説明

基板クリーニング装置

【課題】基板の表面の異物をより確実に除去できる基板クリーニング装置を提供する。
【解決手段】基板クリーニング装置1は、基板11を往復移動可能な基板搬送部12と、基板搬送部12により移動される基板11の表面の異物を除去するローラユニット13と、基板搬送部12及びローラユニット13を制御するPLC14と、を備える。PLC14は、基板11を前進又は後進させるように基板搬送部12を制御して、基板11を、クリーニング回数に応じた移動回数分ローラユニット13を通過させる。基板搬送部12は、基板11を搬送するベルト21a,21bと、ベルト21a,21bを支持するプーリー22a,22b,22c,22dと、プーリー22a,22b,22c,22dを回転させるリバーシブルモータ23と、を有し、プーリー22a,22b,22c,22dの回転方向が切り換え可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板(以下、「基板」という。)製造の前工程として基板の表面の異物を除去(クリーニング)するための基板クリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板に装着する場合、基板は、基板メーカーより購入したままの状態で、基板供給装置、印刷機、マウンター、コンベア、リフロー炉及び基板収納装置を上流側から順に配置された表面実装技術(SMT)による製造ラインに供給されていた。
【0003】
そのため、基板上にはごみやほこり等の異物が付着しており、これらの異物がはんだ不良などの問題を発生する。しかし、従来、電子機器などに組み込まれる基板において、基板上に搭載されるチップ部品(電子部品)の寸法は、最小でも1.6mm(長)×0.8mm(幅)であり、あまり小さくなかった。このため、基板の製造の前段階又は途中段階において、基板上に異物が付着していても、はんだ不良による歩留まりの低下は小さく、格別な問題にならなかった。
【0004】
しかし、最近では、基板上に搭載される電子部品に、1.0mm(長)×0.5mm(幅)、0.6mm(長)×0.3mm(幅)、0.4mm(長)×0.2mm(幅)等の極小サイズのチップ部品が多くなってきており、1枚の基板上に搭載される電子部品の個数も増大し、部品実装の高密度化が図られている。そのため、基板上に付着したごみ等の異物に起因した不良が多発し、歩留まりの低下という問題を発生させている。
【0005】
ごみ等の異物に起因する不良に対する解決方法として、基板の表面の異物を除去するために基板クリーニング装置を製造ラインに組み込んでインライン化することが提案されている(例えば、特許文献1)。このような基板クリーニング装置は、上流側の基板供給装置と下流側の印刷機との間に配置され、基板を基板供給装置から印刷機に搬送する間に基板の表面の異物を除去する異物除去部を有する。
【0006】
異物除去部は、基板の表面の異物を転写する粘着ローラを有するローラユニット、又は基板の表面に回転しながら接触して基板の表面の異物を取り除くブラシを有するブラシユニットを有し、異物除去部による基板の表面の異物を除去する処理を行う。なお、ブラシユニットとローラユニットの両方を併用する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4326472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように基板の表面の異物を除去する処理を行うことにより、歩留まりは大幅に向上する。しかし、1枚の基板上に搭載される電子部品の個数の増大及び部品実装の高密度化が更に進む傾向にあり、歩留まりの一層の向上が望まれている。1枚の基板上に搭載される電子部品の個数の増大及び部品実装の高密度化が更に進んだ場合、基板の表面の異物を除去する処理の重要性がますます高くなり、ごみ等に起因する不良が生じないよう基板の表面の異物をより確実に除去することが求められる。
【0009】
本発明の目的は、基板の表面の異物をより確実に除去できる基板クリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するため、本発明の基板クリーニング装置では、基板を往復移動させて、異物を除去する処理を複数回行うことを特徴とする。
【0011】
異物を除去する処理を行う回数を増加させることにより、基板の表面の異物をより確実に除去できる。ここで、異物除去処理を複数回行うためには、複数の基板クリーニング装置を製造ラインに組み込むことが考えられるが、製造ラインが長くなるという不都合がある。また、基板の表面の異物を除去する処理を複数回行うために基板クリーニング装置に複数の異物除去部を設けた場合、基板クリーニング装置が大型化するという不都合がある。これに対して、本発明によれば、基板そのものを往復移動させて異物を除去する処理回数を増加させるため、製造ラインを長くし又は基板クリーニング装置を大型化する必要はない。
【0012】
なお、現状のプリント配線基板の製造工程では、基板クリーニング工程に要する時間は、後工程の印刷工程、マウント工程又はリフロー工程に要する時間に比べて大幅に短く、基板を往復移動させるために時間が増加しても、製造工程のスループットは低下しない。
【0013】
本発明による基板クリーニング装置は、基板を往復移動可能な基板搬送部と、基板搬送部により移動される基板の表面の異物を除去する異物除去部と、基板搬送部及び異物除去部を制御する制御部と、を備える。
【0014】
制御部は、基板を前進又は後進させるように基板搬送部を制御して、基板を、クリーニング回数に応じた移動回数分異物除去部を通過させる。
【0015】
本発明による基板クリーニング装置において、制御部は、前記クリーニング回数を設定するユーザインターフェースを有することが好ましい。
【0016】
本発明による基板クリーニング装置において、基板搬送部は、基板を搬送するベルトと、ベルトを支持するプーリーと、プーリーを回転させるモータと、を有し、プーリーの回転方向が切り換え可能であることが好ましい。
【0017】
本発明による基板クリーニング装置において、異物除去部は、基板の移動に同期して回転しながら基板の表面に加圧接触して基板の表面の異物を吸着する吸着ローラと、吸着ローラに加圧接触しながら吸着ローラの表面に吸着された基板の表面の異物を転写する粘着ローラと、を有するローラユニットであることが好ましい。
【0018】
本発明による基板クリーニング装置において、ローラユニットを基板の表面に接触する位置から離れた退避位置に移動させる移動部を更に有することが好ましい。
【0019】
本発明による基板クリーニング装置において、制御部は、ローラユニットを退避位置に移動させた状態で、基板を後進させるように制御することが好ましい。
【0020】
本発明による基板クリーニング装置において、異物除去部の上流側に設けられたブラシユニットを更に備え、ブラシユニットは、回転しながら基板の表面に接触して基板の表面の異物を取り除くブラシと、ブラシが取り除いた異物を吸引する吸引部と、を有することが好ましい。
【0021】
本発明による基板クリーニング装置において、異物除去部は、回転しながら基板の表面に接触して基板の表面の異物を取り除くブラシと、ブラシが取り除いた異物を吸引する吸引部と、を有するブラシユニットであることが好ましい。
【0022】
本発明による基板クリーニング装置において、異物除去部から上流側に基板の長さ以上離間した位置に設けられ、基板の端部の通過を検知する第1のセンサと、異物除去部から下流側に基板の長さ以上離間した位置に設けられ、基板の端部の通過を検知する第2のセンサと、を更に備え、制御部は、第1及び第2のセンサの検知信号に基づいて、基板の異物除去部における通過を検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基板の表面の異物を除去する処理回数を増加させて、基板の表面の異物をより確実に除去できる。
【0024】
また、本発明によれば、製造ラインを長くし又は基板クリーニング装置を大型化することなく基板の表面の異物を除去する処理回数を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による基板クリーニング装置を組み込んだプリント配線基板の製造ラインの全体構成を示す図である。
【図2】本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態を示す図である。
【図3】図2の基板クリーニング装置を基板供給装置側から見た図である。
【図4】本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態の動作のフローチャートである。
【図5】本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態の動作を説明するための図である。
【図6】本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態の他の動作を説明するための図である。
【図7】本発明による基板クリーニング装置の第2の実施の形態を示す図である。
【図8】本発明による基板クリーニング装置の第2の実施の形態の動作を説明するための図である。
【図9】本発明による基板クリーニング装置の第3の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による基板クリーニング装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図面中、同一構成要素には同一符号を付す。
図1は、本発明による基板クリーニング装置を組み込んだプリント配線基板の製造ラインの全体構成を示す図である。図1に示す製造ラインにおいて、基板クリーニング装置1の上流側には、基板供給装置2が配置され、基板クリーニング装置1の下流側には、印刷機3、マウンター4、コンベア5、リフロー炉6及び基板収納装置7が順に配置される。なお、コンベア5を設けない製造ライン工程もある。
【0027】
基板供給装置2は、基板クリーニング装置1に対して1枚ずつ自動的に基板を供給する。基板クリーニング装置1は、印刷機3から基板要求信号が入力され、基板の表面の異物を除去する処理が可能な状態の場合に基板供給装置2に基板供給信号を出力する。これに応じて、基板供給装置2は、基板クリーニング装置1に基板を供給する。後で説明するように、基板クリーニング装置1は、基板供給装置2から供給された基板の表面の異物を除去した後、基板を印刷機3に供給する。印刷機3は、マウンター4から基板要求信号が入力され、基板へのはんだ印刷が可能な状態の場合に基板クリーニング装置1に基板供給信号を出力する。これに応じて、基板クリーニング装置1から基板が供給され、基板クリーニング装置1から供給された基板にはんだ印刷を行い、その後、マウンター4に供給する。マウンター4は、印刷機3から供給された基板上に部品を搭載し、コンベア5を介してリフロー炉6に供給する。したがって、リフロー炉6に供給される基板は、はんだ印刷及び部品の搭載を終了した基板となる。リフロー炉6は、コンベア5を介してマウンター4から供給された基板を熱処理する。熱処理が終了した基板は、リフロー炉6から基板収納装置7に収納される。
【0028】
図2は、本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態を示す図である。図2において、基板クリーニング装置1は、基板11を往復移動させる基板搬送部12と、基板11の表面の異物を除去するローラユニット13と、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)14と、ローラユニット13を基板11の表面に接触する位置から離れた位置に移動させる移動部15と、静電除去器16a,16bと、センサ17a,17bと、を有する。
【0029】
基板搬送部12は、基板11を搬送するために基板11の両端をそれぞれ載置する2本の平行に配置されたベルト21a,21bと、ベルト21a,21bを支持するプーリー22a,22b,22c,22dと、ステップモータ等の、プーリー22aを時計回り又は反時計回りに回転させるリバーシブルモータ23と、を有する。ここで、図2において、基板11を右側から左側に移動させる方向を前進方向、すなわち上流側から下流側に移動する方向が前進方向とし、逆方向を後進方向とする。プーリー22aは、基板11を前進させる場合には反時計回りに、基板11を後進させる場合には時計回りに回転する。
【0030】
PLC14は、基板11の表面の異物を除去する処理を含む種々の処理に関する操作をユーザが行うための図示しないタッチパネル(ユーザインタフェース)を有し、タッチパネルによって行われた操作及びセンサ17a,17bからの信号に基づいてローラユニット13、移動部15及びリバーシブルモータ23を制御する制御部として機能する。
【0031】
ローラユニット13は、異物除去部として機能し、基板11の表面に回転しながら加圧接触して基板の表面の異物を吸着する2本の吸着ローラ31a,31bと、吸着ローラ31a,31bに加圧接触しながら吸着ローラ31a,31bによって吸着された基板11の表面の異物を転写する粘着ローラ32と、を有する。
【0032】
吸着ローラ31a,31bは、シリコンゴム系又は他のゴム系樹脂により形成される。吸着ローラ31a,31bは、導電性又は非導電性のいずれでもよいが、吸着ローラ31a,31bが基板11に接触して摩擦することにより静電気が基板11の表面上に発生するのを防止するには、吸着ローラ31a,31bが導電性を有することが好ましい。吸着ローラ31a,31bは、シリコンゴム系又は他のゴム系樹脂の濡れ性により基板11の表面のごみ等の異物を吸着し、基板11の表面の異物を除去する。吸着ローラ31a,31bは、その表面に粘着剤等を有しないので、吸着ローラ31a,31bから粘着剤等が基板11に付着することがない。
【0033】
粘着ローラ32は、PLC14の制御の下で図示しないモータにより反時計回りに回転駆動される。吸着ローラ31a,31bが粘着ローラ32に接触しているので、吸着ローラ31a,31bは、粘着ローラ32の回転に伴って時計回りに回転される。
【0034】
粘着ローラ32が吸着ローラ31a,31bに加圧接触することにより、基板11から吸着ローラ31a,31bに吸着されたごみ等は粘着ローラ32に転写される。したがって、吸着ローラ31a,31bの表面は、常に清浄な状態を保ち続け、基板11の表面の異物を除去する効果が持続する。
【0035】
移動部15は、PCL13の制御の下で、ローラユニット13を、基板11の表面に接触する位置と基板11から離れる退避位置との間で移動させる。これにより、基板11がローラユニット13の下を通過する際に吸着ローラ31a,31bが基板11の表面に接触する状態又は接触しない状態にすることができる。
【0036】
吸着ローラ31a,31bは、ある程度の弾力を有しており、この弾力を生かして基板11の上方から加圧接触する。このために、ローラユニット13により基板11の表面の異物を除去する直前の吸着ローラ31a,31bの下端部は、搬送されてくる基板11の上面より下方に位置している。このような状態で基板11が搬送されてくると、基板11の先端部が、先ず吸着ローラ31a又は吸着ローラ31bに突き当たる。その後、基板11は、吸着ローラ31a又は吸着ローラ31bと搬送ベルト21a,21bとの摩擦力によって、吸着ローラ31a又は吸着ローラ31bと搬送ベルト21a,21bとの間に挟みこまれ、搬送される。この搬送途中において、基板11の表面は、吸着ローラ31a,31bによって異物を除去する処理が行われる。なお、吸着ローラ31a,31bが基板11の表面の異物を除去する際に吸着ローラ31a,31bが基板11の表面に擦れないようにするために、粘着ローラ32の線速度は、ベルト21a,21bが基板11を搬送する速度と同一であるのが好ましい。
【0037】
静電除去器16aは、センサ17aとローラユニット13との間に配置され、基板11の上面の異物を除去する処理前に基板11の表面の静電気を中和し、基板11の表面の異物を除去しやすい状態にする。静電除去部16bは、ローラユニット13とセンサ17bとの間に配置され、基板11の上面の異物を除去する処理後に基板11の表面の静電気を中和し、静電気により基板11の表面に異物が再付着するのを防止する。静電除去部16a,16bは、接触型と非接触型のいずれのものも使用可能である。
【0038】
センサ17aは、ローラユニット13の端部から上流側に基板11の長さ以上離間した第1の位置に配置され、基板11の先端又は後端が第1の位置に移動したことを検知すると、PLC14に信号を送信する。センサ17bは、ローラユニット13の端部から下流側に基板11の長さ以上離間した第2の位置に配置され、基板11の先端が第2の位置に移動したことを検知すると、PLC14に信号を送信する。本実施の形態では、ローラユニット13の上流側の端部とセンサ17aとの間の距離及びローラユニット13の下流側の端部とセンサ17bとの間の距離をいずれも基板11の長さ以上の距離とする。
【0039】
図3は、図2の基板クリーニング装置を基板供給装置側から見た図である。図3において、図示を簡単にするために、基板クリーニング装置1の一部の構成要素であるベルト21a,21b、ローラユニット13の吸着ローラ31a及び粘着ローラ32並びに基板11以外は省略している。
【0040】
図4は、本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態の動作のフローチャートであり、図5は、本発明による基板クリーニング装置の第1の実施の形態の動作を説明するための図である。図4に示す処理フローは、PLC14にインストールされた制御プログラムをPLC14が実行することによって行われる。
【0041】
先ず、PLC14は、タッチパネルによりクリーニングモードが選択されたか否か判断する(ステップS1)。クリーニングモードの選択において、基板11をクリーニングするクリーニング回数kが設定される。ここで、クリーニング回数kが1の場合、基板11は、ローラユニット13を1回通過するのみ、すなわち前進方向に1回移動するのみである。クリーニング回数kが2の場合、基板11は、前進方向にローラユニット13を1回通過した後、後進方向にローラユニット13を通過し、再度前進方向にローラユニット13を通過する。言い換えれば、基板11は、1回の前進方向の移動とk−1回の往復移動を行う。クリーニングモードが選択された場合、PLC14は、さらにクリーニング回数をカウントするために内蔵されたカウンタ計数nを初期値“0”に設定する。
【0042】
次に、PLC14は、センサ17aから信号を受信したか否か、すなわち、図5Aに示すように、基板11の先端が第1の位置に移動したか否かを判断する(ステップS2)。
その後、PLC14は、図5Aに示すように、基板11の表面にローラユニット13を接触させるためにローラユニット13を下降させるよう移動部15を制御し、プーリー22aを反時計回りに回転させるためにリバーシブルモータ23を正転させ、かつ、粘着ローラ32を反時計回りに回転駆動するために図示しないモータを正転させる(ステップS3)。また、PLC14は、静電除去器16a及び16bを動作せる。ステップS3で、基板11は、ベルト21a,21bにより矢印a方向(前進方向)に搬送され、図5Bに示すように、ローラユニット13により基板11の表面の異物を除去する処理が行われる。なお、リバーシブルモータ23の正転は、基板11の先端が第1の位置に移動した直後に開始しても基板11がベルト21a,21aに配置されてから開始してもよい。
【0043】
次に、PLC14は、センサ17bから信号を受信したか否か、すなわち、図5Cに示すように基板11の先端が第2の位置に移動したか否かを判断する(ステップS4)。基板11の先端が第2の位置に移動した場合、PLC14は、リバーシブルモータ23及び粘着ローラ32を回転駆動するためのモータを停止し(ステップS5)、静電除去器16a及び16bの動作を停止する。基板11の上面の異物を除去する処理前に基板11の表面全体の静電気が静電除去器16aにより中和され、基板11の表面全体の異物が除去されやすくなる。また、基板11の上面の異物を除去する処理後に基板11の表面全体の静電気が静電除去器16bにより中和されるので、基板11は静電気が帯電していない状態になる。
【0044】
さらに、PLC14は、カウンタの計数nを1増分し(ステップS6)、計数nがk以上であるか否か判断する(ステップS7)。
【0045】
計数nがk以上である場合、設定されたクリーニング回数分のクリーニング処理が行われたことになるので、PLC14は、印刷機3から基板供給信号が入力されたか否か判断し(ステップS8)、基板供給信号が入力された場合、PLC14は、プーリー22aを反時計回りに回転させるためにリバーシブルモータ23を正転させ、基板11を印刷機3に供給し(ステップS9)、本ルーチンを終了する。
【0046】
計数nがk未満である場合、PLC14は、図5Dに示すように、ローラユニット13を上昇させるよう移動部15を制御し、プーリー22aを時計回りに回転させるためにリバーシブルモータ23を逆転させる(ステップS10)。これにより、基板11がローラユニット13の下を後進方向に移動しても、基板11の表面はローラユニット13の吸着ローラ31a及び粘着ローラ32に接触しない状態になる。
【0047】
ステップS10で、図5Eに示すように、基板11は、ベルト21a,21bにより矢印b方向(後進方向)に搬送され、ローラユニット13の下側を通過する。PLC14は、センサ17bから信号を受信したか否か、すなわち、図5Fに示すように基板11の後端が第1の位置に移動したか否かを判断する(ステップS11)。基板11の後端が第1の位置に移動した場合、PLC14は、リバーシブルモータ23停止し(ステップS12)、ステップS3に進む。
【0048】
上記のように、ステップS3では、図5Gに示すように、ローラユニット13が下降し、リバーシブルモータ23が正転し、粘着ローラ32を反時計回りに回転駆動するためのモータが回転した状態になるので、クリーニング回数に応じて、上記の動作を繰り返す。
【0049】
なお、現状のプリント配線基板の製造工程では、基板クリーニング工程に要する時間は、後工程の印刷工程、マウント工程又はリフロー工程に要する時間に比べて大幅に短く。そのため、基板クリーニング装置1で複数回のクリーニング処理を行うために、基板を往復移動させても、それによる時間増加は、製造工程のスループットに影響しない。
【0050】
また、上記の第1の実施の形態では、基板11を後進方向に移動させる時、ステップS10でローラユニット13を退避位置に移動させて、基板11の表面がローラユニット13に接触しないようにした。しかし、基板11を後進方向に移動させる時に、図6Aに示すように、ローラユニット13を退避させず、粘着ローラ32を時計回りに回転駆動して、図6Bに示すように、吸着ローラ31a,31bが基板11の表面に加圧接触するようにしてもよい。これにより、基板11が後進方向に移動する時にも、ローラユニット13による基板11の表面のクリーニング処理が行われることになる。言い換えれば、第1の実施の形態のクリーニング回数kに対して、2k−1回のクリーニング処理が行われることになる。このような動作を行うには、粘着ローラ32を回転駆動するためのモータがリバーシブルモータであることが要求される。
【0051】
なお、この場合も、図6Cに示すように、基板11の後端が第1の位置に到達したことを検出した時に、リバーシブルモータ23及び粘着ローラ32を回転駆動するためのモータを停止する。さらに、基板11を後進方向に移動させる時には、静電除去器16a及び16bを動作させることが好ましい。また、この場合も、吸着ローラ31a,31bが基板11の表面の異物を除去する際に、吸着ローラ31a,31bが基板11の表面を擦らないようにするために、粘着ローラ32の線速度は、ベルト21a,21bが基板11を搬送する速度と同一であるのが好ましい。
【0052】
また、吸着ローラ31a,31bに吸着されたごみ等は全て粘着ローラ32に転写することが好ましい。そのため、センサ17a,17bは、吸着ローラ31a,31bの底部から、基板11の長さに、吸着ローラ31a,31bの底部から粘着ローラ32との接触位置までの円弧長を加えた位置に配置することが好ましい。
【0053】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、製造ラインを長くし又は基板クリーニング装置1を大型化することなく、既存の装置の動作シーケンスを変更するだけで基板11の表面の異物を除去する処理を複数回行うことができる。また、吸着ローラ31a,31bが満遍なく基板11の表面に接触できるので、基板11の表面の異物をより確実に除去することができる。したがって、装置コストを増加せずに性能を向上でき、装置設備投資効果を高めることができる。
【0054】
図7は、本発明による基板クリーニング装置の第2の実施の形態を示す図である。図7に示す基板クリーニング装置41は、図1に示す製造ラインにおいて、基板クリーニング装置1の代わりに使用される。基板クリーニング装置41は、ローラユニット13及び移動部15の代わりにブラシユニット42を有することを除いて基板クリーニング装置1と同一構成を有する。
【0055】
ブラシユニット42は、異物除去部として機能し、基板11の表面に接触しながら回転して基板11の表面の異物を除去する2本のブラシ43a,43bと、バキュームユニット44と、を有する。
【0056】
ブラシ43a,43bは、帯電防止処理済の繊維により円筒状に形成され、基板11の表面に接触するときに基板11の表面の異物を除去する。ブラシ43a,43bは、PLC14の制御の下で図示しないモータにより時計回り及び反時計回りにそれぞれ回転駆動される。
【0057】
バキュームユニット44は、ブラシ43a,43bによって除去された基板11の表面の異物を吸引する吸引部45と、吸引部45が吸引した異物が通過するダクト46と、ダクト46を通過した異物を収集するフィルタ47と、を有する。
【0058】
第2の実施の形態において、基板供給装置2から供給された基板11の先端が第1の位置に移動した場合、PLC14は、図8Aに示すように、プーリー22aを反時計回りに回転させるためにリバーシブルモータ23を正転させ、かつ、ブラシ43a,43bをそれぞれ時計回り及び反時計回りにそれぞれ回転駆動させるために図示しないモータを駆動する。これにより、基板11は、ベルト21a,21bにより矢印a方向(前進方向)に搬送され、図8Bに示すように、ブラシユニット42により基板11の表面の異物を除去する処理が行われる。
【0059】
図8Cに示すように基板11の先端が第2の位置に移動した後、さらにクリーニング処理を行う場合には、PLC14は、図8Dに示すように、プーリー22aを時計回りに回転させるためにリバーシブルモータ23を逆転させ、基板11をベルト21a,21bにより矢印b方向(後退方向)に搬送し、図8Eに示すように、ブラシユニット42により基板11の表面の異物を除去する処理が行われ、図8Fに示すように、基板11の後端が第2の位置に移動するとリバーシブルモータ23を停止する。
【0060】
なお、第1の実施の形態と同様に、移動部15を設け、PCL13の制御の下で、ブラシユニット42を、基板11の表面に接触する位置と基板11から離れる位置との間で移動可能にし、ブラシユニット42が退避した状態で、基板11を後退方向に移動するようにしてもよい。
【0061】
第2の実施の形態によれば、製造ラインを長くし又は基板クリーニング装置41を大型化することなく基板11の表面の異物を除去する処理を複数回行うことができる。また、ブラシ43a,43bを用いているので、基板11の表面に付着した異物が多くても異物を有効に除去することができる。
【0062】
図9は、本発明による基板クリーニング装置の第3の実施の形態を示す図である。図9に示す基板クリーニング装置51は、図1に示す製造ラインにおいて、基板クリーニング装置1の代わりに使用される。基板クリーニング装置51は、前述の基板クリーニング装置1の上流側に、第2の実施の形態のブラシユニット42を設けたものである。
【0063】
第3の実施の形態では、基板供給装置2から供給された基板11がブラシユニット42によるクリーニング処理が行われた後、基板クリーニング装置1に供給されることを除けば、第1の実施の形態と同じ動作を行う。例えば、ブラシユニット42でのクリーニング処理は1回のみ行われ、基板クリーニング装置1で複数回のクリーニング処理を行う場合には、基板11は基板クリーニング装置1の両側でのみ往復移動し、ブラシユニット42の部分には移動しない。このとき、移動部15が基板クリーニング装置1のみを移動する場合には、基板クリーニング装置1とブラシユニット42は、基板11の長さ以上離れていることが好ましい。また、ブラシユニット42でのクリーニング処理を複数回行った後、基板クリーニング装置1で複数回のクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0064】
なお、第3の実施の形態で、ブラシユニット42によるクリーニング処理と基板クリーニング装置1によるクリーニング処理の両方を複数回行うようにすることも可能である。その場合には、ブラシユニット42を基板クリーニング装置1に近接して設け、基板11はブラシユニット42と基板クリーニング装置1の両側で往復移動を行う。この場合も、基板クリーニング装置1だけでなく、ブラシユニット42も退避位置に移動できるようにしてもよい。
【0065】
第3の本実施の形態によれば、製造ラインを長くし又は基板クリーニング装置51を大型化することなく基板11の表面の異物を除去する処理を複数回行うことができる。また、吸着ローラ31a,31bとブラシ43a,43bの両方を用いているので、基板11の表面に付着した異物が多くても異物を有効に除去することができ、かつ、基板11の表面の異物をより確実に除去することができる。
【0066】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、上記第1〜3の実施の形態の構成を適宜組み合わせることができる。また、図面において基板クリーニング装置の右側に基板供給装置を配置するとともに基板クリーニング装置の左側に印刷機を配置した場合について説明したが、基板クリーニング装置の右側に印刷機を配置するとともに基板クリーニング装置の左側に基板供給装置2を配置することもできる。
【0067】
また、基板の表面側のみにローラユニットとブラシユニットのうちの少なくとも一方を配置する場合について説明したが、基板の表面側と裏面側の両方にローラユニットとブラシユニットのうちのいずれか一方又は両方を配置することもできる。
【0068】
また、基板を往復移動させるために、センサを用いる代わりに、往復距離に対応する時間だけ基板を往復移動させるように基板搬送部をPLCによって制御することもできる。
【0069】
また、ローラユニット又はブラシユニットから上流側に基板の長さ以上離間した位置に設けられ、基板の端部の通過を検知する第1のセンサと、ローラユニット又はブラシユニットから下流側に基板の長さ以上離間した位置に設けられ、基板の端部の通過を検知する第2のセンサの両方を用いる場合について説明したが、基板の端部の通過を検知するためにこれらのセンサのうちのいずれか一方のみを用いることもできる。
【0070】
さらに、プーリーを時計回り又は反時計回りに回転させるリバーシブルモータをプーリーごとに設けることができ、吸着ローラの本数及びブラシの本数を2本以外の本数(例えば、1本)とすることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1,41,51 基板クリーニング装置
2 基板供給装置
3 印刷機
4 マウンター
5 コンベア
6 リフロー炉
7 基板収納装置
11 基板
12 基板搬送部
13 ローラユニット
14 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
15 移動部
16a,16b 静電除去器
17a,17b センサ
21a,21b ベルト
22a,22b,22c,22d プーリー
23 リバーシブルモータ
31a,31b 吸着ローラ
32 粘着ローラ
42 ブラシユニット
43a,43b ブラシ
44 バキュームユニット
45 吸引部
46 ダクト
47 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を往復移動可能な基板搬送部と、
前記基板搬送部により移動される前記基板の表面の異物を除去する異物除去部と、
前記基板搬送部及び前記異物除去部を制御する制御部と、を備える基板クリーニング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板を前進又は後進させるように前記基板搬送部を制御して、前記基板を、クリーニング回数に応じた移動回数分前記異物除去部を通過させる請求項1に記載の基板クリーニング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記クリーニング回数を設定するユーザインターフェースを有する請求項2に記載の基板クリーニング装置。
【請求項4】
前記基板搬送部は、前記基板を搬送するベルトと、前記ベルトを支持するプーリーと、前記プーリーを回転させるモータと、を有し、
前記プーリーの回転方向が切り換え可能である請求項1から3のいずれか1項に記載の基板クリーニング装置。
【請求項5】
前記異物除去部は、前記基板の移動に同期して回転しながら前記基板の表面に加圧接触して前記基板の表面の異物を吸着する吸着ローラと、前記吸着ローラに加圧接触しながら前記吸着ローラの表面に吸着された前記基板の表面の異物を転写する粘着ローラと、を有するローラユニットである請求項1から4のいずれか1項に記載の基板クリーニング装置。
【請求項6】
前記ローラユニットを前記基板の表面に接触する位置から離れた退避位置に移動させる移動部を更に有する請求項5に記載の基板クリーニング装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ローラユニットを前記退避位置に移動させた状態で、前記基板を後進させるように制御する請求項6に記載の基板クリーニング装置。
【請求項8】
前記異物除去部の上流側に設けられたブラシユニットを更に備え、
前記ブラシユニットは、回転しながら前記基板の表面に接触して前記基板の表面の異物を取り除くブラシと、前記ブラシが取り除いた異物を吸引する吸引部と、を有する請求項5から7のいずれか1項に記載の基板クリーニング装置。
【請求項9】
前記異物除去部は、回転しながら前記基板の表面に接触して前記基板の表面の異物を取り除くブラシと、前記ブラシが取り除いた異物を吸引する吸引部と、を有するブラシユニットである請求項1から4のいずれか1項に記載の基板クリーニング装置。
【請求項10】
前記異物除去部から上流側に基板の長さ以上離間した位置に設けられ、前記基板の端部の通過を検知する第1のセンサと、
前記異物除去部から下流側に基板の長さ以上離間した位置に設けられ、前記基板の端部の通過を検知する第2のセンサと、を更に備え、
前記制御部は、前記第1及び第2のセンサの検知信号に基づいて、前記基板の前記異物除去部における通過を検知する請求項1から9のいずれか1項に記載の基板クリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−99732(P2012−99732A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247720(P2010−247720)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500126372)ユニテク株式会社 (2)
【Fターム(参考)】