説明

塗工装置、塗工方法及び電極製造方法

【課題】基材幅方向における塗工ムラの発生を防止して塗工品質を向上させることができる塗工装置を提供する。
【解決手段】塗工装置10は、基材1の塗工面1aに塗工材2を塗工するロッドコータ20と、ロッドコータ20の上流側に配置されて基材1を塗工面1aとは逆側から押圧する上流側押圧ローラ30と、ロッドコータ20の下流側に配置されて基材1を塗工面1aとは逆側から押圧する下流側押圧ローラ40とを有する。上流側押圧ローラ30と下流側押圧ローラ40との間であってロッドコータ20に対向する位置には、基材1を塗工面1aとは逆側からロッドコータ20のロッド23に向けて押圧するセンター押圧ローラ50を配置する。センター押圧ローラ50には、基材1を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構55が設けられている。センター押圧ローラ50の表面には、回転軸51に対し傾斜した斜線形状をなす版が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造工程において電極を形成する基材の表面に塗工材を塗工するための塗工装置、塗工方法及び電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機を駆動源として搭載したハイブリッド車両や電気自動車等の電動車両が普及しつつある。こうした電動車両には、充電や放電を行うための二次電池が搭載されている。二次電池の電極には、アルミ箔(正極側)や銅箔(負極側)などの基材の表面に、塗工装置により塗工材(ペーストやバインダ等)を塗工したものが用いられている。
【0003】
このような塗工装置として、図4に示すように、基材1の表面に塗工材2を塗工するロッドコータ110と、ロッドコータ110の上流側に配置されて基材1の塗工面1aとは逆側から基材1を押圧する上流側押圧ローラ120と、ロッドコータ110の下流側に配置されて基材1の塗工面1aとは逆側から基材1を押圧する下流側押圧ローラ130とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。こうした塗工装置100では、上流側押圧ローラ120及び下流側押圧ローラ130により、基材1をロッドコータ110に向けて押圧した状態で、ロッドコータ110のロッド111により基材1への塗工が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−068616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には、次のような問題があった。
すなわち、上記従来技術によると、基材1の幅方向における撓みが原因で塗工ムラが発生し、塗工品質が低下するという問題があった。具体的には、電池の製造工程では、図5に示すように、基材1の幅方向中央部1cにのみ塗工材2が塗工され、基材1の幅方向両端部1s,1sには塗工材2が塗工されない。つまり、ロッドコータ110のロッド111は、基材1の幅方向中央部1cにのみ当接し、基材1の幅方向両端部1s,1sには当接しないようになっている。この場合、ロッド111に当接しない基材1の幅方向両端部1s,1sは、上流側押圧ローラ120及び下流側押圧ローラ130による張力により下方へと撓む傾向があった。一方、基材1の幅方向中央部1cは、幅方向両端部1s,1sが下方へ撓むのにつれて中央が山状に浮き上がる傾向があった。その結果、塗工膜の厚みは、基材1の幅方向中央付近で厚くなり、幅方向両端側に向けて薄くなる傾向があった。このように、塗工膜に基材幅方向の塗工ムラが生じ、塗工品質が低下していた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、基材幅方向における塗工ムラの発生を防止して塗工品質を向上させることができる塗工装置、塗工方法及び電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る塗工装置は、次のような特徴を有している。
(1)基材の表面に塗工材を塗工するロッドコータと、前記ロッドコータの上流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する上流側押圧ローラと、前記ロッドコータの下流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する下流側押圧ローラとを有する塗工装置において、前記上流側押圧ローラと前記下流側押圧ローラとの間であって前記ロッドコータに対向する位置に配置され、前記基材を塗工面とは逆側から前記ロッドコータのロッドに向けて押圧するセンター押圧ローラを有すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する塗工装置において、前記センター押圧ローラには、前記基材を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構が設けられていること、を特徴とする。
(3)(2)に記載する塗工装置において、前記ダンパ機構により、前記ロッドコータのロッドと前記センター押圧ローラとの間に搬送される前記基材の水平方向となす角度を、10°以下に調整すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する塗工装置において、前記センター押圧ローラには、軸方向に対して傾斜した斜線形状の版が形成されていること、を特徴とする。
この場合において、複数の斜線形状の版を、所定間隔をおいて平行に形成することが好ましい。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る塗工方法は、次のような特徴を有している。
(5)基材の表面に塗工材を塗工するロッドコータと、前記ロッドコータの上流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する上流側押圧ローラと、前記ロッドコータの下流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する下流側押圧ローラとを使用する塗工方法において、前記上流側押圧ローラと前記下流側押圧ローラとの間であって前記ロッドコータに対向する位置に配置され、前記基材を塗工面とは逆側から前記ロッドコータのロッドに向けて押圧するセンター押圧ローラを用いること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する塗工方法において、前記センター押圧ローラには、前記基材を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構が設けられていること、を特徴とする。
(7)(6)に記載する塗工方法において、前記ダンパ機構により、前記ロッドコータのロッドと前記センター押圧ローラとの間に搬送される前記基材の水平方向となす角度を、10°以下に調整すること、を特徴とする。
(8)(5)乃至(7)のいずれか1つに記載する塗工方法において、前記センター押圧ローラには、軸方向に対して傾斜した斜線形状の版が形成されていること、を特徴とする。
この場合において、複数の斜線形状の版を、所定間隔をおいて平行に形成することが好ましい。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る電極製造方法は、次のような特徴を有している。
(9)(5)乃至(8)のいずれか1つに記載する塗工方法により前記基材に前記塗工材を塗工して電極を製造すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記特徴を有する塗工装置、塗工方法及び電極製造方法は、次のような作用及び効果を奏する。
(1)基材の表面に塗工材を塗工するロッドコータと、前記ロッドコータの上流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する上流側押圧ローラと、前記ロッドコータの下流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する下流側押圧ローラとを有する塗工装置、塗工方法及び電極製造方法において、前記上流側押圧ローラと前記下流側押圧ローラとの間であって前記ロッドコータに対向する位置に配置され、前記基材を塗工面とは逆側から前記ロッドコータのロッドに向けて押圧するセンター押圧ローラを有すること、を特徴とするので、センター押圧ローラにより基材が山状に撓むのを防止しながら塗工することができるため、基材幅方向の中央部と両端部とで塗工膜を同じ厚みとすることができ、基材幅方向における塗工ムラの発生を防止して塗工品質を向上させることができる。
【0011】
(2)(1)に記載する塗工装置、塗工方法及び電極製造方法において、前記センター押圧ローラには、前記基材を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構が設けられていること、を特徴とするので、例えばセンター押圧ローラが基材を押しすぎて塗工膜が薄くなったり、押圧力が弱すぎて塗工膜が厚くなるのを防止することができる。
(3)(2)に記載する塗工装置、塗工方法及び電極製造方法において、前記ダンパ機構により、前記ロッドコータのロッドと前記センター押圧ローラとの間に搬送される前記基材の水平方向となす角度を、10°以下に調整すること、を特徴とするので、ロッドと基材との間に必要量のビード(塗工材の液溜まり)を確実に形成して、必要な厚さの塗工膜を確実に形成することができる。これは、搬送される基材の水平方向となす角度が10°以上になると、ロッドと基材との間に形成可能なビードのスペースを確保するのが困難になり、必要な厚さの塗工膜を形成できないおそれが生じるからである。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する塗工装置、塗工方法及び電極製造方法において、前記センター押圧ローラには、軸方向に対して傾斜した斜線形状の版が形成されていること、を特徴とするので、センター押圧ローラが基材を裏側から押圧しながら回転するときに、斜線形状の版により塗工材に基材幅方向の流れを生じさせることができるため、基材幅方向における塗工厚みの均一化を図ることができる。
この場合において、複数の斜線形状の版を、所定間隔をおいて平行に形成することにより、塗工材の基材幅方向に生じる流れの整流化を図ることが可能となり、基材幅方向における塗工厚みの均一化をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る塗工装置を示す全体構成図である。
【図2】図1に示す塗工装置の塗工部を基材搬送方向から見た図である。
【図3】基材の塗工面における塗工材の流れを説明する説明図である。
【図4】従来例に係る塗工装置を示す全体構成図である。
【図5】従来例に係る塗工装置の塗工部を基材搬送方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る塗工装置、塗工方法及び電極製造方法を具体化した実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の塗工装置は、電動車両に搭載するリチウムイオン二次電池の製造工程において、電極を形成する基材の表面に塗工材を塗工するためのものである。
【0014】
<塗工装置>
まず、本実施形態に係る塗工装置の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る塗工装置を示す全体構成図である。図2は、図1に示す塗工装置の塗工部を基材搬送方向から見た図である。各図において、矢印Xは基材搬送方向を示し、矢印Yは基材幅方向を示す。
塗工装置10は、図1及び図2に示すように、基材1の塗工面1aに塗工材2を塗工するロッドコータ20と、ロッドコータ20の上流側に配置されて基材1を塗工面1aとは逆側から押圧する上流側押圧ローラ30と、ロッドコータ20の下流側に配置されて基材1を塗工面1aとは逆側から押圧する下流側押圧ローラ40と、上流側押圧ローラ30と下流側押圧ローラ40との間であってロッドコータ20に対向する位置に配置され、基材1を塗工面1aとは逆側からロッドコータ20に向けて押圧するセンター押圧ローラ50とを備えている。
本実施形態の基材1としては、アルミ箔や銅箔等の帯状金属箔が用いられている。また、塗工材2としては、ペーストやバインダ等の塗工液が用いられている。
【0015】
ロッドコータ20は、塗工材1を溜める液パン21と、回転軸22により回転可能に支持されたロッド23とを備えている。ロッド23の下部は、液パン21内の塗工材2に浸っている。ロッド23の基材幅方向Yの長さL1は、基材1の幅方向よりも短く形成されている。また、ロッド23には、塗工材2を入り込ませるための溝23aが、所定間隔をおいて形成されている。この溝23aは、例えばロッド23にワイヤーを巻回したり、ロッド23に版を形成するなどして形成されたものである。
【0016】
上流側押圧ローラ30は、円柱形状をなしており、回転軸31により回転可能に支持されている。下流側押圧ローラ40は、円柱形状をなしており、回転軸41により回転可能に支持されている。上流側押圧ローラ30及び下流側押圧ローラ40の両回転軸31,41は、ロッド23の回転軸22と平行であり、基材1への押圧力を変更すべく鉛直方向へ移動可能に設けられている。このとき、上流側押圧ローラ30と下流側押圧ローラ40とは、連結されて同時に鉛直方向へ移動するものであってもよく、それぞれが独立して鉛直方向へ移動するものであってもよい。
【0017】
センター押圧ローラ50は、円柱形状をなしており、回転軸51により回転可能に支持されている。この回転軸51は、ロッド23の回転軸22と平行に設けられており、ロッド23の回転軸22の鉛直方向上側に位置している。センター押圧ローラ50の基材幅方向Yの長さL2は、基材1の幅方向と同程度かそれ以上の長さに形成されている。また、センター押圧ローラ50の表面には、回転軸51に対して45°傾斜した複数の斜線形状の版50aが、平行に形成されている。この版50aは、センター押圧ローラ50の表面に斜線形状の凹凸を形成するものであればよいので、凸版としてもよく、凹版としてもよい。さらに、回転軸51には、基材1を押圧するセンター押圧ローラ50の押圧力を所定値に保つダンパ機構55が設けられている。このダンパ機構55は、例えば所定のバネ定数を有する弾性部材により構成されている。
【0018】
<塗工方法>
次に、上記構成を有する塗工装置10を使用した塗工方法について説明する。
本実施形態の塗工方法では、ロッドコータ20の液パン21に、塗工材2を供給しながら、図示しないモータによりロッド23の回転軸22を駆動する。このとき、ロッド23の下部は、液パン21内の塗工材2に浸っており、ロッド23の溝23a内には、塗工材2が入り込んでいる。したがって、ロッド23を回転させると、ロッド23の下部では塗工材2を表面に付着させて巻き上げる。一方、ロッド23の上部では、巻き上げた塗工材2によりロッド23と基材1との間にビードBを形成しながら、基材1の塗工面1aに塗工材2を塗工する。
【0019】
また、上流側押圧ローラ30、下流側押圧ローラ40及びセンター押圧ローラ50は、搬送される基材1をロッドコータ20に向けて押圧している。ここで、センター押圧ローラ50には、基材1を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構55が設けられている。これにより、センター押圧ローラ50が基材1を押しすぎて塗工膜が薄くなったり、押圧力が弱すぎて塗工膜が厚くなることはない。ところで、搬送される基材1の水平方向となす角度αが10°以上になると、ロッド23と基材1との間に形成可能なビードBのスペースを確保するのが困難になり、必要な厚さの塗工膜を形成できないおそれが生じてしまう。そこで、本実施形態では、ダンパ機構55により、ロッドコータ20のロッド23とセンター押圧ローラ50との間に搬送される基材1の水平方向となす角度αを、10°以下に調整している。これにより、ロッド23と基材1との間に必要量のビードBを確実に形成して、必要な厚さの塗工膜を確実に形成できるようにしている。
【0020】
さらに、センター押圧ローラ50には、その軸方向に対して45°傾斜した複数の斜線形状の版50aが、平行に形成されている。これにより、センター押圧ローラ50が基材1を裏側から押圧しながら回転するときに、図3に示すように、斜線形状の版50aにより塗工材2に版50aと直交する方向の流れPを形成することができる。図3は、基材の塗工面における塗工材の流れを説明する説明図である。ここで、版50aは軸方向に対して傾斜しているため、塗工材2の流れPには基材幅方向Yの流れQが含まれる。このように、塗工材2に基材幅方向Yの流れQ生じさせることにより、基材幅方向Yにおける塗工厚みの均一化を図っている。特に、本実施形態では、複数の斜線形状の版50aを、所定間隔をおいて平行に形成しているので、塗工材2の基材幅方向Yに生じる流れQの整流化を図ることが可能となり、基材幅方向Yにおける塗工厚みの均一化をより確実なものとしている。
【0021】
ところで、図2に示すように、ロッド23の基材幅方向Yの長さL1は、基材1の幅方向よりも短く形成されており、基材1の幅方向中央部にのみ塗工材2が塗工される。つまり、塗工材2が付着したロッド23は、基材1の幅方向中央部にのみ当接し、基材1の幅方向両端部には当接しない。このため、図5に示すように、従来の塗工装置100では、ロッド23に当接しない基材1の幅方向両端部1s,1sが、上流側押圧ローラ120及び下流側押圧ローラ130による張力により下方へと撓む傾向があった。一方、基材1の幅方向中央部1cは、幅方向両端部1s,1sが下方へ撓むのにつれて中央が山状に浮き上がる傾向があった。こうして、塗工膜の厚みが、基材幅方向Yの中央部2aで厚くなり、基材幅方向Yの端部2bに向けて薄くなる傾向があった。
そこで、本実施形態では、図1及び図2に示すように、センター押圧ローラ50により基材1をロッド23へ押圧しながら塗工している。これにより、基材1が山状に撓むのを防止し、基材1を水平面状に保ちながら塗工することができる。こうして、基材1の幅方向における塗工ムラの発生を防止し、塗工品質を向上させている。
【0022】
<実施例1>
本発明者等は、実験により、センター押圧ローラ50による塗工ムラの防止効果を確認した。具体的には、図4に示す従来の塗工装置100により得られる塗工膜と、図1に示す本実施形態の塗工装置10により得られる塗工膜とに対して、基材幅方向Yの中央部2a,2c及び基材幅方向の端部2b,2dの各厚み(図2,図5参照)を、分光エリプソメトリーにより測定した。この分光エリプソメトリーは、薄膜表面に光を入射して薄膜表面で反射させ、その入射光と反射光との偏光状態の変化から薄膜の膜厚を算出する方法である。なお、本実験では、塗工材1としてSBR水溶液のバインダを使用し、塗工膜の乾燥工程を160℃の乾燥温度で1ゾーンとした。
【0023】
この測定結果によると、従来の塗工装置100では、塗工膜における基材幅方向Yの中央部2aの平均厚みが400〜450nmであったのに対し、塗工膜における基材幅方向Yの端部2bの平均厚みが100〜250nmであった。すなわち、基材幅方向Yの端部2bの厚みが、基材幅方向Yの中央部2aの厚みの1/2〜1/3程度に薄くなっていることが確認された。
一方、本実施形態の塗工装置10では、塗工膜における基材幅方向Yの中央部2cの平均厚みが440〜550nmであったのに対し、塗工膜における基材幅方向Yの端部2dの平均厚みが440〜520nmであった。すなわち、基材幅方向Yの端部2dの厚みが、基材幅方向Yの中央部2cの厚みと略同じであることが確認された。この実験結果から、本実施形態の塗工装置10によれば、従来の塗工装置100に比べて、基材幅方向Yにおける塗工ムラの発生を効果的に防止でき、塗工品質を確実に向上させることができることが確認できた。
【0024】
特に、電池の製造工程では、結合層としてのバインダを塗工した後、活物質を含むペーストを塗工する2層塗工を行う場合がある。このような2層塗工では、バインダを薄膜で均一に塗工する必要がある。こうした場合に、本実施形態の塗工方法を使用することで、バインダの薄膜塗工をムラ無く行うことが可能となる。こうした塗工ムラの無い二次電池は、電極表面において安定した反応性が得られ、安定した電池性能を発揮するものとなる。
【0025】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、基材1の表面に塗工材2を塗工するロッドコータ20と、ロッドコータ20の上流側に配置されて基材1を塗工面1aとは逆側から押圧する上流側押圧ローラ30と、ロッドコータ20の下流側に配置されて基材1を塗工面1aとは逆側から押圧する下流側押圧ローラ40とを有する塗工装置10において、上流側押圧ローラ30と下流側押圧ローラ40との間であってロッドコータ20に対向する位置に配置され、基材1を塗工面1aとは逆側からロッドコータ20のロッド23に向けて押圧するセンター押圧ローラ50を有するので、センター押圧ローラ50により基材1が山状に撓むのを防止しながら塗工することができるため、基材幅方向Yの中央部2cと両端部2dとで塗工膜を同じ厚みとすることができ、基材幅方向Yにおける塗工ムラの発生を防止して塗工品質を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態のセンター押圧ローラ50には、基材1を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構55が設けられているので、例えばセンター押圧ローラ50が基材1を押しすぎて塗工膜が薄くなったり、押圧力が弱すぎて塗工膜が厚くなるのを防止することができる。
そして、このダンパ機構50により、ロッドコータ20のロッド23とセンター押圧ローラ50との間に搬送される基材1の水平方向となす角度αを、10°以下に調整しているので、ロッド23と基材1との間に必要量のビードBを確実に形成して、必要な厚さの塗工膜を確実に形成することができる。
さらに、センター押圧ローラ50には、軸方向に対して傾斜した斜線形状の版50aが形成されているので、センター押圧ローラ50が基材1を裏側から押圧しながら回転するときに、斜線形状の版50aにより塗工材2に基材幅方向Yの流れQを生じさせることができるため、基材幅方向Yにおける塗工厚みの均一化を図ることができる。特に、複数の斜線形状の版50aを、所定間隔をおいて平行に形成しているので、塗工材2の基材幅方向Yに生じる流れQの整流化を図ることが可能となり、基材幅方向Yにおける塗工厚みの均一化をより確実なものとすることができる。
【0027】
なお、上記した実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0028】
1…基材
1a…塗工面
2…塗工材
10…塗工装置
20…ロッドコータ
21…液パン
22…回転軸
23…ロッド
30…上流側押圧ローラ
31…回転軸
40…下流側押圧ローラ
41…回転軸
50…センター押圧ローラ
50a…版
51…回転軸
55…ダンパ機構
X…基材搬送方向
Y…基材幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に塗工材を塗工するロッドコータと、前記ロッドコータの上流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する上流側押圧ローラと、前記ロッドコータの下流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する下流側押圧ローラとを有する塗工装置において、
前記上流側押圧ローラと前記下流側押圧ローラとの間であって前記ロッドコータに対向する位置に配置され、前記基材を塗工面とは逆側から前記ロッドコータのロッドに向けて押圧するセンター押圧ローラを有すること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載する塗工装置において、
前記センター押圧ローラには、前記基材を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構が設けられていること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項3】
請求項2に記載する塗工装置において、
前記ダンパ機構により、前記ロッドコータのロッドと前記センター押圧ローラとの間に搬送される前記基材の水平方向となす角度を、10°以下に調整すること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する塗工装置において、
前記センター押圧ローラには、軸方向に対して傾斜した斜線形状の版が形成されていること、
を特徴とする塗工装置。
【請求項5】
基材の表面に塗工材を塗工するロッドコータと、前記ロッドコータの上流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する上流側押圧ローラと、前記ロッドコータの下流側に配置されて前記基材を塗工面とは逆側から押圧する下流側押圧ローラとを使用する塗工方法において、
前記上流側押圧ローラと前記下流側押圧ローラとの間であって前記ロッドコータに対向する位置に配置され、前記基材を塗工面とは逆側から前記ロッドコータのロッドに向けて押圧するセンター押圧ローラを用いること、
を特徴とする塗工方法。
【請求項6】
請求項5に記載する塗工方法において、
前記センター押圧ローラには、前記基材を押圧する押圧力を所定値に保つダンパ機構が設けられていること、
を特徴とする塗工方法。
【請求項7】
請求項6に記載する塗工方法において、
前記ダンパ機構により、前記ロッドコータのロッドと前記センター押圧ローラとの間に搬送される前記基材の水平方向となす角度を、10°以下に調整すること、
を特徴とする塗工方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか1つに記載する塗工方法において、
前記センター押圧ローラには、軸方向に対して傾斜した斜線形状の版が形成されていること、
を特徴とする塗工方法。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のいずれか1つに記載する塗工方法により前記基材に前記塗工材を塗工して電極を製造すること、
を特徴とする電極製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217947(P2012−217947A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87265(P2011−87265)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】