説明

塗布型鋼板補強材

【課題】 塗布型鋼板補強材において、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させずに化成処理液の汚染を防止でき、かつ低温においても鋼板に歪みが生じないこと。
【解決手段】 塗布型鋼板補強材1は上層部2と下層部3からなり、上層部2は下層部3の約2倍の厚さを有し、剛性に優れ、主として鋼板Fを補強する役割を担い、下層部3は柔軟性と接着性に優れ、主として鋼板Fと上層部2を接着させ歪みを防止する役割を担う。下層部3にはゴムとしてBRゴム等、加硫剤、可塑剤、フィラー、発泡剤5・アクリルパウダー・熱硬化性樹脂等を、上層部2には熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂、硬化剤、繊維状フィラー4、ゴム、発泡剤5を配合した。その結果、補強性については曲げ剛性が大きく剛性に優れ、歪み性も20℃、−30℃のいずれでも歪みが認められず、有機化合物を主成分としているため化成処理液の汚染をも防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有する下層部と剛性を有する上層部とからなり、車両のパネル等に用いられる補強性(剛性)と耐歪み性に優れた塗布型鋼板補強材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車等の車両の車体パネルは、燃費向上のための車両軽量化及び対人保護を目的として、薄くなる傾向にある。このように車体パネルの板厚が薄くなるにしたがって、車体パネルの張り剛性や耐デント性が低下することになる。これに対して、従来は車体パネルの裏側にパネル補強材と称される熱硬化型のエポキシ樹脂製のシート(拘束層としてガラスクロスを使用)を貼付け施工し、乾燥炉で加熱硬化させて補強していた。しかし、かかるシート状の補強材は人手で施工されており、自動化の障害になり工程時間の短縮を阻害するとともに、硬化収縮によるパネル歪みを発生させ、また車両の製造工程中の化成処理工程においてガラスクロスに含まれるケイ素が化成処理液中のフッ化水素と反応し、化成処理液の濃度が低下するという問題も有していた。そこで、特許文献1,2,3に示されるように、化成処理液の濃度低下を防止できるとともにロボットによる自動化の可能な塗装式の鋼板補強材が開発されている。
【0003】
特許文献1に示される発明においては、合成樹脂を含浸した紙からなる拘束層と、数平均分子量500〜20000のゴムと熱可塑性エラストマーとの混合物に充填材・粘着付与剤・軟化剤・架橋剤・発泡剤を配合した熱硬化性樹脂層とからなる鋼板補強材を用いることによって、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の濃度低下を防止することができるとしている。
【0004】
また、特許文献2に示される発明においては、二層の塗布材からなり、中間層は1液熱硬化型エポキシ・ウレタン塗料であり、拘束層は1液熱硬化型エポキシ塗料であって、1液熱硬化型エポキシ・ウレタン塗料は加熱により発泡する塗料である塗布型鋼板補強材を用いることによって、必要な部位へ必要量の補強材の施工を可能にするとともに、施工を塗装ロボットや自動塗装機で行うことができ、加熱硬化時の補強材の収縮による鋼板の歪みを防止でき、さらなる鋼板補強効果が得られるとしている。
【0005】
さらに、特許文献3に示される発明においては、鋼板の上に塗布材料からなる層、さらにその上にシート材料からなる層が積層一体化された複合型鋼板補強材であって、塗布材料としては合成樹脂エマルジョン、ポリブタジエン等の液状ゴム、水系樹脂、溶剤系樹脂に顔料・鱗片状充填材や繊維状充填材等の充填材・添加剤を混合分散したものを用いることによって、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができるとしている。
【特許文献1】特開平10−76586号公報
【特許文献2】特開2001−162222号公報
【特許文献3】特開2004−314463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、特許文献3にかかる鋼板補強材においては、シート状材料を使用しているため、やはり完全な自動化は困難であり、また上記特許文献2にかかる塗布型鋼板補強材においては自動化が可能であるが、剛性がやや大き過ぎて、低温において鋼板に歪みが生じるということが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない塗布型鋼板補強材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、鋼板表面に塗布される下層部と該下層部の上に塗布される上層部とからなる塗布型鋼板補強材であって、前記下層部及び前記上層部は主成分として有機化合物及び/または有機高分子化合物を含有し、前記上層部は前記下層部の厚さ以上の厚さに塗布され、前記下層部は乾燥後に−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が0.5MPa以下でかつ伸び率が約100%〜約200%の範囲内であり、前記上層部は乾燥後に−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が約1000GPa〜約2000GPaの範囲内でかつ伸び率が約1%〜約3%の範囲内であるものである。
【0009】
請求項2の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、請求項1の構成において、前記下層部はゴム、加硫剤、可塑剤、発泡剤及びフィラーを含有し、前記上層部は連続相としての熱硬化性樹脂及び潜在型硬化剤或いは熱硬化性エラストマー及び潜在型架橋剤と、分散相としてのゴムとから構成される海島型ミクロ相分離構造を有し、さらに発泡剤及び繊維状フィラーを含有し、前記ゴムが前記上層部及び前記下層部中にそれぞれ約5重量%〜約10重量%の範囲内で含有されており、前記繊維状フィラーが前記上層部中に約20重量%〜約40重量%の範囲内で含有されているものである。
【0010】
請求項3の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、請求項2の構成において、前記下層部の前記ゴムはスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴムを始めとする防振ゴムであるものである。
【0011】
請求項4の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記下層部は約0.5mm〜約3.0mmの厚さに、前記上層部は約1.5mm〜約4.0mmの厚さに塗布されるものである。
【0012】
請求項5の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、請求項2乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記繊維状フィラーの径が約5μm〜約15μm、長さが約50μm〜約200μmの範囲内であるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、上下二層からなり、下層部及び上層部は主成分として有機化合物及び/または有機高分子化合物を含有し、上層部は下層部以上の厚さに塗布され、下層部は乾燥後に−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が0.5MPa以下でかつ伸び率が約100%〜約200%の範囲内であり、上層部は乾燥後に−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が約1000GPa〜約2000GPaの範囲内でかつ伸び率が約1%〜約3%の範囲内である。
【0014】
本発明者らは鋭意実験研究の結果、塗布型鋼板補強材を上下二層から構成し、上層部を下層部の厚さ以上の厚さとして、下層部に柔軟性を持たせ、上層部に剛性を持たせることによって、低温における耐歪み性と補強性(剛性)を両立できることを見出した。具体的には、下層部の弾性率が0.5MPaを超えると低温において歪みが発生し、伸び率が約100%未満であるとやはり低温において歪みが発生し、伸び率が約200%を超えると剛性が不足して補強性が低くなる。また、上層部の弾性率が約1000GPa未満であると剛性が不足して補強性が低くなり、弾性率が約2000GPaを超えると低温において歪みが発生し、伸び率が約1%未満であるとやはり低温において歪みが発生し、伸び率が約3%を超えると剛性が不足して補強性が低くなる。
【0015】
本発明者らはこれらの知見に基いて本発明を完成したものであり、さらに上下二層を主として有機化合物及び/または有機高分子化合物から構成することによって、水性である化成処理液に溶け出す恐れがなく化成処理液の汚染を防止することができる。
【0016】
このようにして、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない塗布型鋼板補強材となる。
【0017】
請求項2の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、下層部がゴム、加硫剤、可塑剤、発泡剤及びフィラーを含有し、上層部が連続相としての熱硬化性樹脂及び潜在型硬化剤或いは熱硬化性エラストマー及び潜在型架橋剤と、分散相としてのゴムとから構成される海島型ミクロ相分離構造を有し、さらに発泡剤及び繊維状フィラーを含有し、ゴムが上層部及び下層部中にそれぞれ約5重量%〜約10重量%の範囲内で含有されており、繊維状フィラーが上層部中に約20重量%〜約40重量%の範囲内で含有されている。
【0018】
ここで、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。また、「潜在型硬化剤」とは、加熱によって硬化剤としての作用を示すものであり、熱硬化性樹脂の硬化を促進する働きをし、例えば潜在型ジシアンジアミド等を用いることができる。さらに、熱硬化性エラストマーとしては、ポリブタジエン樹脂等を用いることができる。また、「潜在型架橋剤」とは、加熱によって架橋剤としての作用を示すものであり、熱硬化性エラストマーの硬化を促進する働きをする。
【0019】
また、ゴムとしては、ブタジエン―ラテックス(BR)ゴム、スチレン含有率が約35重量%以下のスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴム、アクリロニトリル―ブタジエン―ラテックス(NBR)ゴム等を用いることができる。
【0020】
また、繊維状フィラーとしては、メタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、ウィスカー状炭酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維、ノボロイド繊維、アルミナ−シリカ系繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、等を用いることができる。
【0021】
本発明者らが鋭意実験研究を積み重ねた結果、下層部にゴムを混入することによって塗布型鋼板補強材を塗布して得られる鋼板補強塗膜の耐歪み性が大幅に向上することが分かり、ゴムの下層部中への混入量が約5重量%未満であると低温での耐歪み性が低下し、約10重量%を超えると剛性が低下して鋼板の補強性が不足することが判明した。
【0022】
また、上層部を、ゴムを分散相(島)として、連続相(海)である熱硬化性樹脂及び潜在型硬化剤或いは熱硬化性エラストマー及び潜在型架橋剤中に均一に特定量で分散させた海島構造とし、さらに繊維状フィラーを混入することによって得られる鋼板補強塗膜の剛性が大幅に向上することを見出した。
【0023】
ここで、ゴムの上層部中への混入量が約5重量%未満であると低温での耐歪み性が低下し、約10重量%を超えると剛性が低下して鋼板の補強性が不足することが判明し、繊維状フィラーの上層部中への混入量が約20重量%未満であると剛性が不足し、約40重量%を超えると低温における耐歪み性が低下することが判明した。本発明者らは、これらの知見に基いて本発明を完成したものである。
【0024】
このようにして、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない塗布型鋼板補強材となる。
【0025】
請求項3の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、下層部のゴムがスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴムを始めとする防振ゴムである。
【0026】
前述の如く、塗布型鋼板補強材を上下二層から構成し、上層部を下層部の厚さ以上の厚さとして、下層部に柔軟性を持たせ(−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が0.5MPa以下でかつ伸び率が約100%〜約200%の範囲内)、上層部に剛性を持たせる(−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が約1000GPa〜約2000GPaの範囲内でかつ伸び率が約1%〜約3%の範囲内)ことによって、低温における耐歪み性と補強性(剛性)を両立することができる。
【0027】
そして、さらに本発明者らが鋭意実験研究の結果、下層部のゴムをスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴム、アクリル系ゴム、ポリエチレン系ゴム(EPDM)を始めとする防振ゴムとすることによって、より優れた制振性(振動吸収効果)が得られることを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。この理由としては、防振ゴムの側鎖を構成する重くて大きい原子団(例えば、SBRゴムの場合にはスチレン基)が、外から加わる振動によって内部摩擦熱を発生させて、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する振動減衰機能に優れるためと考えられる。
【0028】
このようにして、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがないだけでなく、制振性にもより優れた塗布型鋼板補強材となる。
【0029】
請求項4の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、上層部の厚さが下層部の厚さ以上であり、下層部が約0.5mm〜約3.0mmの厚さに、上層部が約1.5mm〜約4.0mmの厚さに塗布される。
【0030】
上層部の厚さが下層部の厚さ以上であることを前提として、下層部の厚さが約0.5mm未満であると耐歪み性が低下し、逆に下層部の厚さが約3.0mmを超えると塗布型鋼板補強材全体としての重量が大きくなり、車体パネル等の軽量化という要請に反することとなる。そこで、下層部が約0.5mm〜約3.0mmの厚さに、上層部が約1.5mm〜約4.0mmの厚さに塗布されることとしたものである。また、かかる範囲内の厚さに制限することによって、塗布型鋼板補強材の使用量を必要最小限にすることができ、低コスト化につながるという利点も有している。
【0031】
このようにして、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない塗布型鋼板補強材となる。
【0032】
請求項5の発明にかかる塗布型鋼板補強材は、繊維状フィラーの径が約5μm〜約15μm、長さが約50μm〜約200μmの範囲内である。
【0033】
本発明者らがさらに鋭意実験研究を積み重ねた結果、上層部に混入する繊維状フィラーの径が約5μm〜約15μm、長さが約50μm〜約200μmの範囲内である場合に、より優れた耐歪み性・補強性(曲げ剛性)が得られることを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。
【0034】
このようにして、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない塗布型鋼板補強材となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態にかかる塗布型鋼板補強材について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる塗布型鋼板補強材の構造について、図1の断面図を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態1にかかる塗布型鋼板補強材の構造を示す部分拡大断面図である。図1に示されるように、本実施の形態1にかかる塗布型鋼板補強材1は、上層部2と下層部3の2層構造からなり、上層部2は剛性に優れ、主として鋼板Fを補強する拘束層としての役割を担い、下層部3は柔軟性と接着性に優れ、主として鋼板Fと上層部2を接着させるとともに歪みを防止する接着・緩衝層としての役割を担っている。そして、上層部2には剛性を強化するとともに歪みを吸収する繊維状フィラー4が含有され、さらに上層部2及び下層部3には歪みを吸収するための発泡剤5が含有されている。
【0037】
次に、本実施の形態1にかかる塗布型鋼板補強材1の配合について説明する。下層部3にはゴムとしてブタジエン−ラテックス(BR)ゴム(ゴムA)またはスチレン23重量%のスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴム(ゴムB)を、可塑剤としてフタル酸エステルを、フィラーとして炭酸カルシウムを、添加剤として加硫剤・発泡剤・アクリルパウダー・ビスA型のエポキシ樹脂等を配合した。
【0038】
また、上層部2には連続相としての熱硬化性樹脂としてビスA型のエポキシ樹脂を、硬化剤として潜在型ジシアンジアミドを、分散相としてのゴムとしてアクリロニトリル―ブタジエン―ラテックス(NBR)ゴムを、フィラーとして炭酸カルシウムとワラストナイトを粉砕した繊維状メタケイ酸カルシウムを、添加剤として有機発泡剤を、顔料としてカーボンパウダーを配合した。
【0039】
これらの配合比を変えたものを実施例1〜実施例4まで製造し、さらに比較のために比較例1〜比較例4をも製造して、特性試験を行った。実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例4の各配合を表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、実施例1及び実施例4は下層にスチレン35重量%以下のゴムBを6重量%、実施例2,実施例3及び比較例3はゴムAを6重量%配合しており、いずれも請求項2にかかる発明の条件を満たしている。これに対して、比較例1及び比較例2はスチレン35重量%を超えるスチレン46重量%のスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴム(ゴムC)を6重量%配合している。
【0042】
また、実施例1乃至実施例4及び比較例1は上層に繊維状フィラーを33重量%〜35重量%配合しており、請求項2にかかる発明の条件を満たしているが、比較例2及び比較例3はそれぞれ繊維状フィラーを43.5重量%及び15重量%配合しており、さらに比較例2は発泡剤を配合しておらず、いずれも請求項2にかかる発明の条件を満たしていない。
【0043】
なお、表1に示されるいずれの配合も、有機化合物及び有機高分子化合物を主成分としているため、化成処理工程において、水性である化成処理液の汚染を防止することができる。また、フィラーとして安価な炭酸カルシウム及びワラストナイト(メタケイ酸カルシウム)を用いているため、低コストである。
【0044】
次に、本実施の形態1における特性試験の試験方法について、図2及び図3を参照して説明する。図2は本発明の実施の形態1にかかる曲げ剛性試験の試験方法を示す模式図である。図3(a)は本発明の実施の形態1にかかる耐歪み性試験において歪みが生じない場合を示す模式図であり、(b)は耐歪み性試験において歪みが生じた場合の一例を示す模式図である。
【0045】
[補強性(曲げ剛性)]
25mm×200mm×厚さ0.8mmの油面鋼板Fの片面に塗布型鋼板補強材1を25mm×150mmの大きさ(上層厚さ2mm、下層厚さ1mm)になるように塗布し、180℃で20分保持して熱硬化させて試験片を作製し、この試験片について、図2に示されるように、支持点S1,S2の2点支持の中央において鋼板F側よりくさびK(先端丸みR5)にて押圧して3点曲げを行い、5mmまで曲げて1mm変位時点での剛性(強度)を測定した。
【0046】
試験条件は、支持点S1,S2間距離100mm、圧縮速度1mm/minで行った。同じ試験条件における厚さ0.8mmの鋼板単独での曲げ剛性は10N、厚さ1.0mmの鋼板単独での曲げ剛性は20Nであり、曲げ剛性20N以上の場合を合格と判定した。
【0047】
[歪み性]
歪み性試験は、200mm×300mm×厚さ0.5mmの油面鋼板Fの片面に塗布型鋼板補強材1を50mm×150mmの大きさに塗布して180℃で20分保持して熱硬化させ、反対面に黒色光沢塗料を約20μmの厚さに塗布して140℃で30分乾燥したものを試験片とし、20℃及び−30℃における歪みの発生の有無を目視観察評価して、図3(a)に示されるように歪みの認められないものを○、図3(b)に示されるように歪みの認められたものを×で評価した。
【0048】
以上の補強性(曲げ剛性)及び歪み性についての試験結果を、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例4について、前記表1の下段にまとめて示す。
【0049】
表1に示されるように、実施例1は下層にゴムとして本発明の条件を満たすスチレン23%のゴムBを本発明の条件を満たす6重量%用いており、弾性率が0.4MPa、伸び率が100%でいずれも本発明の条件を満たしている。また、上層にほぼワラストナイト(メタケイ酸カルシウムからなる繊維状フィラー)からなるフィラーを本発明の条件を満たす33重量%用いているため、弾性率が1000GPa、伸び率が3%でいずれも本発明の条件を満たしている。
【0050】
その結果、補強性(曲げ剛性)については曲げ剛性が30Nと大きく剛性に優れ、また歪み性も20℃、−30℃のいずれにおいても歪みが認められず○の評価であり、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない低コストの塗布型鋼板補強材である。
【0051】
また、実施例2は下層にゴムとして本発明の条件を満たすブタジエン−ラテックスのゴムAを本発明の条件を満たす6重量%用いており、弾性率が0.3MPa、伸び率が200%でいずれも本発明の条件を満たしている。また、上層にほぼワラストナイトからなるフィラーを本発明の条件を満たす33重量%用いているため、弾性率が1500GPa、伸び率が1.5%でいずれも本発明の条件を満たしている。
【0052】
その結果、補強性(曲げ剛性)については曲げ剛性が30Nと大きく剛性に優れ、また歪み性も20℃、−30℃のいずれにおいても歪みが認められず○の評価であり、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない低コストの塗布型鋼板補強材である。
【0053】
また、実施例3は下層にゴムとして本発明の条件を満たすブタジエン−ラテックスのゴムAを本発明の条件を満たす6重量%用いており、弾性率が0.3MPa、伸び率が200%でいずれも本発明の条件を満たしている。また、上層にほぼワラストナイトからなるフィラーを本発明の条件を満たす35重量%用いているため、弾性率が2000GPa、伸び率が1%でいずれも本発明の条件を満たしている。
【0054】
その結果、補強性(曲げ剛性)については曲げ剛性が40Nと大きく剛性に優れ、また歪み性も20℃、−30℃のいずれにおいても歪みが認められず○の評価であり、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない低コストの塗布型鋼板補強材である。
【0055】
また、実施例4は下層にゴムとして本発明の条件を満たすスチレン23%のゴムBを本発明の条件を満たす6重量%用いており、弾性率が0.4MPa、伸び率が100%でいずれも本発明の条件を満たしている。また、上層にほぼワラストナイトからなるフィラーを本発明の条件を満たす35重量%用いているため、弾性率が2000GPa、伸び率が1%でいずれも本発明の条件を満たしている。
【0056】
その結果、補強性(曲げ剛性)については曲げ剛性が45Nと大きく剛性に優れ、また歪み性も20℃、−30℃のいずれにおいても歪みが認められず○の評価であり、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない低コストの塗布型鋼板補強材である。
【0057】
これに対して、比較例1は下層にゴムとして本発明の条件を満たさないスチレン46%のゴムCを用いており、弾性率が0.8MPa、伸び率が50%でいずれも本発明の条件を満たしていない。この結果、下層部分の柔軟性が不足することとなり、上層にはほぼワラストナイトからなるフィラーを本発明の条件を満たす36重量%用いており、弾性率が1000GPa、伸び率が1%でいずれも本発明の条件を満たしているにも関わらず、補強性(曲げ剛性)については曲げ剛性が35Nと大きく剛性に優れているが、−30℃において歪みが認められ×の評価であり、低温における耐歪み性が不足している。
【0058】
また、比較例2も下層にゴムとして本発明の条件を満たさないスチレン46%のゴムCを用いており、弾性率が0.8MPa、伸び率が50%でいずれも本発明の条件を満たしていない。さらに、上層にはほぼワラストナイトからなるフィラーを本発明の条件を満たさない43.5重量%も用いており、弾性率が3000GPa、伸び率が1.5%で弾性率が大き過ぎて本発明の条件を満たしていない。この結果、下層部分及び上層部分ともに柔軟性が不足することとなり、曲げ剛性は45Nと大きく剛性に優れているが、20℃、−30℃のいずれにおいても歪みが認められ×の評価であり、耐歪み性が不足していることが分かる。
【0059】
また、比較例3は下層にゴムとして本発明の条件を満たすブタジエン−ラテックスのゴムAを本発明の条件を満たす6重量%用いており、弾性率が0.3MPa、伸び率が200%でいずれも本発明の条件を満たしているが、上層にはほぼワラストナイトからなるフィラーを本発明の条件を満たさない15重量%しか用いておらず、弾性率が500GPa、伸び率が3%で弾性率が小さ過ぎて本発明の条件を満たしていない。この結果、上層部分の剛性が不足することとなり、20℃、−30℃のいずれにおいても歪みは認められず○の評価であり、耐歪み性は優れているが、曲げ剛性が15Nと小さく×の評価であり、補強性が不足していることが分かる。
【0060】
また、比較例4は、上記特許文献2の実施例1をほぼ再現するように配合したものであり、下層がエポキシ−ウレタン系樹脂材料を中心としており、上層がエポキシ樹脂材料を中心としてなるものであるが、下層の弾性率が50MPa、伸び率が10%で、弾性率が大き過ぎ、伸び率が小さ過ぎて本発明の条件を満たしておらず、上層の弾性率が3000GPa、伸び率が1%で、弾性率が大き過ぎて本発明の条件を満たしていない。この結果、下層部分及び上層部分ともに柔軟性が不足することとなり、曲げ剛性は50Nと大きく剛性に優れているが、−30℃において歪みが認められ×の評価であり、また20℃においても若干の歪みが認められ△の評価であり、耐歪み性が不足していることが分かる。
【0061】
このように、比較例1〜比較例4の配合にかかる塗布型鋼板補強材は、いずれも本発明の条件を満たさない点があり、その結果、補強性(曲げ剛性)、耐歪み性のいずれかについて実用性に欠けるものとなっている。これに対して、実施例1〜実施例4の配合にかかる塗布型鋼板補強材は、いずれも本発明の条件を全て満たしており、その結果、補強性(曲げ剛性)、耐歪み性のいずれについても優れたものであり、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがない低コストの塗布型鋼板補強材が得られている。
【0062】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる塗布型鋼板補強材について、図4を参照して説明する。図4は本発明の実施の形態2にかかる塗布型鋼板補強材の損失係数の測定結果を他の3つの比較例と比較して示す図である。
【0063】
本実施の形態2にかかる塗布型鋼板補強材も、図1に示される実施の形態1にかかる塗布型鋼板補強材1と同様に、上層部2と下層部3の2層構造からなり、上層部2は剛性に優れ、主として鋼板Fを補強する拘束層としての役割を担い、下層部3は柔軟性と接着性に優れ、主として鋼板Fと上層部2を接着させるとともに歪みを防止する接着・緩衝層としての役割を担っている。そして、上層部2には剛性を強化するとともに歪みを吸収する繊維状フィラー4が含有され、さらに上層部2及び下層部3には歪みを吸収するための発泡剤5が含有されている。
【0064】
次に、本実施の形態2にかかる塗布型鋼板補強材の配合(実施例5)について説明する。下層部にはゴムとして、防振ゴムとしてのスチレン23.5重量%のスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴムの部分架橋タイプ(ゴムD)を3重量%、完全架橋タイプ(ゴムE)を3重量%、ゴム架橋剤・架橋促進剤を1重量%、添加剤として可塑剤・発泡剤・アクリルパウダー・ビスA型のエポキシ樹脂等を43重量%、フィラーとして炭酸カルシウム等を50重量%配合した。この下層部の配合を、表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
また、上層部には連続相としての熱硬化性樹脂としてビスA型のエポキシ樹脂を38重量%、エポキシ希釈剤を13重量%、硬化剤として潜在型ジシアンジアミド及び硬化促進剤を4重量%、分散相としてのゴムとしてアクリロニトリル―ブタジエン―ラテックス(NBR)ゴムの部分架橋タイプ(ゴムF)を5重量%、フィラーとして炭酸カルシウムとワラストナイトを粉砕した繊維状メタケイ酸カルシウムを37重量%、添加剤として有機発泡剤等を2重量%、顔料としてカーボンパウダーを1重量%配合した。この上層部の配合を、表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
これらの配合からなる塗布型鋼板補強材を、上層部2mm厚、下層部1mm厚となるように鋼板に塗布して、制振性試験及び歪み試験を行った。比較のために、比較例5,比較例6,比較例7の材料による制振性試験及び歪み試験をも行った。本実施の形態2にかかる実施例5、及び比較例5,比較例6,比較例7を構成する材料について、表4にまとめて示す。
【0069】
【表4】

【0070】
表4に示されるように、比較例5,比較例6,比較例7は、いずれも実施例5と同様に上層・下層の二層から構成され、比較例5においては上層として実施例5と同様の材料Aを2mm厚塗布し、下層としては接着剤としてポリ塩化ビニル(PVC)を1mm厚塗布した。比較例6においては、上層として0.2mm厚のガラスクロスを用い、下層として2.5mm厚のブチルゴム(IIR)を使用した。また、比較例7においては、上層として0.1mm厚のガラスクロスを用い、下層として0.8mm厚のエポキシ樹脂を主成分とするプリプレグシートを使用した。
【0071】
次に、これらの塗布型鋼板補強材についての性能試験の試験方法とその結果について、表4の下段及び図4を参照して説明する。
【0072】
まず、制振性試験の試験方法について説明する。幅10mm×長さ220mm×厚さ0.8mmの鋼板の片面に、各材料を10mm×200mmの広さに塗布し、180℃×20分間乾燥させたものを試験片とした。片持ち梁法による損失係数測定を行って、各温度(20℃,40℃,70℃)での二次共振点での損失係数を半値幅法によって算出した。損失係数が大きいほど、振動減衰効果があり、振動放射音を抑制できることとなる。
【0073】
その結果、表4の下段及び図4に示されるように、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材においては、20℃における損失係数が0.12、40℃における損失係数が0.2、70℃における損失係数が0.09、といずれの温度においても充分大きく、制振性に優れていることが分かった。
【0074】
これに対して、比較例6の材料においては、20℃における損失係数が0.13、40℃における損失係数が0.16、70℃における損失係数が0.11、といずれの温度においても充分大きく、制振性に優れていることが判明したが、比較例5の材料においては、20℃における損失係数が0.04、40℃における損失係数が0.05、70℃における損失係数が0.06、また比較例7の材料においては、20℃における損失係数が0.03、40℃における損失係数が0.04、70℃における損失係数が0.06、といずれも小さく、制振性が劣っていることが判明した。
【0075】
また、20℃における共振周波数(張り剛性に比例する)は、表4の下段に示されるように、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材においては195Hz、比較例5の材料においては190Hz、比較例7の材料においては190Hzと高く、剛性に優れていることが分かったが、比較例6の材料においては96Hzと低く、剛性に劣っていることが判明した。
【0076】
次に、歪み試験の試験方法について説明する。幅200mm×長さ300mm×厚さ0.5mmの鋼板の片面に、各材料を50mm×150mmの広さに塗布し、180℃×20分間乾燥させた後に、反対側の面に黒色光沢塗料を20μmの厚さに塗布し、140℃×30分間乾燥させたものを試験片とした。そして、−30℃において、鋼板表面の湾曲等の歪みを目視観察した。
【0077】
その結果、表4の下段に示されるように、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材、及び比較例6の材料においては、−30℃においても黒色光沢塗料を塗布した鋼板に歪みは観察されなかった。これに対して、比較例5及び比較例7の材料においては、−30℃において黒色光沢塗料を塗布した鋼板に歪みが観察され、耐歪み性に劣っていることが判明した。
【0078】
以上のように、表4の下段に示されるように、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材においては、制振性、剛性、耐歪み性の全てについて優れており、総合評価としても○となった。これに対して、比較例5,比較例6,比較例7の材料においては、制振性、剛性、耐歪み性のいずれかについて劣っているという結果が得られ、総合評価としては×の評価となって、実用に耐えないことが判明した。
【0079】
なお、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材は、硬化(乾燥)後においては、下層部は−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が0.5MPa以下でかつ伸び率が約100%〜約200%の範囲内であり、上層部は−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が約1000GPa〜約2000GPaの範囲内でかつ伸び率が約1%〜約3%の範囲内であるという本発明の条件を満たしている。
【0080】
このようにして、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材においては、本発明の条件を全て満たしており、その結果、補強性(曲げ剛性)、耐歪み性のいずれについても優れたものであり、施工を容易に自動化でき、補強効果を低下させることなく化成処理工程における化成処理液の汚染を防止することができ、かつ低温においても鋼板に歪みが生じることがないばかりでなく、制振性にもより優れた低コストの塗布型鋼板補強材となる。
【0081】
さらに、本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材においては、下層部にSBRゴムを使用したために、加熱乾燥前の状態においてもある程度の粘性を有しており、それがために塗装工場におけるボディー洗浄シャワー等によっても飛散することがない。この点については、上層部も同様である。したがって、自動車のボディー、ドア等の塗布型鋼板補強材として用いられた場合でも、加熱乾燥は最終のボディー塗装の乾燥時に同時に行うことによって自動車生産工程の短縮が図られているが、加熱乾燥前でもボディー洗浄シャワーの圧力に耐えることができるので、問題なく使用することができる。
【0082】
この点については、上記実施の形態1における実施例1〜実施例4についても、同様である。また、自動車のドアに本実施の形態2にかかる実施例5の塗布型鋼板補強材を使用することによって、ドア閉め音が低くて収まり感の良い心地よい音となるとともに、スピーカーエンクロージャーとしての制振効果による不要共振防止によって、オーディオ音質も向上するという効果が得られ、この点についても上記実施の形態1における実施例1〜実施例4についても、同様である。
【0083】
本実施の形態2においては、下層の防振ゴムとしてスチレン23.5重量%のスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴムを使用した場合について説明したが、防振ゴムとしてはSBRゴムに限定されるものではなく、アクリル系ゴムやポリエチレンゴム(EPDM)を始めとする他の防振ゴムを用いることもできる。
【0084】
上記各実施の形態においては、上層及び下層に熱硬化型樹脂としてエポキシ樹脂を用いた例について説明しているが、熱硬化型樹脂としてはエポキシ樹脂に限られず、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。
【0085】
また、上記各実施の形態においては、上層及び下層に熱硬化型樹脂のエポキシ樹脂を用いた例について説明しているが、熱硬化型樹脂の代わりにポリブタジエン樹脂等の熱硬化型エラストマーを用いることもできる。
【0086】
さらに、上記各実施の形態においては、繊維状フィラーとしてワラストナイト(珪灰石:メタケイ酸カルシウム)を粉砕してメタケイ酸カルシウム繊維として用いているが、他にも径と長さの条件を満たすものであれば、ケイ酸カルシウム繊維、ウィスカー状炭酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維、ノボロイド繊維、アルミナ−シリカ系繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、等を用いることができる。
【0087】
塗布型鋼板補強材のその他の組成、成分、配合量、材質、大きさ、製造方法等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は本発明の実施の形態1にかかる塗布型鋼板補強材の構造を示す部分拡大断面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる曲げ剛性試験の試験方法を示す模式図である。
【図3】図3(a)は本発明の実施の形態1にかかる耐歪み性試験において歪みが生じない場合を示す模式図であり、(b)は耐歪み性試験において歪みが生じた場合の一例を示す模式図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態に似かかると負荷他行版補強材の損失計数の測定結果を他の3つの比較霊と比較して示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 塗布型鋼板補強材
2 上層部
3 下層部
4 繊維状フィラー
5 発泡剤
F 鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板表面に塗布される下層部と該下層部の上に塗布される上層部とからなる塗布型鋼板補強材であって、
前記下層部及び前記上層部は主成分として有機化合物及び/または有機高分子化合物を含有し、
前記上層部は前記下層部の厚さ以上の厚さに塗布され、
前記下層部は乾燥後に−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が0.5MPa以下でかつ伸び率が約100%〜約200%の範囲内であり、
前記上層部は乾燥後に−30℃〜20℃の温度範囲内において弾性率が約1000GPa〜約2000GPaの範囲内でかつ伸び率が約1%〜約3%の範囲内であることを特徴とする塗布型鋼板補強材。
【請求項2】
前記下層部はゴム、加硫剤、可塑剤、発泡剤及びフィラーを含有し、
前記上層部は連続相としての熱硬化性樹脂及び潜在型硬化剤或いは熱硬化性エラストマー及び潜在型架橋剤と、分散相としてのゴムとから構成される海島型ミクロ相分離構造を有し、さらに発泡剤及び繊維状フィラーを含有し、
前記ゴムが前記上層部及び前記下層部中にそれぞれ約5重量%〜約10重量%の範囲内で含有されており、
前記繊維状フィラーが前記上層部中に約20重量%〜約40重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布型鋼板補強材。
【請求項3】
前記下層部の前記ゴムはスチレン―ブタジエン―ラテックス(SBR)ゴムを始めとする防振ゴムであることを特徴とする請求項2に記載の塗布型鋼板補強材。
【請求項4】
前記下層部は約0.5mm〜約3.0mmの厚さに、前記上層部は約1.5mm〜約4.0mmの厚さに塗布されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の塗布型鋼板補強材。
【請求項5】
前記繊維状フィラーの径が約5μm〜約15μm、長さが約50μm〜約200μmの範囲内であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1つに記載の塗布型鋼板補強材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341243(P2006−341243A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265045(P2005−265045)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】