー材料パターンにより被覆された微粒子は、実質的に、処理および加熱に影響されない。帯電ガスプラズマによる処理によって、ポリマーマスキング材料が(一部)除去されることが分かっている。しかしながら、ポリマー材料パターンが、微粒子層を処理して分散剤を除去し微粒子の作用結合を形成するのに十分な時間にわたって無傷なままでいれば、これは許容される。ポリマー材料パターンは、上述したとおり、適切な溶剤または接着層による洗出しにより除去することができる。
【0081】
上述した本発明の方法の利点に加えて、微粒子層の上に配置されたフォトレジストまたはポリマー材料のパターンを用いて、微粒子層を帯電ガスおよび誘導加熱により選択的に処理する実施形態にはまた、微粒子層(前は、フォトレジストまたはポリマー材料のパターン下にあった)の未処理部分を除去する必要なく、微粒子層に微粒子の機能パターンを形成する利点を有する。すなわち、帯電ガスおよび誘導加熱による処理後、微粒子層は無傷なままで(かつ、連続層として現れ)、しかも、層は、機能化微粒子材料(処理部)と機能化材料に接触する非機能化微粒子材料(未処理部)とのパターンで構成される。
【0082】
微粒子層が無傷なままで、微粒子層の未処理部分が基板から除去されていないこれらの実施形態において、微粒子層の非機能化(未処理)部分が残留固有機能性を有していないことが重要である。残留固有機能性は、プローブステーションを用いて、抵抗、シート抵抗等の電気的特性を試験することにより求めることができる。残留固有機能性は、液体希釈剤が層から除去された後の微粒子の近さおよび/またはその他因子の結果である。微粒子層の残留機能性は、微粒子層に完全な、または実質的な作用性を与えるには不十分であるが、層の隣接する機能化(すなわち、処理)部分のパターンの機能性を妨げるのに十分なものであろう。微粒子組成物を適切に選択して、基板へ適用して、層の微粒子が、希釈剤の除去の際に機能しないようにする。サイズ、形状および表面特性等の微粒子の特性、分散剤および液体希釈剤の種類および含量、組成物中の微粒子の濃度、微粒子組成物の適用方法および厚さは、微粒子組成物の層が、残留固有機能性を有するか有しないかに影響し得る因子の一例に過ぎない。さらに、これは、帯電ガスおよび誘導加熱による処理の際に、微粒子組成物の層をパターン状に機能化する必要がないよう、釣り合いがとれていなければならない。処理および誘導加熱後に微粒子層の非処理部分が基板から除去される実施形態において、微粒子層の固有残留機能性は関係ない。同様に、微粒子組成物がパターン状に直接適用される上述の実施形態と同様に、微粒子層の固有残留機能性は関係ない。
【0083】
本発明の方法は、これらに限られるものではないが、電子、光学、感覚および診断用途をはじめとする様々な用途におけるデバイスおよび構成部品に用いる微粒子の層を基板に形成する方法を提供する。本方法を用いて、電子デバイスおよび構成部品に、そして光学デバイスおよび構成部品に用いる活性材料または不活性材料のパターンの層を形成することができる。かかる電子および光学デバイスおよび構成部品としては、これらに限られるものではないが、無線周波タグ(RFID)、センサ、メモリおよびバックパネルディスプレイが挙げられる。本方法を用いて、導電性材料、半導体材料、誘電体材料のパターンを基板に形成することができる。本方法により、微粒子を、発光材料、カラーフィルタ顔料材料等の他の材料を含めるセルや画素用のバリア壁を形成するパターン、または溶液から分配されるソースとドレイン電極間のチャネル長さを画定するパターンへと形成することができる。バリア壁のパターンもまた、閉じ込め層またはバリア層と呼ばれる。本方法により、微粒子を、カラーフィルタ画素として用いるセルを作製するバリア壁を形成するパターンへと形成することができる。カラーフィルタ画素には、顔料着色剤、染料着色剤をはじめとするカラーフィルタ用の着色剤材料を充填することができる。本方法により、微粒子を、ソース材料およびドレイン材料等の他の材料をチャネルへ分配するトップゲートデバイスのトランジスタチャネルへと形成することができる。本方法により、機能材料を、ソース材料およびドレイン材料をチャネルへ分配するボトムゲートデバイス用の基板の半導体層のトランジスタチャネルへと形成することができる。他の材料を、インクジェットをはじめとする任意の手段により溶液として基板のセルに分配することができる。
【実施例】
【0084】
実施例1
対照例
対照例を作製した。銀インク、ANP Co.Ltd.(Korea)製、タイプDGP−MP−25LT 25Cを、微粒子組成物として用いた。メーカーによれば、銀インクは、銀金属含量が25.1重量%(固形分)、粘度4.5cP(ブルックフィールドLVDV−1+により測定)、混合アルコールの極性溶剤の分散マトリックス、硬化条件250℃で30〜60分とされていた。銀インクは、平均直径30nmの銀のナノ粒子と、ポリビニルピロリドン(PVP)バインダーで構成されていた。インクは、メタノールにより8重量%まで希釈された。希釈した銀分散液を、10分間、チップ超音波装置により超音波処理し、0.2ミクロンのPTFEフィルタで2回濾過した。銀分散液組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)(DuPont Teijin Films製、タイプST504)基板に3000rpmで60秒間スパンコートした。銀分散液の層を65℃で、2分間ホットプレートでアニールして、溶剤メタノールを除去した。溶剤除去後、銀の層はやや導電性であった(後述するとおり、0.1シーメンス/cm)。
【0085】
基板の銀ナノ粒子層を分析した。銀フィルムの抵抗率を、プローブステーション(Cascade Microtech Inc.製、型番REL−6100)の4点プローブを用いて測定し、半導体アナライザー、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)製、型番Agilent4155Cを用いて測定した。銀
層のシート抵抗は、
【0086】
【数1】

【0087】
であった。プロファイラメータを用いて、銀フィルムの厚さを測定したところ、63nmであった。銀フィルムの導電率は0.1シーメンス/cm(S/cm)であった。基板の歪みや変形は観察されなかった。
【0088】
実施例1A
実施例1Aについて、基板上の銀ナノ粒子層の試料を、アルゴンプラズマ処理およびマイクロ波エネルギーによる誘導加熱を用いて、本発明に従って作製した。同じ銀インクを用い、対照例に記載した通りにして、65℃で2分間ホットプレートでのアニーリングにより溶剤を除去して、作製した。基板上の銀フィルムを、Plasmatic System, Inc.(North Brunswick,NJ)製Plasma−Preen System、型番II973のプラズマチャンバのステンレス鋼プラットフォームに配置した。これは、3.0SCFH(毎時標準立方フィート)(1425sccm(毎分標準立方センチメートル))のアルゴンガス流量および295W(ワット)のマイクロ波(2.45GHz)電力で、真空条件下(3トル)で操作された。基板上の銀フィルムを、アルゴンプラズマおよびマイクロ波エネルギーで、30秒の増分、30秒中断で2分間処理し、後は、処理をせずに、計4分間、マイクロ波出力をオン・オフした。プラットフォームの温度は、冷却循環装置、Thermo−NESLAB Inc.,(Portsmouth,NH)製Coolflow CFT−33を用いて20℃に維持した。
【0089】
スタンプを上述した通りにして分析した。銀フィルムのシート抵抗は3.4Ω/□であった。銀フィルムの厚さは60nmであった。銀フィルムの導電率は5.0×104S/cmとなった。基板の歪みや変形は観察されなかった。
【0090】
実施例1B
実施例1Bについて、基板上の銀ナノ粒子層の試料を、酸素プラズマ処理およびマイクロ波処理を用いて、本発明に従って作製した。同じ銀インクを用い、対照例に記載した通りにして、65℃で2分間ホットプレートでのアニーリングにより溶剤を除去して、作製した。基板上の銀フィルムを、チャンバを3.0SCFH(毎時標準立方フィート)の酸素ガス流量および588W(ワット)のマイクロ波(2.45GHz)電力で、真空条件下(3トル)で操作した以外は、実施例1Aに記載した通りにして、酸素プラズマおよびマイクロ波で2分間処理した。試料を、冷却したプラットフォームに配置して、処理および加熱した。
【0091】
試料を上述した通りにして分析した。銀フィルムのシート抵抗は0.64Ω/□であった。銀フィルムの厚さは70nmであった。銀フィルムの導電率は2.2×105S/cmであった。基板の歪みや変形は観察されなかった。
【0092】
実施例1C
実施例1Cについて、基板上の銀ナノ粒子層の試料を、アルゴンプラズマおよび無線周波数(RF)処理を用いて、本発明に従って作製した。銀インク、ANP Co.Ltd.(Korea)製、タイプDGP−MP−40LT 25Cを、微粒子組成物として用いた。メーカーによれば、銀インクは、銀金属含量が40.7重量%(固形分)、粘度14.3cP(ブルックフィールドLVDV−1+により測定)、混合アルコールの極性溶剤の分散マトリックス、硬化条件250℃で30〜60分とされていた。銀インクは、平均直径50nmの銀のナノ粒子と、ポリビニルピロリドン(PVP)バインダーで構成されていた。インクは、エタノールにより10重量%まで希釈された。希釈した銀分散液を、10分間、チップ超音波装置により超音波処理し、0.2ミクロンのPTFEフィルタで2回濾過した。銀分散液組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)(DuPont Teijin Films製、タイプST504)基板に3000rpmで60秒間スパンコートした。銀分散液の層を65℃で、2分間ホットプレートでアニールして、溶剤エタノールを除去した。溶剤除去後、銀の層を対照例に記載したとおりにして試験したところ、やや導電性であった。銀フィルムを、アルゴンプラズマおよびRFで、反応性イオンチャンバ(SemiGroup PE/PECVD System 1000)を用いて、2分間連続して、50SCCM(毎分標準立方センチメートル)のアルゴンガス流量および500W(ワット)のRF(13.56MHz)出力で、プラズマ処理チャンバ内真空条件(0.3トル)にて処理した。
【0093】
試料を上述した通りにして分析した。銀フィルムのシート抵抗は2.67Ω/□であった。銀フィルムの厚さは70nmであった。銀フィルムの導電率は5.4×104S/cmであった。銀フィルムのプラズマおよびRF処理後、PETフィルムの歪みや変形はなかった。
【0094】
比較例1
比較例1については、いくつかの試料(A〜Cとする)を、65℃で2分間ホットプレートでのアニーリングの後、対流式オーブンにて、それぞれ140℃で5分間、210℃で5分間、210℃で30分間熱焼結することにより、対照例に記載したとおりにして用いられ、作製された同じ銀インクにより作製した。
【0095】
比較例1試料の試料を上述した通りにして分析した。結果を以下の表に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
処理後、試料CのPET基板は霞んだ。霞みは、基板から浸出したオリゴマーによるものと考えられる。比較例1の両試料BおよびC共変形が観察された。アルゴンプラズマおよびマイクロ波エネルギーにより処理した実施例1Aの銀フィルム試料および実施例1Bの銀フィルム試料は、アニーリングおよび加熱による焼結により処理した比較例1の銀フィルム試料A〜Cよりも高い導電性を有していた。
【0098】
比較例2
比較例2については、2つの試料(AおよびB)を、同じ銀インクで作製し、65℃で2分間ホットプレートでのアニーリングの後、実施例1Aのガスプラズマユニットにおいて連続して2分間、295W(ワット)のマイクロ波処理(2.45GHz)を行い、ガスプラズマ処理は用いずに、対照例に記載したとおりにして作製した。両試料共、チャンバの冷却した金属プラットフォームに配置された。比較例2Aは、真空中で、マイクロ波処理し、比較例2Bは真空なしでマイクロ波処理した。
【0099】
比較例2の試料を上述したとおりにして分析した。比較例2Aについては、シート抵抗は無限であった(銀層に導電性がなかった)。比較例2Bについては、銀フィルムのシート抵抗は9.4×104Ω/□であった。銀フィルムの厚さは、64.7nmであった。銀フィルムの導電率は1.64S/cmであった。ガスプラズマ処理なしで、マイクロ波処理のみだと低い導電率を示した。基板の変形は観察されなかった。
【0100】
比較例3
比較例3については、2つの(AおよびB)を、同じ銀インクで作製し、65℃で2分間ホットプレートでのアニーリングにより、対照例に記載したとおりにして作製した。アニーリング後、試料AおよびBをそれぞれ、UV OCS Operations(Montgomery,PA)製UV Backflash Ozone Cleaning System、型番T10X10 Backflash OESの冷却したプラットフォームに配置し、紫外線−オゾンエネルギーにより連続的に2分間処理して、銀インクフィルム中のバインダー分散剤を除去した。試料Bをホットプレートに置き、180℃で5分間加熱し、微粒子を焼結した。
【0101】
比較例3の試料を上述したとおりにして分析した。結果を以下の表に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
マイクロ波エネルギーによる等の誘導加熱せずに、UV−オゾン処理のみにより、銀インクのバインダーを除去した比較例3の試料Aは、低い導電率を示し、対照例の導電率に比べて導電率は大幅に増加しなかった。比較例3の試料Bについて、UV−オゾン処理の2分後の追加の加熱で導電率は増加しなかった。しかしながら、試料Bについての銀フィルムの得られた導電率は、それでも、アルゴンプラズマおよびマイクロ波エネルギーにより処理した実施例1Aの銀フィルムの導電率よりそれでも低く、酸素プラズマおよびマイクロ波エネルギーにより処理した実施例1Bの銀フィルムの導電率より低かった。ただし、比較例3の試料Bの基板は加熱後変形したことが観察された。誘導加熱をUV−オゾン処理と同時に実施した場合には、微粒子層の導電率は改善するものと考えられる(比較例3の試料の導電率に比べて)。
【0104】
実施例1から、PET基板の銀フィルムを、プラズマガス(例えば、アルゴンまたは酸素)およびマイクロ波加熱を同時に用いて処理すると、代替の比較例の方法に比べて、最高の導電率性能を示した。さらなるポリマーフィルム基板は、実施例1Aおよび1Bにおいて変形したり歪んだりしなかった。
【0105】
実施例2
銀ナノ粒子のパターンのいくつかの試料を、ポリマーフィルムに形成した。エラストマースタンプを用いて、ポリマーフィルム上に、銀の所望のパターンの反対であるマスキング材料のパターンを印刷し、銀ナノ粒子インク組成物を、少なくともマスキングされていない領域に適用し、マスキング材料を除去した。銀ナノ粒子は、機能ソースドレインレベルの薄膜トランジスタを提供することのできる可撓性ポリマーフィルム基板上にパターンに形成された。
【0106】
マスター作製:
ヘキサメチルジシラザン薄層(HMDS)(Aldrich製)を、2インチ(5.1cm)のシリコンウェハに、3000rpmで60秒間スパンコートした。HMDSは、シリコンウェハ上のフォトレジスト材料のための接着促進剤である。Shipleyフォトレジスト、タイプ1811(Rohm and Haas製)を、HMDS層上に、3000rpmで60秒間スパンコートした。フォトレジストフィルムを、完全に乾燥するまで、ホットプレートで、115℃で1分間プリベークした。プリベークしたフォトレジストフィルムを、365nmの紫外線に、8秒間、I−ライナ(OAI Mask Aligner、型番200)に像様に露光した。露光後、フォトレジストを、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液である現像液タイプMF−319(Rohm and Haas製)で、60秒間現像した。現像したフィルムを、希釈水で洗い、窒素で乾燥し、ホットプレートで、115℃まで5分間加熱して、レリーフパターンを備えたマスターを形成した。作製したマスターのレリーフパターンは、隆起表面領域とリセス領域とを有していた。マスターの隆起表面領域は、基板上に形成された機能銀材料のパターンとなるポジ画像を形成する。パターン化フォトレジストマスターの層の厚さは、表面プロファイラ(LKA−Tencor,San Jose,CA)により測定したところ1.1ミクロンであった。
【0107】
エラストマースタンプ作製:
エラストマースタンプのための支持体を、UV硬化性の光学的に透明な接着剤、タイプNOA73(Norland Products;Cranbury,NJより購入)の層を、厚さ5ミクロンで、5ミル(0.0127cm)のMelinex(登録商標)561ポリエステルフィルム支持体上に、スピンコーティングにより、3000rpmで適用し、紫外線(350〜400nm)に、1.6ワット出力(20mワット/cm2)で、90秒間、窒素環境で露光により硬化することにより作製した。
【0108】
パーフルオロポリエーテル(PFPE)化合物、D20−DAは、Sartomerより、製品コードNTX7068として供給され、受け取ったままの状態で用いた。D20−DAは以下の構造を有している。
【0109】
【化1】

【0110】
式中、XおよびX’はHであり、不規則に分布されたパーフルオロメチレンオキシ(CF2O)およびパーフルオロエチレンオキシ(CF2CF2O)骨格繰り返しサブユニットの数を表すmおよびnは、PFPE化合物の分子量が数平均で約2000となるようなものである。D20−DAは、PFPEジアクリレートプレポリマーと認められる。
【0111】
得られる構造を有するフッ素化光開始剤を以下の反応に従って調製した。
【0112】
【化2】

【0113】
【表3】

【0114】
フッ素化光開始剤を調製する手順:
500mLの丸底フラスコに、α−ヒドロキシメチルベンゾイン(20.14g)、トリエチルアミン(Fluka、8.40g)および塩化メチレン(100mL)を添加した。混合物を窒素正圧、室温で磁気的に攪拌した。別のフラスコに、HFPOダイマー酸フッ化物(32.98g)およびFreon−113(CFCl2CF2Cl、Aldrich、60mL)を添加した。酸フッ化物溶液を、攪拌しているα−ヒドロキシメチルベンゾイン溶液に、4〜5℃で、30分間にわたって、滴下して加えて、発熱反応を制御した。添加完了後、反応ポットを、2.5時間、室温で攪拌した。
【0115】
反応物を4×500mLの飽和NaCl溶液で洗った。有機層をMgSO4で乾燥し、セリット/塩化メチレンパッドでろ過した。TLC分析によれば、少量の出発材料が、粗生成物に残ったことが示された。生成物を、真空で濃縮してから、ヘキサン(100mL)に溶解した。この溶液をシリカゲルに予備吸収させ、90:10ヘキサン:EtOAc溶離剤を用いてシリカカラムを通して洗った。所望の生成物を、ジアステレオマー(33g、収率72%)の混合物である淡黄色油として単離された。
【0116】
PFPEジアクリレートプレポリマー(MW2000)および1重量%のフッ素化光開始剤を混合することにより、エラストマースタンプ組成物を作製した。混合物を、0.45マイクロメートルPTFEフィルタを用いてろ過した。ろ過したプレポリマーを注いで、レリーフパターンを有する作製したマスターの側部に層を形成した。支持体を、マスターの反対のPFPEプレポリマー層に配置して(空気層界面)、接着剤が層と接触するようにした。PFPE層を、支持体を通して、365nmI−ライナ(17mW/cm2)を用いて、10分間、窒素雰囲気下で露光して、PFPE層を硬化または重合して、スタンプを形成した。スタンプを、マスターから剥離すると、マスターにレリーフパターンの反対のレリーフ表面があった。このように、スタンプのレリーフ表面は、銀ナノ粒子の所望のパターンのネガであった。(スタンプは、隆起表面領域とリセス領域とを有しており、リセス表面領域は、最終的に形成されるであろう銀パターンに対応している。)
【0117】
マスキング材料の転写
Covion Super−Yellow(商標)、置換ポリフェニレン−ビニレン−1−4コポリマー(Merck製)の0.5重量%溶液のマスキング材料を、トルエンに溶解し、1.5−ミクロンPTFEフィルタを用いてろ過した。マスキング材料溶液を、作製したPFPEスタンプのレリーフ表面に、3000rpmで、60秒間、スパンコートした。溶液は、全レリーフ表面を被覆し、空気中、室温で約1分間乾燥させた。基板、5ミルのMelinex(登録商標)フィルムタイプST504を、65℃に維持したホットプレートに置いた。マスキング材料の層を有するPFPEスタンプを、追加の圧力を加えずに、基板のPET側に(ホットプレート上にしたままで)ラミネートした。スタンプおよび基板をホットプレートから外し、スタンプを、室温で基板から分離した。エラストマースタンプのレリーフパターンの隆起表面のマスキング材料は、基板に転写して、基板上にマスキングパターンを形成した。スタンプのリセス領域は、基板と接触しなかったため、基板は、マスキング材料のない開口領域を有していた。マスキング材料のパターンの、プロファイラにより測定した厚さは27nmであった。印刷犠牲マスキング材料のマスキングパターンは、マスター上のパターンの正パターンであった。
【0118】
微粒子組成物の適用
銀ナノ粒子インク組成物を、濾過により、対照例で記載したとおりにして作製した。銀分散液を、マスキング材料のパターンを有する基板に、3000rpmで60秒間コートした。基板の全表面は、銀分散液により被覆されていた。すなわち、銀材料が、マスキングパターンおよび開口領域上に層として堆積した。
【0119】
マスキング材料の除去
ガラス転移温度3.3℃のポリマーラテックスを可撓性フィルム、5ミルのMelinex(登録商標)フィルムタイプST504にコーティングすることにより、接着層を有する材料捕捉要素を作製した。10%のグリシジルメタクリレート、2%のメチルアクリル酸、80%のブチルメタクリレートおよび8%のメチルメタクリレートの乳化重合により、33重量%固体のポリマーラテックスを調製した。ポリマーラテックスは水溶液であり、重量基準で蒸留水を5回添加することにより、6.6%固体まで希釈した後、0.45ミクロンのPTFEフィルタによりろ過した。スピンコーティング前、ST504フィルムのコート側を、Plasma Preen Cleaner(Terra Universal,Inc.(Fullerton,CA92831))を用いて15秒間酸素プラズマ処理し、イソプロピルアルコール、アセトンおよび蒸留水で洗い、窒素ガンを用いて乾燥した。希釈したラテックス溶液を、ST504フィルムに、3000rpmで60秒間スピンコートした。ST504にスパンコートしたラテックスフィルムを140℃で5分間対流オーブンにてアニールした。接着層の厚さは、約100nmであり、粗さは約5nmであった。
【0120】
マスキング材料のパターンおよび銀機能材料の層を備えた基板を65℃のホットプレートに配置した。接着ラテックス層が、銀機能材料の層に隣接し、接触するように、材料捕捉要素を配向し、均一な圧力で、130℃、1mm/秒で、ロールラミネーション装置(Eagle35、General Binding Corporation)を用いてラミネートして、集合体を形成した。
【0121】
65℃で材料捕捉要素を基板から剥がすと、集合体が薄い層に裂かれ、マスキング材料が基板から除去され、基板上に銀機能材料パターンが形成される。材料捕捉要素の接着層が、マスキング材料上にあった銀とマスキング材料パターンを一緒に取り除いた。接着層は、基板上にある銀機能材料および基板上に残った銀パターンは除去しなかった。
【0122】
銀材料を均一にコートして、マスキング材料上に層を形成したが、高解像度の銀パターンが基板上に作成された。最高解像度は、2ミクロンのギャップで、5ミクロンライン幅であった。
【0123】
処理
ポリマーフィルム基板に銀のパターンを含む各試料を次のようにして処理した。試料を上述した通りにして分析した。各試料の銀の抵抗率を基板の銀パターンの同じ位置で測定した。結果を以下の表に示す。
【0124】
対照例として、1つの試料を65℃まで加熱してアニールし、溶剤を銀組成物から除去した。比較例として、1つの試料をホットプレートに載せ、140℃まで1分間加熱して、銀ナノ粒子を熱焼結した。実施例として、3つの試料に、実施例1Aに記載したアルゴンプラズマおよびマイクロ波処理を、異なる時間にわたって行った。
【0125】
【表4】

【0126】
アルゴンプラズマおよびマイクロ波加熱処理によって、対照例および比較例の試料よりも改善された抵抗率を有する銀パターンが得られた。アルゴンプラズマおよびマイクロ波加熱処理時間が長くなるにつれて、銀パターンの抵抗率は減少した。抵抗率は導電率に反比例するため、アルゴンプラズマおよびマイクロ波加熱処理時間が増大するにつれ、導電率が増大するものと考えられる。実施例2A、2Bおよび2Cの各試料に用いる基板の変形または歪みは観察されなかった。例2の比較例の試料について、基板の変形または歪みは観察されなかった。
【0127】
例えば、マイクロ波エネルギーまたは無線周波数エネルギーなどの、銀ナノ粒子インクの誘導加熱によるガスプラズマ処理は、熱処理しただけの銀ナノ粒子インクまたはUV−オゾン処理銀ナノ粒子インクのいずれと比べても、低いシート抵抗率および高い導電率を示したことが分かった。ガスプラズマ処理によって、有機バインダーおよび/または界面活性剤等の分散剤が、ナノ粒子間から効率的に除去され、同時に、誘導加熱によって、ポリマーフィルム基板の変形なしに、または変形が観察されることなく、銀ナノ粒子が焼結された。
【0128】
実施例3
銀インク、ANP Co.Ltd.(Korea)製、タイプDGH−50LT 25Cを微粒子組成物として用いた。メーカーによれば、銀インクは、銀金属含量が50.1重量%、粘度2.0cP(ブルックフィールドLVDV−1+により測定)、トルエンの分散マトリックス、硬化条件250℃で30〜60分とされていた。インクは、トルエンにより13重量%まで希釈された。希釈した銀分散液を、10分間、チップ超音波装置により超音波処理し、0.2ミクロンのPTFEフィルタで2回濾過した。銀分散液組成物を、ゲート層として、裏側に金のコートされたp−型シリコーンウェハに3000rpmで60秒間スパンコートした。銀分散液の層を65℃で2分間、115℃で1分間、ホットプレートでアニールして、溶剤トルエンを除去した。ポジ型フォトレジスト組成物(Shiepley製、タイプS1811)を、3000rpmで60秒間銀フィルムの上にスパンコートした後、65℃で120秒、115℃で60秒予備焼成した。銀層を例1の対照例について記載したとおりにして試験した。銀層は、溶剤除去後、導電性ではなかった。
【0129】
ガラスフォトマスクをフォトレジストの上部表面と接触させて、フォトレジストを8秒間uv露光した後、現像剤(Shiepley製MF−319)で20秒間、露光領域を現像することにより、パターンをウェハのフォトレジスト層に形成した。得られたウェハは、銀組成物層、銀層にフォトレジストのパターンを含んでいた。フォトレジストのパターンは、銀層に形成されるソース−ドレインのパターンに対応していた。オープンソース−ドレインパターン、すなわち、フォトレジストのパターンにより被覆されていない銀層を、Plasmatic System, Inc.(North Brunswick,NJ)製Plasma−Preen System、型番II973のプラズマチャンバにおいて、アルゴンガスフローによりプラズマ処理した。これは、3.0SCFH(毎時標準立方フィート)(1425sccm(毎分標準立方センチメートル))のアルゴンガス流量および295W(ワット)で3分間、588W(ワット)で2分間、マイクロ波(2.45GHz)電力で、真空条件下(3トル)で操作された。プラズマ処理後に残ったフォトレジスト(パターン)を、アセトンを用いて洗い出した。アルゴンプラズマ処理後、ウェハの銀層は、フォトレジストにより被覆されていないソース−ドレインパターンの開口領域である導電性銀の領域と、プラズマ処理中フォトレジストによりブロックされた非導電性銀の領域とを有していた。銀層の非導電性領域は、ウェハの銀層の導電性領域と共に残った。
【0130】
グローブボックスでのオクタデシルトリクロロシラン(OTS)処理
以下の処理を、窒素ガスを充填したグローブボックスで行った。ソース−ドレイン銀パターンの導電性領域と非導電性領域とを有する銀層を備えたウェハをグローブボックスに入れた。1.62mlのOTSを、30mlのトルエンに広口瓶で加えることにより、トルエン中0.1MのOTS溶液を調製した。ウェハはOTS溶液に20分間入れた。20分後、ウェハを取り出し、トルエンで濯いでから、エアガンにより乾燥した。ウェハを60℃のホットプレートに2分間入れた。
【0131】
ポリマー半導体−グローブボックス中でのスピンコーティング
以下の工程を、窒素ガスを充填したグローブボックスで行った。ポリマー半導体(ポリチオフェン、Xerox製PQT)のジクロロベンゼン(Xerox製XSC−2.2)中0.3重量%溶液を、Whatman1.0ミクロンGMFフィルタを通して、シンチレーション瓶へ濾過した。ソース−ドレイン銀パターンを備えたウェハを、ポリマー半導体溶液で完全に被覆されたスピンチャックに配置し、5分間静置した。スピンコーティングを1000rpmで90秒間行った。コートしたら、試料を85℃のホットプレートに配置し、85℃で2時間保持した。次に、ホットプレートを、5℃/分で140℃まで上昇するように設定した。試料を140℃で30分間保持した。140℃での30分のアニール後、ホットプレートを5℃/分で23℃まで下降するように設定し、室温まで除冷した。
【0132】
電気的測定
ウェハのポリマー半導体コートされたソース−ドレイン銀パターンの電気的活性を、SUSプローブステーション(SUS MicroTec AG,Garching/Hochbrueck,Germany)を用いて、顕微鏡光および室内光は電気的測定に影響するため、暗所で測定した。20ミクロンのチャネル長さを有するソース−ドレインは、0.0016cm2/Vsecおよびオン/オフ比36.8の線形の移動度を示した。
【0133】
この選択的プラズマ処理方法には、未処理銀は導電性でないため、プラズマ処理していない銀を除去する必要なく、導電性ソース−ドレインパターンを製造するという利点がある。パターニング方法において、導電性銀のソース−ドレインパターンを作製するのに、銀層のリフト−オフまたはエッチングを必要としない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)分散剤に分散した微粒子を含む組成物の層を基板に適用する工程、
b)前記層を帯電ガスで処理して、前記分散剤を前記層から除去する工程、及び
c)誘導加熱して、前記微粒子の作用結合を形成する工程
を含む微粒子の薄層を基板に形成する方法。
【請求項2】
前記処理と加熱の工程が同時になされる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理工程が、プラズマによるものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プラズマ処理が、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素、空気、亜酸化窒素、アンモニア、二酸化炭素、酸素およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるガスによるものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理工程が、紫外線の存在下でのオゾンによるものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
誘導加熱中、前記基板を冷却することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
誘導加熱が、マイクロ波および無線周波数からなる群から選択されるエネルギーによるものである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記帯電ガスがプラズマであり、前記誘導加熱がマイクロ波エネルギーおよび無線周波数エネルギーからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記層が500ナノメートル未満の厚さを有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
微粒子が2〜500ナノメートルの粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微粒子が金属である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
誘導加熱工程が、前記微粒子を焼結または溶融するものである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記微粒子が、銀、金、銅、アルミニウム、チタン、酸化インジウム錫、酸化アンチモン錫およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分散剤が、界面活性剤、バインダーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板がポリマーフィルムである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基板が、プラスチック、ポリマーフィルム、金属、シリコン、ガラス、布地、紙およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記適用工程が、インジェクティング、注入、キャスティング、噴射、浸漬、スプレー、蒸着、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットコーティング、ローラーコーティングおよびドクターブレードコーティングからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記適用工程が、前記組成物をパターンとして前記基板に印刷することによるものである請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記適用工程が、
a)隆起表面とリセス表面とを備えたレリーフ構造を有するエラストマースタンプを提供する工程、
b)前記組成物を前記レリーフ構造に適用する工程、及び
c)前記組成物を前記基板に選択的に転写して、前記組成物のパターンを形成する工程
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物の転写が、前記隆起表面から、または前記リセス表面から行うことができる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記スタンプが、少なくとも10メガパスカルの弾性率を有する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
感光性組成物の層から前記エラストマースタンプを形成する工程をさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記微粒子の薄層が、機能パターンを含み、前記適用工程が、
a)レリーフ構造を有するエラストマースタンプを提供する工程、
b)前記組成物を前記レリーフ構造に適用する工程、及び
c)前記組成物を前記レリーフ構造から前記基板に選択的に転写して、前記パターンを形成する工程
により実施される請求項1に記載の方法。
【請求項24】
処理工程b)の前に、前記方法が、
フォトレジスト材料を適用して、前記微粒子組成物層の上に配置された層を形成する工程、
前記微粒子組成物層に開口領域を形成する前記フォトレジストのパターンを形成する工程
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記パターンを形成する工程が、
前記フォトレジスト材料を化学線に像様露光する工程、及び
前記フォトレジストを現像して、部分を除去し、前記パターンを形成する工程を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記微粒子が金属である請求項24に記載の方法。
【請求項27】
処理工程b)の前に、前記方法が、前記帯電ガスに抵抗性があり、前記微粒子組成物層の上に配置されたポリマー材料を印刷して、前記微粒子組成物層に開口領域を形成する前記ポリマー材料のパターンを形成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記印刷工程が、隆起表面とリセス表面とを備えたレリーフ構造を有するエラストマースタンプにより実施される請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2011−511461(P2011−511461A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545095(P2010−545095)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/032175
【国際公開番号】WO2009/097301
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】