説明

基準電圧回路

【課題】素子バラツキの影響が出力電圧特性のバラツキに現れるという問題を解決する。
【解決手段】第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する制御手段(AP1)を有し、前記第1または第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路を有し、前記第1のカレントミラー回路からの出力電流を第3の電流−電圧変換回路を介して電圧に変換して供給する基準電圧回路において、前記第1、第2および第3の電流−電圧変換回路は、第1のダイオード(またはダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタ)と第1の抵抗R1が直列接続され、さらに第2の抵抗R2が並列接続されてなるか、あるいは、第1のダイオード(またはダイオード接続された第2のバイポーラトランジスタ)と第1の抵抗R2が並列接続され、さらに第2の抵抗が直列接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧回路に関し、特に、CMOS半導体集積回路上に形成して好適とされ、チップ面積が小さく、低電圧から動作し、温度特性の小さな基準電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCMOS基準電圧回路は、特許文献1(特開平11−45125号公報)に詳しく記載されている。この基準電圧回路は、電流−電圧変換により基準電圧を得ているのは、それ以前に考案された温度特性が相殺されたこの種の基準電圧回路と同じであるのは当然であるが、それ以前に考案された温度特性が相殺されたこの種の基準電圧回路では、正の温度特性を持つ基準電流を抵抗とダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)から成る出力回路で電圧に変換し、抵抗での電圧降下分が正の温度特性を持つ電圧成分、ダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)での順方向電圧が負の温度特性を持つ電圧成分を得、両者を加算することで、温度特性が相殺された1.2V前後の基準電圧を得ていた。
【0003】
一方、特許文献1(特開平11−45125号公報)に記載された、番場の考案した基準電圧回路では、殆ど温度特性を持たない基準電流を得て抵抗のみから成る出力回路で電圧に変換し任意の電圧値の基準電圧が得られている。
【0004】
したがって、従来のこの種の基準電圧回路の出力電圧として規定される温度特性が相殺される1.2Vを回路内で電流値に変換して得ているために、基準電圧回路は1.2V以下の電源電圧で動作させることができる優れものである。
【0005】
本発明者が筆者であるテキスト、非特許文献1(「携帯無線端末のCMOS化のためのアナログ回路設計技術」、トリケップス社、1999年)では、すぐさま公開となったその年の内に「電流モード型基準電圧回路」として紹介し、詳しい回路解析を載せている。
【0006】
特に、これまでの基準電圧回路では、負の温度特性を持つ電圧成分をダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)での順方向電圧を用いていたために、ダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)での順方向電圧が持つ温度特性からのズレが出力電圧に顕著に現れる。
【0007】
すなわち、ダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)での順方向電圧は、負の温度特性を持つが、温度が低くなるにしたがって、負の温度特性の傾きが鈍ってくる。
【0008】
一方、正の温度特性を持つ電圧は、電流密度の異なる2つのダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)の順方向電圧の差電圧により抵抗に流れる電流を得、それを更に抵抗で電圧変換して実現している。
【0009】
ここで留意すべき点は、上記テキストには記載が漏れているのではあるが、ダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)での順方向電圧は温度が低くなるにしたがって負の温度特性の傾きが鈍ってくるために、温度特性に対する直線性が悪いのであるが、(電流密度の異なる)2つのダイオード(あるいはダイオード接続されたトランジスタ)の順方向電圧の差電圧は温度特性に対する直線性が非常に良いという点である。
【0010】
このように、基準電圧回路は、電流モード型に回路構成を変更することで、温度特性に対する直線性が悪い素子を用いていても、その差電圧を電流として用いることで、温度特性に対する直線性を大幅に改善していることである。
【0011】
ここでは特許文献1(特開平11−45125号公報)に記載された内容にしたがって、その動作を説明する。図1において、OP amp DA1により、VA=VBとなるように、トランジスタP1とP2の共通ゲート電圧が制御される。
【0012】
したがって、
VA=VB (1)
【0013】
また、
I1=I2 (2)
である。
【0014】
また、pチャネルトランジスタP1の出力電流I1はダイオードD1に流れるI1Aと抵抗R4に流れるI1Bとに分流される。同様に、pチャネルトランジスタP2の出力電流I2は直列接続される抵抗R1とN個並列接続されたダイオードD2に共通に流れるI2Aと抵抗R2に流れるI2Bとに分流される。
【0015】
ここで、
R2=R4 (3)
とすると、
I1A=I2A (4)
I1B=I2B (5)
となる。
【0016】
また、ダイオードD1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、
VA=VF1 (6)
VB=VF2+ΔVF (7)
とおけ、
ΔVF=VF1−VF2 (8)
となる。
【0017】
R1での電圧降下がΔVFであり、
I2A=ΔVF/R1 (9)
I1B=I2B=VF1/R2 (10)
となる。
【0018】
ここで、
ΔVF=VTln(N) (11)
である。
【0019】
ただし、VTは熱電圧であり、
VT=kT/q (12)
と表わされる。
ここに、Tは絶対温度[K]、kはボルツマン定数、qは単位電子電荷である。
【0020】
したがって、I3(=I2)が抵抗R3で電圧変換され、
Vref=R3×I3
=R3{VF1/R2+(VTln(N))/R1}
=(R3/R2){VF1+(R2/R1)(VTln(N))} (13)
と表わされる。
【0021】
ここで、{VF1+(R2/R1)(VTln(N))}は、温度特性が相殺された1.2V前後の電圧値である。具体的には、VF1は、およそ−1.9mV/℃の負の温度特性を持ち、VTは、0.0853mV/℃の正の温度特性を持つ。したがって、温度特性が相殺されるためには、(R2/R1)ln(N)の値は22.3となる。
【0022】
また、VTは常温では26mVであるから、(R2/R1)(VTln(N))は常温では、およそ580mVとなる。
【0023】
したがって、VF1が常温で620mVであるとすると、{VF1+(R2/R1)(VTln(N))}は、ほぼ1.2Vとなる。
【0024】
温度特性を厳密に議論すると、ダイオードD1に抵抗R4が並列接続されているから、低温になると、抵抗R4に流れる電流は、ダイオードの持つ温度特性の非直線性のために、電流値が減少傾向にある。
【0025】
一方、ダイオードD2に抵抗R1が直列接続されているから、ダイオードD2に流れる電流が正の温度特性を持つなら、ダイオードD2と抵抗R1間の電圧は、ダイオードD1での電圧よりも低くなってしまう。
【0026】
両者の電圧が等しくなるように制御されるから、低温では電流が増加することで、両者の電圧が等しくなるように働く。逆に、高温では逆に働く。
【0027】
すなわち、この回路では、ダイオードD1、D2に流れる電流は、(VTln(N))/R1で規定される温度特性よりも小さな温度特性に設定され、抵抗R2、R4に流れる電流(VF1/R2、VF1/R4)も低温で多少増加する。
【0028】
こうして、トランジスタP1、P2、およびP3から供給される駆動電流は、ダイオードの持つ順方向電圧の温度特性の非直線性を相殺する方向に働くために、得られる基準電圧の温度特性も、温度に対して変動の少ない直線に非常に近い特性に設定できる。
【0029】
また、抵抗比(R3/R2)は温度特性を持たないから、出力される基準電圧Vrefも、温度特性が相殺された電圧となる。
【0030】
ここで、抵抗比(R3/R2)は、任意に設定でき、1<(R3/R2)に設定すれば、Vrefは、1.2Vよりも高い電圧となり、1>(R3/R2)に設定すれば、Vrefは1.2Vよりも低い電圧となる。
【0031】
特許文献1(特開平11−45125号公報)では、具体的なNの値として、N=10の記載がある。しかしながら、実際に、回路を実現した時(IEEE Symposium on VLSI Circuits 1998(May))には、N=100としていた。
【0032】
CMOSプロセスにおいては、微細化が進み、MOSトランジスタが微細な大きさになったのに対し、寄生バイポーラ素子を流用するダイオードの大きさは、MOSトランジスタに比べると桁違いに大きい。
【0033】
また、ダイオードD1とD2との比Nを、1桁から2桁程度と大きくするから、そのチップ上での面積は大きなものとなっている。
【0034】
なお、特許文献2、3には、ダイオードD1を有し、ダイオードD1に電圧VN1を発生する第1の電圧発生回路と、ダイオードD2を有し、ダイオードD2に電圧VN2を発生する第2の電圧発生回路と、出力抵抗素子と、VN1、VN2が略等しくなるようにフィードバック制御を行う演算増幅器OPと、演算増幅器OPによりゲート電極が制御され、第1の電圧発生回路、第2の電圧発生回路、出力抵抗素子に供給される電流を制御するトランジスタPT1、PT2、PT3と、第1の電圧発生回路、第2の電圧発生回路、出力抵抗素子に、CMOS基準電圧発生回路を起動するための電流を供給する電流源IS1、IS2、IS3を備えたCMOS基準電圧発生回路が開示されている。
【0035】
【特許文献1】特開平11−45125号公報
【特許文献2】特開2003−173212号公報
【特許文献3】特開2003−173213号公報
【非特許文献1】木村、「電流モード型基準電圧回路」、「携帯無線端末のCMOS化のためのアナログ回路設計技術」、トリケップス社、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
従来の回路は下記記載の問題点を有している。
【0037】
第1の問題点は、バラツキが大きくなる、ということである。
【0038】
その理由は、ダイオードに直列接続される抵抗がある回路とない回路で、電圧が等しくなるように制御しているためである。
【0039】
第2の問題点は、ダイオード比を、2〜3桁程度とる必要がある、ということである。
【0040】
その理由は、比較制御される回路が ダイオードに直列接続される抵抗がある回路とない回路であるために直列接続される抵抗をそれなりに大きくする必要があり、両者のダイオード間の電圧差を大きくするためにダイオード比を2〜3桁程度とる必要があった。
【0041】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑みて創案されたものであって、本発明の目的は、高精度化を実現し、特性・性能向上を図る基準電圧回路を提供することにある。
【0042】
より具体的には、ダイオードを2、3個しか用いなくても、回路を実現でき、小さなチップ面積でもって、低電圧から動作する温度特性の小さな任意の基準電圧を出力し、素子バラツキの影響が小さくなる基準電圧回路の実現を図るものである。あるいは、また、本発明の他の目的は低電圧化が可能な基準電圧回路の実現を図るものである。さらに、また、本発明の他の目的はチップ面積を小さくする基準電圧回路の実現を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本願で開示される発明は、上記目的を達成するため概略以下の構成とされる。
【0044】
本発明の基準電圧回路は、第1の電流−電圧変換回路と、第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する制御手段を有し、前記第1の電流−電圧変換回路または前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路を有し、前記第1のカレントミラー回路からの出力電流を第3の電流−電圧変換回路を介して電圧に変換して供給する基準電圧回路において、前記第1、第2および第3の電流−電圧変換回路は第1のダイオード(またはダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタ)と第1の抵抗が直列接続され、さらに第2の抵抗が並列接続されてなるか、あるいは、第1のダイオード(またはダイオード接続された第2のバイポーラトランジスタ)と第1の抵抗が並列接続され、さらに第2の抵抗が直列接続されてなる。
あるいは、前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗からなる。
【0045】
あるいは、前記第1および第2の電流−電圧変換回路にそれぞれ、さらに第3および第4のダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)が並列接続されてなる。
【0046】
あるいは、前記制御手段が、差動増幅器(あるいはOP amp)である。
【0047】
あるいは、前記第1および第2の電流−電圧変換回路は第1のダイオード(またはダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタ)と第1の抵抗が直列接続され、さらに第2の抵抗が並列接続されてなり、前記第2の抵抗の中間電位が差動増幅器(あるいはOP amp)の入力端子に供給される。
【0048】
あるいは、前記制御手段が、前記第1のカレントミラー回路を含むカレントミラー回路により自己バイアスされた第2のカレントミラー回路である。
【0049】
あるいは、前記制御手段が、前記第1の電流−電圧変換回路に供給される電流と前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流を第2のカレントミラー回路により比較し、前記第2のカレントミラー回路の出力で第3のカレントミラー回路をバイアスすることで前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する。
【0050】
あるいは、前記制御手段が、前記第1のカレントミラー回路を含む逆ワイドラーカレントミラー回路により自己バイアスされた第2のカレントミラー回路である。
【0051】
第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する制御手段を有し、前記第1の電流−電圧変換回路または前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路を有し、前記第1のカレントミラー回路からの出力電流を第3の電流−電圧変換回路を介して電圧に変換して供給する基準電圧回路において、前記第1および第3の電流−電圧変換回路は、ダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタが第1のエミッタ抵抗を介して接地され、さらにベースには第2の抵抗が並列接続されて直接接地されるかあるいは前記第1のエミッタ抵抗を介して接地され、前記第2の電流−電圧変換回路は、第2のバイポーラトランジスタが第2のエミッタ抵抗を介して接地され、ベースは前記第1の電流−電圧変換回路の出力端子に接続され、コレクタには第3のバイポーラトランジスタのベースが接続されるとともに第4の抵抗が並列接続されて直接接地されるかあるいは前記第2のエミッタ抵抗を介して接地され、前記第3のバイポーラトランジスタのコレクタは前記第1のカレントミラー回路を駆動する。
【0052】
あるいは、ダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタが第1のエミッタ抵抗を介して接地され、さらにベースには第2の抵抗が並列接続されて直接接地されてなる第1の電流−電圧変換回路と第2のバイポーラトランジスタが第2のエミッタ抵抗を介して接地され、ベースは前記第1の電流−電圧変換回路の出力端子に接続され、コレクタには第3、第4のバイポーラトランジスタのベースが接続されるとともに第4の抵抗が並列接続されて直接接地されてなる第2の電流−電圧変換回路を有し、前記第3、第4のバイポーラトランジスタはそれぞれ前記第1、第2のバイポーラトランジスタとトランジスタサイズが等しく、それぞれ第1、第2のエミッタ抵抗と等しい第3、第4のエミッタ抵抗を介して接地され、前記第2、第4の抵抗と等しい第7の抵抗の一方の端子が接地されて前記第3、または、第4のバイポーラトランジスタと等しい第5のエミッタ抵抗を介して接地された第5のバイポーラトランジスタをバイアスし、前記第5のバイポーラトランジスタに流れる電流が前記第3、または、第4のバイポーラトランジスタと等しくする手段を有し、前記第3、および、第4のバイポーラトランジスタに流れる電流と前記第7の抵抗に流れる電流の和電流が前記第1の電流−電圧変換回路、および前記第2のバイポーラトランジスタと前記第4の抵抗を駆動する手段を有し、前記第1、または第2のバイポーラトランジスタに流れる電流と前記第2、または第4の抵抗に流れる電流の和電流に比例する電流で第3の電流−電圧変換回路を駆動する。
【0053】
あるいは、前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗からなる。
【0054】
ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)と抵抗を直列接続し、さらに抵抗を並列接続することで0.7V程度の低電圧で温度特性が相殺された基準電流が得られる。さらに、OP ampの基準となる電圧をダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)2、3個で構成することで小さなチップ面積で実現できる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、チップ面積を小さくすることができる。その理由は、ダイオードを3〜4個だけしか用いないでも回路を実現することができるためである。
【0056】
本発明によれば、低電圧で動作させることができる。
【0057】
その理由は、出力電圧が1.2V以下(具体的には1.0V以下)の任意の電圧値に設定できるためである。
【0058】
本発明によれば、バラツキに対する影響を低減することができる。
【0059】
その理由は、比較される2つの電流−電圧変換回路と出力回路の回路トポロジを同一にできるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0061】
図2(a)、(b)は、本発明の一実施の形態のCMOS基準電圧回路に用いられる第1の電流−電圧変換回路および第2の電流−電圧変換回路を示し、図2(c)は、本発明の基準電圧回路に用いられる第3の電流−電圧変換回路を示したものである。図2(a)を参照すると、第1の電流−電圧変換回路は、抵抗R1とダイオードD1の直列回路に抵抗R2が並列接続されている。図2(b)を参照すると、第2の電流−電圧変換回路は、抵抗R1と、ダイオードD1と抵抗R2の並列回路が直列に接続されている。図2(c)を参照すると、第3の電流−電圧変換回路は、抵抗R1のみからなる。
【0062】
図3は、本発明(請求項1)に記載されたCMOS基準電圧回路の一実施形態の回路構成を示す図である。ここで、第1の電流−電圧変換回路および第2の電流−電圧変換回路にはいずれも、図2(a)に示す回路を適用する場合について説明する。ただし、第1の電流−電圧変換回路および第2の電流−電圧変換回路を全く同一の回路構成とすると、動作点が無数となって定まらないために、ここでは、第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路では、ダイオードの個数が異なるものとする。具体的には、第1の電流−電圧変換回路では1個のダイオードとし、第2の電流−電圧変換回路では2または3個のダイオードを並列接続することを考える。
【実施例1】
【0063】
図4において、MOSトランジスタM1とM2(とM3)は、カレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧は、OP amp(AP1)により、OP ampの反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)の2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それにより、カレントミラー回路に流れる電流が決定される。
【0064】
ここで、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と第2の電流−電圧変換回路(I-V2)、および、出力回路を構成する第3の電流−電圧変換回路(I-V3)も、図2(a)に示した電流−電圧変換回路(I−V変換回路)として、回路トポロジを統一する。ただし、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と、第2の電流−電圧変換回路(I-V2)では、並列接続されるダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の数をNとする。
【0065】
第1から第3の電流−電圧変換回路(I−V変換回路)の回路トポロジを統一することで、回路動作が同一になり、プロセスにゆらぎが生じても、その変動は同じように変化するものと期待でき、出力電圧の電圧特性は製造バラツキに対して小さくなるものと期待される。
【0066】
本実施例の動作について説明する。図4において、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、OP amp(AP1)により、2つの入力端子電圧が等しく(VA=VB)なるように制御される。
【0067】
ここで、第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と第2の電流−電圧変換回路(I-V2)では、並列接続される抵抗R2とR4の抵抗値が等しいとすると、
IAP=IBP (14)
【0068】
ただし、
IAP=VA/R2 (15)
IBP=VB/R4 (16)
となる。
【0069】
ここで、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (17)
となる。
【0070】
ただし、
I1=IAP+IAS (18)
I2=IBP+IBS (19)
となる。
【0071】
したがって
IAS=IBS (20)
が成り立ち、
VA=R1IAS+VTln(IAS/IS) (21)
VB=R3IBS+VTln{IAS/(NIS)} (22)
と表わされる。
【0072】
ここで、ISは飽和電流であり、VA=VB、IAS=IBSであるから、(21)、(22)式より、
IAS=IBS={VTln(N)}/(R3−R1)=ΔVF/(R3−R1) (23)
と求められる。
【0073】
したがって、
VA=VF1+R1ΔVF/(R3−R1) (24)
VB=VF2+R3ΔVF/(R3−R1) (25)
となる。
【0074】
すなわち、
I1=VA/R2+IAS=(1/R2)[VF1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF] (26)
I2=VB/R4+IBS=(1/R2)[VF2+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF] (27)
【0075】
ここで、MOSトランジスタM2とM3の電流が等しい(I2=I3)とすると、出力回路では、
I3=(VREF−VF3)/R5+VREF/R6 (28)
となるから、
VREF={R6/(R5+R6)}{VF3+R5×I3} (29)
と表される。
【0076】
ここで、{VF3+R5×I3}にかかる{R6/(R5+R6)}の項は、抵抗R5と抵抗R6の抵抗分圧比を示し、電圧{VF3+R5×I3}が抵抗R5と抵抗R6の抵抗比でより低い電圧に分圧されることを示している。すなわち、低電圧化回路であると言える。
【0077】
また、VF3はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。したがって、電圧{VF3+R5×I3}が温度特性を持たないようにするためには、R5×I3が正の温度特性を持つ必要がある。すなわち、抵抗R5の温度特性を無視すれば、電流I3が正の温度特性を持つ必要がある。
【0078】
今、I1=I2=I3であるから、たとえば、(26)式において、VF1は、およそ−1.9mV/℃の温度特性を持ち、ΔVF(=VTln(N))は、正の温度特性を持つから、抵抗比{(R1+R2)/(R3−R1)}を大きな値に設定することで、I1(=I3)には任意の正の温度特性を持たせられる。
【0079】
あるいは、同様に、(27)式において、VF2はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持ち、ΔVF(=VTln(N))は、正の温度特性を持つから、抵抗比{(R3+R2)/(R3−R1)}を大きな値に設定することで、I2(=I3)には任意の正の温度特性を持たせられる。
【0080】
したがって、抵抗分圧比{R6/(R5+R6)}は、温度特性を持たないから、R5×I3に正の温度特性を持たせることで、出力電圧VREFの温度特性を相殺することができる。
【0081】
すなわち、出力電圧VREFは(29)式に(26)式、あるいは(27)式を代入することで、
VREF={R6/(R5+R6)}(R5/R2)[VF1+(R2/R5)VF3+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF]
={R6/(R5+R6)}(R5/R2)[VF2+(R2/R5)VF3+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF] (30)
となる。
【0082】
ここで、VF1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VF2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VF3もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。
【0083】
また、ΔVFは良く知られているように、この回路においても、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)に比例する正の温度特性を持つようになる。
【0084】
すなわち、(30)式の[VF1+(R2/R5)VF3+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF]の項の温度特性は、負の温度特性を持つ{VF1+(R2/R5)VF3}と、正の温度特性を持つΔVFを抵抗比{(R1+R2)/(R3−R1)}を設定して重み付け加算することで相殺することができる。
【0085】
あるいは、(30)式の[VF2+(R2/R5)VF3+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF]の項の温度特性は、負の温度特性を持つ{VF2+(R2/R5)VF3}と、正の温度特性を持つΔVFを抵抗比{(R3+R2)/(R3−R1)}を設定して重み付け加算することで、相殺することができる。
【0086】
たとえば、ここで、VF1は常温でおよそ710mV となるものとすると、VF3は常温でおよそ710mV となり、{VF1+(R2/R5)VF3}は、常温でおよそ1430mVとなるものとすると、
{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVFは、常温でおよそ1340mVとなり、
[VF1+(R2/R5)VF3+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF]は、常温でおよそ2770mVとなる。
【0087】
ただし、{R6/(R5+R6)}は0.35、(R5/R2)は0.93であり、N=2とすると、
{(R1+R2)/(R3−R1)}は74.4程度である。
【0088】
得られるVREFは、およそ900mVである。
【0089】
あるいは、VF2は、常温でおよそ690mVとなるものとすると、VF3は常温でおよそ710mV となり、{VF2+(R2/R5)VF3}は常温でおよそ1410mVとなるものとすると、
{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVFは常温で1360mVとなり、[VF2+(R2/R5)VF3+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF]は常温でおよそ2770mVとなる。
【0090】
ただし、{R6/(R5+R6)}は0.35、(R5/R2)は0.93であり、N=2とすると{(R3+R2)/(R3−R1)}は75.4程度である。得られるVREFはおよそ900mVである。
【0091】
[VF1+(R2/R5)VF3+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF](、あるいは、[VF2+(R2/R5)VF3+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF] )は、従来技術の説明のおよそ2倍の、ほぼ2.77Vとなることがわかる。
【0092】
また、抵抗比{R6/(R5+R6)} と(R5/R2)は、いずれも温度特性を持たないから、出力される基準電圧VREFも温度特性が相殺された電圧となる。
【0093】
ここで、抵抗比{R6/(R5+R6)}(R5/R2)は任意に設定でき、
1/2<{R6/(R5+R6)} (R5/R2)
に設定すれば、VREFは、1.2Vよりも高い電圧となる。
【0094】
一方、
1/2>{R6/(R5+R6)} (R5/R2)
に設定すれば、VREFは1.2Vよりも低い電圧となる。
【0095】
特に、VREFが1.2Vよりも低い電圧となる2>{R6/(R5+R6)}(R5/R2)に設定する場合には、電源電圧を下げることができる。例えば、上述したように、VREF=0.9Vに設定すれば、電源電圧が1.1V程度から動作させることができる。
【0096】
付け加えるならば、
{VF1+(R2/R5)VF3}や、
{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVFや、
[VF1+(R2/R5)VF3+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF]
は、値(電圧値)としては、1.2Vを超える値であるが、この電圧値が、回路内に発生する訳ではなく、(30)式に示した電圧VREFが、出力端子に発生するだけである。
【0097】
この電圧VREFを、1.0V以下に設定すれば、27℃±73℃の温度変動を考慮すると、回路内のVA、VB、VREFのいずれの電圧も1.1V以下となる。
【実施例2】
【0098】
図5のように、図3の出力回路の第3の電流−電圧変換回路(I-V3)を、図2(b)に変更しても良い。図5において、MOSトランジスタM1とM2(とM3)は、カレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧は、OP amp(AP1)により、OP ampの2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それにより、カレントミラー回路に流れる電流が決定される。
【0099】
ここで、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と、第2の電流−電圧変換回路(I-V2)は、図2(a)に示した電流−電圧変換回路(I−V変換回路)として同一の回路トポロジとする。ただし、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と第2の電流−電圧変換回路(I-V2)では、並列接続されるダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の数をNとする。
【0100】
また、出力回路の第3の電流−電圧変換回路(I-V3)は、図2(c)に示される電流−電圧変換回路(I−V変換回路)として、出力回路の簡略化を図れる。
【0101】
図2(b)の電流−電圧変換回路と、図2(a)の電流−電圧変換回路はおよそ類似している。
【0102】
すなわち、図5において、
I3=(VREF−VF3)/R5 (31)
となっている。
【0103】
(31)式より、
VREF=VF3+R5×I3 (32)
と求められる。
【0104】
(32)式と(29)式とを比較すると、(32)式には抵抗分圧比の項{R6/(R5+R6)}がない。しかし、回路上では、ダイオードD3に並列に抵抗R6が接続されており、(32)式では抵抗R6の存在感が薄い。
【0105】
今、ダイオードD3に流れる電流をIF3とすると、
I3=IF3+VF3/R6 (33)
と表され、
VF3=VTln{IF3/IS} (34)
IF3=ISexp(VF3/VT) (35)
である。
【0106】
(33)式を(32)式に代入すると、
VREF=(1−R5/R6)VF3+R5×IF3 (36)
と表される。
【0107】
すなわち、R5<R6なる条件で、ダイオードの順方向電圧VF3を、(1−R5/R6)(<1)に圧縮し、それにダイオードに流れる電流IF3と抵抗R5の積を加算した電圧がVREFになっていることを示している。
【0108】
ここで、VF3は、およそ−1.9mV/℃前後の温度特性を持つが、それを、(1−R5/R6)(<1)に圧縮している。したがって、出力される基準電圧VREFの温度特性を相殺するためには、負の温度特性が−1.9mV/℃前後の(1−R5/R6)(<1)に圧縮された小さな負の温度特性と、それに見合う小さな正の温度特性とを加算すれば良いのは、これまでと同様である。
【0109】
すなわち、電流I3に正の温度特性を持たせることで、ダイオードに流れる電流IF3の温度特性も正の温度特性を維持し、(1−R5/R6)VF3の負の温度特性に相当する正の温度特性を持つ電圧R5×IF3を発生させることで、温度特性を持たない基準電圧VREFが得られる。
【0110】
上述した説明のように、図2(b)に示した電流−電圧変換回路でも出力線圧VREFを1.2Vよりも低い任意の電圧値に設定できることがわかる。すなわち、図2(b)に示した電流−電圧変換回路の構成図においても、図2(a)に示した電流−電圧変換回路と同等の特性を実現できる。
【実施例3】
【0111】
図6において、MOSトランジスタM1とM2(とM3)はカレントミラー回路を構成し、OP amp(AP1)により、OP ampの2つの入力端子電圧が等しくなるように共通ゲート電圧により流れる電流が制御される。並列接続されるダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の数をNとする。
【0112】
図6において、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1、D2の順方向電圧をVF1、VF2とすると、OP amp(AP1)により2つの入力端子電圧が等しく(VA=VB)なるように制御される。
【0113】
ここで、第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路では並列接続される抵抗R2とR4の抵抗値が等しいとすると、
IAP=IBP (36)
【0114】
ただし、
IAP=VA/R2 (37)
IBP=VB/R4 (38)
となる。
【0115】
ここで、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (39)
となる。
【0116】
ただし、
I1=IAP+IAS (40)
I2=IBP+IBS (41)
となる。
【0117】
したがって
IAS=IBS (42)
が成り立ち、
VA=R1IAS+VTln(IAS/IS) (43)
VB=R3IBS+VTln{IAS/(NIS)} (44)
と表わされる。
【0118】
ここで、ISは飽和電流であり、VA=VB、IAS=IBSであるから、(43)、(44)式より、
IAS=IBS={VTln(N)}/(R3−R1)=ΔVF/(R3−R1) (45)
と求められる。
【0119】
したがって、
VA=VF1+R1ΔVF/(R3−R1) (46)
VB=VF2+R3ΔVF/(R3−R1) (47)
となる。
【0120】
すなわち、
I1=VA/R2+IAS=(1/R2)[VF1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF] (48)
I2=VB/R4+IBS=(1/R2)[VF2+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF] (49)
【0121】
ここで、MOSトランジスタM2とM3の電流が等しい(I2=I3)とすると、
VREF=R5I3=(R5/R2)[VF1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF]
=(R5/R2)[VF2+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF] (50)
となる。
【0122】
ここで、順方向電圧VF1は、およそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、順方向電圧VF2も、およそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、ΔVFは良く知られているように、この回路においても、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)に比例する正の温度特性を持つようになる。
【0123】
すなわち、(50)式の[VF1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF]の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF1と、正の温度特性を持つΔVFを抵抗比{(R1+R2)/(R3−R1)}を設定して重み付け加算することで、相殺することができる。
【0124】
あるいは、(49)式の[VF2+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF]の項の温度特性は、負の温度特性を持つVF2と、正の温度特性を持つΔVFを抵抗比{(R3+R2)/(R3−R1)}を設定して重み付け加算することで相殺することができる。
【0125】
ここで、VF1は、常温でおよそ620mV となるものとすると、{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF は、常温でおよそ580mVとなる。あるいは、VF2は常温でおよそ580mVとなるものとすると、{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVFは、常温で620mVとなり、[VF1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVF](、あるいは、[VF2+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVF])は、従来技術の説明と同様に、ほぼ1.2Vとなることがわかる。
【0126】
また、抵抗比(R5/R2)は温度特性を持たないから、出力される基準電圧VREFも温度特性が相殺された電圧となる。ここで、抵抗比(R5/R2)は任意に設定でき、1<(R5/R2)に設定すれば、VREFは1.2Vよりも高い電圧となり、1>(R5/R2)に設定すれば、VREFは1.2Vよりも低い電圧となることは従来技術の場合と同様である。
【0127】
特に、VREFが1.2Vよりも低い電圧となる1>(R5/R2)に設定する場合には、電源電圧を下げられる。例えば、VREF=1.0Vに設定すれば、電源電圧が1.2V程度から動作させることができる。
【0128】
[シミュレーション値の例]
SPICEシミュレーションの例として、R1=5.24KΩ、R3=8KΩとし、R2=R4=100KΩの設定(N=2)にしたら、VREFはR5=50KΩとして、−46℃で668.7mV、27℃で671.1mV、100℃で668.8mVが得られ、温度特性は146℃の変化で−0.358%となり、常温で最大電圧となり、低温、高温で電圧が微小に減少する微小ではあるが、お椀を伏せた型の温度特性が得られた。実用上では、温度特性は小さいために問題とはならない。
【0129】
[他のシミュレーション値の例]
あるいは、他のSPICEシミュレーションの例として、R1=3.66KΩ、R3=8KΩとし、R2=R4=100KΩの設定(N=3)にしたらVREFはR5=50KΩとして、−46℃で668.2mV、27℃で670.4mV、100℃で668.0mVが得られ、温度特性は146℃の変化で−0.358%となり、常温で最大電圧となり、低温、高温で電圧が微小に減少する微小ではあるが、お椀を伏せた型の温度特性が得られた。実用上では温度特性は小さいために問題とはならない。
【0130】
[シミュレーション値への補足説明]
なお、MOSトランジスタM1とM2からなるカレントミラー回路の電流比は、1:1ではなく、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の順方向電圧VFの温度特性の非線形性、具体的には良く知られているように、温度が低くなると鈍っていく、を補正して多少お椀を伏せたような特性、具体的には、常温でピークとなり、低温側と高温側では多少下がる、を実現するためにカレントミラー回路の電流比は1:1から変更することも可能である。
【0131】
あるいは、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1とD2の電流密度を大きく異ならせるために、MOSトランジスタM1のトランジスタサイズをMOSトランジスタM2のトランジスタサイズに比べて大きな値に設定することもなされる。
【0132】
当然ではあるが、上述したように、D2を単位ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラ単位トランジスタ)をN個並列接続してD1とD2の電流密度を大きく異ならせる手法が勿論有効である。ただし、このNの値はこれまでの10〜100などと大きな値ではなく、2とか3とかの小さな自然数で良い。
<発明の他の実施の形態>
【0133】
図4に示した回路においても、OP amp(AP1)の電源電圧をできるだけ下げるために、図7に示すように、並列接続される抵抗R2とR4を同一に分割してR2A、R2BとR4A、R4Bとしてそれぞれの分圧電圧を、OP amp(AP1)の差動入力信号電圧とすることができる。ここで、VAとVBは等しく制御されるが、ダイオードを介した電圧であるから、常温から±50℃程度の温度変化を想定すると、1.1V〜0.5V程度の電圧となる。
【0134】
したがって、OP amp(AP1)はpチャネルトランジスタ入力の差動対となり、0Vの入力信号電圧から動作可能である。このために、OP amp(AP1)の電源電圧は入力信号電圧が低ければ低い程電源電圧を下げられる。すなわち、抵抗R2とR4を分割することで入力信号電圧を下げられ、その結果、電源電圧も下げられる。
【実施例4】
【0135】
図7において、MOSトランジスタM1とM2(とM3)はカレントミラー回路を構成し、共通ゲート電圧はOP amp(AP1)により、OP ampの2つの入力端子電圧が等しくなるように制御され、それによりカレントミラー回路に流れる電流が決定される。
【0136】
ここで、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と、第2の電流−電圧変換回路(I-V2)、および、出力回路を構成する第3の電流−電圧変換回路(I-V3)も、図2(a)に示した電流−電圧変換回路(I−V変換回路)として回路トポロジを統一する。ただし、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と第2の電流−電圧変換回路(I-V2)では、並列接続されるダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)の数をNとする。
【0137】
また、比較される第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と第2の電流−電圧変換回路(I-V2)において、並列接続される抵抗R2とR4を同一に分割してR2A、R2BとR4A、R4Bとしてそれぞれの分圧電圧をOP amp(AP1)の差動入力信号電圧としている。
【0138】
第1から第3の電流−電圧変換回路(I−V変換回路)の回路トポロジを統一することで回路動作が同一になり、プロセスにゆらぎが生じてもその変動は同じように変化するものと期待でき、出力電圧の電圧特性は製造バラツキに対して小さくなるものと期待される。
【0139】
本実施例の動作について説明する。図4においては、OP ampがpチャネルトランジスタを入力対とする差動対で構成されているとすると、入力電圧は0V程度から動作可能である。したがって、電源電圧を下げて低電圧化する場合には、OP ampの動作電圧がより下げられるように入力電圧はできるだけ低い方が良い。
【0140】
図7は、図4において、抵抗R2とR4をそれぞれ分割してR2AとR2B、R4AとR4Bにした場合を示している。
【0141】
ここで、
R2A:R2B=R4A:R4B (51)
に設定すれば、分圧抵抗の中点からVA、VBに比例した電圧が得られる。
【0142】
すなわち、
VAR2B/(R2A+R2B)=VBR4B/(R4A+R4B) (52)
となる。すなわち、VA=VBとなるように制御される。したがって、図4と同様に、基準電圧回路が実現できる。
【0143】
[シミュレーション値の例]
SPICEシミュレーションの例として、R1=5.24KΩ、R3=8KΩとし、R2A=R4A=170KΩ、R2B=R4B=30KΩ、R5=185.9 KΩ、R6=100 KΩ、D1:D2:D3=1:2:1の設定(N=2)にしたら、VREFは、−46℃で898.2mV、27℃で903.1mV、100℃で898.2mVが得られ、温度特性は、146℃の変化で−0.543%となり、常温で最大電圧となり、低温、高温で電圧が微小に減少する微小ではあるがお椀を伏せた型の温度特性が得られた。実用上では、温度特性は小さいために問題とはならない。
【実施例5】
【0144】
同様に、図8に示すように、図5に示した回路においても、抵抗R2とR4をそれぞれ分割してR2AとR2B、R4AとR4Bにする。
【0145】
このことにより、OP ampの入力電圧を下げることができ、OP ampの動作電圧を下げることで低電圧化を図ることができる。
【実施例6】
【0146】
同様に、図9に示すように、図6に示した回路においても、抵抗R2とR4をそれぞれ分割してR2AとR2B、R4AとR4Bにする。
【0147】
このことにより、、OP ampの入力電圧を下げることができ、OP ampの動作電圧を下げることで低電圧化を図ることができる。
<発明の他の実施の形態>
【0148】
図3に示した基準電圧回路において、I-V1、I-V2の比較される2つの電流−電圧変換回路に、いずれも図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いることができる。
【実施例7】
【0149】
図10に示す基準電圧回路は、図3に示した回路において、I-V1、I-V2、I-V3の3つの電流−電圧変換回路に、いずれも図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いた例である。
【0150】
本実施例の動作について説明する。図10において、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (53)
となる。
【0151】
ただし、制御回路(OP amp)により、
VA=VB (54)
となっている。
【0152】
ここで、
I1=(VA−VF1)/R1 (55)
I2=(VB−VF2)/R3 (56)
である。
【0153】
(55)式と(56)式を(54)式に代入して、VA(=VB)について解くと、
VA={R1R3/(R3−R1)}(VF1/R1−VF2/R3) (57)
となる。
【0154】
(55)式と(56)式に代入すると、
I1=I2=(VF1−VF2)/(R3−R1)=ΔVF/(R3−R1) (58)
と求められる。
【0155】
したがって、
VA=VF1+{R1/(R3−R1)}ΔVF (59)
VB=VF2+{R3/(R3−R1)}ΔVF (60)
とも書き表される。
【0156】
ここで、注意すべきは、これらの回路解析式では、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に並列接続された抵抗R2、R4が現れていない点である。実際の回路上では、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に並列接続された抵抗R2、R4はダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に流れる電流を変化させ、特に温度特性に影響を及ぼすことになる。
【0157】
例えば、R2とR3の大きさを極端に違わせると、2つのダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に流れる電流を大きく変化させて、順方向電圧の(負の)温度特性の値を変えることが可能となる。
【0158】
図10のように、出力回路の第3の電流−電圧変換回路を図2(b)にすると、
I3=(VREF−VF3)/R5 (61)
となっている。
【0159】
(61)式より、
VREF=VF3+R5×I3 (62)
と求められる。
【0160】
(62)式には、抵抗分圧比の項{R6/(R5+R6)}がかかっていない。しかし、回路上ではダイオードD3に並列に抵抗R6が接続されており、(62)式では抵抗R6の存在感が薄い。今、ダイオードD3に流れる電流をIF3とすると、
I3=IF3+VF3/R6 (63)
と表され、(63)式を(62)式に代入すると、
VREF=(1−R5/R6)VF3+R5×IF3 (64)
と表される。
【0161】
すなわち、R5<R6なる条件で、ダイオードの順方向電圧VF3を(1−R5/R6)(<1)に圧縮し、それにダイオードに流れる電流IF3と抵抗R5の積を加算した電圧がVREFになっていることを示している。ここで、VF3は、およそ−1.9mV/℃前後の温度特性を持つが、それを(1−R5/R6)(<1)に圧縮している。したがって、出力される基準電圧VREFの温度特性を相殺するためには、負の温度特性が−1.9mV/℃前後の(1−R5/R6)(<1)に圧縮された小さな負の温度特性と、それに見合う小さな正の温度特性とを加算すれば良いのは、これまでと同様である。
【0162】
すなわち、電流I3に正の温度特性を持たせることで、ダイオードに流れる電流IF3の温度特性も正の温度特性を維持し、(1−R5/R6)VF3の負の温度特性に相当する正の温度特性を持つ電圧R5×IF3を発生させることで、温度特性を持たない基準電圧VREFが得られる。
【0163】
上述した説明のように、図2(b)に示した電流−電圧変換回路でも、出力線圧VREFを1.2Vよりも低い任意の電圧値に設定できることがわかる。すなわち、図2(b)の電流−電圧変換回路と、図2(a)の電流−電圧変換回路は、およそ類似しており、図2(b)に示した電流−電圧変換回路図においても、図2(a)に示した電流−電圧変換回路と同等の特性を実現できる。
【実施例8】
【0164】
図11に示す基準電圧回路は、図3に示した回路において、I-V1、I-V2の2つの電流−電圧変換回路に、いずれも図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用い、出力のI-V3の電流−電圧変換回路には、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用いた例である。
【0165】
図11において、MOSトランジスタM1とM2とM3の電流が等しい(I1=I2=I3)とすると、出力回路では
I3=(VREF−VF3)/R5+VREF/R6 (65)
となるから、
VREF={R6/(R5+R6)}{VF3+R5×I3} (66)
と表される。
【0166】
ここで、{VF3+R5×I3}にかかる{R6/(R5+R6)}の項は、抵抗R5と抵抗R6の抵抗分圧比を示し、電圧{VF3+R5×I3}が抵抗R5と抵抗R6の抵抗比で、より低い電圧に分圧されることを示している。すなわち、低電圧化回路であると言える。
【0167】
また、VF3は、およそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。したがって、電圧{VF3+R5×I3}が温度特性を持たないようにするためには、R5×I3が正の温度特性を持つ必要がある。すなわち、抵抗R5の温度特性を無視すれば、電流I3が正の温度特性を持つ必要がある。
【0168】
今、I1=I2=I3であるから、たとえば、(58)式において、ΔVF(=(VF1−VF2))には正の温度特性を持たせられないが、抵抗比(R3−R1)を設定することで、正の温度特性を持たせられ、任意の電流値I1(=I2=I3)が得られる。
【0169】
したがって、抵抗分圧比{R6/(R5+R6)}は温度特性を持たないから、R5×I3に正の温度特性を持たせることで出力電圧VREFの温度特性を相殺することができる。
【実施例9】
【0170】
同様に、図2(a)と図2(b)に示した回路を、第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路のいずれかに任意に利用することができる。具体的な回路図は、図6から図8に示される。
【0171】
例えば、図2(b)に示す回路を第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と第2の電流−電圧変換回路(I-V2)に用い、図2(c)に示す回路を出力の電流−電圧変換回路(I-V3)にした場合には図12のようになる。
【0172】
本実施例の動作について説明する。図12において、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (67)
となる。
【0173】
ただし、制御回路(OP amp)により
VA=VB (68)
となっている。
【0174】
ここで、
I1=(VA−VF1)/R1 (69)
I2=(VB−VF2)/R3 (70)
である。
【0175】
(69)式と(70)式を(67)式に代入して、VA(=VB)について解くと、
VA={R1R3/(R3−R1)}(VF1/R1−VF2/R3) (71)
となる。
【0176】
(69)式と(70)式に代入すると、
I1=I2=(VF1−VF2)/(R3−R1)=ΔVF/(R3−R1) (72)
と求められ、
VA=VF1+{R1/(R3−R1)}ΔVF (73)
VB=VF2+{R3/(R3−R1)}ΔVF (74)
とも書き表される。
【0177】
ここで、注意すべきは、これらの回路解析式ではダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に並列接続された抵抗R2、R4が現れていない点である。
【0178】
実際の回路上では、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に並列接続された抵抗R2、R4はダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に流れる電流を変化させ、特に温度特性に影響を及ぼすことになる。
【0179】
例えば、R2とR3の大きさを極端に異ならせると、2つのダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に流れる電流を大きく変化させて、順方向電圧の(負の)温度特性の値を変えることが可能となる。
【0180】
[シミュレーション値の例]
SPICEシミュレーションでは、R1<R3(R1=1.2KΩ、R3=2.408KΩ)とし、R2をR4の2倍程度(R2=70KΩ、R4=38KΩ)の設定(N=2)にしたら、VREFは、R5=20kΩとして、−46℃で542.5mV、27℃で541.5mV、100℃で542.4mVが得られ、温度特性は、146℃の変化で、+0.185%となり、常温で最小電圧となり、低温、高温で電圧が微小に上昇する極微小ではあるが、お椀型の温度特性が得られた。実際には温度特性は無いようなものである。
【0181】
シミュレーションでは、抵抗の値を変えることで、お椀を伏せた型にもなった。抵抗の値を変えていくと、直線化でき、たまたま、上記の値の場合に直線を多少越えてしまいお椀型の温度特性となった。
【0182】
このように、図12の回路解析式(72)式でのΔVFと、図6の回路解析式(45)式でのΔVFとは全く異なった温度特性を持つことが理解されよう。
<発明の他の実施の形態>
【0183】
図3に示した基準電圧回路において、I-V1、I-V2の比較される2つの電流−電圧変換回路のいずれかに、図2(a)と図2(b)に示した電流−電圧変換回路を任意に用いることができる。
【0184】
また、I-V3の出力回路の電流−電圧変換回路には、図2(a)と図2(b)と図2(c)に示した任意の電流−電圧変換回路を用いることができる。
【0185】
同様に、図3に示した基準電圧回路において、図2(a)と図2(b)に示した回路を第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路のいずれかに任意に利用することができる。
【0186】
また、出力回路の電流−電圧変換回路には、図2(a)と図2(b)と図2(c)に示した任意の電流−電圧変換回路を用いることができる。具体的な回路図は図13から図16に示される。
【実施例10】
【0187】
図13の基準電圧回路は、第1の電流−電圧変換回路に、図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0188】
図13において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは、第1の電流−電圧変換回路(抵抗R1と、並列回路(抵抗R2とダイオードD1)よりなる)により発生し、電圧VBは、第2の電流−電圧変換回路(直列回路(抵抗R3とダイオードD2)と抵抗R4の並列回路よりなる)により発生する電圧である。ここでは、第1の電流−電圧変換回路として図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路として図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路として図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0189】
図13において、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (75)
となる。
【0190】
ただし、制御回路(OP amp)により
VA=VB (76)
となっている。
【0191】
ここで、
I1=(VA−VF1)/R1 (77)
I2=(VB−VF2)/R3+VB/R4 (78)
である。
【0192】
(77)式と(78)式を(75)式に代入して、VA(=VB)について解くと、
VA=VB={R1R3R4/(R3R4−R1R4−R3R1)}(VF1/R1−VF2/R3)
=R4(R3VF1−R1VF2)/(R3R4−R1R4−R3R1) (79)
となる。
【0193】
(77)式と(78)式に代入すると、
I1=I2={(R3+R4)VF1−R4VF2}/(R3R4−R1R4−R3R1) (80)
と求められる。
【0194】
また、出力電流I3は
I3=(VREF−VF3)/R5+VREF/R6 (81)
と表される。
【0195】
したがって、
VREF={R6/(R5+R6)}(VF3+R5×I3) (82)
となる。
【0196】
ここで、{VF3+R5×I3}にかかる{R6/(R5+R6)}の項は、抵抗R5と抵抗R6の抵抗分圧比を示し、電圧{VF3+R5×I3}が抵抗R5と抵抗R6の抵抗比でより低い電圧に分圧されることを示している。すなわち、低電圧化回路であると言える。
【0197】
また、VF3はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。したがって、電圧{VF3+R5×I3}が温度特性を持たないようにするためには、R5×I3が正の温度特性を持つ必要がある。
【0198】
すなわち、抵抗R5の温度特性を無視すれば、電流I3が正の温度特性を持つ必要がある。抵抗分圧比{R6/(R5+R6)}は温度特性を持たないから、R5×I3に正の温度特性を持たせることで出力電圧VREFの温度特性を相殺することができることがわかる。
【0199】
あるいは、
VREF={R5R6/(R5+R6)}[{(R3+R4)VF1−R4VF2}/(R3R4−R1R4−R3R1)−VF3/R5] (83)
とも表される。
【0200】
しかし、(83)式から容易にわかるように、VF1、VF2、VF3は、いずれも負の温度特性(およそ−1.9mV/℃前後の値)を持つが、それぞれが重み付けされて加減算されることにより、VREFの温度特性を相殺できる。
【実施例11】
【0201】
図14の基準電圧回路は、第1の電流−電圧変換回路に、図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に、図2(c)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0202】
図14において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路により発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路により発生する電圧である。
【0203】
前述したように、この基準電圧回路は、
第1の電流−電圧変換回路に、図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、
第2の電流−電圧変換回路に、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、
第3の電流−電圧変換回路に、図2(c)に示した電流−電圧変換回路
を用いている。この回路構成は、図13において、出力回路の第3の電流−電圧変換回路を、抵抗に変更しただけであり、(75)式から(80)式が同様に成り立つ。
【0204】
したがって、出力される基準電圧VREFは、
VREF=R5×I3=R5{(R3+R4)VF1−R4VF2}/(R3R4−R1R4−R3R1) (84)
と表される。
【0205】
(84)式から容易にわかるように、VF1、VF2はいずれも負の温度特性(およそ−1.9mV/℃前後の値)を持つが、それぞれが重み付けされて加減算されることによりVREFの温度特性を相殺できる。
【0206】
[シミュレーション値の例]
そこで、図14を、SPICEシミュレーションしてみると、R1=3KΩ、R3=4.5KΩとし、R2=R4=100KΩ、N=3に設定すると、VREFはR5=10kΩとして、−46℃で450.2mV、27℃で451.9mV、100℃で449.9mVが得られ、温度特性は、146℃の変化で−0.376%となった。このように、手計算による回路解析は出来なくても、基準電圧回路としての動作はシミュレーションにより確認できる。
【0207】
同様に、図13においても、各素子の定数を設定することで所望の基準電圧回路の特性が得られるものと考えられる。
【実施例12】
【0208】
図15の基準電圧回路は、第1の電流−電圧変換回路に図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0209】
本実施例の動作を説明する。図15において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路により発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路により発生する電圧である。
【0210】
ここでは、第1の電流−電圧変換回路に、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に、図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に、図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いている。図15において、MOSトランジスタM1とM2の電流が等しいとすると、
I1=I2 (85)
となる。
【0211】
ただし、制御回路(OP amp)により、
VA=VB (86)
となっている。
【0212】
ここで、
I1=(VA−VF1)/R1+VA/R2 (87)
I2=(VB−VF2)/R3 (88)
である。
【0213】
(87)式と(88)式を(85)式に代入して、VA(=VB)について解くと、
VA=VB={R1R2R3/(R2R3+R1R3−R1R2)}(VF1/R1−VF2/R3)
=(R2R3VF1−R1R2VF2)/ (R2R3+R1R3−R1R2) (89)
となる。
【0214】
(87)式と(88)式に代入すると、
I1=I2={R2VF1−(R1+R2)VF2}/(R2R3+R1R3−R1R2) (90)
と求められる。
【0215】
また、出力電流I3は、
I3=(VREF−VF3)/R5+VREF/R6 (91)
と表される。
【0216】
したがって、
VREF={R6/(R5+R6)}(VF3+R5×I3) (92)
となる。
【0217】
ここで、{VF3+R5×I3}にかかる{R6/(R5+R6)}の項は、抵抗R5と抵抗R6の抵抗分圧比を示し、電圧{VF3+R5×I3}が抵抗R5と抵抗R6の抵抗比でより低い電圧に分圧されることを示している。すなわち、低電圧化回路であると言える。
【0218】
また、VF3はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。したがって、電圧{VF3+R5×I3}が温度特性を持たないようにするためには、R5×I3が正の温度特性を持つ必要がある。すなわち、抵抗R5の温度特性を無視すれば、電流I3が正の温度特性を持つ必要がある。
【0219】
抵抗分圧比{R6/(R5+R6)}は、温度特性を持たないから、R5×I3に正の温度特性を持たせることで、出力電圧VREFの温度特性を相殺することができることがわかる。
【0220】
あるいは、
VREF={R5R6/(R5+R6)}[{R2VF1−(R1+R2)VF2}/(R2R3+R1R3−R1R2)−VF3/R5] (93)
とも表される。
【0221】
しかし、(83)式から容易にわかるように、VF1、VF2、VF3はいずれも負の温度特性(およそ−1.9mV/℃前後の値)を持つが、それぞれが重み付けされて加減算されることによりVREFの温度特性を相殺できる。
【実施例13】
【0222】
図16の基準電圧回路は、第1の電流−電圧変換回路に図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に図2(c)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0223】
本実施例の動作を説明する。図16において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路により発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路により発生する電圧である。
【0224】
前述したように、この基準電圧回路は、第1の電流−電圧変換回路に図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に図2(c)に示した電流−電圧変換回路を用いている。この回路構成は、図13において出力の電流−電圧変換回路(R5、D3の直列回路にR6を並列接続)を抵抗(R5)に変更しただけであり、(85)式から(91)式が同様に成り立つ。
【0225】
したがって、出力される基準電圧VREFは、
VREF=R5×I3
=R5{R2VF1−(R1+R2)VF2}/(R2R3+R1R3−R1R2) (94)
と表される。
【0226】
(84)式から容易にわかるように、VF1、VF2はいずれも負の温度特性(およそ−1.9mV/℃前後の値)を持つが、それぞれが重み付けされて加減算されることによりVREFの温度特性を相殺できる。
【0227】
さらに言えば、図4乃至図16では、動作説明が簡単になるように、カレントミラー回路に単純カレントミラー回路を用いた場合について説明した。
【0228】
しかし、最近では、CMOSプロセスの微細化が著しく進み、トランジスタのチャネル長変調の影響が出やすく、例えば、図4の回路においては、MOSトランジスタM1とM2とはドレイン−ソース電圧が等しいが、MOSトランジスタM3とは、ドレイン−ソース電圧に多少の違いが生じる。特に、温度変動時には、MOSトランジスタM1-M2とM3のドレイン−ソース電圧は、ダイオードの順方向電圧の温度特性による変動分だけ変動することになる。したがって、厳密に見れば、極多少ではあるがトランジスタのチャネル長変調の影響が見出せる。このために、カレントミラー回路に、カスコードカレントミラー回路などを用いて、この影響を低減することが通常行われている。
【0229】
また、図4〜図16においては、第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路は同じ回路トポロジであり、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)には抵抗が直列接続されている。一般に、従来回路のように、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)とダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)に抵抗が直列接続された回路では素子バラツキに対する感度の大きさが問題となる。
【0230】
バイポーラプロセスにおいては、線形カレントミラー回路のように電流比が必要となる回路では、バイポーラトランジスタのエミッタ抵抗を挿入することが普通に行われ、バイポーラトランジスタのエミッタを直接接地することは避けてきており、電流比が変化する非線形カレントミラー回路においては、一方のバイポーラトランジスタのエミッタを直接接地し他方のバイポーラトランジスタのエミッタはエミッタ抵抗を介して接地するカレントミラー回路、例えば、ワイドラーカレントミラー回路が用いられることがあった。しかし、基準電流/電圧回路のような場合には、素子間の整合をとり、このように抵抗を挿入する方が、素子バラツキの影響を多少なりとも低減できると考えられてきており、これまで実行されて来ていた。本願においても、この考え方を踏襲している訳である。
【0231】
しかし、図4、図6の場合には、一見すると、たまたま、回路解析が成功しているように見受けられるが、このように、抵抗を挿入すると、回路解析は、一般には手計算では行えなくなり、通常用いられているSPICE等の回路シミュレーションによって、その回路特性を見極めることが行われて来た。本願においても、一部ではあるが、SPICEを用いた回路シミュレーションによって、請求する基準電圧回路の特性確認を行っている。
【0232】
さらに、図17のように、2つのダイオードをそれぞれ第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続しても、温度特性が相殺された基準電圧回路を実現することができる。
【実施例14】
【0233】
実施例14では、図18に示すように、単位ダイオードD3、D4を、それぞれ図2(a)に示した第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続する。
【0234】
図18において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。
【0235】
電圧VAは、第1の電流−電圧変換回路(I-V1)と並列接続されたダイオードD3により発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路(I-V2)と並列接続されたダイオードD4により発生する電圧である。
【0236】
ここでは、第1乃至第3の電流−電圧変換回路には、いずれも図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0237】
本実施例の動作について説明する。簡単にするために、R2=R4とすると、
I1=I2 (95)
VF3=VF4 (96)
となる。
【0238】
ここで、単位ダイオードD3、D4に流れる電流が等しく、IFとすると、
I1=VF3/R2+IF+(VF3−VF1)/R1
=VF3/R2+IF+ΔVF1/R1 (97)
I2=VF4/R4+IF+(VF4−VF2)/R3
=VF3/R2+IF+ΔVF2/R3 (98)
と表わされる。
【0239】
したがって、
ΔVF1/R1=ΔVF2/R3 (99)
となる。
【0240】
ここで、単位ダイオードD3、D4に流れる電流IFと、抵抗R1、R3に流れる電流ΔVF1/R1(=ΔVF2/R3)が、いずれも正の温度特性を持つものと仮定すると、抵抗R2、R4に流れる電流VF3/R2(=VF4/R4)は、負の温度特性を持つ。
【0241】
今、VF3の温度特性を−1.9mV/℃、ΔVF1の温度特性を、+0.0853mV/℃と仮定すれば、
VF3/R2:(IF+ΔVF1/R1)=1:22.27
に設定すると、駆動電流I1は、温度特性を持たなくなる。
【0242】
すなわち、R2>R1に設定し、ダイオードD1とD3に流れる電流の和が抵抗R2に流れる電流の22.27倍にすれば良い。実際には、抵抗R1、R2、R3、R4(、R5)は温度特性を持ち、それらは互いに同じ温度特性を持つとすれば、出力される基準電圧VREFが温度特性を持たないようにすることもできる。
【0243】
逆に、(IF+ΔVF1/R1)/( VF3/R2)>22.27に設定することで、駆動電流I1は正の温度特性を持たせることができる。
【0244】
また、出力には、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用いると、出力される基準電圧VREFは、
VREF={R6/(R5+R6)}(VF5+R5×I3) (100)
となる。
【0245】
ここで、{VF5+R5×I3}にかかる{R6/(R5+R6)}の項は、抵抗R5と抵抗R6の抵抗分圧比を示し、電圧{VF5+R5×I3}が抵抗R5と抵抗R6の抵抗比でより低い電圧に分圧されることを示している。すなわち、低電圧化回路であると言える。
【0246】
また、VF5はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。したがって、電圧{VF5+R5×I3}が温度特性を持たないようにするためには、R5×I3が正の温度特性を持つ必要がある。
【0247】
すなわち、抵抗R5の温度特性を無視すれば、電流I3が正の温度特性を持つ必要がある。抵抗分圧比{R6/(R5+R6)}は温度特性を持たないから、R5×I3に正の温度特性を持たせることで出力電圧VREFの温度特性を相殺することができることがわかる。
【0248】
I1=I2=I3
であるから、
VREF={R6/(R5+R6)}{VF5+R5(VF3/R2+IF+ΔVF1/R1)}
={R6/(R5+R6)}{VF5+R5(VF3/R2+IF+ΔVF2/R3)} (101)
となる。
【0249】
上述したように、R5×I3に正の温度特性を持たせられ、出力電圧VREFの温度特性を相殺することができる。
【実施例15】
【0250】
図19に示すように、単位ダイオードD3、D4をそれぞれ図2(a)に示した第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続する。図19において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。
【0251】
電圧VAは第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。ここでは、第1から第2の電流−電圧変換回路には、いずれも図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用い、第3の電流−電圧変換回路には、図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0252】
本実施例の動作について説明する。図19において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。ここでは、第1の電流−電圧変換回路に図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いている。この回路構成は、図18において出力の電流−電圧変換回路を図2(b)に示した電流−電圧変換回路に変更しただけであり、(95)式から(100)式が同様に成り立つ。
【0253】
図19のように、出力の電流−電圧変換回路を図2(b)にすると、
I3=(VREF−VF3)/R5 (102)
となっている。
【0254】
(102)式より、出力される基準電圧VREFは、
VREF=VF3+R5×I3 (103)
と求められる。
【0255】
(103)式には、抵抗分圧比の項{R6/(R5+R6)}がかかっていない。しかし、回路上では、ダイオードD3に並列に抵抗R6が接続されており、(103)式では抵抗R6の存在感が薄い。今、ダイオードD3に流れる電流をIF3とすると、
I3=IF3+VF3/R6 (104)
と表される。
【0256】
(104)式を(103)式に代入すると、
VREF=(1−R5/R6)VF3+R5×IF3 (105)
と表される。
【0257】
すなわち、R5<R6なる条件で、ダイオードの順方向電圧VF3を(1−R5/R6)(<1)に圧縮し、それにダイオードに流れる電流IF3と抵抗R5の積を加算した電圧がVREFになっていることを示している。ここで、VF3はおよそ−1.9mV/℃前後の温度特性を持つが、それを(1−R5/R6)(<1)に圧縮している。したがって、出力される基準電圧VREFの温度特性を相殺するためには、負の温度特性が−1.9mV/℃前後の(1−R5/R6)(<1)に圧縮された小さな負の温度特性とそれに見合う小さな正の温度特性とを加算すれば良いのは、これまでと同様である。すなわち、電流I3に正の温度特性を持たせることで、ダイオードに流れる電流IF3の温度特性も正の温度特性を維持し、(1−R5/R6)VF3の負の温度特性に相当する正の温度特性を持つ電圧R5×IF3を発生させることで、温度特性を持たない基準電圧VREFが得られる。
【0258】
上述した説明のように、図2(b)に示した電流−電圧変換回路でも、出力線圧VREFを1.2Vより低い任意の電圧値に設定できることがわかる。すなわち、図2(b)の電流−電圧変換回路と、図2(a)の電流−電圧変換回路は、およそ類似しており、図2(b)に示した電流−電圧変換回路図においても、図2(a)に示した電流−電圧変換回路と同等の特性を実現できる。
【実施例16】
【0259】
図20に示すように、単位ダイオードD3、D4を、それぞれ図2(a)に示した第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続する。図20において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは、第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。
【0260】
ここでは、第1から第2の電流−電圧変換回路には、いずれも図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用い、第3の電流−電圧変換回路には図2(c)に示した電流−電圧変換回路を用い、出力の電流−電圧変換回路を抵抗にすることで回路の簡略化している。
【0261】
図20において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。ここでは、第1の電流−電圧変換回路に、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を、第2の電流−電圧変換回路に図2(b)に示した電流−電圧変換回路を、第3の電流−電圧変換回路に図2(c)に示した電流−電圧変換回路を用いている。この回路構成は、図18において出力の電流−電圧変換回路を抵抗に変更しただけであり、(95)式から(100)式が同様に成り立つ。
【0262】
図20において、MOSトランジスタM1とM2とM3の電流が等しい(I1=I2=I3)とすると、出力回路から出力される基準電圧VREFは、
VREF=R5I3
=(R5/R2)[VF3+{R2IF+(R2/R1)ΔVF1}]
=(R5/R2)[VF3+{R2IF+(R2/R3)ΔVF2}] (106)
と表される。
【0263】
ここで、単位ダイオードD3、D4に流れる電流IFと抵抗R1、R3に流れる電流ΔVF1/R1(=ΔVF2/R3)がいずれも正の温度特性を持つものと仮定すると、抵抗R2、R4に流れる電流VF3/R2(=VF4/R4)は負の温度特性を持つ。
【0264】
今、VF3の温度特性を−1.9mV/℃、ΔVF1の温度特性を+0.0853mV/℃と仮定すれば、
VF3/R2:(IF+ΔVF1/R1)=1:22.27
に設定すると駆動電流I1は温度特性を持たなくなる。すなわち、R2>R1に設定し、ダイオードD1とD3に流れる電流の和が抵抗R2に流れる電流の22.27倍にすれば良い。
【0265】
実際には、抵抗R1、R2、R3、R4(、R5)は、温度特性を持ち、それらは互いに同じ温度特性を持つとすれば、出力される基準電圧VREFが温度特性を持たないように出力電圧VREFの温度特性を相殺することもできる。すなわち、温度特性を持たない基準電圧VFEFが得られる。ここで、抵抗比(R5/R2)は任意に設定でき、1<(R5/R2)に設定すれば、VREFは1.2Vよりも高い電圧となり、1>(R5/R2)に設定すればVREFは1.2Vよりも低い電圧となることは、従来技術の場合と同様である。
【0266】
特に、VREFが1.2Vよりも低い電圧となる1>(R5/R2)に設定する場合には、電源電圧を下げられる。例えば、VREF=1.0Vに設定すれば、電源電圧が1.2V程度から動作させることができる。
【0267】
[シミュレーション値の例]
SPICEシミュレーションの例として、R1=3KΩ、R3=9KΩとし、R2=R4=55KΩに設定(N=3)したらVREFはR5=40KΩとして、−46℃で964.6mV、27℃で968.7mV、100℃で965.7mVが得られ、温度特性は146℃の変化で−0.423%となり、常温で最大電圧となり、低温、高温で電圧が微小に減少する。微小ではあるがお椀を伏せた型の温度特性が得られた。
【0268】
同様に、図17に示した回路においても、OP amp(AP1)の電源電圧をできるだけ下げるために、図21に示すように、並列接続される抵抗R2とR4を同一に分割してR2A、R2BとR4A、R4Bとしてそれぞれの分圧電圧をOP amp(AP1)の差動入力信号電圧とすることができる。
【0269】
ここで、VAとVBは等しく制御されるが、ダイオードを介した電圧であるから、常温から±50℃程度の温度変化を想定すると、1.1V〜0.5V程度の電圧となる。したがって、OP amp(AP1)はpチャネルトランジスタ入力の差動対となり、0Vの入力信号電圧から動作可能である。このために、OP amp(AP1)の電源電圧は入力信号電圧が低ければ低い程電源電圧を下げられる。すなわち、抵抗R2とR4を分割することで入力信号電圧を下げられ、その結果、電源電圧も下げられる。
【実施例17】
【0270】
図21に示すように、単位ダイオードD3、D4をそれぞれ図2(a)に示した第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続する。図21において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。
【0271】
また、比較される第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路において、並列接続される抵抗R2とR4を同一に分割して、R2A、R2BとR4A、R4Bとして、それぞれの分圧電圧をOP amp(AP1)の差動入力信号電圧としている。ここでは、第1から第2の電流−電圧変換回路には、いずれも図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用い、第3の電流−電圧変換回路には、図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0272】
本実施例の動作を説明する。図21においては、OP ampがpチャネルトランジスタを入力対とする差動対で構成されているとすると、入力電圧は0V程度から動作可能である。したがって、電源電圧を下げて低電圧化する場合にはOP ampの動作電圧がより下げられるように入力電圧はできるだけ低い方が良い。
【0273】
図21は、図18において、抵抗R2とR4をそれぞれ分割してR2AとR2B、R4AとR4Bにした場合を示している。
【0274】
ここで、
R2A:R2B=R4A:R4B (107)
に設定すれば、分圧抵抗の中点からVA、VBに比例した電圧が得られる。
【0275】
すなわち、
VAR2B/(R2A+R2B)=VBR4B/(R4A+R4B) (108)
となる。VA=VBとなるように制御される。したがって、図18と同様に、基準電圧回路が実現できる。
【実施例18】
【0276】
図22に示すように、単位ダイオードD3、D4を、それぞれ図2(a)に示した第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続する。図22において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。
【0277】
電圧VAは第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。また、比較される第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路において、並列接続される抵抗R2とR4を同一に分割してR2A、R2BとR4A、R4Bとしてそれぞれの分圧電圧をOP amp(AP1)の差動入力信号電圧としている。
【0278】
ここでは、第1から第2の電流−電圧変換回路にはいずれも図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用い、第3の電流−電圧変換回路には図2(b)に示した電流−電圧変換回路を用いている。
【0279】
本実施例の動作について説明する。図22においては、OP ampがpチャネルトランジスタを入力対とする差動対で構成されているとすると、入力電圧は0V程度から動作可能である。したがって、電源電圧を下げて低電圧化する場合にはOP ampの動作電圧がより下げられるように入力電圧はできるだけ低い方が良い。この場合にも、VA=VBとなるように制御され、図19と同様に、同一特性の基準電圧回路が実現できる。
【実施例19】
【0280】
図23に示すように、単位ダイオードD3、D4を、それぞれ図2(a)に示した第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続する。図23において、OP ampにより比較される2つの電圧VAとVBが等しくなるように制御される。電圧VAは第1の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生し、電圧VBは第2の電流−電圧変換回路と並列接続されたダイオードにより発生する電圧である。
【0281】
また、比較される第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路において、並列接続される抵抗R2とR4を同一に分割して、R2A、R2Bと、R4A、R4Bとして、それぞれの分圧電圧をOP amp(AP1)の差動入力信号電圧としている。ここでは、第1から第2の電流−電圧変換回路には、いずれも図2(a)に示した電流−電圧変換回路を用い、第3の電流−電圧変換回路には、図2(c)に示した抵抗を電流−電圧変換回路を用いて出力回路を簡略化している。
【0282】
本実施例の動作について説明する。図23においては、OP ampがpチャネルトランジスタを入力対とする差動対で構成されているとすると、入力電圧は0V程度から動作可能である。したがって、電源電圧を下げて低電圧化する場合にはOP ampの動作電圧がより下げられるように入力電圧はできるだけ低い方が良い。
【0283】
この場合にも、VA=VBとなるように制御され、図20と同様に、同一特性の基準電圧回路が実現できる。
<発明の他の実施の形態>
【0284】
図17においては、第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路には図2(a)と図2(b)に示した、いずれかの電流−電圧変換回路を適用でき、これまでに回路解析して動作を説明した同一の回路トポロジの図2(a)に示した電流−電圧変換回路のみを用いた図18〜図23の他にも、異なる回路トポロジの電流−電圧変換回路を用いた回路構成でも実現できることは、図3の場合と同様である。
【0285】
しかし、上述したように、手計算による回路解析はいずれも困難である。上述した基準電圧回路の例と同様に、単位ダイオードD3、D4を第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に並列接続することで、必要とされる電流比(上記の説明では、22.27)が容易に実現される。
<発明の他の実施の形態>
【0286】
以上説明した図3や図17に示した基準電圧回路において、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1と抵抗R1を直列接続し、さらに抵抗R2を並列接続した回路トポロジ{(R1-D2)//R2}、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1と抵抗R2を並列接続し、さらに抵抗R1を直列接続した回路トポロジ{R1-(D2//R2)}、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1と抵抗R1を直列接続し、さらに抵抗R2とダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D3を並列接続した回路トポロジ{(R1-D2)//R2//D3}、ダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D1と抵抗R2を並列接続し、さらに抵抗R1を直列接続し、これらにダイオード(またはダイオード接続されたバイポーラトランジスタ)D3を並列接続した回路トポロジ[{R1-(D2//R2)}//D3]に持ついずれかの電流−電圧変換回路を第1の電流−電圧変換回路と第2の電流−電圧変換回路に持つ上述した基準電圧回路は自己バイアス化することでOP ampを省略することができる。
【0287】
図24及び図25に、自己バイアス化した基準電圧回路の一例を示す。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【実施例20】
【0288】
図24において、nチャネルトランジスタM1とM2はゲートが共通接続されて、M1はゲートとドレインが共通接続されている。また、pチャネルトランジスタM3とM4(とM5)はゲートが共通接続されて、M4はゲートとドレインが共通接続されている。したがって、nチャネルトランジスタM1とM2、pチャネルトランジスタM3とM4(とM5)はそれぞれカレントミラー回路を構成しており、pチャネルトランジスタM3とM4のカレントミラー回路はnチャネルトランジスタM1とM2のカレントミラー回路を自己バイアスしている。pチャネルトランジスタM5のドレインは第3の第2の電流−電圧変換回路(I-V3)に接続されている。
【0289】
本実施例の動作について説明する。nチャネルトランジスタM1とM2に流れる電流は比例し、nチャネルトランジスタM1とM2とがトランジスタサイズが等しく、pチャネルトランジスタM3とM4とがトランジスタサイズが等しい場合には、nチャネルトランジスタM1とM2に流れる電流は等しくなる。
【0290】
いずれにしても、自己バイアスされることで、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれのゲート−ソース間電圧が等しくなるから、第1の電流−電圧変換回路に印加される電圧と第2の電流−電圧変換回路に印加される電圧は等しくなり、上述したOP ampを用いた場合と等しい動作条件が実現できる。すなわち、図3に示した基準電圧回路と同等の特性が得られ、基準電圧回路が実現できる。
【実施例21】
【0291】
同様に、図25に示すように、自己バイアス化することで、OP ampを省略することができる。図25は、図24に示した構成において、第1の電流−電圧変換回路(I-V1)に並列にダイオードD3が接続され、第2の電流−電圧変換回路(I-V2)に並列にダイオードD3が接続されている。図25において、nチャネルトランジスタM1とM2はゲートが共通接続されて、M1はゲートとドレインが共通接続されている。また、pチャネルトランジスタM3とM4(とM5)はゲートが共通接続されて、M4はゲートとドレインが共通接続されている。したがって、nチャネルトランジスタM1とM2、pチャネルトランジスタM3とM4(とM5)は、それぞれカレントミラー回路を構成しており、pチャネルトランジスタM3とM4のカレントミラー回路は、nチャネルトランジスタM1とM2のカレントミラー回路を自己バイアスしている。
【0292】
本実施例の動作について説明する。nチャネルトランジスタM1とM2に流れる電流は比例し、nチャネルトランジスタM1とM2とがトランジスタサイズが等しく、pチャネルトランジスタM3とM4とがトランジスタサイズが等しい場合には、nチャネルトランジスタM1とM2に流れる電流は等しくなる。
【0293】
いずれにしても、自己バイアスされることで、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれのゲート−ソース間電圧が等しくなるから、第1の電流−電圧変換回路とそれに並列接続されたダイオードD3に印加される電圧と第2の電流−電圧変換回路とそれに並列接続されたダイオードD4に印加される電圧は等しくなり、上述したOP ampを用いた場合と等しい動作条件が実現できる。すなわち、図3と同等の特性が得られ、基準電圧回路が実現できる。
【0294】
ただし、上述した図24,25に示した基準電圧回路においては、トランジスタのチャネル長変調の影響が出やすい。
【0295】
次に、チャネル長変調の影響を低減する他の回路例として、図26と図27に示す。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【実施例22】
【0296】
図26を参照すると、第1、第2の電流−電圧変換回路(I-V1、I-V2)にソースが接続されたnチャネルトランジスタM1とM2と、nチャネルトランジスタM1とM2のドレインと電源VDD間に接続され、ドレインとゲートが接続されたpチャネルトランジスタM7とM5と、2つの第1の電流−電圧変換回路(I-V1)にソースが接続されゲートが共通接続されたnチャネルトランジスタM3とM4はカレントミラーを構成し、nチャネルトランジスタM3とM4のドレインと電源VDD間に接続されたpチャネルトランジスタM8とM6と、第3の電流−電圧変換回路(I-V3)と電源VDD間に接続されたpチャネルトランジスタM9とを備え、nチャネルトランジスタM1とM2のゲートが共通接続され、nチャネルトランジスタM4のドレインに接続され、pチャネルトランジスタM5、M6のゲートは共通接続されてカレントミラーを構成し、pチャネルトランジスタM7、M8、M9のゲートは共通接続されカレントミラーを構成している。
【0297】
図26において、第1、第2の電流−電圧変換回路に接続するnチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれに流れる電流は、pチャネルトランジスタM5とM6からなるカレントミラー回路とpチャネルトランジスタM7とM8からなるカレントミラー回路を介して、nチャネルトランジスタM3とM4からなるカレントミラー回路において、電流比較され、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれに流れる電流が等しくなるように、nチャネルトランジスタM1とM2の共通ゲート電圧が制御される。
【0298】
本実施例の動作について説明する。nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれのゲート−ソース間電圧が等しくなるから、第1の電流−電圧変換回路に印加される電圧と第2の電流−電圧変換回路に印加される電圧は等しくなり、上述したOP ampを用いた場合と等しい動作条件が実現できる。すなわち、図3と同等の特性が得られ、基準電圧回路が実現できる。ここで、2つの第1の電流−電圧変換回路(I-V1)は、nチャネルトランジスタM3とM4とのドレイン電圧が等しくなるように挿入している。
【実施例23】
【0299】
図27に示す例は、図26の第1、第2の電流−電圧変換回路(I-V1、I-V2)のそれぞれに並列にダイオードを接続したものである。図27において、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれに流れる電流はpチャネルトランジスタM5とM6からなるカレントミラー回路とpチャネルトランジスタM7とM8からなるカレントミラー回路を介して、nチャネルトランジスタM3とM4からなるカレントミラー回路において電流比較され、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれに流れる電流が等しくなるように、nチャネルトランジスタM1とM2の共通ゲート電圧が制御される。
【0300】
本実施例の動作について説明する。nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれのゲート−ソース間電圧が等しくなるから、第1の電流−電圧変換回路とそれに並列接続されたダイオードD3に印加される電圧と第2の電流−電圧変換回路とそれに並列接続されたダイオードD4に印加される電圧は等しくなり、上述したOP ampを用いた場合と等しい動作条件が実現できる。すなわち、図17と同等の特性が得られ、基準電圧回路が実現できる。ここで、第1の電流−電圧変換回路とそれに並列接続されたダイオードD5:(I-V1)//D5、第1の電流−電圧変換回路とそれに並列接続されたダイオードD6:(I-V1)//D6は、nチャネルトランジスタM3とM4とのドレイン電圧が等しくなるように挿入している。
<発明の他の実施の形態>
【0301】
さらに、チャネル長変調の影響を低減する他の回路の例を、図28と図29に示す。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【実施例24】
【0302】
図28において、pチャネルトランジスタM4のソースには抵抗R4が挿入され、pチャネルトランジスタM5とゲート電圧が共通であるから、等しい電流が流せるように、pチャネルトランジスタM4のトランジスタサイズはpチャネルトランジスタM5のトランジスタサイズよりも大きくしてある。ここで、pチャネルトランジスタM4とM5からなるカレントミラー回路は、逆ワイドラーカレントミラー回路を構成している。
【0303】
本実施例の動作について説明する。nチャネルトランジスタM1に流れる電流が大きくなると、その分だけpチャネルトランジスタM4に流れる電流が大きくなる。しかし、pチャネルトランジスタM5に流れる電流はそれ以上に大きくなるために、nチャネルトランジスタM2では、増えた分の電流を流しきれなくなり、pチャネルトランジスタM5のドレイン電圧が高くなり、pチャネルトランジスタM5のドレインにゲートが接続されたpチャネルトランジスタM6に流れる電流が減少する。したがって、ドレイン電流が共通であるnチャネルトランジスタM3に流れる電流も減少する。ここで、nチャネルトランジスタM3とnチャネルトランジスタM2とはカレントミラー回路を構成しており、nチャネルトランジスタM1とnチャネルトランジスタM2とはゲート電圧が共通になっているから、M1-M3の共通ゲート電圧が低下し、したがって、nチャネルトランジスタM1に流れる電流も減少する。
【0304】
すなわち、nチャネルトランジスタM1-M3とpチャネルトランジスタM4-M6からなる電流ループは、負帰還回路を構成しており、逆ワイドラーカレントミラー回路を介して、nチャネルトランジスタM1とnチャネルトランジスタM2の電流が所定の値、この例では、等しくなるように、nチャネルトランジスタM1とM2の共通ゲート電圧が制御される。
【0305】
したがって、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれのゲート−ソース間電圧が等しくなるから、第1の電流−電圧変換回路に印加される電圧と第2の電流−電圧変換回路に印加される電圧は等しくなり、上述したOP ampを用いた場合と等しい動作条件が実現できる。すなわち、図3と同等の特性が得られ、基準電圧回路が実現できる。ここで、2つの第1の電流−電圧変換回路(I-V1)はnチャネルトランジスタM3とM1とのドレイン電圧が等しくなるように挿入している。
【実施例25】
【0306】
図29に示す例は、図28の第1、第2の電流−電圧変換回路(I-V1、I-V2)のそれぞれに並列にダイオードを接続したものである。図29において、pチャネルトランジスタM4のソースには抵抗R4が挿入され、pチャネルトランジスタM5とゲート電圧が共通であるから、等しい電流が流せるように、pチャネルトランジスタM4のトランジスタサイズはpチャネルトランジスタM5のトランジスタサイズよりも大きくしてある。ここで、pチャネルトランジスタM4とM5からなるカレントミラー回路は逆ワイドラーカレントミラー回路を構成している。
【0307】
本実施例の動作について説明する。nチャネルトランジスタM1に流れる電流が大きくなるとその分だけpチャネルトランジスタM4に流れる電流が大きくなる。しかし、pチャネルトランジスタM5に流れる電流はそれ以上に大きくなるために、nチャネルトランジスタM2では増えた分の電流を流しきれなくなり、pチャネルトランジスタM5のドレイン電圧が高くなり、pチャネルトランジスタM5のドレインにゲートが接続されたpチャネルトランジスタM6に流れる電流が減少する。
【0308】
したがって、ドレイン電流が共通であるnチャネルトランジスタM3に流れる電流も減少する。ここで、nチャネルトランジスタM3とnチャネルトランジスタM2とはカレントミラー回路を構成しており、nチャネルトランジスタM1とnチャネルトランジスタM2とはゲート電圧が共通になっていることから、M1-M3の共通ゲート電圧が低下し、したがって、nチャネルトランジスタM1に流れる電流も減少する。
【0309】
すなわち、nチャネルトランジスタM1-M3とpチャネルトランジスタM4-M6からなる電流ループは、負帰還回路を構成しており、逆ワイドラーカレントミラー回路を介して、nチャネルトランジスタM1とnチャネルトランジスタM2の電流が、所定の値(この例では、等しくなる)になるように、nチャネルトランジスタM1とM2の共通ゲート電圧が制御される。
【0310】
したがって、nチャネルトランジスタM1とM2のそれぞれのゲート−ソース間電圧が等しくなるから、第1の電流−電圧変換回路それに並列接続されたダイオードD3に印加される電圧と、第2の電流−電圧変換回路それに並列接続されたダイオードD4に印加される電圧とは互いに等しくなり、上述したOP ampを用いた場合と等しい動作条件が実現できる。
【0311】
すなわち、図9と同等の特性が得られ、基準電圧回路が実現できる。ここで、2つの第1の電流−電圧変換回路(I-V1)とそれに並列接続されたダイオードD5はnチャネルトランジスタM3とM1とのドレイン電圧が等しくなるように、挿入している。
<発明の他の実施の形態>
【0312】
さらに、ダイオードをバイポーラトランジスタに置き換えることで、低電圧化が計られる。図30〜図34にバイポーラトランジスタを用いた回路を示す。ここでは、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2が非線形カレントミラー回路を構成している。ただし、これは、従来の逆ワイドラーカレントミラー回路からアナロジしたものである。簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【実施例26】
【0313】
図30において、第1の電流−電圧変換回路(I-V1)、第2の電流−電圧変換回路(I-V2をそれぞれ構成するバイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2はエミッタサイズ比がK:1(K>1)であり、Q1、Q2は、それぞれエミッタ抵抗R1、R3(R1>R3)を有するカレントミラー回路を構成している。
【0314】
また、バイポーラトランジスタQ1とQ2の共通ベース−グランド(GND)間には、抵抗R2が挿入され、バイポーラトランジスタQ2のコレクタには、バイポーラトランジスタQ3のベースと対グランド(GND)間には抵抗R4が挿入されている。ここでは、抵抗R2と抵抗R4が等しいものとする。第1の電流−電圧変換回路(I-V1)のバイポーラトランジスタQ1のコレクタと電源VDD間には、pチャネルトランジスタM6、M7が縦積みに接続され、第2の電流−電圧変換回路(I-V2)のバイポーラトランジスタQ3のコレクタと電源VDD間には、pチャネルトランジスタM8、M9が縦積みに接続され、バイポーラトランジスタQ3のコレクタと電源VDD間には、pチャネルトランジスタM10、M11が縦積みに接続され、一端がグランドに接続された抵抗R5の他端と電源間には、pチャネルトランジスタM12、M13が縦積みに接続されている。さらに、カレントミラー回路を構成するnチャネルトランジスタM1、M2のM1と電源VDD間に、pチャネルトランジスタM3、M4が縦積みに接続され、M2と電源間にダイオード接続されたpチャネルトランジスタM5が接続されている。pチャネルトランジスタM3、M6、M8、M10、M12のゲートは共通接続され、pチャネルトランジスタM4、M5、M7、M9、M11、M13のゲートは共通接続され、トランジスタM10のソースと電源間には抵抗R7が接続されている。
【0315】
本実施例の動作について説明する。今、バイポーラトランジスタのベース電流が無視できるものと仮定し、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2に流れている電流が等しい時に、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧VAとバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電圧VBが等しくなっているとする。
【0316】
この時に、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)とバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流(IC2)は、
IC(=IC1=IC2)=(VBE2−VBE1)/(R1−R3)
=ΔVBE/(R1−R3)
=VTln(K)/(R1−R3) (109)
と表わされる。
【0317】
今、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)が増えて、(109)式に示されたICの値よりも大きくなると、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2の共通ベース電圧は、当然高くなる。しかし、共通ベース電圧はVBE1とR1IC1の和電圧であり、また、VBE2とR3IC2の和電圧でもある。良く知られているように、コレクタ電流の増加によるVBEの増加は対数圧縮されるために多少の増加に止まる。
【0318】
しかし、エミッタ抵抗での電圧降下の増大は、コレクタ電流の増加に比例する。ここで、R1>R3であるから、エミッタ抵抗R1での電圧降下の増分は、エミッタ抵抗R3での電圧降下の増分よりも大きくなる。したがって、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流(IC2)はバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)よりも大きくなる方向に動作しようとする。しかし、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2の駆動電流が等しく設定されているのなら、バイポーラトランジスタQ2は抵抗R4に流れる電流を食いつぶすために、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧が低下することになる。
【0319】
したがって、バイポーラトランジスタQ3のコレクタ電流(IC3)は減少することになる。このバイポーラトランジスタQ3のコレクタ電流(IC3)は、カスコードトランジスタM10-M11の駆動電流となっている。
【0320】
一方、カスコードトランジスタM10-M11と、電源VDD間には、抵抗R7が挿入されており、カスコードトランジスタM10-M11と、カスコードトランジスタM6-M7、M8-9は、逆ワイドラーカレントミラー回路を構成している。
【0321】
したがって、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が増えると、カスコードトランジスタM6-M7、M8-9に流れる電流は、急激に増加する。ここで、カスコードトランジスタM6-M7と、カスコードトランジスタM8-9には等しい電流が流れている。したがって、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流が増えると、バイポーラトランジスタQ1に流れる電流が増え、抵抗R1に流れる電流も増えるが、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流はさらに増え、抵抗R4に流れる電流を減少させ、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧を低下させ、バイポーラトランジスタQ3に流れる電流が減少し、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減少する方向に働き、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流も減少し、所定の電流値に落ち着くことになる。
【0322】
すなわち、バイポーラトランジスタQ1−Q3と、自己バイアス回路を構成している逆ワイドラーカスコードカレントミラー回路との間で、負帰還の電流ループを形成していることがわかる。
【0323】
この時に、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流は、
I1=IC+(VBE1+ICR1)/R2
=[VBE1+{(R1+R2)/(R1−R3)}VTln(K)]/R2
=[VBE1+{(R1+R2)/(R1−R3)}ΔVBE]/R2
=[VBE2+{(R2+R3)/(R1−R3)}ΔVBE]/R2 (110)
と表わされる。
【0324】
カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流と、カスコードトランジスタM12-M13に流れる電流IOUTと等しいとすると、
VREF=R5IOUT
=(R5/R2)[VBE1+{(R1+R2)/(R1−R3)}ΔVBE]
=(R5/R2)[VBE2+{(R3+R2)/(R1−R3)}ΔVBE] (111)
となる。
【0325】
ここで、VBE1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VBE2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。ΔVBEは、良く知られているように、この回路においても正の温度特性を持ち、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)に比例する。
【0326】
すなわち、(110)式の[VBE1+{(R1+R2)/(R1−R3)}ΔVBE]の項の温度特性は、負の温度特性を持つVBE1と、正の温度特性を持つΔVBEを、抵抗比{(R2+R2)/(R1−R3)} を設定して重み付け加算することで相殺することができる。
【0327】
したがって、VBE1は常温でおよそ580mVとなるものとすると、VBE2は常温で620mVとなり、[VBE1+{(R1+R2)/(R1−R3)}ΔVBE]は、同様に、ほぼ1.2Vとなることがわかる。
【0328】
また、抵抗比(R5/R2)は温度特性を持たないから、出力される基準電圧VREFは温度特性が相殺された電圧となる。
【0329】
ここで、抵抗比(R5/R2)は任意に設定でき、1<(R5/R2)に設定すればVREFは1.2Vよりも高い電圧となり、1>(R5/R2)に設定すればVREFは1.2Vよりも低い電圧となることは従来技術の場合と同様である。特に、VREFが1.2Vよりも低い電圧となる1>(R5/R2)に設定する場合には、電源電圧を下げられる。例えば、VREF=0.8Vに設定すれば電源電圧が1.2V程度から動作させることができる。
【実施例27】
【0330】
同様に、図31〜図34のように回路を変化させることができる。ただし、図34は、図32と等価であり、直列接続される回路素子(具体的には、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタQ1と並列接続される抵抗R2とそれらと直列接続される抵抗R1)を入れ替えたものである。いずれにおいても手計算による回路解析は困難である。
【0331】
本実施例の動作について説明する。図31〜図34においても図30に示した場合と同様に、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流が増えるとバイポーラトランジスタQ1に流れる電流が増え、抵抗R1に流れる電流も増えるが、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流はさらに増え、抵抗R4に流れる電流を減少させ、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧を低下させ、バイポーラトランジスタQ3に流れる電流が減少し、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減少する方向に働き、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流も減少し、所定の電流値に落ち着くことになる。
【0332】
すなわち、バイポーラトランジスタQ1−Q3と自己バイアス回路を構成している逆ワイドラーカスコードカレントミラー回路との間で負帰還の電流ループを形成していることがわかる。
【0333】
したがって、いずれの回路の場合にも、バイポーラトランジスタQ2のベース電圧とバイポーラトランジスタQ3のベース電圧が等しくなるように制御され、バイポーラトランジスタのVBEに比例する負の温度特性を持つ電流とバイポーラトランジスタQ1のVBEとバイポーラトランジスタQ2のVBEの差電圧ΔVBEに比例する正の温度特性を持つ電流とをR1〜R4の各抵抗値で重み付け加算して温度特性を相殺でき(、実際には抵抗の持つ温度特性の分だけ減じた)、得られた電流を抵抗を介して電圧に変換することで温度特性を持たない任意の基準電圧を得ることができる。
<発明の他の実施の形態>
【0334】
図30に示した基準電圧回路については、一部回路を変更して、バイポーラトランジスタに流れる電流とそれに並列接続された抵抗に流れる電流とに分解して駆動電流を設定することもできる。
【実施例28】
【0335】
図35は、図30に示した基準電圧回路の自己バイアス方式を一部変更して、バイポーラトランジスタに流れる電流と、それに並列接続された抵抗に流れる電流とに分解して駆動電流を設定する場合の回路を示している。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。第1の電流−電圧変換回路(I-V1)のトランジスタQ1のコレクタと電源間には、ダイオード接続されたpチャネルトランジスタM8とトランジスタM1が並列に接続され、第2の電流−電圧変換回路(I-V2)のトランジスタQ2のコレクタと電源間には、ダイオード接続されたpチャネルトランジスタM9とトランジスタM2が並列に接続され、トランジスタQ3のコレクタと電源間にはダイオード接続されたpチャネルトランジスタM3が接続され、トランジスタQ4、Q7と電源間には、pチャネルトランジスタM4とM13が接続され、トランジスタQ5のベースと抵抗R8の接続点と電源間にはpチャネルトランジスタM7が接続され、トランジスタQ5のコレクタと電源間にはpチャネルトランジスタM5が接続され、トランジスタQ6のコレクタと電源間にはpチャネルトランジスタM6が接続され、第3の電流−電圧変換回路(I-V3)の抵抗R5と電源間には、pチャネルトランジスタM10、M11、M12が並列接続され、トランジスタM2、M4、M13、M5、M6、M10のゲートは共通接続され、トランジスタM1、M3、M13、M11のゲートは共通接続され、トランジスタM8、M9、M13、M7、M6、M12のゲートは共通接続され、トランジスタQ6のコレクタに接続されれている。ここで、トランジスタM8のW/L比は単位トランジスタ(M11、M10)の2倍にしている。
【0336】
今、バイポーラトランジスタQ1のトランジスタサイズが単位バイポーラトランジスタであるQ2のK倍であるとする。
【0337】
また、バイポーラトランジスタQ3のトランジスタサイズも単位バイポーラトランジスタQ3のK倍であるとする。
【0338】
さらに、抵抗R2とR4とR8が等しく、抵抗R1とR6が等しく、抵抗R3とR7とR9とR10とR11が等しいものとする。
【0339】
ここで、MOSトランジスタM5とM6でそれぞれ駆動されるバイポーラトランジスタQ5とバイポーラトランジスタQ6は、いずれも逆相増幅器を構成し、2段で、正相増幅器となっている。すなわち、この2段(正相)増幅器の出力が、MOSトランジスタM7のゲートに接続され、MOSトランジスタM7のドレイン出力電流が抵抗R8を介して接地されており、抵抗R8の他方の端子が(単位)バイポーラトランジスタQ5のベースに接続されている。
【0340】
一方、MOSトランジスタM4とそれで駆動されるバイポーラトランジスタQ4は逆相増幅器を構成し、ダイオード接続されたMOSトランジスタM13とバイポーラトランジスタQ7は逆に正相増幅器を構成し、2段で逆相増幅器となっている。
【0341】
さらに、MOSトランジスタM2、M9とそれで駆動されるバイポーラトランジスタQ2は逆相増幅器を構成し、ダイオード接続されたMOSトランジスタM3とバイポーラトランジスタQ3は逆に正相増幅器を構成し、同様に、2段で逆相増幅器となっている。
【0342】
また、MOSトランジスタM7のゲートとMOSトランジスタM8のゲートとMOSトランジスタM9のゲートが互いに接続されており、電流比が、1:1:1のカレントミラー回路を構成している。
【0343】
同様に、MOSトランジスタM1のゲートとMOSトランジスタM2のゲートが共通接続されて電流比が1:1のカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタM13のゲートとMOSトランジスタM2のゲートとMOSトランジスタM4のゲートが共通接続されて電流比が1:1:1のカレントミラー回路を構成している。
【0344】
本実施例の動作について説明する。始めに、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧(=ベース電圧)VAと(単位)バイポーラトランジスタQ5のコレクタ電圧が等しくなることを説明する。
【0345】
バイポーラトランジスタQ5と抵抗R9、バイポーラトランジスタQ6と抵抗R10、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11はいずれもバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3のコピーであり、抵抗R8は抵抗R2(=R4)のコピーである。
【0346】
また、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6はバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1のコピーであり、バイポーラトランジスタQ4と抵抗R7はバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3のコピーである。
【0347】
したがって、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流はMOSトランジスタM13を介し、MOSトランジスタM13とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM2とMOSトランジスタM4とMOSトランジスタM5と MOSトランジスタM6とにコピーされる。したがって、バイポーラトランジスタQ5と抵抗R9と負荷トランジスタM5とバイポーラトランジスタQ6と抵抗R10と負荷トランジスタM6からなる2段(正相)増幅器の出力信号によりMOSトランジスタに流れる電流が制御され、接地された抵抗R8の端子電圧がバイポーラトランジスタQ5と抵抗R9に共通に流れる電流とバイポーラトランジスタQ6と抵抗R10に共通に流れる電流が等しくなるように、負帰還路(ループ)を介して制御されることになる。したがって、このMOSトランジスタM4とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM2を介して等しい電流がバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3および並列接続された抵抗R4に供給される。
【0348】
また、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流はMOSトランジスタM3を介し、MOSトランジスタM3とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM1にコピーされる。したがって、このバイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流と等しい電流がバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1および並列接続された抵抗R2に供給される。
【0349】
ここで、MOSトランジスタM2、M9とバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3とそれに並列接続される抵抗R4は逆相増幅器を構成し、負帰還路を構成してバイポーラトランジスタQ3と抵抗R6とに共通に流れる電流が所定の値になるように動作する。
【0350】
また、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流はMOSトランジスタM13を介し、MOSトランジスタM13とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM2とMOSトランジスタM4とにコピーされる。したがって、このバイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流と等しい電流がバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3および並列接続された抵抗R4に供給される。
【0351】
ここで、MOSトランジスタM4とバイポーラトランジスタQ4と抵抗R7は逆相増幅器を構成し、負帰還路を構成してバイポーラトランジスタQ7と抵抗R11とに共通に流れる電流が所定の値になるように動作する。
【0352】
このように、2重の負帰還路を構成することでMOSトランジスタM3とMOSトランジスタM1からなるカレントミラー回路に流れる電流値とMOSトランジスタM13とMOSトランジスタM2とMOSトランジスタM4からなるカレントミラー回路に流れる電流値を所定の値に設定している。
【0353】
一方、抵抗R8に流れる電流は、MOSトランジスタM7を介して、MOSトランジスタM7とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM8とMOSトランジスタM8にコピーされる。したがって、端子電圧VAを発生させる駆動電流I1は、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流と抵抗R8に流れる電流の和になっており、端子電圧VBを発生させる駆動電流I2はバイポーラトランジスタQ4と抵抗R7に共通に流れる電流と抵抗R8に流れる電流の和になっていることがわかる。
【0354】
ここで、バイポーラトランジスタQ1のベースとバイポーラトランジスタQ2のベースが共通接続されてその端子電圧がVAとなっており、バイポーラトランジスタQ3のベースとバイポーラトランジスタQ4のベースが共通接続されてその端子電圧がVBとなっている。
【0355】
今、抵抗R2と抵抗R4と抵抗R8の値がいずれも等しく、かつ抵抗R2と抵抗R4と抵抗R8に流れる電流がいずれも等しくなっているから、端子電圧がVAと端子電圧がVBは等しくなる。
【0356】
このように、本発明では3つの負帰還路を構成することで駆動電流I1とI2が所定の値に設定される。ここで、バイポーラトランジスタQ3(=Q1)のエミッタ面積比Kと抵抗R6(=R1)と抵抗R7(=R3)を設定(R6>R7)すれば、回路が起動すると、VB(=VA)(>0)なる電圧値は一意的に定まる。
【0357】
今、I1=I2を目標に、抵抗R6(=R1)と抵抗R7(=R3)を設定(R6>R7)したとする。この場合に、バイポーラトランジスタQ4に流れる電流(IC4)とバイポーラトランジスタQ3に流れる電流(IC3)とに若干の差異δが生じた(IC3=(1+δ)IC4)とすると、
ΔVBE=VBE4−VBE3
=VTln{K/(1+δ)}
=R6IC3−R7IC4
={R6(1+δ)−R7}IC4 (112)
と表され、電流比の差異は抵抗R6と抵抗R7の値を再設定することで解消される。
【0358】
すなわち、抵抗R6と抵抗R7の値を設定することで駆動電流I1と駆動電流I2を等しくすることができる。いずれにしても、VA=VBに設定される。すなわち、図30の基準電圧回路と同じ動作条件が実現される。
【0359】
ここで、MOSトランジスタM10、M11を単位MOSトランジスタとして、MOSトランジスタM12を単位MOSトランジスタの2倍のトランジスタサイズとすると、MOSトランジスタM13とM10、MOSトランジスタM3とM11、MOSトランジスタM7とM12がそれぞれカレントミラー回路を形成して電流がコピーされ、
IOUT=I1+I2=2I2 (113)
となる。
【0360】
出力回路の電流−電圧変換回路を、図2(c)に示す抵抗とすれば、
VREF=R5×IOUT (114)
と表され、図30に示した基準電圧回路と同様の結果が得られる。
<発明の他の実施の形態>
【0361】
以上、図30〜図35に示した基準電圧回路においては、カレントミラー回路を構成するバイポーラトランジスタQ1、Q2のエミッタサイズ比はK:1(K>1)に設定していた。バイポーラトランジスタQ1、Q2は非線形カレントミラー回路を構成するのであるから、従来のワイドラーカレントミラー回路からアナロジしても良い。すなわち、バイポーラトランジスタQ1、Q2のエミッタサイズ比は、1:K(K>1)に設定しても良い。
【0362】
図36〜図41にカレントミラー回路を構成するバイポーラトランジスタQ1、Q2のエミッタサイズ比を1:K(K>1)に設定した場合に得られる基準電圧回路を示す。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【実施例29】
【0363】
図36において、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2は、エミッタサイズ比が1:K(K>1)であり、それぞれエミッタ抵抗R1、R3(R1>R3)を有するカレントミラー回路を構成している。
【0364】
また、共通ベース−グランド(GND)間には抵抗R2が挿入され、バイポーラトランジスタQ2のコレクタにはバイポーラトランジスタQ3のベースと対グランド(GND)間には抵抗R4が挿入されている。ここでは、抵抗R2と抵抗R4が等しいものとする。
【0365】
本実施例の動作について説明する。今、バイポーラトランジスタのベース電流が無視できるものと仮定し、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2に流れている電流が等しい時にバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧とバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電圧が等しくなっているとする。
【0366】
この時にバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)とバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流(IC2)は、
IC(=IC1=IC2)=(VBE1−VBE2)/(R3−R1)=ΔVBE/(R3−R1)
=VTln(K)/(R3−R1) (115)
と表わされる。
【0367】
今、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)が増えて(114)式に示されたICの値よりも大きくなると、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2の共通ベース電圧は当然高くなる。しかし、共通ベース電圧はVBE1とR1IC1の和電圧であり、また、VBE2とR3IC2の和電圧でもある。良く知られているように、コレクタ電流の増加によるVBEの増加は対数圧縮されるために多少の増加に止まる。しかし、エミッタ抵抗での電圧降下の増大はコレクタ電流の増加に比例する。ここで、R3>R1であるから、エミッタ抵抗R3での電圧降下の増分はエミッタ抵抗R1での電圧降下の増分よりも大きくなる。
【0368】
したがって、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流(IC2)はバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)よりも小さくなる方向に動作しようとする。しかし、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2の駆動電流が等しく設定されているのなら、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流が制限されるために、残りの電流は抵抗R4に流し込まれるために、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧が増加することになる。したがって、バイポーラトランジスタQ3のコレクタ電流(IC3)は増加することになる。このバイポーラトランジスタQ3は逆相増幅回路となっているためにバイポーラトランジスタQ3のコレクタ電圧は低下し、接続されるバイポーラトランジスタQ4のベース電圧は下がるためにバイポーラトランジスタQ4のコレクタ電流は減少することになる。このバイポーラトランジスタQ4のコレクタ電流(IC4)は、カスコードトランジスタM10-M11の駆動電流となっている。
【0369】
一方、カスコードトランジスタM10-M11と電源VDD間には抵抗R7が挿入されており、カスコードトランジスタM10-M11とカスコードトランジスタM6-M7、M8-9は、逆ワイドラーカレントミラー回路を構成している。したがって、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減るとカスコードトランジスタM6-M7、M8-9に流れる電流は急激に減少する。
【0370】
ここで、カスコードトランジスタM6-M7とカスコードトランジスタM8-9には等しい電流が流れている。
【0371】
したがって、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流が減少するとバイポーラトランジスタQ1に流れる電流が低下し、抵抗R1に流れる電流も減るが、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流の減り方は小さく、抵抗R4に流れる電流を減少させ、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧を低下させ、バイポーラトランジスタQ3に流れる電流が減少し、この逆相増幅回路の機能により、逆に、バイポーラトランジスタQ4に流れる電流が減少し、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減少する方向に働き、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流も減少し、所定の電流値に落ち着くことになる。
【0372】
すなわち、バイポーラトランジスタQ1−Q3と自己バイアス回路を構成している逆ワイドラーカスコードカレントミラー回路との間で負帰還の電流ループを形成していることがわかる。
【0373】
この時に、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流は、
I1=IC+(VBE1+ICR1)/R2
=[VBE1+{(R1+R2)/(R3−R1)}VTln(K)]/R2
=[VBE1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVBE]/R2
=[VBE2+{(R2+R3)/(R3−R1)}ΔVBE]/R2 (116)
と表わされる。
【0374】
カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流とカスコードトランジスタM12-M13に流れる電流IOUTと等しいとすると、
VREF=R5IOUT
=(R5/R2)[VBE1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVBE]
=(R5/R2)[VBE2+{(R3+R2)/(R3−R1)}ΔVBE] (117)
となる。
【0375】
ここで、VBE1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VBE2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。ΔVBEは良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持ち、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)に比例する。
【0376】
すなわち、(117)式の[VBE1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVBE]の項の温度特性は、負の温度特性を持つVBE1と正の温度特性を持つΔVBEを抵抗比{(R2+R2)/(R3−R1)} を設定して重み付け加算することで相殺することができる。
【0377】
したがって、VBE1は常温でおよそ580mVとなるものとすると、VBE2は常温で620mVとなり、[VBE1+{(R1+R2)/(R3−R1)}ΔVBE]は、同様に、ほぼ1.2Vとなることがわかる。
【0378】
また、抵抗比(R5/R2)は温度特性を持たないから、出力される基準電圧VREFは温度特性が相殺された電圧となる。ここで、抵抗比(R5/R2)は任意に設定でき、1<(R5/R2)に設定すれば、VREFは1.2Vよりも高い電圧となり、1>(R5/R2)に設定すればVREFは1.2Vよりも低い電圧となることは従来技術の場合と同様である。特に、VREFが1.2Vよりも低い電圧となる1>(R5/R2)に設定する場合には、電源電圧を下げられる。例えば、VREF=0.8Vに設定すれば電源電圧が1.2V程度から動作させることができる。
【実施例30】
【0379】
同様に、図37〜図40のように回路を変化させることができる。ただし、図40は、図38と等価であり、直列接続される回路素子(具体的には、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタQ1と並列接続される抵抗R2とそれらと直列接続される抵抗R1)を入れ替えたものである。いずれにおいても、手計算による回路解析は困難である。
【0380】
図37〜図40においても、図36に示した場合と同様に、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流が増えると、バイポーラトランジスタQ1に流れる電流が増え、抵抗R1に流れる電流も増えるが、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流の増え方は小さく、抵抗R4に流れる電流を増加させ、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧を向上(高上)させ、バイポーラトランジスタQ3に流れる電流が増加し、この逆相増幅回路の機能により、逆にバイポーラトランジスタQ4に流れる電流が減少し、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減少する方向に働き、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流も減少し、所定の電流値に落ち着くことになる。
【0381】
すなわち、バイポーラトランジスタQ1−Q3と自己バイアス回路を構成している逆ワイドラーカスコードカレントミラー回路との間で負帰還の電流ループを形成していることがわかる。
【0382】
したがって、いずれの回路の場合にも、バイポーラトランジスタQ2のベース電圧とバイポーラトランジスタQ3のベース電圧が等しくなるように制御され、バイポーラトランジスタのVBEに比例する負の温度特性を持つ電流と、バイポーラトランジスタQ1のVBEとバイポーラトランジスタQ2のVBEの差電圧ΔVBEに比例する正の温度特性を持つ電流とを、R1〜R4の各抵抗値で重み付け加算して、温度特性を相殺でき(、実際には抵抗の持つ温度特性の分だけ減じた)、得られた電流を抵抗を介して電圧に変換することで温度特性を持たない任意の基準電圧を得ることができる。
<発明の他の実施の形態>
【0383】
図36に示した基準電圧回路については、同様に、一部回路を変更して、バイポーラトランジスタに流れる電流とそれに並列接続された抵抗に流れる電流とに分解して駆動電流を設定することもできる。
【実施例31】
【0384】
図41は、図36に示した基準電圧回路の自己バイアス方式を一部変更して、バイポーラトランジスタに流れる電流とそれに並列接続された抵抗に流れる電流とに分解して駆動電流を設定する場合の回路を示している。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【0385】
今、バイポーラトランジスタQ2のトランジスタサイズが単位バイポーラトランジスタであるQ1のK倍であるとする。
【0386】
また、バイポーラトランジスタQ3のトランジスタサイズも単位バイポーラトランジスタQ3のK倍であるとする。
【0387】
さらに、抵抗R2とR4とR8が等しく、抵抗R3とR6が等しく、抵抗R1とR7とR9とR10とR11が等しいものとする。ここで、MOSトランジスタM5とM6でそれぞれ駆動されるバイポーラトランジスタQ5とバイポーラトランジスタQ6はいずれも逆相増幅器を構成し、2段で正相増幅器となっている。
【0388】
すなわち、この2段(正相)増幅器の出力がMOSトランジスタM7のゲートに接続され、MOSトランジスタM7のドレイン出力電流が抵抗R8を介して接地されており、抵抗R8の他方の端子が(単位)バイポーラトランジスタQ5のベースに接続されている。
【0389】
一方、MOSトランジスタM4とそれで駆動されるバイポーラトランジスタQ4は逆相増幅器を構成し、ダイオード接続されたMOSトランジスタM13とバイポーラトランジスタQ7は逆に正相増幅器を構成し、2段で逆相増幅器となっている。
【0390】
さらに、MOSトランジスタM2、M9とそれで駆動されるバイポーラトランジスタQ2は逆相増幅器を構成し、ダイオード接続されたMOSトランジスタM3とバイポーラトランジスタQ3は逆に正相増幅器を構成し、同様に、2段で逆相増幅器となっている。
【0391】
また、MOSトランジスタM7のゲートとMOSトランジスタM8のゲートとMOSトランジスタM9のゲートが互いに接続されており、電流比が1:1:1のカレントミラー回路を構成している。
【0392】
同様に、MOSトランジスタM3のゲートとMOSトランジスタM2のゲートが共通接続されて電流比が1:1のカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタM13のゲートとMOSトランジスタM1のゲートとMOSトランジスタM4のゲートが共通接続されて電流比が1:1:1のカレントミラー回路を構成している。
【0393】
本実施例の動作について説明する。始めに、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧(=ベース電圧)VAと(単位)バイポーラトランジスタQ5のコレクタ電圧が等しくなることを説明する。
【0394】
バイポーラトランジスタQ5と抵抗R9、バイポーラトランジスタQ6と抵抗R10、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11はいずれもバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1のコピーであり、抵抗R8は抵抗R2(=R4)のコピーである。
【0395】
また、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6はバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3のコピーであり、バイポーラトランジスタQ4と抵抗R7はバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1のコピーである。
【0396】
したがって、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流は、MOSトランジスタM13を介し、MOSトランジスタM13とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM1とMOSトランジスタM4とMOSトランジスタM5と MOSトランジスタM6とにコピーされる。
【0397】
したがって、バイポーラトランジスタQ5と抵抗R9と負荷トランジスタM5とバイポーラトランジスタQ6と抵抗R10と負荷トランジスタM6からなる2段(正相)増幅器の出力信号によりMOSトランジスタに流れる電流が制御され、接地された抵抗R8の端子電圧がバイポーラトランジスタQ5と抵抗R9に共通に流れる電流とバイポーラトランジスタQ6と抵抗R10に共通に流れる電流が等しくなるように、負帰還路(ループ)を介して制御されることになる。
【0398】
したがって、このMOSトランジスタM4とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM1を介して等しい電流がバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1および並列接続された抵抗R2に供給される。
【0399】
また、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流は、MOSトランジスタM3を介し、MOSトランジスタM3とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM2にコピーされる。
【0400】
したがって、このバイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流と等しい電流が、バイポーラトランジスタQ2と抵抗R3および並列接続された抵抗R4に供給される。
【0401】
ここで、MOSトランジスタM2、M9とバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3とそれに並列接続される抵抗R4は逆相増幅器を構成し、負帰還路を構成してバイポーラトランジスタQ3と抵抗R6とに共通に流れる電流が所定の値になるように動作する。また、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流はMOSトランジスタM13を介し、MOSトランジスタM13とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM1とMOSトランジスタM4とにコピーされる。したがって、このバイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流と等しい電流がバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1および並列接続された抵抗R2に供給される。
【0402】
ここで、MOSトランジスタM4とバイポーラトランジスタQ4と抵抗R7は、逆相増幅器を構成し、負帰還路を構成してバイポーラトランジスタQ7と抵抗R11とに共通に流れる電流が所定の値になるように動作する。
【0403】
このように、2重の負帰還路を構成することでMOSトランジスタM3とMOSトランジスタM1からなるカレントミラー回路に流れる電流値とMOSトランジスタM13とMOSトランジスタM1とMOSトランジスタM4からなるカレントミラー回路に流れる電流値を所定の値に設定している。
【0404】
一方、抵抗R8に流れる電流はMOSトランジスタM7を介して、MOSトランジスタM7とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM8と、MOSトランジスタM8にコピーされる。
【0405】
したがって、端子電圧VAを発生させる駆動電流I1はバイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流と抵抗R8に流れる電流の和になっており、端子電圧VBを発生させる駆動電流I2はバイポーラトランジスタQ4と抵抗R7に共通に流れる電流と抵抗R8に流れる電流の和になっていることがわかる。ここで、バイポーラトランジスタQ1のベースとバイポーラトランジスタQ2のベースが共通接続されてその端子電圧がVAとなっており、バイポーラトランジスタQ3のベースとバイポーラトランジスタQ4のベースが共通接続されてその端子電圧がVBとなっている。今、抵抗R2と抵抗R4と抵抗R8の値がいずれも等しく、かつ抵抗R2と抵抗R4と抵抗R8に流れる電流がいずれも等しくなっているから、端子電圧VAと端子電圧VBは等しくなる。
【0406】
このように、本実施例では、3つの負帰還路を構成することで、駆動電流I1とI2が所定の値に設定される。
【0407】
ここで、バイポーラトランジスタQ3(=Q2)のエミッタ面積比Kと抵抗R6(=R3)と抵抗R11(=R7(=R1))を設定(R6>R11(=R7))すれば、回路が起動するとVB(=VA)(>0)なる電圧値は一意的に定まる。
【0408】
今、I1=I2を目標に抵抗R6(=R3)と抵抗R11(=R7(=R1))を設定(R6>R11(=R7))したとする。
【0409】
この場合に、バイポーラトランジスタQ7(=Q4)に流れる電流(IC7)とバイポーラトランジスタQ3に流れる電流(IC3)とに若干の差異δが生じた(IC3=(1+δ)IC7)とすると、
ΔVBE=VBE4−VBE3
=VTln{K/(1+δ)}
=R6IC3−R7IC7
={R6(1+δ)−R7}IC7 (118)
と表され、電流比の差異は抵抗R6と抵抗R11(=R7)の値を再設定することで解消される。すなわち、抵抗R6と抵抗R11(=R7)の値を設定することで、駆動電流I1と駆動電流I2を等しくすることができる。
【0410】
いずれにしても、VA=VBに設定される。すなわち、図36の基準電圧回路と同じ動作条件が実現される。
【0411】
ここで、MOSトランジスタM10、M11を単位MOSトランジスタとして、MOSトランジスタM12を単位MOSトランジスタの2倍のトランジスタサイズとすると、MOSトランジスタM13とM10、MOSトランジスタM3とM11、MOSトランジスタM7とM12がそれぞれカレントミラー回路を形成して電流がコピーされ、
IOUT=I1+I2=2I2 (119)
となる。
【0412】
出力回路の電流−電圧変換回路を図2(c)に示す抵抗とすれば、
VREF=R5×IOUT (120)
と表され、図36に示した基準電圧回路と同様の結果が得られる。
<発明の他の実施の形態>
【0413】
以上、図30〜図41に示した基準電圧回路においては、カレントミラー回路を構成するバイポーラトランジスタQ1はダイオード接続されていた。バイポーラトランジスタQ1、Q2は非線形カレントミラー回路を構成するのであるから、従来の永田カレントミラー回路からアナロジしても良い。エミッタサイズ比は、1:K(K>1)に設定しても良い。
【0414】
図42〜図46にカレントミラー回路を構成するバイポーラトランジスタQ1、Q2のエミッタサイズ比を1:K(K>1)に設定した場合に得られる基準電圧回路を示す。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【実施例32】
【0415】
図42において、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2はエミッタサイズ比が1:K(K>1)であり、バイポーラトランジスタQ1のベース−コレクタ間に抵抗R0が挿入され、それぞれエミッタ抵抗R1、R3を介して接地され、バイポーラトランジスタQ1のコレクタと、バイポーラトランジスタQ2のベースが接続されて、非線形カレントミラー回路を構成している。
【0416】
また、バイポーラトランジスタQ1のベース−グランド(GND)間には、抵抗R2が挿入され、バイポーラトランジスタQ2のコレクタとバイポーラトランジスタQ3のベースの接続ノードとグランド(GND)間には、抵抗R4が挿入されている。ここでは、抵抗R2と抵抗R4が等しいものとする。
【0417】
図42に示したバイポーラトランジスタQ1、Q2、抵抗R0、エミッタ抵抗R1、R3からなる非線形カレントミラー回路の動作については、若干の説明が必要になる。
【0418】
この回路構成は最も単純な、非線形カレントミラー回路を代表するものであり、たとえば、R0=R3=0、R1≠0(、K<1)とおくと、従来から知られた、逆ワイドラーカレントミラー回路が得られる。
【0419】
また、R0=R1=0、R3≠0とおくと、従来から知られた、ワイドラーカレントミラー回路が得られる。あるいは、R1=R3=0、R0≠0とおくとピーク特性を有する従来から知られた永田カレントミラー回路が得られる。
【0420】
あるいは、R1=0、R0≠0、R3≠0とおくとピーク特性が弱められた永田−ワイドラーカレントミラー回路が得られる。
【0421】
さらに、R3=0、R0≠0、R1≠0とおくとR0<R1の場合には逆ワイドラーカレントミラー回路と同等の特性が得られ、R0>R1の場合には、永田カレントミラー回路と同等の特性が得られる。
【0422】
ここでは、エミッタ抵抗R1、R3をバイポーラトランジスタのバラツキ低減のために挿入している意図があり、R0≠0、R1≠0、R3≠0とし、R0>R1としてピーク特性を有し、かつ、ピーク値に達するまでの単調増加領域に限定して考えることとする。
【0423】
本実施例の動作について説明する。今、バイポーラトランジスタのベース電流が無視できるものと仮定し、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2に流れている電流が等しい時にバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧とバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電圧が等しくなっているとする。
【0424】
この時にバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)とバイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流(IC2)は、
IC(=IC1=IC2)=(VBE1−VBE2)/(R0+R3−R1)
=ΔVBE/(R0+R3−R1)
=VTln(K)/(R0+R3−R1) (121)
と表わされる。
【0425】
今、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)が増えて(121)式に示されたICの値よりも大きくなると、単調増加領域にあるからバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧、すなわち、バイポーラトランジスタQ2のベース電圧は当然高くなる。しかし、バイポーラトランジスタQ2のベース電圧は、VBE1とR1IC1の和電圧からR0IC1を減じた電圧値であり、また、VBE2とR3IC2の和電圧でもある。
【0426】
良く知られているように、コレクタ電流の増加によるVBEの増加は、対数圧縮されるために多少の増加に止まる。しかし、エミッタ抵抗での電圧降下の増大は、コレクタ電流の増加に比例し、コレクタ抵抗での電圧降下の増大もコレクタ電流の増加に比例する。
【0427】
ここで、R0>0であり、単調増加領域にあるから、エミッタ抵抗R3での電圧降下の増分(=抵抗R0での電圧降下の増分)は、エミッタ抵抗R1での電圧降下の増分よりも大きくなる。
【0428】
したがって、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ電流(IC2)は、バイポーラトランジスタQ1のコレクタ電流(IC1)よりも小さくなる方向に動作しようとする。しかし、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2の駆動電流が等しく設定されているのなら、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流が制限されるために、残りの電流は抵抗R4に流し込まれるために、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧が増加することになる。したがって、バイポーラトランジスタQ3のコレクタ電流(IC3)は増加することになる。
【0429】
このバイポーラトランジスタQ3は逆相増幅回路となっているために、バイポーラトランジスタQ3のコレクタ電圧は低下し、接続されるバイポーラトランジスタQ4のベース電圧は下がるためにバイポーラトランジスタQ4のコレクタ電流は減少することになる。
【0430】
このバイポーラトランジスタQ4のコレクタ電流(IC4)はカスコードトランジスタM10-M11の駆動電流となっている。
【0431】
一方、カスコードトランジスタM10-M11と電源VDD間には、抵抗R7が挿入されており、カスコードトランジスタM10-M11とカスコードトランジスタM6-M7、M8-9は、逆ワイドラーカレントミラー回路を構成している。したがって、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減ると、カスコードトランジスタM6-M7、M8-9に流れる電流は急激に減少する。
【0432】
ここで、カスコードトランジスタM6-M7とカスコードトランジスタM8-9には等しい電流が流れている。したがって、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流が減少するとバイポーラトランジスタQ1に流れる電流が低下し、抵抗R1に流れる電流も減るが、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流の減り方は小さく、抵抗R4に流れる電流を減少させ、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧を低下させ、バイポーラトランジスタQ3に流れる電流が減少し、この逆相増幅回路の機能により逆にバイポーラトランジスタQ4に流れる電流が減少し、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減少する方向に働き、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流も減少し、所定の電流値に落ち着くことになる。
【0433】
すなわち、バイポーラトランジスタQ1−Q3と自己バイアス回路を構成している逆ワイドラーカスコードカレントミラー回路との間で負帰還の電流ループを形成していることがわかる。
【0434】
この時に、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流I1は、
I1=IC+(VBE1+ICR1)/R2
=[VBE1+{(R1+R2)/(R0+R3−R1)}VTln(K)]/R2
=[VBE1+{(R1+R2)/(R0+R3−R1)}ΔVBE]/R2
=[VBE2+{( R0+R2+R3)/(R0+R3−R1)}ΔVBE]/R2 (122)
と表わされる。
【0435】
カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流とカスコードトランジスタM12-M13に流れる電流IOUTと等しいとすると、
VREF=R5IOUT
=(R5/R2)[VBE1+{(R1+R2)/( R0+R3−R1)}ΔVBE]
=(R5/R2)[VBE2+{( R0+R2+R3)/( R0+R3−R1)}ΔVBE] (123)
となる。
【0436】
ここで、VBE1はおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。また、VBE2もおよそ−1.9mV/℃の温度特性を持つ。ΔVBEは良く知られているように、この回路においても、正の温度特性を持ち、熱電圧VT(その温度特性は0.0853mV/℃)に比例する。
【0437】
すなわち、(122)式の[VBE1+{(R1+R2)/( R0+R3−R1)}ΔVBE]の項の温度特性は、負の温度特性を持つVBE1と、正の温度特性を持つΔVBEを抵抗比{(R2+R2)/(R0+R3−R1)} を設定して重み付け加算することで相殺することができる。
【0438】
したがって、VBE1は常温でおよそ620mVとなるものとすると、VBE2は常温で580mVとなり、[VBE1+{(R1+R2)/(R0+R3−R1)}ΔVBE]は、同様に、ほぼ1.2Vとなることがわかる。
【0439】
また、抵抗比(R5/R2)は温度特性を持たないから、出力される基準電圧VREFは、温度特性が相殺された電圧となる。ここで、抵抗比(R5/R2)は任意に設定でき、1<(R5/R2)に設定すればVREFは1.2Vよりも高い電圧となり、1>(R5/R2)に設定すればVREFは1.2Vよりも低い電圧となることは、従来技術の場合と同様である。特に、VREFが1.2Vよりも低い電圧となる1>(R5/R2)に設定する場合には、電源電圧を下げられる。例えば、VREF=0.8Vに設定すれば電源電圧が1.2V程度から動作させることができる。
【実施例33】
【0440】
同様に、図43〜図46のように回路を変化させることができる。いずれにおいても手計算による回路解析は困難である。本実施例の動作について説明する。
【0441】
図43〜図46においても、図42に示した場合と同様に、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流が増えるとバイポーラトランジスタQ1に流れる電流が増え、抵抗R0に流れる電流も増えるが、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2を含むカレントミラー回路が単調増加領域にあるから、バイポーラトランジスタQ2に流れる電流の増え方は小さく、抵抗R4に流れる電流を増加させ、バイポーラトランジスタQ3のベース電圧を高上させ、バイポーラトランジスタQ3に流れる電流が増加し、この逆相増幅回路の機能により逆にバイポーラトランジスタQ4に流れる電流が減少し、カスコードトランジスタM10-M11に流れる電流が減少する方向に働き、カスコードトランジスタM6-M7に流れる電流も減少し、所定の電流値に落ち着くことになる。
【0442】
すなわち、バイポーラトランジスタQ1−Q4と自己バイアス回路を構成している逆ワイドラーカスコードカレントミラー回路との間で負帰還の電流ループを形成していることがわかる。したがって、いずれの回路の場合にも、バイポーラトランジスタQ2のベース電圧とバイポーラトランジスタQ3のベース電圧が等しくなるように制御され、バイポーラトランジスタのVBEに比例する負の温度特性を持つ電流とバイポーラトランジスタQ1のVBEとバイポーラトランジスタQ2のVBEの差電圧ΔVBEに比例する正の温度特性を持つ電流とをR0〜R4の各抵抗値で重み付け加算して温度特性を相殺でき(、実際には抵抗の持つ温度特性の分だけ減じた)、得られた電流は抵抗を介して電圧に変換することで、温度特性を持たない任意の基準電圧を得ることができる。
<発明の他の実施の形態>
【0443】
図42に示した基準電圧回路については、同様に、一部回路を変更して、バイポーラトランジスタに流れる電流とそれに並列接続された抵抗に流れる電流とに分解して駆動電流を設定することもできる。
【実施例34】
【0444】
図46は、図42に示した基準電圧回路の自己バイアス方式を一部変更して、バイポーラトランジスタに流れる電流とそれに並列接続された抵抗に流れる電流とに分解して駆動電流を設定する場合の回路を示している。ただし、簡単にするためにスタートアップ回路は省略している。
【0445】
今、バイポーラトランジスタQ2のトランジスタサイズが単位バイポーラトランジスタであるQ1のK倍であるとする。また、バイポーラトランジスタQ3のトランジスタサイズも単位バイポーラトランジスタQ3のK倍であるとする。
【0446】
さらに、抵抗R2とR4とR8が等しく、抵抗R3とR6が等しく、抵抗R1とR7とR9とR10とR11が等しいものとする。ここで、MOSトランジスタM5とM6でそれぞれ駆動されるバイポーラトランジスタQ5とバイポーラトランジスタQ6はいずれも逆相増幅器を構成し、2段で正相増幅器となっている。
【0447】
すなわち、この2段(正相)増幅器の出力がMOSトランジスタM7のゲートに接続され、MOSトランジスタM7のドレイン出力電流が抵抗R8を介して接地されており、抵抗R8の他方の端子が(単位)バイポーラトランジスタQ5のベースに接続されている。
【0448】
一方、MOSトランジスタM4とそれで駆動されるバイポーラトランジスタQ4は逆相増幅器を構成し、ダイオード接続されたMOSトランジスタM13とバイポーラトランジスタQ7は逆に正相増幅器を構成し、2段で逆相増幅器となっている。
【0449】
さらに、単調増加領域にあるから、MOSトランジスタM2、M9とそれで駆動されるバイポーラトランジスタQ2は逆相増幅器を構成し、ダイオード接続されたMOSトランジスタM3とバイポーラトランジスタQ3は逆に正相増幅器を構成し、同様に、2段で逆相増幅器となっている。
【0450】
また、MOSトランジスタM7のゲートとMOSトランジスタM8のゲートとMOSトランジスタM9のゲートが互いに接続されており、電流比が1:1:1のカレントミラー回路を構成している。
【0451】
同様に、MOSトランジスタM1のゲートとMOSトランジスタM2のゲートが共通接続されて電流比が1:1のカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタM13のゲートとMOSトランジスタM2のゲートとMOSトランジスタM4のゲートが共通接続されて電流比が1:1:1のカレントミラー回路を構成している。
【0452】
本実施例の動作について説明する。始めに、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタQ1のコレクタ電圧(=ベース電圧)VAと(単位)バイポーラトランジスタQ5のコレクタ電圧が等しくなることを説明する。
【0453】
バイポーラトランジスタQ5と抵抗R9、バイポーラトランジスタQ6と抵抗R10、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11は、いずれも、バイポーラトランジスタQ1と抵抗R1のコピーであり、抵抗R8は抵抗R2(=R4)のコピーである。また、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6はバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3のコピーであり、バイポーラトランジスタQ4と抵抗R7はバイポーラトランジスタQ1と抵抗R1のコピーである。
【0454】
したがって、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流は、MOSトランジスタM13を介し、MOSトランジスタM13とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM1とMOSトランジスタM4とMOSトランジスタM5とMOSトランジスタM6とにコピーされる。
【0455】
したがって、バイポーラトランジスタQ5と抵抗R9と負荷トランジスタM5とバイポーラトランジスタQ6と抵抗R10と負荷トランジスタM6からなる2段(正相)増幅器の出力信号によりMOSトランジスタに流れる電流が制御され、接地された抵抗R8の端子電圧がバイポーラトランジスタQ5と抵抗R9に共通に流れる電流とバイポーラトランジスタQ6と抵抗R10に共通に流れる電流が等しくなるように負帰還路(ループ)を介して制御されることになる。
【0456】
したがって、このMOSトランジスタM4とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM2を介して等しい電流がバイポーラトランジスタQ2と抵抗R3および並列接続された抵抗R4に供給される。
【0457】
また、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流はMOSトランジスタM3を介し、MOSトランジスタM3とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM1にコピーされる。
【0458】
したがって、このバイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流と等しい電流がバイポーラトランジスタQ1と抵抗R0とR1および並列接続された抵抗R2に供給される。
【0459】
ここで、バイポーラトランジスタQ1とバイポーラトランジスタQ2を含むカレントミラー回路は単調増加領域で動作しており、MOSトランジスタM2、M9と、バイポーラトランジスタQ2と、抵抗R3と、それに並列接続される抵抗R4とは、逆相増幅器を構成し、負帰還路を構成して、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6とに共通に流れる電流が所定の値になるように動作する。
【0460】
また、バイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流は、MOSトランジスタM13を介し、MOSトランジスタM13と、カレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM2と、MOSトランジスタM4とにコピーされる。
【0461】
したがって、このバイポーラトランジスタQ7と抵抗R11に共通に流れる電流と等しい電流が、バイポーラトランジスタQ2と抵抗R3および並列接続された抵抗R4に供給される。
【0462】
ここで、MOSトランジスタM4とバイポーラトランジスタQ4と抵抗R7は、逆相増幅器を構成し、負帰還路を構成してバイポーラトランジスタQ7と抵抗R11とに共通に流れる電流が所定の値になるように動作する。
【0463】
このように、2重の負帰還路を構成することで、MOSトランジスタM3とMOSトランジスタM1からなるカレントミラー回路に流れる電流値と、MOSトランジスタM13とMOSトランジスタM2とMOSトランジスタM4からなるカレントミラー回路に流れる電流値を、所定の値に設定している。
【0464】
一方、抵抗R8に流れる電流はMOSトランジスタM7を介して、MOSトランジスタM7とカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタM8とMOSトランジスタM9にコピーされる。したがって、端子電圧VAを発生させる駆動電流I1は、バイポーラトランジスタQ3と抵抗R6に共通に流れる電流と、抵抗R8に流れる電流との和になっており、端子電圧VBを発生させる駆動電流I2は、バイポーラトランジスタQ4と抵抗R7に共通に流れる電流と、抵抗R8に流れる電流との和になっていることがわかる。
【0465】
ここで、バイポーラトランジスタQ1のベースと抵抗R2が共通接続されてその端子電圧がVAとなっており、バイポーラトランジスタQ3のベースとバイポーラトランジスタQ4のベースが共通接続されてその端子電圧がVBとなっている。
【0466】
今、抵抗R2と抵抗R4と抵抗R8の値がいずれも等しく、かつ抵抗R2と抵抗R4と抵抗R8に流れる電流がいずれも等しくなっているから、端子電圧VAと端子電圧VBは等しくなる。このように、本発明では3つの負帰還路を構成することで、駆動電流I1とI2が所定の値に設定される。
【0467】
ここで、バイポーラトランジスタQ3(=Q2)のエミッタ面積比Kと、抵抗R6(=R3)と抵抗R7(=R1)を設定(R6>R7)すれば、回路が起動すると、VB(=VA)(>0)なる電圧値は、一意的に定まる。
【0468】
今、I1=I2を目標に、抵抗R6(=R3)と抵抗R0、R7(=R1)を設定(R0>R1)したとする。この場合に、バイポーラトランジスタQ7(=Q4)に流れる電流(IC4)とバイポーラトランジスタQ3に流れる電流(IC3)とに若干の差異δが生じた(IC3=(1+δ)IC7)とすると、
ΔVBE=VBE4−VBE3
=VTln{K/(1+δ)}
=R6IC3−R7IC7
={R6(1+δ)−R11}IC7 (124)
と表され、電流比の差異は、抵抗R6と抵抗R11(=R7)の値を再設定することで解消される。
【0469】
すなわち、抵抗R6と抵抗R11(=R7)の値を設定することで、駆動電流I1と駆動電流I2を等しくすることができる。いずれにしても、VA=VBに設定される。すなわち、図42の基準電圧回路と同じ動作条件が実現される。
【0470】
ここで、MOSトランジスタM10、M11を単位MOSトランジスタとして、MOSトランジスタM12を単位MOSトランジスタの2倍のトランジスタサイズとすると、MOSトランジスタM13とM10、MOSトランジスタM3とM11、MOSトランジスタM7とM12がそれぞれカレントミラー回路を形成して電流がコピーされ、
IOUT=I1+I2=2I2 (125)
となる。
【0471】
出力回路の電流−電圧変換回路を図2(c)に示す抵抗とすれば、
VREF=R5×IOUT (126)
と表され、図42に示した基準電圧回路と同様の結果が得られる。
【0472】
上述した図30〜図35に示した基準電圧回路においては、出力の電流−電圧変換回路を簡単のために抵抗として簡略化して動作説明をした。しかし、これまでに説明した図2〜図29に示した基準電圧回路の場合と同様に、出力の電流−電圧変換回路は図30、図31、図34、図35のそれぞれの回路の第1の電流−電圧変換回路のいずれを用いても良いことは言うまでもない。ただし、この場合にもトランジスタを単位トランジスタにして出力回路のチップ上に占める面積を多少減らすことができることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0473】
本発明の活用例として、LSI上に集積される各種基準電圧回路が挙げられる。特に、最近の集積回路プロセスの超々微細化の進展に伴い、LSIへの供給電源電圧が低下してきており、電源電圧が1V前後でも動作する温度変動がない安定した基準電圧回路が必要になってきている。本発明は、そうした要望に答えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0474】
【図1】従来の基準電流回路の構成を示す図である。
【図2】本発明(請求項1〜8)に適用する電流−電圧変換回路の構成を示す図である。
【図3】本発明(請求項1、2、4)の実施例の回路構成を示す図である。
【図4】本発明(請求項1、2、4)の第一の実施例の回路構成を示す図である。
【図5】本発明(請求項1、2、4)の第二の実施例の回路構成を示す図である。
【図6】本発明(請求項1、2、4)の第三の実施例の回路構成を示す図である。
【図7】本発明(請求項5)の第一の実施例の回路構成を示す図である。
【図8】本発明(請求項5)の第二の実施例の回路構成を示す図である。
【図9】本発明(請求項5)の第三の実施例の回路構成を示す図である。
【図10】本発明(請求項1、2および4)の第ニの実施例の回路構成を示す図である。
【図11】本発明(請求項1、2、3)の第三の実施例の回路構成を示す図である。
【図12】本発明(請求項1、2、4)の第四の実施例の回路構成を示す図である。
【図13】本発明(請求項1、2、4)の第五の実施例の回路構成を示す図である。
【図14】本発明(請求項1、2、3)の第六の実施例の回路構成を示す図である。
【図15】本発明(請求項1、2、4)の第七の実施例の回路構成を示す図である。
【図16】本発明(請求項1、2、4)の第八の実施例の回路構成を示す図である。
【図17】本発明(請求項3)の実施例の回路構成を示す図である。
【図18】本発明(請求項3)の第一の実施例の回路構成を示す図である。
【図19】本発明(請求項3)の第二の実施例の回路構成を示す図である。
【図20】本発明(請求項3)の第三の実施例の回路構成を示す図である。
【図21】本発明(請求項5)の第四の実施例の回路構成を示す図である。
【図22】本発明(請求項5)の第五の実施例の回路構成を示す図である。
【図23】本発明(請求項5)の第六の実施例の回路構成を示す図である。
【図24】本発明(請求項6)の実施例の回路構成を示す図である。
【図25】本発明(請求項6)の他の実施例の回路構成を示す図である。
【図26】本発明(請求項7)の実施例の回路構成を示す図である。
【図27】本発明(請求項7)の他の実施例の回路構成を示す図である。
【図28】本発明(請求項8)の実施例の回路構成を示す図である。
【図29】本発明(請求項8)の他の実施例の回路構成を示す図である。
【図30】本発明(請求項9)の第一の実施例の回路構成を示す図である。
【図31】本発明(請求項9)の第ニの実施例の回路構成を示す図である。
【図32】本発明(請求項9)の第三の実施例の回路構成を示す図である。
【図33】本発明(請求項9)の第四の実施例の回路構成を示す図である。
【図34】本発明(請求項9)の第五の実施例の他の回路構成を示す図である。
【図35】本発明(請求項10)の第一の実施例の回路構成を示す図である。
【図36】本発明(請求項9)の第五の実施例の回路構成を示す図である。
【図37】本発明(請求項9)の第六の実施例の回路構成を示す図である。
【図38】本発明(請求項9)の第七の実施例の回路構成を示す図である。
【図39】本発明(請求項9)の第八の実施例の回路構成を示す図である。
【図40】本発明(請求項9)の第九の実施例の回路構成を示す図である。
【図41】本発明(請求項10)の第二の実施例の回路構成を示す図である。
【図42】本発明(請求項9)の第十の実施例の回路構成を示す図である。
【図43】本発明(請求項9)の第十一の実施例の回路構成を示す図である。
【図44】本発明(請求項9)の第十二の実施例の回路構成を示す図である。
【図45】本発明(請求項9)の第十三の実施例の回路構成を示す図である。
【図46】本発明(請求項10)の第三の実施例の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0475】
I-V1 第1の電流−電圧変換回路
I-V2 第2の電流−電圧変換回路
I-V3 第3の電流−電圧変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する制御手段と、
前記第1の電流−電圧変換回路又は前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路と、
前記第1のカレントミラー回路からの出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
を備えている基準電圧回路において、
前記第1、第2、及び第3の電流−電圧変換回路は、
第1のダイオードと第1の抵抗とが直列接続されてなる回路と、該回路に並列に接続されてなる第2の抵抗を含むか、又は、
第1のダイオードと第1の抵抗が並列接続されてなる回路と、該回路に直列に接続されてなる第2の抵抗を含む、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項2】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する制御手段と、
前記第1の電流−電圧変換回路又は前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路と、
前記第1のカレントミラー回路からの出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
を備えている基準電圧回路において、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路は、
第1のダイオードと第1の抵抗とが直列接続されてなる回路と、該回路に並列に接続されてなる第2の抵抗を含むか、又は、
第1のダイオードと第1の抵抗が並列接続されてなる回路と、該回路に直列に接続されてなる第2の抵抗を含み、
前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗素子からなる、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項3】
前記第1の電流−電圧変換回路には、第3のダイオードが並列接続され、
前記第2の電流−電圧変換回路には、第4のダイオードが並列接続されてなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基準電圧回路。
【請求項4】
前記制御手段が、差動増幅器を含む、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項5】
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路が、ともに、
第1のダイオードと第1の抵抗が直列接続されてなる回路と、該回路に並列に接続されてなる第2の抵抗を含み、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路の前記第2の抵抗の中間電位が、前記差動増幅器の入力端子にそれぞれ供給される、ことを特徴とする請求項4に記載の基準電圧回路。
【請求項6】
前記制御手段が、前記第1のカレントミラー回路を含むカレントミラー回路により自己バイアスされた第2のカレントミラー回路を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項7】
前記制御手段が、前記第1の電流−電圧変換回路に供給される電流と前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流とを第2のカレントミラー回路で比較し、前記第2のカレントミラー回路の出力で、第3のカレントミラー回路をバイアスすることで、前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項8】
前記制御手段が、前記第1のカレントミラー回路を含む逆ワイドラーカレントミラー回路により、自己バイアスされた第2のカレントミラー回路を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項9】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1の電流−電圧変換回路と前記第2の電流−電圧変換回路の電圧が等しくなるように制御する制御手段と、
前記第1の電流−電圧変換回路又は前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路と、
前記第1のカレントミラー回路からの出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
を備えている基準電圧回路において、
前記第1及び第3の電流−電圧変換回路は、ダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタを備え、
前記第1のバイポーラトランジスタは、第1のエミッタ抵抗を介して接地され、
前記第1のバイポーラトランジスタのベースは第2の抵抗が並列接続されて直接接地されるか、あるいは前記第1のエミッタ抵抗を介して接地され、
前記第2の電流−電圧変換回路は、第2及び第3のバイポーラトランジスタを備え、
前記第2のバイポーラトランジスタは第2のエミッタ抵抗を介して接地され、ベースは前記第1の電流−電圧変換回路の出力端子に接続され、コレクタは前記第3のバイポーラトランジスタのベースが接続されるとともに、第4の抵抗が並列接続されて直接接地されるか、あるいは、前記第2のエミッタ抵抗を介して接地され、
前記第3のバイポーラトランジスタのコレクタは、前記第1のカレントミラー回路を駆動する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項10】
ダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタが第1のエミッタ抵抗を介して接地され、さらにベースには、第2の抵抗が並列接続されて直接接地されてなる第1の電流−電圧変換回路と、
第2のバイポーラトランジスタが第2のエミッタ抵抗を介して接地され、ベースは前記第1の電流−電圧変換回路の出力端子に接続され、コレクタには、第3及び第4のバイポーラトランジスタのベースが接続されるとともに、第4の抵抗が並列接続されて直接接地されてなる第2の電流−電圧変換回路と、
を有し、
前記第3及び第4のバイポーラトランジスタは、それぞれ、前記第1及び第2のバイポーラトランジスタとトランジスタサイズが等しく、それぞれ、第1及び第2のエミッタ抵抗と等しい第3及び第4のエミッタ抵抗を介して接地され、
前記第2及び第4の抵抗と等しい第7の抵抗の一の端子が接地されて、前記第3又は第4のバイポーラトランジスタと等しい第5のエミッタ抵抗を介して接地された第5のバイポーラトランジスタをバイアスし、
前記第5のバイポーラトランジスタに流れる電流が、前記第3又は第4のバイポーラトランジスタと等しくする手段と、
前記第3及び第4のバイポーラトランジスタに流れる電流と、前記第7の抵抗に流れる電流の和電流が、前記第1の電流−電圧変換回路及び前記第2のバイポーラトランジスタと前記第4の抵抗を駆動する手段を有し、
前記第1又は第2のバイポーラトランジスタに流れる電流と、前記第2又は第4の抵抗に流れる電流の和電流に比例する電流で、前記第3の電流−電圧変換回路を駆動する、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項11】
前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗素子からなる、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の基準電圧回路。
【請求項12】
前記ダイオードが、ダイオード接続されたバイポーラトランジスタよりなる、ことを特徴とする請求項1、3、5のいずれか一に記載の基準電圧回路。
【請求項13】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1の電流−電圧変換回路又は前記第2の電流−電圧変換回路に供給される電流値に比例する電流を出力する第1のカレントミラー回路と、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路の出力と前記第1のカレントミラー回路との間に接続された第2のカレントミラー回路と、
前記第1のカレントミラー回路の出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
を備え、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路は、
第1のダイオードと第1の抵抗が直列接続されてなる回路と、該回路に並列接続されてなる第2の抵抗を含むか、又は、
第1のダイオードと第1の抵抗が並列接続されてなる回路と、該回路に直列接続されてなる第2の抵抗を含み、
前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗素子よりなり、
前記第2のカレントミラー回路が前記第1のカレントミラー回路によって自己バイアスされることで、前記第1の電流−電圧変換回路に印加される電圧と前記第2の電流−電圧変換回路に印加される電圧とが等しくなるように制御される、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項14】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路にそれぞれ供給される電流値に比例する電流をそれぞれ出力する第1及び第2のカレントミラー回路と、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路の出力と前記第1及び第2のカレントミラー回路の入力との間にそれぞれ接続された第1及び第2のトランジスタと、
前記第1及び第2のカレントミラー回路の出力を受け電流比較する第3のカレントミラー回路と、
前記第1のカレントミラー回路の出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
を備え、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路は、
第1のダイオードと第1の抵抗が直列接続されてなる回路と、該回路に並列接続されてなる第2の抵抗を含むか、又は、
第1のダイオードと第1の抵抗が並列接続されてなる回路と、該回路に直列接続されてなる第2の抵抗を含み、
前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗素子よりなり、
前記第3のカレントミラー回路の出力は前記第1及び第2のトランジスタの共通接続された制御端子に接続され、前記第3のカレントミラー回路には、前記第1の電流−電圧変換回路と同一構成の第4及び第5の電流−電圧変換回路が接続されている、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項15】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
第1、第2の出力を有する第1のカレントミラー回路と、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路と前記第1のカレントミラー回路の入力と第1の出力との間にそれぞれ接続された第1及び第2のトランジスタと、
前記第1のカレントミラー回路の第2の出力からの出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
前記第1及び第2のトランジスタの制御端子に制御端子が共通接続され、ダイオード接続され、前記第1の電流−電圧変換回路と同一の構成の第4の電流−電圧変換回路に接続され、前記第1及び第2のトランジスタとカレントミラー回路を構成する第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタの出力と電源間に接続され、制御端子が前記第1のカレントミラー回路の第1の出力に接続された第4のトランジスタと、
を備え、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路は、
第1のダイオードと第1の抵抗が直列接続されてなる回路と、該回路に並列接続されてなる第2の抵抗を含むか、又は、
第1のダイオードと第1の抵抗が並列接続されてなる回路と、該回路に直列接続されてなる第2の抵抗を含み、
前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗素子よりなる、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項16】
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路にそれぞれ並列に接続されたダイオードを有する、ことを特徴とする請求項13記載の基準電圧回路。
【請求項17】
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路、前記第4及び第5の電流−電圧変換回路にそれぞれ並列に接続されたダイオードを有する、ことを特徴とする請求項14記載の基準電圧回路。
【請求項18】
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路、前記第4の電流−電圧変換回路にそれぞれ並列に接続されたダイオードを有する、ことを特徴とする請求項15記載の基準電圧回路。
【請求項19】
電流をそれぞれ入力して電圧にそれぞれ変換する第1及び第2の電流−電圧変換回路と、
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路と電源間にそれぞれ複数段縦積み接続されてなるトランジスタを含むカスコード型のカレントミラー回路と、
前記カレントミラー回路の出力電流を受け電圧に変換して出力する第3の電流−電圧変換回路と、
を備え、
前記第1及び2の電流−電圧変換回路に印加される電圧が等しくなるように、前記第1及び第2の電流−電圧変換回路にそれぞれ接続される前記トランジスタがバイアスされる、ことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項20】
前記第1及び第2の電流−電圧変換回路は、
第1のダイオードと第1の抵抗が直列接続されてなる回路と、該回路に並列接続されてなる第2の抵抗を含むか、又は、
第1のダイオードと第1の抵抗が並列接続されてなる回路と、該回路に直列接続されてなる第2の抵抗を含み、
前記第3の電流−電圧変換回路は抵抗素子よりなる、ことを特徴とする請求項17記載の基準電圧回路。
【請求項21】
前記第1の電流−電圧変換回路は、ダイオード接続された第1のバイポーラトランジスタを備え、前記第1のバイポーラトランジスタは、第1のエミッタ抵抗を介して接地され、前記第1のバイポーラトランジスタのベースは第2の抵抗が並列接続されて直接接地されるか、あるいは前記第1のエミッタ抵抗を介して接地され、
前記第2の電流−電圧変換回路は、第2、第3のバイポーラトランジスタを備え、前記第2のバイポーラトランジスタは第2のエミッタ抵抗を介して接地され、ベースは前記第1の電流−電圧変換回路の出力端子に接続され、コレクタは前記第3のバイポーラトランジスタのベースが接続されるとともに、第4の抵抗が並列接続されて直接接地されるか、あるいは、前記第2のエミッタ抵抗を介して接地され、前記第3のバイポーラトランジスタのコレクタは、前記カレントミラー回路の入力に接続され、
前記第3の電流−電圧変換回路は、抵抗素子よりなる、ことを特徴とする請求項17記載の基準電圧回路。
【請求項22】
カスコード型のカレントミラー回路が、逆ワイドラー型のカスコードカレントミラー回路を備え、前記第1乃至第3のバイポーラトランジスタと、自己バイアス回路を構成する前記逆ワイドラー型のカスコードカレントミラー回路との間で負帰還電流ループを構成している、ことを特徴とする請求項21記載の基準電圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2006−209212(P2006−209212A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16902(P2005−16902)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】