説明

基礎杭施工装置

【課題】礫や玉石等の硬質固形物を含む地盤に対して中掘工法を行う基礎杭施工装置を提供する。
【解決手段】基礎杭施工装置1を,円筒状のケーシング10の底部開口を被蓋する底板20と,杭打ち機によって昇降及び回転されるシャフトの下端に連結可能と成すジョイント30を備え,前記底板20に,排土をケーシング10内に導入する開口21を形成すると共に,この開口21の縁部より前方側に向かって斜め下向きに底部掘削爪24a〜24gを突設し,さらに,前記開口21をケーシング10の内部側より覆うと共に,洗浄水と共に導入される排土の導入圧力によって前記開口21を開く蓋体25を設ける。この装置1をオーガシャフトの下端に取り付け中堀工法による掘削を行うことで,排土中の硬質固形物をケーシング10内に回収でき,これらが杭の中空部内に導入され生じる目詰まり等を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,杭打ち機,オーガマシン等の掘削機等基礎機械によって昇降,回転されるシャフト,例えばオーガシャフトの下端に取り付けて,回転しながら中空杭内において地盤土を掘削・回収・除去し,かつ,中空杭内周面を洗浄する基礎杭施工装置に関し,例えば中空の既製杭による杭基礎の施工方法において,あらかじめ,地盤をオーガースクリュ等で所定の深さまで掘削し,既製の中空杭を挿入してハンマにより打撃を加えて施工する工法(プレボーリング工法)や,既製の中空杭の中空部を掘削しながら杭自重,圧入または打撃を加え,中空杭を沈設させる工法(中堀工法)などにより沈設された中空杭の中空部に残留する地盤土砂,瓦礫等(地盤土及びその構成物を含む,以下,「排土」という)の除去及び中空杭内周面の洗浄を行い,あるいは,前記中堀工法に適応し,地盤を掘削・除去すると共に,沈設する中空杭内周面を洗浄することの出来る基礎杭施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋,集合住宅,その他の構造物の基礎工法において,支持層の深さにまで達する基礎杭を設け,この基礎杭の杭頭上に構造物の基礎を形成する杭基礎工法が,例えば軟弱地盤,液状化地盤等に構造物を構築する際に広く用いられている。
【0003】
このような杭基礎における基礎杭の施工方法の一例として,中堀工法では,鋼管杭又は中空PC杭等の杭の中空部に,先端にオーガヘッドを備えたオーガシャフトを挿入した後,この中空杭を建て込むと共に,オーガマシン等の掘削機によって前記オーガシャフトを回転しながら下降させて杭の中空部を介して地盤の掘削と排土回収を行いながら杭を沈設し,このようにして沈設した杭の下端を,自重により,又は圧入や打撃を加えることにより支持層内に挿入することで支持層に強固に杭を支持させる工法であり,この工法によれば,打ち込み工法等に比較して騒音の発生が格段に少なく,杭をケーシングとして使用するために杭の鉛直性が良く,しかも掘削と同時に杭の沈設が行われるために,杭孔を掘削した後に杭を建て込むプレボーリング工法に比較して工数を減少できる等の利点がある。
【0004】
ところで,下端にオーガヘッドを取り付ける前述のオーガシャフトは,掘削により生じた土砂等を排土として杭孔外に排出する構成として,図11に示すようにロッド51の外周に螺旋翼52を備えたものがあり,このオーガシャフト50を回転すると,オーガヘッド53が掘削した土砂等排土は,この螺旋翼によって洗浄水と共にロッドに沿って上方に搬送されるように構成されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
そして,上記杭内の洗浄は,鋼管ぐい8とPCぐい9の内部に洗浄水の噴出ノズル11を降ろし,そしてこの噴出ノズル11から洗浄水を水平方向に高圧ジェットで噴射して鋼管ぐい8とPCぐい9の内側全面を洗浄する。内部に溜まる洗浄水はポンプを用いて外部に排出する(特許文献3参照)。
【0006】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開2001−262966号公報
【特許文献2】特開平11−107662号公報
【特許文献3】特公平6−78614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように,外周に螺旋翼52を備えたオーガシャフト50を使用して掘削を行う場合,オーガヘッド53によって掘削された土砂は螺旋翼52によってロッド51に沿ってその長さ方向に搬送される。そのため,外周に螺旋翼52を備えたオーガシャフト50を使用して前述の中掘工法を行う場合,オーガシャフト50は杭60の中空部61内に挿入・回転されていることから,螺旋翼52によって搬送された排土は,杭60の中空部61内を上方に向かって移動して,やがて杭頭部より排出される。
【0008】
このように,アースオーガを使用した中堀工法にあっては,排土の搬送を杭60の中空部61を利用して行っているために,使用する杭60の中空部61の径にもよるが,一例として直径乃至は長辺が100mmを越える比較的大きな礫が排土中に混入したり,又は多量の玉石が排土中に混在する等,硬質固形物が排土と共に混在する場合には,杭の中空部内でこのような硬質固形物が目詰まりする等して排土の搬送を行うことができなくなる。
【0009】
また,コンクリート杭を使用する場合では,この硬質固形物によって杭体を破損する場合がある。
【0010】
また,特許文献3による工法では,杭内の洗浄には,オーガの先端又は別途噴射ノズルから洗浄水を噴射するものであり,排土の除去あるいは杭内掘削とは別工程として行われることになり,機器の交換ないし工程の増加となり,作業も繁雑であった。
【0011】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,多様な杭基礎工法により打設された中空杭内から残土を除去すると共に,杭内周壁の洗浄を行い,また,中堀工法に対応して,杭内の排土掘削・除去と共に,杭内周壁の洗浄を行うことが出来る基礎杭施工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために,本発明の基礎杭施工装置1は,オーガマシン等の杭打ち機ないし掘削機によって昇降及び回転するシャフト,例えばオーガシャフトの下端に連結されるケーシング10を備え,
前記ケーシングは,上下端を開口した円筒状を成し,前記ケーシング10の底部開口を被蓋する略円盤形の底板20と,前記ケーシング10の回転中心に設けられて前記シャフトを接合する接合具(実施例では「ジョイント」)30と,前記シャフト内に設けられ給水路を介して導入された洗浄水を中空杭内に噴射する噴射孔11を備え,
前記底板20に開口を形成して排土導入口21とし,前記排土導入口21の掘削回転方向後方側の縁部より前方側に向かって斜め下向きに底部掘削爪24a〜24gを突設すると共に,
前記排土導入口21を前記ケーシング10の内部側より蓋板25で覆い,該蓋板25の掘削回転方向における前方側の端部を前記底板20に揺動可能にヒンジ26止めしたことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
前記構成の基礎杭施工装置1において,前記底板20を,前記ケーシング10の下端部開口縁に揺動可能にヒンジ22止めすると共に,前記ケーシング10の下端部開口を被蓋した位置において前記底板20を係止する係止部材(実施例において,係止孔23と係止片42)を設けた構成とすることができる(請求項2)。
【0014】
さらに,前記ケーシング10の下端縁より側面に至る切欠15を形成すると共に,該切欠15の掘削回転方向後方側の縁部から前方側に向かって斜め外周方向に突出する側部掘削爪24hを突設した構成としても良い(請求項3)。
【0015】
また,前記ケーシング10の外周には,外周方向に突出するワイヤブラシ45を植設することもできる(請求項4)。
【0016】
なお,前記噴射孔11は,これを前記ケーシング10の肉厚を貫通して設けることができ,この噴射孔11に前記シャフトに形成された洗浄水の給水路12介して洗浄水を導入する構成とすることができる(請求項5)。
【0017】
前記噴射孔11への給水路12は,前記ケーシング10の内周側に前記噴射孔11に対峙する位置に洗浄水の加圧流路121を形成すると共に,ケーシング10の上部中央に設けたジョイント30内に形成された洗浄水の導入路31に連通する中央管路122と,該中央管路122より放射状に分岐して前記各加圧流路121に連通する分岐管路123を設けた構成とすることが出来る(請求項6)。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明の構成より,本発明の基礎杭施工装置1によれば,プレボーリング工法,中堀工法など多様な杭基礎工法により沈設された中空杭の中空部に残留する排土の除去及び中空杭内周面の洗浄を同時に行うことができる。
【0019】
また,この基礎杭施工装置1を例えば中空に形成された既製杭の中空部を介して地盤を掘削しながら前記既製杭を沈設する中堀工法に適応した場合であっても,比較的大きな礫や玉石等の硬質固形物等排土は基礎杭施工装置1のケーシング10内に形成された空間に回収され,杭の中空部内に搬送されないことから,中空杭の中空部内にこのような礫や玉石等の硬質固形物が導入されることにより生じる目詰まりを防止することができ,その結果,施工現場における地盤の状態如何に拘わらず中堀工法による杭基礎の施工を可能と成す基礎杭施工装置1を提供できた。もっとも,本発明の基礎杭施工装置1は,前記中堀工法に限定されず,他の杭基礎施工法における杭内中空部の掘削,残土除去及び杭内周面の洗浄に使用可能である。
【0020】
前述の底板20と,ケーシング10の下端開口縁とをヒンジ22により連結すると共に,底板20を前記開口部を被蓋した状態で係止する手段(係止孔23及び係止片42)を設けた構成にあっては,この底板20の係止を解除することによりケーシング10の下端開口を容易に開放することができ,これによりケーシング10内に回収された排土や硬質固形物の排出が容易である。
【0021】
さらに,ケーシング10の下部側面に切欠15を設けると共に,この切欠15の形成位置に対応して側部掘削爪24hを設けた構成では,この部分を介してケーシング10の外周部分の掘削をも行うことができると共に,掘削により生じた排土等がこの切欠15を介してケーシング10内に導入されることから,切削能力及び排土の回収性を向上させることができた。
【0022】
ケーシング10の外周にワイヤブラシ45を植設した構成にあっては,基礎杭施工装置1のケーシング10が中空杭の中空部内を昇降する際に,この中空杭の内周面を容易に洗浄することができ,これによりその後に中空部内に打設されるセメントミルクや生コンクリート,高強度モルタル等のモルタルとの接着性を向上させることができた。
【0023】
なお,ケーシング10の肉厚を貫通して噴射孔11を設けることにより,噴射孔11の形成が容易であると共に,この噴射孔11に洗浄水を導入する給水路を設けることで,基礎杭施工装置1のケーシング10外周に容易に洗浄水を噴射し,杭内周面を洗浄することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に,本発明の実施形態について添付図面を参照しながら以下説明する。
【0025】
装置構成
全体構成
図中,符号1は,本発明の基礎杭施工装置であり,この基礎杭施工装置1は,円筒状のケーシング10と,このケーシング10の底部を覆う底板20を備えると共に,該ケーシング10の上部開口の中心部分に,オーガマシン等によって昇降及び回転されるシャフト,例えばオーガシャフトの下端に連結するための接合具であるジョイント30が設けられている。
【0026】
この基礎杭施工装置1を前述した中掘工法による杭内中空部の掘削,残土除去及び杭内周面の洗浄に使用する場合には,基礎杭施工装置1のケーシング10を杭の中空部に挿入することができるように,これを全体として沈設する杭の中空部内に挿入可能なサイズに形成する。
【0027】
一例として,本実施例にあっては,円筒状である前述のケーシング10の直径を780mm,長さを1000mmとしている。
【0028】
底板
ケーシング10の底部開口を覆う前述の底板20は,前記ケーシング10の外径と略同一径に形成された円盤状を成し,図4〜6に示すように外周縁側から中央に向かって幅を狭める略扇形の2つの切欠状の開口を略対称の位置に設けて排土導入口21としている。
【0029】
底板20は,図2に示すように,その中央を下方に向かって僅かに膨出した逆円錐状を成すと共に,図4〜6に示すようにその円周上の一部が,前記円筒状ケーシング10の下端開口縁にヒンジ22を介して取り付けられており,このヒンジ22を支点として揺動して,前記円筒状ケーシング10の下端開口を開閉可能に構成されている。
【0030】
この底板20には,その肉厚を貫通して形成された略長方形の係止孔23が設けられていると共に,底板20を,前記ヒンジ22を支点としてケーシング10の底部開口を塞ぐ方向に揺動させると,円筒状ケーシング10に設けられた後述するリンク杆41の下端に取り付けられた同形状の係止片42が,前記係止孔23内に上方から下方に向かって挿入されて通過し,この係止片42が係止孔23を通過した後に,リンク杆41を回転させて係止片42によって係止孔23の長辺側の縁部分を係止して,ケーシング10の下端開口を閉じた状態で前記底板20を固定すると共に,該係止片42と係止孔23との係合を解除することにより,底板20がケーシング10の下端開口を開放できるように構成している。
【0031】
底板20に設けられた前述の切欠状の開口である排土導入口21,21の縁部分には,回転方向前方に斜め下方に向かって突出する底部掘削爪24a〜24gが取り付けられており,基礎杭施工装置1のケーシング10回転時,この掘削爪24a〜24gが基礎杭施工装置1のケーシング10下部の土砂を掻き取って,前記排土導入口21を介して円筒状ケーシング10内にこれを導入することができるようにしている。
【0032】
図示の実施例にあっては,一方の排土導入口21(図4中右側)の縁部に3つの掘削爪24a〜24cを,他方の排土導入口21(図4中左側)の縁部に4つの掘削爪24d〜24gをそれぞれ設け,一方の排土導入口21の開口縁に設けた底部掘削爪24a〜24cと,他方の排土導入口21の開口縁に設けた底部掘削爪24d〜24gの回転軌道をずらせて配置することにより,全体として掘削シャフト1の底面における地盤を満遍なく掻き取ることができるように構成しているが,両排土導入口21,21に設ける掘削爪24a〜24gの数を同じにしても良く,また,前記掘削爪24a〜24gの個数は図示の例に限定されずにこれを増減しても良く,さらに掘削爪24a〜24gの形状についても図示の例に限定されず各種形状を採用することができる。
【0033】
前述の排土導入口21は,底板20の上面,すなわちケーシング10の内部空間側よりそれぞれ蓋板25によって被蓋されており,基礎杭施工装置1のケーシング10を掘削方向に回転して地盤を掘削することにより生じた排土が洗浄水と共にケーシング10内に入り込もうとする導入圧力によって持ち上がり,前記排土導入口21を開いて円筒状ケーシング10内に洗浄水と共に排土を導入すると共に,洗浄水や排土の流入圧が生じていないときには,自重によって前記排土導入口21を塞ぐように構成されており,本実施例にあっては前記切欠状の排土導入口21に対して一回り大きな形状に形成した蓋板25を設け,基礎杭施工装置1のケーシング10による掘削方向への回転時,回転方向前方側となる前記蓋板25の端部を,ヒンジ26を介して前記排土導入口21の前述の掘削爪24a〜24c,24d〜24gを設けた側とは反対側の縁部に揺動可能に取り付け,これにより掘削時の排土及び洗浄水の流入圧力によって排土導入口21を開いてケーシング10内に排土を洗浄水と共に導入すると共に,基礎杭施工装置1のケーシング10を回転させていないとき,又は前記ケーシング10の逆回転時には,自重によって前記排土導入口21を塞いで,内部に回収した排土,特にこの排土中の礫や玉石等が前記排土導入口21を介して杭内中空部内に戻ることを防止している。
【0034】
ケーシング
前述のケーシング10は,鋼管等によって形成された円筒体であり,杭内中空部に対して洗浄水を噴射中空杭内に噴射し,杭内周面の洗浄を行うための噴射孔11及びこの噴射孔11に対して洗浄水を導入するための給水路12を備えている。
【0035】
この洗浄水の噴射孔11は,掘削・洗浄の際に必要となる洗浄水を基礎杭施工装置1のケーシング10の外周や下部に対して噴射し得るものであれば,その径,形状,個数,配置等は如何なる構成としても良いが,一例として図示の実施例にあっては,ケーシング10の肉厚を貫通する貫通孔によってこの噴射孔11を形成し,ケーシング10の軸方向に,ここでは,4段,直線状に所定間隔で並べて配置した噴射孔11の列を,円周方向に8列等間隔に配置して,合計で32個の噴射孔11を形成している。
【0036】
そして,このうちの最下段の噴射孔11の噴射方向をここでは,斜め下向きに,本実施例では約135°の角度で下向きとしていると共に,他の3段の方向を略水平方向(約90°)に構成し,基礎杭施工装置1のケーシング10の側方のみならず下方に対しても洗浄水の噴射を行えるように構成した。
【0037】
この噴射孔11に対して洗浄水を供給する前述の給水路12は,各噴射孔11に対して洗浄水を供給し得るものであれば如何なる構成であっても良いが,図示の実施例では前記各噴射孔11の列に対峙する位置で,ケーシング10の内周側に断面L字状のアングル材によりその角部がケーシング10の中心を向くように取り付け(図3参照),このアングル材とケーシング10の内周面によって画成された洗浄水の加圧流路121を形成すると共に,ケーシング10の上部中央に設けたジョイント30内に形成された洗浄水の導入路31に連通する給水路を備えた中央管路122と,前記中央管路122より放射状に分岐して前記各アングル材から成る加圧流路121とケーシング10の本体内壁によって画成された給水路に連通する分岐管路123を設け,且つ,前記加圧流路121の上下端を塞いで前記加圧流路121を密封することにより,図示せざるオーガシャフトから後述のジョイント30内に形成された導入路31に導入された洗浄水が,前記中央管路122及び分岐管路123を介して加圧流路121内に形成された給水路に導入され,該給水路と連通する噴射孔11を介して,噴射することができるように構成されている。
【0038】
このケーシング10の外周には,ここでは,前述の噴射孔11の列と列との間に位置して金属製のワイヤによって形成されたワイヤブラシ45を外周方向に向かって突出するように取り付けることができる(図8及び図9)。
【0039】
図示の実施例にあっては,断面L字状の2本のアングル材46a,46bを所定間隔でケーシング10の外周に取り付けることによって形成されたC字状のチャンネル46内に,ワイヤブラシ45を植設した金属板47を差し込むことにより,ケーシング10の外周に交換可能にワイヤブラシ45を取り付けることができるように構成している。
【0040】
このように,円筒状ケーシング10の外周にワイヤブラシ45を取り付けた場合には,本発明の基礎杭施工装置1のケーシング10を杭の中空部内を昇降,好ましくは回転しながら昇降させることにより,中空杭の内周面をこのワイヤブラシ45による擦過によって洗浄することができ,杭内にセメントミルクや生コンクリート等を打設した際の接着性が向上する。
【0041】
以上のように構成された円筒状ケーシング10の上端開口部には,開口縁に直径方向に架設された架設板14が取り付けられており,この架設板14上に前述したオーガシャフトの下端に連結される接合具たるジョイント30が取り付けられている。
【0042】
したがって,このジョイント30にオーガマシン等によって昇降,回転されるオーガシャフトの下端を連結し,このオーガシャフトの回転力によって基礎杭施工装置1のケーシング10を回転すると共,前述のオーガマシン等によってオーガシャフトを昇降させ,このオーガシャフトの昇降に伴いケーシング10を昇降させる。
【0043】
なお,図7中,符号41は,前述した底板20を閉じた状態(円筒状ケーシング10の下端部を被蓋した状態)に係止する,下端に係止片42を備えたリンク杆41であり,このリンク杆41は図示の原位置において下端に設けられた係止片42を,図4に示すように底板20に形成した係止孔23の長さ方向に対して所定の角度(図4の例では90°)で配置されており,従って前記係止孔23内に挿入された係止片42が抜き取り不能となっている。
【0044】
この原位置に対し,前記リンク杆41の上端に設けられたレバー43をスプリング44の付勢力に抗して図中反時計回り回動させると,前記係止片42の長さ方向を,前記底板20に設けた係止孔23の長さ方向と同一方向に回動させることができ,これにより,係止片42が係止孔23より抜き取り可能となると共に,この係止孔23と係止片42との結合によって円筒状ケーシング10の底部開口を被蓋した状態で係止されていた底板20が,ヒンジ22を中心として揺動し,円筒状ケーシング10の下部開口を開放することができるように構成されている。
【0045】
なお,前述した底板20の係止機構は,図示の例に限定されず,掘削時の回転等によって,底板20の係止が解除されないように保持し得る構成であれば,如何なる構成を採用しても良い。
【0046】
前述の円筒状ケーシング10には,更に図8に示すようにその下端側の開口縁から側面に至る切欠15を設けると共に,この切欠15を覆うように,回転方向前方に向かってやや外周側に傾斜して突出する側部掘削爪24hを設けるものとしても良い。なお,この切欠15及び側部掘削爪24hは,本実施例においてケーシング10の対称位置にそれぞれ設けている。
【0047】
このように,円筒状ケーシング10の側面に切欠15を設けると共に,この切欠15の形成部分に位置して側部掘削爪24hを設けることで,この側部掘削爪24hによって掻き取られた円筒状ケーシング10外周の土砂が,前記切欠15部分を介して円筒状ケーシング10内に洗浄水と共に導入され,基礎杭施工装置1のケーシング10の掘削能力を向上させることができる。
【0048】
なお,この切欠15は,蓋板25に側板25a(図6参照)を設け,蓋板25が底板20に設けた排土導入口21を閉塞しているとき,前記側板25aによって塞がれるように構成することが好ましい。
【0049】
ジョイント(接合具)
オーガシャフトとの接合を可能と成す接合具である前述のジョイント30は,オーガマシン等によって昇降及び回転されるオーガシャフトとの連結を可能と成すと共に,該オーガシャフト内に形成された給水路を介して導入された洗浄水を導入すると共に中央管路122に導入する導入路31が形成されたものであれば如何なるものを使用しても良く,本実施例にあっては,オーガシャフトの連結に一般的に使用されている六角柱状のジョイント(オス型)を使用している。このように,オーガシャフトとの連結に一般的に使用されているジョイント30を使用することで,本発明の基礎杭施工装置に汎用性を持たせることができる。
【0050】
使用方法及び作用
以上説明した本発明の基礎杭施工装置1は,各種杭内中空部の残土掘削,除去及び杭内周面の洗浄に使用することができるが,前述したように中堀工法による基礎杭の施工に適応することが出来る。
【0051】
一例として,この中掘工法に使用する場合を例として説明すると,オーガマシン等によって昇降及び回転されるオーガシャフトの先端に,本発明の基礎杭施工装置1を取り付け,このオーガシャフトを杭の中空部に挿入する。
【0052】
そして,オーガシャフトが挿入された杭を建て込んで,杭の中空部を介して地盤を掘削して,杭を沈設する。
【0053】
オーガシャフトに取り付けられた本発明の基礎杭施工装置1のケーシング10は,オーガシャフト内に形成された洗浄水の導入路を介して洗浄水の供給を受けると共に,オーガシャフトと共に回転されて,供給された洗浄水を噴射孔11より噴射しながら回転し,底板20に設けた底部掘削爪24a〜24g,及びこれが設けられている場合にはケーシングの下端外周に設けられた側部掘削爪24hが回転に伴って地盤を掻き取り,この掻き取られた地盤が,洗浄水と共にケーシング10の底板20に設けた排土導入口21を被蓋する蓋板25を押し上げて底板20に設けた排土導入口21を介して,又はケーシング10の側面に形成された切欠15を介してケーシング10内の空間に回収される。
【0054】
掘削地盤が,比較的大きな礫や玉石等の硬質固形物を含む場合であっても,排土と共に生じた硬質固形物が前記排土導入口21以下のサイズである場合にはそのままで,排土導入口21以上のサイズである場合には,掘削爪24a〜24gとの衝突によって破砕される等して,底板20に設けた排土導入口21やケーシング10の下端部側面に形成された切欠15を介してケーシング10内に回収することができる。
【0055】
このようにして,一旦ケーシング10内に導入された硬質固形物は,ケーシング10の掘削方向回転時には,前記排土導入口21を介して中空杭内に戻ろうとしても排土や洗浄水の流入圧力によってケーシング10内に押し戻されて中空杭内に戻ることがなく,また,ケーシング10の回転が停止したときや逆回転時には,底板20に設けた排土導入口21を蓋板25が自重によって塞ぎ,これにより一旦回収された礫,玉石等の硬質固形物が排土導入口21を介して中空杭内に戻ることが防止されている。
【0056】
以上のようにして,ケーシング10内に排土や礫,玉石等の硬質固形物を回収したケーシング10は,このケーシング10内に排土や,礫,玉石等の硬質固形物が所定量溜まる毎にスクリュシャフトと共に杭の中空部より抜き取り,地上においてリンク杆41に設けたレバー43を操作して底板20によって閉ざされていたケーシング10の下端部開口を開放して,回収した排土等を排出した後,再度,底板20によってケーシング10の下端部開口を閉じ,その後,既製杭の中空部内に挿入して,既製杭の下部を掘り進み,この作業を繰り返して杭基礎を支持させる支持地盤まで掘削を行うものとしても良い。
【0057】
または,本発明の基礎杭施工装置1を中堀工法に適応する際,螺旋翼付きのオーガシャフトの下端に取り付け,これによりケーシング10を杭の中空部より抜き取ることなく連続して掘削及び排土除去と杭内周面の洗浄を行うことができるように構成しても良い。
【0058】
この場合,ケーシング10に設けた掘削爪24a〜24hが地盤を削り取ることによって生じた排土は,礫や玉石等の硬質固形物と共に一旦,基礎杭施工装置1のケーシング10内の空間に回収されることとなるが,このようにしてケーシング10内に導入された排土は,ケーシング10の回転によって生じた旋回流と,オーガシャフトの螺旋翼によって生じた流れによって,ケーシング10の上部開口より流れ出し,杭の中空部内に導入されると共に,この中空部内を搬送され,やがて杭頭部より排出される。
【0059】
このとき,排土中に含まれる比較的大きな礫や玉石等の硬質固形物は,洗浄水中において重量物であることから,ケーシング10の高さを超えてケーシング10の上部開口より杭の中空部迄流動することができず,そのためにケーシング10内に形成された空間の底部に溜まる。
【0060】
これにより,比較的大きな礫や玉石等の硬質固形物は,排土から分離されてケーシング10内に残留するために,これらが排土と共に搬送されることにより杭の中空部を詰まらせて施工不能となったり,また,コンクリート製杭を破損等することを防止することができる。
【0061】
このようにしてケーシング10内に回収された礫や玉石等の硬質固形物は,ケーシング10内に所定量溜まった時点でケーシング10を杭の中空部を介して抜き取り,前述した要領で底板20により被蓋されているケーシング10の下端部開口を開放することで,溜まった礫や玉石等の硬質固形物を中空杭外に排出する。
【0062】
以上のようにして,中空杭の中空部を介して杭の下部を掘削すると共に,中空杭を沈下させ,継ぎ杭の場合には,同様に中空杭内に挿入されたオーガシャフトの下端を,下段のオーガシャフトの上端部に連結すると共に,上下の杭体を溶接等によって連結して,同様の作業を繰り返し,所定の深度に杭を沈設する。
【0063】
所定の深度迄沈設された杭は,支持層中にセメントミルクを注入する等して杭と一体化した拡大球根を形成し,又は支持層に所定の深さ圧入する等して,支持層による杭の支持力増大が図られる。
【0064】
基礎杭施工装置1のケーシング10外周に,前述したようにワイヤブラシ45を植設した構成では,オーガシャフトを中空杭から抜き取って回収する際に,好ましくはオーガシャフトを回転させながら引き抜き,これによりケーシング10の外周に植設したワイヤブラシ45による擦過によって中空杭の内壁を洗浄する。
【0065】
この中空杭内壁の洗浄により,杭の中空部にセメントミルクや生コンクリートを注入した際,セメントミルクや生コンクリート等と杭内壁との接合力を向上させることが可能である。
【0066】
このようにして,オーガシャフトと共に基礎杭施工装置1を回収した後,杭の中空部内にセメントミルクや生コンクリートの注入が行われる。
【0067】
このセメントミルクや生コンクリートの注入に際し,杭の中空部内に溜まっている洗浄水やスライム等は,セメントミルクや生コンクリートの注入によって杭頭部より溢れ出させることで置き換えるようにしても良いが,このようにして置き換えを行う場合,溢れ出たスライム等によって杭周辺が汚れると共に,セメントミルク等と混合したスライムが硬化する等して,後処理に手間がかかることから,セメントミルクや生コンクリートの注入前に,又はセメントミルクや生コンクリートを所定量注入した後に,例えば図10に示す除去容器70を杭頭部より挿入して杭の中空部内の洗浄水やスライム等を回収するものとしても良い。
【0068】
この除去容器70は,内部を回収空間73と成す円筒状の除去容器本体71と,この回収空間73の底部側において,洗浄水やスライム,及びスライム等が混ざったセメントミルク等を回収空間73内に導入するための開口74が形成されていると共に,この開口74を内側より被蓋する蓋板72が設けられている。
【0069】
そして,この除去容器70を杭頭部より杭の中空空間内に挿入すると,開口74を介して回収空間73に流入しようとする洗浄水やスライム,セメントミルク等の流入圧力によって蓋板72が持ち上がり,これにより回収空間73内に洗浄水やスライム,セメントミルク等を回収することができると共に,この除去容器70を杭頭部より引き抜くと,前記蓋板72がその自重,及び回収空間73内の切削水やスライム,セメントミルク等の重量によって前記開口74を閉じ,これにより洗浄水やスライム,セメントミルク等を杭の中空部より抜き取ることができるように構成されている。
【0070】
以上のようにして,杭の中空部内の洗浄水やスライム等と置き換えてセメントミルクや生コンクリートを打設した後,杭穴の養生等を行って基礎杭の施工が完了する。
【0071】
このように,本発明の基礎杭施工装置1を中堀工法に適応した場合では,掘削時に生じた排土中に,比較的大きな礫や玉石等の硬質固形物が混入する場合であっても,このような礫や玉石等の硬質固形物は杭の中空部に搬入されずに基礎杭施工装置1のケーシング10内に回収することができるため,杭の中空部がこれら硬質固形物により目詰まりして施工不能となったり,また,コンクリート杭を使用した場合であっても杭体の破損等を好適に防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る基礎杭施工装置1のケーシング10の斜視図。
【図2】同,ケーシング10の正面図。
【図3】同,ケーシング10の平面図。
【図4】同,ケーシング10の底面図。
【図5】底板の開放状態の斜視図。
【図6】底板の開放状態の斜視図。
【図7】ケーシングを切断した状態の斜視図。
【図8】ワイヤブラシを備えた1のケーシング10の正面図。
【図9】ワイヤブラシを備えた1のケーシング10の平面図。
【図10】除去容器の正面断面図。
【図11】既知のオーガシャフトの説明図。
【符号の説明】
【0073】
1 基礎杭施工装置
10 ケーシング
11 噴射孔
12 給水路
121 加圧流路
122 中央管路
123 分岐管路
14 架設板
15 切欠
20 底板
21 排土導入口
22 ヒンジ
23 係止孔
24a〜24g 底部掘削爪
24h 側部掘削爪
25 蓋板
25a 側板
26 ヒンジ
30 ジョイント(接合具)
31 導入路
41 リンク杆
42 係止片
43 レバー
44 スプリング
45 ワイヤブラシ
46 チャンネル
46a,46b アングル材
50 オーガシャフト
51 ロッド
52 螺旋翼
53 オーガヘッド
60 杭(中空の既製杭)
61 中空部
70 除去容器
71 除去容器本体
72 蓋板
73 回収空間
74 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打ち機によって昇降及び回転駆動されるシャフトの下端に連結されるケーシングを備え,
前記ケーシングは,
上下端を開口し,該ケーシングの底部開口を被蓋する略円盤形の底板と,前記ケーシングの回転中心に設けられて前記シャフトを接合する接合具と,前記シャフト内に設けられ給水路を介して導入された洗浄水を中空杭内に噴射する噴射孔を備え,
前記底板に開口を形成して排土導入口とし,前記排土導入口の掘削回転方向後方側の縁部より前方側に向かって斜め下向きに底部掘削爪を突設すると共に,
前記排土導入口を前記ケーシングの内部側より蓋板で覆い,該蓋板の掘削回転方向における前方側の端部を前記底板に揺動可能にヒンジ止めしたことを特徴とする基礎杭施工装置。
【請求項2】
前記底板を,前記ケーシングの下端部開口縁に揺動可能にヒンジ止めすると共に,前記ケーシングの下端部開口を被蓋した位置において前記底板を係止する係止部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の基礎杭施工装置。
【請求項3】
前記ケーシングの下端縁より側面に至る切欠を形成すると共に,該切欠の掘削回転方向後方側の縁部から前方側に向かって斜め外周方向に突出する側部掘削爪を突設したことを特徴とする請求項1又は2記載の基礎杭施工装置。
【請求項4】
前記ケーシングの外周に,外周方向に突出するワイヤブラシを植設したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の基礎杭施工装置。
【請求項5】
前記噴射孔を前記ケーシングの肉厚を貫通して設けると共に,前記シャフトに形成された給水路を介して供給された洗浄水を前記噴射孔に導入する洗浄水の給水路を設けたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の基礎杭施工装置。
【請求項6】
前記噴射孔への給水路は,前記ケーシングの内周側に前記噴射孔に対峙する位置に洗浄水の加圧流路を形成すると共に,前記ケーシングの上部中央に設けたジョイント内に形成された洗浄水の導入路に連通する中央管路と,該中央管路より放射状に分岐して前記各加圧流路に連通する分岐管路を設けたことを特徴とする請求項5記載の基礎杭施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−223338(P2008−223338A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63369(P2007−63369)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(506019290)株式会社播磨商事 (7)
【出願人】(506019304)
【Fターム(参考)】