説明

塗布装置

【課題】 大きな塗布領域に均一にムラなく、色度の仕様に関する要求を満たすカラーフィルターを低コストで実現する塗布装置を提供する。
【解決手段】 インクジェットヘッドが持つ前記の複数のインクジェットノズルを、その配列の長手方向に複数(n)の群に分割し、前記の複数のインクジェットヘッドを、分割したインクジェットノズルの1つの分割単位でそのインクジェットノズルの配列の長手方向に位置をずらしてインクジェットヘッドの長手方向に、少なくともその分割した数(n)+1以上の列に規則的に配列して前記塗布対象物に塗布材を供給する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持ステージに保持された塗布対象物に対して、複数のインクジェットノズルを有するインクジェットヘッドによって塗布材を供給する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の情報端末の画像表示技術の進展は目を見張るものがあり、大画面のものや、或いは小型の画面でも、非常に高い精細度の表示機器(ディスプレイ)が製造、実用化されている。そのような状況の中、低コストで高品位な画像表示を可能とするディスプレイに対する要求が強い。こうした要求に応えるディスプレイのキーデバイスとして、カラーフィルタがあり、そのカラーフィルタ製造方法・装置にも様々な工夫が取り入れられている。
【0003】
そうした製造方法・装置にむけた開発技術の一つに、従来からの、遮光機能を果たす種々の材料によってマトリクス状に遮光部を形成したガラス基板等において、形成されたそのマトリクス状の遮光部のマス目にコーティング技術を利用してガラス基板等へ着色材を塗布している。しかしこの工法ではRGB3色の着色の工程それぞれが独立しており、それぞれの工程で、遮光などのための非常に高い精度を要求する遮蔽部材(マスク)を必要とし、工数的にも、使用する装置及び部材といった点でも製造コストが高くつくという問題を抱えていた。現在そういった工法に代わり、最近ではインクジェットヘッドを装備した塗布装置を用いて、マトリクス状に遮光部を形成したガラス基板等上に着色材料をインクジェットヘッドのインクジェットノズルから供給・塗布してカラーフィルタを製造する方法が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−273868
【特許文献2】特許第3925525号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットヘッドを用いて着色材料等を塗布する場合、大画面をもつディスプレイなど大きな面積に着色材料等を塗布する場合、或いは個々の製品に必要な塗布面積が小さいものでも大量に一枚の基板に同時並行で塗布工程を経て生産しようとすると、結果として大型のディスプレイと同じように大きな部品として有効な領域に着色材料等を塗布するために大量の着色材料等を供給する必要がある。こうした場合、効率的に塗布工程を完了させるには、大きな領域(幅)に一度の塗布装置の走査(移動)で材料を供給・塗布する必要があり、着色材料を塗布するインクジェットヘッドを複数で並列に配置する必要がある。しかし、単純にインクジェットヘッドを複数で並列に配置すると展開したインクジェットヘッド部全体の横幅が大きくなる。
【0006】
これを解消する方法として特許文献1ではインクジェットヘッドの配列・配置において、それぞれのインクジェットヘッドを傾けて配置する方法が開示されている。
【0007】
また、上記のような大きな塗布の領域を少ない塗布の工程で実現するには、一定の限定幅のインクジェットノズルをもつインクジェットヘッドを必要数配列して移動する架台に装着することにより、一度の塗布動作(工程)で済むよう大型の塗布装置が必要になる。こうした場合、複数のインクジェットヘッドの配列によっては、その配列による弊害、例えばインクの吐出量の偏りによる塗布量のバラツキ、結果としての色のムラが発生することがある。
【0008】
特許文献2では、こうした弊害を避ける一案が開示されており、塗布装置および塗布方法の導入により色ムラの発生が抑えることができると開示している。しかしながら、特許文献2で従来の複数のインクジェットヘッドを配列した液の塗布によるカラーフィルタの製造装置では、インクジェットヘッドの両端の吐出量の低いインクジェットノズルがそのままで連続しており、この構成による塗布では部分的に塗布量が低いインクジェットノズルによる吐出・塗布された区画が移動方向に、同じインクジェットノズルの吐出・塗布による着色材料の量が少ない塗布の区画で連続し、該当する着色材料による色の透過色に欠陥が線状に起こる可能性がある。また吐出量の低い部分を使用しないように、移動方向に直角な方向に重ねあわせてインクジェットヘッドを配列・配置すれば、インクジェットヘッドの配置スペースに大きな無駄が生じて装置の大型化等を誘因し、またすべてのインクジェットヘッドの両端のノズルを使用しないのは不経済である。
【0009】
こうした状況から、本発明者等は現状のインクジェットヘッドによる塗布に適用する塗布方法・装置の開発に取り組む中で、従来のインクジェットヘッドにおいて特許文献2でも触れているようにインクジェットヘッドの1つのユニットの中に構成されたインクジェットノズル列の各インクジェットノズルからの着色料の吐出量にバラツキがあり、両端近傍の極く限られたノズルの吐出量が少ないことを確認した。
【0010】
そして、特許文献2のようなインクジェットヘッドの端部にあるインクジェットノズルに不可避的に現出する着色材料の吐出量の少ないインクジェットノズルを利用しても、カラーフィルターに要求される色度の許容値である千分の三、それを着色材料のカラーフィルター基板それぞれの画素への塗布量の許容値で換算して3%以内を実現する塗布方法及び塗布装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明では、塗布対象物を保持する保持ステージと、前記塗布対象物に塗布材を供給する複数のインクジェットノズルを有する複数のインクジェットヘッドとにより、前記インクジェットヘッドと前記保持ステージを相対的に移動して、前記塗布対象物に塗布材を供給するためのインクジェットノズルを選択するよう前記インクジェットヘッドを制御する制御手段とを備えた塗布装置において、
前記インクジェットヘッドが持つ前記の複数のインクジェットノズルを、その配列の長手方向に複数(n)の群(ブロック)に分割し、前記の複数のインクジェットヘッドを、分割したインクジェットノズルの1つの分割単位でそのインクジェットノズルの配列の長手方向に位置をずらしてインクジェットヘッドの長手方向に、少なくともその分割した数(n)+1以上の列に規則的に配列して前記塗布対象物に塗布材を供給する構成とした。
【0012】
また、前記制御手段は、塗布材の供給量を一定量にすべくインクジェットノズルを選択し、かつ配列された並列するインクジェットヘッドのうち、分割数(n)番目のインクジェットヘッドの配列より外側の部分のインクジェットノズルの動作を停止するよう前記インクジェットヘッドを制御する構成とした。
【0013】
さらに、前記制御手段は、塗布材の供給量を許容誤差範囲内にすべくインクジェットノズルを選択し、かつ配列された並列するインクジェットヘッドのうち、分割数(n)番目のインクジェットヘッドの配列より外側の部分のインクジェットノズルの動作を停止するよう前記インクジェットヘッドを制御する構成とした。
【0014】
また、前記インクジェットヘッドを複数持つインクジェットヘッド群と、前記インクジェットヘッド内のインクジェットノズルから吐出される吐出1回当たりの量を変化させるノズル制御手段と、前記インクジェットヘッド内の各インクジェットノズルから吐出される吐出1回当たりの量の合計をインクジェットヘッド毎に所定量に近づけるようにノズル制御手段を制御する上位制御手段とをさらに備える構成とした。
【0015】
そして、前記塗布対象物に各インクジェットノズルから1回の動作で供給された塗布材の量を計測する計測手段と、各インクジェットノズル毎の計測された量を保持する保持手段と、保持手段に更新・保存された保持データを参照して、前記塗布対象物に塗布材を供給するためのインクジェットノズルを選択するよう前記インクジェットヘッドを制御する制御手段とを備える構成とした。
【発明の効果】
【0016】
上記のような請求項1による構成とすることで、単位面積あたりの塗布量に応じた数のインクジェットノズルを持つインクジェットヘッドを必要数準備して、そのインクジェットノズルに要求される配列のピッチ密度を実現する物理上の制約、つまり安定した塗布材の吐出を行うインクジェットノズルを信頼性が高く、耐久性のある装置として構成する必要上の制約からも、その制約を払拭する密集度以下になるように、そのインクジェットヘッド内のインクジェットノズルを、分割数(n)を決めて複数の群(ブロック)に分け、その分割数(n)+1以上の並行配列させたインクジェットヘッドの列の数で構成し、その分割したインクジェットノズルの1つの分割単位で、そのインクジェットノズルの配列の長手方向に隣り合った列のインクジェットヘッドの位置をずらして規則的に連続配列して、それぞれ塗布方向に並んだ列のインクジェットヘッド内のインクジェットノズルを選択動作させて塗布材の吐出を制御して塗布装置として動作させることで、
インクジェットヘッドに配列された複数のインクジェットノズルのうちの両端の数ノズルがその他の各インクジェットノズルとの吐出速度の差が10〜15%程度あって、結果としてそのインクジェットノズルからの吐出量が8%程度少なくても、吐出すべきインクジェットノズルを選択し、塗布領域に必要な塗布材の量に応じた吐出数で吐出する制御を行い、塗布する基板の所定の塗布領域の各部位における個々の領域への塗布量の許容差内に収めることが可能となり、例えば代表的な応用例である液晶表示装置に組み込まれるカラーフィルターにおいて、結果的に従来の方法で作製されたカラーフィルタのRGB各透過色の色度の許容値である千分の3以内に収めることが可能であり、特にインクジェットヘッドに配列された両端のインクジェットノズルが偏在する部分の塗布量が不足し、色乗りの悪い「白ヌケ」が集中して発生することも無く、基板の全域で、従来法によるカラーフィルタと同様の塗布後の色度(カラーフィルタとしての品質)を実現することができる。
【0017】
つまり、高品位なカラーフィルタを、高価なマスキング部材など製造間接部材等を必要とせず、従来のコーティング法で前工程で被膜した着色材料を剥離・除去すること等による部材のロスも少なく、低コストでカラーフィルタを製造することが可能な塗布装置を提供することができる。
【0018】
また、インクジェットヘッドの配置をインクジェットヘッド内のインクジェットノズルを複数に分割して、その分割されたブロックを1ブロックづつシフトする配置の配列に変えたことにより、各色に複数の列で配列し、さらにRGB3色分のインクジェットヘッドを装備した塗布部分の走査方向の装置の寸法を小さくでき、小型の塗布装置の実現にも寄与することができる。
【0019】
請求項2によれば、塗布材の供給を一定量にして、基板への塗布量を平均化するインクジェットノズルの制御を行なうことに加えて、両端から分割数(n)番目の列のインクジェットヘッドのインクジェットノズルより外側に位置するインクジェットヘッドのインクジェットノズルからの吐出を停止することによれば、無効な塗布材の吐出がなくなり、省資源の観点からも好ましい塗布装置とすることができる。
【0020】
請求項3によれば、塗布材の供給の最適化を目指し、供給量を許容誤差範囲内に収まるようにインクジェットヘッド内のインクジェットノズルの選択を制御することで、吐出量の最適化に加えて、塗布範囲外に位置するインクジェットヘッドのインクジェットノズルからの無効な塗布材料の吐出を停止することによれば、省資源の効果を一層高めることになる。
【0021】
請求項4によれば、インクジェットヘッドごとの各インクジェットノズルからの1回の吐出量を変化させるノズル制御手段、及びインクジェットヘッドごとの各インクジェットノズルからの1回の吐出量を所定の量に制御する上位制御手段によって、1回の吐出量のバラツキを基板の全塗布領域でならすことによれば、微小領域だけの色度の差を低減するだけでなく、基板の全領域においても色度の差を所定の範囲に収めることができることになる。
【0022】
請求項5によれば、各インクジェットノズルから1回の吐出動作で供給する塗布材の量を計測し、計測した吐出量のデータを更新・保存そして保持し、それを参照してインクジェットノズルの選択や吐出量を増減・微調して吐出を制御すること等により、運転中に吐出量の変化を補正しながら、継続して塗布量を均一に保ち動作させることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の塗布装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下においては、カラーフィルタ製造装置を例にとって説明している。
【0024】
図1はカラーフィルタ製造装置の一実施形態を示す斜視図である。この例のカラーフィルタ製造装置は、機台1上に吸着テーブル3、塗布ガントリー4、カメラガントリー6などを支承している。保持ステージである吸着テーブル3は、ガラス基板2を吸着保持するものであり、このガラス基板2の位置決めを達成するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、回転駆動されるとともに、Y方向に駆動される。塗布ガントリー4は、インクジェットヘッドバー5を保持するものであり、ガラス基板2に着色材料を塗布するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、X方向に駆動される。また、ガラス基板2に対する相対位置を調整するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、Z方向、Y方向に駆動される。
【0025】
カメラガントリー6は、ガラス基板2のアラインメントのためのアラインメントカメラ7、8を保持しており、そしてガラス基板2に供給された着色材料を検出するための計測手段であるスキャンカメラ9を保持することがより好ましく、アラインメント、着色材料検出のために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、X方向に駆動される。また、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、アラインメントカメラ7、8、スキャンカメラ9をY方向に駆動する。そしてアラインメントカメラ7、8はガラス基板2のマーク(図示せず)を検出するものであり、アラインメントカメラ7、8によるマーク検出結果に基づいて吸着テーブル3を回転させ、および/またはY方向に移動させることにより、ガラス基板2のアラインメントを達成することができる。X方向のアライメント誤差は吐出タイミングを調整することで達成することができる。ここで、X、Yは、吸着テーブル3により吸着保持されたガラス基板2の上面と平行な平面を規定すべく設定された互いに直交する方向を表し、Zは、X、Yにより規定された平面と直交する方向を表している。
【0026】
なお、スキャンカメラ9に代えて二次元CCDカメラを採用することによれば、着弾痕の高さを計測することもでき、使用する着色材料について事前に得た着弾時の液滴の形状により、その高さの計測によって液滴の体積を算出することが可能であり、より精度の高い各インクジェットノズルからの着色材料の吐出量を知ることができる。
【0027】
このインクジェットヘッドバー5は、複数個のインクジェットヘッド51を整列させてなるものであり、各インクジェットヘッド51は、内部に複数個のインクジェットノズル52を整列形成させてなるものである。そして、複数個のインクジェットヘッド51の配列は、1つのインクジェットヘッド51に配列形成された全てのインクジェットノズル52を複数のブロックに分割し、隣り合うインクジェットヘッド51の配列を1ブロックづつシフトさせてX方向の間隔、Y方向の間隔がそれぞれ所定の間隔となるように設定されている。
【0028】
図2a)はインクジェットヘッドバー5の構成を示す一例の概略図である。この例では一つのインクジェットヘッド51を4つのブロックに分割したものを示しており、5列で塗布領域をカバーする構成とした場合を示している。このインクジェットヘッド51の連続配列により一つのインクジェットヘッド51の実効塗布幅を、ガラス基板等の塗布対象物の塗布幅に合わせて必要な数だけ並列に装備することで実現する。このインクジェットヘッド51群を装備したインクジェットヘッドバー5を図中矢印Xの方向に往復移動させて、インクジェットノズル52からの着色材料の吐出・塗布を行う。
【0029】
実際のインクジェットノズル52からの着色材料の吐出位置は、図2b)で示すように塗布領域に吐出する、丸で囲まれた液滴の配列番号(1)〜(4)で連続して塗布領域を埋めていく。インクジェットヘッド51のどのブロックが受け持つかは、図2c)の表のようなブロックの5通りの組合せを基本としてインクジェットノズル52の吐出制御を行う。つまり、A列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(1)の位置、B列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(2)の位置、C列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(3)の位置、D列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(4)の位置、そしてE列のインクジェット51のインクジェットノズル52はそれぞれのブロックで(1)から(4)の位置に、図示しない制御手段による吐出制御により着色材料を吐出・塗布する。
【0030】
この例では、第5のE列のインクジェットヘッド51内に整列形成するインクジェットノズル52のそれぞれの配置が、分割したブロックごとに1ピッチづつずれており、インクジェットヘッド51の製作に配慮が必要となる。
【0031】
一方で、このインクジェットノズル52の吐出位置の配列は、この図2の例以外にも、第一列のインクジェットヘッド51(図2の例ではA列)に(2)や(3)或いは(4)の位置に着色材料の着弾痕を形成することも可能であり、それぞれのインクジェットヘッド51の順序・配置とは無関係に組合せを設定し、配列したインクジェットヘッド51により連続した設定の塗布ピッチで着色材料を吐出すれば仕様に合致したカラーフィルタができることは自明である。
【0032】
また、第1列から第3列のハッチングしたブロックは、塗布対象物の塗布領域の枠外に位置して、着色材料の吐出を禁止する必要のあるブロックで、制御手段による適切な制御により、着色材料の無駄な吐出を避けることができる。
【0033】
図3a)はインクジェットヘッドバー5の構成を示す他の例の概略図である。この例では、同じく4つのブロックに分割したインクジェットヘッド51を8列で塗布領域をカバーする構成とした場合を示している。このインクジェットヘッド51構成の連続配列により一つのインクジェットヘッド51の実効塗布幅を、ガラス基板等の塗布対象物の塗布幅に合わせて必要な数だけ並列に装備することで実現することは同じである。
【0034】
インクジェットノズル52からの着色材料の吐出位置は、図3b)で示すように前述の例と同じように塗布領域に吐出する液滴の配列(1)〜(4)で連続して塗布領域を埋めていく。インクジェットヘッド51のどのブロックが吐出を受け持つかは、図3c)の表のようなブロックの8通りの組合せが基本となりインクジェットノズル52の吐出制御を行う。つまり、A列及びE列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(1)の位置、B列及びF列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(2)の位置、C列及びG列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(3)の位置、D列及びH列のインクジェット51のインクジェットノズル52は(4)の位置に着色材料を吐出する。
【0035】
実際のインクジェットノズル52からの着色材料の吐出シーケンス、つまりそれぞれの液滴の吐出を前記図2の例と比べると、第5列から第8列のインクジェットヘッド51の分割したブロック内のインクジェットノズル52の配列が規則的であり、インクジェットヘッド51のインクジェットノズル52の配置が規則的な配列となって、インクジェットヘッド51の製作も特別な配置の考慮せずに済み、容易となる。
【0036】
そして、図2の例と同じように、このインクジェットノズル52の吐出位置の配列は、この図3の例以外にも、第一列のインクジェットヘッド51(図3の例ではA列)に(2)や(3)或いは(4)の位置に着色材料の着弾痕を形成することも可能であり、それぞれのインクジェットヘッド51の列の順序・配置とは無関係に組合せを設定し、配列したインクジェットヘッド51により連続した設定の塗布ピッチで着色材を吐出すれば仕様に合致したカラーフィルタができることは自明である。
【0037】
次に、本発明の塗布装置により塗布領域を全面にわたり均一に塗布する仕組みを説明する。
【実施例1】
【0038】
本発明の実施例として、代表的な37インチサイズの高精細テレビ受像機に対応できる幅180μm、長さ530μmの大きさの画素に着色材料を適量、塗布充填することで説明する。
【0039】
この場合のインクジェットノズル52の配列密度は1440dpiで、塗布走査方向に直角方向の配列については図2b)、図3b)に示した着弾痕の配置と同じであり、吐出された液滴の互いの位置のズレ=塗布間隔(ピッチ)は17.64μmのピッチであり、1つのインクジェットノズル52からの材料の吐出量を30pl(ピコ・リットル)、25のノズルで合計1500pl、つまりインクジェットノズル52から50発のインクジェットの材料を吐出・塗布して実現する。
【0040】
一方で、本発明者らは今回、カラーフィルターとしての色度の許容値が有効画面領域全体において1000分の3であり、この色度の許容値を実現する着色材料の塗布量バラツキの許容値が3%以下であることを確認しており、これをカラーフィルタの目標仕様とし、その仕様を満足する本発明の塗布装置について説明する。
【0041】
インクジェットノズル52の事前の着弾痕の計測で、基板への着弾した液滴の直径が平均すると40μmであることから、着色材料が基板上に形成されたマトリクス状の遮光部を乗り越えて隣の画素への混入することを避けるために、長さ530μmの両端の縁からインクジェットノズル52から基板に塗布された着色材料の着弾痕の半径値である20μmの位置より外側の区域を吐出禁止領域として、塗布するのは490μmの間に位置するインクジェットノズル52からの吐出による、基板に形成されたそれぞれの画素の中心への着色材料の吐出・塗布を行う。従って1440dpiのインクジェットノズル52の配列・配置密度から、この画素1つの領域に着色材料を吐出・塗布可能なインクジェットノズル52の数は27となる。
【0042】
一方、制御手段による制御で、カラーフィルタの有効領域を含む基板全体のそれぞれの1画素に対し、対応する27のインクジェットノズル52から選択したインクジェットノズル52に吐出指令を送り着色材料を吐出・塗布することで、530×180μmの大きさの1画素に1500plの着色材料を、総量で3%以内の着色材料の吐出量の許容値に収める吐出制御をする。個々のインクジェットノズル52からの着色材料の吐出量は、事前に行う、それぞれの装備するインクジェットヘッド51の試射による計測で、或いは後述するテストパターン検査により計測され、塗布開始前に最新の状態でのテストパターン塗布における着弾痕の直径や体積などのデータとして格納された数値、或いは前述の事前にそれぞれのインクジェットヘッド51のインクジェットノズル52の吐出量を計測したデータにより、記憶素子にその数値やデータをデータテーブルとして格納した数値等を用いてインクジェットノズル52の選択と吐出数の制御を行い、カラーフィルタの有効領域での色度の仕様を満足させる。
【0043】
図4は、本発明に用いたインクジェットヘッド51の幅方向に配列されたインクジェットノズル52の吐出速度を表したグラフであり、両端の数ノズルの吐出速度が10〜15%程度低いことを示すものである。このグラフに示されたインクジェットヘッド51の吐出速度と、インクジェットヘッド51からの着色材料の吐出量の相関確認により、低い吐出速度による着色材料の吐出量の低下が最大8%であることが確認された。
【0044】
また、1440dpiのインクジェットノズル52の配列ピッチPは、17.64μmとなるが、この数字は現状の基本的なインクジェット方式によるインクジェットノズルを構成する部材寸法・機構上等の制約から1つのインクジェットヘッドで実現することが困難であることもあり、分割した数の4列基本のインクジェットヘッド51で実現する構成としており、1つのインクジェットヘッド51に形成されたインクジェットノズル52の配列間隔は360dpiで70.56μmとしている。
【0045】
一方、インクジェットヘッド51に形成された256のインクジェットノズル52の両端に位置する6つのインクジェットノズル52の吐出速度が低く、着色材料の吐出量として8%低いので、1画素当たりに要求される吐出総量1500plから計算上ではインクジェットノズル52から50発の吐出で画素に着色材料を塗布することでき、吐出量が少ないインクジェットヘッド51の両端のインクジェットノズル52が塗布する画素にかかる場合には、総吐出量の許容値3%を満たす吐出量の少ないインクジェットノズル52からの着色材料の吐出数は18発以内となる。
【0046】
一方、画素上に位置するインクジェットノズル52からの総吐出量が少なくなる最悪のケースは、前述のようにインクジェットヘッド51の端部のインクジェットノズル52が画素の中に位置づけられる場合で、1つの画素の着色材料の塗布領域端部とインクジェットヘッド51のの端部のインクジェットノズル52が一致する場合で、この場合には着色材料の許容吐出域の長さとインクジェットノズル52の配列ピッチとから算出される値6.95(=490/70.6)により、インクジェットヘッド両端に位置する6個のインクジェットノズル52がすべて1つの画素に入りこむ。
【0047】
以上のことから、インクジェットヘッド51の端部に配列形成された吐出量の低いインクジェットノズル52からは、前記18以下の条件より3発の着色材料の吐出・塗布が可能となるが、実際には25のそれぞれのインクジェットノズル52で2発の吐出・塗布で済む。つまり、インクジェットヘッド51を複数(n)に分割して分割数(n)+1以上の列のインクジェットヘッド51の構成とした塗布装置とすることで、現行の37インチ以上の高精細テレビ受像機向けにインクジェット方式での着色材の塗布による高精細・高品位なカラーフィルタを低コストで製造することが可能となる。
【0048】
このケースでは許容限界数18に対し、吐出量の少ないインクジェットノズル52からの着色材料の吐出・塗布を最大でも12発に収められるので、余裕度(安全率)1.5である。
【0049】
また、1つの画素のサイズが小さいカラーフィルタが要求される場合には、吐出量の低いインクジェットノズル52から許容される総吐出数に関しては、色度の許容値を実現する着色材料の塗布量バラツキの許容値M(パーセント値)に対し、端部近傍の他のインクジェットノズル52より吐出量がV(パーセント値)だけ低いインクジェットノズル52からの吐出する液滴総数Jを、1画素当たりの総吐出液滴数Sとの関係で、下の数式1を満足するインクジェットノズル52の選択及び、その選択されたインクジェットノズルからの吐出液滴数Sに制御すれば、要求仕様を満足するカラーフィルタの製造が可能となる。


実際には、この許容吐出液滴数によって、1つのインクジェットノズル52からの吐出数を制限し、両端に位置する吐出料の低いインクジェットノズル52とそれ以外の他のインクジェットノズル52の吐出数の和の数で吐出・塗布制御してカラーフィルターの仕様を満足する所要の着色材料の塗布を行う。
【0050】
図2及び図3に示すインクジェットヘッドバー5は、赤(R)、緑(G)、青(B)の着色材料のいずれかを塗布するためのものであり、特には図示していないが、他の着色材料を塗布するためのインクジェットヘッドバーも設けられている。
【0051】
図5は、インクジェットノズル52を選択するためにインクジェットヘッドバー5を制御するための構成を示す概略ブロック図である。ここでの構成は、計測手段であるスキャンカメラ9及びスキャンカメラ9による撮像データ(例えば、全てのインクジェットノズル52を動作させた状態に対応する撮像データ)を入力として各インクジェットノズル52から吐出した着色材料の着弾痕のX,Y座標、及び着色材料の直径、面積、または体積を算出する画像処理装置11、算出された直径、面積、または体積などの必要なデータや、吐出データテーブルを記憶・保持する保持手段であるメモリ12、メモリ12に保持されている直径、面積、または体積などのデータや、吐出データテーブル内のデータを考慮して動作させるべきインクジェットノズル52を選択するために、外部の周辺装置とのデータや制御信号などを授受する入出力のインターフェースなどを受け持つ周辺回路や演算回路などを含むインクジェットヘッドバー5を駆動・停止させる制御手段である制御装置13を有している。
【0052】
したがって、この計測手段及び保持手段を装備することにより、インクジェットヘッドバー5による塗布動作を行う毎にメモリ12に保持されている面積、直径、または体積を更新することができ、インクジェットヘッドバー5による次の塗布動作を行うに当って、最新の面積、直径、または体積を考慮して動作させるべきインクジェットノズル52を選択し、吐出指令を出す等のインクジェットヘッドバー5を制御することができる。
【0053】
なお、制御装置13は、それぞれのインクジェットノズル52から着色材料を吐出した着弾痕を計測した体積などのデータや、吐出データテーブル内のデータ等のメモリー12に保持されたそれぞれのインクジェットノズル52からの吐出量のデータによって、それぞれの画素領域23に着弾させるべき着色材料の供給量を一定にするよう吐出すべきインクジェットノズル52の選択と着色材料の液滴の吐出数などにより着色材料の供給量を塗布領域全体で平均化すべく、対応するインクジェットヘッド51及びインクジェットヘッドバー5を制御することが好ましく、結果としてカラーフィルターとしての色度の要求を満たすものとなる。
【0054】
或いは、それぞれのインクジェットノズル52から着色材料を吐出した着弾痕を計測して得た体積などのデータや、吐出データテーブル内のデータ等のメモリー12に保持されたそれぞれのインクジェットノズル52からの吐出量のデータによって、それぞれの画素領域23に着弾させるべき着色材料の供給量の最適化を狙いとして、吐出すべき対応インクジェットノズル52の選択とそのインクジェットノズル52からの液滴の数の吐出指令などにより着色材料の供給量を許容誤差範囲内にすべく、対応するインクジェットヘッド51及びインクジェットヘッドバー5を制御して塗布領域全体の塗布量を色度の許容範囲にすることが好ましく、結果としてカラーフィルターとしての色度の要求を満たすものとなる。
【0055】
前者の場合には、着色材料の塗布品質を著しく高めることができる。逆に、後者の場合には、着色材料の塗布品質の維持と使用可能なインクジェットノズル52の数の増加とを両立させることができる。
【0056】
次いで、上記の構成のカラーフィルタ製造装置の作用を説明する。
【0057】
図6は着色材料塗布及びテストパターン検査の処理を説明するタイミングチャートである。
【0058】
図7はガラス基板2上に6個のカラーフィルタCFが形成された状態を示しており、しかも、カラーフィルタCFよりも外方の余剰領域に各着色材料毎のテストパターンTPが形成されている。
【0059】
図8はテストパターンTP形成部を拡大して示す図であり、カメラガントリー6により検査されるものとして、3色分のインクジェットノズル52によって形成されたテストパターンTPを示している。このテストパターンTPはガラス基板上に各インクジェットノズル52から吐出された着色材料の着弾痕の形状そのものである。
【0060】
着色材料同士は互いに離れているとともに千鳥状に着弾させている。こうすることで、カメラガントリー6のスキャンカメラ9によりテストパターンTPを検査することができ、インク着弾痕のX,Y座標と共に、必要に応じてインク着弾痕の直径、面積或いは体積も計測される。そしてインク着弾痕の形状の不正や、未着弾などの吐出不良が検出された場合には、後述するように、直ちに必要な対処(カラーフィルタの製造中断、インクジェットヘッド51の交換など)を行うことができ、不良品が製造されることを最小限にすることができる。
【0061】
着弾痕が千鳥状であるので、着色材料同士の間隔が大きく、計測時の画像処理にゆとりがあり、検査精度を高めることができる。
【0062】
図9はテストパターン検査処理の一例を説明するフローチャートである。なお、図6のタイミングチャートには、図9のフローチャートに基づく処理は示されていない。
【0063】
図9により、テストパターン検査処理を説明する。
【0064】
ステップSP1において、図示しない搬入ロボットなどによる吸着テーブル3へのテスト用ガラス基板の搬入が行われた後に、ステップSP2において、図示しない外形規制手段によって、テスト用ガラス基板の概略の位置決めを達成する。そして、ステップSP3において、吸着テーブル3によりテスト用ガラス基板を吸着し、その後、ステップSP4において、カメラガントリー6を往動させ、ステップSP5において、テスト用ガラス基板のアラインメントマークを検出し、Y方向の位置決め、θ(Z軸回りの回点)方向のアラインメントを達成し、ステップSP6において、カメラガントリー6を復動させる。
【0065】
次いで、ステップSP7において、塗布ガントリー4を往動/復動させるとともに、塗布ガントリー4のX座標値を出力し、ステップSP8において、X座標値に基づいて塗布ガントリー4がテストパターン塗布位置に達したか否かを判定し、テストパターン塗布位置に達していない場合には、再びステップSP7の処理を行う。
【0066】
ステップSP8において塗布ガントリー4がテストパターン塗布位置に達したと判定された場合には、ステップSP9において、塗布ガントリー4の移動を停止させ、インクジェットヘッドバー5の全てのインクジェットノズル52から着色材料の液滴を吐出し、ステップSP10において、塗布ガントリー4を復動させ、待機位置で停止させる。
【0067】
次いで、テストパターン(TP)の撮像及び検査を行うフローに入り、ここではステップSP11において、カメラガントリー6を往動させ、ステップSP12において、カメラガントリー6がテストパターン検査位置に達したか否かを判定する。
そして、テストパターン検査位置に達していない場合には、再びステップSP11の処理を行う。
【0068】
そして、ステップSP12においてカメラガントリー6がテストパターン検査位置に達したと判定された場合には、ステップSP13において、カメラガントリー6を停止させ、ステップSP14において、スキャンカメラ9をY方向に移動させてテストパターンを検出しながらテストパターンを終端まで撮像し、その後、スキャンカメラ9をY方向に戻す。
【0069】
ステップSP14の処理後、ステップSP15において、カメラガントリー6を復動させて待機位置で停止させ「テストパターン(TP)撮像フロー」を終えて、ステップSP16において、ガラス基板2の吸着を解除して、排出し、一連の処理を終了する。
【0070】
また、ステップSP15、ステップSP16の処理と並行して、ステップSP17において、スキャンカメラ9による検出信号を画像処理し、X,Y座標と、着色材料の着弾痕の直径、面積そして/又は体積を計測・演算し、ステップSP18において、テストパターンの着色材料着弾痕から検出した座標位置情報等を入力し、ステップSP19において、ガラス基板2上の全画素の位置情報(座標値)を入力し、ステップSP20において、その他のパラメータを入力し、ステップSP21において、データテーブルの演算/作成を行い、ステップSP22において、演算結果を吐出データテーブルに記憶し、画像処理及び計測・演算といった一連の処理を終了する。
【0071】
次いで、図10に示すカラーフィルタ製造フローチャートにより、カラーフィルタ製造処理の実施例を説明する。
【0072】
装置の効率的な稼動を実現するためには、塗布ガントリーの所定の開始位置から「一筆書き」で塗布動作を完了するよう必要塗布領域に対し、塗布ガントリーを1回の往復動作で済むように有効インクジェットヘッドノズルの幅を設定することが望ましい。
【0073】
ステップSP1において、図示しない搬入ロボットなどによる吸着テーブル3へのガラス基板2の搬入が行われた後に、ステップSP2において、図示しない外形規制手段によって、ガラス基板2の概略の位置決めを達成する。そして、ステップSP3において、吸着テーブル3によりガラス基板2を吸着し、その後、ステップSP4において、カメラガントリー6を往動させ、ステップSP5において、ガラス基板2のアラインメントマークを検出し、Y方向、θ(シータ)方向の位置決めを行うことによって、ガラス基板2のアラインメントを達成し、ステップSP6において、カメラガントリー6を復動させる。
【0074】
そして、ステップSP7において、往路塗布か、復路塗布かを判定する。
【0075】
ステップSP7において往路塗布であると判定された場合には、ステップSP8において、塗布ガントリー4を往動させるとともに、塗布ガントリー4のX座標値を出力し、逆に、ステップSP7において復路塗布であると判定された場合には、ステップSP9において、塗布ガントリー4を復動させる。
【0076】
そして、ステップSP8の処理、またはステップSP9の処理が行われた場合には、ステップSP10において、塗布が塗布領域終端まで行われたか否かを判定する。
【0077】
ステップSP10において塗布が塗布領域終端までは行われていないと判定された場合には、ステップSP11において、塗布ガントリー4のX座標出力信号と吐出データテーブルとを比較し、ステップSP12において、X座標と吐出データとが一致しているか否かを判定し、X座標と吐出データとが一致していれば、ステップSP13において、インクジェットノズル52により着色材料の液滴を吐出し、一致していなければ、ステップSP7に戻る。
【0078】
このステップSP13の着色材料の液滴の吐出動作について説明する。
【0079】
前記図2の説明であったように、インクジェットバー5に配列された複数の列のインクジェットヘッド51の両端に配置されたインクジェットヘッド51のうち、最外側からブロックで分割した数である(n)番目の列のインクジェットヘッド51より外側のブロックである第1列から第3列のハッチングしたブロックは、塗布対象物の塗布領域の枠外に位置して、着色材料の吐出を禁止する必要のあるブロックで、適切な制御により、この部分に位置するインクジェットノズル52は、制御装置13によってすべての吐出は停止され着色材料の無駄な吐出を避けることができる。
【0080】
その他のインクジェットノズル52については、制御装置13によって、それぞれのインクジェットノズル52から着色材料を吐出した着弾痕を計測した体積などのデータや、吐出データテーブル内のデータ等のメモリー12に保持されたそれぞれのインクジェットノズル52からの吐出量のデータによって、それぞれの画素領域23に着弾させるべき着色材料の供給量を一定にするよう吐出すべきインクジェットノズル52の選択と着色材料の液滴の吐出数などにより着色材料の供給量を塗布領域全体で平均化すべく、対応するインクジェットヘッド51及びインクジェットヘッドバー5を制御して、結果としてカラーフィルターとしての色度の要求を満たすように吐出動作の制御を行う。
【0081】
或いは、制御装置13によって、それぞれのインクジェットノズル52から着色材料を吐出した着弾痕を計測して得た体積などのデータや、吐出データテーブル内のデータ等のメモリー12に保持されたそれぞれのインクジェットノズル52からの吐出量のデータによって、それぞれの画素領域23に着弾させるべき着色材料の供給量の最適化を狙いとして、吐出すべき対応インクジェットノズル52の選択とそのインクジェットノズル52からの液滴の数の吐出指令などにより着色材料の供給量を許容誤差範囲内にすべく、対応するインクジェットヘッド51及びインクジェットヘッドバー5を制御して塗布領域全体の塗布量を色度の許容範囲にすることが好ましく、結果としてカラーフィルターとしての色度の要求を満たすように着色材料の液滴の吐出動作の制御を行なう。
【0082】
続いて、ステップSP10において、X座標値に基づいて塗布が終端まで行われたか否かを判定する。
【0083】
そして、ステップSP12においてX座標と吐出データとが一致していないと判定された場合、またはステップSP13の処理が行われた場合には、再びステップSP7に戻り往路復路の判定を行う。
【0084】
ステップSP10において塗布が終端まで行われたと判定された場合には、ステップSP14において、往路1回目の塗布か否かを判定し、往路1回目の塗布であった場合には、ステップSP15において、塗布ガントリー4をテストパターン塗布位置に移動させ、ステップSP16において、インクジェットヘッドバー5によりテストパターンを形成する。具体的には、インクジェントヘッドバー5をX方向に移動させるとともに、すべてのインクジェットヘッド51のインクジェットノズル52から吐出動作を行うインクジェットノズル52を選択し、着色材料を吐出・塗布することによって、千鳥状のテストパターンを形成する。
【0085】
ステップSP14において往路1回目の塗布でないと判定された場合、またはステップSP16の処理が行われた場合には、ステップSP17において、塗布領域全域を塗布するための所定回数の塗布が行われたか否かを判定する。
【0086】
ステップSP17において塗布回数が所定回数に達していないと判定された場合には、ステップSP18において、塗布ガントリー4を停止させ、インクジェットヘッドバー5をY方向に移動させ、再びステップSP7の判定を行う。
Y方向の移動距離は、インクジェットヘッドバー5の仕様によるインクジェットヘッド52の有効塗布幅で決り、塗布領域全幅を偶数回の走査で隙間無く塗布を完了させる。
【0087】
また、ステップSP17において所定回数の塗布が行われたと判定された場合には、ステップSP19において、塗布処理を終了し、ステップSP20において、前記図9で説明した「TP撮像フロー」で得た、全てのインクジェットノズル52から吐出した着色材料の着弾痕の画像から、それぞれのインクジェットノズル52の吐出不良が、塗布領域で対象となる画素単位の範囲で許容される数を超えているかの判定を行う。
【0088】
判定の結果、許容範囲を超えるインクジェットヘッド52の吐出不良の発生密度が確認された場合には、クリーニングフローに移り、許容範囲内であれば、ステップSP21において、吸着テーブル3によるガラス基板2の吸着を解除し、図示しない搬出ロボットなどによりガラス基板2を搬出し、そのまま一連の処理を終了する。
【0089】
一方、ステップ7で復路と判定された場合には、ステップSP9の塗布ガントリーの復路移動と並行して、図9で説明した「TP撮像フロー」を経て、前記のステップSP19の塗布終了の処理に移る。
【0090】
前述の例では、塗布ガントリー4を吸着テーブル2に対してX方向に移動させるようにした実施形態を説明したが、塗布ガントリー4を固定し、吸着テーブル3を移動させるように構成することも可能である。
【実施例2】
【0091】
上の実施形態においては、インクジェットノズル52を選択することによってカラーフィルタ上の画素に対する総塗布量を必要塗布量に近づけるようにしているだけであって、インクジェットノズル52から吐出される吐出1回当たりの量を変化させることは全く行っていない。
しかし、インクジェットヘッド51を複数持つインクジェットヘッドバー5を塗布ガントリー4に設け、前記インクジェットヘッド51内のインクジェットノズル52から吐出される吐出1回当たりの量を変化させるノズル制御手段(図示せず)と、前記インクジェットヘッド51内の各インクジェットノズル52から吐出される吐出1回当たりの量の合計をインクジェットヘッド51毎に所定量に近づけるようにインクジェットノズル52の制御手段を制御する上位制御手段(図示せず)とをさらに備えていることが好ましい。
【0092】
前記ノズル制御手段は、例えば、インクジェットノズル52に印加する駆動電圧を変化させることによって吐出1回当たりの吐出量を変化させるものである。
【0093】
前記上位制御手段は、例えば、スキャンカメラ9によって得られた吐出量不均一性データ等を入力として、インクジェットヘッド51内の各インクジェットノズル52の吐出1回当たりの吐出量の合計(インクジェットヘッド51の吐出1回当たりの吐出量)を目標とする吐出量に近づけるように、各インクジェットノズル52の制御手段に対する動作指令を行うものである。
【0094】
この場合には、塗布量をインクジェットヘッド51毎に合わせ込むことができる。さらに説明すると、特定のインクジェットヘッド51がインクの粘度などの影響を受けて吐出量が低くなった場合にも、上位制御手段によって各ノズル制御手段に対する動作指令を設定し、ノズル制御手段によってインクジェットノズル52に印加する駆動電圧等を変えることで、他のインクジェットヘッド51との吐出量ばらつきを抑えることができる。
インクジェットヘッド51内のインクジェットノズル52は、安定吐出の期待できるインクジェットヘッド51の両端の数インクジェットノズル52を除いた内側のインクジェットノズル52においても当然、微小なばらつきを持っているが、このようなばらつきに対しては、前記の実施形態によって対処することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上、塗布装置の代表的な応用例として液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタ製造への適用例を述べたが、この装置は他の平面的な部材に着色材料或いは被膜材料を塗布する装置へと展開することも勿論何の支障もなく、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】塗布装置の一実施例の斜視概観図
【図2】インクジェットヘッドバーのノズルの配置の一例
【図3】インクジェットヘッドバーのノズルの配置の他の例
【図4】インクジェットノズル毎の吐出速度を示すグラフ
【図5】インクジェットノズルを選択・吐出動作させる制御部のブロック図
【図6】塗布動作、塗布パターン検査処理のタイミングフローチャート図
【図7】基板上に6個のカラーフィルタとテストパターンを塗布した状態の図
【図8】テストパターン形成部の部分拡大図
【図9】テストパターン検査処理のフローチャートの例
【図10】カラーフィルタ製造処理のフローチャートの例
【図11】インクジェットヘッドバーのノズル配置例の概略図
【符号の説明】
【0097】
2 ガラス基板
3 吸着テーブル
5 インクジェットヘッドバー
9 スキャンカメラ
11 画像処理装置
12 メモリ
13 制御装置
51 インクジェットヘッド
52 インクジェットノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物を保持する保持ステージと、前記塗布対象物に塗布材を供給する複数のインクジェットノズルを有する複数のインクジェットヘッドとにより、前記インクジェットヘッドと前記保持ステージを相対的に移動して、前記塗布対象物に塗布材を供給するためのインクジェットノズルを選択するよう前記インクジェットヘッドを制御する制御手段とを備えた塗布装置であって、
前記インクジェットヘッドが持つ前記の複数のインクジェットノズルを、その配列の長手方向に複数(n)の群に分割し、前記の複数のインクジェットヘッドを、分割したインクジェットノズルの1つの分割単位でそのインクジェットノズルの配列の長手方向に位置をずらしてインクジェットヘッドの長手方向に、少なくともその分割した数(n)+1以上の列に規則的に配列して前記塗布対象物に塗布材を供給することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記制御手段は、塗布材の供給量を一定量にすべくインクジェットノズルを選択し、かつ配列された並列するインクジェットヘッドのうち、分割数(n)番目のインクジェットヘッドの配列より外側の部分のインクジェットノズルの動作を停止するよう前記インクジェットヘッドを制御するものである請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記制御手段は、塗布材の供給量を許容誤差範囲内にすべくインクジェットノズルを選択し、かつ配列された並列するインクジェットヘッドのうち、分割数(n)番目のインクジェットヘッドより配列より外側の部分のインクジェットノズルの動作を停止するよう前記インクジェットヘッドを制御するものである請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドを複数持つインクジェットヘッド群と、前記インクジェットヘッド内のインクジェットノズルから吐出される吐出1回当たりの量を変化させるノズル制御手段と、前記インクジェットヘッド内の各インクジェットノズルから吐出される吐出1回当たりの量の合計をインクジェットヘッド毎に所定量に近づけるようにノズル制御手段を制御する上位制御手段とをさらに備えている請求項1から請求項3の何れかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記塗布対象物に各インクジェットノズルから1回の動作で供給された塗布材の量を計測する計測手段と、各インクジェットノズル毎の計測された量を保持する保持手段と、保持手段に更新・保存された保持データを参照して、前記塗布対象物に塗布材を供給するためのインクジェットノズルを選択するよう前記インクジェットヘッドを制御する制御手段とを備えた請求項1から請求項4の何れかに記載の塗布装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−234170(P2010−234170A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209530(P2007−209530)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】