説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】上部電極の消耗を防止しつつ、処理空間におけるプラズマの密度分布の制御性を向上することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】第1の高周波電源18に接続され且つウエハWを載置するサセプタ12と、該サセプタ12と対向して配された上部電極板28と、サセプタ12及び上部電極板28の間の処理空間PSとを備え、プラズマを用いてウエハWにプラズマエッチング処理を施す基板処理装置10は、上部電極板28における処理空間PSに面する部分を覆う誘電体板27を備え、上部電極板28は、ウエハWの中央部と対向する内側電極28aと、ウエハWの周縁部と対向する外側電極28bとに分割され、内側電極28aと外側電極28bとは互いに電気的に絶縁され、内側電極28aには第2の可変直流電源33から正の直流電圧が印加されるとともに、外側電極28bは電気的に接地される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にプラズマ処理を施す基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下部電極と、該下部電極と平行に配された上部電極とを備える基板処理装置では、下部電極及び上部電極の間の処理空間にプラズマを発生させ、該プラズマによって下部電極に載置された基板、例えば、半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)へ所望のプラズマ処理を施している。
【0003】
ところで、処理空間におけるプラズマの密度分布はウエハに施されるプラズマ処理の均一性に大きく影響するため、処理空間におけるプラズマの密度分布を改善する種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば、上部電極を内側電極及び外側電極に分けて内側電極及び外側電極のそれぞれに直流電圧を印加する際、内側電極の電位と外側電極の電位と差を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。シリコンなどの半導体からなる上部電極に負の直流電圧を印加すると、正イオンが上部電極に引き込まれ、該上部電極は正イオンとの衝突によって生じた二次電子を放出し、処理空間中のプラズマに流れ込む。また、放出された二次電子を補填するように直流電源から上部電極へ電流が流れる。放出された二次電子はプラズマの密度分布を変更するが、内側電極の電位と外側電極の電位と差を設けることにより、内側電極及び外側電極のそれぞれに引き込まれる正イオンの数、引いては、放出される二次電子の数を調整してプラズマの密度分布を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−286814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、積極的に正イオンを引き込むため、内側電極及び外側電極のそれぞれが正イオンによってスパッタされて消耗し、さらに、プラズマに流れ込む電子によるジュール熱により上部電極が加熱されてより消耗が激しくなるという問題がある。
【0007】
また、上部電極や二次電子を直流的に接地させる箇所の表面状態に応じて直流電流が不安定となり、プラズマ処理の特性の再現性が低下する。すなわち、プラズマ処理の性能が安定しないという問題もある。
【0008】
なお、処理空間における二次電子の過剰状態を解消するために、二次電子を直流的に接地させる箇所、例えば、接地電極を、処理空間を含む処理室内に設ける必要もある。
【0009】
本発明の目的は、上部電極の消耗を防止するとともに、プラズマ処理の性能を安定させることができ、さらに、処理空間におけるプラズマの密度分布の制御性を向上することができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置は、高周波電源に接続され且つ基板を載置する下部電極と、該下部電極と対向して配された上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間の処理空間とを備え、該処理空間に発生したプラズマを用いて前記載置された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置において、前記上部電極における前記処理空間に面する部分を覆う誘電体部材を備え、前記上部電極は、前記載置された基板の中央部と対向する内側電極と、前記載置された基板の周縁部と対向する外側電極とに分割され、前記内側電極と前記外側電極とは互いに電気的に絶縁され、前記内側電極には直流電圧が印加されるとともに、前記外側電極は電気的に接地されることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記内側電極には可変直流電源が接続されることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記外側電極は容量可変フィルターを介して電気的に接地されることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記外側電極にも他の直流電圧が印加されることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5記載の基板処理方法は、高周波電源に接続され且つ基板を載置する下部電極と、該下部電極と対向して配された上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間の処理空間とを備え、前記上部電極は、前記載置された基板の中央部と対向する内側電極と、前記載置された基板の周縁部と対向する外側電極とに分割され、前記内側電極と前記外側電極とは互いに電気的に絶縁される基板処理装置において、前記処理空間に発生したプラズマを用いて前記載置された基板にプラズマ処理を施す基板処理方法であって、前記上部電極における前記処理空間に面する部分を誘電体部材で覆い、前記内側電極に直流電圧を印加するとともに、前記外側電極を電気的に接地させることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の基板処理方法は、請求項5記載の基板処理方法において、前記プラズマ処理の処理条件に応じて前記内側電極へ印加される直流電圧の値を変更することを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の基板処理方法は、請求項6記載の基板処理方法において、前記プラズマ処理において、前記載置された基板の中央部のエッチングレートが前記載置された基板の周縁部のエッチングレートよりも高い場合、前記内側電極へ正の直流電圧を印加することを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の基板処理方法は、請求項6記載の基板処理方法において、前記プラズマ処理において、前記載置された基板の中央部のエッチングレートが前記載置された基板の周縁部のエッチングレートよりも低い場合、前記内側電極へ負の直流電圧を印加することを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の基板処理方法は、請求項5記載の基板処理方法において、前記プラズマ処理の処理条件に応じて、前記誘電体部材を厚さ、誘電率及び表面積のうちの少なくとも1つが変更された他の誘電体部材へ変更することを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の基板処理方法は、請求項5記載の基板処理方法において、前記外側電極を、可変コンデンサを有する容量可変フィルターを介して電気的に接地させ、前記プラズマ処理の処理条件に応じて前記可変コンデンサの容量を変更させる際、前記容量可変フィルターにおける電位差を、前記容量可変フィルターの電圧特性における共振点を含む範囲で変更することを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の基板処理方法は、請求項5記載の基板処理方法において、前記外側電極にも他の直流電圧を印加し、前記プラズマ処理の処理条件に応じて前記内側電極の電位と前記外側電極の電位との差を調整することを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の基板処理方法は、請求項11記載の基板処理方法において、前記外側電極の電位が前記内側電極の電位と反対の電位となるように、前記外側電極に他の直流電圧を印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上部電極における処理空間に面する部分が誘電体部材によって覆われるので、上部電極が正イオンによってスパッタされることがない。また、誘電体部材が電子を阻止するので、プラズマへ電子流れ込まない。即ち、直流電流が流れないのでジュール熱による上部電極の加熱を防止でき、上部電極の消耗を防止できる。なお、プラズマへ電子が過剰に流れ込むことがないので、直流電流が流れることがなく、その結果、プラズマ処理の性能を安定させることができるとともに、電子を直流的に接地させる箇所を処理空間に設ける必要を無くすことができる。
【0023】
さらに、本発明によれば、上部電極の内側電極には直流電圧が印加されるとともに、上部電極の外側電極は電気的に接地されるので、内側電極及び下部電極の間の電位差と、外側電極及び下部電極の間の電位差とを異ならせることができる。電位差が変わると、プラズマの密度分布も変わるため、内側電極及び下部電極の間のプラズマの密度と外側電極及び下部電極の間のプラズマの密度とを異ならせることができる。その結果、処理空間におけるプラズマの密度分布の制御性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の基板処理装置におけるプラズマ生成用の高周波電力に関する電気回路を模式的に示す図である。
【図3】図1の基板処理装置によるエッチングレートの均一性の向上の一例を説明するための図である。
【図4】図1の基板処理装置によるエッチングレートの均一性の向上の他例を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】図5の基板処理装置におけるプラズマ生成用の高周波電力に関する電気回路を模式的に示す図である。
【図7】図6における容量可変フィルターの電圧特性を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図8の基板処理装置におけるプラズマ生成用の高周波電力に関する電気回路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。本基板処理装置は、基板としてのウエハにプラズマエッチング処理を施す。
【0028】
図1において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mのウエハWを収容するチャンバ11を有し、該チャンバ11内部には半導体デバイス用のウエハWを載置する円柱状のサセプタ12(下部電極)が配置されている。基板処理装置10では、チャンバ11の内部側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路13が形成される。この側方排気路13の途中には排気プレート14が配置される。
【0029】
排気プレート14は多数の貫通孔を有する板状部材であり、チャンバ11内部を上部と下部に仕切る仕切り板として機能する。排気プレート14によって仕切られたチャンバ11内部の上部(以下、「処理室」という。)15には後述するようにプラズマが発生する。また、チャンバ11内部の下部(以下、「排気室(マニホールド)」という。)16にはチャンバ11内部のガスを排出する排気管17が接続される。排気プレート14は処理室15に発生するプラズマを捕捉又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0030】
排気管17にはTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内部を真空引きして減圧する。なお、チャンバ11内部の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0031】
チャンバ11内部のサセプタ12には第1の高周波電源18が第1の整合器19を介して接続され、且つ第2の高周波電源20が第2の整合器21を介して接続されており、第1の高周波電源18は比較的高い周波数、例えば、40MHzのプラズマ生成用の高周波電力をサセプタ12に供給し、第2の高周波電源20は比較的低い周波数、例えば、2MHzのイオン引き込み用の高周波電力をサセプタ12に供給する。これにより、サセプタ12は下部電極として機能する。また、第1の整合器19及び第2の整合器21は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への供給効率を最大にする。
【0032】
サセプタ12の上部は、大径の円柱の先端から小径の円柱が同心軸に沿って突出している形状を呈し、該上部には小径の円柱を囲うように段差が形成される。小径の円柱の先端には静電電極板22を内部に有するセラミックスからなる静電チャック23が配置されている。静電電極板22には第1の可変直流電源24が接続されており、静電電極板22に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック23側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板22及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ、該電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック23に吸着保持される。
【0033】
また、サセプタ12の上部には、静電チャック23に吸着保持されたウエハWを囲うように、フォーカスリング25がサセプタ12の上部における段差へ載置される。フォーカスリング25はシリコン(Si)からなる。すなわち、フォーカスリング25は半導体からなるので、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング25上まで拡大する。
【0034】
チャンバ11の天井部には、処理空間PSを挟んでサセプタ12と対向するようにシャワーヘッド26が配置される。シャワーヘッド26は、誘電体板27(誘電体部材)と、上部電極板28(上部電極)と、該上部電極板28を着脱可能に釣支するクーリングプレート29と、該クーリングプレート29を覆う蓋体30とを有する。
【0035】
誘電体板27は、例えば、シリカ(SiO)、炭化ケイ素(SiC)やイットリア(Y)等のセラミックス、石英等のガラス、又は結晶の様なプラズマ耐性を有する絶縁材料からなる円板状部材であり、上部電極板28の処理空間PSに面する部分(下面)を全て覆う。上部電極板28は、半導体、例えば、シリコンからなる円板状部材である。誘電体板27及び上部電極板28には、これらを貫通し、且つ後述のクーリングプレート29におけるバッファ室と連通する多数のガス孔(図示しない)が形成される。また、クーリングプレート29の内部にはバッファ室(図示しない)が設けられ、このバッファ室には処理ガス供給管31を介して処理ガス供給装置(図示しない)から処理ガスが供給される。処理ガス供給装置は、例えば、各種ガスの流量比を適切に調整して混合ガスを生成し、該混合ガスを処理ガス供給管31、バッファ室及びガス孔を介して処理空間PSへ導入する。
【0036】
また、シャワーヘッド26の上部電極板28は、サセプタ12に載置されたウエハWの中央部と対向する内側電極28aと、該ウエハWの周縁部と対向する外側電極28bとに分割され、内側電極28a及び外側電極28bの間には、内側電極28a及び外側電極28bを電気的に絶縁する環状の絶縁性部材である絶縁リング32が介在する。内側電極28aには第2の可変直流電源33が接続され、内側電極28aへ正の直流電圧が印加される。第2の可変直流電源33は内側電極28aへ印加する直流電圧の値を変更できるので、内側電極28aの電位は変更可能である。また、外側電極28bは直流電源等に接続されることなく電気的に接地される。
【0037】
基板処理装置10では、処理空間PSへ導入された処理ガスが第1の高周波電源18からサセプタ12を介して処理空間PSへ印加されたプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる。該プラズマ中の正イオンはウエハWに引きこまれ、該ウエハWにプラズマエッチング処理を施す。このとき、上部電極板28は誘電体板27によって覆われるので、正イオンによってスパッタされることがなく、上部電極板28は消耗することがない。
【0038】
図2は、図1の基板処理装置におけるプラズマ生成用の高周波電力に関する電気回路を模式的に示す図である。
【0039】
図2の電気回路には、第1の高周波電源18及び接地の間には、第1の高周波電源18から処理空間PS、内側電極28a及び第2の可変直流電源33を経て接地に至る第1の経路L1と、第1の高周波電源18から処理空間PS及び外側電極28bを経て接地に至る第2の経路L2とが存在し、第1の経路L1と第2の経路L2とは並列に接続される。
【0040】
第1の経路L1では、処理空間PS及び内側電極28aを互いに直列接続されたコンデンサC1及びコンデンサC2とみなすことができ、第2の経路L2では、処理空間PS及び外側電極28bを互いに直列接続されたコンデンサC3及びコンデンサC4とみなすことができる。
【0041】
図2の電気回路において、第1の経路L1にはコンデンサC2と接地の間に第2の可変直流電源33が介在し、該第2の可変直流電源33がコンデンサC2(内側電極28a)に正の直流電圧を印加するため、コンデンサC1及びコンデンサC2における電位差の合計は、コンデンサC3及びコンデンサC4における電位差の合計よりも小さくなる。その結果、コンデンサC1における電位差はコンデンサC3における電位差よりも小さくなる。ここで、コンデンサC1における電位差は処理空間PSにおける内側電極28a及びサセプタ12の間の電位差とみなすことができ、コンデンサC3における電位差は処理空間PSにおける外側電極28b及びサセプタ12の間の電位差とみなすことができる。一般に、処理空間における電位差が大きいと電界が強くなってプラズマの密度が高くなり、処理空間における電位差が小さいと電界が弱くなってプラズマの密度が低くなる。
【0042】
したがって、基板処理装置10では、処理空間PSにおいて、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマの密度を外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマの密度よりも低くできる。
【0043】
また、図2の電気回路において、第2の可変直流電源33にコンデンサC2(内側電極28a)へ負の直流電圧を印加させた場合、コンデンサC1及びコンデンサC2における電位差の合計は、コンデンサC3及びコンデンサC4における電位差の合計よりも大きくなる。その結果、コンデンサC1における電位差をコンデンサC3における電位差よりも大きくすることができ、もって、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマの密度を外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマの密度よりも高くできる。
【0044】
すなわち、内側電極28a及び接地の間に第2の可変直流電源33を介在させることによってプラズマの密度分布の制御性を向上することができ、これにより、プラズマエッチング処理におけるエッチングレートの均一性を向上することができる。
【0045】
例えば、プラズマエッチング処理においてウエハWの中央部のエッチングレートがウエハWの周縁部のエッチングレートよりも高い場合(図3の実線を参照。)、第2の可変直流電源33からコンデンサC2(内側電極28a)へ正の直流電圧を印加することにより、ウエハWの中央部におけるプラズマの密度を低下させることができ、もって、ウエハWの中央部のエッチングレートを低下させることができる(図3の破線を参照。)。また、ウエハWの中央部のエッチングレートがウエハWの周縁部のエッチングレートよりも低い場合(図4の実線を参照。)、第2の可変直流電源33からコンデンサC2(内側電極28a)へ負の直流電圧を印加することにより、ウエハWの中央部におけるプラズマの密度を高くすることができ、もって、ウエハWの中央部のエッチングレートを上昇させることができる(図4の破線を参照。)。
【0046】
また、基板処理装置10では、内側電極28aの電位が第2の可変直流電源33によって変更可能であるため、コンデンサC1及びコンデンサC2における電位差の合計、引いては、コンデンサC1における電位差(内側電極28a及びサセプタ12の間の電位差)を積極的に変更することができる。ここで、プラズマエッチング処理の処理条件、例えば、ガス種、処理空間PSの圧力、プラズマ生成用の高周波電力の大きさに応じて内側電極28aへ印加される直流電圧の値を変更すれば、内側電極28a及びサセプタ12の間においてプラズマエッチング処理の処理条件に適したプラズマの密度分布を実現することができる。
【0047】
本実施の形態に係る基板処理装置10によれば、上部電極板28における処理空間PSに面する部分が誘電体板27によって覆われるので、上部電極板28が正イオンによってスパッタされることがない。また、誘電体板27が電子を阻止するので、プラズマへ電子流れ込まない。即ち、直流電流が流れないのでジュール熱による上部電極板28の加熱を防止でき、上部電極板28の消耗を防止できる。なお、プラズマへ電子が過剰に流れ込むことがないので、直流電流が流れることがなく、その結果、プラズマ処理の性能を安定させることができるとともに、電子を直流的に接地させる箇所を、処理空間PSを含むチャンバ11内に設ける必要を無くすことができる。
【0048】
さらに、本実施の形態に係る基板処理装置10によれば、上部電極板28の内側電極28aには直流電圧が印加されるとともに、上部電極板28の外側電極28bは電気的に接地されるので、内側電極28a及びサセプタ12の間の電位差と、外側電極28b及びサセプタ12の間の電位差とを異ならせることができる。電位差が変わると電界の強さが変わり、プラズマの密度分布も変わるため、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマの密度と外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマの密度とを異ならせることができる。その結果、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性を向上することができる。
【0049】
また、基板処理装置10では、内側電極28aの電位を変更することができるので、内側電極28a及びサセプタ12の間の電位差を積極的に変更することができる。その結果、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマの密度分布の制御性を向上することができる。
【0050】
上述した基板処理装置10では、プラズマ処理の処理条件に応じて誘電体板27が厚さ、誘電率及び表面積のうちの少なくとも1つが変更された他の誘電体板へ変更されてもよい。誘電率及び表面積のうちの少なくとも1つが変更されると、図2の電気回路において、コンデンサC1やコンデンサC3の容量が変更されて電位差が変更されるため、コンデンサC2やコンデンサC4における電位差も変更される。すなわち、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布を変更することができ、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性をより向上することができる。
【0051】
また、上述した基板処理装置10では、内側電極28aに第2の可変直流電源33が接続されて外側電極28bが接地しているが、プラズマエッチング処理の処理条件や結果に応じて内側電極28aを接地させるとともに、外側電極28bへ可変直流電源を接続して外側電極28bへ直流電圧を印加してもよい。これによっても、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマの密度と外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマの密度とを異ならせることができ、もって、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性を向上することができる。
【0052】
なお、上述した基板処理装置10では、内側電極28aへ第2の可変直流電源33を接続したが、該内側電極28aへ所定値の直流電圧のみを印加する固定直流電源を接続してもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置について詳細に説明する。
【0054】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0055】
図5は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0056】
図5において、基板処理装置34では、外側電極28bに容量可変フィルター35が接続され、外側電極28bは該容量可変フィルター35を介して接地される。容量可変フィルター35は、並列に接続された複数の可変コンデンサを内蔵し、所定の周波数以上の高周波電流を遮断するハイカットフィルターとして機能する。また、高周波電圧が印加される際、内蔵する可変コンデンサの容量を変更することによって当該容量可変フィルター35における電位差を変更することができ、その結果、容量可変フィルター35に接続された電極の電位を変更することができる。
【0057】
図6は、図5の基板処理装置におけるプラズマ生成用の高周波電力に関する電気回路を模式的に示す図である。
【0058】
図6の電気回路には、図2における第1の経路L1と、第1の高周波電源18から処理空間PS、外側電極28b及び容量可変フィルター35を経て接地に至る第3の経路L3とが存在し、第1の経路L1と第3の経路L3とは並列に接続される。第3の経路L3では、コンデンサC3(処理空間PS)及びコンデンサC4(外側電極28b)に容量可変フィルター35が直列に接続されているとみなすことができる。
【0059】
図6の電気回路において、第3の経路L3にはコンデンサC4と接地の間に容量可変フィルター35が介在し、該容量可変フィルター35がコンデンサC4の電位を変更するため、コンデンサC3及びコンデンサC4における電位差の合計を積極的に変更することができ、引いては、コンデンサC3における電位差(処理空間PSにおける外側電極28b及びサセプタ12の間の電位差)を積極的に変更することができる。その結果、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマ密度分布の制御性だけでなく、外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマ密度分布の制御性も向上することができ、もって、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性をより向上することができる。
【0060】
ここで、基板処理装置34において、プラズマエッチング処理の処理条件に応じてコンデンサC3における電位差を積極的に変更するのが好ましい。これにより、外側電極28b及びサセプタ12の間においてプラズマエッチング処理の処理条件に適したプラズマの密度分布を実現することができる。
【0061】
また、容量可変フィルター35では、内蔵する可変コンデンサの容量を変更させることによって当該容量可変フィルター35における電位差を変更することができるが、変更後の容量は容量可変フィルター35が備える目盛り(ポジション)によって示され、容量可変フィルター35における電位差(電圧特性)は図7に示すように変化する。ここで、容量可変フィルター35における電圧特性は、電位差がほぼ0となる共振点と、電位差が極端に大きくなる共振点とを有する。なお、容量可変フィルター35における電圧特性は処理条件に応じて異なる変化態様を示す。図中の「◆」、「■」や「●」はそれぞれ異なる処理条件における電圧特性を示す。
【0062】
基板処理装置34では、プラズマエッチング処理の処理条件に応じて容量可変フィルター35における電位差を変更してコンデンサC3における電位差を変更する際、容量可変フィルター35における電位差を当該容量可変フィルター35の電圧特性における共振点を含む範囲で変更させるのが好ましい。これにより、コンデンサC3における電位差を大幅に変更できるので、外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマの密度分布の制御性を大幅に向上することができる。
【0063】
上述した基板処理装置34では、内側電極28aに第2の可変直流電源33が接続されて外側電極28bに容量可変フィルター35が接続されているが、内側電極28aに容量可変フィルター35を接続させるともに、外側電極28bへ第2の可変直流電源33を接続してもよい。これによっても、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマの密度と外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマの密度とを異ならせることができ、もって、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性をより向上することができる。
【0064】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る基板処理装置について詳細に説明する。
【0065】
本実施の形態は、その構成、作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0066】
図8は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0067】
図8において、基板処理装置36では、外側電極28bに第3の可変直流電源37が接続され、外側電極28bへ正の直流電圧が印加される。第3の可変直流電源37は外側電極28bへ印加する直流電圧の値を変更できるので、外側電極28bの電位は変更可能である。
【0068】
図9は、図8の基板処理装置におけるプラズマ生成用の高周波電力に関する電気回路を模式的に示す図である。
【0069】
図9の電気回路には、図2における第1の経路L1と、第1の高周波電源18から処理空間PS、外側電極28b及び第3の可変直流電源37を経て接地に至る第4の経路L4とが存在し、第1の経路L1と第4の経路L4とは並列に接続される。第4の経路L4では、コンデンサC3(処理空間PS)及びコンデンサC4(外側電極28b)に第3の可変直流電源37が直列に接続されているとみなすことができる。
【0070】
図9の電気回路において、第4の経路L4にはコンデンサC4と接地の間に第3の可変直流電源37が介在し、該第3の可変直流電源37がコンデンサC4に正の直流電圧を印加するため、外側電極28bが直接接地される場合に比べて、コンデンサC3及びコンデンサC4における電位差の合計が小さくなる。一方、第3の可変直流電源37にコンデンサC4へ負の直流電圧を印加させると、コンデンサC3及びコンデンサC4における電位差の合計が大きくなる。
【0071】
したがって、基板処理装置36では、コンデンサC3における電位差(外側電極28b及びサセプタ12の間の電位差)を積極的に変更することができる。すなわち、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマ密度分布の制御性だけでなく、外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマ密度分布の制御性も向上することができるので、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性をより向上することができる。
【0072】
特に、第2の可変直流電源33にコンデンサC2へ正の直流電圧を印加させて内側電極28aに正の電位を発生させるとともに、第3の可変直流電源37にコンデンサC4へ負の直流電圧を印加させて外側電極28bに負の電位を発生させた場合、コンデンサC1における電位差とコンデンサC3における電位差との絶対値差を大きくすることができ、これにより、大きな偏りのあるエッチングレートの分布を確実に改善することができる。なお、コンデンサC2へ負の直流電圧を印加して内側電極28aに負の電位を発生させるとともに、コンデンサC4へ正の直流電圧を印加して外側電極28bに正の電位を発生させてもよく、これによっても、大きな偏りのあるエッチングレートの分布を確実に改善することができる。
【0073】
また、基板処理装置36では内側電極28aの電位が変更可能であるだけでなく、外側電極28bの電位も変更可能であるため、プラズマエッチング処理の処理条件に応じて内側電極28aの電位と外側電極28bの電位との差を調整するのが好ましい。これにより、内側電極28a及びサセプタ12の間のプラズマ密度と、外側電極28b及びサセプタ12の間のプラズマ密度との差を細かく調整することができ、もって、プラズマエッチング処理の処理条件により適したプラズマの密度分布を実現することができる。
【0074】
上述した各実施の形態では、上部電極板28がサセプタ12に対して相対的に移動することがないが、シャワーヘッド26を上下方向移動可能に構成して上部電極板28がサセプタ12に対して相対的に移動できるようにしてもよい。この場合、図2,6及び9の電気回路におけるコンデンサC1やコンデンサC3の容量が変更可能となるので、コンデンサC1やコンデンサC3における電位差をきめ細かく調整することができ、もって、処理空間PSにおけるプラズマの密度分布の制御性をさらに向上することができる。
【0075】
上述した各実施の形態に係る基板処理装置がプラズマエッチング処理を施す基板は、半導体デバイス用のウエハに限られず、LCD(Liquid Crystal Display)等を含むFPD(Flat Panel Display)等に用いる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であってもよい。
【0076】
なお、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0077】
本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体を、コンピュータ等に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出して実行することによっても達成される。
【0078】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が上述した各実施の形態の機能を実現することになり、プログラム及びそのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0079】
また、プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0080】
また、コンピュータのCPUが読み出したプログラムを実行することにより、上記各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0081】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0082】
上記プログラムの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
W ウエハ
PS 処理空間
10,34,36 基板処理装置
12 サセプタ
18 第1の高周波電源
28 上部電極板
28a 内側電極
28b 外側電極
33 第2の可変直流電源
35 容量可変フィルター
37 第3の可変直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源に接続され且つ基板を載置する下部電極と、該下部電極と対向して配された上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間の処理空間とを備え、該処理空間に発生したプラズマを用いて前記載置された基板にプラズマ処理を施す基板処理装置において、
前記上部電極における前記処理空間に面する部分を覆う誘電体部材を備え、
前記上部電極は、前記載置された基板の中央部と対向する内側電極と、前記載置された基板の周縁部と対向する外側電極とに分割され、
前記内側電極と前記外側電極とは互いに電気的に絶縁され、
前記内側電極には直流電圧が印加されるとともに、前記外側電極は電気的に接地されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記内側電極には可変直流電源が接続されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記外側電極は容量可変フィルターを介して電気的に接地されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記外側電極にも他の直流電圧が印加されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
高周波電源に接続され且つ基板を載置する下部電極と、該下部電極と対向して配された上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間の処理空間とを備え、前記上部電極は、前記載置された基板の中央部と対向する内側電極と、前記載置された基板の周縁部と対向する外側電極とに分割され、前記内側電極と前記外側電極とは互いに電気的に絶縁される基板処理装置において、前記処理空間に発生したプラズマを用いて前記載置された基板にプラズマ処理を施す基板処理方法であって、
前記上部電極における前記処理空間に面する部分を誘電体部材で覆い、
前記内側電極に直流電圧を印加するとともに、前記外側電極を電気的に接地させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
前記プラズマ処理の処理条件に応じて前記内側電極へ印加される直流電圧の値を変更することを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記プラズマ処理において、前記載置された基板の中央部のエッチングレートが前記載置された基板の周縁部のエッチングレートよりも高い場合、前記内側電極へ正の直流電圧を印加することを特徴とする請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記プラズマ処理において、前記載置された基板の中央部のエッチングレートが前記載置された基板の周縁部のエッチングレートよりも低い場合、前記内側電極へ負の直流電圧を印加することを特徴とする請求項6記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記プラズマ処理の処理条件に応じて、前記誘電体部材を厚さ、誘電率及び表面積のうちの少なくとも1つが変更された他の誘電体部材へ変更することを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記外側電極を、可変コンデンサを有する容量可変フィルターを介して電気的に接地させ、
前記プラズマ処理の処理条件に応じて前記可変コンデンサの容量を変更させる際、前記容量可変フィルターにおける電位差を、前記容量可変フィルターの電圧特性における共振点を含む範囲で変更することを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記外側電極にも他の直流電圧を印加し、
前記プラズマ処理の処理条件に応じて前記内側電極の電位と前記外側電極の電位との差を調整することを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記外側電極の電位が前記内側電極の電位と反対の電位となるように、前記外側電極に他の直流電圧を印加することを特徴とする請求項11記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−4160(P2012−4160A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134991(P2010−134991)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】