説明

塗布すると色の変化を生じるメイクアップ組成物

【課題】皮膚、唇、又は爪を化粧するためのメイクアップ化粧品組成物であって、該組成物が、皮膚、唇、又は爪に塗布されると、塗布前の該組成物とは異なる色を生じる、メイクアップ化粧品組成物の提供。
【解決手段】メイクアップ化粧品組成物での第1の色を定めるのに十分な量の、少なくとも1種の有色無機顔料[A]、及び、前記組成物を唇、皮膚、又は爪上に塗布した後に現われ、前記第1の色とは全く異なる、第2の色を定めるのに十分な量であり、前記顔料[A]と色が異なり、有機色素レーキから選択される少なくとも1種の顔料[B]から成る、メイクアップ化粧品組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、皮膚、唇、又は体表成長物(superficial body growth)を化粧することを意図した化粧品組成物、それぞれがかかる組成物を含む一連の製品、及び上記組成物を採用するメイクアップ方法に関する。
【0002】
[現状技術]
皮膚又は唇のためのメイクアップ組成物は、塗布された薄膜が、視覚的観点(色、色相)及び機械的観点(薄膜の持続性)の両方から期待される特性を有するように設計される。
【0003】
メイクアップ組成物の製剤に使用される着色剤を選択する通常の基準の中でも、着色剤の色を組成物の本体に忠実に伝える能力を表す、着色剤の「着色力」、及び、着色剤の「被覆力」、すなわち、所与の濃度において、着色剤の色を伝える薄膜の形で、組成物が塗布される基材を均一に被覆する着色剤の能力を挙げることができる。
【0004】
皮膚又は唇を化粧するための組成物の場合は、組成物を皮膚又は唇に塗布すると、メイクアップしていない皮膚又は唇の生来の色とは無関係な演色を有するメイクアップを得ることができるような、着色性及び被覆性を有する着色剤を探すことが好ましい。使用者が、購入時に認める組成物の色と唇に塗布することとなる薄膜の色とを関連付けることができるように、組成物の本体と塗布される薄膜との間で色が統一されていることが、設計者により所望される。
【0005】
スティックの形状で提供される組成物、例えば口紅のスティックなどにおいては、スティック本体の組成物を用いて均一に塗布される薄膜の色に色相及び強度を与えるために、二酸化チタンの強力な隠蔽力が汎用される。
【0006】
使用する人の気分によって色が変わる、ムード口紅が提案されてきた。皮膚の温度又はpHは、ホルモンの増減、ストレス状態、身体活動レベル、又は遺伝因子などの多数の生理的因子に応じて変動し得るので、こうした因子のうちの1つに感受性がある色素又は顔料を含む組成物を塗布された時の人の状態に従って、実質的に異なる色を有する薄膜が得られることを、理論的に想定することができる。
【0007】
かかる製品は、塗布される周囲環境への改変に対して感受性がある色素又は顔料を含んでいる。
【0008】
皮膚の生理的状態によって変動することができる色を有する化合物の一部類は弱酸であり、その共役塩基は、酸性型の色とは全く異なる色を有する。こうした弱酸は、pH指示薬として汎用される。例えば、エオシンは、接触媒質のpHによって色を変える。
【0009】
別の部類は、接触媒質の温度によって色が変わる、「熱互変性(thermochromic)」化合物に関する。紫外線に曝すと色が変わる、光互変性(photochromic)化合物も存在する。
【0010】
最後に、酸化に感受性があり、酸素に触れると色が変わる着色剤もある。
【0011】
皮膚又は唇のpH又は温度に影響を与えることができる生理的因子の数を考慮すると、かかる色素及び顔料を含む組成物から出発し、塗布する度に完全に再現可能な色を生じる薄膜を得ることは特に難しい。
【0012】
さらに、こうした製剤は、製品の保存中に温度変化が起きた場合に、経時的に色が変化する可能性もあり、これは望まれない。
【0013】
ムード口紅に代わるものの一つは、着色表面層(トップコート)の前に塗布される被覆下地(ベースコート)の使用に基づいており、上記被覆下地は、所望の色の変化をもたらすように、上記表面層(トップコート)の特性を改変する特性を有している。しかし、これには2種類の別々の製剤が必要であり、それによりメイクアップ動作が複雑化する。
【0014】
よって、従来技術の製品にはこうした不利益があるために、使用前に提供される通りの組成物の色とは異なる色を有する薄膜を皮膚、唇、又は体表成長物上に付着させ、こうした色の変化が、塗布される皮膚、唇、又は体表成長物のpH又は温度状態とは無関係であるメイクアップ組成物を、使用者が利用できるようにすることが特に必要とされる。
【0015】
仏国特許出願公開第2908643号明細書では、入射光に応じて異なる強度及び異なる波長を反映する2種類の顔料をメイクアップ組成物に組み込むように、対応がなされている。上記組成物は、干渉顔料などの光学効果を有する顔料を含む。
【0016】
仏国特許出願公開第2908656号明細書では、塗布中の製品の色の変化は、色が異なる2種類の組成物を共押出しすることにより得られるので、例えば口紅は、色の異なる2つの部分から構成される。上記文献では、メイクアップ製品の外観と皮膚上のその付着層の色の間で示された色の変化は、共押出しされた2種類の異なる組成物を使用することによって得られる。
【0017】
[本発明の目的]
よって、本発明は、特に、皮膚、唇又は体表成長物を手入れする、又は化粧することを意図した組成物を提供することを目的とする。
【0018】
本発明の別の目的は、一連のメイクアップ製品であって、平均的な使用者が2種類の異なる製品を色によって見分けることが不可能であるように、製品本体では実質的に同一な色を示し、皮膚、唇、又は体表成長物に塗布されると異なる色を生じる、メイクアップ製品を提供することである。
【0019】
本体における色とは、上記組成物が、包装され、使える状態であるときに知覚される通りの、上記組成物の色を意味すると理解される。本体における色は、スティックとして注型された若しくは広口瓶に流し込まれた口紅の色、小瓶に包装された若しくは広口瓶に流し込まれたリップグロス若しくはフェースパウダーの色、又は透明ガラス瓶若しくは製品本体の色が知覚できるような他の任意の適切な透明包装容器に包装されたマニキュア液の色であってもよい。皮膚上に塗布される前の本発明による組成物の厚さは、概して5〜20mmである。
【0020】
本発明の別の目的は、所望の色又はバリエーションを最適化しながら、且つ、得られる色の色相に悪影響を及ぼすおそれがある非相溶性及び/又は不安定性の危険を制限しながら、かかる組成物を調製するための方法を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、使用者にとって易しいメイクアップ方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、工業規模で使用することができる、確実で再現可能な方法で、特に化粧品における技術的問題を解決することである。
【0023】
[発明の概要]
出願人は、驚いたことに、有機色素レーキと、酸化鉄などの無機顔料を組み合わせることによって、かかる結果を得ることが可能であることを発見した。
【0024】
使用者が、本発明による組成物を使用前に見るときに、視覚的に知覚する通りの該組成物の色は、皮膚、唇又は爪などの支持体上の薄層として上記組成物が塗布された後に、視覚的に知覚する該組成物の色とは異なる。
【0025】
本発明の発明者らは、唇上の薄膜の形状で塗布される上記組成物による発色が、上記組成物の本体における色と完全に異なるという点で特に、従来技術の組成物と異なる組成物を得た。色の知覚におけるこの相違は、包装容器内に観察される上記組成物(概して5〜20mm)と皮膚又は唇上に塗布された上記組成物の付着層の厚さ(1mm未満、概して数十〜数百ミクロン)の、厚さの相違から特に生じる。本発明による特定の顔料の混合物を用いて観察される色の変化は、環境又は基材の状態、特にpH、温度、酸素の存在又は入射光に感受性がある色を有する化合物の使用を必要としない。
【0026】
本発明は特に、皮膚、唇、又は爪に塗布されると変化する色を有する組成物に関する。その目的は、より具体的には、塗布前後で対比色ができる限り際立つ組成物を得ることである。よって、本発明の組成物は、使用者が所望の色を選ぶのが容易であるように、包装容器内の組成物と皮膚、唇、又は体表成長物上の上記組成物の付着層とで色相が同一であることが概して求められる、従来のメイクアップ組成物とは根本的に異なる。
【0027】
この結果は特に、少なくとも1種の有色無機顔料と、該無機顔料の色とは異なる色の、少なくとも1種のレーキとの混合物を含む組成物として得られる。
【0028】
本発明は、透明な基剤における、無機顔料と、該無機顔料に対して過剰な有機色素レーキとの組み合わせを提供する。この特定の組み合わせにより、上記無機顔料の色に対応する、上記組成物本体における第1の色を、上記組成物に与えることが可能となる。皮膚上に延ばすと、上記組成物本体で顔料の色により隠されていたレーキの色が、概して極めて薄い、上記組成物の付着層に現われる。
【0029】
[発明の詳細な説明]
よって、本発明は、皮膚、唇、又は体表成長物を化粧するための化粧品組成物であって、
−化粧品基剤、
−上記組成物の、その本体での第1の色を定めるのに十分な量の、少なくとも1種の有色無機顔料[A]、及び、
−上記組成物を唇、皮膚、又は体表成長物上に塗布した後に現われ、上記第1の色とは全く異なる、第2の色を定めるのに十分な量であり、上記顔料[A]と色が異なり、有機色素レーキから選択される少なくとも1種の顔料[B]、
から成る化粧品組成物を目標とする。
【0030】
一実施形態によると、本発明は、皮膚、唇、又は体表成長物を化粧するための化粧品組成物であって、
−化粧品基剤、
−少なくとも1種の有色無機顔料[A]、及び、
−上記顔料[A]の色とは異なる色の、有機色素レーキから選択される少なくとも1種の顔料[B]、
から成り、
顔料[A]及び[B]は、5〜20mmの厚さを有する上記組成物の色が、1mm未満の厚さを有する上記組成物の付着層の色とは異なるのに十分な量である、化粧品組成物を目標とする。
【0031】
以下で定義する通りのΔE値が、少なくとも10単位、好ましくは少なくとも20単位、及び好ましくは少なくとも30単位異なるときに、本発明の意味する範囲内において2つの色は異なると見なすことができる。
【0032】
基剤は、本発明の意味する範囲内において、顔料[A]及び[B]を除く、上記組成物のすべての成分を意味すると理解される。
【0033】
色の変化は、本体での上記組成物と該組成物の薄膜の色の相違を(又は色相の相違も)示すことが可能な任意の手段によって、客観化することができる。
【0034】
色相の相違は、上記組成物の色、及び、皮膚、唇又は体表成長物に塗布された色を特徴付けることが可能なカラーチャートを任意選択により使用して、視覚的に観察することができる。
【0035】
色相の相違は、2つの色相成分a(赤/緑軸)及びb(黄/青軸)、並びに明度成分Lを使用して色を特徴付けることが可能な、CIE Lab表色系を使用して測定することもできる。
【0036】
2つの色試料の色差ΔEは、式:
【数1】


によって与えられ、式中、L、a及びbは、第1の色のCIE Lab測色空間の座標であり、L、a及びbは、第2の色の座標である。
【0037】
訓練を積んでいない観察者は、標準的な測定条件下(光源D65及び10°での観察者)で、ΔEが5の値未満である2つの色の相違を見分けることができないと一般に考えられている。
【0038】
本発明の意味する範囲内において、標準的な測定条件下で、上記式に従って計算されるΔE値が、少なくとも10単位、好ましくは少なくとも20単位、及び好ましくは少なくとも30単位であるとき、2つの色は異なると見なすことができる。
【0039】
本発明の意味する範囲内で、有色無機顔料[A]は、白色ではない無機顔料を意味すると理解される。よって、二酸化チタンは、有色無機顔料[A]の定義から除外される。二酸化チタン又はタルクなどの幾つかの化粧品成分が不透明化剤であることを考慮すると、色の変化の強度を維持するために、本発明による組成物にこれらを組み込むことを制限することが好ましいであろう。概して、上記組成物は、2重量%未満、特に1重量%未満の不透明化充填剤(opacifying filler)を含むことが好ましく、例えば1重量%未満の二酸化チタンを含むことが好ましい。
【0040】
一実施形態によれば、上記組成物は2重量%未満の(1つ又は複数の)不透明化充填剤を含む。不透明化させる性質を有する充填剤の中でも、タルク、デンプン、カオリン、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、有機カルボン酸由来の金属石鹸、合成高分子粉末、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
酸化チタンコーティング雲母などの透明な充填剤を、本発明の組成物の化粧品基剤に組み込むことができる。本発明の意味する範囲内で、酸化チタンコーティング雲母は、上記組成物にいかなる色も付与しないので、顔料ではない。
【0042】
顔料[A]の色及び顔料[B]の色は、温度の変化、pHの変化、又は紫外線に曝されたときに、必ずしも変わる必要はない。本発明の組成物に使用される顔料は、塗布すると色が変化する従来技術の組成物に使用される顔料とは対照的に、非熱互変性、非干渉性、及び非光互変性であることが好ましい。
【0043】
一実施形態によれば、上記組成物の化粧品基剤は、上記組成物本体で半透明又は実質的に透明であることが好ましいであろう。上記基剤の透明度を評価するために、顔料を欠く本発明による化粧品組成物を、メイクアップ製品の使用を意図した形状で、例えばスティックの形状で、又は広口瓶に流し込んで、調製することができる。透明度が評価される上記基剤は、約0.5〜2cmの厚さを有することが好ましいであろう。また、上記基剤は、裸眼を使用して日光で観察されることとなろう。「半透明な」という用語は、「光は通すが、物体を見分けることができない」ということを意味する。「透明な」という用語は、「光を通し、且つ物体を見分けることができる」ということを意味する。
【0044】
有色無機顔料[A]は、カーボンブラック(INCI名 CI77266)、酸化鉄、マンガンバイオレット、群青、酸化クロム、特に酸化クロム水和物、フェリックブルー(ferric blue)及びこれらの混合物から選択することができる。
【0045】
顔料[A]及び[B]は、入射光に応じて異なる強度及び波長を反射しないという意味において、単色であることが好ましい。顔料[A]及び[B]は、非干渉顔料であることが好ましい。
【0046】
酸化鉄の中でも、酸化第二鉄、鉄黄、ベンガラ、及びこれらの混合物から本質的に成る黒色酸化鉄(INCI名 CI77499)を挙げることができる。
【0047】
有利には、顔料[A]は、黒色酸化鉄、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選択される。
【0048】
顔料[B]は、有機色素のレーキから選択される。天然又は合成由来の有機色素は、これらを溶解する液体中で透明である。上記色素の色を低濃度で検出可能とするために、上記色素に不溶性の担体を固定することにより、上記色素を「レーキ」の形で不溶性にする。
【0049】
有機色素レーキは、例えば、D&C黒色2号、FD&C青色1号、FD&C緑色3号、D&C緑色5号、D&Cオレンジ色4号、D&Cオレンジ色5号、D&Cオレンジ色10号、D&C赤色3号、D&C赤色6号、D&C赤色7号、D&C赤色9号、D&C赤色13号、D&C赤色19号、D&C赤色21号、D&C赤色22号、D&C赤色27号、D&C赤色28号、D&C赤色30号、D&C赤色33号、D&C赤色36号、FD&C赤色40号、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号、D&C黄色10号及びコチニールカーマイン(cochineal carmine)から選択される色素のレーキである。
【0050】
上記組成物は、顔料[A]及び[B]に加えて、例えば:
−酸化チタンで被覆された雲母、オキシ塩化ビスマスなどの白色真珠光沢顔料、並びに、
−酸化鉄で被覆された酸化チタンコーティング雲母、フェリックブルー又は酸化クロムで被覆された酸化チタンコーティング雲母、有機顔料で被覆された酸化チタンコーティング雲母、及びオキシ塩化ビスマス系顔料などの有色真珠光沢顔料、
から選択することができる真珠光沢剤も含むことができる。
【0051】
本発明の組成物は、
−その本体での上記組成物に黒色を与えるのに十分な量であり、黒色酸化鉄、カーボンブラック及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の有色無機顔料[A]、並びに、
−皮膚、唇、又は体表成長物上に付着する上記組成物薄膜の、黒以外である色を定めるのに十分な量であり、赤色、緑色、黄色、及び青色の顔料から選択される、少なくとも1種の顔料[B]、
を含むことが有利である。
【0052】
顔料[B]は、赤色色素のレーキ、青色色素のレーキ、黄色色素のレーキ、緑色色素のレーキ、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0053】
第1の代替形態によると、上記組成物は、皮膚、唇、又は爪上に赤色薄膜を生じるのに十分な量の、赤色色素のレーキを含むことを特徴とする。
【0054】
第2の代替形態によると、上記組成物は、皮膚、唇、又は爪上に緑色薄膜を生じるのに十分な量の、緑色色素のレーキ、又は青色色素と黄色色素のレーキの混合物を含むことを特徴とする。
【0055】
第3の代替形態によると、上記組成物は、皮膚、唇、又は爪上に青色薄膜を生じるのに十分な量の、青色色素のレーキを含むことを特徴とする。
【0056】
第4の代替形態によると、上記組成物は、皮膚、唇、又は爪上にラズベリーピンク色の薄膜を生じるのに十分な量の、赤色色素のレーキ、青色色素のレーキ及び黄色色素のレーキを含むことを特徴とする。
【0057】
第5の代替形態によると、上記組成物は、皮膚、唇、又は爪上にチョコレートブラウン色の薄膜を生じるのに十分な量の、赤色色素のレーキ、青色色素のレーキ及び黄色色素のレーキを含むことを特徴とする。
【0058】
第6の代替形態によると、上記組成物は、皮膚、唇、又は爪上に茄子紫(aubergine purple)色の薄膜を生じるのに十分な量の、赤色色素のレーキ、青色色素のレーキ及び黄色色素のレーキを含むことを特徴とする。
【0059】
有色無機顔料[A]は、上記組成物の重量の0.1〜10重量%、有利には0.3〜5重量%を占める。
【0060】
顔料[B]は、上記組成物の重量の0.5〜20重量%、有利には3〜10重量%を占める。
【0061】
一実施形態によると、
−有色無機顔料[A]は、上記組成物の重量の0.1〜10%を占め、且つ、
−顔料[B]は、上記組成物の重量の0.5〜20%を占める。
【0062】
別の実施形態によると、
−有色無機顔料[A]は、上記組成物の重量の0.3〜5重量%を占め、且つ、
−顔料[B]は、上記組成物の重量の3〜10重量%を占める。
【0063】
より具体的には、上記組成物は、0.3〜5重量%の、有利には0.3〜1.5重量%の、黒色酸化鉄、カーボンブラック及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の顔料[A]を含む。
【0064】
好ましくは、顔料[B]/顔料[A]の重量比は、1より大きく、好ましくは2〜15、例えば2〜12である。
【0065】
加えて、本発明の組成物の化粧品基剤は、化粧品として許容できる添加物及び/又は化粧品用活性剤を含むことができる。
【0066】
上記化粧品基剤は特に、皮膚又は唇への快適な塗布を可能にするための、所望の肌触り(硬さ、感触など)及び満足の行く官能特性、使用に適した保持力、特に色(色相及び彩度)及び光沢の面で調和した魅力的な表現、及び既存の標準の観点から許容できる安定性を得ることを可能にする、添加物を含むことができる。
【0067】
よって、上記化粧品基剤は、脂肪相のための構造化剤を含む、少なくとも1種の上記脂肪相を含むことが有利である。
【0068】
脂肪相構造化剤(脂肪相ゲル化剤と呼ばれることもある)は、ポリアミドポリマー、L−グルタミド誘導体、焼成シリカ、少なくとも1つのスチレン単位を含む水添若しくは非水添コポリマー、又はこれらの混合物のうちの1種から選択されることが有利である。
【0069】
ポリアミドポリマーは、ビスジアルキル(C14−18)アミド(エチレンジアミン/水添ダイマージリノール酸)コポリマー、例えば、INCI名が(ダイマージリノール酸ビスジオクタデシルアミド/エチレンジアミン)コポリマーであるコポリマーなどから選択されることが有利である。
【0070】
構造化剤は、ジブチルラウロイルグルタミドの混合物、及び水添(スチレン/メチルスチレン/インデン)コポリマーの混合物を含むことができる。
【0071】
よって、本発明による組成物は、構造化剤、好ましくはポリアミドポリマーを、有利には上記組成物の10〜50重量%、より好ましくは15〜30重量%含む。
【0072】
脂肪相は、好ましくは不揮発性水添ポリアルキレン油、有利には水添ポリイソブテンを含む。上記油は、[水添ポリアルキレン]/[ポリアミドポリマー]の重量比が5/1〜3/2の範囲内、好ましくは4/1〜2/1の間であるような量で、上記組成物中に存在することが好ましい。
【0073】
脂肪相は、ヒドロキシステアリン酸エステル、特にヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルなどの、脂肪酸エステルを含むこともできる。脂肪酸エステルは、[脂肪酸エステル]/[ポリアミドポリマー]の重量比が1/4〜4/1の範囲内、好ましくは1/3〜3/2の間であるような量で、上記組成物中に存在する。
【0074】
脂肪相は、セチルアルコールなどの脂肪アルコールを含むこともできる。
【0075】
色の変化を生むために顔料が分散されている化粧品基剤は、ワックスを含む、唇を手入れする又は化粧するための化粧品組成物に従来使用されている種類のものであってもよい。こうした蝋様の化合物(waxy compound)の存在は、化粧品基剤を不透明にし、それにより、上記組成物本体の色の強度に、場合により悪影響を及ぼすおそれがあるが、本発明の基本としての色の変化の効果に影響を及ぼすことはない。
【0076】
上記基剤はまた、半透明であっても、実質的に透明であってもよい。この実施形態では、上記基剤は、極めてわずかなワックス、好ましくは5重量%未満のワックス、より好ましくは3重量%未満のワックスを含む。上記基剤は、有利にはワックスを欠くことができる。
【0077】
ワックスの中でも、蜜蝋、ラノリン誘導体、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、オーリクリー蝋若しくは木蝋、カカオ脂、パラフィン、ワセリンワックス若しくは亜炭ワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、水添ヒマシ油、水添ホホバ油、水添パーム油、水添牛脂、水添ヤシ油及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0078】
特に好ましい使用によると、上記組成物は以下を含む:
−顔料[A]、有利には黒色酸化鉄を、0.1〜10重量%、有利には0.3〜5重量%、
−赤色色素のレーキ、青色色素のレーキ、黄色色素のレーキ、又はこれらのレーキのうちの少なくとも2種の混合物から選択されることが有利である顔料[B]を、0.5〜20重量%、有利には3〜10重量%、
−ポリアミドポリマー、有利には(ダイマージリノール酸ビスジオクタデシルアミド/エチレンジアミン)コポリマーから選択される、少なくとも1種の脂肪相構造化ポリマーを、10〜30重量%、
−水添ポリアルキレン、有利には水添ポリイソブテンを、30〜80重量%、
−少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基を含む脂肪酸エステル、有利にはヒドロキシステアリン酸エチルヘキシルを、1〜20重量%。
【0079】
本発明の特に好ましい本代替形態では、顔料[A]は、黒色酸化鉄又はカーボンブラックを含み、且つ、上記組成物の0.3〜2重量%、好ましくは上記組成物の0.4〜1.5重量%を占める。
【0080】
本発明の特に好ましい本代替形態では、上記組成物は、以下を追加として含むことができる:
−8〜30個の炭素原子を含む少なくとも1種の脂肪アルコール、有利にはセチルアルコールを、0.5〜5重量%、
−グルタミドから誘導される構造化剤、有利にはジブチルラウロイルグルタミド混合物を、0.5〜5重量%、及び/又は、
−スチレンを含むコポリマー、有利には水添(スチレン/メチルスチレン/インデン)コポリマーを、1〜15重量%。
【0081】
上記組成物は、保湿剤又は湿潤剤、老化防止剤、抗菌剤、紫外線から保護する遮断剤、及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の化粧品用活性剤を、追加として含むことができる。上記組成物は、保存料、抗酸化剤、香料、界面活性剤、レオロジー剤及びこれらの混合物から選択される1種又は複数の添加物を、追加として含むことができる。
【0082】
特に好ましい使用によれば、本発明による組成物は、5重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水を含むという意味で、実質的に無水である。
【0083】
本発明は、唇を化粧することを意図した化粧品組成物の調製に特に適しているが、爪又は皮膚、特に顔又は体の皮膚を化粧するためのいかなる化粧品組成物にも関係する。
【0084】
本発明の組成物から出発し、唇又は皮膚に塗布される、本発明による組成物薄膜は、優れた経時的な保持力をさらに示す。
【0085】
本発明はまた、それぞれが上述の組成物を含む、一連のメイクアップ製品に関する。この一連の製品は、任意選択により包装容器に包装された、数種類の、為されたばかりの本記述に従う組成物の一群、例えば、販売の場で同時に提供され、中に存在する顔料の性質が本質的に異なる組成物の一群を、概して意味すると理解される。
【0086】
一実施形態によれば、本発明は、同じ透明な基剤、並びに異なる顔料[A]及び/又は[B]を含む、数種類の組成物の一群に関する。
【0087】
上記製品は、ある製品を別の製品と見分けることが不可能又は極めて難しいように、上記製品の本体では同一又は実質的に同一な色を示し、且つ、上記製品が皮膚、唇又は体表成長物に塗布された後に、付着した薄膜が異なる色を有する。
【0088】
本発明はまた、上で定義した通りの組成物を少なくとも2種類含む、皮膚、唇、又は体表成長物を化粧するための化粧品組成物のキットに関し、上記キットにおいて、上記組成物は第2の色が異なる。
【0089】
このキットでは、上記組成物の第1の色は、好ましくは黒色である。
【0090】
上述の組成物は、以下の工程によって得ることができる:
−添加物を特に混合及び加熱することにより、組成物の基剤を調製する;
−練り顔料を調製するために、顔料を油中に分散させる;
−上記基剤及び上記練り顔料を混合し、次いで上記混合物を型又は包装容器に流し込む。
【0091】
本発明の組成物は、メイクアップ組成物としての使用に適する肌触りを示す。指又は適切な道具を用いて十分な量の該組成物を取り出し、続いて塗布することができる。該組成物は、モールディングにより形成することができる。本発明の組成物は、固体状、ペースト状、又は液状の肌触りを有することができる。
【0092】
上記組成物は、例えば、上記組成物を取り出せる瓶、また他には広口瓶に包装することができる。
【0093】
好ましい使用によると、このように調製された上記組成物は、スティックの形状にモールディングすることができる。上記形成は、有利には金属又はシリコーンで作製された型に、注型物を流し込むことにより行うことが有利であり、上記注型物は、続いて最終包装容器の部品を構成する機構に取り付けられる。
【0094】
本発明の他の主題は、特に、唇、並びに/又は顔及び/又は体の一部に化粧する効果を得るために、顔及び/又は体の一部分の皮膚並びに/又は唇上に、上で定義した通りの又は上述の工程に従って調製された化粧品組成物を塗布することを含むことを特徴とする、化粧用メイクアップ方法を目標とする。
【0095】
この方法では、上記組成物は、その本体では第1の色を示し、上記組成物を肌、唇、又は体表成長物上に塗布すると、第1とは異なる第2の色を現わすことが有利である。
【0096】
本発明による組成物は、直接唇上に薄膜として塗布することも、有利にはそれ自体が透明又は半透明である無色の口紅下地の上に、表面コート又はトップコートとして塗布することもできる。
【0097】
「口紅下地」は、有色の口紅の薄膜を塗布する前に、唇上に直接塗布される無色の組成物として定義される。
【0098】
唇上に薄膜として塗布された口紅下地は、例えば、使用される有色組成物薄膜の化合物の移りを防止する若しくは遅延させることによって、口紅薄膜の保持力を向上させることにより、化粧の魅力的な効果を延ばすことでき、また他には、柔軟性、保湿性、及び/又は光沢を付与することができる。
【0099】
単なる例示として与えられ、故に決して本発明の範囲を限定すべきものではない実施例を読むことにより、本発明のその他の目的、特徴、及び利点は、当業者には明白に明らかになろう。実施例は、本発明の不可分の一部を成し、よって一般的な範囲を有する。
【0100】
なお、以下の実施例では、すべての百分率は別段の指示がない限り重量基準であり、温度は別段の指示がない限り摂氏で表され、圧力は、別段の指示がない限り気圧である。
【実施例】
【0101】
実施例1
以下の組成物は、口紅として使用することができる。百分率は、最終組成物の重量基準で表される。
【0102】
【表1】

【0103】
組成物の調製工程
A相の成分を、撹拌(装置:Rayneri TurboTest、300回転/分)しながら95℃で溶融する。
B相及び次にC相を添加し、撹拌しながら溶融させる。
D相の顔料を、水添ポリイソブテンの存在下で粉砕する。続いてこの相を、調製した液相に添加する。
この本体が完全に均質になったら、直径12.7mmの円柱状の型に注入し、冷却する。
【0104】
本実施例の処方は、蝋様化合物(waxy compound)を含む。ワックスが存在すると、本体がわずかに不透明になるが、色相は不透明にならない。
上記組成物を唇上に塗布すると、本体の色とは異なる色を有する薄膜を付着させることができる。
上記組成物の本体は黒色を示す。塗布された薄膜は、意外にもラズベリーピンク色を示す。
このように、相当な割合の蝋様化合物を含む基剤を用いて、所望の効果を得ることができる。
【0105】
スティックの色と白紙の板紙上の組成物の付着層の色の、色の相違を、板紙の表面上にスティックを滑らせることにより測定した。2つの測色パラメータを、CS1000分光放射計(Minolta)で測定した。各測定は、板紙又は上記組成物の異なる5箇所の部位で実施した。
【0106】
【表2】

【0107】
実施例2
以下の組成物は、口紅として使用することができ、透明な基剤を含む。百分率は、最終組成物の重量基準で表される。
【0108】
【表3】

【0109】
これらの相を別々に調製し、次に、組み合わせた混合物が確実に均質になるように、Turraxを用いて、95℃で撹拌しながら、高温条件下で順次に、混合する。
【0110】
上記有色組成物は、唇上に直接又は口紅下地の塗布後に塗布される。いずれの場合でも、上記組成物は優れた保持力を示す。
直径12.7mmのスティックの形状である上記組成物の本体は、黒色を示す。唇上に塗布された薄膜は、意外にも赤色を示す。
【0111】
上記組成物のスティックと付着層の色の相違を、実施例1の方法に従って測定した。
【0112】
【表4】

【0113】
実施例3
以下の組成物は、口紅として使用することができる。百分率は、最終組成物の重量基準で表される。
【0114】
【表5】

【0115】
上記組成物を、実施例2と同じ工程に従って調製する。直径12.7mmのスティックの形状である本体は、黒色を示す。塗布すると、薄膜の色はチョコレートブラウン色である。
【0116】
組成物のスティックの色と付着層の色の相違を、実施例1の方法に従って測定した。
【0117】
【表6】

【0118】
実施例4
以下の組成物は、口紅として使用することができる。百分率は、最終組成物の重量基準で表される。
【0119】
【表7】

【0120】
上記組成物を、実施例1と同じ工程に従って調製した。このスティックは、黒色を示す。
塗布すると、唇上に塗布された薄膜の色は茄子紫色である。
【0121】
組成物のスティックと付着層の色の相違を、実施例1の方法に従って得られた。
【0122】
【表8】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、唇、又は爪を化粧するための化粧品組成物であって、
化粧品基剤、
前記組成物の、その本体での第1の色を定めるのに十分な量の、少なくとも1種の有色無機顔料[A]、及び、
前記組成物を唇、皮膚、又は爪上に塗布した後に現われ、前記第1の色とは全く異なる、第2の色を定めるのに十分な量であり、前記顔料[A]と色が異なり、有機色素レーキから選択される少なくとも1種の顔料[B]、
から成る、化粧品組成物。
【請求項2】
顔料[B]/顔料[A]の重量比が2〜15であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化粧品基剤の厚さが5〜20mmであるときに、該化粧品基剤が、半透明又は透明であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記有色無機顔料[A]が、前記組成物の0.1〜10重量%を占め、
前記顔料[B]が、前記組成物の0.5〜20重量%を占めること
を特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記有色無機顔料[A]が、黒色酸化鉄、カーボンブラック、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記色素レーキが、D&C黒色2号、FD&C青色1号、FD&C緑色3号、D&C緑色5号、D&Cオレンジ色4号、D&Cオレンジ色5号、D&Cオレンジ色10号、FD&C赤色3号、D&C赤色6号、D&C赤色7号、D&C赤色9号、D&C赤色13号、D&C赤色19号、D&C赤色21号、D&C赤色22号、D&C赤色27号、D&C赤色28号、D&C赤色30号、D&C赤色33号、D&C赤色36号、FD&C赤色40号、FD&C黄色5号、FD&C黄色6号、D&C黄色10号及びコチニールカーマインから選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
酸化チタンで被覆された雲母、オキシ塩化ビスマスなどの、白色真珠光沢顔料、並びに、
酸化鉄で被覆された酸化チタンコーティング雲母、フェリックブルー又は酸化クロムで被覆された酸化チタンコーティング雲母、有機顔料で被覆された酸化チタンコーティング雲母、及び、オキシ塩化ビスマス系顔料などの、有色真珠光沢顔料、
から選択される、真珠光沢剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
顔料[A]及び[B]が、単色顔料であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
唇を化粧する製品の形状であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。


【公開番号】特開2012−246289(P2012−246289A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−117359(P2012−117359)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】