基板処理装置
【課題】スリットノズルから吐出される処理液の状態を正確に測定する。
【解決手段】スリットノズル41の二次側に設けられたエア抜き用の配管42を設ける。配管42とスリットノズル41の一次側に設けられた配管63とを直接連通させず独立させるとともに、配管42を直接スリットノズル41内の流路410と連通させる。配管42に圧力センサ43を設置し、測定値を制御部8に伝達する。ポンプ61からスリットノズル41にレジスト液を供給し、そのときの配管42内の圧力を圧力センサ43によって測定する。
【解決手段】スリットノズル41の二次側に設けられたエア抜き用の配管42を設ける。配管42とスリットノズル41の一次側に設けられた配管63とを直接連通させず独立させるとともに、配管42を直接スリットノズル41内の流路410と連通させる。配管42に圧力センサ43を設置し、測定値を制御部8に伝達する。ポンプ61からスリットノズル41にレジスト液を供給し、そのときの配管42内の圧力を圧力センサ43によって測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットコータにおける処理液の吐出を制御する技術に関する。より詳しくは、正確な制御を行うための測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶用ガラス角形基板、半導体ウェハ、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルタ用基板等(以下、単に「基板」と称する)の表面にフォトレジスト等の処理液を塗布する塗布装置が知られている。例えば、塗布装置としては、スリット状の吐出部を有するスリットノズルを用いてスリットコートを行うスリットコータがある。スリットコータでは、塗布膜厚のばらつき(塗布ムラ)は、配線幅の変化の原因となるため、塗布膜厚の制御(均一性)は、特に重要な要素である。
【0003】
スリットコータは、スリットノズルからレジストを吐出し、これと同時にスリットノズルを一定の速度で移動させることにより均一な膜厚を形成するため、膜厚制御を行う場合、塗布開始位置と塗布終了位置とにおける膜厚制御が最も困難である。特に、塗布開始位置においては、スリットノズルの移動加速時間と吐出流量の加速時間が短いほど膜厚の不安定領域が減少する。
【0004】
スリットコータの一般的な塗布速度は200mm/秒程度であり、塗布開始位置における不安定領域を10mm以内に収めるためには、移動加速時間を0.025秒程度の間に完了することが求められる。一方、塗布される膜厚はスリットノズルからの吐出流量の影響が大きいため、膜厚制御には吐出流量を正確に計測することが求められる。しかし、吐出流量を直接計測する流量計は、短時間の計測には不向き(正確に計測できない)であり、これほどの短時間に正確な値を計測することは実質的に不可能である。
【0005】
したがって、従来より、圧力センサを用いて吐出状態を観察する手法が提案されている。例えば、このような技術が特許文献1に記載されている。特許文献1では、スリットノズルの一次側(吐出ポンプとスリットノズルとの間)に1つの圧力センサを設け、この圧力センサによって測定された処理液の圧力に基づいて、吐出制御する技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−181360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている技術では、圧力センサがスリットノズルの一次側に設けられている。
【0008】
図11は、供給流路の構造(配管径、長さ、配管の配置等)を様々に変化させた場合におけるスリットノズルの一次側に設けられた圧力センサの測定値を示す図である。図11に示されるように、スリットノズルの一次側に設けられた圧力センサの測定値は、供給路の構造によって様々に変化する。これは、すなわち、圧力センサをスリットノズルの一次側に設けた場合には、吐出ポンプからスリットノズルまでの間の圧力損失が測定値に大きく影響することを示している。
【0009】
言い換えれば、特許文献1に記載されている圧力センサは、スリットノズルにかかる圧力を測定していない(実際にスリットノズルから吐出されている処理液の状態を正確に測定できていない)という問題があった。したがって、このような圧力センサで測定した圧力は一次遅れの影響を受けた数値であって、実際の制御に使用する場合においては、この遅れを考慮して計算を行わなければならないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、スリットノズルから吐出される処理液の状態を正確に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に処理液を塗布する基板処理装置であって、内部に処理液の流路が設けられ、前記流路からスリット状の吐出口を介して処理液を吐出するスリットノズルと、処理液を塗布する基板と前記スリットノズルとを相対的に移動させる移動手段と、処理液の第1流路を介して前記スリットノズル内の前記流路に処理液を送液する送液手段と、前記第1流路と独立して設けられ、前記スリットノズル内の前記流路と直接連通する処理液の第2流路と、前記第2流路に設置される圧力測定手段と、前記圧力測定手段の測定結果に基づいて前記移動手段を制御する移動制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置であって、基板に対する処理に先立って処理液が塗布される予備塗布部をさらに備え、前記移動制御手段は、前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記移動手段を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板処理装置であって、送液手段によって送液される処理液の圧力を測定する送液圧力測定手段と、前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記送液圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記送液手段を制御する送液制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記第2流路は、前記スリットノズルの内部からエアを抜くための配管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし4に記載の発明では、処理液の第1流路を介してスリットノズル内の流路に処理液を送液する送液手段と、第1流路と独立して設けられ、スリットノズル内の流路と直接連通する処理液の第2流路と、第2流路に設置される圧力測定手段と、圧力測定手段の測定結果に基づいて移動手段を制御する移動制御手段とを備えることにより、処理液の吐出状態を正確に測定できる。したがって、移動手段を正確に制御できる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、基板に対する処理に先立って処理液が塗布される予備塗布部をさらに備え、移動制御手段は、予備塗布部に処理液を塗布する際の圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の移動手段を制御することにより、塗布処理ごとに毎回測定する必要がなく、演算処理量も抑制できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、送液手段によって送液される処理液の圧力を測定する送液圧力測定手段と、予備塗布部に処理液を塗布する際の送液圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の送液手段を制御する送液制御手段とをさらに備えることにより、送液手段を正確に制御することができる。したがって、塗布処理における精度がさらに向上する。
【0018】
請求項4に記載の発明では、第2流路は、スリットノズルの内部からエアを抜くための配管であることにより、エア抜き配管と兼用することができ、圧力測定手段を取り付けるための流路を別途設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0020】
<1. 第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置1の概略を示す斜視図である。図2は、基板処理装置1の本体2の側断面を示すとともに、レジスト液の塗布動作に係る主たる構成要素を示す図である。
【0021】
なお、図1において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の図についても同様である。
【0022】
基板処理装置1は、本体2と制御部8とに大別され、液晶表示装置の画面パネルを製造するための角形ガラス基板を被処理基板(以下、単に「基板」と称する)90としており、基板90の表面に形成された電極層などを選択的にエッチングするプロセスにおいて、基板90の表面に処理液としてのレジスト液を塗布する塗布装置として構成されている。したがって、この実施の形態では、スリットノズル41はレジスト液を吐出するようになっている。なお、基板処理装置1は、液晶表示装置用のガラス基板だけでなく、一般に、フラットパネルディスプレイ用の種々の基板に処理液を塗布する装置として変形利用することもできる。
【0023】
本体2は、基板90を載置して保持するための保持台として機能するとともに、付属する各機構の基台としても機能するステージ3を備える。ステージ3は直方体形状を有する例えば一体の石製であり、その上面(保持面30)および側面は平坦面に加工されている。
【0024】
ステージ3の上面は水平面とされており、基板90の保持面30となっている。保持面30には図示しない多数の真空吸着口が分布して形成されており、基板処理装置1において基板90を処理する間、基板90を吸着することにより、基板90を所定の水平位置に保持する。また、保持面30には、図示しない駆動手段によって上下に昇降自在な複数のリフトピンLPが、適宜の間隔をおいて設けられている。リフトピンLPは、基板90を取り除く際に基板90を押し上げるために用いられる。
【0025】
保持面30のうち基板90の保持エリア(基板90が保持される領域)を挟んだ両端部には、略水平方向に平行に伸びる一対の走行レール31が固設される。走行レール31は、架橋構造4の両端部の最下方に固設される図示しない支持ブロックとともに、架橋構造4の移動を案内し(移動方向を所定の方向に規定する)、架橋構造4を保持面30の上方に支持するリニアガイドを構成する。
【0026】
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡された架橋構造4が設けられている。架橋構造4は、例えばカーボンファイバ補強樹脂を骨材とするノズル支持部40と、その両端を支持する昇降機構43,44とから主に構成される。
【0027】
ノズル支持部40には、スリットノズル41が取り付けられている。図1においてY軸方向に長手方向を有するスリットノズル41には、スリットノズル41へレジスト液を供給するレジスト供給機構6(図2)が接続されている。なお、スリットノズル41とレジスト供給機構6とについての詳細は後述する。
【0028】
昇降機構43,44は、スリットノズル41の両側に分かれて、ノズル支持部40によりスリットノズル41と連結されている。昇降機構43,44は主にACサーボモータ43a,44aおよび図示しないボールネジからなり、制御部8からの制御信号に基づいて、架橋構造4の昇降駆動力を生成する。これにより、昇降機構43,44は、スリットノズル41を並進的に昇降させる。また、昇降機構43,44は、スリットノズル41のYZ平面内での姿勢を調整するためにも用いられる。
【0029】
架橋構造4の両端部には、ステージ3の両側の縁側に沿って、それぞれ固定子(ステータ)50aと移動子50bおよび固定子51aと移動子51bを備える一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50,51が、それぞれ固設される。また、架橋構造4の両端部には、それぞれスケール部と検出子とを備えたリニアエンコーダ52,53が、それぞれ固設される。リニアエンコーダ52,53は、リニアモータ50,51の位置を検出する。
【0030】
これらリニアモータ50,51とリニアエンコーダ52,53とが主として、架橋構造4が走行レール31に案内されつつステージ3上を移動するための走行機構5を構成する。制御部8は、リニアエンコーダ52,53からの検出結果に基づいてリニアモータ50の動作を制御し、ステージ3上における架橋構造4の移動、つまりはスリットノズル41による基板90の走査を制御する。
【0031】
図3は、スリットノズル41とレジスト供給機構6とを示す図である。図3において、スリットノズル41は概略の断面として示す。
【0032】
スリットノズル41は、第1本体部41aと第2本体部41bとを備える。詳細は図示しないが、第1本体部41aの接合面には、所定の形状の凹部が設けられている。第1本体部41aの接合面と第2本体部41bの接合面とは、X軸方向に対向するように接合される。
【0033】
このように、第1本体部41aと第2本体部41bとの接合面が接合されることによって、第1本体部41aの接合面に形成された凹部が、スリットノズル41の内部におけるレジスト液の流路410となる。なお、流路410を形成するための凹部は、第2本体部41bに形成されてもよいし、両者に形成されてもよい。
【0034】
さらに、流路410は(−Z)方向に開口しており、この開口が吐出口411を形成する。吐出口411は、スリットノズル41の長手方向(Y軸方向)に沿って延びており、スリット状となっている。
【0035】
スリットノズル41の上部中央には、流路410に直接連通するように、配管42が接続されている。配管42は、スリットノズル41内に溜まったエアを抜き取るためのエア抜き用の配管である。図3に示すように、配管42は、配管63と独立して設けられ、スリットノズル41内の流路410と直接連通する。スリットノズル41からエアを抜き取るとき、配管42はレジスト液とともにエアを抜き取るため、配管42はレジスト液の流路ともなる。すなわち、配管42は、本発明における第2流路としての機能を有する。
【0036】
配管42には圧力センサ43が取り付けられている。配管42に設置される圧力センサ43は、配管42内のレジスト液の圧力を測定して制御部8に伝達する。なお、圧力センサ43は、配管42内のエアの圧力を測定してもよい。すなわち、圧力センサ43が、主に本発明における圧力測定手段に相当する。
【0037】
また、配管42には、制御部8からの制御信号に応じて配管42を開閉するバルブ44が取り付けられている。塗布処理等においてスリットノズル41からレジスト液が吐出される際には、バルブ44は閉じられている。
【0038】
図4は、スリットノズル41にレジスト液を供給する供給流路の構造を様々に変化させた場合における圧力センサ43の測定値を示す図である。図4に示す第1構造ないし第6構造は、それぞれ図11に示した第1構造ないし第6構造に相当する構造である。
【0039】
図4に示すように、圧力センサ43の測定値は、各構造における違いが小さく、供給流路の構造が変化してもその影響が小さいことがわかる。このことから、圧力センサ43は、スリットノズル41(流路410)にかかる実際の圧力を測定できていることがわかる。
【0040】
図3に戻って、レジスト供給機構6は、レジスト液を貯留するレジストボトル60、レジスト液を送液するポンプ61、レジスト液の流路となる配管62,63およびバルブ64,65を備える。
【0041】
ポンプ61は、制御部8からの制御信号に応じて駆動し、レジストボトル60内に貯留されているレジスト液を配管62を介して吸引するとともに、吸引したレジスト液をスリットノズル41に向けて配管63を介して送液する。
【0042】
配管62は、レジストボトル60からポンプ61までの間のレジスト液の流路を形成し、必要に応じてバルブ64によって開閉される。
【0043】
また、配管63は、スリットノズル41の流路410と連通接続されており、必要に応じてバルブ65によって開閉される。なお、図3においては詳細を省略しているが、本実施の形態における基板処理装置1では、流路410のY軸方向の両端部に配管63が連通接続されており、配管63は、ポンプ61からスリットノズル41までの間のレジスト液の流路を形成する。
【0044】
すなわち、ポンプ61は、レジスト液の第1流路(配管63)を介して、スリットノズル41内の流路410にレジスト液を送液する機能を有しており、スリットノズル41へのレジスト液の供給はY軸方向の両端部から行われる。なお、配管63と流路410との接続構造は、Y軸方向の両端部における接続に限定されるものではなく、例えば、中央部に接続される構造でもよい。
【0045】
配管62に取り付けられているバルブ64は、配管62を開閉する機能を有している。同様に、配管63に取り付けられているバルブ65は、配管63を開閉する機能を有している。なお、図示を省略しているが、バルブ64,65は、制御部8からの制御信号によって開閉する。
【0046】
圧力センサ66,67は、それぞれ配管62,63に設置されている。そして、圧力センサ66,67は、ポンプ61によって送液されるレジスト液の圧力を測定して、制御部8に伝達する。
【0047】
以上の構成により、レジスト供給機構6は、制御部8からの制御信号に応じてバルブ64,65を開閉するとともに、ポンプ61を駆動する。これにより、レジストボトル60から吸引されたレジスト液は、配管62,63を通ってスリットノズル41の流路410に供給される。なお、スリットノズル41(流路410)に供給されたレジスト液は、流路410を通って、スリット状の吐出口411から吐出される。
【0048】
図1および図2に戻って、本体2の保持面30において、保持エリアの(−X)方向側には、開口32が設けられている。開口32はスリットノズル41と同じくY軸方向に長手方向を有し、かつ該長手方向長さはスリットノズル41の長手方向長さとほぼ同じである。また、開口32の下方の本体2の内部には、ノズル初期化機構7が設けられている。ノズル初期化機構7は、基板90へのレジスト液の塗布に先立って行われる、予備処理(後述する)に際し用いられる。
【0049】
図5は、開口32内に設けられたノズル初期化機構7の詳細を示す図である。ノズル初期化機構7は、ガス供給機構71、排気機構72、予備塗布機構73、ノズル洗浄機構74、および洗浄液供給機構75を備えている。なお、以下、スリットノズル41の図5に実線で示す位置を「予備塗布位置」と称する。
【0050】
従来の基板処理装置においても、製品としての基板に対する塗布処理の合間において、スリットノズルを初期化(洗浄等)するための機構(ノズル初期化機構7に相当する機構)を備えている。詳細は後述するが、本実施の形態における基板処理装置1は、ノズル初期化機構7を、塗布処理におけるパラメータを得るための機構として兼用することにより、コストを抑制しつつ、塗布処理における正確な制御と演算処理の抑制とを実現するものである。
【0051】
ガス供給機構71は、図示しないボンベから供給配管710を介して予備塗布機構73に、例えば窒素ガスなどの不活性ガスを供給する機構である。また、排気機構72は、排気配管720を介して予備塗布機構73の筐体732内の雰囲気を吸引排気する機構である。なお、これらの機構としては、従来から一般的に知られている機構を採用することができる。例えば、排気機構72は、真空発生装置やコンプレッサーを採用することにより実現することができる。
【0052】
予備塗布機構73は、回転機構730、ローラ731、筐体732、液切りブレード733、遮蔽ブレード734、およびシャワーノズル735を備えている。
【0053】
回転機構730は、詳細は省略するが、回転駆動力を生成する回転モータおよび当該回転駆動力を伝達するリンク部材などから構成される機構である。当該回転モータによって生成された回転駆動力はリンク部材を介してローラ731に伝達され、ローラ731は図5において時計回りに回転する。
【0054】
円筒状のローラ731は、その円筒面が予備塗布処理においてスリットノズル41からレジスト液が塗布される塗布面731aを構成しており、その円筒中心が軸心731bを構成している。ローラ731の軸心731bは、Y軸方向に沿うように配置される。ローラ731の軸心731bには回転機構730から回転駆動力が伝達され、これにより、ローラ731は軸心731bを中心に、図5において時計回りに回転する。
【0055】
筐体732は、図5に示すように、上面からローラ731の一部が露出するように配置される略箱状の部材である。筐体732の内部には、ローラ731の塗布面731aの一部を浸すのに適した量の洗浄液が貯留される。すなわち、回転機構730がローラ731を回転させることにより、ローラ731の塗布面731aがこの貯留された洗浄液に浸される。また、塗布面731aのうち洗浄液に浸っている部分は、ローラ731が回転することにより洗浄液から引き上げられる。
【0056】
このように、予備塗布機構73では、ローラ731の塗布面731aが洗浄液に浸されることにより、塗布面731aに塗布されたレジスト液が洗浄除去される。なお、塗布面731aを洗浄する機構としては、これに限られるものではなく、例えば筐体732内に塗布面731aに向けて洗浄液を吐出するノズルを設けてもよい。
【0057】
筐体732の内部には、液切りブレード733が固設されている。また、液切りブレード733は、Y軸方向に略均一な板状のブレード733aを備えている。ブレード733aはローラ731の塗布面731aに向けてわずかに押圧された状態で、Y軸方向に均一に当接している。この状態でローラ731が回転すると、ブレード733aと塗布面731aとは相対的に移動し、ブレード733aによって塗布面731aが走査される。なお、一般的にブレード733aは、付着物の除去作用を持つ作用部(塗布面731aに当接する部分)が長手方向に均一であれば足りる。
【0058】
このようにして、ブレード733aは塗布面731aに付着した付着物(残存するレジスト液や洗浄液など)を掻き取る。ブレード733aは、前述のように、塗布面731aに対してY軸方向に均一に当接しているため、Y軸方向に均一な状態で塗布面731aから付着物を除去することができ、塗布面731aの状態の均一性を向上させることができる。なお、ブレード733aは、塗布面731aより硬度の低い材質、具体的には樹脂またはゴム等により形成される。
【0059】
筐体732の長手方向の内側面にはガス噴出口732aが設けられている。ガス噴出口732aは筐体732の長手方向に沿って略均一なスリット形状であって、筐体732の側面部材を貫通する孔の内側開口部となっている。また、この貫通孔には、ガス供給機構71の供給配管710が連通接続されている。
【0060】
このような構造により、筐体732には供給配管710を介してガス供給機構71から不活性ガス(例えば清浄な窒素ガス)が供給され、供給された窒素ガスはガス噴出口732aからローラ731の塗布面731aに向けてY軸方向に均一な状態で噴出される。これにより、塗布面731aに付着している洗浄液の乾燥が促進されるとともに、塗布面731aのY軸方向における乾燥状態の均一性を高めることができる。
【0061】
筐体732の内部雰囲気は、筐体732の長手方向の内側面に設けられた吸引口732bから排気配管720を介して、排気機構72によって吸引排気される。これにより、洗浄液の溶剤雰囲気がすみやかに排気され、ローラ731の塗布面731aに付着している洗浄液の乾燥が促進される。なお、筐体732の内部においては、筐体732の底部の近傍ほど洗浄液の溶剤雰囲気濃度が高い。したがって、本実施の形態における基板処理装置1では、図5に示すように、吸引口732bを低い位置に設けており、これによって、筐体732の内部の溶剤成分を効率よく排気することができる。
【0062】
また、ローラ731が軸心731bを中心に回転すると、筐体732の内部では、塗布面731aの回転方向に追随するように、スリットノズル41に向かって流れる気流が発生する。ここで、筐体732の内部雰囲気は洗浄液の溶剤成分や除去されたレジスト液など、パーティクルの原因となる汚染物が浮遊しており、これがスリットノズル41に向かって流れることは好ましくない。しかし、本実施の形態における基板処理装置1は、吸引口732bをガス噴出口732aよりも低い位置に設けることにより、筐体732の内部において、図5の矢印に示す方向に流れる気流を形成する。したがって、パーティクルの原因物質を含んだ雰囲気が、スリットノズル41に向かって流れることを防止することができる。
【0063】
筐体732の上部に設けられる遮蔽ブレード734は、ローラ731の塗布面731aに近接(近接間隔1mm程度)し、かつ略水平方向となるように、配置される板状の部材である。このような配置により、遮蔽ブレード734は、塗布面731aのうち未乾燥部分が曝されているに雰囲気(図5において筐体732内部左側に存在する雰囲気)と、スリットノズル41の先端部付近の雰囲気とを遮蔽する。これにより、洗浄液の成分を含んだ雰囲気がスリットノズル41の先端部に悪影響を及ぼすことをさらに効果的に防止することができる。
【0064】
シャワーノズル735はY軸方向に沿ってほぼ均一に設けられており、洗浄液供給機構75から供給される洗浄液を液切りブレード733のブレード733aに向けて吐出するノズルである。これにより、液切りブレード733が掻き取った付着物をブレード733aから洗い流すことができ、ブレード733aに付着物が累積することを防止することができる。したがって、ブレード733aによる塗布面731aに付着した付着物の除去が効率的に行われる。なお、シャワーノズル735から吐出された洗浄液は、筐体732内部に貯留され、図示しないドレイン機構によって排出される。
【0065】
なお、図5に示すように、本実施の形態における基板処理装置1の予備塗布機構73では、ローラ731の塗布面731aの回転方向(図5において時計回り方向)に沿って、スリットノズル41、洗浄液貯まりおよびガス噴出口732aが配置されている。
【0066】
ノズル洗浄機構74は、駆動機構740、ガイドブロック741および待機ポット742から構成され、本塗布処理を繰り返すことによってスリットノズル41の先端部側面に付着したレジスト液を洗浄除去する機能を有している。
【0067】
駆動機構740は、ガイドブロック741をY軸方向に移動させる機構である。駆動機構740としては、回転モータとボールネジとを用いた一般的な直動機構を採用することができる。
【0068】
ガイドブロック741は、駆動機構740によってスリットノズル41の長手方向(Y軸方向)に沿って移動可能に設けられている。ガイドブロック741は、洗浄液供給機構75によって供給される洗浄液をスリットノズル41の先端部に向けて吐出しつつ、駆動機構740によって移動することによって、スリットノズル41を走査する。これにより、ガイドブロック741がスリットノズル41の吐出口411の近傍を洗浄する。なお、スリットノズル41は、ノズル洗浄処理に先立って、所定の位置(以下、「洗浄位置」と称する)に移動しており、ノズル洗浄処理においては、この洗浄位置にあるスリットノズル41に対してガイドブロック741による走査が行われる。
【0069】
待機ポット742は、ガイドブロック741のほぼ直下に固定配置されており、スリットノズル41の長手方向の幅とほぼ同じサイズを有する略箱状の部材である。待機ポット742の内部にはレジスト液の溶剤が貯留されている。待機ポット742は、比較的長時間、本塗布処理が行われない場合において、スリットノズル41の特に吐出口411付近のレジスト液が乾燥変質しないように設けられる機構である。
【0070】
待機ポット742の上面には、スリットノズル41の先端部を内部に挿入するための開口部742aが設けられている。スリットノズル41は、待機中において、洗浄位置からさらにZ軸方向に下降した所定の位置(以下、「待機位置」と称する)に移動する。スリットノズル41が、この待機位置にあるとき、スリットノズル41の先端部は、開口部742aから待機ポット742の内部に挿入された状態となり、溶剤雰囲気に曝されることにより、レジスト液の乾燥が抑制される。
【0071】
図1に戻って、制御部8は、プログラムに従って各種データを処理する演算部80、プログラムや各種データを保存する記憶部81を内部に備える。また、前面には、オペレータが基板処理装置1に対して必要な指示を入力するための操作部82、および各種データを表示する表示部83を備える。
【0072】
制御部8は、図1においては図示しないケーブルにより本体2に付属する各機構と電気的に接続されている。制御部8は、操作部82からの入力信号や、圧力センサ43,66,67などからの信号に基づいて、昇降機構43,44による昇降動作、走行機構5による走行動作、レジスト供給機構6によるレジスト液の供給動作、さらにはノズル初期化機構7および予備塗布機構73に付随する各駆動機構、各回動機構および各バルブ等の動作を制御する。特に、制御部8は、本発明における移動制御手段および送液制御手段としての機能を有するが、これらの機能については後述する。
【0073】
また、データを一時的に記憶するRAM、読み取り専用のROM、および磁気ディスク装置などが記憶部81に該当する。あるいは、可搬性の光磁気ディスクやメモリーカードなどの記憶媒体、およびそれらの読み取り装置などであってもよい。
【0074】
また、操作部82には、ボタンおよびスイッチ類(キーボードやマウスなどを含む。)などが該当する。もしくは、タッチパネルディスプレイのように表示部83の機能を兼ね備えたものであってもよい。表示部83には、液晶ディスプレイや各種ランプなどが該当する。
【0075】
以上が本実施の形態における基板処理装置1の構成および機能の説明である。次に、基板処理装置1の動作について説明する。
【0076】
図6は、基板処理装置1の動作を示す流れ図である。基板処理装置1は、電源が投入されると、所定の初期設定を行った後、予備塗布処理を実行する(ステップS11)。
【0077】
図7および図8は、基板処理装置1の制御値取得処理の詳細を示す流れ図である。制御値取得処理では、まず、スリットノズル41が洗浄位置に移動し、ガイドブロック741による走査が行われ、スリットノズル41に対する洗浄処理が行われる(ステップS21)。
【0078】
洗浄処理が終了すると、昇降機構43,44および走行機構5がスリットノズル41を予備塗布位置に移動させるとともに、圧力センサ66が圧力の測定を開始する(ステップS22)。
【0079】
スリットノズル41が予備塗布位置に移動すると、予備塗布機構73の回転機構730が駆動を開始し、ローラ731が回転を開始する。この動作と並行して、レジスト供給機構のバルブ64,65が開放状態となり、ポンプ61が駆動される。ポンプ61が駆動されると、レジスト液がスリットノズル41に供給され、吐出口411から吐出されてローラ731の塗布面731aに塗布される。
【0080】
これら一連の動作によって、予備塗布機構73による予備塗布が開始され(ステップS23)、圧力センサ66によって、その間の圧力が測定され制御部8に伝達される。すなわち、圧力センサ66によって、駆動開始時のポンプ61の挙動を観測するのである。
【0081】
ステップS23によって予備塗布が開始されてから所定の時間が経過すると、レジスト供給機構6はポンプ61を停止する(ステップS24)。これにより、一旦、予備塗布が停止する。
【0082】
次に、制御部8が圧力センサ66から伝達された測定値に基づいて、駆動開始時のポンプ61の制御値(パラメータ)を設定する(ステップS25)。詳細は省略するが、制御値は、オーバーシュートが発生せず、かつ、可能な限り短時間で所望の吐出流量に安定するように設定される。
【0083】
本実施の形態においては、制御値としてポンプ61の駆動速度値を使用するが、もちろんこれに限定されるものではない。また、制御部8は、設定された制御値に基づいて、後述する塗布処理におけるポンプ61が制御される。
【0084】
このようにステップS22ないしS25の処理が実行されることにより、制御部8は、予備塗布機構73にレジスト液を塗布する際の圧力センサ66の測定結果に基づいて、基板90にレジスト液を塗布する際のポンプ61を制御する。すなわち、先述のように、制御部8は、本発明における送液制御手段としての機能を有する。
【0085】
図9は、ポンプ61の吐出流量と、圧力センサ43,66,67でそれぞれ測定される測定値との関係を例示する図である。図9から明らかなように、圧力の測定値は、測定する位置によってばらつくため、目的に応じてどの位置を測定するかが重要である。
【0086】
ここで、圧力センサ66は、ポンプ61の比較的近傍(配管62)に配置されているので、ポンプ61の挙動を正確に観測できる。したがって、基板処理装置1は、ポンプ61に対する制御値をより適切な値に決定できる。なお、制御値を設定するためには、当該制御値を変更しつつ、ステップS22ないしS24の処理を複数回繰り返すように構成してもよい。
【0087】
ポンプ61の制御値が設定されると、圧力センサ43による圧力の測定を開始するとともに(ステップS31)、予備塗布機構73の回転機構730が駆動を開始し、ローラ731が回転を開始する。この動作と並行して、レジスト供給機構のバルブ64,65が開放状態となり、ポンプ61がステップS25において設定された制御値に基づいて駆動される。ポンプ61が駆動されると、レジスト液がスリットノズル41に供給され、吐出口411から吐出されてローラ731の塗布面731aに塗布される。
【0088】
これら一連の動作によって、予備塗布機構73による予備塗布が開始され(ステップS32)、圧力センサ43,67によって、その間の圧力が測定され制御部8に伝達される。このときの予備塗布では、ポンプ61の制御値が塗布処理における制御値となっているため、ポンプ61の挙動は塗布処理における実際の挙動を再現するものとなる。
【0089】
ステップS32による予備塗布を開始してから所定の時間が経過すると、レジスト供給機構6はポンプ61を停止し(ステップS33)、制御部8が、この間の圧力センサ43の測定値に基づいて走行機構5の制御値を設定する(ステップS34)。
【0090】
図10は、圧力センサ43の測定値と時間との関係を例示する図である。図10では、参考のために、圧力センサ67の測定値を破線で示している。また、図10に示す例において、ポンプ61は、圧力センサ43による測定が開始されてから0.5(sec)経過したときに駆動を開始している。
【0091】
スリットノズル41の一次側に設けられた圧力センサ67の測定値は、ポンプ61の駆動開始から18(msec)遅れて上昇を開始している。一方、スリットノズル41の二次側に設けられた圧力センサ43の測定値は、ポンプ61の駆動開始から38(msec)遅れて上昇を開始している。
【0092】
スリットノズル41の吐出口411からのレジスト液の吐出は、流路410における圧力が上昇することによって開始される。したがって、図10の例から、スリットノズル41の一次側における圧力の上昇が開始されても、この時点ではスリットノズル41からの吐出が開始されないことがわかる。これは、スリットノズル41の一次側に設けられたフィルター(図示せず)やバルブ65等によって供給流路内で圧損が生じることが原因である。
【0093】
したがって、従来のように、スリットノズルの一次側における圧力の測定値に基づいて、スリットノズルの走査を制御(走行機構を制御)する場合、この遅れ(図10に示す例では20msecの遅れ)を予測によって補いつつ制御しなければならないため、精度が低下するという問題があった。
【0094】
しかし、基板処理装置1では、スリットノズル41の二次側(配管42)に圧力センサ43を設けることにより、ほぼ流路410の圧力に相当する値を測定することができ、スリットノズル41の吐出状態を正確に把握することができる。したがって、制御部8は、塗布処理における走行機構5の制御値を適切に設定できる。なお、本実施の形態における制御部8は、圧力センサ43による測定値の上昇曲線に、走行機構5の速度曲線が沿うように、走行機構5の制御値を設定する。
【0095】
走行機構5の制御値を設定すると、基板処理装置1はノズル初期化処理(ステップS35)を実行した後、制御値取得処理を終了して、図6に示す処理に戻る。
【0096】
なお、詳細は説明しないが、ノズル初期化処理とは、まず、スリットノズル41を洗浄位置に移動させて洗浄した後、予備塗布機構73によって予備塗布処理を行う。この予備塗布処理は、スリットノズル41の吐出口411付近にレジスト液の液溜まりを形成する処理である。そして、その後、スリットノズル41を待機位置に移動させてノズル初期化処理は終了する。
【0097】
図6に戻って、制御値取得処理が終了すると、基板処理装置1は基板90が搬入されるまで待機し(ステップS12)、基板90が搬入されると塗布処理を実行する(ステップS13)。
【0098】
塗布処理が開始されると、まず走行機構5が、架橋構造4を基板90上の塗布処理を行う位置に移動させるとともに、昇降機構43,44が所定の高さにスリットノズル41の高さを調節する。
【0099】
これらの位置調整が完了次第、レジスト供給機構6がスリットノズル41にレジスト液の供給を開始する。このとき、ポンプ61は、制御部8によって、ステップS25において設定された制御値に基づいて制御される。
【0100】
さらに、走行機構5が架橋構造4を移動させることにより、基板90へのレジスト液の塗布、つまりは塗布処理が行われる。このとき、走行機構5は、制御部8によって、ステップS34において設定された制御値に基づいて制御される。
【0101】
1枚の基板90に対する塗布処理が終了すると、再びノズル初期化処理を実行するとともに(ステップS14)、全ての基板90について処理が終了したか否かを判定する(ステップS15)。さらに処理すべき基板90が残っている場合には、ステップS12に戻って処理を繰り返し、全ての基板90について処理が終了している場合は、処理を終了する。
【0102】
以上のように、基板処理装置1は、レジスト液をスリットノズル41に送液するための配管63と独立して設けられ、スリットノズル41内の流路410と直接連通する配管42に圧力センサ43を設置し、当該圧力センサ43の測定結果に基づいて走行機構5を制御することにより、レジスト液の吐出状態を正確に測定できる。したがって、走行機構5を正確に制御できる。
【0103】
また、予備塗布機構73にレジスト液を塗布する際の圧力センサ43の測定結果に基づいて、基板90にレジスト液を塗布する際の走行機構5を制御することにより、塗布処理ごとに毎回測定する必要がなく、演算処理量を抑制できる。
【0104】
また、ポンプ61によって送液されるレジスト液の圧力を測定する圧力センサ66を備え、予備塗布機構73にレジスト液を塗布する際の圧力センサ66の測定結果に基づいて、基板90にレジスト液を塗布する際のポンプ61を制御することにより、ポンプ61を正確に制御することことができる。したがって、塗布処理における精度がさらに向上する。
【0105】
また、圧力センサ43を設ける二次側流路として、スリットノズル41の内部からエアを抜くための配管42を用いることにより、圧力センサ43を取り付けるための流路を別途設ける必要がない。
【0106】
なお、上記実施の形態では、詳細に述べなかったが、塗布処理における圧力センサ66,67は、ポンプ61の異常(例えば脈動等)を検出するための監視センサとして使用する。これにより、基板処理装置1は、別途、検出センサを設けることなく、塗布処理における異常を検出することができる。
【0107】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、ポンプ61の制御値だけでなく、走行機構5の制御値も制御値取得工程(ステップS11)において設定した。すなわち、走行機構5の制御値も塗布処理に先立って、予め設定されていた。
【0108】
しかし、塗布処理(ステップS13)において、常時、圧力センサ43による測定を行い、塗布開始時にこの測定値に追随するように走行機構5を制御してもよい。すなわち、塗布処理が実行されるたびに、圧力センサ43の測定結果に応じて走行機構5を制御してもよい。
【0109】
このような構成によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
<3. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0111】
例えば、上記実施の形態では、1枚の基板90に対する処理が終了するたびにノズル初期化処理を実行すると説明したが、ノズル初期化処理を実行するタイミングはこれに限られるものではない。例えば、所定の枚数が終了するたびに行ってもよいし、所定の時間が経過するたびに行ってもよい。あるいはオペレータからの指示に応じて行ってもよい。
【0112】
また、上記実施の形態に示した各工程は例示であって、ここに示した内容および順序に限定されるものではなく、同様の効果が得られるならば、内容または順序が適宜変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る基板処理装置の概略を示す斜視図である。
【図2】基板処理装置の本体の側断面を示すとともに、レジスト液の塗布動作に係る主たる構成要素を示す図である。
【図3】スリットノズルとレジスト供給機構とを示す図である。
【図4】スリットノズルにレジスト液を供給する供給流路の構造を様々に変化させた場合における圧力センサの測定値を示す図である。
【図5】開口内に設けられたノズル初期化機構の詳細を示す図である。
【図6】基板処理装置の動作を示す流れ図である。
【図7】基板処理装置の制御値取得処理の詳細を示す流れ図である。
【図8】基板処理装置の制御値取得処理の詳細を示す流れ図である。
【図9】ポンプの吐出流量と、圧力センサでそれぞれ測定される測定値との関係を例示する図である。
【図10】圧力センサの測定値と時間との関係を例示する図である。
【図11】供給流路の構造を様々に変化させた場合におけるスリットノズルの一次側に設けられた圧力センサの測定値を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 基板処理装置
41 スリットノズル
410 流路
411 吐出口
42,62,63 配管
43,66,67 圧力センサ
5 走行機構
50,51 リニアモータ
6 レジスト供給機構
61 ポンプ
73 予備塗布機構
8 制御部
90 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットコータにおける処理液の吐出を制御する技術に関する。より詳しくは、正確な制御を行うための測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶用ガラス角形基板、半導体ウェハ、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルタ用基板等(以下、単に「基板」と称する)の表面にフォトレジスト等の処理液を塗布する塗布装置が知られている。例えば、塗布装置としては、スリット状の吐出部を有するスリットノズルを用いてスリットコートを行うスリットコータがある。スリットコータでは、塗布膜厚のばらつき(塗布ムラ)は、配線幅の変化の原因となるため、塗布膜厚の制御(均一性)は、特に重要な要素である。
【0003】
スリットコータは、スリットノズルからレジストを吐出し、これと同時にスリットノズルを一定の速度で移動させることにより均一な膜厚を形成するため、膜厚制御を行う場合、塗布開始位置と塗布終了位置とにおける膜厚制御が最も困難である。特に、塗布開始位置においては、スリットノズルの移動加速時間と吐出流量の加速時間が短いほど膜厚の不安定領域が減少する。
【0004】
スリットコータの一般的な塗布速度は200mm/秒程度であり、塗布開始位置における不安定領域を10mm以内に収めるためには、移動加速時間を0.025秒程度の間に完了することが求められる。一方、塗布される膜厚はスリットノズルからの吐出流量の影響が大きいため、膜厚制御には吐出流量を正確に計測することが求められる。しかし、吐出流量を直接計測する流量計は、短時間の計測には不向き(正確に計測できない)であり、これほどの短時間に正確な値を計測することは実質的に不可能である。
【0005】
したがって、従来より、圧力センサを用いて吐出状態を観察する手法が提案されている。例えば、このような技術が特許文献1に記載されている。特許文献1では、スリットノズルの一次側(吐出ポンプとスリットノズルとの間)に1つの圧力センサを設け、この圧力センサによって測定された処理液の圧力に基づいて、吐出制御する技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−181360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている技術では、圧力センサがスリットノズルの一次側に設けられている。
【0008】
図11は、供給流路の構造(配管径、長さ、配管の配置等)を様々に変化させた場合におけるスリットノズルの一次側に設けられた圧力センサの測定値を示す図である。図11に示されるように、スリットノズルの一次側に設けられた圧力センサの測定値は、供給路の構造によって様々に変化する。これは、すなわち、圧力センサをスリットノズルの一次側に設けた場合には、吐出ポンプからスリットノズルまでの間の圧力損失が測定値に大きく影響することを示している。
【0009】
言い換えれば、特許文献1に記載されている圧力センサは、スリットノズルにかかる圧力を測定していない(実際にスリットノズルから吐出されている処理液の状態を正確に測定できていない)という問題があった。したがって、このような圧力センサで測定した圧力は一次遅れの影響を受けた数値であって、実際の制御に使用する場合においては、この遅れを考慮して計算を行わなければならないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、スリットノズルから吐出される処理液の状態を正確に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に処理液を塗布する基板処理装置であって、内部に処理液の流路が設けられ、前記流路からスリット状の吐出口を介して処理液を吐出するスリットノズルと、処理液を塗布する基板と前記スリットノズルとを相対的に移動させる移動手段と、処理液の第1流路を介して前記スリットノズル内の前記流路に処理液を送液する送液手段と、前記第1流路と独立して設けられ、前記スリットノズル内の前記流路と直接連通する処理液の第2流路と、前記第2流路に設置される圧力測定手段と、前記圧力測定手段の測定結果に基づいて前記移動手段を制御する移動制御手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置であって、基板に対する処理に先立って処理液が塗布される予備塗布部をさらに備え、前記移動制御手段は、前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記移動手段を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板処理装置であって、送液手段によって送液される処理液の圧力を測定する送液圧力測定手段と、前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記送液圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記送液手段を制御する送液制御手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記第2流路は、前記スリットノズルの内部からエアを抜くための配管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし4に記載の発明では、処理液の第1流路を介してスリットノズル内の流路に処理液を送液する送液手段と、第1流路と独立して設けられ、スリットノズル内の流路と直接連通する処理液の第2流路と、第2流路に設置される圧力測定手段と、圧力測定手段の測定結果に基づいて移動手段を制御する移動制御手段とを備えることにより、処理液の吐出状態を正確に測定できる。したがって、移動手段を正確に制御できる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、基板に対する処理に先立って処理液が塗布される予備塗布部をさらに備え、移動制御手段は、予備塗布部に処理液を塗布する際の圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の移動手段を制御することにより、塗布処理ごとに毎回測定する必要がなく、演算処理量も抑制できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、送液手段によって送液される処理液の圧力を測定する送液圧力測定手段と、予備塗布部に処理液を塗布する際の送液圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の送液手段を制御する送液制御手段とをさらに備えることにより、送液手段を正確に制御することができる。したがって、塗布処理における精度がさらに向上する。
【0018】
請求項4に記載の発明では、第2流路は、スリットノズルの内部からエアを抜くための配管であることにより、エア抜き配管と兼用することができ、圧力測定手段を取り付けるための流路を別途設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0020】
<1. 第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置1の概略を示す斜視図である。図2は、基板処理装置1の本体2の側断面を示すとともに、レジスト液の塗布動作に係る主たる構成要素を示す図である。
【0021】
なお、図1において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の図についても同様である。
【0022】
基板処理装置1は、本体2と制御部8とに大別され、液晶表示装置の画面パネルを製造するための角形ガラス基板を被処理基板(以下、単に「基板」と称する)90としており、基板90の表面に形成された電極層などを選択的にエッチングするプロセスにおいて、基板90の表面に処理液としてのレジスト液を塗布する塗布装置として構成されている。したがって、この実施の形態では、スリットノズル41はレジスト液を吐出するようになっている。なお、基板処理装置1は、液晶表示装置用のガラス基板だけでなく、一般に、フラットパネルディスプレイ用の種々の基板に処理液を塗布する装置として変形利用することもできる。
【0023】
本体2は、基板90を載置して保持するための保持台として機能するとともに、付属する各機構の基台としても機能するステージ3を備える。ステージ3は直方体形状を有する例えば一体の石製であり、その上面(保持面30)および側面は平坦面に加工されている。
【0024】
ステージ3の上面は水平面とされており、基板90の保持面30となっている。保持面30には図示しない多数の真空吸着口が分布して形成されており、基板処理装置1において基板90を処理する間、基板90を吸着することにより、基板90を所定の水平位置に保持する。また、保持面30には、図示しない駆動手段によって上下に昇降自在な複数のリフトピンLPが、適宜の間隔をおいて設けられている。リフトピンLPは、基板90を取り除く際に基板90を押し上げるために用いられる。
【0025】
保持面30のうち基板90の保持エリア(基板90が保持される領域)を挟んだ両端部には、略水平方向に平行に伸びる一対の走行レール31が固設される。走行レール31は、架橋構造4の両端部の最下方に固設される図示しない支持ブロックとともに、架橋構造4の移動を案内し(移動方向を所定の方向に規定する)、架橋構造4を保持面30の上方に支持するリニアガイドを構成する。
【0026】
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡された架橋構造4が設けられている。架橋構造4は、例えばカーボンファイバ補強樹脂を骨材とするノズル支持部40と、その両端を支持する昇降機構43,44とから主に構成される。
【0027】
ノズル支持部40には、スリットノズル41が取り付けられている。図1においてY軸方向に長手方向を有するスリットノズル41には、スリットノズル41へレジスト液を供給するレジスト供給機構6(図2)が接続されている。なお、スリットノズル41とレジスト供給機構6とについての詳細は後述する。
【0028】
昇降機構43,44は、スリットノズル41の両側に分かれて、ノズル支持部40によりスリットノズル41と連結されている。昇降機構43,44は主にACサーボモータ43a,44aおよび図示しないボールネジからなり、制御部8からの制御信号に基づいて、架橋構造4の昇降駆動力を生成する。これにより、昇降機構43,44は、スリットノズル41を並進的に昇降させる。また、昇降機構43,44は、スリットノズル41のYZ平面内での姿勢を調整するためにも用いられる。
【0029】
架橋構造4の両端部には、ステージ3の両側の縁側に沿って、それぞれ固定子(ステータ)50aと移動子50bおよび固定子51aと移動子51bを備える一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50,51が、それぞれ固設される。また、架橋構造4の両端部には、それぞれスケール部と検出子とを備えたリニアエンコーダ52,53が、それぞれ固設される。リニアエンコーダ52,53は、リニアモータ50,51の位置を検出する。
【0030】
これらリニアモータ50,51とリニアエンコーダ52,53とが主として、架橋構造4が走行レール31に案内されつつステージ3上を移動するための走行機構5を構成する。制御部8は、リニアエンコーダ52,53からの検出結果に基づいてリニアモータ50の動作を制御し、ステージ3上における架橋構造4の移動、つまりはスリットノズル41による基板90の走査を制御する。
【0031】
図3は、スリットノズル41とレジスト供給機構6とを示す図である。図3において、スリットノズル41は概略の断面として示す。
【0032】
スリットノズル41は、第1本体部41aと第2本体部41bとを備える。詳細は図示しないが、第1本体部41aの接合面には、所定の形状の凹部が設けられている。第1本体部41aの接合面と第2本体部41bの接合面とは、X軸方向に対向するように接合される。
【0033】
このように、第1本体部41aと第2本体部41bとの接合面が接合されることによって、第1本体部41aの接合面に形成された凹部が、スリットノズル41の内部におけるレジスト液の流路410となる。なお、流路410を形成するための凹部は、第2本体部41bに形成されてもよいし、両者に形成されてもよい。
【0034】
さらに、流路410は(−Z)方向に開口しており、この開口が吐出口411を形成する。吐出口411は、スリットノズル41の長手方向(Y軸方向)に沿って延びており、スリット状となっている。
【0035】
スリットノズル41の上部中央には、流路410に直接連通するように、配管42が接続されている。配管42は、スリットノズル41内に溜まったエアを抜き取るためのエア抜き用の配管である。図3に示すように、配管42は、配管63と独立して設けられ、スリットノズル41内の流路410と直接連通する。スリットノズル41からエアを抜き取るとき、配管42はレジスト液とともにエアを抜き取るため、配管42はレジスト液の流路ともなる。すなわち、配管42は、本発明における第2流路としての機能を有する。
【0036】
配管42には圧力センサ43が取り付けられている。配管42に設置される圧力センサ43は、配管42内のレジスト液の圧力を測定して制御部8に伝達する。なお、圧力センサ43は、配管42内のエアの圧力を測定してもよい。すなわち、圧力センサ43が、主に本発明における圧力測定手段に相当する。
【0037】
また、配管42には、制御部8からの制御信号に応じて配管42を開閉するバルブ44が取り付けられている。塗布処理等においてスリットノズル41からレジスト液が吐出される際には、バルブ44は閉じられている。
【0038】
図4は、スリットノズル41にレジスト液を供給する供給流路の構造を様々に変化させた場合における圧力センサ43の測定値を示す図である。図4に示す第1構造ないし第6構造は、それぞれ図11に示した第1構造ないし第6構造に相当する構造である。
【0039】
図4に示すように、圧力センサ43の測定値は、各構造における違いが小さく、供給流路の構造が変化してもその影響が小さいことがわかる。このことから、圧力センサ43は、スリットノズル41(流路410)にかかる実際の圧力を測定できていることがわかる。
【0040】
図3に戻って、レジスト供給機構6は、レジスト液を貯留するレジストボトル60、レジスト液を送液するポンプ61、レジスト液の流路となる配管62,63およびバルブ64,65を備える。
【0041】
ポンプ61は、制御部8からの制御信号に応じて駆動し、レジストボトル60内に貯留されているレジスト液を配管62を介して吸引するとともに、吸引したレジスト液をスリットノズル41に向けて配管63を介して送液する。
【0042】
配管62は、レジストボトル60からポンプ61までの間のレジスト液の流路を形成し、必要に応じてバルブ64によって開閉される。
【0043】
また、配管63は、スリットノズル41の流路410と連通接続されており、必要に応じてバルブ65によって開閉される。なお、図3においては詳細を省略しているが、本実施の形態における基板処理装置1では、流路410のY軸方向の両端部に配管63が連通接続されており、配管63は、ポンプ61からスリットノズル41までの間のレジスト液の流路を形成する。
【0044】
すなわち、ポンプ61は、レジスト液の第1流路(配管63)を介して、スリットノズル41内の流路410にレジスト液を送液する機能を有しており、スリットノズル41へのレジスト液の供給はY軸方向の両端部から行われる。なお、配管63と流路410との接続構造は、Y軸方向の両端部における接続に限定されるものではなく、例えば、中央部に接続される構造でもよい。
【0045】
配管62に取り付けられているバルブ64は、配管62を開閉する機能を有している。同様に、配管63に取り付けられているバルブ65は、配管63を開閉する機能を有している。なお、図示を省略しているが、バルブ64,65は、制御部8からの制御信号によって開閉する。
【0046】
圧力センサ66,67は、それぞれ配管62,63に設置されている。そして、圧力センサ66,67は、ポンプ61によって送液されるレジスト液の圧力を測定して、制御部8に伝達する。
【0047】
以上の構成により、レジスト供給機構6は、制御部8からの制御信号に応じてバルブ64,65を開閉するとともに、ポンプ61を駆動する。これにより、レジストボトル60から吸引されたレジスト液は、配管62,63を通ってスリットノズル41の流路410に供給される。なお、スリットノズル41(流路410)に供給されたレジスト液は、流路410を通って、スリット状の吐出口411から吐出される。
【0048】
図1および図2に戻って、本体2の保持面30において、保持エリアの(−X)方向側には、開口32が設けられている。開口32はスリットノズル41と同じくY軸方向に長手方向を有し、かつ該長手方向長さはスリットノズル41の長手方向長さとほぼ同じである。また、開口32の下方の本体2の内部には、ノズル初期化機構7が設けられている。ノズル初期化機構7は、基板90へのレジスト液の塗布に先立って行われる、予備処理(後述する)に際し用いられる。
【0049】
図5は、開口32内に設けられたノズル初期化機構7の詳細を示す図である。ノズル初期化機構7は、ガス供給機構71、排気機構72、予備塗布機構73、ノズル洗浄機構74、および洗浄液供給機構75を備えている。なお、以下、スリットノズル41の図5に実線で示す位置を「予備塗布位置」と称する。
【0050】
従来の基板処理装置においても、製品としての基板に対する塗布処理の合間において、スリットノズルを初期化(洗浄等)するための機構(ノズル初期化機構7に相当する機構)を備えている。詳細は後述するが、本実施の形態における基板処理装置1は、ノズル初期化機構7を、塗布処理におけるパラメータを得るための機構として兼用することにより、コストを抑制しつつ、塗布処理における正確な制御と演算処理の抑制とを実現するものである。
【0051】
ガス供給機構71は、図示しないボンベから供給配管710を介して予備塗布機構73に、例えば窒素ガスなどの不活性ガスを供給する機構である。また、排気機構72は、排気配管720を介して予備塗布機構73の筐体732内の雰囲気を吸引排気する機構である。なお、これらの機構としては、従来から一般的に知られている機構を採用することができる。例えば、排気機構72は、真空発生装置やコンプレッサーを採用することにより実現することができる。
【0052】
予備塗布機構73は、回転機構730、ローラ731、筐体732、液切りブレード733、遮蔽ブレード734、およびシャワーノズル735を備えている。
【0053】
回転機構730は、詳細は省略するが、回転駆動力を生成する回転モータおよび当該回転駆動力を伝達するリンク部材などから構成される機構である。当該回転モータによって生成された回転駆動力はリンク部材を介してローラ731に伝達され、ローラ731は図5において時計回りに回転する。
【0054】
円筒状のローラ731は、その円筒面が予備塗布処理においてスリットノズル41からレジスト液が塗布される塗布面731aを構成しており、その円筒中心が軸心731bを構成している。ローラ731の軸心731bは、Y軸方向に沿うように配置される。ローラ731の軸心731bには回転機構730から回転駆動力が伝達され、これにより、ローラ731は軸心731bを中心に、図5において時計回りに回転する。
【0055】
筐体732は、図5に示すように、上面からローラ731の一部が露出するように配置される略箱状の部材である。筐体732の内部には、ローラ731の塗布面731aの一部を浸すのに適した量の洗浄液が貯留される。すなわち、回転機構730がローラ731を回転させることにより、ローラ731の塗布面731aがこの貯留された洗浄液に浸される。また、塗布面731aのうち洗浄液に浸っている部分は、ローラ731が回転することにより洗浄液から引き上げられる。
【0056】
このように、予備塗布機構73では、ローラ731の塗布面731aが洗浄液に浸されることにより、塗布面731aに塗布されたレジスト液が洗浄除去される。なお、塗布面731aを洗浄する機構としては、これに限られるものではなく、例えば筐体732内に塗布面731aに向けて洗浄液を吐出するノズルを設けてもよい。
【0057】
筐体732の内部には、液切りブレード733が固設されている。また、液切りブレード733は、Y軸方向に略均一な板状のブレード733aを備えている。ブレード733aはローラ731の塗布面731aに向けてわずかに押圧された状態で、Y軸方向に均一に当接している。この状態でローラ731が回転すると、ブレード733aと塗布面731aとは相対的に移動し、ブレード733aによって塗布面731aが走査される。なお、一般的にブレード733aは、付着物の除去作用を持つ作用部(塗布面731aに当接する部分)が長手方向に均一であれば足りる。
【0058】
このようにして、ブレード733aは塗布面731aに付着した付着物(残存するレジスト液や洗浄液など)を掻き取る。ブレード733aは、前述のように、塗布面731aに対してY軸方向に均一に当接しているため、Y軸方向に均一な状態で塗布面731aから付着物を除去することができ、塗布面731aの状態の均一性を向上させることができる。なお、ブレード733aは、塗布面731aより硬度の低い材質、具体的には樹脂またはゴム等により形成される。
【0059】
筐体732の長手方向の内側面にはガス噴出口732aが設けられている。ガス噴出口732aは筐体732の長手方向に沿って略均一なスリット形状であって、筐体732の側面部材を貫通する孔の内側開口部となっている。また、この貫通孔には、ガス供給機構71の供給配管710が連通接続されている。
【0060】
このような構造により、筐体732には供給配管710を介してガス供給機構71から不活性ガス(例えば清浄な窒素ガス)が供給され、供給された窒素ガスはガス噴出口732aからローラ731の塗布面731aに向けてY軸方向に均一な状態で噴出される。これにより、塗布面731aに付着している洗浄液の乾燥が促進されるとともに、塗布面731aのY軸方向における乾燥状態の均一性を高めることができる。
【0061】
筐体732の内部雰囲気は、筐体732の長手方向の内側面に設けられた吸引口732bから排気配管720を介して、排気機構72によって吸引排気される。これにより、洗浄液の溶剤雰囲気がすみやかに排気され、ローラ731の塗布面731aに付着している洗浄液の乾燥が促進される。なお、筐体732の内部においては、筐体732の底部の近傍ほど洗浄液の溶剤雰囲気濃度が高い。したがって、本実施の形態における基板処理装置1では、図5に示すように、吸引口732bを低い位置に設けており、これによって、筐体732の内部の溶剤成分を効率よく排気することができる。
【0062】
また、ローラ731が軸心731bを中心に回転すると、筐体732の内部では、塗布面731aの回転方向に追随するように、スリットノズル41に向かって流れる気流が発生する。ここで、筐体732の内部雰囲気は洗浄液の溶剤成分や除去されたレジスト液など、パーティクルの原因となる汚染物が浮遊しており、これがスリットノズル41に向かって流れることは好ましくない。しかし、本実施の形態における基板処理装置1は、吸引口732bをガス噴出口732aよりも低い位置に設けることにより、筐体732の内部において、図5の矢印に示す方向に流れる気流を形成する。したがって、パーティクルの原因物質を含んだ雰囲気が、スリットノズル41に向かって流れることを防止することができる。
【0063】
筐体732の上部に設けられる遮蔽ブレード734は、ローラ731の塗布面731aに近接(近接間隔1mm程度)し、かつ略水平方向となるように、配置される板状の部材である。このような配置により、遮蔽ブレード734は、塗布面731aのうち未乾燥部分が曝されているに雰囲気(図5において筐体732内部左側に存在する雰囲気)と、スリットノズル41の先端部付近の雰囲気とを遮蔽する。これにより、洗浄液の成分を含んだ雰囲気がスリットノズル41の先端部に悪影響を及ぼすことをさらに効果的に防止することができる。
【0064】
シャワーノズル735はY軸方向に沿ってほぼ均一に設けられており、洗浄液供給機構75から供給される洗浄液を液切りブレード733のブレード733aに向けて吐出するノズルである。これにより、液切りブレード733が掻き取った付着物をブレード733aから洗い流すことができ、ブレード733aに付着物が累積することを防止することができる。したがって、ブレード733aによる塗布面731aに付着した付着物の除去が効率的に行われる。なお、シャワーノズル735から吐出された洗浄液は、筐体732内部に貯留され、図示しないドレイン機構によって排出される。
【0065】
なお、図5に示すように、本実施の形態における基板処理装置1の予備塗布機構73では、ローラ731の塗布面731aの回転方向(図5において時計回り方向)に沿って、スリットノズル41、洗浄液貯まりおよびガス噴出口732aが配置されている。
【0066】
ノズル洗浄機構74は、駆動機構740、ガイドブロック741および待機ポット742から構成され、本塗布処理を繰り返すことによってスリットノズル41の先端部側面に付着したレジスト液を洗浄除去する機能を有している。
【0067】
駆動機構740は、ガイドブロック741をY軸方向に移動させる機構である。駆動機構740としては、回転モータとボールネジとを用いた一般的な直動機構を採用することができる。
【0068】
ガイドブロック741は、駆動機構740によってスリットノズル41の長手方向(Y軸方向)に沿って移動可能に設けられている。ガイドブロック741は、洗浄液供給機構75によって供給される洗浄液をスリットノズル41の先端部に向けて吐出しつつ、駆動機構740によって移動することによって、スリットノズル41を走査する。これにより、ガイドブロック741がスリットノズル41の吐出口411の近傍を洗浄する。なお、スリットノズル41は、ノズル洗浄処理に先立って、所定の位置(以下、「洗浄位置」と称する)に移動しており、ノズル洗浄処理においては、この洗浄位置にあるスリットノズル41に対してガイドブロック741による走査が行われる。
【0069】
待機ポット742は、ガイドブロック741のほぼ直下に固定配置されており、スリットノズル41の長手方向の幅とほぼ同じサイズを有する略箱状の部材である。待機ポット742の内部にはレジスト液の溶剤が貯留されている。待機ポット742は、比較的長時間、本塗布処理が行われない場合において、スリットノズル41の特に吐出口411付近のレジスト液が乾燥変質しないように設けられる機構である。
【0070】
待機ポット742の上面には、スリットノズル41の先端部を内部に挿入するための開口部742aが設けられている。スリットノズル41は、待機中において、洗浄位置からさらにZ軸方向に下降した所定の位置(以下、「待機位置」と称する)に移動する。スリットノズル41が、この待機位置にあるとき、スリットノズル41の先端部は、開口部742aから待機ポット742の内部に挿入された状態となり、溶剤雰囲気に曝されることにより、レジスト液の乾燥が抑制される。
【0071】
図1に戻って、制御部8は、プログラムに従って各種データを処理する演算部80、プログラムや各種データを保存する記憶部81を内部に備える。また、前面には、オペレータが基板処理装置1に対して必要な指示を入力するための操作部82、および各種データを表示する表示部83を備える。
【0072】
制御部8は、図1においては図示しないケーブルにより本体2に付属する各機構と電気的に接続されている。制御部8は、操作部82からの入力信号や、圧力センサ43,66,67などからの信号に基づいて、昇降機構43,44による昇降動作、走行機構5による走行動作、レジスト供給機構6によるレジスト液の供給動作、さらにはノズル初期化機構7および予備塗布機構73に付随する各駆動機構、各回動機構および各バルブ等の動作を制御する。特に、制御部8は、本発明における移動制御手段および送液制御手段としての機能を有するが、これらの機能については後述する。
【0073】
また、データを一時的に記憶するRAM、読み取り専用のROM、および磁気ディスク装置などが記憶部81に該当する。あるいは、可搬性の光磁気ディスクやメモリーカードなどの記憶媒体、およびそれらの読み取り装置などであってもよい。
【0074】
また、操作部82には、ボタンおよびスイッチ類(キーボードやマウスなどを含む。)などが該当する。もしくは、タッチパネルディスプレイのように表示部83の機能を兼ね備えたものであってもよい。表示部83には、液晶ディスプレイや各種ランプなどが該当する。
【0075】
以上が本実施の形態における基板処理装置1の構成および機能の説明である。次に、基板処理装置1の動作について説明する。
【0076】
図6は、基板処理装置1の動作を示す流れ図である。基板処理装置1は、電源が投入されると、所定の初期設定を行った後、予備塗布処理を実行する(ステップS11)。
【0077】
図7および図8は、基板処理装置1の制御値取得処理の詳細を示す流れ図である。制御値取得処理では、まず、スリットノズル41が洗浄位置に移動し、ガイドブロック741による走査が行われ、スリットノズル41に対する洗浄処理が行われる(ステップS21)。
【0078】
洗浄処理が終了すると、昇降機構43,44および走行機構5がスリットノズル41を予備塗布位置に移動させるとともに、圧力センサ66が圧力の測定を開始する(ステップS22)。
【0079】
スリットノズル41が予備塗布位置に移動すると、予備塗布機構73の回転機構730が駆動を開始し、ローラ731が回転を開始する。この動作と並行して、レジスト供給機構のバルブ64,65が開放状態となり、ポンプ61が駆動される。ポンプ61が駆動されると、レジスト液がスリットノズル41に供給され、吐出口411から吐出されてローラ731の塗布面731aに塗布される。
【0080】
これら一連の動作によって、予備塗布機構73による予備塗布が開始され(ステップS23)、圧力センサ66によって、その間の圧力が測定され制御部8に伝達される。すなわち、圧力センサ66によって、駆動開始時のポンプ61の挙動を観測するのである。
【0081】
ステップS23によって予備塗布が開始されてから所定の時間が経過すると、レジスト供給機構6はポンプ61を停止する(ステップS24)。これにより、一旦、予備塗布が停止する。
【0082】
次に、制御部8が圧力センサ66から伝達された測定値に基づいて、駆動開始時のポンプ61の制御値(パラメータ)を設定する(ステップS25)。詳細は省略するが、制御値は、オーバーシュートが発生せず、かつ、可能な限り短時間で所望の吐出流量に安定するように設定される。
【0083】
本実施の形態においては、制御値としてポンプ61の駆動速度値を使用するが、もちろんこれに限定されるものではない。また、制御部8は、設定された制御値に基づいて、後述する塗布処理におけるポンプ61が制御される。
【0084】
このようにステップS22ないしS25の処理が実行されることにより、制御部8は、予備塗布機構73にレジスト液を塗布する際の圧力センサ66の測定結果に基づいて、基板90にレジスト液を塗布する際のポンプ61を制御する。すなわち、先述のように、制御部8は、本発明における送液制御手段としての機能を有する。
【0085】
図9は、ポンプ61の吐出流量と、圧力センサ43,66,67でそれぞれ測定される測定値との関係を例示する図である。図9から明らかなように、圧力の測定値は、測定する位置によってばらつくため、目的に応じてどの位置を測定するかが重要である。
【0086】
ここで、圧力センサ66は、ポンプ61の比較的近傍(配管62)に配置されているので、ポンプ61の挙動を正確に観測できる。したがって、基板処理装置1は、ポンプ61に対する制御値をより適切な値に決定できる。なお、制御値を設定するためには、当該制御値を変更しつつ、ステップS22ないしS24の処理を複数回繰り返すように構成してもよい。
【0087】
ポンプ61の制御値が設定されると、圧力センサ43による圧力の測定を開始するとともに(ステップS31)、予備塗布機構73の回転機構730が駆動を開始し、ローラ731が回転を開始する。この動作と並行して、レジスト供給機構のバルブ64,65が開放状態となり、ポンプ61がステップS25において設定された制御値に基づいて駆動される。ポンプ61が駆動されると、レジスト液がスリットノズル41に供給され、吐出口411から吐出されてローラ731の塗布面731aに塗布される。
【0088】
これら一連の動作によって、予備塗布機構73による予備塗布が開始され(ステップS32)、圧力センサ43,67によって、その間の圧力が測定され制御部8に伝達される。このときの予備塗布では、ポンプ61の制御値が塗布処理における制御値となっているため、ポンプ61の挙動は塗布処理における実際の挙動を再現するものとなる。
【0089】
ステップS32による予備塗布を開始してから所定の時間が経過すると、レジスト供給機構6はポンプ61を停止し(ステップS33)、制御部8が、この間の圧力センサ43の測定値に基づいて走行機構5の制御値を設定する(ステップS34)。
【0090】
図10は、圧力センサ43の測定値と時間との関係を例示する図である。図10では、参考のために、圧力センサ67の測定値を破線で示している。また、図10に示す例において、ポンプ61は、圧力センサ43による測定が開始されてから0.5(sec)経過したときに駆動を開始している。
【0091】
スリットノズル41の一次側に設けられた圧力センサ67の測定値は、ポンプ61の駆動開始から18(msec)遅れて上昇を開始している。一方、スリットノズル41の二次側に設けられた圧力センサ43の測定値は、ポンプ61の駆動開始から38(msec)遅れて上昇を開始している。
【0092】
スリットノズル41の吐出口411からのレジスト液の吐出は、流路410における圧力が上昇することによって開始される。したがって、図10の例から、スリットノズル41の一次側における圧力の上昇が開始されても、この時点ではスリットノズル41からの吐出が開始されないことがわかる。これは、スリットノズル41の一次側に設けられたフィルター(図示せず)やバルブ65等によって供給流路内で圧損が生じることが原因である。
【0093】
したがって、従来のように、スリットノズルの一次側における圧力の測定値に基づいて、スリットノズルの走査を制御(走行機構を制御)する場合、この遅れ(図10に示す例では20msecの遅れ)を予測によって補いつつ制御しなければならないため、精度が低下するという問題があった。
【0094】
しかし、基板処理装置1では、スリットノズル41の二次側(配管42)に圧力センサ43を設けることにより、ほぼ流路410の圧力に相当する値を測定することができ、スリットノズル41の吐出状態を正確に把握することができる。したがって、制御部8は、塗布処理における走行機構5の制御値を適切に設定できる。なお、本実施の形態における制御部8は、圧力センサ43による測定値の上昇曲線に、走行機構5の速度曲線が沿うように、走行機構5の制御値を設定する。
【0095】
走行機構5の制御値を設定すると、基板処理装置1はノズル初期化処理(ステップS35)を実行した後、制御値取得処理を終了して、図6に示す処理に戻る。
【0096】
なお、詳細は説明しないが、ノズル初期化処理とは、まず、スリットノズル41を洗浄位置に移動させて洗浄した後、予備塗布機構73によって予備塗布処理を行う。この予備塗布処理は、スリットノズル41の吐出口411付近にレジスト液の液溜まりを形成する処理である。そして、その後、スリットノズル41を待機位置に移動させてノズル初期化処理は終了する。
【0097】
図6に戻って、制御値取得処理が終了すると、基板処理装置1は基板90が搬入されるまで待機し(ステップS12)、基板90が搬入されると塗布処理を実行する(ステップS13)。
【0098】
塗布処理が開始されると、まず走行機構5が、架橋構造4を基板90上の塗布処理を行う位置に移動させるとともに、昇降機構43,44が所定の高さにスリットノズル41の高さを調節する。
【0099】
これらの位置調整が完了次第、レジスト供給機構6がスリットノズル41にレジスト液の供給を開始する。このとき、ポンプ61は、制御部8によって、ステップS25において設定された制御値に基づいて制御される。
【0100】
さらに、走行機構5が架橋構造4を移動させることにより、基板90へのレジスト液の塗布、つまりは塗布処理が行われる。このとき、走行機構5は、制御部8によって、ステップS34において設定された制御値に基づいて制御される。
【0101】
1枚の基板90に対する塗布処理が終了すると、再びノズル初期化処理を実行するとともに(ステップS14)、全ての基板90について処理が終了したか否かを判定する(ステップS15)。さらに処理すべき基板90が残っている場合には、ステップS12に戻って処理を繰り返し、全ての基板90について処理が終了している場合は、処理を終了する。
【0102】
以上のように、基板処理装置1は、レジスト液をスリットノズル41に送液するための配管63と独立して設けられ、スリットノズル41内の流路410と直接連通する配管42に圧力センサ43を設置し、当該圧力センサ43の測定結果に基づいて走行機構5を制御することにより、レジスト液の吐出状態を正確に測定できる。したがって、走行機構5を正確に制御できる。
【0103】
また、予備塗布機構73にレジスト液を塗布する際の圧力センサ43の測定結果に基づいて、基板90にレジスト液を塗布する際の走行機構5を制御することにより、塗布処理ごとに毎回測定する必要がなく、演算処理量を抑制できる。
【0104】
また、ポンプ61によって送液されるレジスト液の圧力を測定する圧力センサ66を備え、予備塗布機構73にレジスト液を塗布する際の圧力センサ66の測定結果に基づいて、基板90にレジスト液を塗布する際のポンプ61を制御することにより、ポンプ61を正確に制御することことができる。したがって、塗布処理における精度がさらに向上する。
【0105】
また、圧力センサ43を設ける二次側流路として、スリットノズル41の内部からエアを抜くための配管42を用いることにより、圧力センサ43を取り付けるための流路を別途設ける必要がない。
【0106】
なお、上記実施の形態では、詳細に述べなかったが、塗布処理における圧力センサ66,67は、ポンプ61の異常(例えば脈動等)を検出するための監視センサとして使用する。これにより、基板処理装置1は、別途、検出センサを設けることなく、塗布処理における異常を検出することができる。
【0107】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、ポンプ61の制御値だけでなく、走行機構5の制御値も制御値取得工程(ステップS11)において設定した。すなわち、走行機構5の制御値も塗布処理に先立って、予め設定されていた。
【0108】
しかし、塗布処理(ステップS13)において、常時、圧力センサ43による測定を行い、塗布開始時にこの測定値に追随するように走行機構5を制御してもよい。すなわち、塗布処理が実行されるたびに、圧力センサ43の測定結果に応じて走行機構5を制御してもよい。
【0109】
このような構成によっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
<3. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0111】
例えば、上記実施の形態では、1枚の基板90に対する処理が終了するたびにノズル初期化処理を実行すると説明したが、ノズル初期化処理を実行するタイミングはこれに限られるものではない。例えば、所定の枚数が終了するたびに行ってもよいし、所定の時間が経過するたびに行ってもよい。あるいはオペレータからの指示に応じて行ってもよい。
【0112】
また、上記実施の形態に示した各工程は例示であって、ここに示した内容および順序に限定されるものではなく、同様の効果が得られるならば、内容または順序が適宜変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る基板処理装置の概略を示す斜視図である。
【図2】基板処理装置の本体の側断面を示すとともに、レジスト液の塗布動作に係る主たる構成要素を示す図である。
【図3】スリットノズルとレジスト供給機構とを示す図である。
【図4】スリットノズルにレジスト液を供給する供給流路の構造を様々に変化させた場合における圧力センサの測定値を示す図である。
【図5】開口内に設けられたノズル初期化機構の詳細を示す図である。
【図6】基板処理装置の動作を示す流れ図である。
【図7】基板処理装置の制御値取得処理の詳細を示す流れ図である。
【図8】基板処理装置の制御値取得処理の詳細を示す流れ図である。
【図9】ポンプの吐出流量と、圧力センサでそれぞれ測定される測定値との関係を例示する図である。
【図10】圧力センサの測定値と時間との関係を例示する図である。
【図11】供給流路の構造を様々に変化させた場合におけるスリットノズルの一次側に設けられた圧力センサの測定値を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 基板処理装置
41 スリットノズル
410 流路
411 吐出口
42,62,63 配管
43,66,67 圧力センサ
5 走行機構
50,51 リニアモータ
6 レジスト供給機構
61 ポンプ
73 予備塗布機構
8 制御部
90 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理液を塗布する基板処理装置であって、
内部に処理液の流路が設けられ、前記流路からスリット状の吐出口を介して処理液を吐出するスリットノズルと、
処理液を塗布する基板と前記スリットノズルとを相対的に移動させる移動手段と、
処理液の第1流路を介して前記スリットノズル内の前記流路に処理液を送液する送液手段と、
前記第1流路と独立して設けられ、前記スリットノズル内の前記流路と直接連通する処理液の第2流路と、
前記第2流路に設置される圧力測定手段と、
前記圧力測定手段の測定結果に基づいて前記移動手段を制御する移動制御手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
基板に対する処理に先立って処理液が塗布される予備塗布部をさらに備え、
前記移動制御手段は、
前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記移動手段を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
送液手段によって送液される処理液の圧力を測定する送液圧力測定手段と、
前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記送液圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記送液手段を制御する送液制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記第2流路は、前記スリットノズルの内部からエアを抜くための配管であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項1】
基板に処理液を塗布する基板処理装置であって、
内部に処理液の流路が設けられ、前記流路からスリット状の吐出口を介して処理液を吐出するスリットノズルと、
処理液を塗布する基板と前記スリットノズルとを相対的に移動させる移動手段と、
処理液の第1流路を介して前記スリットノズル内の前記流路に処理液を送液する送液手段と、
前記第1流路と独立して設けられ、前記スリットノズル内の前記流路と直接連通する処理液の第2流路と、
前記第2流路に設置される圧力測定手段と、
前記圧力測定手段の測定結果に基づいて前記移動手段を制御する移動制御手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
基板に対する処理に先立って処理液が塗布される予備塗布部をさらに備え、
前記移動制御手段は、
前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記移動手段を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
送液手段によって送液される処理液の圧力を測定する送液圧力測定手段と、
前記予備塗布部に処理液を塗布する際の前記送液圧力測定手段の測定結果に基づいて、基板に処理液を塗布する際の前記送液手段を制御する送液制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記第2流路は、前記スリットノズルの内部からエアを抜くための配管であることを特徴とする基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−119607(P2008−119607A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306663(P2006−306663)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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