説明

塗布装置およびノズルのプライミング処理方法

【課題】ノズルのプライミング処理において、ローラによる薬液の巻き取り距離および巻き取り量を少なくし、ローラの洗浄も容易にする方法を提供すること。
【解決手段】プライミングローラ23の長手方向の直上に沿って、ノズル10のスリット状吐出口を対峙させた状態において、前記ノズルより前記ローラに薬液Rを吐出させて、前記ノズルとローラとのギャップ間に薬液が介在される着液ステップが実行される。この後に、前記プライミングローラ23上に吐出された薬液Rを一時的にノズル側に吸引するサックバックステップが実行される。前記サックバックステップの実行により、ローラによる薬液の巻き取り距離が短縮できるので、1つのローラにおいてプライミング処理に利用できる回数を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理基板に対して処理液を塗布する塗布装置およびこれに搭載されたノズルのプライミング処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLCDの製造技術分野においては、LCD基板上に形成された半導体層、絶縁体層、電極層等を選択的に所定のパターンにエッチングする工程が実行される。この場合、前記LCD基板上にフォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光し、これを現像処理するという、いわゆるフォトリソグラフィ技術が応用される。
【0003】
前記したLCD基板上にフォトレジスト液を塗布する場合においては、溶剤に感光性樹脂を溶解してなるレジスト液を帯状に吐出するレジスト供給ノズルが採用され、方形状のLCD基板を前記ノズルの長さ方向に直交する方向に相対的に移動させて塗布する方法が知られている。
この場合、前記レジスト供給ノズルにはLCD基板の幅方向に延びる微小間隔を有するスリット状の吐出開口が備えられ、このスリット状の吐出開口から帯状(線状)に吐出されるレジスト液を基板の表面全体に供給してレジスト層を形成するようになされる。
【0004】
前記した塗布装置に用いられるレジスト供給ノズルは、基板上にレジスト液を塗布する直前にノズルの吐出口に均一にレジスト液を付着させるためのプライミング処理が実行される。
すなわち回転可能なプライミングローラの直上にノズルの吐出口を対峙させて、ノズル吐出口からローラに対してレジスト液を吐出する。そして、ローラを回転させて前記レジスト液を巻き取ることで、ノズル吐出口におけるレジスト液の付着状態が整えられ、ノズル吐出口におけるレジスト液の吐出状態を安定化させることができる。
【0005】
前記したプライミング処理方法およびその装置については、幾つもの提案がなされており、例えば次に示す特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−237046号公報
【0007】
ところで、プライミング処理については、前記したとおりプライミングローラの直上においてノズルより処理液(薬液)であるレジスト液をローラ上に吐出させる動作が伴われ、ローラ上に吐出されたレジスト液はローラの回転によって巻き取られる。
【0008】
図9は、従来のプライミング処理の様子を模式的に示したものであり、プライミングローラ23の直上にスリットノズル10が対峙して、プライミング処理が実行される様子をローラおよびノズルの長手方向に直交する方向で切断した状態の断面図で示している。
図9(A)は、ノズル10より回転停止中のローラ23の頂部中央に予め定められた量のレジスト液Rを吐出し、ノズル10の先端とローラ23との間のギャップにレジスト液Rが介在して、レジスト液Rがローラ23に着液した状態(着液状態)を示している。
この状態で、図9(B)に示すように、数秒程度停止状態(待機状態)になされ、この間において、レジスト液Rがノズル10の吐出口全体に広がるように作用する。
【0009】
続いて、図9(C)にローラ23は、例えば矢印aで示すように時計回り方向に回転駆動され、ローラ23はノズル10から吐出されたレジスト液Rを巻き取るように動作する。前記ローラ23によるレジスト液Rの巻き取り動作により、ノズルとローラ間の薬液の介在状態が解かれ、図9(D)に示すように、レジスト液Rがノズル10の先端から切れた状態(液切れ状態)になされる。
これにより、ノズル10の先端に付着するレジスト液の量が全体に均一となるように調整され、プライミング処理が終了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記したプライミング処理方法においては、ノズル10から規定量のレジスト液を吐出し、これをローラ23によって巻き取るようになされるので、ローラ23上におけるレジスト液の巻き取り距離が相応に長くなる。したがって、ローラの表面位置を変えて、次のプライミング処理を施すにしても、プライミング処理の実行回数を多くとることは不可能となる。
【0011】
また、図9(A)に示すレジスト液Rの着液箇所におけるレジスト液の量が最も多くなり、ローラの回転に伴って液が垂れてローラ上を回り込むなどして、次のプライミング処理におけるローラ上の液の吐出箇所の確保が困難になる。
したがって、プライミングローラを洗浄処理する頻度が多くなり、かつ多量のレジスト液がローラに付着するために、洗浄液の浪費、さらにはプライミング処理によるレジスト液Rの浪費も重なることになる。
【0012】
前記した問題を解消するために、プライミング処理におけるレジスト液の吐出量を少なくするように予め調整することも考えられるが、単に液の吐出量が少なくなるように絞った場合には、スリットノズルの長手方向の全体において一様に液を吐出させることが不可能となり、結果としてノズルの吐出口におけるレジスト液の付着状態を一様に整えることが不可能になる。
すなわち、前記プライミング処理においては、その初期においてローラ上の長手方向に一様にレジスト液が乗るようにして液を広げる作用が必要であり、このためには特に前記した着液の工程において、ある程度の液量をノズルから吐出させる必要がある。
【0013】
本発明は、前記した従来技術の諸問題を解消するためになされたものであり、基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを備えた塗布装置において、プライミングローラ上での処理液(薬液)としてのレジスト液の巻き取り距離および巻き取り量を少なくし、プライミングローラの洗浄も容易にすることができる塗布装置およびノズルのプライミング処理方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するためになされた独立請求項で示すこの発明にかかる塗布装置は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対して前記吐出口から薬液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段とを具備する塗布装置であって、前記塗布装置の一部に配置された前記被処理基板への薬液の塗布処理の準備に用いられるプライミングローラと、前記ノズルの吐出口を前記プライミングローラの直上に対峙させることが可能なノズル移動機構と、前記ノズルに薬液を供給する薬液供給路中に配置され、前記ノズルから吐出された薬液を一時的に吸引することができる減圧手段とが具備され、前記ノズル移動機構により、前記プライミングローラの長手方向の直上に沿って、前記ノズルのスリット状吐出口を対峙させて、前記プライミングローラ上に薬液を吐出するプライミング処理が実行される状態において、前記減圧手段によりプライミングローラ上に吐出された薬液を一時的にノズル側に吸引する動作が実行可能に構成されている点に特徴を有する。
【0015】
また、前記した課題を解決するためになされた独立請求項で示すこの発明にかかる塗布装置におけるノズルのプライミング処理方法は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対して前記吐出口から薬液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段とを具備する塗布装置におけるノズルのプライミング処理方法であって、前記プライミングローラの長手方向の直上に沿って、前記ノズルのスリット状吐出口を対峙させた状態において、前記ノズルより前記ローラに薬液を吐出させて、前記ノズルとローラとの間のギャップに薬液を介在させる着液ステップと、前記プライミングローラ上に吐出された薬液を一時的にノズル側に吸引するサックバックステップと、前記プライミングローラを回転駆動させることで、前記ギャップに介在する薬液をローラ側に巻き取り、ノズルとローラ間の薬液の介在を解いて液切れ状態にする巻き取りステップとを実行する点に特徴を有する。
【0016】
前記した塗布装置およびノズルのプライミング処理方法によると、プライミングローラ上にノズルから薬液が吐出されてプライミング処理が実行される状態において、予め定められた量のレジスト液がノズルから吐出され、ノズルとローラとのギャップ間に薬液が介在された着液状態になされる。その後において、前記プライミングローラ上に吐出された薬液を一時的にノズル側に吸引するサックバックステップが実行される。
【0017】
これによると、最初のステップの着液状態においては、予め定められた量のレジスト液をノズルから吐出させることができるので、レジスト液はノズルの吐出口全体に広がるように作用し、その後のプライミング処理を順調に行うことができる。
その後において、前記サックバック動作が実行されるので、今度はローラ上に余剰に広がろうとするレジスト液が一時的に回収されることになり、プライミングローラ上でのレジスト液の巻き取り距離および巻き取り量を少なくすることができる。
【0018】
したがって、プライミング処理によるローラへのレジスト液の付着量が低減されるため、ローラの洗浄も容易にすることができ、ローラの洗浄液ならびにプライミング処理に基づくレジスト液の浪費も抑制させることができる。
さらに、ローラによるレジスト液の巻き取り距離も短くすることができるので、1つのローラにおいて、プライミング処理に利用できる回数を増大させることができる。これにより、ローラの洗浄頻度を少なくできるのできる、もしくは径の小さなローラを使用することもできるなどの効果も享受することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有するノズルを備えた塗布装置において、プライミングローラ上での処理液の巻き取り距離および巻き取り量を少なくすることができるので、プライミングローラの洗浄も容易にすることができる塗布装置およびノズルのプライミング処理方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかる塗布装置の全体構成を示した平面図である。
【図2】図1に示す塗布装置に搭載されたノズル形態を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるA−A線より矢印方向に視たノズルの拡大断面図である。
【図4】図1に示す塗布装置に搭載されたサックバックバルブの例を示した断面図である。
【図5】図1に示す塗布装置において実行されるプライミング処理の第1の例を示した模式図である。
【図6】同じくプライミング処理の第2の例を示した模式図である。
【図7】同じくプライミング処理の第3の例を示した模式図である。
【図8】同じくプライミング処理の第4の例を示した模式図である。
【図9】従来のプライミング処理の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明にかかる塗布装置およびノズルのプライミング処理方法について、図に基づいて説明する。なお、図1に示す実施の形態は、この発明に係る塗布装置を、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対してレジスト液の塗布膜形成を行うユニットに適用した例に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、塗布装置1はガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上搬送部2Aと、前記浮上搬送部2Aから基板Gを受け取り、コロ搬送するコロ搬送部2Bとを備え、基板Gをいわゆる平流し搬送するように構成されている。前記浮上搬送部2Aにおいては、基板の搬送方向であるX方向に延長された浮上ステージ3が設けられている。
【0023】
浮上ステージ3の上面には、図示するように多数のガス噴出口3aとガス吸気口3bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられ、ガス噴出口3aからの不活性ガスの噴出量と、ガス吸気口3bからの吸気量との圧力負荷を一定にすることによって、ガラス基板Gを浮上させるようになされている。
なお、この実施の形態ではガスの噴出及び吸気により基板Gを浮上させるようにしているが、これに限らず、ガス噴出のみの構成によって基板を浮上させることもできる。
【0024】
また、前記コロ搬送部2Bにおいては、浮上ステージ3の後段に、コロ駆動部4によって回転駆動される複数本のコロ軸4aが並列に設けられている。各コロ軸4aには、複数の搬送コロ4bが取り付けられ、これら搬送コロ4bの回転によって基板Gを搬送するようになされる。
【0025】
また、前記浮上ステージ3の幅方向(Y方向)の左右側方には、X方向に平行に延びる一対のガイドレール5が配置されている。この一対のガイドレール5には、ガラス基板Gの四隅の縁部を下方から吸着保持してガイドレール5上を移動する4つの基板キャリア6が設けられている。これら基板キャリア6により浮上ステージ3上に浮上したガラス基板Gを搬送方向(X方向)に沿って移動させるように作用する。
【0026】
なお、前記浮上搬送部2Aからコロ搬送部2Bへの基板の引き渡しを円滑に行うために、ガイドレール5は前記浮上ステージ3の左右側方だけでなく、コロ搬送部2Bの側方にまで延設されている。また、前記基板キャリア6による基板Gの保持、及び搬送動作は、コンピュータからなる制御部30により制御される。
【0027】
図1に示すように塗布装置1の浮上ステージ3上には、ガラス基板Gにレジスト液を吐出するノズル10が設けられている。前記ノズル10は、Y方向に向けて長い略直方体形状に形成され、ガラス基板GのY方向の幅よりも長く形成されており、その詳細は図2および図3に基づいて後で説明する。
なお、図1に示す構成においては、ノズル10の下方と浮上ステージ3との間においてガラス基板GがX方向に搬送される。すなわち、ガイドレール5及び基板キャリア6により、ノズル10に対し基板Gを相対的に移動させる相対移動手段が構成されている。
【0028】
また、図1に示すようにノズル10の両外側には、X方向に延びる一対のガイドレール21が配置されている。前記ノズル10は、ガイドレール21上を移動するノズルアーム22によって保持されている。そしてノズル10は、ノズルアーム22が有する駆動機構により、ガイドレール21に沿ってX方向に移動可能になされている。加えて、前記ノズルアーム22には、昇降機構が設けられており、これによりノズル10は、所定の高さに昇降可能になされる。
【0029】
かかる構成により、前記ノズル10は、ガラス基板Gにレジスト液を吐出する吐出位置と、それより上流側にあるプライミングローラ23、及び待機部25との間を移動可能になされている。
なお、ノズルアーム22の前記した駆動機構および昇降機構は、コンピュータからなる前記制御部30により制御され、前記ノズル10を基板Gにレジスト液を塗布する位置と、前記基板Gが搬送される領域の上部に固定配置された前記プライミングローラ23、及び待機部25の位置との間で移動させるノズル移動機構を構成している。
【0030】
前記プライミングローラ23は、ノズル10の後述する吐出口14に均一にレジスト液を付着させるためのプライミング処理に用いられる。このローラ23は、洗浄タンク24内に軸周りに回転可能に収容されており、前記制御部30からの指令により、図示せぬ駆動源からの動力を受けて回転制御されるように構成されている。
前記ノズル10のプライミング処理の際には、ローラ23の直上にノズル10の吐出口14を対峙させて、ローラ23を回転させながら、吐出口14からローラ23にレジスト液を吐出する。これにより、吐出口14におけるレジスト液の付着状態が整えられ、吐出口14におけるレジスト液の吐出状態を安定化させることができる。
【0031】
また、前記した待機部25には、前記ノズル10の吐出口14に付着した余分なレジスト液を洗浄し除去するノズル洗浄部25a、およびノズル10よりいわゆるダミー吐出を行うダミーディスペンス部25bとが備えられている。
【0032】
前記した塗布装置1には、他に付帯設備としてレジスト液の供給源40、洗浄液の供給源41が具備され、これらと前記ノズル10との間で、ポンプおよび三方弁等を介して薬液の供給がなされるように構成されている。
すなわち、レジスト液の供給源(図1では、レジスト供給源と標記している。)40には、送出ポンプ42が備えられ、レジスト液の供給源40から送出ポンプ42、三方弁44、減圧手段として機能するサックバックバルブ46、薬液供給路47を介してレジスト液がノズル10に供給できるように構成されている。
【0033】
また、洗浄液供給源41にはノズル10内を洗浄するためのシンナーが貯留され、この洗浄液は、送出ポンプ43、三方弁44、薬液供給ライン47等を介してノズル10に供給できるように構成されている。
そして、前記送出ポンプ42,43、三方弁44およびサックバックバルブ46はコンピュータからなる前記制御部30により動作が制御されるように構成されている。
【0034】
図2および図3は、図1に示す塗布装置1に搭載されたスリットノズル10の構成を示したものである。すなわち、図2はノズルのスリット部分に沿って破断して示した状態の縦断面図であり、図3は図2におけるA−A線から矢印方向に視た状態を拡大して示した断面図である。
【0035】
このスリットノズル10は長尺状に形成された第1と第2のノズルパーツ11,12が所定のギャップを介して対峙した構成にされている。
そして、第1と第2のノズルパーツ11,12のうち、少なくとも一方、すなわち図に示す形態においては、第1のノズルパーツ11の内側面のほぼ中央部に長手方向に沿って半円柱状のくりぬき部13が形成されており、これがノズル10のキャビティを構成している。そして、ノズル10における中央の上端部には前記キャビティ13に連通するようにして薬液導入部15が取り付けられている。
【0036】
前記した構成のノズル10には、その長手方向の中央に形成された薬液導入部15から前記したレジスト液が導入され、レジスト液はキャビティ13を介してノズルの長手方向に流れるとともに、ノズル10の下端部にスリット状に形成された吐出口14よりレジスト液を帯状(線状)に吐出するように作用する。
【0037】
次に図4は、図1に示す塗布装置1に搭載され、ポンプ42,43とノズル10との間の薬液供給路47中に配置されたサックバックバルブ46の例を示すものである。これは、シリンダ46aと、このシリンダ46a内を上下動する弁46bと、弁46bを支持するロッド46cと、前記ロッド46cを上下動させるアクチュエータ46dと、コイル状スプリング46eより構成されている。
【0038】
前記の構成において、アクチュエータ46dが図1に示す制御部30からの指令を受けて作動すると、ロッド46cが図の上方向に移動し、これに伴い弁46bも同方向に移動する。したがって、弁46bの直下における空間容積46fが一時的に拡張して、サックバックバルブ46が接続された前記薬液供給路47内が減圧される。
一方、前記アクチュエータ46dが非動作状態になると、前記スプリング46eによって、弁46bの位置は元の状態に復帰するように構成されている。
【0039】
以上説明した図1〜図4に示す塗布装置1によってなされるノズル10のプライミング処理方法について、図5〜図8に示す各例に基づいて説明する。なお、図5〜図8に示す各例は、ローラ23およびノズル10の長手方向に直交する方向で切断した状態の断面図で示しており、これはすでに説明した従来のプライミング処理方法を示す図9と同様の断面図で示している。
【0040】
図5は、この発明に係るプライミング処理方法の第1の例を示すものである。まず、ノズル10のプライミング動作にあたっては、図1に基づいて説明したとおり、ノズルアーム22を含む前記ノズル移動機構を利用して、ノズル10のスリット状吐出口14が前記プライミングローラ23の長手方向の直上に沿って対峙するように移動される。
【0041】
図5(A)は、プライミング処理の初期において行われる着液ステップを示しており、ノズル10より回転停止中のローラ23の頂部中央に予め定められた量のレジスト液Rが吐出される。これにより、レジスト液Rがローラ23上に着液し、ノズル10の先端とローラ23と間のギャップにレジスト液Rが介在した状態となる。
このステップの実行により、レジスト液Rはローラ23上に広がりつつ、ノズル10のスリット状吐出口14の全体に広がるように作用する。
【0042】
図5(B)は、サックバックステップを示しており、これは減圧手段として作用する前記したサックバックバルブ46の作用を利用するものである。これにより、プライミングローラ23上に吐出されたレジスト液Rは、一時的にノズル10側に吸引するようになされる。
【0043】
続いて図5(C)は、薬液(レジスト液R)の巻き取りステップの初期状態を示しており、ここでは前記プライミングローラ23は、図において矢印a方向、すなわち時計回り方向に回転駆動され、これによりローラ23はノズル10との間のギャップに介在するレジスト液Rをローラ23側に巻き取るように作用する。
【0044】
図5(D)は、前記巻き取りステップの最後の状態を示すものであり、この図に示す例では、前記ギャップに介在する薬液(レジスト液R)は、ローラ23側に巻き取られることで、ノズルとローラ間の介在状態が解かれ、薬液はノズル10の先端から切れた状態(液切れ状態)になされる。
前記液切れ状態において、ノズル10の先端に付着するレジスト液の量は、その長手方向においてほぼ均一となるように調整される。この時点でローラ23の回転駆動は停止され、プライミング処理は終了する。
【0045】
図5に示した例は、サックバックステップを含むこの発明にかかるプライミング処理方法の最も基本的な動作であり、前記した課題を解決するための手段の欄において記載した独自の作用効果を得ることができる。
なお、前記したプライミング処理方法において、図5(B)に示すサックバックステップにおいては、プライミングローラ23の回転は停止させた状態で、ローラに着液した薬液を吸引し、その後に巻き取りステップが開始されるようになされている。
しかしながら、これはサックバックステップの実行中において、前記巻き取りステップが開始されるようにしても同様の効果を得ることができる。
【0046】
図6は、プライミング処理方法の第2の例を示すものである。この例は巻き取りステップとして、プライミングローラの一方向への回転動作に続いて、プライミングローラの逆方向への回転動作が実行されるようになされるものである。
すなわち、図6(A)は、着液ステップを示しており、これはすでに説明した図5(A)に示す着液ステップの例と同様である。
続いて、図6(B)は、サックバックステップを示しており、この例では薬液のサックバック動作と同時にプライミングローラ23が一方向、すなわち矢印a方向に回転駆動されるようになされる。
【0047】
続いて、図6(C)に示すように、プライミングローラ23は他方向、すなわち矢印b方向に回転駆動されるようになされる。この時、図6(C)に示す例では薬液のサックバック動作は停止されているが、この図6(C)に示す状態においてもサックバック動作が継続されていても良い。
【0048】
図6(D)は、薬液がローラ23側に巻き取られることにより液切れ状態になされた例を示しており、前記したサックバック動作およびローラ23の正逆回転の作用により、比較的短いローラ上の回転方向の距離において液切れ状態になされ、正常なプライミング処理がなされることが示されている。
【0049】
図7は、プライミング処理方法の第3の例を示すものである。この例は巻き取りステップの最後においてなされる液切れ状態が促進されるように工夫を施したものである。
すなわち、図7における(A)〜(C)は、すでに説明した図5(A)〜(C)と作用は同一である。
そして図7(D)は、液切れ状態になされる場合を示しており、これは、巻き取りステップの終了時において、前記プライミングローラ23の回転速度を、矢印aで示す回転速度に加えて、矢印cに示すように加速させることで、液切れ状態を促進するように作用させるものである。このような操作を実行することで、ローラ上の比較的短い回転方向の距離において液切れ状態にすることが可能となる。
【0050】
また、液切れ状態を促進するように作用させるには、図7(D)に矢印dで示すようにノズル10を水平方向に移動し、前記ノズル10とプライミングローラ23との水平方向の距離を一時的に離す動作を実行することも効果的である。
図7(D)に示す例では、前記したノズル移動機構を利用してノズル10を図1に示すX方向に移動させることで実現することができ、この動作によっても、ローラ上の比較的短い回転方向の距離において液切れ状態にすることが可能となる。
【0051】
なお、図7(D)に矢印dで示すようにノズル10を水平方向に移動させる代わりに、相対的にローラ23を水平方向に移動させても同様の作用効果を得ることができる。さらに、図7(D)に示すようにローラ23の回転速度を矢印cに示すように加速させる手段と、矢印dで示すようにノズル10を水平方向に移動させる手段を併用すれば、より効果的に液切れ状態にすることができる。
【0052】
図8は、プライミング処理方法の第4の例を示すものである。この例は着液ステップの実行後において、ノズルとローラとの間のギャップを狭める動作が実行され、サックバックステップの実行後において、ノズルとローラとの間のギャップを前記着液ステップの実行時の状態に戻すように動作させるものである。
【0053】
すなわち、図8(A)は、着液ステップを示しており、これはすでに説明した図5(A)に示す着液ステップの例と同様である。
続いて、図8(B)は、サックバックステップを示しており、この例では薬液のサックバック動作と同時に、ノズル10が矢印e方向に下降してローラ23とノズル10との間のギャップが狭められる。
そして、サックバックステップの実行後において、図8(C)に示すようにノズル10が矢印f方向に上昇し、ローラ23とノズル10との間のギャップが前記着液ステップの実行時の状態に戻される。
【0054】
前記した動作によると、ローラとノズル間のギャップが一時的に狭められるので、薬液の吐出量は少なくて済むと同時に、ローラ上の比較的短い回転方向の距離において液切れ状態にすることが可能となる。
加えて、図8(D)に示す液切れ状態になされる場合において、ローラ23の回転速度を、矢印aで示す回転速度に加えて矢印cに示すように加速させることで、効果的に液切れ状態にすることができる。
【0055】
なお、以上説明した実施の形態においては、薬液のサックバック動作を実行するための減圧手段として、サックバックバルブ46を利用するようにしているが、これは図1に示すポンプ42のリロード動作により行うことも可能である。
また、以上は本発明にかかる塗布装置をレジスト塗布処理ユニットに適用した例に基づいて説明したが、本発明にかかる塗布装置は、このようなユニットに限定されることなく、他の基板処理ユニット等にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 塗布装置
10 ノズル
14 吐出口
23 プライミングローラ
42,43 ポンプ
46 減圧手段(サックバックバルブ)
47 薬液供給路
G 被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対して前記吐出口から薬液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段とを具備する塗布装置であって、
前記塗布装置の一部に配置された前記被処理基板への薬液の塗布処理の準備に用いられるプライミングローラと、前記ノズルの吐出口を前記プライミングローラの直上に対峙させることが可能なノズル移動機構と、前記ノズルに薬液を供給する薬液供給路中に配置され、前記ノズルから吐出された薬液を一時的に吸引することができる減圧手段とが具備され、
前記ノズル移動機構により、前記プライミングローラの長手方向の直上に沿って、前記ノズルのスリット状吐出口を対峙させて、前記プライミングローラ上に薬液を吐出するプライミング処理が実行される状態において、前記減圧手段によりプライミングローラ上に吐出された薬液を一時的にノズル側に吸引する動作が実行可能に構成されていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記ノズルと、当該ノズルから薬液を吐出させるポンプとの間の薬液供給路中に設けられ、空間容積を一時的に拡張することができるサックバックバルブであることを特徴とする請求項1に記載された塗布装置。
【請求項3】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有し、前記基板に対して前記吐出口から薬液を吐出するノズルと、前記ノズルに対し前記基板を相対移動させる相対移動手段とを具備する塗布装置におけるノズルのプライミング処理方法であって、
前記プライミングローラの長手方向の直上に沿って、前記ノズルのスリット状吐出口を対峙させた状態において、前記ノズルより前記ローラに薬液を吐出させて、前記ノズルとローラとの間のギャップに薬液を介在させる着液ステップと、
前記プライミングローラ上に吐出された薬液を一時的にノズル側に吸引するサックバックステップと、
前記プライミングローラを回転駆動させることで、前記ギャップに介在する薬液をローラ側に巻き取り、ノズルとローラ間の薬液の介在を解いて液切れ状態にする巻き取りステップと、
を実行することを特徴とするプライミング処理方法。
【請求項4】
前記サックバックステップの実行中において、前記巻き取りステップが開始されることを特徴とする請求項3に記載されたプライミング処理方法。
【請求項5】
前記巻き取りステップは、前記プライミングローラの一方向への回転動作に続いて、プライミングローラの逆方向への回転動作が実行されるようになされ、少なくとも前記プライミングローラの一方向への回転動作中において前記サックバックステップが実行されることを特徴とする請求項3に記載されたプライミング処理方法。
【請求項6】
前記巻き取りステップの終了時において、前記プライミングローラの回転速度を加速させることで、前記液切れ状態にすることを特徴とする請求項3に記載されたプライミング処理方法。
【請求項7】
前記巻き取りステップの終了時において、前記ノズルとプライミングローラとの水平方向の距離を離す動作を実行することで、前記液切れ状態にすることを特徴とする請求項3に記載されたプライミング処理方法。
【請求項8】
前記着液ステップの実行後において、前記ノズルとローラとの間のギャップを狭める動作が実行され、前記サックバックステップの実行後において、前記ノズルとローラとの間のギャップを前記着液ステップの実行時の状態に戻し、前記巻き取りステップが開始されることを特徴とする請求項3に記載されたプライミング処理方法。
【請求項9】
前記巻き取りステップの終了時において、前記プライミングローラの回転速度を加速させることで、前記液切れ状態にすることを特徴とする請求項8に記載されたプライミング処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30202(P2012−30202A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174145(P2010−174145)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】