説明

塗工ロール塗装方法及び装置

【課題】アプリケーションロール製版ロット間でセル容積やエッジ部平滑性等の同一性が確保できず、塗料の供給量がばらつくのに伴って、導電性ローラの基体部に搬送供給される塗料の量が変化してしまうことから、同一塗料を用いた同一塗工プロセスであっても塗工膜厚や粗さが異なって塗膜の均一性を確保することが困難であった。
【解決手段】アプリケーションロール11の回転に伴い塗料Iを付着させるロール表面11aを、平坦面により形成し、ロール表面11aとの間に間隙dを有して配置され、ロール表面11aに付着させた塗料Iを通過させて塗料Iを間隙dに対応する厚みに調整する後退辺12bを有し、アプリケーションロール11のロール表面11aに、導電性ローラ14に供給して導電性ローラ14の表面を塗装する塗料Iを塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗工ロール塗装方法及び装置に関し、特に、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に装着された帯電ローラや現像ローラ等の導電性ローラの表面層を形成するために、導電性ローラに接触する塗工ロールを塗装する塗工ロール塗装方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に装着された、感光ドラムの表面を帯電させる帯電ローラや感光ドラム表面にトナーを移載する現像ローラ等の導電性ローラには、ディッピング塗装やスプレー塗装或いはロールコータ塗装によって形成された塗膜からなる薄膜の表面層が設けられている。
【0003】
例えば、導電性ローラの表面層を形成する塗膜をロールコータ塗装によって形成する場合、塗料(インク)を溜め置く塗料パンから、回転するアプリケーションロール(塗工ロール)の周面に載せて塗料を汲み上げ、アプリケーションロールと、アプリケーションロールに対し交差配置された導電性ローラの基体部の周面同士を、当接或いは近接させて回転させることにより、アプリケーションロールから導電性ローラへ塗料を供給し導電性ローラの基体部周面上に塗料を塗布する(特許文献1参照)。
【0004】
このような、導電性ローラの基体部周面上に塗料を塗布して表面層となる塗膜を形成する方法において、導電性ローラの基体部への塗料の供給を効率的に行うためには、塗料パンからアプリケーションロールで汲み上げる塗料の量を多くする必要があり、そのために、例えば、アプリケーションロールとして、周面に凹パターンが形成されたグラビアロールを用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
アプリケーションロールとして、周面に凹パターンが形成されたグラビアロールを用いた場合、塗料パンに溜め置かれた塗料は、回転するアプリケーションロールの周面の凹部(セル)に掬い上げられ、アプリケーションロールの周面に対向配置されたフラット形状のドクターブレードにより、アプリケーションロールに塗布される塗料の厚みが調整されて、導電性ローラに搬送供給されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−88015号公報
【特許文献2】特開2006−154031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、周面に凹パターンが形成されたグラビアロールをアプリケーションロールとして用いると、ロール表面に凹パターンを形成する製版時にパターンのばらつきが発生し易いばかりでなく、使用に伴ってドクターブレードとの摩擦によりロール表面の凹部の角(エッジ)が欠けたり磨耗してしまう経時的変化が生じるのが避けられなかった。
この結果、アプリケーションロール製版ロット間でセル容積やエッジ部平滑性等の同一性が確保できず、塗料の供給量がばらつくのに伴って、導電性ローラの基体部に搬送供給される塗料の量が変化してしまうことから、同一塗料を用いた同一塗工プロセスであっても塗工膜厚や粗さが異なって塗膜の均一性を確保することが困難であった。
【0008】
この発明の目的は、塗工ロールに使用に伴う経時的変化を生じさせず、長期間の使用においても、塗工ロール製版ロット間で塗工ロールによる塗料供給量やエッジ部平滑性等の同一性を確保して、塗布対象ローラへの塗料の搬送供給量がばらつかず均一性を確保することができる塗工ロール塗装方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係る塗工ロール塗装方法は、塗工ロールの回転に伴い、塗料を、平坦面により形成したロール表面に付着させた後、前記ロール表面に間隙を有して配置した間隙形成手段を通過させ、前記間隙に対応する厚みに調整して、前記塗工ロールの前記ロール表面に、塗装対象ローラに供給して前記塗装対象ローラの表面を塗装する塗料を塗布することを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係る塗工ロール塗装方法は、前記間隙形成手段が、前記ロール表面から離間して配置されたブレードの前記ロール表面に対向する対向辺の一部を後退させて形成した後退辺であることを特徴としている。
【0010】
上記目的を達成するため、この発明に係る塗工ロール塗装装置は、塗工ロールの回転に伴い塗料を付着させるロール表面を、平坦面により形成し、前記ロール表面との間に間隙を有して配置され、前記ロール表面に付着させた前記塗料を通過させて前記塗料を前記間隙に対応する厚みに調整する間隙形成手段を有し、前記塗工ロールの前記ロール表面に、塗装対象ローラに供給して前記塗装対象ローラの表面を塗装する塗料を塗布することを特徴としている。
【0011】
また、この発明の他の態様に係る塗工ロール塗装装置は、前記間隙形成手段が、前記ロール表面から離間して配置されたブレードの前記ロール表面に対向する対向辺の一部を後退させて形成した後退辺であることを特徴としている。
また、この発明の他の態様に係る塗工ロール塗装装置は、前記後退辺が、前記対向辺から2〜1000μm後退していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る塗工ロール塗装方法によれば、塗工ロールの回転に伴い、塗料を、平坦面により形成したロール表面に付着させた後、ロール表面に間隙を有して配置した間隙形成手段を通過させ、間隙に対応する厚みに調整して、塗工ロールのロール表面に、塗装対象ローラに供給して塗装対象ローラの表面を塗装する塗膜を形成するので、塗工ロールに使用に伴う経時的変化を生じさせず、長期間の使用においても、塗工ロール製版ロット間で塗工ロールによる塗料供給量やエッジ部平滑性等の同一性を確保して、塗布対象ローラへの塗料の搬送供給量がばらつかず均一性を確保することができる。
また、この発明に係る塗工ロール塗装装置により、上記塗工ロール塗装方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施の形態に係る塗工ロール塗装装置の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】図1の塗工ロール塗装装置を備えたローラ塗布装置の構成を説明する平面図である。
【図3】図2の塗工ロールと塗布対象ローラの配置関係を説明する一部断面で示す説明図である。
【図4】アプリケーションロールに対しブレードが略当接した状態における塗料の塗布状態を示す説明図である。
【図5】アプリケーションロールに対しブレードが離間して間隙を有する状態における塗料の塗布状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る塗工ロール塗装装置の構成を概略的に示す説明図である。図1に示すように、塗工ロール塗装装置10は、アプリケーションロール(塗工ロール)11と、アプリケーションロール11のロール表面11aの塗料を調整するブレード12を有しており、アプリケーションロール11のロール表面11aに塗布した塗料を塗布対象ローラに供給して、塗布対象ローラの表面に塗膜を形成する。この塗工ロール塗装装置10は、ローラ塗布装置を構成するコータに備えられている。
【0015】
図2は、図1の塗工ロール塗装装置を備えたローラ塗布装置の構成を説明する平面図、図3は、図2の塗工ロールと塗布対象ローラの配置関係を説明する一部断面で示す説明図である。図2及び図3に示すように、ローラ塗布装置13は、塗布対象ローラである導電性ローラ14を回転させながら走行するローラ移動台車15と、塗布対象ローラ14に塗料(インク)Iを供給して塗布するコータ16を有している。導電性ローラ14としては、感光ドラムの表面を帯電させる帯電ローラや感光ドラム表面にトナーを移載する現像ローラ等がある。
【0016】
導電性ローラ14は、長さ方向両端で軸支される軸部14aの周囲に形成された基体部14bを有しており、ローラ移動台車15の後述する支持部15aに軸支されている。基体部14bとしては、エラストマー単体又はそれを発泡させた発泡体に導電剤を添加して導電性を付与したものが一般的に用いられる。なお、軸部14aの周面を、直接、後述する表面層14cで被覆して基体部14bとしても良い。
【0017】
基体部14bの表面を被覆する表面層14cは、導電性ローラ14を、例えば、帯電ローラとする場合には、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等、目的に応じて適宜な樹脂で形成することができ、例えば、現像ローラとする場合には、架橋性樹脂が好適に用いられる。架橋性樹脂とは、熱、触媒、空気(酸素)、湿気(水)、電子線等により自己架橋する樹脂或いは架橋剤や他の架橋性樹脂との反応により架橋する樹脂をいう。
【0018】
上記樹脂の内、塗布したあと乾燥工程を必要としないという点において、電子線硬化型樹脂或いは紫外線硬化型樹脂或いは熱硬化型樹脂を含有するものが好ましく、これらの樹脂は、電子線を照射することにより若しくは紫外線重合開始剤の存在下で紫外線を照射することにより若しくは加熱することにより、硬化させることができる。
【0019】
電子線硬化型樹脂若しくは紫外線硬化型樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられ、これらの一種類又は二種類以上を混合して用いることができる。
更に、これらの樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂を用いることもできる。また、樹脂層である表面層14cの力学的強度、耐環境特性を改善するため、架橋構造を有するものを導入することが好ましい。
【0020】
電子線硬化型もしくは紫外線硬化型の樹脂組成物には、必要に応じて粘度調整のために重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合する。このような反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応及びアミド化反応結合した構造の、例えば、単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。これらの希釈剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり、通常、10〜200重量部用いることが好ましい。
【0021】
図2に示すように、ローラ移動台車15は、導電性ローラ14を、その長さ方向両端部で軸支するそれぞれの支持部15a,15a、導電性ローラ14を所定の回転数で回転させるモータ15b、両支持部15a,15aとモータ15bを搭載する走行ベース15cを有しており、走行ベース15cは、駆動手段(図示しない)により、導電性ローラ14の長さ方向に沿って往復動する(図中、矢印参照)。
なお、図2に示すローラ塗布装置13においては、ローラ移動台車15を往復変位させる構成になっているが、ローラ移動台車15に代えてコータ16を導電性ローラ14の長さ方向に沿って往復変位させても良く、或いはローラ移動台車15とコータ16を相互に接近離反させても良い。
【0022】
図2に示すように、コータ16は、塗工ロール塗装装置10のアプリケーションロール11及びブレード12と共に、塗料Iを収容して溜め置くタンク16a、アプリケーションロール11の両端を回転自在に軸支する両支持部16b,16b、アプリケーションロール11を回転駆動するモータ16cを有している。
【0023】
アプリケーションロール11は、凹凸の無い平坦面により形成されたロール表面11aを有しており、アプリケーションロール11の回転に伴って、ロール表面11aに塗料Iを付着させる。このアプリケーションロール11は、ロール単体として、例えば、円周振れが0.02mm以下、同軸度が0.1mm以下、真直度が0.02mm以下、真円度が0.02mm以下の精度を有するように形成されている。なお、アプリケーションロール11のロール表面11aを、平坦面により形成しているので、ロール形状における精度の管理がし易い。
【0024】
図1から図3に示すように、ブレード12は、例えば、樹脂やゴム等により薄い矩形板状に形成されており、アプリケーションロール11のロール表面11aに対向する対向辺12a、即ち、ブレード先端側を、上向き傾斜させた状態で(図3参照)、ロール表面11aから僅かに離間して配置されている。
【0025】
このブレード12は、対向辺12aの中央部を凹部状に切り欠いて形成した、対向辺12aから2〜1000μm後退させた後退辺(間隙形成手段)12b(図1,2参照)を有しており、後退辺12bとロール表面11aとの間に間隙d(図3参照)を形成している。この後退辺12bを、アプリケーションロール11の回転に伴ってロール表面11aに付着させた塗料Iが通過することにより、塗料Iを間隙dに対応する厚みに調整することができる。
【0026】
ブレード12は、ロール表面11aに対する傾斜角度及び離間距離を任意に設定して固定配置することができ、後退辺12bとロール表面11aとの間に形成される間隙dを任意に設定することができる。
なお、アプリケーションロール11のロール表面11aとブレード12との間には、後退辺12bによる間隙dと、間隙dより狭い、対向辺12aによる間隙の二種類の間隙が形成される(図3参照)。
【0027】
このように、アプリケーションロール11のロール表面11aとブレード12との間に隙間を設けて、ロール表面11aとブレード12が接触しないようにすれば、使用に伴う経時的変化を生じさせず、長期間の使用においても、アプリケーションロール11による塗料供給量やエッジ部平滑性等の同一性を確保することができる。
【0028】
図2及び図3に示すように、両支持部16b,16b間に架け渡されて略下半部をタンク16a内の塗料Iに漬けたアプリケーションロール11は、モータ16cにより駆動されて回転し、タンク16aから塗料Iをロール表面11aに付着させて汲み上げる。ロール表面11aに付着させた塗料Iは、アプリケーションロール11の回転に伴い、ブレード12の後退辺12bによりロール表面11aとの間に形成された間隙dを通過することにより、後退辺12bの長さに相当する幅及び間隙dに相当する厚みに調整される。
【0029】
従って、ローラ塗布装置13の作動により、アプリケーションロール11を介しタンク16aから塗料Iが汲み上げられて、アプリケーションロール11のロール表面11aには、後退辺12bの長さに相当する幅及び間隙dに相当する厚みの塗料Iが、周方向に沿って帯状に塗装される。このロール表面11aに塗装された塗料Iが、導電性ローラ14に搬送供給されて、基体部14bの表面に塗布され、基体部14bの周面に螺旋状に塗膜が形成される(図2参照)。
【0030】
このときの螺旋のピッチ(m)は、導電性ローラ14の基体部14bのローラ長さ方向の送り速度v(m/s)をその軸心周りの回転速度ω(s-1)で除したもので表すことができる。また、1回に塗布される塗膜の幅は、基体部14bとアプリケーションロール11との交差角度θ(図2参照)を変えて調整することができ、交差角度θを小さくすることで塗膜の幅を大きくすることができる。
【0031】
また、導電性ローラ14の基体部14bと、アプリケーションロール11との相対回転方向は、塗料Iに剪断力が加わる方向とするのが、塗装表面の平滑性を高めることができる点で好ましく、図2に例示したように、基体部14bとアプリケーションロール11との、それらが近接する部分における周面速度の導電性ローラ接線方向成分が互いに反対向きになるよう設定するのが好ましい。
ローラ塗布装置13を用いて、導電性ローラ14の基体部14b表面に塗布される塗料Iとしては、基体部14bを被覆する表面層14cを構成する樹脂として例示した樹脂を、溶媒に溶かし込み若しくは無溶剤で調合して用いることができる。
【0032】
溶媒を用いる場合に塗装液の調製に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、酢酸エーテル等のエステル系溶媒、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム,シクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アクリル塗料等の水系塗料及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0033】
ロールコータ式のローラ塗布装置13を用いて、導電性ローラ14の表面層14cを形成する本発明の方法は、温度25℃における粘度が200〜100000mPa・Sの塗料を用いる場合に、特に有効な方法である。例えば、スプレーにより表面層14cを形成する方法は、このような高粘度の塗料を霧化することが難しく、一方、ディップ槽に収容した塗料を浸漬させて形成する場合は、粘度が高過ぎて膜厚が極めて厚くなってしまい、実現が困難であるからである。
【0034】
紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いて、表面層14cを形成した場合、塗装直後にこれを瞬時に硬化させることにより、その流動を抑え、高粘度にしたことと同様の効果をもたらすことができる。そして、そもそも、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いるのは、もしこれが熱硬化型の樹脂であった場合には必要となる大掛かりな乾燥設備を不要にするためであり、そのため、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いる場合は、溶剤の量を極めて低く抑えたものが用いられ、このような場合には、同様な理由により、ロールコータ式の塗布方法を好適に用いることができる。
【0035】
本発明に係る塗工ロール塗布装置10は、ロール表面を平坦面により形成したアプリケーションロール11を用いると共に、ブレード12が対向辺12aと後退辺12bを有することにより、ロール周面11a上の塗料Iを掻き落とす部分と、掻き落とさない或いは必要に応じて掻き落とす部分を有することになって、アプリケーションロール11のロール周面11a上の塗料Iは、ロール周面11aの中央部では厚く塗布され、周辺部では殆ど塗布されず或いは極薄く塗布されるように規制されることになり、この状態でロール周面11aの中央部に塗布された塗料Iが、導電性ローラ14の基体部14bに搬送供給される。
【0036】
図4は、アプリケーションロールに対しブレードが略当接した状態における塗料の塗布状態を示す説明図であり、図5は、アプリケーションロールに対しブレードが離間して間隙を有する状態における塗料の塗布状態を示す説明図である。
図4に示すように、アプリケーションロール11のロール表面11aに対し、ブレード12が略当接した状態、即ち、対向辺12aが位置するロール表面11aでは、対向辺12aによりロール表面11aから塗料Iが略掻き落とされて、導電性ローラ14の基体部14bに供給される塗料Iが略ゼロになるように制限される。このとき、制限されて行き場を失った塗料Iは、一部は元に戻ろうとするものの、アプリケーションロール11が回転していることにより、後退辺12bが位置するロール表面11a中央部に向かう。
【0037】
図5に示すように、アプリケーションロール11のロール表面11aに対し、ブレード12が離間してロール表面11aとの間に間隙dを有する状態、即ち、後退辺12bが位置するロール表面11aでは、タンク16aから汲み上げられた塗料Iに、対向辺12aにより行き場を失った塗料Iが加わることになる。このため、後退辺12bが位置するロール表面11aの塗料Iの厚みは、対向辺12aが位置するロール表面11aに比べて厚くなり、ロール表面11aの塗料Iの厚みを後退辺12bとロール表面11aとの間隙dに相当する厚みに調整するために十分な量の塗料Iを、後退辺12bが位置するロール表面11aに確保することができる。
【0038】
ここで、後退辺12bのロール軸方向幅は、対向辺12aのロール軸方向幅より若干広く、その差を5〜10mmとするのが好ましい。
なお、アプリケーションロール11として周面が滑らかなものを用いているが、周面が滑らかとは、経年使用において、アプリケーションロール11による塗料の搬送量が変化しない程度の滑らかさをいい、具体的には、表面粗さRyが0.4〜6.3μmであるものを言うこととする。ここで、表面粗さRyが6.3μmを超えるものである場合には、表面粗さの度合いのばらつきや経年使用に伴ってアプリケーションロール11の周面による搬送能力に変化を引き起こす可能性があり、一方、表面粗さRyが0.4μm未満である場合には、表面加工に手間がかかりコストの大幅な上昇をもたらすことになってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明によれば、塗工ロールに使用に伴う経時的変化を生じさせず、長期間の使用においても、塗工ロール製版ロット間で塗工ロールによる塗料供給量やエッジ部平滑性等の同一性を確保して、塗布対象ローラへの塗料の搬送供給量がばらつかず均一性を確保することができるので、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に装着された、感光ドラムの表面を帯電させる帯電ローラや感光ドラム表面にトナーを移載する現像ローラ等の導電性ローラの表面層を形成するのに最適である。
【符号の説明】
【0040】
10 塗工ロール塗装装置
11 アプリケーションロール
11a ロール表面
12 ブレード
12a 対向辺
12b 後退辺
13 ローラ塗布装置
14 導電性ローラ
14a 軸部
14b 基体部
14c 表面層
15 ローラ移動台車
15a 支持部
15b モータ
15c 走行ベース
16 コータ
16a タンク
16b 支持部
16c モータ
I 塗料
d 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工ロールのロール表面に、塗装対象ローラに供給して前記塗装対象ローラの表面を塗装する塗料を塗布する塗工ロール塗布方法において、
前記塗工ロールの回転に伴い、前記塗料を、平坦面により形成した前記ロール表面に付着させた後、前記ロール表面に間隙を有して配置した間隙形成手段を通過させ、前記間隙に対応する厚みに調整することを特徴とする塗工ロール塗布方法。
【請求項2】
前記間隙形成手段は、前記ロール表面から離間して配置されたブレードの前記ロール表面に対向する対向辺の一部を後退させて形成した後退辺であることを特徴とする請求項1に記載の塗工ロール塗布方法。
【請求項3】
塗工ロールのロール表面に、塗装対象ローラに供給して前記塗装対象ローラの表面を塗装する塗料を塗布する塗工ロール塗布装置において、
前記塗工ロールの回転に伴い前記塗料を付着させる前記ロール表面を、平坦面により形成し、
前記ロール表面との間に間隙を有して配置され、前記ロール表面に付着させた前記塗料を通過させて前記塗料を前記間隙に対応する厚みに調整する間隙形成手段を有することを特徴とする塗工ロール塗布装置。
【請求項4】
前記間隙形成手段は、前記ロール表面から離間して配置されたブレードの前記ロール表面に対向する対向辺の一部を後退させて形成した後退辺であることを特徴とする請求項3に記載の塗工ロール塗布装置。
【請求項5】
前記後退辺は、前記対向辺から2〜1000μm後退していることを特徴とする請求項4に記載の塗工ロール塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−136255(P2011−136255A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295775(P2009−295775)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】