説明

基板の研磨方法

【課題】 層間絶縁膜、BPSG膜、STI膜を平坦化するCMP技術において、酸化珪素膜等の研磨速度の向上と、研磨傷の低減を容易に行なうことができる研磨方法を提供する。
【解決手段】 研磨の工程を研磨初期の第1研磨工程、主に平坦化を行う第2研磨工程に分け、第1研磨工程では、所定より大きい粒径の酸化セリウム粒子を含有する研磨剤を用い、第2研磨工程では、所定より小さい粒径の酸化セリウム粒子を含有する研磨剤を用いる。さらに好ましくは、研磨剤は、N−置換ポリオキシエチレン化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造技術である、基板表面の平坦化工程、特に、層間絶縁膜、BPSG(ボロン、リンをドープした二酸化珪素膜)膜の平坦化工程、シャロートレンチ分離(STI)の形成工程等において使用される、研磨剤を用いた基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のULSI半導体素子製造工程では、高密度・微細化のための加工技術が研究開発されており、その1つであるCMP(ケミカルメカニカルポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、層間絶縁膜の平坦化、STI形成、プラグ及び埋め込み金属配線形成等を行う際に、必須の技術となってきている。
【0003】
従来、半導体素子の製造工程において、プラズマ−CVD(化学気相成長)、低圧−CVD(化学気相成長)等の方法で、酸化珪素絶縁膜等の無機絶縁膜層が形成されており、この無機絶縁膜層を平坦化するための化学機械研磨剤として、ヒュームドシリカ系の研磨剤が一般的に検討されている。
ヒュームドシリカ系の研磨剤は、四塩化珪酸を熱分解する等の方法で粒成長させ、pH調整を行って製造している。
但し、この様な研磨剤は、研磨速度が遅いという技術課題がある。
【0004】
また、デザインルール:0.25μm以降の世代では、集積回路内の素子分離にSTIが用いられている。STIでは、基板上に成膜した余分の酸化珪素膜を除くためにCMPが使用され、任意の深さにて研磨を停止させるために、酸化珪素膜の下に研磨速度の遅いストッパ膜が形成される。
ストッパ膜には、窒化珪素等が使用され、酸化珪素膜とストッパ膜との研磨速度比が大きいことが望ましいが、従来のヒュームドシリカ系の研磨剤は、前述した酸化珪素膜とストッパ膜の研磨速度比が3程度と小さく、STI用としては実用に耐える特性を有していなかった。
【0005】
一方、フォトマスクやレンズ等のガラス表面研磨剤として、酸化セリウム研磨剤が用いられている。酸化セリウム粒子は、シリカ粒子やアルミナ粒子に比べ硬度が低く、従って、研磨表面に傷が入りにくいことから、仕上げ鏡面研磨に有用である。
また、酸化セリウム研磨剤は、シリカ研磨剤に比べ、研磨速度が速い利点がある。
【0006】
近年、高純度酸化セリウム砥粒を用いた半導体用CMP研磨剤が、多く使用されてきており、例えば、その技術は特許文献1に開示されている。
更に、研磨剤にポリオキシアルキレンアルキルエーテルを添加することで、研磨傷を低減する技術が、特許文献2に開示されている。
【0007】
また、酸化セリウム研磨剤の研磨速度を制御し、半導体基板全面にわたる平坦性を向上させるために添加剤を加えることが知られており、例えば、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−106994号公報
【特許文献2】特開2001−102333号公報
【特許文献3】特開平8−22970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような酸化セリウムを用いた研磨剤に対しても、生産性向上のために研磨時間の短縮が求められており、この実現のためには研磨速度を速くする事が必要である。また、配線やSTIのデザインルール微細化により、更なる研磨傷の低減が求められている。
【0010】
そこで、本発明は、層間絶縁膜、BPSG膜、STI膜を平坦化するCMP技術において、酸化珪素膜等の研磨時間を短縮するために研磨速度を速くして、研磨後の研磨傷低減を容易に行うことができる研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下のものに関する。
(1)以下の工程により基板を研磨する基板の研磨方法。
(a)酸化セリウム粒子を含有する研磨剤を用いて基板を研磨する工程(第1研磨工程)。
(b)工程(a)に用いた粒径よりも小さい粒径の酸化セリウム粒子を含有する研磨剤を用いて基板を研磨する工程(第2研磨工程)。
【0012】
(2)第1研磨工程用及び第2研磨工程用の研磨剤が、いずれもN−置換ポリオキシエチレン化合物を含み、そのN−置換ポリオキシアルキレン化合物のNには、複数のポリオキシアルキレン基が結合し、Nには少なくとも1つ以上のアルキル基又はアミド結合を介したアルキル基が結合している(1)に記載の基板の研磨方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、層間絶縁膜、BPSG膜、STI等を平坦化するCMP技術において、酸化珪素膜等の研磨速度を速くして研磨時間を短縮し、かつ研磨後の研磨傷低減を行うことができる、研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般に酸化セリウムは、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、しゅう酸塩のセリウム化合物を、酸化することによって得られる。
テトラエトキシシラン(TEOS)をSi源に用いたTEOS−CVD法等で形成される酸化珪素膜の研磨に使用する酸化セリウム研磨剤は、粒径が大きく、且つ結晶歪みが少ない程、即ち結晶性が良い程、高速研磨が可能であり生産性の向上ができるが、研磨傷が入りやすい傾向がある。また、粒径が小さいと、研磨速度は遅くなり生産性が下がるが、研磨傷が入りにくい傾向がある。
そこで、研磨初期の第1研磨工程において粒径が大きい研磨剤で研磨を行うことで研磨時間を短縮し、主に平坦化を行う第2研磨工程では粒径の小さい研磨剤で研磨傷を減らすことで、研磨時間の短縮と研磨傷の低減を実現する。
これより、本発明の研磨方法にて用いる酸化セリウム粒子は、その製造方法を限定するものではないが、第1研磨工程では粒径が150〜500nmであることが好ましく、第2研磨工程では粒径が1〜250nmであることが好ましい。また、第1研磨工程にて用いる酸化セリウム粒子の粒径を、第2研磨工程で用いる酸化セリウムの粒径より大きくすることで、研磨速度の向上と研磨傷の低減を実現できる。
また、半導体素子の製造に係る研磨に使用することから、アルカリ金属及びハロゲン類の含有率は、酸化セリウム粒子中10ppm以下に抑えることが好ましい。
【0015】
酸化セリウム粒子を作製する方法としては、焼成又は過酸化水素等による酸化法が使用でき、焼成温度を、350〜900℃とすることが好ましい。
【0016】
前記の方法により製造された酸化セリウム粒子は、凝集しているため、機械的に粉砕することが好ましい。粉砕方法としては、ジェットミル等による乾式粉砕や、遊星ビーズミル等による湿式粉砕方法を用いることができる。
尚、ジェットミルについては、例えば、化学工学論文集、第6巻、第5号、(1980)、527〜532頁に説明されている。
【0017】
このような酸化セリウム粒子を、主な分散媒である水中に分散させる方法としては、通常の攪拌機による分散処理の他に、ホモジナイザ、超音波分散機、湿式ボールミル等を用いることができる。
【0018】
前記の方法により分散された酸化セリウムを、更に微粒子化する方法として、酸化セリウム分散液を長時間静置することで大粒子を沈降させ、上澄みをポンプで汲み取る沈降分級法が用いられる。
他に、分散媒中の酸化セリウム粒子同士を、高圧力で衝突させる高圧ホモジナイザを使用する方法も使用できる。
【0019】
研磨剤中の酸化セリウム粒子の平均粒径は、1〜500nmであることが好ましく、第1研磨工程では150〜500nmであることが好ましく、第2研磨工程では粒径が1〜250nmであることが好ましい。酸化セリウム粒子の平均粒径が1nm未満であると、研磨速度が遅くなる傾向があり、500nmを超えると、研磨する膜に傷がつきやすくなる傾向がある。また、第1研磨工程で用いる酸化セリウム粒子の粒径を、第2研磨工程で用いる酸化セリウムの粒径より大きくすることで、研磨速度を速くする事と研磨傷の低減を実現できる。
尚、ここで述べる酸化セリウム粒子の平均粒径とは、レーザ回折式粒度分布計で測定したD50の値(体積分布のメジアン径、累積中央値)をいう。
【0020】
研磨剤は、例えば、酸化セリウム粒子と、分散剤と、水とを配合して粒子を分散させ、更に水溶性高分子とN−置換ポリオキシアルキレン化合物を添加することによって得られる。
酸化セリウム粒子の濃度は、研磨剤100質量%当たり、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは、0.5〜1.5質量%である。酸化セリウム粒子の濃度が低すぎると、研磨速度が遅くなる傾向があり、高すぎると、凝集し研磨傷を発生させる傾向があるためである。
【0021】
分散剤としては、例えば、水溶性陰イオン性分散剤、水溶性非イオン性分散剤、水溶性陽イオン性分散剤、水溶性両性分散剤等が挙げられる。また、共重合成分として、アクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤が好ましく、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸アミドとアクリル酸アンモニウムの共重合体等が挙げられる。
【0022】
更に、分散剤としては、共重合成分としてアクリル酸アンモニウム塩を含む高分子分散剤の少なくとも1種類と、水溶性陰イオン性分散剤、水溶性非イオン性分散剤、水溶性陽イオン性分散剤、水溶性両性分散剤から選ばれた、少なくとも1種類とを含む2種類以上の分散剤を併用してもよい。
研磨剤は、半導体素子の製造に係る研磨に使用することから、分散剤中のナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属及びハロゲン、イオウの含有率は、10ppm以下に抑えることが好ましい。
【0023】
水溶性陰イオン性分散剤としては、例えば、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、特殊ポリカルボン酸型高分子分散剤等が挙げられる。
【0024】
水溶性非イオン性分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0025】
水溶性陽イオン性分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0026】
水溶性両性分散剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0027】
これらの分散剤添加量は、スラリ状の研磨剤中の粒子の分散性及び沈降防止、更に研磨傷と分散剤添加量との関係から、酸化セリウム粒子100質量%に対して、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
分散剤の重量平均分子量は、100〜150,000が好ましく、1,000〜20,000がより好ましい。分散剤の重量平均分子量が100未満の場合は、酸化珪素膜あるいは窒化珪素膜を研磨するときに、十分な研磨速度が得られにくく、分散剤の重量平均分子量が150,000を超えた場合は、粘度が高くなり、研磨剤の保存安定性が低下する場合があるからである。
尚、本発明において重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定し、標準ポリオキシエチレン換算した値である。
【0028】
また、N−置換ポリオキシアルキレン化合物としては、そのN−置換ポリオキシアルキレン化合物のNには、複数のポリオキシアルキレン基が結合し、Nには少なくとも1つ以上のアルキル基又はアミド結合を介したアルキル基が結合しているものが好ましく、例えば、ジポリオキシエチレンアルキルアミン、ジポリオキシエチレンアルキルジアミン、ジポリオキシエチレンアルキルアミド等があげられ、これらは2種類以上を併用することもできる。
【0029】
水溶性高分子としては、例えば、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン及びプルラン等の多糖類;ポリアクリル酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマー等が挙げられる。
これら水溶性高分子の重量平均分子量は、500以上が好ましい。また、これらの配合量は、研磨剤100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲が好ましい。
【0030】
研磨剤は、酸化セリウム粒子、分散剤、及び水からなる酸化セリウムスラリと、水溶性高分子、N−置換ポリオキシアルキレン化合物を含む添加液とに分けた二液式の研磨剤として保存しても、また予め、水溶性高分子及びN−置換ポリオキシアルキレン化合物が含まれた一液式の研磨剤として保存しても、安定した特性が得られる。
酸化セリウムスラリと添加液とを分けた二液式研磨剤として保存する場合、これら二液の配合を任意に変えられることにより平坦化特性と研磨速度の調整が可能となる。
二液式研磨剤で研磨する場合、添加液は、酸化セリウムスラリと別の配管で送液し、これらの配管を合流させて供給配管出口の直前で混合して研磨定盤上に供給する方法か、研磨直前に酸化セリウムスラリと混合する方法を用いることができる。
【0031】
研磨剤は、所望のpHに調整して研磨に供することができる。pH調整剤に制限はないが、半導体研磨に使用される場合には、アルカリ金属化合物類よりも、アンモニア水、酸成分が好適に使用される。pH調整は、予めアンモニアで部分的に中和された水溶性高分子のアンモニウム塩を使用することができる。
研磨剤のpHは、3〜10が好ましく、pHが低すぎても高すぎても研磨剤の保存安定性を低下させる傾向があり、傷発生の原因となる恐れがある。
【0032】
研磨剤のpHは、pHメータ(例えば、横河電機株式会社製のModel PH81(商品名))で測定することができる。測定は、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.21(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液pH:6.86(25℃))を用いて、2点校正した後、電極を研磨剤に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。
【0033】
本発明にて述べる研磨方法は、被研磨膜を形成した基板を研磨定盤の研磨布に押し当て加圧し、前記研磨剤を被研磨膜と研磨布との間に供給しながら、基板と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨膜を研磨する。
【0034】
基板としては、半導体素子製造に係る基板、例えば回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板上に無機絶縁層が形成された基板が挙げられる。そして、被研磨膜としては、前記無機絶縁層、例えば、酸化珪素膜層あるいは窒化珪素膜層及び酸化珪素膜層等が挙げられる。
このような半導体基板上に形成された酸化珪素膜層あるいは窒化珪素膜層を、前記研磨剤で研磨することによって、酸化珪素膜層表面の凹凸を解消し、半導体基板全面にわたって平滑な面とすることができる。
また、研磨剤は、シャロートレンチ分離にも使用できる。シャロートレンチ分離に使用するためには、酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の比、酸化珪素膜研磨速度/窒化珪素膜研磨速度が、10以上であることが好ましい。この比が10未満では、酸化珪素膜研磨速度と窒化珪素膜研磨速度の差が小さく、シャロートレンチ分離をする際、所定の位置で研磨を停止しにくくなるためである。この比が10以上の場合は、研磨の停止が容易になり、シャロートレンチ分離により好適である。また、シャロートレンチ分離に使用するためには、研磨時に傷の発生が少ないことが好ましい。
【0035】
以下、無機絶縁層が形成された半導体基板の場合を例に挙げて、研磨方法を説明する。
【0036】
研磨する装置としては、半導体基板等の被研磨膜を有する基板を保持するホルダーと、研磨布(パッド)を貼り付け可能で、回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある研磨定盤と、を有する一般的な研磨装置が使用でき、例えば、株式会社荏原製作所製研磨装置:型番EPO−111等が使用できる。
研磨布としては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等が使用でき、特に制限がない。また、研磨布には、研磨剤が溜まるような溝加工を施すことが好ましい。
研磨条件に制限はないが、定盤の回転速度は、半導体基板が飛び出さないように200回転/分以下の低回転が好ましく、半導体基板にかける圧力(加工荷重)は、研磨後に傷が発生しないように100kPa以下が好ましい。
研磨している間は、研磨布に研磨剤をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨剤で覆われていることが好ましい。
【0037】
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落として、乾燥させることが好ましい。
このように被研磨膜である無機絶縁層を、研磨剤で研磨することによって、表面の凹凸を解消し、半導体基板全面にわたって平滑な面が得られる。平坦化されたシャロートレンチを形成した後は、酸化珪素絶縁膜層の上に、アルミニウム配線を形成し、その配線間及び配線上に再度酸化珪素絶縁膜を形成後、研磨剤を用いて再度研磨して平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の層数を有する半導体基板を製造することができる。
【0038】
N−置換ポリオキシアルキレン化合物を研磨剤に添加することで、被研磨膜(酸化珪素膜)の研磨後の研磨傷を低減することができる。尚、N−置換ポリオキシアルキレン化合物を添加しても、添加しない研磨剤と研磨速度については変化がない。
【0039】
研磨剤が使用される無機絶縁膜の作製方法としては、低圧CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。低圧CVD法による酸化珪素膜形成は、Si源としてモノシラン:SiH、酸素源として酸素:Oを用いる。このSiH−O系酸化反応を、400℃以下の低温で行わせることにより無機絶縁膜が得られる。場合によっては、CVD後1000℃又はそれ以下の温度で熱処理される。
高温リフローによる表面平坦化を図るために、リン:Pをドープするときには、SiH−O−PH系反応ガスを用いることが好ましい。
プラズマCVD法は、通常の熱平衡下では高温を必要とする化学反応が低温でできる利点を有する。
プラズマ発生法には、容量結合型と誘導結合型の2つが挙げられる。
反応ガスとしては、Si源としてSiH、酸素源としてNOを用いたSiH−NO系ガスとテトラエトキシシラン(TEOS)をSi源に用いたTEOS−O系ガス(TEOS−プラズマCVD法)が挙げられる。基板温度は、250〜400℃、反応圧力は、67〜400Paの範囲が好ましい。
酸化珪素膜は、リン、ホウ素等の元素がドープされていても良い。
同様に、低圧CVD法による窒化珪素膜形成は、Si源としてジクロルシラン:SiHCl、窒素源としてアンモニア:NHを用いる。このSiHCl−NH系酸化反応を、900℃の高温で行わせることにより得られる。
プラズマCVD法は、反応ガスとしては、Si源としてSiH、窒素源としてNHを用いたSiH−NH系ガスが挙げられる。基板温度は、300℃〜400℃が好ましい。
【0040】
本発明の研磨方法は、半導体基板に形成された酸化珪素膜だけでなく、各種半導体装置の製造プロセス等にも適用することができる。
例えば、所定の配線を有する配線板に形成された酸化珪素膜、ガラス、窒化珪素等の無機絶縁膜、ポリシリコン、Al、Cu、Ti、TiN、W、Ta、TaN等を主として含有する膜、フォトマスク・レンズ・プリズム等の光学ガラス、ITO等の無機導電膜、ガラス及び結晶質材料で構成される光集積回路・光スイッチング素子・光導波路、光ファイバーの端面、シンチレータ等の光学用単結晶、固体レーザ単結晶、青色レーザLED用サファイヤ基板、SiC、GaP、GaAs等の半導体単結晶、磁気ディスク用ガラス基板、磁気ヘッド等を研磨することができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
〔酸化セリウムスラリ1の作成〕
酸化セリウム粉末:200.0gと、脱イオン水:795.0gとを混合し、ポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量:8000、40質量%):5gを添加して、攪拌しながら超音波分散を行なった。超音波周波数は、400kHzで、分散時間20分で行なった。
その後、1リットル容器に1kgの酸化セリウム分散液を入れて静置し、沈降分級を行なった。
分級時間:4時間後、容器底からの高さ10mm以上の上澄みをポンプでくみ上げた。得られた上澄みの酸化セリウム分散液を、次いで固形分濃度が5質量%になるように、脱イオン水で希釈して酸化セリウムスラリ1を得た。
酸化セリウムスラリ中の平均粒径を測定するため適当な濃度に希釈し、レーザ回折式粒度分布計Master Sizer Microplus(Malvern社製、商品名)を用い、屈折率:1.93、吸収:0として、測定したところ、D50の値は、280nmであった。
〔酸化セリウムスラリ2の作成〕
沈降分級で、分級時間を15時間にする事以外は、研磨液1の作成と同様に研磨液を作成し、酸化セリウムスラリ2を得た。
また、研磨剤中の粒子の平均粒径を、レーザ回折式粒度分布計で測定するために、適当な濃度に希釈して測定した結果、D50の値は200nmであった。
【0043】
水溶性高分子としてポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量:8000、40質量%):23gと、添加剤として、N−置換ポリオキシアルキレン化合物であるアミラジンD(ジポリオキシエチレンアルキルアミン、第一工業製薬株式会社製、商品名):0.3g、脱イオン水:2677gを混合し、アンモニア水(25質量%)にてpH4.8に調整した。
更に前記の酸化セリウムスラリ1及び2(固形分:5質量%):300gを添加して、第1研磨工程用研磨剤および第2研磨工程用研磨剤(固形分:0.5質量%)を作製した。この研磨剤pHはそれぞれ5であった。
また、研磨剤中の粒子の平均粒径を、レーザ回折式粒度分布計で測定するために、適当な濃度に希釈して測定した結果、D50の値は、第1研磨工程用研磨剤は280nm、第2研磨工程用研磨剤は200nmであった。
【0044】
(絶縁膜層の研磨)
研磨試験ウエハとして、P−TEOS(プラズマ−テトラエトキシシラン)によるSiO膜形成ウエハ(直径:200mm)を用いた(SiO膜厚:1000nm)。
研磨装置(株式会社荏原製作所製研磨装置:型番EPO−111)の、保持する基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーに前記研磨試験ウエハをセットし、研磨装置の直径600mmの研磨定盤に、多孔質ウレタン樹脂製の研磨布(溝形状=パーフォレートタイプ:Rohm and Haas社製、型番IC1000)を貼り付けた。更に前記ホルダーを、被研磨膜である絶縁膜(酸化珪素被膜)面を下にして載せ、加工荷重を350gf/cm(34.3kPa)に設定した。
定盤上に前述した第1研磨工程用研磨剤を200ミリリットル/分の速度で滴下しながら、定盤とウエハとをそれぞれ50回転/分で作動させて、30秒間研磨試験ウエハを研磨した。その後、第1研磨工程用研磨剤と同様に第2研磨工程用研磨剤を滴下しながら、30秒間研磨試験ウエハを研磨した。
研磨後のウエハは、純水で良く洗浄後、乾燥した。
その後、レーザ散乱式表面欠陥検査装置(アプライドマテリアル株式会社製、商品名:Complus3T)を用いて、ウエハ表面の欠陥位置を測定し、その欠陥を電子顕微鏡式欠陥検査装置(アプライドマテリアル株式会社製、商品名:SEMVisionG3)を用いて観察し、0.2μm以上の研磨傷数を測定した。
また、研磨前と研磨後のSiO膜厚を、光学式膜厚測定器(ナノメトリクス株式会社製、商品名:ナノスペックAFT5100)で測定し、研磨前の膜厚から研磨後の膜厚を引いた値を研磨速度(単位:nm/分)とした。
表1に得られた結果(研磨後ウエハの研磨傷数:0個/ウエハ、研磨速度:403nm/分)を示す。
【0045】
(実施例2)
水溶性高分子としてポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量:8000、40質量%):23gと、脱イオン水:2377gを混合し、アンモニア水(25%)にてpH4.8に調整した。添加剤は加えなかった。
更に実施例1にて作製した酸化セリウムスラリ1および2(固形分:5質量%):300gを添加して、第1研磨工程用研磨剤および第2研磨工程用研磨剤(固形分:0.5質量%)を作製した。
研磨剤pHは5、また、研磨剤中の粒子の平均粒径を、レーザ回折式粒度分布計で測定するために、適当な濃度に希釈して測定した結果、D50の値は、第1研磨工程用研磨剤は280nm、第2研磨工程用研磨剤は200nmであった。
【0046】
(絶縁膜層の研磨)
上記で作製した研磨剤を用いた以外は実施例1と同様に評価用の研磨試験ウエハの研磨を行い、表1に示す結果(研磨傷数:15個/ウエハ、研磨速度:407nm/分)を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
(比較例1)
水溶性高分子としてポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量:8000、40質量%):23gと、添加剤としてアミラジンD:0.3g、脱イオン水:2377gを混合し、アンモニア水(25%)にてpH4.8に調整した。
更に実施例1にて作製した酸化セリウムスラリ2(固形分:5質量%):300gを添加して、第1研磨工程用研磨剤および第2研磨工程用研磨剤(固形分:0.5質量%)を作製した。
研磨剤pHは5、また、研磨剤中の粒子の平均粒径を、レーザ回折式粒度分布計で測定するために、適当な濃度に希釈して測定した結果、D50の値は、第1研磨工程用研磨剤、第2研磨工程用研磨剤いずれも200nmであった。
【0049】
(絶縁膜層の研磨)
上記で作製した研磨剤を用いた以外は実施例1と同様に評価用の研磨試験ウエハの研磨を行い、前記表1に示す結果(研磨傷数:1個/ウエハ、研磨速度:246nm/分)を得た。
第1研磨工程で、第2研磨工程と同じ小さい粒径の酸化セリウムを含有する研磨剤を用いると、研磨速度が低くなることが判った。
【0050】
(比較例2)
実施例1にて作製した酸化セリウムスラリ1を用いた以外は比較例1と同様に第1研磨工程用研磨剤および第2研磨工程用研磨剤(固形分:0.5質量%)を作製した。
研磨剤pHは5、また、研磨剤中の粒子の平均粒径を、レーザ回折式粒度分布計で測定するために、適当な濃度に希釈して測定した結果、D50の値は、第1研磨工程用研磨剤、第2研磨工程用研磨剤いずれも280nmであった。
【0051】
(絶縁膜層の研磨)
上記で作製した研磨剤を用いた以外は実施例1と同様に評価用の研磨試験ウエハの研磨を行い、前記表1に示す結果(研磨傷数:25個/ウエハ、研磨速度:474nm/分)を得た。
第2研磨工程で大きい粒径の酸化セリウムを含有する研磨剤を用いると、研磨剤にアミラジンDを添加しても、研磨傷数が多くなることが判った。
【0052】
(比較例3)
水溶性高分子としてポリアクリル酸アンモニウム水溶液(重量平均分子量:8000、40質量%):23gと、脱イオン水:2377gを混合し、アンモニア水(25%)にてpH4.8に調整した。添加剤は加えなかった。
更に実施例1にて作製した酸化セリウムスラリ1(固形分:5質量%):300gを添加して、第1研磨工程用研磨剤および第2研磨工程用研磨剤(固形分:0.5質量%)を作製した。
研磨剤pHは5、また、研磨剤中の粒子の平均粒径を、レーザ回折式粒度分布計で測定するために、適当な濃度に希釈して測定した結果、D50の値は、第1研磨工程用研磨剤、第2研磨工程用研磨剤いずれも280nmであった。
【0053】
(絶縁膜層の研磨)
上記で作製した研磨剤を用いた以外は実施例1と同様に評価用の研磨試験ウエハの研磨を行い、前記表1に示す結果(研磨傷数:40個/ウエハ、研磨速度:468nm/分)を得た。
第2研磨工程で大きい粒径の酸化セリウムを含有する研磨剤を用い、研磨剤にアミラジンDを添加しないと、研磨傷数が著しく多くなることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程により基板を研磨する基板の研磨方法。
(1)酸化セリウム粒子を含有する研磨剤を用いて基板を研磨する工程(第1研磨工程)。
(2)工程(1)に用いた粒径よりも小さい粒径の酸化セリウム粒子を含有する研磨剤を用いて基板を研磨する工程(第2研磨工程)。
【請求項2】
第1研磨工程用及び第2研磨工程用の研磨剤が、いずれもN−置換ポリオキシアルキレン化合物を含み、そのN−置換ポリオキシアルキレン化合物のNには、複数のポリオキシアルキレン基が結合し、Nには少なくとも1つ以上のアルキル基又はアミド結合を介したアルキル基が結合している請求項1に記載の基板の研磨方法。

【公開番号】特開2011−233748(P2011−233748A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103416(P2010−103416)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】