説明

基板表面洗浄装置

【課題】フィルム基板表面を洗浄するに際して、新たな塵埃、微粒子の発生を防止すると共に、表面洗浄作業の静粛性を向上させようとする。
【解決手段】フィルム基板表面洗浄装置(1)において、動力であるモーター(M)と各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)との間において、回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)等に軸着された非接触回転体(A1…)(B1…)(C1…)(D1…)を組み合わせて構成される非接触回転伝達機構(X)により回転を伝達させることで、回転を伝達させる部品の接触がなく、フィルム基板の表面洗浄に際して新たな塵埃、微粒子等を発生させず、フィルム基板を破損させることもなく、しかも作業における静粛性を向上させるので、クリーンルーム内等の閉鎖空間内でのフィルム基板の製造に適するものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面に付着する塵埃、微粒子等を除塵してなる基板表面洗浄装置を構成する粘着ラバーロールに対する回転伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板の表面に印刷される回路等のファインパターン化が進んでおり、そのため製造工程において基板の表面に付着することとなる塵埃、微粒子等によって発生する接続不良等の不具合が深刻な問題となっている。そこで、このように製造工程において回路等を印刷する基板の表面に付着する塵埃、微粒子等を除去する必要があり、例えば、他方で粘着テープロールに密着しつつ回転する粘着ラバーロールを基板の表面に密着させることにより、その粘着性を以て基板の表面に付着している塵埃、微粒子等の除去を行っている。ここで、上記基板表面洗浄装置においては複数の粘着ラバーロールが使用されることが多く、その複数の粘着ラバーロールの回転は、動力であるモーターが発生した回転を、互いに噛合する複数のギアを組み合わせてなる回転伝達機構を介して、互いに回転速度や方向を同調させつつ行っているものである。
【特許文献1】特開2000−291437号公報
【0003】
又、単数の粘着ラバーロールしか使用されていない基板表面洗浄装置においても、粘着ラバーロールの回転数を適正な回転数に調整するために、互いに噛合する複数のギアが使用されることがある。
【0004】
そして、その表面に回路等を印刷する基板は、近年薄肉化が進み非常に薄いフィルム基板となっている。そのため、従来以上に該フィルム基板に付着する塵埃、微粒子等を確実に除去する必要が生じており、該フィルム基板の全製造工程がクリーンルーム内でなされることもある。
【0005】
しかしながら、上記従来の表面洗浄装置における粘着ラバーロール等の回転は、動力であるモーターが発生した回転を、互いに噛合する複数のギアを組み合わせてなる回転伝達機構を介することによって、互いに回転速度や方向を同調させつつ伝達して行われるものである。そのため、互いに噛合するギアの摩擦により、その表面に回路等を印刷するフィルム基板に対して悪影響を与える塵埃、微粒子等を新たに発生させてしまうことがある。
【0006】
更に、表面を洗浄することとなるフィルム基板は、一般に非常に薄く、柔軟性に富むものである。そのため、該フィルム基板に直接密着する粘着ラバーロールにおいて、回転伝達機構を構成することとなる互いに噛合するギアのバックラッシュの調整がずれ、噛合するギアの回転の伝達が円滑に行えなくなると、該フィルム基板に密着する複数の粘着ラバーロール間に回転速度差が生じてしまう。その結果、該フィルム基板に対して過剰な負荷が加わり、折れや破断等の破損を与える恐れがある。
【0007】
また、上記基板表面洗浄装置は、基板の各製造工程毎に必要とされるので、一つの製造ラインにおいて複数設置されるものである。そのため、上述の作業環境に対する防塵と共に防音の観点からも、装置作動時における静粛性も大いに必要とされるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
つまり、本願発明が解決しようとする問題点は、クリーンルーム内で、特にフィルム基板を洗浄するべく基板表面洗浄装置を使用するにあたって顕著となることであるが、基板表面洗浄装置を構成する粘着ラバーロールの回転を行うため、複数の互いに噛合するギアにより構成される回転伝達機構による塵埃、微粒子の発生や、互いに噛合するギア間の調整不足による複数の粘着ラバーロール間の回転差による基板又はシートの破損、そして、該回転伝達機構が発生する騒音による作業環境の悪化である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、この発明は、基板表面洗浄装置において、
その内部に磁石を内装するものであって、回転することで該磁石の発生する磁界が変化して、該回転を順次伝達してなる非接触回転体を、上下左右方向に一定の間隔を持って互いに隣接するように配置しながら、動力、粘着ラバーロール等の回転軸に回転自在に軸着して構成する非接触回転伝達機構を介して、動力と粘着ラバーロールとを、回転方向、速度を調和させつつ回転させてなるものである。
その結果、基板の表面洗浄において、回転の伝達が非接触で行われるため、新たな塵埃、微粒子を発生させることがない。また、非接触回転体の発生する磁界の変化は均一であるため、隣接する該非接触回転体の回転は一定となり、洗浄する基板に対して過剰な負荷を与えることがなく、特に非常に薄いフィルム基板であっても破損を防止できる。そして、回転を伝達する非接触回転体は互いに非接触であるため、回転伝達に際しては騒音を発生することがなく、静粛性を向上させることができる。
【0010】
更に、上記基板表面洗浄装置において、上記粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体に対して、該非接触回転体に隣接するように配置され、動力からの回転を最終的に伝達することとなる非接触回転体が、その粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体に対して左右いずれかの方向に隣接して配置されてなるものである。
基板表面洗浄装置においては、被洗浄物である基板あるいはシートの厚さに応じて粘着ラバーロールが該被洗浄物の表面に対して最適に接触するよう、粘着ラバーロールの回転軸がフレームに対して上下方向に可動自在となっているが、被洗浄物である基板又はシートの厚さの変化によって、非接触回転体を軸着した粘着ラバーロールの回転軸がフレームに対して上下動することとなっても、動力からの回転を粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体に対して最終的に伝達することとなる非接触回転体が、粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体に対して左右いずれかの方向に隣接して配置されることによって、粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体と、それに隣接して最終的に動力を伝達する非接触回転体との軸間距離の変動、更には、両非接触回転体間の距離の変動が最小限に抑制され、その距離の変動による各非接触回転体に内装される磁石の吸引や反発作用への影響を最小限とすることができ、粘着ラバーロールの回転を常に一定に制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の基板表面洗浄装置は、非接触回転伝達機構を採用することにより、基板の洗浄に際して、新たな塵埃、微粒子を発生させることがなく、また特に洗浄する基板がフィルム基板である場合に、該フィルム基板に対して過剰な負荷を与えて破損させることがなく、更に静粛性にも優れていることから、閉鎖された空間、例えばクリーンルーム内での作業環境に悪影響を与えることなく、フィルム基板をその生産ラインにおいて一貫して洗浄することができ、また、粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体に対して、該非接触回転体に隣接するように配置され、最終的に動力からの回転を伝達することとなる非接触回転体が、左右いずれかの方向に隣接して配置されることにより、被洗浄物である基板の厚さによって粘着ラバーロールのフレームに対する位置が変動しても、該両非接触回転体間の距離の変動を最小限に抑制することができ、非接触回転体に内装される磁石の磁界の変化による動力の伝達に対する影響を最小限として、粘着ラバーロールの回転を常に一定に制御することができるものであって、特にフィルム基板の洗浄においても確実に塵埃、微粒子等を除去することができるという優れた効果を有するものである。
【実施例1】
【0012】
図1に示すものは、この発明の実施例であるフィルム基板表面洗浄装置(1)であり、このフィルム基板表面洗浄装置(1)は、フレーム(2)に対して、操作パネル(3)により操作可能となるモーター(M)により回転自在であって、且つ上下動可能となって保持される上下の粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)と、この上下の粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の表面に対してそれぞれ上下方向から密着するようにアダプター(4)(4)を介して回転自在に取り付けられた上下の粘着テープロール(5)(5)から構成される。尚、上側の粘着ラバーロール(A)(C)の回転軸(RA)(RC)は、それぞれ上下方向にスライド自在となるスライダー(SA)(SC)を介してフレーム(2)に取り付けられる一方、下側の粘着ラバーロール(B)(D)の回転軸(RB)(RD)は、それぞれスライダーを介することなく、単にフレーム(2)に対して位置決め並びに脱着自在に取り付けられるものであって、上側の粘着ラバーロール(A)(C)と下側の粘着ラバーロール(B)(D)とでは、上下動可能となる構造が異なるものである。
ここで、被洗浄物であるフィルム基板(6)は、上下の粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)間において、その位置を調整することにより形成される空隙(7)に対してベルト搬送部(8)により搬送されることで、その両面に該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)を当接させつつ通過するものである。その結果、該フィルム基板(6)の表面に付着している塵埃、微粒子等は、まずこの粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)に転写、吸着されるものとなる。そして、該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)に転写、吸着されたフィルム基板(6)の表面に付着していた塵埃、微粒子等は、該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)に上下方向から密着している粘着テープロール(5)(5)へと最終的に転写、吸着されることで、フィルム基板(6)の表面の洗浄は終了する。
【0013】
そして、上記フィルム基板表面洗浄装置(1)において、粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)は、動力であるモーター(M)の発生する回転が、非接触回転伝達機構(X)によって、該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)を軸着する回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)へ伝達されることにより回転するものである。
そのため、該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)を回転させるため、該回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)に配置される非接触回転伝達機構(X)は、図5乃至図8において示すように、内部に磁石を内装することによって、回転することで該磁石に発生する磁界を変化させて該回転を順次伝達する多数の非接触回転体(A1)乃至(D2)によって構成されている。なお、該非接触回転伝達機構(X)は、該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)の一端だけに配置するものであっても足りるが、該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)の円滑且つより正確な回転のために、該該粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)の両端において配置しても良いものである。
【0014】
まず、動力であるモーター(M)と一体である回転軸(RM)と同軸上に非接触回転体(M1)(M2)(M3)が、該モーター(M)の発生する回転と同方向に回転するように軸着されている。
その上で第1に、図5において示すように、粘着ラバーロール(A)の回転軸(RA)に回転を伝達するために、モーター(M)と一体である回転軸(RM)と同軸上に軸着される2個の非接触回転体(M1)(M2)それぞれに対して、粘着ラバーロール(A)の設置方向とは逆方向側斜め上方に、一定の間隔をもって隣接するよう2個の非接触回転体(A1)(A2)が同軸となる回転軸(RA1)に軸着されると共に、前記非接触回転体(A2)から、該粘着ラバーロール(A)の回転軸(RA)に軸着される非接触回転体(A4)へ回転を伝達するように、その間において一定の間隔を持って回転軸(RA3)に軸着される非接触回転体(A3)が互いに隣接するように横方向に配置されている。
第2に、図6において示すように、粘着ラバーロール(B)の回転軸(RB)に回転を伝達するために、モーター(M)と一体である回転軸(RM)と同軸上に軸着される非接触回転体(M3)に対して、該粘着ラバーロール(B)の設置方向側斜め下方に、また同時に、粘着ラバーロール(B)の回転軸(RB)に軸着される非接触回転体(B2)に対しては横方向に、それぞれ一定の間隔を持って隣接するよう、回転軸(RB1)に軸着される非接触回転体(B1)が配置されている。
第3に、図5において示すように、粘着ラバーロール(C)の回転軸(RC)に回転を伝達するために、モーター(M)と一体である回転軸(RM)と同軸上に軸着される非接触回転体(M3)に対して、一定の間隔を持って非接触回転体(C1)が上方に隣接するように配置されると共に、該非接触回転体(C1)と同一の回転軸上に非接触回転体(C2)が軸着されている。そして、該非接触回転体(C2)から、該粘着ラバーロール(C)の回転軸(RC)に軸着される非接触回転体(C4)へ回転を伝達するように、その間において一定の間隔を持って回転軸(RC3)に軸着される非接触回転体(C3)が互いに隣接するように横方向に配置されている。
第4に、図6において示すように、粘着ラバーロール(D)の回転軸(RD)に回転を伝達するために、モーター(M)と一体である回転軸(RM)と同軸上に軸着される非接触回転体(M2)に対して、該粘着ラバーロール(D)の設置方向側斜め下方に、また同時に、粘着ラバーロール(D)の回転軸(RD)に軸着される非接触回転体(D2)に対しては横方向に、それぞれ一定の間隔を持って隣接するよう、回転軸(RD1)に軸着される非接触回転体(D1)が配置されている。
ここで、上記非接触回転伝達機構(X)において、用いられる非接触回転体(A1…)(B…)(C…)(D…)は、いずれも同一寸法、同一形状であるので、モーター(M)からの回転はいずれにおいても等速で伝達されていくものである。又、上側となる2連の粘着ラバーロール(A)(C)並びに下側となる2連の粘着ラバーロール(B)(D)は、各連毎に上下が面一となるように位置調整がなされるとともに、被洗浄物の搬入側となる上下に一対の粘着ラバーロール(A)(B)並びに搬出側となる上下に一対の粘着ラバーロール(C)(D)は、各対毎に左右が面一となるように位置調整されている。
【0015】
このとき、上記非接触回転伝達機構(X)においては、粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)に一体に軸着される非接触回転体(A4)(B2)(C4)(D2)に対して、該非接触回転体(A4)(B2)(C4)(D2)に隣接するように配置され、動力からの回転を最終的に伝達することとなる非接触回転体(A3)(B1)(C3)(D1)が、左右いずれかの横方向に隣接して配置されている。
そのため、例えば被洗浄物であるフィルム基板(6)の厚さが何らかの原因により増大することによって、スライダー(SA)(SC)を介した上側の粘着ラバーロール(A)(C)が押し上げられ、その各粘着ラバーロール(A)(C)の回転軸(RA)(RC) に一体に軸着される非接触回転体(A4)(C4)が上方向に移動したとしても、該非接触回転体(A4)(C4)と、その回転体(A4)(C4)に対してモーター(M)からの回転を最終的に伝達することとなる非接触回転体(A3)(C3)との距離(すなわち、非接触回転体(A4)と非接触回転体(A3)間の距離及び非接触回転体(C4)と非接触回転体(C3)間の距離)の変動は、その両者の非接触回転体(A4)(C4)及び(A3)(C3)が上下に隣接して設置されている場合に比して、著しく小さくすることができ、その距離の変動による各非接触回転体(A4)(C4)及び(A3)(C3)間の磁力への影響を最小限度に抑制することで、当該非接触回転体(A4)(C4)及び(A3)(C3)による回転の伝達を常に一定に制御できることとなる。
【0016】
尚、この発明の実施例におけるフィルム基板表面洗浄装置(1)においては、上下4本の各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)は、それぞれ上下において横方向に平行に2連配置され、その上下各2連の粘着ラバーロール(A)(C)と(B)(D)にそれぞれ対応して、上下の粘着テープロール(5)(5)(5)(5)もそれぞれ横方向に平行に2連配置されている(図3参照)。しかも、各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)は、その軸方向に垂直に複数の分割溝(A”)(B”)(C”)(D”)を設けることにより、それぞれ一本の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)に複数の粘着ラバーロール体(A’)(B’)(C’)(D’)が連なって形成された上、横方向に平行に2連配置された粘着ラバーロール(A)(C)と(B)(D)の分割溝(A”)(C”)と(B”)(D”)の位置が重複しないように、位置設定がなされている(図2参照)。
【0017】
その上、この発明の実施例であるフィルム基板表面洗浄装置(1)においては、その内部に、左右方向(すなわち、フィルム基板の搬送に対する粘着ラバーロールの前側と後側)に互いに対向するように各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の分割溝(A”)(B”)(C”)(D”)に配置されるフィルム基板押勢ユニット(9)が付設されているものである(図2参照)。
そして図4に示すように、該フィルム基板押勢ユニット(9)は、一つの支持部材(10)に対して、フィルム基板押勢部(11)とフィルム基板ガイド体(12)から構成されるものであって、 該フィルム基板押勢部(11)は、L字形ステー(11a)上において、互いに当接するように配置される、粘着テープロール(5)に当接する接触動力輪(11b)、フィルム基板(6)を密着しつつ押勢してなる鎮圧輪(11c)及び該接触動力輪(11b)と鎮圧輪(11c)との間で両輪に対して同時に当接する動力伝達輪(11d)からなるものであって、該L字形ステー(11a)は、支持部材(10)の先端とL字形ステー(11a)の角部(11a’)とを一体に貫通する鎮圧輪(11c)の回転軸(11c’)により回転自在に、且つ、支持部材(10)の略中央部とL字形ステー(11a)の横部(11a”)先端に回転自在に保持されたガイド動力輪(12a)の回転軸とに掛け渡されたバネにより弾撥自在に一体に取り付けられている。又、接触動力輪(11b)はL字形のステー(11a)の上部先端に回転自在に保持される。
一方、該フィルム基板ガイド体(12)は、前記動力伝達輪(11d)に当接するとともに、前記L字形ステー(11a)の横部(11a”)先端に回転自在に保持されたガイド動力輪(12a)と、該ガイド動力輪(12a)の回転軸によって前記L字形ステー(11a)と一体となったステー(12b)の先端に回転自在に保持された案内輪(12c)並びに、該ガイド動力輪(12a)と案内輪(12c)との間をガイド動力輪(12a)と案内輪(12c)各々の円周方向に設けられた嵌合溝(12a’)(12c’)内に嵌着される輪状の案内体(12d)よりなるものである。
【0018】
このため、フィルム基板(6)の表面の洗浄に当たっては、各粘着テープロール(5)の回転は当接する各フィルム基板押勢ユニット(9)の接触動力輪(11b)に伝達される。そして、その接触動力輪(11b)の回転は、動力伝達輪(11d)を介して鎮圧輪(11c)に伝達されるとともに、同時にガイド動力輪(12a)へも伝達されることとなる。すなわち、鎮圧輪(11c)が各粘着テープロール(5)を介して粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転速度に同期し、且つ、同一方向へ回転することとなるだけでなく、同時に、ガイド動力輪(12a)も粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転速度に同期し、且つ同一方向へ回転することから、該ガイド動力輪(12a)と案内輪(12d)との間に渡された輪状の案内体(12d)も粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転速度と同期して同一方向へ回転することとなる。
この結果、各フィルム基板押勢ユニット(9)(9)のフィルム基板ガイド体(12)が粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の前後方向へ突出して、その案内体(12d)が粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転速度と同期して同一方向へ回転していることから、ベルト搬送部(8)により搬送されてきたフィルム基板(6)に湾曲が生じていたとしても、粘着ラバーロール体(A’)(B’)の前側に設置されたフィルム基板押勢ユニット(9)(9)の案内体(12d)がフィルム基板(6)を搬送しつつ損傷することなく粘着ラバーロール(A)(B)へ正確に導き、更に、粘着ラバーロール体(A’)(B’)より前側へ突出するように配置され、しかも粘着ラバーロール(A)(B)と同期して同一方向へ回転する前側のフィルム基板押勢ユニット(9)(9)の鎮圧輪(11c)が、フィルム基板(6)が湾曲していても、それを押勢して平面にしつつ粘着ラバーロール体(A’)(B’)へ導き、又、同時に、粘着ラバーロール体(A’)(B’)より後側へ突出するように配置され、しかも粘着ラバーロール(A)(B)と同期して同一方向へ回転する後側のフィルム基板押勢ユニット(9)(9)の鎮圧輪(11c)が、フィルム基板(6)を粘着ラバーロール体(A’)(B’)から剥離する方向へ押勢することにより、粘着ラバーロール(A)(B)によってフィルム基板(6)の表面を洗浄しても、該フィルム基板(6)が粘着ラバーロール(A)(B)に巻き付くことが防止される。しかも、後側の粘着ラバーロール(C)(D)より排出されたフィルム基板(6)は、後側の粘着ラバーロール(C)(D)と同期して同一方向へ回転する後側のフィルム基板押勢ユニット(9)(9)の案内体(12d)により、何等の損傷を受けることなく次工程へ搬送するベルト搬送部(8)へ導かれるものとなる。
【0019】
また、この発明の実施例であるフィルム基板表面洗浄装置(1)において使用される粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)には、例えば絶縁性材料であるシリコンゴム等が使用されるので、洗浄した後のフィルム基板(6)に電荷が残留しないように、洗浄前後のフィルム基板(6)の表面を電気的に中和させ、塵埃、微粒子等や不必要な他の部品との接触を防止するために、コロナ放電を利用する除電バーを配置すると良いものである。
【0020】
この発明の実施例であるフィルム基板表面洗浄装置(1)は以上の構成を具えるので、フィルム基板(9)の表面洗浄は次のような過程を経て行われるものである(図9乃至図12参照)。
まず、動力であるモーター(M)に対して通電を行うことで、上述した非接触回転伝達機構(X)により各々回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)に軸着された各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)がその回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)と共に回転を始めるものである。
第1に、粘着ラバーロール(A)の回転軸(RA)への伝達は次のように行われる。即ち、モーター(M)の回転を、モーター方向から見てモーター(M)の回転軸(RM)に対して右回りに回転すると、モーター(M)の回転軸(RM)に軸着される非接触回転体(M1)及び(M2)から、斜め上方に向けて一定に間隔を持って隣接するように配置される非接触回転体(A1)及び(A2)に対して、その回転方向を反転〔モーター(M)方向から見て左回りの回転となる〕させながら回転が伝達される。そして、該非接触回転体(A2)に一定の間隔を持って隣接するように配置される非接触回転体(A3)及び、該非接触回転体(A3)に対して一定に間隔を持って隣接するように配置される粘着ラバーロール(A)の回転軸(RA)の軸着された非接触回転体(A4)においても、同様にそれぞれ回転方向の反転を行いながら、モーター(M)の回転が伝達されて行く。その結果、粘着ラバーロール(A)の回転軸(RA)は、上記モーター(M)の回転軸(RA)の回転方向とは反転した方向に回転することとなる(図9参照)。
第2に、粘着ラバーロール(B)の回転軸(RB)への伝達は次のように行われる。即ち、上記の場合と同様に、モーター(M)の回転軸(RM)が右回転すると、該モーター(M)の回転軸(RM)と同軸上に軸着される非接触回転体(M3)から、その回転を反転しつつ、一定の間隔を持って隣接するように配置される非接触回転体(B1)へ回転が伝達される。そして、再度その回転を反転、即ちモーター(M)の回転軸(RM)と同方向に回転させるものとして、粘着ラバーロール(B)の回転軸(RB)と同軸上に軸着され、一定の間隔を持って隣接するように配置される非接触回転体(B2)へ回転が伝達されて行く。その結果、粘着ラバーロール(B)の回転軸(RB)は、上記モーターの回転軸(RM)の回転方向と同方向に回転することとなる(図10参照)。
第3に、粘着ラバーロール(C)の回転軸(RC)への伝達は、次にように行われる。即ち、上記の場合と同様に、モーター(M)の回転軸(RM)が右回転すると、該モーター(M)の回転軸(RM)と同軸上に軸着される非接触回転体(M3)から、一定の間隔をもって隣接するように配置される非接触回転体(C1)に対してその回転方向を反転させつつ回転が伝達されると共に、該非接触回転体(C1)と同軸上に軸着される非接触回転体(C2)から、同様に一定の間隔をもって隣接するように配置される非接触回転体(C3)に対してその回転方向を再度反転させつつ回転が伝達される。そして、最終的に粘着ラバーロール(C)の回転軸(RC)と同軸上に軸着され、該非接触回転体(C3)に対して一定の間隔をもって隣接するように配置される非接触回転体(C4)へとその回転方向を反転させながら回転が伝達されて行く。その結果、粘着ラバーロール(C)の回転軸(RC)は、上記モーターの回転軸(RM)の回転方向とは反転した方向に回転することとなる。
第4に、粘着ラバーロール(D)の回転軸(RD)への伝達は、次のように行われる。即ち、上記の場合と同様に、モーター(M)の回転軸(RM)が右回転すると、モーター(M)の回転軸(RM)に軸着される非接触回転体(M2)から、その回転方向を反転させながら、一定の間隔を持って隣接するように配置される非接触回転体(D1)を経て、同様に該非接触回転体(D1)に一定の間隔を持って配置され、粘着ラバーロール(D)の回転軸(RD)と同軸上に軸着される非接触回転体(D2)へと回転が伝達されて行く。その結果、粘着ラバーロール(D)の回転軸(RD)は、上記モーター(M)の回転軸(RM)の回転方向と同方向に回転することとなる。
以上より、上下方向に互いに対向して配置されることとなる粘着ラバーロール(A)(B)及び(C)(D)における回転方向は、互いに逆方向となるので、該粘着ラバーロール(A)(B)及び(C)(D)間の空隙(7)を通過することとなるフィルム基板(6)の導入・送出を円滑に行うことができるものとなる。
このとき、各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸に対して、互いに接触することがない非接触回転体(A1…)(B1…)(C1…)(D…)によりモーター(M)の回転が伝達されるので、フィルム基板(6)の表面洗浄に当たって新たな塵埃、微粒子の発生が防止できると共に、回転の伝達を行う非接触回転体(A1…)(B1…)(C1…)(D…)の回転が磁界の変化を利用して行うため円滑且つ正確となり、洗浄物であるフィルム基板(6)に対して過剰な負荷を与えることもなく、しかも静粛性を十分に確保できるものである。
【0021】
そして、上記非接触回転伝達機構(X)においては、各粘着ラバーロール(A)(B)(C)(D)の回転軸(RA)(RB)(RC)(RD)に一体に軸着される各非接触回転体(A4)(B2)(C4)(D2)に対して、該非接触回転体(A4)(B2)(C4)(D2)に隣接するように配置され、最終的に動力からの回転を伝達することとなる非接触回転体(A3)(B1)(C3)(D1)が、それぞれ上下方向ではなく、前記各非接触回転体(A4)(B2)(C4)(D2)の左右いずれかの方向に隣接して配置されているので、除塵の対象物たるフィルム基板(6)の厚さに応じて調整されている上下の粘着ラバーロール(A)(B)と(C)(D)間の空隙(7)に対して、何等かの原因によってその調整の基準となる厚さよりも厚みのあるフィルム基板(6)が搬送されてきた場合、当該フィルム基板(6)の厚みによってスライダー(SA)(SC)を介した上側の粘着ラバーロール(A)(C)が押し上げられ、その各粘着ラバーロール(A)(C)の回転軸(RA)(RC)に一体に軸着される非接触回転体(A4)(C4)も上方向に移動することとなるが、該非接触回転体(A4)(C4)と、その回転体(A4)(C4)に対してモーター(M)からの回転を最終的に伝達することとなる非接触回転体(A3)(C3)との距離(すなわち、非接触回転体(A4)と非接触回転体(A3)間の距離及び非接触回転体(C4)と非接触回転体(C3)間の距離)の変動は、その両者の非接触回転体(A4)(C4)及び(A3)(C3)が上下に隣接して設置されている場合に比して、著しく小さいので、その距離の変動による各非接触回転体(A4)(C4)及び(A3)(C3)間の磁力への影響を最小限度に抑制することができ、当該非接触回転体(A4)(C4)及び(A3)(C3)による回転の伝達を常に一定に制御できることとなる。その結果、フィルム基板(6)の表面に付着する塵埃、微粒子等を確実に除去することができるものとなる。
【0022】
そこで、被洗浄物であるフィルム基板(6)がベルト搬送部(8)によって上下方向に対向して配置される粘着ラバーロール(A)(B)及び(C)(D)間に形成される空隙(7)方向へと搬送されると、前側の粘着ラバーロール(A)(B)の分割溝(A”)(B”)に設置された、互いに上下方向に対向するように配置されたフィルム基板押勢ユニット(9)(9)の内、前側のフィルム基板押勢ユニット(9)(9)の各フィルム基板ガイド体(12)に設けられた回転する案内体(12d)により、フィルム基板(6)はフィルム基板押勢部(11)の鎮圧輪(11c)間の空隙(11C”)に誘導されるものとなる。
そして、該フィルム基板押勢ユニット(9)(9)を構成するフィルム基板押勢部(11)の鎮圧輪(11c)間を通過したフィルム基板(6)は、該鎮圧輪(11c)によって押勢されて平面化しつつ、そのまま前側の粘着ラバーロール(A)(B)の空隙(7)へと導かれるものとなる。その場合、前側の粘着ラバーロール(A)(B)によって一旦表面洗浄を終了したフィルム基板(6)は、この粘着ラバーロール(A)(B)の粘着ラバーロール体(A’)(B’)と径方向にその一部が重複するように、後側のフィルム基板押勢ユニット(9)(9)を構成するフィルム基板押勢部(11)の鎮圧輪(11c)が配置されているので、該鎮圧輪(11c)が、フィルム基板(6)が粘着ラバーロール体(A’)(B’)に沿って巻回しようとするのを押勢することにより防止して、フィルム基板(6)を粘着ラバーロール体(A’)(B’)から引き剥がすので、フィルム基板(6)が元のように変形してしまうことを積極的に抑制することができるものである。
そして、前側の粘着ラバーロール(A)(B)によってその表面を除塵・洗浄されたフィルム基板(6)が、粘着ラバーロール(A)(B)から排出された際に再び湾曲することがあっても、その前側の粘着ラバーロール(A)(B)の分割溝(A”)(B”)に設置された後側のフィルム基板押勢ユニット(9)(9)を構成するフィルム基板ガイド体(12)の回転している輪状の案内体(12d)に当接することで、その排出並びに後側の粘着ラバーロール(C)(D)への搬送が円滑になされることとなる。
このように、フィルム基板(6)は前側の粘着ラバーロール(A)(B)によって、その分割溝(A”)(B”)部分を除いて除塵されるので、引き続きその分割溝(C”)(D”)部分を前側の粘着ラバーロール(A)(B)とはずらせた後側の粘着ラバーロール(C)(D)により同様の作業を繰り返し、最終的に後側の粘着ラバーロール(C)(D)から後側へ排出されて、該表面洗浄装置(1)の後側のベルト搬送部(8)により次工程の装置へと搬送されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、クリーンルーム内などの極めて高度な表面洗浄が要求される環境において使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例であるフィルム基板表面洗浄装置の正面図である。
【図2】上記フィルム基板表面洗浄装置における粘着ラバーロールの要部拡大平面図である。
【図3】上記フィルム基板表面洗浄装置における粘着ラバーロールの要部拡大模式図である。
【図4】上記フィルム基板表面洗浄装置におけるフィルム基板押勢ユニットの正面図である。
【図5】上記フィルム基板表面洗浄装置における非接触回転伝達機構の拡大平面模式図である。
【図6】上記フィルム基板表面洗浄装置における非接触回転伝達機構の拡大底面模式図である。
【図7】上記フィルム基板表面洗浄装置における非接触回転伝達機構の拡大側面模式図である。
【図8】上記フィルム基板表面洗浄装置における非接触回転伝達機構の拡大側面模式図である。
【図9】粘着ラバーロール(A)への回転伝達経路を示した平面側からの模式図である。
【図10】粘着ラバーロール(B)への回転伝達経路を示した平面側からの模式図である。
【図11】粘着ラバーロール(C)への回転伝達経路を示した平面側からの模式図である。
【図12】粘着ラバーロール(D)への回転伝達経路を示した平面側からの模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1 フィルム基板表面洗浄装置
2 フレーム
3 操作パネル
4 アダプター
5 粘着テープロール
6 フィルム基板
7 空隙
8 ベルト搬送部
9 フィルム基板押勢ユニット
10 支持部材
11 フィルム基板押勢部
11a L字形ステー
11a’ 角部
11a” 横部
11b 接触動力輪
11c 鎮圧輪
11c’ 回転軸
11c” 空隙
11d 動力伝達輪
12 フィルム基板ガイド体
12a ガイド動力輪
12a’ 嵌合溝
12b ステー
12c 案内輪
12c’ 嵌合溝
12d 案内体

X 非接触回転伝達機構
A、B、C、D 粘着ラバーロール
A’、B’、C’、D’ 粘着ラバーロール体
A”、B”、C”、D” 分割溝
M モーター
RM (モーターの)回転軸
A1…、B1…、C1…、D1… 非接触回転体
RA、RB、RC、RD (粘着ラバーロールの)回転軸
RA1…、RB1…、RC1…、RD1… (非接触回転体の)回転軸
SA、SC スライダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームにおいて、動力により駆動し回転自在に保持される粘着ラバーロール、及びこの粘着ラバーロールの表面に対して密着して回転自在に保持される粘着テープロールから構成され、基板を、その両面のうち少なくとも一面に対して粘着ラバーロールを当接させつつ搬送して通過させることによって、該基板の面に付着した塵埃、微粒子等を粘着ラバーロールに転写、除去させ、更にこの粘着ラバーロールに転写、除去された塵埃、微粒子等を最終的に粘着テープロールに転写、除去することで除塵を行う基板表面洗浄装置において、
その内部に磁石を内装するものであって、回転することで該磁石の発生する磁界が変化して、該回転を順次伝達してなる非接触回転体を、上下左右方向に一定の間隔を持って互いに隣接するように配置しながら、動力、粘着ラバーロール等の回転軸に回転自在に軸着して構成する非接触回転伝達機構によって、動力の発生する回転を順次伝達して該粘着ラバーロールを回転させてなる基板表面洗浄装置。
【請求項2】
上記粘着ラバーロールの回転軸に一体に軸着される非接触回転体に対して、該非接触回転体に隣接するように配置され、動力からの回転を最終的に伝達することとなる非接触回転体が、前記非接触回転体の左右いずれかの方向に隣接して配置されてなる請求項1記載の基板表面洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−117794(P2007−117794A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309582(P2005−309582)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(392009342)株式会社レヨーン工業 (24)
【Fターム(参考)】