説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】光学フィルムや磁気記録媒体等の極めて高精度な精密塗布が要求される塗布であっても、塗布ムラ(特に横段上ムラ)のない良好な面状の塗布膜を得ることができる塗布装置及び塗布方法を提供する。
【解決手段】バックアップローラ20に支持された状態で連続走行する帯状支持体の表面に塗布ヘッド50から塗布液14を塗布すると共に、バックアップローラ20を塗布位置と退避位置との間で進退移動させる進退移動機構を有する塗布装置10において、進退移動機構は、バックアップローラ20両端の回転軸を架橋状のフレーム21で回転自在に支持して成るローラユニット25と、バックアップローラ20が塗布位置と退避位置との間で進退するようにローラユニット25を揺動させる揺動手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置及び塗布方法に係り、特に、走行する帯状支持体(以下、ウエブという)に塗布液を高精度に塗布することが要求される塗布において塗布機の近傍に配置されたバックアップローラに係る改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送されるウエブの表面に塗布液を塗布する塗布装置には、塗布ヘッドに対向させるか、又は塗布ヘッドの上流側及び下流側にウエブの搬送を支持するバックアップローラを配置して塗布する塗布装置がある。また、塗布機としては、バー塗布装置(ロッド塗布装置ともいう)、リバースロール塗布装置、グラビアロール塗布装置、スロットダイ塗布装置(例えばエクストルージョン塗布装置等)等がある。これらの塗布装置は、光学フィルム(光学補償フィルム、反射防止フィルム等)や磁気記録媒体等の製造において使用されており、薄膜で且つ塗布ムラがない面質の良好な高精度の精密塗布が要求されている。
【0003】
これらバックアップローラを有する塗布装置では、ウエブを塗布ヘッドとバックアップローラとの間を通す場合、あるいは、塗布開始や終了時において、バックアップローラを塗布位置と退避位置との間で進退移動させる脱着操作を行う。
【0004】
ところで、塗布操作において塗布ヘッドの振動がウエブの塗布面に伝わると塗布ムラとなって現れ、塗布品質を低下させることから、塗布ヘッドの振動を除振したり制振したりして、塗布ヘッドが振動しないようにすることも提案されている。
【0005】
塗布ヘッドではないが、例えば特許文献1の露光装置やデバイス装置では、駆動方向が鉛直方向で対向するように配置した一対のエアダンパと、該エアダンパの内圧を制御する手段を設けてエアダンパの固有振動数を調整する除振装置が開示されている。また、特許文献2には、感光ドラムの剛性を変えることで固有振動数を調整することが開示されている。
【特許文献1】特開平11−315883号公報
【特許文献2】特開平10−222011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学フィルムや磁気記録媒体等の製造における塗布のように薄膜塗布で且つ塗布ムラを極力小さくした高精度の精密塗布が要求される場合に、塗布中のバックアップローラの振動により横段状ムラが発生することがあるという問題がある。塗布中のバックアップローラの振動を低減させる手段として、そのバックアップローラの昇降部の剛性を高めると同時に昇降機構が持つガタツキを低減させる必要がある。通常、バー塗布での脱着は、バックアップローラを垂直に動作させるため、ガイド(例えば、LMガイド)を使う。そのため、ガイドのガタツキがバックアップローラ昇降部全体のガタツキを発生させる原因となる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、光学フィルムや磁気記録媒体等の極めて高精度な塗布が要求される精密塗布であっても、塗布ムラ(特に横段状ムラ)のない良好な面状の塗布膜を得ることができる塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、前記目的を達成するために、バックアップローラに支持された状態で連続走行する帯状支持体の表面に塗布ヘッドから塗布液を塗布すると共に、前記バックアップローラを塗布位置と退避位置との間で進退移動させる進退移動機構を有する塗布装置において、前記進退移動機構は、前記バックアップローラ両端の回転軸を架橋状のフレームで回転自在に支持して成るローラユニットと、前記バックアップローラが前記塗布位置と退避位置との間で進退するように前記ローラユニットを揺動させる揺動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1によれば、バックアップローラ両端の回転軸を架橋状のフレームで回転自在に支持して成るローラユニットを進退移動機構に備えたことで、剛性を上げることができるので、振動を高周波にずらすことができ、振幅の絶対値を抑えることができる。また、バックアップローラが前記塗布位置と退避位置との間で進退するようにローラユニットを揺動させる揺動手段を進退移動機構に備えたことで、塗布中のローラの振動を抑えることができる。このように、バックアップローラによる振動を抑えた状態で塗布するようにしたので、塗布ムラの発生を効果的に抑制することができる。従って、光学フィルムや磁気記録媒体等の極めて高精度な塗布が要求される塗布膜の塗布であっても、良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【0010】
請求項2は請求項1において、前記ローラユニットは、前記塗布ヘッドを挟んだ上流側と下流側との位置に前記バックアップローラを一対設けて成ることを特徴とする。
【0011】
請求項2によれば、ローラユニットは、塗布ヘッドを挟んだ上流側と下流側との位置にバックアップローラを一対設けて成ることで、好適にウエブを押さえることができるので、塗布ムラの発生を更に効果的に抑制することができる。また、ローラユニットに一対のバックアップローラが設けられていることで、さらに塗布ムラを防止できる。
【0012】
請求項3は請求項2において、前記一対のバックアップローラの1本の回転軸中心と、前記揺動手段の揺動軸中心が同一であることを特徴とする。
【0013】
請求項3によれば、バックアップローラの1本の回転中心軸と、揺動手段の揺動軸中心を一致させることで、ローラユニットの振動を更に抑制することができるので、バックアップローラの振動を更に抑制することができる。
【0014】
請求項4は請求項3において、前記一対のバックアップローラのうちの前記回転軸中心と前記揺動軸中心とが同一なバックアップローラは、前記帯状支持体の走行方向下流側のバックアップローラであることを特徴とする。
【0015】
請求項4によれば、一対のバックアップローラのうちの回転軸中心と揺動軸中心とが同一なバックアップローラは、帯状支持体の走行方向下流側のバックアップローラであることで、塗布ムラのない良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【0016】
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記塗布ヘッドは、バー塗布用のヘッドであることを特徴とする。
【0017】
請求項5によれば、塗布ヘッドがバー塗布用のヘッドである場合に、好適に塗布ムラのない良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【0018】
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記塗布液は、光学フィルム又は磁気記録媒体を製造するための塗布液であることを特徴とする。
【0019】
請求項6によれば、塗布液が光学フィルム又は磁気記録媒体を製造するための塗布液である場合に、極めて高精度な塗布が要求されるので、本発明は有効である。
【0020】
請求項7の発明は、前記目的を達成するために、バックアップローラに支持された状態で連続走行する帯状支持体の表面に塗布ヘッドから塗布液を塗布すると共に、前記バックアップローラを塗布位置と退避位置との間で進退移動させて塗り付けの脱着操作を行う塗布方法において、前記バックアップローラ両端の回転軸を架橋状のフレームで回転自在に支持して成るローラユニットごと揺動させることにより前記脱着操作を行うことを特徴とする。
【0021】
ここで、「塗り付けの脱着操作」とは、帯状支持体を塗布ヘッドとバックアップローラとの間に通す時、塗布開始時や終了時、あるいは必要に応じて、塗布ヘッドに対してバックアップローラを進退移動させて、塗布液が帯状支持体に塗り付く状態(着状態)又は塗り付かない状態(脱状態)にする操作をいう。
【0022】
請求項7によれば、バックアップローラ両端の回転軸を回転自在に支持した架橋状のフレームごと揺動させることにより脱着操作を行うことで、バックアップローラの進退移動を行う機構の剛性化を図り易く、且つ進退移動の際のガタツキを低減することができる。これにより、塗布中におけるバックアップローラの振動を低減できるので、塗布膜面の塗布ムラを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光学フィルムや磁気記録媒体等の極めて高精度な塗布が要求される塗布であっても、塗布ムラのない良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面により本発明の塗布方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0025】
図1は、本発明に係る塗布装置をバー塗布装置で示した一例であり、バー塗布装置10は、塗布・計量一体型の一例である。
【0026】
図1に示されるように、塗布・計量一体型のバー塗布装置10は、主として、所望量の塗布液を塗布するバー塗布ヘッド50と、ウエブWの搬送ラインに沿ってバー塗布ヘッドの上流側と下流側とに一対設けられたバックアップローラ20、20とで構成される。
【0027】
バー塗布ヘッド50は、主として、バー28と、バー28を回転自在に支持するバー支持台30と、コーターブロック52、54と、両側の(図では前後の)サイドブロック(図示略)から構成される。バー支持台30と各コーターブロック52、54との間には、ポケット56、58及びスリット60、62が形成され、各ポケット56、58に塗布液が供給される。
【0028】
各ポケット56、58に供給された塗布液は、ウエブWの幅方向に平行でウエブ搬送方向に狭隘なスリット60、62を介してウエブWの幅方向に均一に押し出される。これにより、バー28に対してウエブWの搬送方向の上流側(以下、「1次側」という)には1次側塗布ビード64が形成され、下流側(以下、「2次側」という)に2次側塗布ビード66が形成される。したがって、バー28はこれらの塗布ビード64、66を介して走行するウエブWに所定量の塗布液を転移塗布する。
【0029】
ポケット56、58から過剰に供給された塗布液は、各コーターブロック52、54とウエブWとの間からオーバーフローし、側溝65、67(一部図示)を介して回収される。尚、ポケット56、58への塗布液の供給はポケット56、58の中央部から行なっても、又は端部から行なってもよい。
【0030】
また、バー28は、図示しない回転駆動系により、ウエブWと同方向又は逆方向に回転駆動される。これにより、プレコート装置16によりウエブWに過剰に塗布された塗布液14の過剰分が、バー28により掻き落とされて、所望の塗布液量に計量される。また、バー28を回転させることにより、ウエブWとバー28との間に異物がトラップされることを防止し、異物による塗布故障の発生を防止する。
【0031】
バー28としては、バー表面がフラットなフラット型のバー、バーにワイヤーを密に巻回したワイヤーバー、バーの表面に溝をつけた溝付バー等を使用することができる。
【0032】
かかるバー塗布装置10は、ウエブをバー塗布ヘッドとバックアップローラとの間に通すとき、塗布開始時、あるいは必要に応じてバー塗布ヘッドに対してバックアップローラを進退移動させて脱着操作を行う。
【0033】
図2及び図3は、本発明に係るバックアップローラ20、20の進退移動機構の一例である。ここで、図2において、図2(A)はバックアップローラを退避位置に移動させた場合であり、図2(B)はバックアップローラを塗布位置に移動させた場合であり、図2(C)は図2(B)においてウエブWを通した場合を示した側面図である。図3はそのバックアップローラ20、20の進退移動機構であるローラユニット25の正面図である。
【0034】
ここで、ローラユニット25は、図2及び図3に示すように、バックアップローラ20、20の両端の回転軸20A、20Aが、架橋状のフレーム21に軸受21A、21Aを介して支持されている。尚、軸受21A、21Aにはそれぞれベアリング(不図示)が組み込まれており、それによりバックアップローラはウエブWの搬送とともに回転する。そして、このフレーム21は上流側又は下流側の端にはシリンダー23が取り付けられており、円弧を描くように揺動するようになっている。また、バー塗布装置10とシリンダー23により昇降するローラユニット25は支持台21Bに固定されている。
【0035】
このようにバックアップローラ両端の回転軸を架橋状のフレーム21で回転自在に支持して成るローラユニット25を構成することで、バックアップローラ20が剛性化する。これにより、塗布中にバックアップローラ20が振動しにくくなる。また、仮にバックアップローラ20が振動しても剛性が高くなることで、振動周波数が高周波側にずれるので、振幅の絶対値が小さくなり、横段状ムラになりにくくなる。
【0036】
また、従来のようにバックアップローラ20の両端を一対のLMガイドに支持させて塗布ヘッド50に対して進退移動させる機構は、バックアップローラ20が進退移動するための支点が2つあり、進退移動時の2つの支点の調和を図るために支点に多少の遊びをもたせる必要がある。この遊びによるガタツキがバックアップローラにガタツキを発生させる原因になり塗布中に振動し易くなる。これに対して、本願発明のように、ローラユニット25を揺動させることで進退移動する機構は、支点が揺動軸1つになり遊びをもたせる必要がないのでガタツキが発生しにくくなり、塗布中の振動を抑制できる。また、バックアップローラ20をフレーム21で剛性化することで、揺動する機構が可能となる。
【0037】
このように、バックアップローラによる振動を抑えた状態で塗布するようにしたので、塗布ムラの発生を効果的に抑制することができる。従って、光学フィルムや磁気記録媒体等の極めて高精度な精密塗布が要求される塗布膜の塗布であっても、良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【0038】
そして、図2に示すように、バー塗布ヘッド50の上流側と下流側とに一対設けられたバックアップローラ20、20が同一フレーム(フレーム21)でユニット化されていることが好ましい。一対のバックアップローラが同一フレームでユニット化されていることで、さらに塗布ムラを防止することできる。
【0039】
また、図2に示すように、一対のバックアップローラ20、20の1本の回転軸中心と、揺動軸中心が同一であることが好ましい。バックアップローラの1本の回転中心軸と、揺動軸中心を一致させることで、ローラユニットの振動を更に抑制することができるので、バックアップローラの振動を更に抑制することができる。
【0040】
更に、一対のバックアップローラ20、20のうちの回転軸中心と揺動軸中心とが同一なバックアップローラは、ウエブWの走行方向下流側のバックアップローラであることが好ましい。一対のバックアップローラのうちの回転軸中心と揺動軸中心とが同一なバックアップローラは、ウエブの走行方向下流側のバックアップローラであることで、塗布ムラのない良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【0041】
図4のバー塗布装置10’は塗布・計量別体型の一例である。尚、図1で説明した塗布・計量一体型と同じ部材には同符号を付して説明する。
【0042】
主として、ウエブWに塗布液14を所望の塗布液量よりも過剰に塗布するエクストルージョン型のプレコート装置16と、ウエブWに過剰に塗布された塗布液14の過剰分を掻き取る掻取り用バー装置18と、ウエブWの搬送ラインに沿って設けられた複数のパスローラ20、20とで構成される。
【0043】
エクストルージョン型のプレコート装置16は、ポケット22(又は、「マニホールド」とも称呼される)内に圧送された塗布液14を、ポケット22に連通するスリット24(又は、「スロット」とも称呼される)の出口24Aから、パスローラ20に装架されて矢印方向に一定の速度で走行するウエブWにヘッド先端面26を押し付けながら連続的に吐出する。
【0044】
これにより、掻取り用バー装置18の直前においてウエブWの下面に過剰な塗布液が塗布される。尚、プレコート装置16としては、エクストルージョン型に限定されるものではなく、ウエブWに塗布液を塗布する任意の塗布装置を使用することができる。
【0045】
掻取り用バー装置18は、ウエブWの幅方向と平行に配設された円柱状のバー28をバー支持台30の支持溝30Aに支持して構成され、パスローラ20により、走行するウエブWが塗工用バー28に対して所定のラップ角(巻き掛け角)をもって接触されるように構成されている。
【0046】
バー28を支持する支持溝30Aの形状としては、図5に示されるV字溝、又は図示しないU字溝が一般的に使用される。この支持溝30Aを形成する壁面30Bの長手方向(ウエブ幅方向と同じ)の真直度は、バー28の長手方向(ウエブ幅方向と同じ)の真直度と同等か、それ以上になるように加工される。
【0047】
掻取り用バー装置18においても、図2及び図3に示したローラユニット25とすることで、図1に示したバー塗布装置10と同様に、塗布中のローラの振動を抑えることができる。
【0048】
このように、掻取り用バー装置18においても、バックアップローラによる振動を抑えた状態で塗布することができるで、塗布ムラの発生を効果的に抑制することができる。従って、光学フィルムや磁気記録媒体等の極めて高精度な塗布が要求される塗布膜の塗布であっても、良好な面状の塗布膜を得ることができる。
【0049】
ここで、円弧を描いて揺動するローラユニット25のスウィング動作角度は90°以下が好ましい。そしてベアリング(不図示)は、単列深溝玉軸のものが好ましく、ベアリングのラジアル隙間は40μm以下であることが好ましい。また、バックアップローラがローラユニット25に取り付けられている本数が1本の場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0050】
塗布・計量一体型及び塗布・計量別体型の何れのバー塗布装置10、10’の場合にも、バー28の直径Φは3〜15mmの範囲が好ましく、バー28がワイヤーバーの場合のワイヤー直径Φは0.05〜0.20mmの範囲が好ましい。また、ウエブWの塗布テンション(搬送方向のテンション)は50〜1500N/mの範囲が好ましく、塗布速度は5〜150m/分の範囲が好ましい。また、バー28の異周速比(バー周速度/ウエブ速度)は0.1〜1.5の範囲が好ましい。また、パスローラ20の1回転周期の速度ムラは1.5%以内が好ましく、1.0%以内がより好ましい。
【0051】
以上、本実施の形態では、バー塗布装置で説明したが、バックアップローラを有する塗布装置であれば本願発明を適用することができ、例えば図6に示したエクストルージョン型の塗布装置10’’でもよい。尚、図6の塗布装置10’’は所望量の塗布液を塗布するエクストルージョン型の塗布ヘッド70と、ウエブWを介して塗布ヘッド70に対向して設けられたバックアップローラ20とで構成される。塗布ヘッド70の内部にはマニホールド72とスロット74が形成されており、塗布ヘッド70のマニホールド72に供給された塗布液14はスロット74を介してウエブWに所望量塗布される。
【0052】
本発明で使用するウエブWとしては、一般に、その幅が300〜3000mm、長さが45〜10000m、厚さが2〜200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6 −ナフタレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチックフィルム、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンブテン共重合体等の炭素数が2〜10のα−ポリオレフィン類を塗布又はラミネートした紙等からなる可撓性帯状物あるいは該帯状物を基材としてその表面に加工層を形成した帯状物が含まれる。
【0053】
ウエブWへの塗布液の塗布量としては、2〜15mL/m2 の範囲が好ましく採用できる。また、ウエブWへの塗布液の塗布幅としては、500〜3000mmの範囲が好ましく採用できる。
【0054】
また、塗布液としては、光学フィルムや磁気テープの塗布液のような非ニュートン流体にかぎらず、写真感光層の比較的低粘度のゼラチン溶液をバインダとしてなるようなニュートン流体であってもよい。塗布液の粘度としては、0.8〜10cp(0.8〜10×10-3Pa・s)の範囲が好ましく採用できる。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
次に、図4に示した塗布・計量別体型のバー塗布装置10’を用いて、光学補償フィルム用の塗布液を塗布した実施例を説明する。
【0056】
バックアップローラ20の振動速度(0〜200Hzのオーバーオール値)がどうなるかを試験した。試験の評価は、掻取り用バー装置18のバー28に最も近い上流側のバックアップローラ20について行った。
【0057】
試験は、表1に示すように、ローラの長さ(面長)が1600mm、ローラ軸間距離(軸長)が1800mmのバックアップローラ20を用いた。
【0058】
(光学補償フィルム用塗布液の調製)
下記に示すディスコティック化合物TE−8のR(1)とR(2)の重量比で4:1の混合物に対し、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V♯360、大阪有機科学(株)製)を10重量%、セルロースアセテートプチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)を0.6重量%、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を3重量%、増感剤(カヤキュアーDET−X、日本化薬(株)製)を1重量%添加し、最終的にその混合物の32重量%メチルエチルケトン溶液とした。その液晶性化合物を含む液に、さらにフッ素系界面括性剤(フルオロ脂肪族基含有共重合体、メガファックF780、大日本インキ(株)製)を0.3重量%添加し、塗布液とした。
【0059】
【化1】

【0060】
(塗布条件)
・プレコート装置…エクストルージョン型のスロットダイ
・掻取り用バー装置…直径8mmの円柱状の芯材に0.07mmのワイヤーを密に巻回したワイヤーバー
・塗布速度…20m/分
・塗布テンション…200N/m
(バックアップローラ条件)
・ローラ本体部の直径…95mm
・ローラシャフトの直径…32mm
・パスローラの真円度…0.01mm
・パスローラの円筒度…0.01mm
・掻取り用バー装置のバーからパスローラまでの距離…100mm
(昇降方式)
バックアップローラをガイドにより垂直に動作させた垂直昇降と、バックアップローラを本発明に係るローラユニットによって円弧を描いて揺動するスウィングアームと、の比較を行った。
【0061】
垂直昇降式にはLMガイドにTHK製HSR20A2SSM+520LHMIIを使用し、動作シリンダーには油研工業製F-CJT70−FB50B320Bを使用した。
【0062】
スウィングアームについては、動作シリンダーとして油研工業製CJT70CB50C-350B-BAD−EKおよびCJT70CB50C-350B-DAB−EKを使用した(アームが円弧を描くためガイドは無し)。アーム軸受け部(球面軸受け)はTHK製SB30を使用した。
(評価項目)
ローラ周速度が24m/minと28m/minの場合(ロータリエンコーダー(仙台ニコン社製のRD−5000)で周速度を測定)の振動速度をFFT(小野測器(株)製のCF5220)を使用して測定した。
【0063】
【表1】

【0064】
(試験結果)
表1から分かるように、本発明のスウィングアームで塗布した場合の振動速度は、従来からのバックアップローラをガイドにより垂直に動作させた垂直昇降で塗布した場合の振動速度に比べ、ローラ周速度が6分の1から7分の1となり、塗布中のローラの振動を抑えることができることが分かる。従って、本発明によれば、塗布ムラの発生を効果的に抑制することができた。
【0065】
尚、塗布・計量一体型での実施例は図に示してないが、上記と同様の結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るバー塗布装置であって、塗布・計量一体型の一例を示す側面断面図
【図2】本発明に係るローラユニットを説明する側面図
【図3】本発明に係るローラユニットを説明する正面図
【図4】本発明に係るバー塗布装置であって、塗布・計量別体型の一例を示す側面断面図
【図5】図4における掻取り用バー装置の側面断面図
【図6】エクストルージョン型の塗布装置の一例を示す側面断面図
【符号の説明】
【0067】
10…塗布・計量一体型のバー塗布装置、10’…塗布・計量別体型のバー塗布装置、11…ローラ本体部、13…ローラシャフト、14…塗布液、16…プレコート装置、18…掻取り用バー装置、20…バックアップローラ、21…フレーム、21A…軸受、21B…支持台、23…シリンダー、25…ローラユニット、28…バー、30…バー支持台、50…バー塗布ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップローラに支持された状態で連続走行する帯状支持体の表面に塗布ヘッドから塗布液を塗布すると共に、前記バックアップローラを塗布位置と退避位置との間で進退移動させる進退移動機構を有する塗布装置において、
前記進退移動機構は、
前記バックアップローラ両端の回転軸を架橋状のフレームで回転自在に支持して成るローラユニットと、
前記バックアップローラが前記塗布位置と退避位置との間で進退するように前記ローラユニットを揺動させる揺動手段と、を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記ローラユニットは、
前記塗布ヘッドを挟んだ上流側と下流側との位置に前記バックアップローラを一対設けて成ることを特徴とする請求項1の塗布装置。
【請求項3】
前記一対のバックアップローラの1本の回転軸中心と、前記揺動手段の揺動軸中心が同一であることを特徴とする請求項2の塗布装置。
【請求項4】
前記一対のバックアップローラのうちの前記回転軸中心と前記揺動軸中心とが同一なバックアップローラは、前記帯状支持体の走行方向下流側のバックアップローラであることを特徴とする請求項3の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布ヘッドは、バー塗布用のヘッドであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布液は、光学フィルム又は磁気記録媒体を製造するための塗布液であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の塗布装置。
【請求項7】
バックアップローラに支持された状態で連続走行する帯状支持体の表面に塗布ヘッドから塗布液を塗布すると共に、前記バックアップローラを塗布位置と退避位置との間で進退移動させて塗り付けの脱着操作を行う塗布方法において、
前記バックアップローラ両端の回転軸を架橋状のフレームで回転自在に支持して成るローラユニットごと揺動させることにより前記脱着操作を行うことを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−221085(P2008−221085A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60717(P2007−60717)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】