説明

基板処理システム

【課題】本発明は基板処理システムに係り、さらに詳しくは、有機化合物を基板にコーティングする過程において有機化合物の拡散によるチャンバー内部の汚染を防ぐ防汚手段を有する基板処理システムに関する。
【解決手段】本発明に係る基板処理システムは、チャンバーの内部において基板に有機物を噴射するが、前記基板から離れて冷却剤の循環する冷却通路が内部に形成された冷却プレートを有して前記基板にコーティングできずに脱落した前記有機物の拡散を防ぐ噴射部と、前記チャンバーの外側下部に冷却トラップが設けられ、延びる長手方向と交差する方向に分岐または折曲した個所が形成されたポンプ連結管を介して前記噴射部と連結されるポンプとを有するコーティングモジュールと、前記有機物がコーティングされた基板に紫外線ランプを介して紫外線を照射するが、前記基板と前記紫外線ランプとの間に配備される透過窓を加熱する加熱コイルを有する硬化モジュールと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理システムに係り、さらに詳しくは、有機化合物を基板にコーティングする過程において有機化合物の拡散によるチャンバー内部の汚染を防ぐ防汚手段を有する基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;以下、「OLED」と称する。)は、発光層が薄膜の有機化合物(conjugated polymers)からなる発光ダイオードであり、蛍光性有機化合物に電流を通過させて発光を行うエレクトロルミネセンス現象を利用する。この種のOLEDは、一般に、3色(赤色、緑色、青色)独立画素方式、色変換方式(CCM)、カラーフィルター方式などにより主としてカラーを実現し、使用する発光材料に含まれている有機物質の量に応じて、低分子OLEDと高分子OLEDとに大別される。なお、駆動方式に応じて、手動型駆動方式(passive matrix;PM)と能動型駆動方式(active matrix;AM)とに大別される。
【0003】
最近、OLEDは、携帯電話やデジタルカメラなどの小型機器のディスプレイに主として汎用されてきており、OLEDの基板の材質をガラスからフィルムへと取り替える場合に、折り返し可能なロール状にも製作可能であるため、今後、様々な分野への活用可能性が高い。
【0004】
OLEDの製造のためには、基板の上に発光層である有機化合物を多層薄膜状にコーティングする工程および外部から有機発光層の内部に酸素、水分などが流入することを防ぎ、外部の衝撃から有機発光層を保護する封止工程が求められる。
【0005】
OLEDを製造する従来の基板処理システムは、基板を並べてマスクを配置する整列モジュールと、マスクシールドモジュールと、マスク付き基板に液状の有機化合物を噴射するコーティングモジュールと、薄膜状に有機化合物がコーティングされた基板に紫外線を照射する硬化モジュールおよび硬化処理済みの基板を冷却する冷却モジュールを備える。なお、コーティングモジュールの一方の側には、基板処理空間を提供するチャンバーの内部を真空状態に維持するための圧力調節手段としてのポンプと、液状の有機物をモノマーとして供給する有機物供給部と、が連結される。
【0006】
ところが、従来のコーティングモジュールにおいて、コーティングモジュールのチャンバーの内部に備えられて基板に向けて有機物を噴射する噴射器が、チャンバーの外部のポンプとは一直線といった単純な形状に連結されるため、拡散および凝縮が行われ易いという性質を有する有機物によって噴射器とポンプを連結する管の内径が目詰まったりポンプが汚染されたりして機械的な損傷が発生するという不都合があった。なお、従来のコーティングモジュールにおいて、基板にコーティングできずに脱落した有機物がチャンバーの内部に拡散して凝縮され易く、その結果、チャンバーの内部壁が汚染されるという不都合があった。
【0007】
一方、コーティングモジュールを通過した基板に紫外線を照射して有機物がコーティングされた基板を硬化させる従来の硬化モジュールにおいては、紫外線ランプと基板との間に置かれる透過窓の温度が基板の温度よりも相対的に低いため、基板から脱落した有機物粒子が透過窓の上面にくっついてしまうという不都合があった。すなわち、透過窓が有機物によって汚染されて紫外線を透過させる透過率が低下し、基板に硬化ムラを生じさせるという不都合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した不都合を解消するために、本発明は、OLEDの製造のために有機化合物を基板にコーティングする過程において、有機化合物の拡散によるチャンバー内部の汚染を防ぐ防汚手段を有する基板処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係る基板処理システムは、処理空間を有するチャンバーと、前記チャンバーの内部において基板に有機物を噴射し、前記基板にコーティングできずに脱落した有機物の拡散を防ぐ冷却プレートを有する噴射部と、前記チャンバーの外側下部に位置し、冷却トラップ付きポンプ連結管を介して前記噴射部と連結されるポンプと、前記噴射部に有機物を供給する第1の供給部と、前記噴射部および前記冷却トラップに冷却剤を供給する第2の供給部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る基板処理システムは、処理空間を有するチャンバーと、前記チャンバーの内部に備えられて基板に紫外線を照射する少なくとも1以上の紫外線ランプと、前記紫外線ランプを収納するランプハウジングと、前記ランプハウジングの開放された上部に取り付けられて前記紫外線ランプから照射された紫外線を前記基板に向けて透過させる透過窓と、前記透過窓の周縁に沿って前記ランプハウジングに取り付けられる加熱コイルと、前記紫外線ランプおよび前記加熱コイルに電力を供給する電力供給部と、を備える。
【0011】
さらに、本発明に係る基板処理システムは、チャンバーの内部において基板に有機物を噴射するが、前記基板から離れて冷却剤の循環する冷却通路が内部に形成された冷却プレートを有して前記基板にコーティングできずに脱落した前記有機物の拡散を防ぐ噴射部と、前記チャンバーの外側下部に冷却トラップが設けられ、延びる長手方向と交差する方向に分岐または折曲した個所が形成されたポンプ連結管を介して前記噴射部と連結されるポンプを有するコーティングモジュールと、前記有機物がコーティングされた基板に紫外線ランプを介して紫外線を照射するが、前記基板と前記紫外線ランプとの間に配備される透過窓を加熱する加熱コイルを有する硬化モジュールと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チャンバーの内部において基板に向けて有機物を噴射するコーティングモジュールにおいて、コーティングモジュールの内部に備えられる噴射部に基板にコーティングできずに脱落した有機物の拡散を防ぐ冷却プレートを設けて、チャンバー内部の汚染を極力抑えることができる。また、チャンバーの外側下部に位置し、分岐状または折曲状の部分を有する冷却トラップ付きポンプ連結管を介して噴射部とポンプを連結することにより、有機物によるポンプ連結管の目詰まり現象およびポンプの損傷を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明によれば、基板を硬化させる硬化モジュールにおいて、透過窓の周縁に沿って加熱コイルを設け、透過窓を加熱することにより、基板からの有機物の脱落量を低減し、透過窓の汚染を防いで基板の全面を満遍なく硬化させることができる。
【0014】
これにより、上述した防汚手段付きコーティングモジュールおよび硬化モジュールを有する基板処理システムを通じて、有機物の拡散および凝縮によって引き起こされる部品の補修および交換を極力抑えて、補修や交換にかかる工程時間を短縮させることができ、工程コストを節減させることができる他、作業生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理システムの構成を示す図である。
【0016】
【図2】図2は、本発明に係るコーティングモジュールの内部構成を示す図である。
【0017】
【図3】図3は、図2に示す噴射器胴体の概略斜視図である。
【0018】
【図4】図4は、図2に示すポンプ連結管の斜視図である。
【0019】
【図5】図5は、本発明に係る上プレートの構造を示す斜視図である。
【0020】
【図6】図6は、本発明に係る上プレートの変形された構造を示す斜視図である。
【0021】
【図7】図7は、本発明に係る硬化モジュールの紫外線発生部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10:基板、
1000:基板処理システム、
1100:チャンバー、
1500:コーティングモジュール、
1600:硬化モジュール、
2100:ポンプ部、
2180:冷却トラップ、
2190:有機物収容部、
2200:第1の供給部、
2300:第2の供給部、
3000:噴射部、
3500:冷却プレート、
3512:冷却通路、
4000:紫外線発生部、
4100:透過窓、
4500:加熱コイル
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態による原料供給ユニットと、薄膜蒸着装置および薄膜蒸着方法を詳述する。しかしながら、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、異なる様々な形態にて実現可能であり、これらの実施形態は単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を持った者に本発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。図中、同じ符号は同じ構成要素を指し示す。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理システムの構成を示す図である。
【0025】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係る基板処理システム1000は、基板10を並べた後にマスクを配置する整列モジュール1300およびマスクシールドモジュール1400と、マスク付き基板10に液状の有機物を噴射し、有機物の拡散および凝縮による内部の汚染を防ぐ手段が設けられたコーティングモジュール1500と、紫外線(UV)を照射して薄膜状に基板10にコーティングされた有機物Mを硬化させるともに、基板10からの有機物Mの脱落を低減する加熱手段を有する硬化モジュール1600と、硬化処理済みの基板10を冷却する冷却モジュール1700および基板処理システム1000を形成する複数の構成部の駆動を制御する制御部(図示せず)を備える。なお、図示はしないが、本発明の一実施形態に係る基板処理システム1000は、チャンバー1100の外部または内部において基板10を水平に搬送するための基板搬送部を備える。
【0026】
本実施形態に係る基板処理システム1000において、複数の構成部、すなわち、整列モジュール1300、マスクシールドモジュール1400、コーティングモジュール1500、硬化モジュール1600および冷却モジュール1700などは、基板処理工程が行われる方向に沿って一列に並ぶインライン方式により連結されているものの、複数の構成部が放射状に並ぶクラスター方式によって連結されてもよく、その他の種々の方式によって連結されてもよい。
【0027】
基板処理システム1000に含まれる複数の構成部1300、1400、1500、1600、1700は、それぞれ独立した別々の基板処理空間を有しており、このために、他の構成部とは区分される独立したチャンバーを形成してもよく、あるいは、一体形のチャンバーの内部空間を複数画成してもよい。
【0028】
チャンバー1100の片面または両面には、チャンバー1100の内部に搬入されるか、あるいは、チャンバー1100の外部に搬出される基板10を統制するためのゲート部1200が形成され、ゲート部1200の開閉動作は、基板搬送部と連動して制御部によって制御される。
【0029】
本実施形態に係る基板処理システム1000において、基板10が搬入出する過程を例にとって説明すれば、コーティングモジュール1500における基板処理工程が完了すれば、制御部に設定された時間差をあけて外部ゲート1200a、1200fと内部ゲート1200b、1200c、1200d、1200eの開閉が制御されて、コーティングモジュール1500に位置している基板10は次の工程のための硬化モジュール1600に搬送され、マスクシールドモジュール1400に位置している後続基板(図示せず)はコーティングモジュール1500に搬送されるなど、連続して基板10が搬送される基板処理工程が行われる。このように複数の構成部1300、1400、1500、1600、1700において基板10の搬送が連続して行われることにより、基板処理工程にかかる時間が短縮される。もちろん、1枚の基板が複数の構成部1300、1400、1500、1600、1700に搬入されて基板処理の全工程が行われた後に搬出され、その後、新たな後続基板が複数の構成部1300、1400、1500、1600、1700に搬入されて基板処理が行われるように制御してもよい。
【0030】
図2は、本発明に係るコーティングモジュールの内部構成を示す図であり、図3は、図2に示す噴射器胴体の概略斜視図であり、図4は、図2に示すポンプ連結管の斜視図である。
【0031】
図2から図4を参照すれば、本発明に係るコーティングモジュール1500は、基板10の処理空間を提供するチャンバー1100と、チャンバー1100の内部において基板10に有機物を噴射し、基板10にコーティングできずに脱落した有機物Mの拡散を防ぐ冷却プレート3500を有する噴射部3000と、チャンバー1100の外側下部に位置し、冷却トラップ2180付きポンプ連結管2150aを介して噴射部3000と連結されるポンプ2120aと、噴射部3000に有機物Mを供給する第1の供給部2200および噴射部300と冷却トラップ2180に冷却剤を供給する第2の供給部2300を備える。
【0032】
噴射部3000は、空いている胴体の内部空間を上下に貫通する噴射口3110および吸入口3120が形成された噴射器胴体3100と、噴射器胴体3100の内部に備えられて第1の供給部2200を介して供給された有機物Mを噴射口3110を介して基板10に噴射する噴射ノズル3300と、噴射器胴体3100の内周面に沿って駆動して噴射口3110を開閉する噴射口扉3200と、からなる噴射器と、噴射器の上側に基板10の搬送方向(X方向)に沿って水平に設けられ、第2の供給部2300を介して供給された冷却剤が循環する冷却通路3514が形成された冷却プレート3500および噴射器の外側において冷却プレート3500を垂直に支持し、第2の供給部2300と冷却プレート3500の冷却通路3514を連結する冷却剤搬送通路3410が内部に形成された複数の支持棒3400を備える。
【0033】
噴射器胴体3100は、チャンバー1100の内圧が真空状態または大気圧状態に変わっても、変形や破損などが容易に起こらないように上端および下端が突き出た円形の垂直断面を有する筒状の胴体からなり、突き出た上端および下端にはそれぞれ噴射口3110と吸入口3120が形成される。噴射器胴体3100の長さL2は、基板10の幅W1に等しいかあるいはそれよりも大きく形成されて、基板10の搬送時に有機物が噴射されない領域を基板10に形成しない。ここで、噴射器胴体3100の延びる長手方向は、基板10の進行方向(X方向)と交差する。
【0034】
噴射器胴体3100の延びる長手方向に沿って噴射器胴体3100の内部を貫通して噴射ノズル3300が水平に設けられる。噴射ノズル3300の胴体の長さL1は、噴射器胴体3100の長さL2に等しいかあるいはそれよりも大きく形成されて、噴射ノズル3300の両端が噴射器胴体3100の両側面を跨ぐように突き出る。変形例として、噴射ノズル3300の両端が噴射器胴体3100の両側面に突き出ないようにする場合には、噴射ノズル3300を支持し得る噴射ノズル支持台(図示せず)を噴射器胴体3100の内部に設けて、噴射ノズル3300の長さL1を短縮してもよい。
【0035】
噴射ノズル3300は、チャンバー1100に外設されて有機物を供給する第1の供給部2200と連結される噴射液収容部3310と、噴射液収容部3310の上側から突設して有機物を噴射する噴射スリット3320と、を備える。噴射スリット3320の高さHは、噴射器胴体3100の内径rよりも小さく、且つ、噴射スリット3320の最頂部が噴射口3110と隣り合うように形成される。
【0036】
噴射口扉3200は、噴射器胴体3100に形成された噴射口3110を開閉するが、筒状の噴射器胴体3100の内周面に沿って駆動するため、曲面のプレートから形成される。
【0037】
噴射口扉3200は、基板処理工程が行われないときに、すなわち、噴射ノズル3300からの有機物Mの噴射が行われないときには噴射口3110を閉じ、基板10がコーティングモジュール1500に搬入されて噴射部3000の上側に搬送されれば、噴射器胴体3100の内周面に沿って時計回り方向または反時計回り方向に回転して噴射口3110を開く。この後、開かれた噴射口3110を介して噴射ノズル3300の噴射スリット3320から液状の有機物Mが基板10に向けて噴射される。一方、基板10が噴射部3000の上側を通過して所定の距離だけさらに搬送された後には、噴射口扉3200が初期の位置に戻って噴射口3110を再び閉じる。もちろん、基板10が噴射部3000の上側において搬送経路を往復する場合には、基板10が噴射部3000を最終的に通過するまで噴射口3110を開状態に維持する。噴射口扉3200の駆動のために、噴射器胴体3100の一方の側には噴射口扉駆動手段が配備され、噴射口扉駆動手段は、第2の供給部2300と連結されて電力を供給される。一方、噴射口扉3200の開閉動作は制御部によって制御される。
【0038】
本実施形態においては、噴射口扉3200が噴射器胴体3100の内周面に沿って回転するように構成されているが、噴射口扉3200を噴射器胴体3100の外周面に沿って回転移動するように構成してもよいことはいうまでもない。
【0039】
コーティングモジュール1500の外側下部には、噴射器胴体3100の吸入口3120と連結され、ポンプ連結管2150(2150a、2150b)、ポンプ2150(2150a、2150b)を有するポンプ部2100が配備される。本実施形態において、ポンプ連結管2150は、チャンバー1100の下部面を貫通する吸入口3120と連結される第1のポンプ連結管2150aと、チャンバー1100と直結される第2のポンプ連結管2150bと、に分岐されるが、従来のものと相違点を有する第1のポンプ連結管2150aを中心として説明する。
【0040】
第1のポンプ連結管2150aは、吸入口3120の下側に連結されて延びる長手方向が地面に垂直な方向を向き、吸入口3120と隣り合うように冷却トラップ2180が設けられる垂直連結管と、垂直連結管の延びる長手方向と交差する方向に分岐されて第1のポンプ2120aが内蔵される水平連結管2154および垂直連結管の下端に配備されて落下した有機物を寄せ集める有機物収容部2190を備える。
【0041】
第1のポンプ連結管2150aは、延びる長手方向が地面に垂直な方向をなす単純線状の胴体から構成されず、延びる長手方向に交差するように分岐部、すなわち、水平連結管2154が付設され、このような水平連結管2154の内部に第1のポンプ2120aが設けられる。すなわち、本実施形態においては、第1のポンプ連結管2150aの延びる長手方向の線上から外れた個所に第1のポンプ2120aが配設できるように分岐部を形成している。一方、変形例として、第1のポンプ連結管2150aの一部、すなわち、最下端を水平方向に折り曲げ、その折曲部に第1のポンプ2120aを配設してもよい。この場合には、後述する有機物収容部2190は、第1のポンプ連結管2150aの内部において折曲部の上部に位置することとなる。
【0042】
このように吸入口3120を介して吸入された有機物が第1のポンプ2120aの上部に直接的に落下することを防ぐことにより、有機物による第1のポンプ2120aの汚染や、汚染による機械的な損傷を防ぐことができる。
【0043】
第1のポンプ連結管2150aの上部、すなわち、吸入口3120と隣り合う部分には冷却トラップ2180が設けられて、第1のポンプ連結管2150aの内部を冷却する。
【0044】
冷却トラップ2180は、第1のポンプ連結管2150aの垂直連結管の一方の側から内部に挿入されて第2の供給部2300から供給する冷却剤が循環する冷却コイル2182と、冷却コイル2182に嵌め込まれて垂直連結管の内部において冷却領域を拡張させる複数の冷却板2184および冷却コイル2182を垂直連結管に位置させて固定する密閉蓋体2186を備える。第1のポンプ連結管2150aの圧力損失を防ぐために、円形の密閉蓋体2186と第1のポンプ連結管2150aとの間には、シール処理が施される。冷却トラップ2180を第1のポンプ連結管2150aの上部に設けることにより、有機物による第1のポンプ連結管2150aの目詰まり現象を極力抑えることができる。
【0045】
冷却コイル2182は地面に水平に多重に折り曲げられ、冷却コイル2182に挿入される冷却板2184は地面に対して垂直方向に傾設されて有機物が第1のポンプ連結管2150aに沿って落下する過程において接触する面積を拡張させて有機物をなお一層容易に冷却する。
【0046】
第1のポンプ連結管2150aの下端部には、冷却トラップ2180によって冷却された有機物が落下して寄せ集められる有機物収容部2190が配備される。
【0047】
有機物収容部2190は、第1のポンプ連結管2150aの内側下部空間に置かれる収容容器2192と、第1のポンプ連結管2150aの下端の一方の面に形成されて収容容器2192を外部に取り出すために開閉可能な容器出入扉(図示せず)と、を備える。容器出入扉と第1のポンプ連結管2150aとの間にもシール処理が施されて、圧力損失および有機物の第1のポンプ連結管2150aの外部への漏出を防ぐ。
【0048】
本実施形態においては、噴射部3000と連結された第1のポンプ連結管2150aにのみ分岐部を形成し、且つ、冷却トラップ2180を設けているが、チャンバー1100の内部空間と直結される第2のポンプ連結管2150bにも分岐部を形成し、且つ、冷却トラップを設けてもよい。
【0049】
一方、本実施形態においては、ポンプ2120(2120a、2120b)としては、ポンプ羽根を高速にて回転させて気体分子を一方向に排気する機械的な真空ポンプであるターボ分子ポンプ(turbo molecular pump;TMP)が用いられている。
【0050】
噴射器胴体3100の上端には、基板10の進行方向(X方向)に沿って水平に冷却プレート3500が置かれる。このために、噴射器胴体3100の外側面に隣接してチャンバー1100の内側下部面から垂直に複数の支持棒3400が立てられる。本実施形態においては、冷却プレート3500が四角形状を呈し、4本の支持棒3400が用いられて冷却プレート3500の下部面の角部を垂直に支持する。
【0051】
冷却プレート3500の内部に備えられた冷却手段に冷却剤を供給したり、そこから冷却剤を排出するために、冷却プレート3500を支持する支持棒3400には冷却剤の供給および排出のために通路が形成される。
【0052】
冷却プレート3500の内部には冷却手段が備えられて基板10に隣設する冷却プレート3500の温度を下げることができる。すなわち、基板10に向けて噴射された有機物粒子が基板10にコーティングできずに脱落する場合に、降温された冷却プレート3500に有機物粒子が接着または付着するようにして、有機物粒子がチャンバー1100の内部空間に拡散して凝縮されることを極力抑える。
【0053】
以下、図5および図6に基づき、冷却プレート3500を詳述する。
【0054】
図5は、本発明に係る冷却プレートの構造を示す斜視図であり、図6は、本発明に係る冷却プレートの変形された構造を示す斜視図である。
【0055】
図5および図6を参照すれば、本発明に係る冷却プレート3500は、複数の支持棒3400の上端に載置され、噴射口3110と対応する垂直の第1の貫通孔3512が胴体の中央部に穿設され、第1の貫通孔3512の両側に冷却剤搬送通路3410と連結される冷却通路3514が上部面の内側全面に形成された下プレート3510と、第1の貫通孔3512と対応する垂直の第2の貫通孔3522が穿設され、下プレート3510の上部面に取り付けられる上プレート3520と、を備える。ここで、冷却通路3514は、冷却剤が循環する経路が重なり合わない単純折曲状(図5参照)または冷却剤が循環する経路が重なり合う格子状(図6参照)を呈する。
【0056】
第1の貫通孔3512の幅W3および長さL3は、噴射ノズル3300の大きさによって決められるが、一般に、有機物の噴射時に悪影響を与えないために、第1の貫通孔3512の断面積は噴射ノズル3300における噴射スリット3320の開放された面積よりも大きく形成される。
【0057】
一体形に形成された下プレート3510は、上プレート3520のように第1の貫通孔3512を基準として画成されてもよく、逆に、上プレート3520は、下プレート3510のように中央部に第2の貫通孔3522が穿設された一体形に形成されてもよい。下プレート3510の内側上部面に形成された冷却通路3514は、冷却剤が循環できるように下プレート3510の角部を支持している複数の支持棒3400に形成された冷却剤搬送通路3410と連結される。冷却剤搬送通路3410の一方の端が冷却通路3514と連結された状態で、冷却剤搬送通路3410の他方の端はチャンバー1100の外側から冷却剤を供給する第2の供給部2300と連結される。
【0058】
上プレート3520は、冷却効率が高い金属材質からなり、これにより、冷却通路3512を循環する冷却剤によって素早く冷却される。
【0059】
冷却通路3512は、図5に示すように、冷却剤が循環する過程において循環経路が重なり合わない単純折曲状に形成されてもよく、図6に示すように、冷却剤が循環する過程において循環経路が重なり合う格子状に形成されてもよい。
【0060】
上記の冷却プレート3500を基板10と隣り合う個所に配置し、冷却プレート3500の全面を冷却することにより、基板10にコーティングできずにチャンバー1100の内部空間に拡散される有機物を冷却プレート3500において集中して凝縮する。すなわち、有機物がチャンバー1100の内部空間にむやみに拡散されてチャンバー1100の内側壁を汚染させることを冷却プレート3500により防ぐことができる。一方、図示はしないが、冷却プレート3500の周縁に沿って凝縮された有機物を収容し得る収容部を付設してもよく、収容溝を凹設してもよい。
【0061】
図7は、本発明の一実施形態に係る硬化モジュールの紫外線発生部を示す斜視図である。
【0062】
図7を参照すれば、本発明の一実施形態に係る紫外線発生部4000は、紫外線を照射する少なくとも1以上の紫外線ランプ4200と、紫外線ランプ4200を収納し、且つ、上部が開放されたランプハウジング4300と、ランプハウジング4300の開放された上部面を覆い、紫外線ランプ4200から照射された紫外線を透過させる透過窓4100と、透過窓4100の周縁を包囲する防汚手段としての加熱コイル4500と、紫外線ランプ4200および加熱コイル4500に電力を供給する電力供給部4400を備える。
【0063】
紫外線ランプ4200は、基板10の全面に紫外線を照射できるように基板10が進行する方向と交差する基板10の幅W1の方向に長く置かれ、基板10の幅W1よりも長い長さL4を有する。紫外線ランプ4200は少なくとも一つ配備されるが、紫外線ランプ4200の使用数が増えるほど基板10の硬化効率を高めることができる。ところが、この場合、設置コストが嵩んでしまうため、硬化対象の大きさ、処理速度などを考慮に入れて紫外線ランプ4200の使用数を決める。
【0064】
紫外線ランプ4200を収納するランプハウジング4300は、本実施形態において四角柱状に形成しているが、四角柱状に制限されることなく、様々な形状に製作可能である。ランプハウジング4300の上端は開放され、ランプハウジング4300の下部面は硬化モジュール1600のチャンバーの内側底面に載置される。
【0065】
ランプハウジング4300の開放された上端には透過窓4100が取り付けられて、紫外線ランプ4200から照射された紫外線が透過窓4100を透過して基板10に照射される。
【0066】
透過窓4100の周縁を包囲する加熱手段、すなわち、加熱コイル4500によって透過窓4100の昇温が行われる。従来、透過窓に加熱手段が配備されず、有機物が相対的に低温の透過窓4100に基板10から脱落して付着する場合が生じていた。このように透過窓4100の上面に脱落した有機物は、紫外線の照射を妨げる妨害物として働いて基板10を満遍なく硬化させることができなかった。
【0067】
これに対し、本発明は、紫外線発生部4000の透過窓4100の周りに加熱コイル4500を周設することにより、透過窓4100を昇温して基板10から有機物が透明窓4100の上面に脱落して付着することを低減することができる。すなわち、透過窓4100の汚染を減らすことにより、基板10の全面に紫外線を満遍なく照射することができる。
【0068】
上述した本発明に係る基板処理システムは、防汚手段付きコーティングモジュールおよび硬化モジュールを備える。基板処理システムには、本発明に係るコーティングモジュールおよび硬化モジュールが個別的に適用されてもよく、同時に適用されてもよい。
【0069】
このような基板処理システムは、基板にコーティングされる有機物がチャンバーの内部に拡散して凝縮されてチャンバーの内部を汚染させることを極力抑えたり防いだりすることができ、これにより、基板の品質を向上させ、基板処理工程を短縮させる他、メンテナンスおよび交換にかかるコストを節減して生産性を高めることができる。
【0070】
以上、本発明について上述した実施形態および添付図面に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲によって限定される。よって、この技術分野における通常の知識を持った者であれば、後述する特許請求の範囲の技術的思想から逸脱しない範囲内において本発明は様々に変形および修正可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間を有するチャンバーと、
前記チャンバーの内部において基板に有機物を噴射し、前記基板にコーティングできずに脱落した有機物の拡散を防ぐ冷却プレートを有する噴射部と、
前記チャンバーの外側下部に位置し、冷却トラップ付きポンプ連結管を介して前記噴射部と連結されるポンプと、
前記噴射部に有機物を供給する第1の供給部と、
前記噴射部および前記冷却トラップに冷却剤を供給する第2の供給部と、
を備える基板処理システム。
【請求項2】
前記噴射部は、
胴体の内部空間を上下に貫通する噴射口および吸入口が形成された噴射器胴体と、前記噴射器胴体の内部に備えられて前記第1の供給部を介して供給された有機物を前記噴射口を介して前記基板に噴射する噴射ノズルと、前記噴射器胴体の内周面に沿って駆動して前記噴射口を開閉する噴射口扉と、からなる噴射器と、
前記噴射器の上側に前記基板の搬送方向に沿って水平に設けられ、前記第2の供給部を介して供給された冷却剤の循環する冷却通路が内部に形成された冷却プレートと、
前記噴射器の外側において前記冷却プレートを垂直に支持し、前記第2の供給部と前記冷却プレートの冷却通路を連結する冷却剤搬送通路が内部に形成された複数の支持棒と、
を備える請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記噴射器胴体は、上端および下端が突き出た円形の垂直断面を有する筒状の胴体であり、前記噴射器胴体の長さは、前記基板の幅に等しいかあるいはそれよりも大きく形成され、前記噴射器胴体の延びる長手方向は前記基板の進行方向と交差する方向である請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記冷却プレートは、
前記複数の支持棒の上端に載置され、前記噴射口と対応する垂直の第1の貫通孔が胴体の中央部に穿設され、前記第1の貫通孔の両側に前記冷却剤搬送通路と連結される前記冷却通路が上部面の内側全面に形成された下プレートと、
前記第1の貫通孔と対応する垂直の第2の貫通孔が穿設され、前記下プレートの上部面に取り付けられる上プレートと、
を備えるが、
前記冷却通路は、冷却剤が循環する経路が重なり合わない単純折曲状または冷却剤が循環する経路が重なり合う格子状を呈する請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記ポンプ連結管は、
前記吸入口の下側に連結されて延びる長手方向が地面に垂直な方向を向き、前記吸入口と隣り合うように前記冷却トラップが設けられる垂直連結管と、
前記垂直連結管の延びる長手方向と交差する方向に分岐または折曲して前記ポンプが内蔵される水平連結管と、
前記垂直連結管の下端に配備されて落下した有機物を寄せ集める有機物収容部と、
を備える請求項2に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記冷却トラップは、
前記垂直連結管の一方の側から内部に挿入されて前記第2の供給部から供給する冷却剤が循環する冷却コイルと、
前記冷却コイルに嵌め込まれて冷却領域を拡張させる複数の冷却板と、
前記冷却コイルを前記垂直連結管に位置させて固定する密閉蓋体と、を備える請求項5に記載の基板処理システム。
【請求項7】
処理空間を有するチャンバーと、
前記チャンバーの内部に設けられて基板に紫外線を照射する少なくとも1以上の紫外線ランプと、
前記紫外線ランプを収納するランプハウジングと、
前記ランプハウジングの開放された上部に取り付けられて前記紫外線ランプから照射された紫外線を前記基板に向けて透過させる透過窓と、
前記透過窓の周縁に沿って前記ランプハウジングに取り付けられる加熱コイルと、
前記紫外線ランプおよび前記加熱コイルに電力を供給する電力供給部と、
を備える基板処理システム。
【請求項8】
チャンバーの内部において基板に有機物を噴射するが、前記基板から離れて冷却剤の循環する冷却通路が内部に形成された冷却プレートを有して前記基板にコーティングできずに脱落した前記有機物の拡散を防ぐ噴射部と、前記チャンバーの外側下部に冷却トラップが設けられ、延びる長手方向と交差する方向に分岐または折曲した個所が形成されたポンプ連結管を介して前記噴射部と連結されるポンプと、を有するコーティングモジュールと、
前記有機物がコーティングされた基板に紫外線ランプを介して紫外線を照射するが、前記基板と前記紫外線ランプとの間に配備される透過窓を加熱する加熱コイルを有する硬化モジュールと、
を備える基板処理システム。
【請求項9】
前記コーティングモジュールおよび前記硬化モジュールは、インライン方式またはクラスター方式により連結される請求項8に記載の基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526653(P2012−526653A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510744(P2012−510744)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002952
【国際公開番号】WO2010/131878
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511230130)エスエヌユー プレシジョン カンパニー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】