説明

基板接続構造および基板接続方法

【課題】本発明は、フレキシブル配線板とガラス基板との接続部およびフレキシブル配線板とプリント配線板との接続部の破損を防止できる基板接続構造を得ることにある。
【解決手段】基板接続構造は、第1の電極29を有するプリント配線板16と、第2の電極36を有するとともに熱膨張係数がプリント配線板16と相違するガラス基板31と、第1の電極29に接続される第3電極39および第2の電極36に接続される第4の電極40を有するフレキシブル配線板19とを備えている。フレキシブル配線板19は、第1の電極29と第2の電極36との間を電気的に接続する。フレキシブル配線板19は、第3の電極39と第4の電極40との間に自由に変形が可能な弛み部45を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばITO(Indium Tin oxide)電極が形成されたガラス基板を、フレキシブル配線板を介してリジッドなプリント配線板に接続するための構造および接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スキャナ機能、印刷機能、複写機能およびネットワーク接続機能等を有する、いわゆるマルチファンクション・ペリフェラルズ(MFP)と称する多機能形の画像形成装置は、原稿のような読み取り対象物から文字や画像等の情報を光学的に読み取るライン走査型のセンサーモジュールを搭載している。
【0003】
この種のセンサーモジュールは、読み取り対象物に光を照射する光源を備えている。この光源としては、LED発光素子が広く用いられているが、近年では、LED発光素子に代えて特許文献1に見られるような有機EL発光素子を用いることが試されている。
【0004】
有機EL発光素子は、走査方向に延びる帯状のガラス基板と、このガラス基板の表面に形成された発光層とを備えている。発光層は、電界を与えた際のエレクトロルミネセンスにより発光するものであり、ガラス基板の端部に形成された電極に電気的に接続されている。
【0005】
有機EL発光素子は、リジッドなプリント配線板に電気的に接続されている。プリント配線板は、例えばガラスエポキシ樹脂やセラミック等の折り曲げ困難な硬質な材料で造られている。このプリント配線板は、ガラス基板の電極に対応する電極パッドを有している。
【0006】
ガラス基板上の電極とプリント配線板上の電極パッドとの間を電気的に接続する場合、例えば特許文献2に開示されているようなフレキシブル配線板を用いることがある。フレキシブル配線板は、ガラス基板の電極に接続される第1の端部と、プリント配線板の電極パッドに接続される第2の端部とを有している。フレキシブル配線板の第1の端部とガラス基板の電極、およびフレキシブル配線板の第2の端部とプリント配線板の電極パッドとは、例えば異方性導電膜を間に挟んで熱圧着したり、あるいは半田付け等により電気的かつ機械的に接合されている。
【特許文献1】特開2003−87502号公報
【特許文献2】特開平3−50871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機EL発光素子のガラス基板とプリント配線板とでは、その熱膨張係数が互いに異なっている。このため、ガラス基板およびプリント配線板が温度や湿度のような外部からの環境的ストレスを受けた場合に、プリント配線板がガラス基板よりも大きく膨張したり、収縮することになる。
【0008】
この結果、ガラス基板とプリント配線板との間に介在されたフレキシブル配線板が可撓性を有するにしても、このフレキシブル配線板でプリント配線板とガラス基板との間に生じる膨張・収縮差を速やかに吸収することが困難となる。
【0009】
よって、ガラス基板の電極とフレキシブル配線板との接続部およびプリント配線板の電極パッドとフレキシブル配線板との接続部に大きな応力が発生し、これが原因で接続部が破損し易くなるといった不具合がある。
【0010】
本発明の目的は、ガラス基板とプリント配線板との間に生じる膨張・収縮差を確実に吸収することができ、フレキシブル配線板とガラス基板との接続部およびフレキシブル配線板とプリント配線板との接続部の破損を防止できる基板接続構造を得ることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ガラス基板とプリント配線板との間に生じる膨張・収縮差を吸収するための弛み部をフレキシブル配線板に容易に形成することができ、工程的に無理がなくて作業し易い基板接続方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係る基板接続構造は、第1の電極を有するプリント配線板と、第2の電極を有するとともに、熱膨張係数が上記プリント配線板と相違するガラス基板と、上記第1の電極に接続される第3の電極および上記第2の電極に接続される第4の電極を有し、上記第1の電極と上記第2の電極との間を電気的に接続するフレキシブル配線板と、を備えており、上記フレキシブル配線板は、上記第3の電極と上記第4の電極との間に自由に変形が可能な弛み部を有することを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明に係る基板接続方法は、プリント配線板の実装面に形成された第1の電極と、ガラス基板に形成された第2の電極との間を、上記第1の電極に対応する第3の電極および上記第2の電極に対応する第4の電極を有するフレキシブル配線板を用いて電気的に接続する方法であって、最初に上記ガラス基板の第2の電極と上記フレキシブル配線板の第4の電極とを互いに接続し、上記ガラス基板が接続された上記フレキシブル配線板を上記プリント配線板の実装面の上に載置するとともに、上記フレキシブル配線板と上記実装面との間に上記フレキシブル配線板の第3の電極と第4の電極との間を横切るように線状体を介在させ、上記フレキシブル配線板の第3の電極と上記プリント配線板の第1の電極とを互いに接続することで、上記フレキシブル配線板のうち上記線状体に対応する部分を上記実装面から遠ざかる方向に円弧状に湾曲させ、最後に上記線状体を上記フレキシブル配線板と上記実装面との間から引き抜くことで、上記フレキシブル配線板のうち上記第3の電極と上記第4の電極との間の中間部に自由に変形が可能な弛み部を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガラス基板とプリント配線板との間に、これら両者の熱膨張係数の相違に伴う膨張・収縮差が生じた場合、フレキシブル配線板の弛み部が膨張・収縮方向に応じて自由に変形することで、ガラス基板とプリント配線板との間に生じる膨張・収縮差を吸収する。
【0015】
このため、ガラス基板とフレキシブル配線板との接続部およびプリント配線板とフレキシブル配線板との接続部に発生する応力を軽減でき、接続部の破損を回避することができる。
【0016】
さらに、フレキシブル配線板の弛み部は、ガラス基板が接続されたフレキシブル配線板をプリント配線板に接続する最後の工程途上でフレキシブル配線板に形成される。このため、弛み部を形成する専用の工程が不要となり、工程的に無理がなくて簡単かつ確実に弛み部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の第1の実施の形態を密着型センサーモジュールに適用した図1ないし図9に基づいて説明する。
【0018】
図1は、例えばマルチファンクション・ペリフェラルズ(MFP)と称する多機能形の画像形成装置に用いる密着型センサーモジュール1を開示している。密着型センサーモジュール1は、例えば原稿のような読み取り対象物から文字や画像等の情報を光学的に読み取るためのものであって、読み取り対象物を搬送する搬送経路の下方に設置されている。
【0019】
密着型センサーモジュール1は、合成樹脂製のハウジング2を有している。ハウジング2は、走査方向に延びる細長い棒状をなしている。図2に示すように、ハウジング2の上面に第1の凹部3が形成されている。第1の凹部3は、ハウジング2の長手方向に延びている。第1の凹部3は、ハウジウング2の上面に開口する開口部4と、この開口部4と向かい合う底面5とを有している。開口部4は、透明なガラス板6によって塞がれている。
【0020】
ハウジング2の底面に第2の凹部7が形成されている。第2の凹部7は、ハウジング2の長手方向に延びている。第2の凹部7は、ハウジング2の内部に形成した連通孔8を介して第1の凹部3に通じている。連通孔8は、ハウジング2の幅方向に沿う中央部に位置するとともに、ハウジング2の長手方向に延びている。
【0021】
連通孔8の内部にレンズユニット9が保持されている。レンズユニット9は、ハウジング2の長手方向に延びており、その上端部が第1の凹部3の内部に突出している。レンズユニット9は、走査方向と直交するように起立する中心軸線O1を有している。
【0022】
第2の凹部7にセンサ基板10が取り付けられている。センサ基板10は、第2の凹部7を閉塞するようにハウジング2の長手方向に延びている。センサ基板10の上面に複数のCCDイメージセンサ11が実装されている。CCDイメージセンサ11は、ハウジング2の長手方向に間隔を存して一列に並んでいるとともに、レンズユニット9の中心軸線O1上に位置している。
【0023】
ハウジング2の第1の凹部3は、図4に示すようなEL光源ユニット15を収容している。本実施の形態のEL光源ユニット15は、リジッドなプリント配線板16、一対の有機EL発光素子17,18および四つのフレキシブル配線板19を備えている。
【0024】
プリント配線板16は、例えばガラスエポキシ樹脂やセラミックのような折り曲げが困難な硬質な材料で造られている。プリント配線板16は、一対のEL支持部21a,21bを有している。
【0025】
図5に示すように、EL支持部21a,21bは、走査方向に沿うようにハウジング2の長手方向に一直線状に延びる帯状をなしている。EL支持部21a,21bは、夫々その長手方向に沿う一端に位置する第1の端部22と、長手方向に沿う他端に位置する第2の端部23とを有している。
【0026】
一方のEL支持部21aの第1の端部22と他方のEL支持部21bの第1の端部22とは、図4に示すブリッジ部24を介して互いに連結されている。同様に、一方のEL支持部21aの第2の端部23と他方のEL支持部21bの第2の端部23とは、他のブリッジ部25を介して互いに連結されている。このため、プリント配線板16のEL支持部21a,21bは、互いに間隔を存して平行に配置されている。
【0027】
図5に示すように、各EL支持部21a,21bは、実装面としての第1の面27と、第1の面27の反対側に位置する第2の面28とを有している。第1の面27のうち第1の端部22および第2の端部23に対応する位置に夫々一対の第1の電極29が形成されている。図3に示すように、第1の電極29は、第1の端部22および第2の端部23においてEL支持部21a,21bの幅方向に並んでいるとともに、EL支持部21a,21bの長手方向に離れている。このため、EL支持部21a,21bは、夫々四つの第1の電極29を有している。
【0028】
さらに、EL支持部21a,21bの第2の面28は、図2に示す金属板30を介して第1の凹部3の底面5に固定されている。この固定により、プリント配線板16のEL支持部21a,21bの間にレンズユニット9が入り込んでいる。
【0029】
有機EL発光素子17,18は、EL支持部21a,21bの第1の面27に実装されている。有機EL発光素子17,18は、夫々透明なガラス基板31と発光層32とを備えている。ガラス基板31は、走査方向に延びる細長い帯状をなしている。ガラス基板31は、その長手方向に沿う一端に位置する第1の端部33と、長手方向に沿う他端に位置する第2の端部34とを有している。
【0030】
ガラス基板31の第1および第2の端部33,34に、夫々一対の第2の電極36が形成されている。第2の電極36は、例えばインジウムと錫の酸化膜からなるITO(Indium Tin Oxide)電極であって、ガラス基板31の幅方向に並んでいるとともに、プリント配線板16の第1の面27と向かい合っている。
【0031】
発光層32は、ガラス基板31の上面に形成されて、ガラス基板31の長手方向に延びている。発光層32は、電界を与えた際のエレクトロルミネセンスにより発光するものであり、その長手方向に沿う一端および他端が第2の電極36に電気的に接続されている。このため、発光層32は、その長手方向の両端に電圧を印加することで電界が与えられて、発光層32が長手方向に沿って均一に発光する。言い換えると、発光層32の輝度分布が走査方向に沿って均等となる。
【0032】
有機EL発光素子17,18のガラス基板31は、例えば両面接着テープ37を介してEL支持部21a,21bの第1の面27に接着されている。この接着により、有機EL発光素子17,18がプリント配線板16と一体化されるとともに、レンズユニット9を間に挟んで二列に並んでいる。
【0033】
さらに、有機EL発光素子17,18をプリント配線板16のEL支持部21a,21bに接着した状態では、有機EL発光素子17,18のガラス基板31がEL支持部21a,21bの長手方向に離れた第1の電極29の間に位置している。この結果、プリント配線板16の第1の電極29と有機EL発光素子17,18の第2の電極36とは、有機EL発光素子17,18の長手方向に沿って互いに隣り合っている。
【0034】
有機EL発光素子17,18が発光すると、有機EL発光素子17,18からの光は、ガラス板6を通じて搬送経路上の読み取り対象物に照射される。読み取り対象物に照射された光は、読み取り対象物で反射した後、レンズユニット9を介してイメージセンサ11に導かれる。イメージセンサ11は、受光量に応じたレベルの信号を出力する。これにより、読み取り対象物上の文字や画像のような情報が光学的に読み取られる。
【0035】
図5に示すように、フレキシブル配線板19は、有機EL発光素子17,18とプリント配線板16との間を電気的に接続するためのものである。各フレキシブル配線板19は、例えばポリエステルやポリイミドのような柔軟性を有する絶縁フィルム38を有している。この絶縁フィルム38の上に第3の電極39および第4の電極40が形成されている。第3の電極39と第4の電極40は、図3に示す導体パターン41を介して電気的に接続されている。
【0036】
絶縁フィルム38は、有機EL発光素子17,18をEL支持部21a,21bの第1の面27の上に載置した時に、プリント配線板16の第1の電極29と有機EL発光素子17,18の第2の電極36との間に跨るような長さ寸法を有している。
【0037】
第3の電極39は、プリント配線板16の第1の電極29に対応するものであり、絶縁フィルム38の一端に位置している。第4の電極40は、ガラス基板31の第2の電極36に対応するものであり、絶縁フィルム38の他端に位置している。
【0038】
フレキシブル配線板19の第4の電極40とガラス基板31の第2の電極36とは、異方性導電膜42を間に挟んで熱圧着されている。同様に、プリント配線板16の第1の電極29とフレキシブル配線板19の第3の電極39とは、他の異方性導電膜43を間に挟んで互いに熱圧着されている。
【0039】
したがって、フレキシブル配線板19は、プリント配線板16の第1の面27の上で第1の電極29と第3の電極39、および第2の電極36と第4の電極40とを電気的かつ機械的に接続している。
【0040】
図3および図5に示すように、フレキシブル配線板19は、第3の電極39と第4の電極40との間に位置する中間部に弛み部45を有している。弛み部45は、絶縁フィルム38をプリント配線板16の第1の面27から遠ざかる方向に円弧状に湾曲するように撓ませることで構成されている。
【0041】
この結果、弛み部45とプリント配線板16の第1の面27との間には、空間46が確保されている。この空間46の存在により、弛み部45が任意な方向に自由に弾性変形が可能となっている。
【0042】
弛み部45が描く円弧の直径Dは、有機EL発光素子17,18の厚み寸法にもよるが、0.2mm〜0.4mm、特に0.3mmとすることが望ましい。すなわち、直径Dが0.2mmを下回ると、弛み部45の湾曲度合が不足し、弛み部45の変形量が不十分となる。
【0043】
逆に直径Dが0.5mmを上回ると、弛み部45の頂部が有機EL発光素子17,18の上方に張り出してしまい、有機EL発光素子17,18とガラス板6との間に弛み部45を収めるスペースが必要となる。このため、ハウジング2が大型化し、密着型センサーモジュール1のコンパクト化を図る上で好ましくないものとなる。
【0044】
図5に示すように、ガラス基板31の第2の電極36とフレキシブル配線板19の第4の電極40との接続部は、防湿材47によって被覆されている。同様に、プリント配線板16の第1の電極29とフレキシブル配線板19の第3の電極39との接続部は、他の防湿材48によって覆われている。
【0045】
防湿材47,48としては、例えばアクリレートラジカル重合タイプのエポキシ変性アクリレート、ウレタン変性アクリレート、シリコーン変性アクリレート、シリコン系あるいはエポキシカチオン重合タイプアクリル系の紫外線硬化形の合成樹脂を使用している。
【0046】
次に、プリント配線板16のEL支持部21a,21bと有機EL発光素子17,18との間を電気的に接続する手順について、一方の有機EL発光素子17の側を代表して説明する。
【0047】
図6に示すように、フレキシブル配線板19は、プリント配線板16やガラス基板31に接続する以前の段階ではフラットな形状を維持している。
【0048】
最初にガラス基板31の第1の端部33に位置する第2の電極36とフレキシブル配線板19の第4の電極40とを、異方性導電膜42を間に挟んで互いに対向させる。この状態で、ガラス基板31とフレキシブル配線板19とを互いに近づく方向に加圧し、異方性導電膜42を第2の電極36と第4の電極40との間で挟み込むとともに、フレキシブル配線板19を溶着ツールを用いて加熱する。これにより、異方性導電膜42の接着フィルムを介して第2の電極36と第4の電極40とが熱圧着され、フレキシブル配線板19がガラス基板31の第1の端部33に接合される。
【0049】
次に、上記と同様の手順でガラス基板31の第2の端部34に位置する第2の電極36とフレキシブル配線板19の第4の電極40とを熱圧着する。これにより、ガラス基板31の第1および第2の端部33,34にフレキシブル配線板19が接合される。
【0050】
この後、第2の電極36と第4の電極40との接続部のうち、ガラス基板31とプリント配線板16との間に入り込む部分に防湿材47を塗布し、乾燥させる。
【0051】
次に、フレキシブル配線板19が接合されたガラス基板31をEL支持部21aの第1の面27に接着する。引き続いて、ガラス基板31の第1の端部33に接合されたフレキシブル配線板19の第3の電極39とEL支持部21aの第1の電極29とを、異方性導電膜43を間に挟んで互いに対向させる。
【0052】
この状態で、EL支持部21aとフレキシブル配線板19とを互いに近づく方向に加圧し、異方性導電膜43を第1の電極29と第3の電極39との間で挟み込むとともに、フレキシブル配線板19を溶着ツールを用いて加熱する。これにより、異方性導電膜43の接着フィルムを介して第1の電極29と第3の電極39とが熱圧着され、フレキシブル配線板19がEL支持部21aの第1の端部22に接合される。
【0053】
異方性導電膜43を第1の電極29と第3の電極39との間で挟み込む時に、図7に示すように、フレキシブル配線板19の中間部とEL支持部21aの第1の面27との間に直径が0.3mmのピアノ線51を介在させる。ピアノ線51は、線部材の一例であり、第3の電極39と第4の電極40との間を横切っている。
【0054】
このピアノ線51の存在により、第1の電極29と第3の電極39とが接合された状態では、図8に示すように、フレキシブル配線板19の絶縁フィルム38がピアノ線51を迂回するように円弧状に湾曲する。
【0055】
次に、ガラス基板31の第2の端部34においても、上記と同様の手順でフレキシブル配線板19をEL支持部21aの第2の端部23に接合するとともに、このフレキシブル配線板19の絶縁フィルム38をピアノ線51に沿うように円弧状に湾曲させる。
【0056】
異方性導電膜43の接着フィルムが硬化したら、EL支持部21aとフレキシブル配線板19との間からピアノ線51を引き抜く。これにより、図9に示すように、フレキシブル配線板19の中間部にEL支持部21aの上方に向けて円弧状に湾曲する弛み部45が形成される。これと同時に、弛み部45とEL支持部21aとの間に弛み部45の自由な変形を許容する空間46が形成される。
【0057】
この後、先に熱圧着した第2の電極36と第4の電極40との接続部のうち、防湿材47から外れてガラス基板31の外周囲に露出する部分に再度防湿材47を塗布し、乾燥させる。これにより、第2の電極36と第4の電極40との接続部が防湿材47によって完全に覆われる。
【0058】
最後に、第1の電極29と第3の電極39との接合部を覆うように防湿材48を塗布し、硬化させる。このことにより、EL支持部21aに対する有機EL発光素子17の接続作業が完了する。
【0059】
このような密着型センサーモジュール1によると、有機EL発光素子17,18のガラス基板31と、このガラス基板31が実装されるプリント配線板16とでは、相互の熱膨張係数が相違するので、例えば有機EL発光素子17,18の自己発熱による熱影響を受けてEL光源ユニット15の温度が上昇した場合、プリント配線板16の熱膨張に伴う伸び量がガラス基板31の伸び量を大きく上回る。
【0060】
特にガラス基板31の第1および第2の端部33,34は、夫々フレキシブル配線板19を介してプリント配線板16に接続されているので、フレキシブル配線板19がプリント配線板16の熱膨張に伴う引っ張り力を受ける。
【0061】
上記第1の実施の形態では、フレキシブル配線板19の中間部に弛み部45が形成されているので、フレキシブル配線板19が引っ張り力を受けると、弛み部45が引っ張り力の作用方向に追従して自由に変形し、フレキシブル配線板19に加わる引っ張り力を吸収する。
【0062】
このため、第1の電極29と第3の電極39との接合部、および第2の電極36と第4の電極40との接続部に生じる応力を軽減することができる。
【0063】
さらに、第1の実施の形態のように、第1の電極29と第3の電極39、および第2の電極36と第4の電極40とを異方性導電膜42,43を介して熱圧着する接続方法では、電極間の接続部に湿気が侵入すると、湿気が接続部の剥がれを助長させる一つの要因となる。
【0064】
しかるに、第1の実施の形態では、第1の電極29と第3の電極39との接合部が防湿材48によって被覆されているとともに、第2の電極36と第4の電極40との接続部が防湿材47によって被覆されている。このため、電極間の接続部への湿気の侵入を防止することができ、接続部に剥がれが生じ難くなる。
【0065】
したがって、接続部に生じる応力を軽減できることと合わせて、接続部の破損を確実に回避することができ、ガラス基板31とプリント配線板16との電気的な接続の信頼性が向上するといった利点がある。
【0066】
本発明者は、上記構成のEL光源ユニット15において、熱衝撃試験および高温高湿保存試験を含む信頼性加速試験を行い、接続部の破壊の有無を調べた。
【0067】
(1)熱衝撃試験の条件としては、EL光源ユニット15を−30℃で30分冷却し、70℃で30分加熱する作業を1サイクルとして、この作業を300回繰り返した。
【0068】
(2)高温高湿保存試験の条件としては、EL光源ユニット15を60℃90%RHの環境下に1000時間保管した。
【0069】
この結果、フレキシブル配線板19の中間部に弛み部45を形成するとともに、電極間の接続部を防湿材47,48で被覆したEL光源ユニット15では、接続部は破損に至らなかった。
【0070】
これに対し、弛み部45を有しないフレキシブル配線板および防湿材を省略したEL光源ユニットの場合は、熱衝撃試験では100サイクルに達する以前の段階で電極間の接続部が破壊に至り、高温高湿試験では、200時間以内の段階で電極間の接続部が破壊に至る事実が確認された。
【0071】
したがって、フレキシブル配線板19に弛み部45を形成するとともに、電極間の接続部を防湿材47,48で被覆することで、接続部の破壊を効果的に食い止めることができる。
【0072】
さらに、第1の実施の形態に係る接続方法によれば、フレキシブル配線板19の弛み部45は、フレキシブル配線板19の第3の電極39をプリント配線板16の第1の電極29に接続する途上でフレキシブル配線板19の絶縁フィルム38に形成される。
【0073】
言い換えると、絶縁フィルム38をピアノ線51に沿わせるだけの単純な作業で弛み部45を形成することができ、この弛み部45を形成するための独立した作業工程が不要となる。よって、工程的に無理が生じることもなく、作業性が良好となる。
【0074】
本発明は上記第1の実施の形態に特定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施可能である。
【0075】
図10は、本発明の第2の実施の形態を開示している。この第2の実施の形態は、フレキシブル配線板19の曲げ形状およびフレキシブル配線板19とプリント配線板16との接続部分の構造が上記第1の実施の形態と相違している。それ以外のEL光源ユニット15の構成は、基本的に第1の実施の形態と同様である。このため、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
図10に示すように、プリント配線板16の第1の電極29は、ガラス基板31の反対側に位置する第2の面28に形成されている。プリント配線板16の第1の電極29とガラス基板31の第2の電極36とを接続するフレキシブル配線板19は、プリント配線板16の外周縁部の外側を通してプリント配線板16の第1の面27と第2の面28とに跨る曲げ部60を有している。曲げ部60は、円弧状に湾曲されており、この曲げ部60の内面とプリント配線板16の外周縁部との間に、曲げ部60の自由な変形を許容する隙間61が形成されている。
【0077】
第2の実施の形態では、フレキシブル配線板19の端部がプリント配線板16の第1の面27から第2の面28に回り込んでいるので、フレキシブル配線板19の第3の電極39を熱圧着によりプリント配線板16の第1の電極29に接続する場合、フレキシブル配線板19のうち第1の面27に沿って配線される部分が邪魔となって、プリント配線板16を第1の電極29の反対側から支えることが困難となる。
【0078】
そのため、第1の電極29をプリント配線板16の第2の面28に形成した場合、フレキシブル配線板19の第3の電極39は、第1の電極29に半田付けすることが望ましい。さらに、第3の電極をコネクタ39に置き換えるとともに、第1の電極29をコネクタが嵌合可能なコネクタレセプタクルに置き換えることで、半田付けを省略するようにしてもよい。
【0079】
このような第2の実施の形態によると、プリント配線板19とガラス基板31との間の熱膨張差によりフレキシブル配線板19が引っ張り力を受けると、曲げ部60が引っ張り力の作用方向に追従して自由に変形し、フレキシブル配線板19に加わる熱膨張差に伴う引っ張り力を吸収する。
【0080】
したがって、上記第1の実施の形態と同様に、第1の電極29と第3の電極39との接続部、および第2の電極36と第4の電極40との接続部に生じる応力を軽減することができる。
【0081】
本発明に係る基板接続構造および基板接続方法は、密着型センサーモジュールのEL光源ユニット用に特定されるものでなく、その他の分野においても同様に実施可能である。
【0082】
さらに、上記第1の実施の形態では、フレキシブル配線板をプリント配線板に接続する時に、このフレキシブル配線板に弛み部を形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、予めフレキシブル配線板の中間部に円弧状に湾曲する弛み部を形成しておき、この弛み部を有するフレキシブル配線板をガラス基板およびプリント配線板の双方に接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る密着形センサーモジュールの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る密着形センサーモジュールの断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態において、プリント配線板と有機EL発光素子との接続部分を拡大して示す密着形センサーモジュールの平面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るEL光源ユニットの平面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るEL光源ユニットの断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態において、ガラス基板の第1の電極とフレキシブル配線板の第3の電極とを異方性導電膜を間に挟んで互いに対向させた状態を示す断面図。
【図7】本発明の第1の実施の形態において、ガラス基板を接合したフレキシブル配線板をプリント配線板に接続する際のフレキシブル配線板、プリント配線板およびピアノ線の位置関係を示す断面図。
【図8】本発明の第1の実施の形態において、フレキシブル配線板とプリント配線板との間にピアノ線を介在させた状態を示す断面図。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、ピアノ線を引き抜いてフレキシブル配線の途中に弛み部を形成した状態を示す断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るEL光源ユニットの断面図。
【符号の説明】
【0084】
16…プリント配線板、19…フレキシブル配線板、27…第1の面(実装面)、28…第2の面、29…第1の電極、31…ガラス基板、36…第2の電極、39…第3の電極、40…第4の電極、45…弛み部、51…線部材(ピアノ線)、60…曲げ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極を有するプリント配線板と、
第2の電極を有するとともに、熱膨張係数が上記プリント配線板と相違するガラス基板と、
上記第1の電極に接続される第3の電極および上記第2の電極に接続される第4の電極を有し、上記第1の電極と上記第2の電極との間を電気的に接続するフレキシブル配線板と、を具備する基板接続構造であって、
上記フレキシブル配線板は、上記第3の電極と上記第4の電極との間に自由に変形が可能な弛み部を有することを特徴とする基板接続構造。
【請求項2】
請求項1の記載において、上記第2の電極と上記第4の電極とは、異方性導電膜を間に挟んで互いに熱圧着されているとともに、上記第1の電極と上記第3の電極とは、他の異方性導電膜を間に挟んで互いに熱圧着されていることを特徴とする基板接続構造。
【請求項3】
請求項2の記載において、上記ガラス基板の第2の電極と上記フレキシブル配線板の第4の電極との接続部、および上記プリント配線板の第1の電極と上記フレキシブル配線板の第3の電極との接続部は、夫々防湿材で被覆されていることを特徴とする基板接続構造。
【請求項4】
請求項1の記載において、上記弛み部は、上記プリント配線板と向かい合うとともに、このプリント配線板から遠ざかる方向に円弧状に湾曲することを特徴とする基板接続構造。
【請求項5】
請求項1の記載において、上記ガラス基板は、第1の端部と、この第1の端部の反対側に位置する第2の端部とを有する真っ直ぐな帯状をなすとともに、上記第1および第2の端部に夫々上記第2の電極が形成され、
上記プリント配線板の第1の電極は、上記ガラス基板の第1の端部および第2の端部に対応する位置に夫々配置されているとともに、
上記ガラス基板の第1の端部に位置する第2の電極および第2の端部に位置する第2の電極は、夫々上記フレキシブル配線板を介して上記第1の電極に電気的に接続されていることを特徴とする基板接続構造。
【請求項6】
第1の電極が形成された実装面を有するリジッドなプリント配線板と、
上記プリント配線板の実装面に実装され、上記実装面と向かい合う第2の電極を有するとともに、熱膨張係数が上記プリント配線板と相違するガラス基板と、
上記第1の電極に接続される第3の電極と、上記第2の電極に接続される第4の電極とを有し、上記プリント配線板の実装面の上で上記第1の電極と上記第2の電極との間を電気的に接続するフレキシブル配線板と、を具備する基板接続構造であって、
上記フレキシブル配線板は、上記第3の電極と上記第4の電極との間に、上記プリント配線板の実装面から遠ざかる方向に湾曲する自由に変形が可能な弛み部を有することを特徴とする基板接続構造。
【請求項7】
請求項6の記載において、上記弛み部は円弧状に湾曲するとともに、上記弛み部が描く円弧の直径は、0.2〜0.4mmであることを特徴とする基板接続構造。
【請求項8】
請求項6又は請求項7の記載において、上記第1の電極と上記第3の電極および上記第2の電極と上記第4の電極とは、夫々異方性導電膜を間に挟んで互いに熱圧着され、上記ガラス基板の第2の電極と上記フレキシブル配線板の第4の電極との接続部、および上記プリント配線板の第1の電極と上記フレキシブル配線板の第3の電極との接続部は、夫々防湿材で被覆されていることを特徴とする基板接続構造。
【請求項9】
第1の面と、この第1の面の反対側に位置する第2の面と、この第2の面に形成された第1の電極とを有するリジッドなプリント配線板と、
上記プリント配線板の第1の面に実装され、上記第1の面と向かい合う第2の電極を有するとともに、熱膨張係数が上記プリント配線板と相違するガラス基板と、
上記第1の電極に接続される第3の電極と、上記第2の電極に接続される第4の電極とを有し、上記第1の電極と上記第2の電極との間を電気的に接続するフレキシブル配線板と、を具備する基板接続構造であって、
上記フレキシブル配線板は、上記プリント配線板の外周縁部の外側を通して上記プリント配線板の第1の面と第2の面とに跨るように湾曲する曲げ部を有し、この曲げ部は自由に変形が可能であるとともに、上記第3の電極と上記第4の電極との間に位置することを特徴とする基板接続構造。
【請求項10】
請求項9の記載において、上記ガラス基板の第2の電極と上記フレキシブル配線板の第4の電極とは、異方性導電膜を間に挟んで互いに熱圧着されているとともに、上記第2の電極と上記第4の電極との接続部は、防湿材で被覆されていることを特徴とする基板接続構造。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかの記載において、上記ガラス基板の上に有機エレクトロルミネセンスにより発光する発光層が形成され、この発光層は上記第2の電極に電気的に接続されていることを特徴とする基板接続構造。
【請求項12】
プリント配線板の実装面に形成された第1の電極と、ガラス基板に形成された第2の電極との間を、上記第1の電極に対応する第3の電極および上記第2の電極に対応する第4の電極を有するフレキシブル配線板を用いて電気的に接続する方法であって、
上記ガラス基板の第2の電極と上記フレキシブル配線板の第4の電極とを互いに接続し、
上記ガラス基板が接続された上記フレキシブル配線板を上記プリント配線板の実装面の上に載置するとともに、上記フレキシブル配線板と上記実装面との間に上記フレキシブル配線板の第3の電極と第4の電極との間を横切るように線状体を介在させ、
上記フレキシブル配線板の第3の電極と上記プリント配線板の第1の電極とを互いに接続することで、上記フレキシブル配線板のうち上記線状体に対応する部分を上記実装面から遠ざかる方向に円弧状に湾曲させ、
最後に上記線状体を上記フレキシブル配線板と上記実装面との間から引き抜くことで、上記フレキシブル配線板のうち上記第3の電極と上記第4の電極との間の中間部に自由に変形が可能な弛み部を形成することを特徴とする基板接続方法。
【請求項13】
請求項12の記載において、上記第2の電極と上記第4の電極とは、異方性導電膜を間に挟んで互いに熱圧着されるとともに、上記第1の電極と上記第3の電極とは、他の異方性導電膜を間に挟んで互いに熱圧着されることを特徴とする基板接続方法。
【請求項14】
請求項13の記載において、上記ガラス基板の第2の電極と上記フレキシブル配線板の第4の電極とを接続した後、これら電極の接続部の一部を防湿材で被覆し、上記プリント配線板の第1の電極と上記フレキシブル配線板の第3の電極とを接続した後、上記第2の電極と上記第4の電極の接続部のうち上記防湿材から外れた部分を再度防湿材で被覆することを特徴とする基板接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−130769(P2008−130769A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313390(P2006−313390)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(504426126)東芝ディーエムエス株式会社 (21)
【Fターム(参考)】