説明

基準電位発生回路

【課題】低電源電圧で使用可能なCMOS集積回路用の基準電位発生回路を提供する。
【解決手段】シート抵抗12とダイオード接続されたNMOS13による電位Vnaと、ダイオード接続されたNMOS15による電位Vnbが同電位になるように、演算増幅器20の制御電圧CONによってPMOS11,14の駆動電流Ia,Ibを制御する。制御電圧CONを電流ミラーを構成するPMOS16に与え、このPMOS16に直列に接続されたシート抵抗17とダイオード接続されたNMOS18による電位を、基準電圧VREFとして出力する。電源電位VCCと接地電位GND間には、1組のPMOSとNMOSだけが接続されるので、1.5V程度の低電源電圧でも、電源電位VCCと周囲温度に依存しない一定の基準電圧VREFが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタ(以下、単に「MOS」という)を用いた集積回路で温度や電源電圧に依存しない一定の基準の電位を発生させるための基準電位発生回路、特に低電源電圧に適した基準電位発生回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の基準電位発生回路の回路図である。
この基準電位発生回路は、電源電位VCCと出力ノードNOの間に接続された抵抗1、この出力ノードNOと内部ノードNIの間に接続された抵抗2、この内部ノードNIと接地電位GNDの間に直列に接続されたNチャネルMOS(以下、「NMOS」という)3,4、及び出力ノードNOと接地電位GNDの間に接続されたPチャネルMOS(以下、「PMOS」という)5で構成されている。NMOS3,4のゲートは、それぞれ出力ノードNOと電源電位VCCに接続され、PMOS5のゲートは、内部ノードNIに接続されている。
【0003】
この基準電位発生回路において、出力ノードNOに出力される基準電位VREFは、次の式で表される。
VREF=Vtp(1+Req/R2)
【0004】
ここで、VtpはPMOS5の閾値電圧、Reqは直列接続されたNMOS3,4の等価抵抗値、及びR2は抵抗2の抵抗値である。
【0005】
直線領域で動作するNMOSのオン抵抗(ここでは、Req)は、正の温度係数を有しており、PMOSの閾値電圧(ここでは、Vtp)は負の温度係数を有している。従って、NMOS3とPMOS5によって温度特性が打ち消され、基準電位VREFの温度補償が行われる。
【0006】
なお、NMOS4は基準電位VREFの制御と、電源電位VCCの高い領域での基板効果の抑制のために用いられる。また、抵抗1,2は、バイアスとドレイン電流低減のために用いられる。そして、この基準電位発生回路では、電源電位VCCが2〜6Vにおいて、ほとんど温度に依存しない一定の基準電位VREF(約1.3V)が発生される。
【0007】
【特許文献1】特開平8−16267号公報
【特許文献2】特開2002−318626号公報
【0008】
なお、上記特許文献1には、ECL回路に内蔵されるバンドギャップ型定電圧回路が記載され、上記特許文献2には、ダイオードを用いたバンドギャップ型定電圧回路が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記基準電位発生回路では、温度に依存しない一定の基準電位VREFを生成するためには、電源電位VCCが2V以上である必要があり、それ以下の電源電位VCCでは正常に動作しないという課題があった。
【0010】
本発明は、2V以下(例えば、1.5V)の低電源電圧で使用可能なCMOS集積回路用の基準電位発生回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基準電位発生回路は、電源電位と第1の内部ノードの間に接続され、制御電圧によって導通状態が制御される第1のMOSと、前記第1の内部ノードと接地電位の間に第1の抵抗を介して接続され、順方向にダイオード接続された第2のMOSと、前記電源電位と第2の内部ノードの間に接続され、前記制御電圧によって導通状態が制御される第3のMOSと、前記第2の内部ノードと前記接地電位の間に順方向にダイオード接続された第4のMOSと、基準電位が出力される出力ノードと前記電源電位の間に接続され、前記制御電圧によって導通状態が制御される第5のMOSと、前記出力ノードと前記接地電位の間に第2の抵抗を介して接続され、順方向にダイオード接続された第6のMOSと、前記第1及び第2の内部ノードの電位差に応じて前記制御電圧を出力する演算増幅器とを備えている。そして、第1、第3及び第5のMOSのゲート長とゲート幅は、それぞれ同一サイズに形成し、第2、第4及び第6のMOSのゲート長と、第4及び第6のMOSのゲート幅は同一サイズに形成し、第2のMOSのゲート幅は、第4及び第6のMOSのゲート幅よりも大きなサイズに形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電源電位と接地電位の間に、電流駆動用の第1、第3、第5のMOSと、これらの第1、第3、第5のMOSと直列に、それぞれ順方向にダイオード接続した第2、第4、第6のMOSを接続している。これにより、2V以下(例えば、1.5V程度)の電源電圧でも、電源電位や周囲温度に影響されずに正常に動作し、一定の基準電位を生成することができるという効果がある。また、バイポーラトランジスタを用いずにMOSで構成しているので、低電源電圧仕様のCMOS集積回路用の基準電位発生回路として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、次の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。但し、図面は、もっぱら解説のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例を示す基準電位発生回路の回路図である。
この基準電位発生回路は、電源電位VCCと内部ノードNAの間に接続されたPMOS11、この内部ノードNAと接地電位GNDの間に直列に接続されたシート抵抗12とNMOS13を有している。NMOS13はゲートがドレインに接続されて順方向のダイオード接続となっている。また、シート抵抗12は、ポリシリコンや拡散抵抗で構成されたものである。
【0015】
また、この基準電位発生回路は、電源電位VCCと内部ノードNBの間に接続されたPMOS14、及びこの内部ノードNBと接地電位GNDの間に接続されたNMOS15を有している。NMOS15も、NMOS13と同様に、ゲートがドレインに接続されて順方向のダイオード接続となっている。なお、NMOS13は、NMOS15に比べて駆動能力がm倍(但し、m>1)となるように、サイズが設定されている。即ち、ゲート幅をW、ゲート長をLとした場合、NMOS13の(W/L)13は、NMOS15の(W/L)15のm倍となっている。一方、PMOS11,14は、同一ディメンジョンに設定されている。通常、ゲート長として同一の値Lを使用し、ゲート幅Wを変えることによって駆動能力を設定するようにしている。内部ノードN1,N2は、演算増幅器20の入力側に接続されており、この演算増幅器20の出力側が、PMOS11,14のゲートに接続されている。
【0016】
更に、この基準電位発生回路は、電源電位VCCと出力ノードNOの間に接続されたPMOS16、及びこの出力ノードNOと接地電位GNDの間に直列に接続されたシート抵抗17とNMOS18を有している。NMOS18はゲートがドレインに接続されて順方向のダイオード接続となっている。なお、PMOS16のディメンジョンは、PMOS11,14と同じ値に設定され、NMOS18のディメンジョンは、NMOS15と同じ値に設定されている。そして、PMOS16のゲートは、演算増幅器20の出力側に接続されている。これにより、PMOS11,14,16は電流ミラー回路を構成し、演算増幅器20から出力される制御電圧CONに応じて、同じ値の電流が流れるようになっている。
【0017】
一方、演算増幅器20は、それぞれのゲートが内部ノードNA,NBに接続されて導通状態が制御されるNMOS21a,21bを有している。NMOS21a,21bのドレインは、それぞれPMOS22a,22bを介して電源電位VCCに接続され、これらのNMOS21a,21bのソースは、共通のNMOS23を介して接地電位GNDに接続されている。NMOS21a,21bのドレインは、更に、それぞれPMOS24a,24bを介して内部ノードNC,NDに接続されている。
【0018】
内部ノードNCは、直列に接続されたNMOS25a,26aを介して接地電位GNDに接続され、内部ノードNDは、直列に接続されたNMOS25b,26bを介して接地電位GNDに接続されている。NMOS23,25a,25b,26a,26bのゲートには、図示しないバイアス回路からバイアス電圧VB1が与えられ、PMOS24a,24bのゲートには、バイアス電圧VB2が与えられている。また、PMOS22a,22bのゲートは内部ノードNDに接続されている。そして、内部ノードNCから演算増幅器20の出力信号、即ち、内部ノードNA,NBの電位差に応じた制御電圧CONが出力されるようになっている。
【0019】
この演算増幅器20では、バイアス電圧VB1,VB2を適切に制御することにより、2V以下の低電源電圧で、かつ、入力信号レベルがほぼ電源電位VCC付近の値でも正常に動作するように構成されている。
【0020】
次に、図1の基準電位発生回路の動作を説明する。
この基準電位発生回路では、内部ノードNA,NBの電位Vna,Vnbが演算増幅器20に与えられ、この演算増幅器20から出力される制御電圧CONによってPMOS11,14の動作状態が制御される。この結果、内部ノードNA,NBの電位Vna,Vnbは等電位となり、PMOS11,14に流れる電流Ia,Ibも等しくなるように制御される。また、PMOS16に流れる電流Icも、電流Ia,Ibと等しくなる。
【0021】
PMOS11,14に流れる電流Ia,Ibは、それぞれNMOS13,15に流れる電流と同じであるので、次の一般式で表される。
Ia=(mβ/2)(Vgs−Vtn)2 ・・(1)
Ib=(β/2)(Vnb−Vtn)2 ・・(2)
【0022】
ここで、mは前述したNMOS13,15のディメンジョン比、βはNMOSの電流増幅率、VgsはNMOS13のゲート・ソース間電圧、及びVtnはNMOSの閾値電圧である。
Ia=Ibであるから、(1),(2)式より、次の関係が成り立つ。
(Vgs−Vtn)/(Vnb−Vtn)=1/√(m) ・・(3)
【0023】
また、内部ノードNAの電位Vnaは、シート抵抗12の抵抗値をR12とすると、次のようになる。
Vna=Ia×R12+Vgs ・・(4)
Ia=Ibであるから、(4)式中のIaに(2)式を代入すると次のようになる。
Vnb=Vna=(β/2)(Vnb−Vtn)2 ×R12+Vgs ・・(4)
(4)式の両辺からVtnを引くと、次式となる
Vnb−Vtn=(β/2)(Vnb−Vtn)2 ×R12+Vgs−Vtn ・・(5)
(5)式の両辺を(Vnb−Vtn)で割ると、次の式が得られる。
1=(β/2)(Vnb−Vtn)×R12+(Vgs−Vtn)/(Vnb−Vtn)
=(β/2)(Vnb−Vtn)×R12+1/√(m) ・・(6)
【0024】
出力ノードNOの基準電位VREFは、シート抵抗17の抵抗値をR17とすると、次の式で表される。
VREF=Ic×R17+Vtn ・・(7)
ここで、Ic=Ib、Vtn=Vnbであるから、(7)式は次のようになる。
VREF=(β/2)(Vnb−Vtn)2 ×R17+Vnb ・・(8)
(6),(8)式より、次の(9)式が得られる。
【0025】
【数1】

【0026】
(9)式より、基準電位VREFは電源電位VCCに依存しないことが分かる。また、βは温度の−1.5乗に比例し、R15,R17は温度に比例する係数である。更に、Vtnは負の温度係数を有している。従って、電流増幅率β、抵抗値R15,R17、及びディメンジョン比mを厳密に調整することにより、(9)式の第1項の正の温度係数と、第2項の負の温度係数を相殺することができる。
【0027】
以上のように、この実施例の基準電位発生回路は、電源電位VCCと接地電位GNDの間に、電流駆動用のPMOSと直列に順方向にダイオード接続したNMOSを接続すると共に、このPMOSを制御する演算増幅器20を低電源電圧で動作可能な回路構成にしている。これにより、2V以下(例えば、1.5V程度)の電源電圧でも正常に動作し、電源電位VCCや周囲温度に影響されずに一定の基準電位VREFを生成することができるという利点がある。
【0028】
更にこの基準電位発生回路は、バイポーラトランジスタを用いずにMOSで構成しているので、低電源電圧仕様のCMOS集積回路用の基準電位発生回路として最適である。
【0029】
なお、本発明は、上記実施例に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例としては、例えば、次のようなものがある。
(a) 演算増幅器20の構成は、例示した回路に限定されない。
(b) 順方向にダイオード接続されたNMOS13,15,18に代えて、順方向にダイオード接続されたPMOSを用いても良い。その場合は、PMOSのゲートとドレインを接地電位GNDに接続することになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例を示す基準電位発生回路の回路図である。
【図2】従来の基準電位発生回路の回路図である。
【符号の説明】
【0031】
11,14,15 PMOS
12,17 シート抵抗
13,15,18 NMOS
20 演算増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電位と第1の内部ノードの間に接続され、制御電圧によって導通状態が制御される第1のMOSトランジスタと、
前記第1の内部ノードと接地電位の間に第1の抵抗を介して接続され、順方向にダイオード接続された第2のMOSトランジスタと、
前記電源電位と第2の内部ノードの間に接続され、前記制御電圧によって導通状態が制御される第3のMOSトランジスタと、
前記第2の内部ノードと前記接地電位の間に順方向にダイオード接続された第4のMOSトランジスタと、
基準電位が出力される出力ノードと前記電源電位の間に接続され、前記制御電圧によって導通状態が制御される第5のMOSトランジスタと、
前記出力ノードと前記接地電位の間に第2の抵抗を介して接続され、順方向にダイオード接続された第6のMOSトランジスタと、
前記第1及び第2の内部ノードの電位差に応じて前記制御電圧を出力する演算増幅器とを備え、
前記第1、第3及び第5のMOSトランジスタのゲート長とゲート幅は、それぞれ同一サイズに形成し、
前記第2、第4及び第6のMOSトランジスタのゲート長と、該第4及び第6のMOSトランジスタのゲート幅は同一サイズに形成し、該第2のMOSトランジスタのゲート幅は、該第4及び第6のMOSトランジスタのゲート幅よりも大きなサイズに形成したことを特徴とする基準電位発生回路。
【請求項2】
前記第1、第3及び第5のMOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタとし、前記第2、第4及び第6のMOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタとしたことを特徴とする請求項1記載の基準電位発生回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−249733(P2007−249733A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73907(P2006−73907)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】