説明

基板用光電変換コネクタおよび基板用電気コネクタ

【課題】接続端子に生ずる熱応力や機械的応力によって、コネクタハウジングに対する光電変換素子の位置ずれが発生することのない基板用光電変換コネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタハウジング10内に収納された、光信号を電気信号に、または電気信号を光信号に変換する光電変換素子30と、前記コネクタハウジング10に固定された、前記光電変換素子30を外部基板5の電気回路と電気的に接続する接続端子20とを備え、前記接続端子20は、前記コネクタハウジング10に圧入される固定部22と、該固定部22の一方から前記コネクタハウジング10の外側に延設された前記外部基板5と接続される基板側接続部24と、前記固定部22の他方から前記コネクタハウジング10の内側に延設された前記光電変換素子30と接続される素子側接続部26とを有し、前記基板側接続部24は、その少なくとも一箇所が屈曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路が形成された基板に実装される基板用コネクタに関するものであり、特に、このような基板用コネクタであって、光信号と電気信号との間の光電変換を行う光電変換素子が搭載された基板用光電変換コネクタや、相手方コネクタの端子と基板に形成された電気回路とを電気的に接続するための基板用電気コネクタ等に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路が形成された基板に直接実装されるコネクタ、いわゆる基板用コネクタが一般に知られている。特許文献1には、このような基板用コネクタであって、光信号と電気信号とを相互に変換する光電変換素子(光素子モジュール)が搭載された基板用光電変換コネクタが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の基板用光電変換コネクタは、コネクタハウジングに形成された受承筒に、スリーブを介して光電変換素子が取り付けられた構成を有し、光電変換素子からは複数の接続端子(リードフレーム)が突出して形成されている。基板用光電変換コネクタは、この複数の接続端子が基板のランドの中央に設けられた固定孔に挿通され、ランドに半田付けされることで基板に実装される。
【0004】
しかし、特許文献1に記載されるような基板用光電変換コネクタには、基板用光電変換コネクタが基板に実装される際の半田付けによる熱により、光電変換素子が位置ずれしてしまうという問題があった。つまり、半田付けに伴う熱が接続端子に伝わり、内部に熱応力が生じて接続端子が変形し、接続端子と一体的に設けられている光電変換素子が位置ずれしてしまうというものである。さらに、基板用光電変換コネクタが基板に実装される際、コネクタと基板とが正確に位置決めされるわけではないため、コネクタが若干傾いて基板に挿通されて基板に半田付けされた場合等には、接続端子に対して曲げ方向の負荷が掛かり、接続端子内部に応力が発生する。つまり、このような機械的応力によっても光電変換素子が位置ずれしてしまう場合があった。かかる光電変換素子の位置ずれにより、光電変換素子と相手方コネクタに設けられた光ファイバとの芯ずれが生じ、光電変換時における信号損失量が増大してしまうという問題があった。
【0005】
また、熱応力や機械的応力による接続端子の変形は、光電変換素子が搭載された基板用光電変換コネクタに限らず、その他の基板用コネクタ、例えば電線と基板上の電気回路とを電気的に接続するための基板用電気コネクタでも問題となる。つまり、基板に固定される接続端子が応力によって変形すると、相手方コネクタと嵌合される接続端子の端子部の位置ずれ(端子部先端の振れ)が発生し、コネクタ同士を嵌合させるために必要な力が大きくなって組立作業が困難になるおそれがある。その位置ずれ量が大きい場合には、端子同士が嵌合不能な状態となったり、または、無理矢理嵌合させた結果、接続端子の端子部が折れ曲がったり、潰れたりすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−82258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、接続端子に生ずる熱応力や機械的応力による、コネクタハウジングに対する光電変換素子の位置ずれを吸収することができる基板用光電変換コネクタを提供することにある。また、接続端子に生ずる熱応力や機械的応力による、コネクタハウジングに対する端子部の位置ずれを吸収することができる基板用電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る基板用光電変換コネクタは、コネクタハウジング内に収納された光電変換素子と、該光電変換素子を外部基板の電気回路と電気的に接続する接続端子とを備え、前記接続端子は、前記コネクタハウジングに圧入固定される固定部と、該固定部の一方から前記コネクタハウジングの外側に延設され、前記外部基板に接続される基板側接続部と、前記固定部の他方から前記コネクタハウジングの内側に延設され、前記光電変換素子と接続される素子側接続部とを有し、前記基板側接続部は、その少なくとも一箇所が屈曲していることを要旨とするものである。
【0009】
この場合、前記コネクタハウジング内には、前記光電変換素子から送られた電気信号、および/または前記光電変換素子に送る電気信号を処理する内部基板が設けられ、該内部基板を介して前記素子側接続部と前記光電変換素子とが接続されていればよい。
【0010】
そして、前記基板側接続部は、前記固定部の一方から延設された基端部と、該基端部から屈曲して延設された前記外部基板に固定される脚部とから構成され、前記基端部が、前記コネクタハウジングの外壁と当接していればよい。
【0011】
また、本発明に係る基板用電気コネクタは、相手方コネクタの端子を外部基板の電気回路と電気的に接続する接続端子を備え、前記接続端子は、コネクタハウジングに圧入された固定部と、前記固定部の一端から前記コネクタハウジングの外側に延設され、前記外部基板に接続される基板側接続部と、前記固定部の他端から前記コネクタハウジングの内側に延設され、相手方コネクタの端子と嵌合する端子部に接続される端子側接続部とを有し、前記基板側接続部は、その少なくとも一箇所が屈曲していることを要旨とするものである。
【0012】
この場合、前記コネクタハウジング内には、前記相手方コネクタから送られた電気信号、および/または相手方コネクタへ送る電気信号を処理する内部基板が設けられ、該内部基板を介して前記端子側接続部と前記端子部とが接続されていればよい。
【0013】
また、前記基板側接続部は、前記固定部の一方から延設された基端部と、該基端部から屈曲して延設された前記外部基板に固定される脚部とから構成され、前記基端部が、前記コネクタハウジングの外壁と当接していればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る基板用光電変換コネクタによれば、外部基板に接続される基板側接続部と、光電変換素子に接続される素子側接続部との間には、コネクタハウジングに圧入固定された固定部が存在するため、熱応力や機械的応力に伴う基板側接続部の変形は固定部によって吸収される。加えて、基板側接続部は屈曲しているため、その屈曲部分でも熱応力や機械的応力に伴う変形が吸収される。したがって、基板側接続部の変形は素子側接続部まで伝わらず、素子側接続部の位置ずれ、すなわち、光電変換素子の位置ずれが抑制され、光電変換素子と相手方コネクタに接続された光ファイバとの接続面における接続損失の小さい基板用光電変換コネクタとすることができる。
【0015】
この場合、素子側接続部と光電変換素子とが、上記内部基板を介して接続されていれば、素子側接続部と内部基板との接続部分や、内部基板自体によって端子側接続部の変形が吸収されるため、光電変換素子と光ファイバとの接続面における接続損失の増大がさらに抑えられる。つまり、かかる構成は、コネクタハウジング内に収納される内部基板を、伝達される信号を処理する電気回路が構成される電気的な部材としてだけでなく、接続端子と光電変換素子とを機械的に橋渡しする部材としても用いることにより、光電変換素子の位置ずれをさらに抑制しようとするものである。
【0016】
そして、屈曲した基板側接続部が、固定部から延設された基端部と、基端部から屈曲して延設された脚部とから構成されている場合、基端部をコネクタハウジングの外壁と当接させるようにすれば、外部基板に接続された脚部の変形は、コネクタハウジングの外壁と当接した状態にある基端部には伝わりにくく、光電変換素子の位置ずれ防止効果がさらに高まる。
【0017】
また、本発明に係る基板用電気コネクタによれば、基板に接続された基板側接続部と、相手方コネクタの端子と嵌合する端子部と接続された端子側接続部との間には、コネクタハウジングに圧入された固定部が存在するため、熱応力や機械的応力に伴う基板側接続部の変形は固定部によって吸収される。加えて、基板側接続部は屈曲しているため、その屈曲部分でも熱応力や機械的応力に伴う変形が吸収される。したがって、基板側接続部の変形は端子側接続部まで伝わらず、端子側接続部の位置ずれ、すなわち、端子部の位置ずれが抑制され、相手方コネクタの端子との嵌合不良の発生を防止することができる。
【0018】
この場合、端子側接続部と光電変換素子とが、上記内部基板を介して接続されていれば、端子側接続部と内部基板との接続部分や、内部基板自体によって基板側接続部の変形が吸収されるため、端子部の位置ずれがさらに抑えられる。つまり、かかる構成は、コネクタハウジング内に収納される内部基板を、伝達される信号を処理する電気回路が構成される電気的な部材としてだけでなく、接続端子と端子部とを機械的に橋渡しする部材としても用いることにより、端子部の位置ずれをさらに抑制しようとするものである。
【0019】
そして、屈曲した基板側接続部が、固定部から延設された基端部と、基端部から屈曲して延設された脚部とから構成されている場合、基端部をコネクタハウジングの外壁と当接させるようにすれば、外部基板に接続された脚部の変形は、コネクタハウジングの外壁と当接した状態にある基端部には伝わりにくく、端子部の位置ずれ防止効果がさらに高まる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板用光電変換コネクタの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板用光電変換コネクタの外観斜視図である。
【図3】図1に示した基板用光電変換コネクタが備えるハウジング本体を上方から見た外観斜視図である。
【図4】図1に示した基板用光電変換コネクタが備えるハウジング本体を下方から見た外観斜視図である。
【図5】図3におけるA部付近の拡大図である。
【図6】図3および図4に示したハウジング本体に固定される接続端子の外観斜視図である。
【図7】内部基板を搭載していない本発明の一実施形態に係る基板用光電変換コネクタの断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る基板用電気コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1を図面を参照して詳細に説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1の断面図(外部制御基板5を含む)であり、図2は、外観斜視図である。なお、以下の説明における上下とは、図1における上下をいい、先端側とは、後述する相手方コネクタ90との嵌合側をいい(図1における右側)、基端側とは、その反対側(図1における左側)をいうものとする。また、以下の説明において単に軸線方向というときは、図1における左右方向をいうものとする。
【0022】
基板用光電変換コネクタ1は、図1に示す外部制御基板5(以下、外部基板5と称する。)に実装(マウント)されるコネクタであり、コネクタハウジング10と、コネクタハウジング10に固定される複数の接続端子20と、光信号を電気信号に変換する機能と、電気信号を光信号に変換する機能とを有する光電変換素子30と、コネクタハウジング10内部に固定される内部制御基板40(以下、内部基板40と称する。)とを備える。
【0023】
コネクタハウジング10は、ハウジング本体12およびこのハウジング本体12に固定される蓋19から構成される合成樹脂製の部材である。図3および図4は、ハウジング本体12の外観斜視図である。なお、図3は、ハウジング本体12を上方から見た外観斜視図であり、図4は、ハウジング本体12を下方から見た外観斜視図である(図4(a)は、接続端子20および内部シールド部材18が固定されたハウジング本体12に対し光電変換素子30が固定される様子を示し、図4(b)は図4(a)の光電変換素子30が固定されたハウジング本体12に内部基板40が固定された状態を示す。)。また、図5には、図4におけるA部付近の拡大図を示す。
【0024】
図1〜図4に示すように、ハウジング本体12は、接続端子20や外部シェル50が固定される端子固定部13と、相手方コネクタ90と嵌合する嵌合部16とからなる。図から明らかなように、端子固定部13の方が嵌合部16よりも幅方向の大きさが大きい。
【0025】
端子固定部13は、上壁14および断面略矩形状の側壁15に囲まれてなり、下方が開口した内部空間131を有する。上壁14には、外面から内部空間131にかけて貫通した複数の固定孔122aが設けられている。この複数の固定孔122aのそれぞれには、接続端子20が圧入により固定されている。
【0026】
この点について、図1および図6(接続端子20の外観斜視図)を参照して具体的に説明する。接続端子20は、金属材料が図示されるような略「コ」の字型(略「U」の字型)に形成された部材であり、固定部22と、この固定部22の一端から延設された基板側接続部24、および他端から延設された素子側接続部26とを備える。
【0027】
固定部22は、固定孔122aに対する圧入代となる部分であり、固定部22の断面の大きさは固定孔122aの断面より若干大きい。この固定孔122aの大きさに対する相対的な固定部22の断面の大きさは、簡単に接続端子20がコネクタハウジング10から抜け落ちないような圧入強度を確保することができる大きさであれば、特に限定されるものではない。
【0028】
固定部22の一端、具体的には、コネクタハウジング10の上壁面14の外側に位置する一端には、基板側接続部24が延設されている。基板側接続部24は、固定部22側の基端部241と、基端部241から延設された脚部242とからなる。基端部241は、固定部22の一端から固定部22の軸方向と略直角に延設されている。脚部242は、基端部241の一端から基端部241の軸方向と略直角に、かつ固定部22と平行に延設されている。ここで、図3および図4に示すように、端子固定部13の上壁14の基端側、側壁15の基端側の面には、端子が収容される溝部141が形成されている。溝部141は、接続端子20(固定孔122a)と同数設けられており、接続端子20は、それぞれの基板側接続部24が溝部141の内側に位置し、外側に突出しないように固定されている。
【0029】
このように溝部141内に位置する基板側接続部24において、図1に示すように、基端部241は、コネクタハウジング10の外壁(端子固定部13の上壁14)と当接している。一方、基端部241の一端から略直角に延設された脚部242は、その根元側がコネクタハウジング10の外壁と当接している。具体的には、端子固定部13の側壁15(基端側の面)の上部には、断面R形状をした支持突起142が形成されている。この支持突起142は、脚部242に何らかの外力が加わること等による変形が生じた際、基端部241と脚部242との接続部分(屈曲部分)が折れてしまわないように支持するための構成である。なお、このように屈曲部分のみを支持する構成としたのは、脚部242が基端部241との接続部分(屈曲部分)を支点として柔軟に変形することができるようにして、基端部241までその変形が伝わらないようにするためや、コネクタ実装の際に外部基板5に形成された固定孔5aに脚部242を挿通しやすくするためである。
【0030】
このようにしてコネクタハウジング10に固定された接続端子20は、その脚部242の一部がコネクタハウジング10の下端面より突出している。この突出した部分が外部基板5の固定孔5aに挿通され、半田により外部基板5に形成された電気回路と電気的に、かつ外部基板5(外部基板5の基材)と機械的に接続される。この接続端子20と外部基板5との機械的な接続により、基板用光電変換コネクタ1の全体が外部基板5と機械的に接続される(外部基板5に実装される)。
【0031】
嵌合部16には、断面略矩形状の外壁17に囲まれた内部空間161が存在する。図4から分かるように、外壁17の下面の一部は開口している。また、図1〜図3から分かるように、外壁17の上面には、相手方コネクタ90に設けられた図示されない被係止部(孔)に係止される係止突起171が形成されている。また、側面上部には、コネクタの長手方向に沿って形成されたガイド172が形成されている。さらに、内部空間161には、内部シールド部材18を介して光電変換素子30が固定されている。
【0032】
この点について図4の一部拡大図である図5を参照して具体的に説明する。内部空間161には、嵌合部16の内面から突出した二つの突起162が設けられており、この二つの突起162のそれぞれには、第一の係合溝162aが軸線方向に形成されている(図5には一方の突起162および第一の係合溝162aのみが図示される。)。また、上述の端子固定部13と嵌合部16との境界部分には、二つの第二の係合溝162bが軸線方向と直交する方向に形成されている(図5には一方の第二の係合溝162bのみが図示される。)。
【0033】
内部シールド部材18は、例えばアルミニウム等の導電性部材が折り曲げ加工されることによって構成され、底面181、底面181から起立形成された軸線に平行な二つの側壁182(以下、この二つの側壁を総称して左右側壁182という。)、および底面181から起立形成された軸線方向に略直角な基端側側壁183とを備える。この内部シールド部材18は、図示されるように、左右側壁182のそれぞれを第一の係合溝162aに、基端側側壁183の両端を第二の係合溝162bに係合させ、かつ底面181を嵌合部16の内面と当接させて嵌合部16の内部空間161内の所定位置に固定される。
【0034】
内部シールド部材18の左右側壁182のそれぞれには、所定幅の切り欠き182aが形成されている。光電変換素子30は、この切り欠き182aに本体部31が圧入されることで所定位置に固定される。また、基端側側壁183の上端面からは、二つの端子183aが突出して形成されている。
【0035】
光電変換素子30は、相手方コネクタ90に接続された一方の光ファイバ91aから送られた光信号を電気信号に変換する機能(光受信機能)と、外部基板5や内部基板40から送られた電気信号を光信号に変換して相手方コネクタに接続された他方の光ファイバ91bに送る機能(光送信機能)とを備える(光電変換素子30は、二つの素子がパッケージングされたいわゆる光素子モジュールである)。光信号を電気信号に変換する素子としてはフォトダイオード等が例示できる。また、電気信号を光信号に変換する素子としては発光ダイオード等が例示できる。これらの素子は、本体部31内に収容されている。そして、本体部31からは、本体部31に収納された素子の端子32が突出して形成されている。
【0036】
内部基板40は、コネクタハウジング10内に収納される基板であって、相対的に幅が小さい幅細部41、および相対的に幅が太い幅太部42とからなる。幅細部41の幅の大きさは、コネクタハウジング10における嵌合部16の内部空間161の幅と略同一であり、幅太部42の幅の大きさは、コネクタハウジング10における端子固定部13の内部空間131の幅と略同一である。このような内部基板40を用いることで、基板用光電変換コネクタ1が搭載される装置(外部基板5を有する装置)の大きさを小さくすることができる。すなわち、外部基板5に搭載可能な機能(信号処理機能等)の一部を内部基板40に搭載し、それをコネクタハウジング10内に収納することで、外部基板5の大きさを小さくすることができる。
【0037】
図1および図4に示すように、内部基板40の一方側(幅細部41側)は、光電変換素子30の端子32が挿通され、半田により内部基板40に形成された電気回路と電気的に、かつ内部基板40(内部基板40の基材)と機械的に接続されている。また、内部基板40の他方側(幅太部42側)は、接続端子20の素子側接続部26が挿通され、同じく半田により内部基板40に形成された電気回路と電気的に、かつ内部基板40(内部基板40の基材)と機械的に接続されている。つまり、相手方コネクタに接続された一方の光ファイバ91aから送られた光信号は、光電変換素子30によって電気信号に変換されて端子32から出力され、内部基板40の電気回路を通って(所定の処理(例えば信号の増幅等)がなされて)接続端子20より外部基板5に出力される。また、外部基板5によって生じた電気信号は、接続端子20から内部基板40の電気回路を通って(所定の処理(例えば信号の増幅等)がなされて)、端子32から光電変換素子30に送られ、光信号に変換されて相手方コネクタの他方側の光ファイバ91bに伝達される。
【0038】
さらに、内部基板40には、内部シールド部材18の端子183aも固定されている。すなわち、内部シールド部材の端子183aは、半田により内部基板に形成された電気回路と電気的に、かつ内部基板40(内部基板40の基材)と機械的に接続され、その電気回路を介してアースに接続されている。かかる構成とすることにより、光電変換素子30と、内部基板40に形成された電気回路のうち、幅細部41に形成された部分とが内部シールド部材18に覆われ、当該部分に対する外部からのノイズによる影響が低減される。
【0039】
そして、図1に示すように、コネクタハウジング10のハウジング本体12には、光電変換素子30の端子32等と機械的に接続された内部基板40を覆うように蓋19が固定されている。蓋19は、内部基板40上に形成された電気回路や実装された素子等を保護する役割を果たす。
【0040】
一方、図1および図2に示すように、コネクタハウジング10の端子固定部13の外周は、外部シールド部材50に覆われている。外部シールド部材50は、端子固定部13よりも若干大きく形成され、一方(下方)が開口した直方体形状を有する。開口した下端面からは、スナップフィット端子51が突出して形成されている。外部シールド部材50は、スナップフィット端子51を弾性変形させながら外部基板5に挿通され、半田により外部基板5に形成された電気回路と電気的に、かつ外部基板5(外部基板5の基材)と機械的に接続されている。そして、外部シールド部材50は、この外部基板5に形成された電気回路を通じてアースに接続されている。かかる構成とすることにより、内部基板40に形成された電気回路のうち、幅太部42に形成された部分が外部シールド部材50に覆われ、当該部分に対する外部からのノイズによる影響が低減される。
【0041】
以上のような構成を備える基板用光電変換コネクタ1に対し、相手方コネクタ90は、ガイド172に案内されながら被係止部(図示せず)に係止突起171が係止されるまでスライドされ、嵌合部16を覆うようにして本実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1と嵌合される。これにより、相手方コネクタ90が備える光ファイバ91a,91bと、基板用光電変換コネクタ1が備える光電変換素子30とが突き合わされ、両者は光学的に接続される。
【0042】
以上、本発明の一実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1の構成について説明したが、この基板用光電変換コネクタ1によれば、次のような作用効果が奏される。
【0043】
上述したように、基板用光電変換コネクタ1が備える接続端子20は、その脚部242が外部基板5に挿通され、半田により外部基板5に形成された電気回路と電気的に、かつ外部基板5(外部基板5の基材)と機械的に接続されるため、接続端子20が半田付けされる際、溶融した半田の熱が接続端子20に伝わる。特に半田付けされる脚部242は高温になるため、その内部に熱応力が発生する。また、基板用光電変換コネクタ1が実装される際にコネクタが傾いている場合等には、脚部242に対して曲げ方向の負荷が掛かり、脚部242内部に機械的応力が発生する。しかし、本実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1によれば、これらの応力に伴う脚部242の変形が光電変換素子30に伝わることはなく、コネクタハウジング10に対する光電変換素子30の位置ずれが防止される。したがって、光電変換素子30と光ファイバとの接続面における接続損失が増大することはない。
【0044】
本実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1において、脚部242の変形が光電変換素子30に伝わらないのは、次の1)〜3)の理由による。1)接続端子20は、固定部22と、その固定部22からコネクタハウジング10の内側に突出した素子側接続部26と、固定部22からコネクタハウジング20の外側に突出した基板側接続部24とからなるが、固定部22がコネクタハウジング20に圧入されているため、基板側接続部24の脚部242の変形は固定部22によって吸収され、素子側接続部26に伝わりにくい。また、その基板側接続部24は、基端部241と脚部242とが略直角に曲がっているため、脚部242の変形はその折曲部分で吸収され、基端部241および固定部22より先端側に位置する素子側接続部26には伝わりにくい。なお、基板側接続部24におけるこの変形の吸収作用を高めるためには、基板側接続部24の長さをできるだけ長くすればよい。基板側接続部24の長さを長くすればするほど、脚部242の変形の大きさが、固定部22側では小さくなるからである。特に、実際に熱や外力が加わる脚部242を長くすればするほど好適である。具体的には、脚部242の長さを少なくとも圧入代である固定部22や基端部241より長くすればよい。
【0045】
2)また、素子側接続部26は、直接光電変換素子30に接続されているわけではなく、内部基板40を介して光電変換素子30と機械的に接続されている。つまり、仮に脚部242の変形が素子側接続部26まで伝わったとしても、素子側接続部26と内部基板40との接続部分や、内部基板40自体によってその変形が吸収される。つまり、かかる構成は、外部基板5の大きさを小さくするために設けられる電気的な部材である内部基板40を、接続端子20と光電変換素子30とを機械的に橋渡しする部材としても利用することにより、光電変換素子30の位置ずれを防止しようとするものである。
【0046】
3)そして、接続端子20の基板側接続部24における基端部241は、コネクタハウジング10の外壁(端子固定部13の上壁14)と当接しているため、脚部242の変形は、コネクタハウジング10の外壁と当接した状態にある基端部241に伝わりにくい。なお、この作用を高めるためには、基端部241の変形が変形しないように、基端部241をできるだけ太く形成すればよい。図1に示すように、固定部22や脚部242より太く形成すれば好適である。
【0047】
以上1)〜3)の理由により、基板用光電変換コネクタ1では、光電変換素子30の位置ずれが防止される。ただし、この光電変換素子30の位置ずれ防止効果は、これら全ての構成を採用すればその効果が高くなるということであって、必ずしも全ての構成を採用しなければ得られないわけではない。例えば、図7に一例を示すように、内部基板40を用いない場合には、接続端子20の素子側接続部26と光電変換素子30の端子32とを一体的に形成してもよい。かかる構成であっても、脚部242の変形は、コネクタハウジング10に圧入された固定部22や、屈曲部分を有する基板側接続部24で吸収されるため、従来型の基板コネクタに比して優れた光電変換素子30の位置ずれ防止効果が得られる。
【0048】
また、本実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1が備える接続端子20は、略「コ」の字型(略「U」の字型)に形成されているため、図3に示すようにコネクタハウジング10の上面から固定孔122aに差し込むことによって簡単に固定することができる。さらに、このように固定した接続端子20における基板側接続部24は、溝部141内に配設され、コネクタハウジング10の外縁よりも外側に突出していないため、コネクタの組立作業中などに基板側接続部24が折れ曲がったりするといった不具合の発生が防止される。
【0049】
以上、本実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1の構成ならびに作用効果について説明したが、この基板用光電変換コネクタ1の技術的思想は、光電変換素子30が搭載されていない基板用コネクタにも適用可能である。すなわち、基板上に実装される基板用コネクタであれば、その種別を問わず適用可能である。例えば、相手方コネクタに接続された電線と、外部基板上に形成された電気回路とを電気的に接続するために用いられる基板用電気コネクタにも適用することができる。以下、その一例を挙げて簡単に説明する。
【0050】
図8は、本発明の一実施形態に係る基板用電気コネクタ2の概略を示す断面図である。基板用電気コネクタ2は、コネクタハウジング60と、このコネクタハウジング60に圧入により固定された接続端子70と、端子部80と、接続端子70と端子部80との間に介在された内部基板85とを備える。なお、コネクタハウジング60、およびその他の部材については、上記実施形態と同一であるため、その説明を省略する。
【0051】
接続端子70は、コネクタハウジング60に圧入される固定部72と、コネクタハウジング60の外側で固定部72の一端から延設された基板側接続部74と、コネクタハウジング60の内側で固定部62の他端から延設された端子側接続部76とからなる。そして、接続端子70の基板側接続部74は、固定部72から略直角に折り曲がった基端部741、および基端部741から略直角に折り曲がって固定部72と平行な脚部742とを有する。
【0052】
端子部80は、図示されない相手方コネクタに設けられたメス型の端子部と嵌合する、オス型のものである。内部基板85は、相手方コネクタから送られた電気信号または相手方コネクタへ送る電気信号を処理(例えば信号の増幅等)するものである。
【0053】
このような構成とすることにより、上記実施形態と同様に、接続端子70の脚部742が変形したとしても、その変形が端子部80に伝わることはない。すなわち、1)コネクタハウジング60に圧入された固定部72や、基板側接続部74に設けられた折曲部分、2)端子側接続部76と内部基板85との接続部分や、内部基板85自体、3)コネクタハウジング60の外壁に当接した基端部741、によって脚部742の変形が吸収されるから、コネクタハウジング60に対する端子部80の位置ずれが発生してしまうことはない。したがって、相手方コネクタとの嵌合不良(例えば、端子の嵌合不能状態や、無理矢理端子を嵌合させることによる端子の損傷や潰れ)の発生を回避することができる。
【0054】
なお、基板用電気コネクタ2において、内部基板85を用いない場合には、端子側接続部76と端子部80とを一体的に構成すればよい。かかる構成であっても、脚部742の変形は、コネクタハウジング60に圧入された固定部72や、屈曲部分を有する基板側接続部74で吸収されるため、従来型の基板用電気コネクタに比して優れた端子部80の位置ずれ防止効果が得られる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態に係る基板用光電変換コネクタ1では、コネクタハウジング10に搭載された光電変換素子30が、光信号を電気信号に変換する素子と、電気信号を光信号に変換する素子とを備える、いわゆる光素子モジュールであることを説明したが、このような構成に限られるものではない。いずれか一方の機能を有する光電変換素子のみが搭載されたコネクタ(受信あるいは送信のいずれか一方に対応したコネクタ)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 基板用(光電変換)コネクタ
5 外部(制御)基板
10 コネクタハウジング
20 接続端子
22 固定部
24 基板側接続部
241 基端部
242 脚部
26 素子側接続部
30 光電変換素子
40 内部(制御)基板
60 コネクタハウジング
70 接続端子
72 固定部
74 基板側接続部
741 基端部
742 脚部
76 端子側接続部
80 端子部
85 内部基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジング内に収納された光電変換素子と、該光電変換素子を外部基板の電気回路と電気的に接続する接続端子とを備えた基板用光電変換コネクタであって、
前記接続端子は、前記コネクタハウジングに圧入固定される固定部と、該固定部の一方から前記コネクタハウジングの外側に延設され、前記外部基板に接続される基板側接続部と、前記固定部の他方から前記コネクタハウジングの内側に延設され、前記光電変換素子と接続される素子側接続部とを有し、
前記基板側接続部は、その少なくとも一箇所が屈曲していることを特徴とする基板用光電変換コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジング内には、前記光電変換素子から送られた電気信号、および/または前記光電変換素子に送る電気信号を処理する内部基板が設けられ、該内部基板を介して前記素子側接続部と前記光電変換素子とが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の基板用光電変換コネクタ。
【請求項3】
前記基板側接続部は、前記固定部の一方から延設された基端部と、該基端部から屈曲して延設された前記外部基板に固定される脚部とから構成され、前記基端部が、前記コネクタハウジングの外壁と当接していることを特徴とする請求項1または2に記載の基板用光電変換コネクタ。
【請求項4】
相手方コネクタの端子を外部基板の電気回路と電気的に接続する接続端子を備えた基板用電気コネクタであって、
前記接続端子は、コネクタハウジングに圧入された固定部と、前記固定部の一端から前記コネクタハウジングの外側に延設され、前記外部基板に接続される基板側接続部と、前記固定部の他端から前記コネクタハウジングの内側に延設され、相手方コネクタの端子と嵌合する端子部に接続される端子側接続部とを有し、
前記基板側接続部は、その少なくとも一箇所が屈曲していることを特徴とする基板用電気コネクタ。
【請求項5】
前記コネクタハウジング内には、前記相手方コネクタから送られた電気信号、および/または相手方コネクタへ送る電気信号を処理する内部基板が設けられ、該内部基板を介して前記端子側接続部と前記端子部とが接続されていることを特徴とする請求項4に記載の基板用電気コネクタ。
【請求項6】
前記基板側接続部は、前記固定部の一方から延設された基端部と、該基端部から屈曲して延設された前記外部基板に固定される脚部とから構成され、前記基端部が、前記コネクタハウジングの外壁と当接していることを特徴とする請求項4または5に記載の基板用電気コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−278296(P2010−278296A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130374(P2009−130374)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】