説明

塗料組成物

【課題】平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物及び複層塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】(A)酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)の合計含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として65〜100mol%の範囲内であり、かつアルコール成分(a2)が、アルコール成分(a2)の総量を基準として、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを2〜100mol%含有する水酸基含有ポリエステル樹脂、ならびに(B)イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物およびこれを用いる複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体、特にその外板部には、優れた防食性や外観を付与することを目的として、一般に、防食性に優れる下塗り塗膜、平滑性および耐チッピング性に優れる中塗り塗膜、ならびに外観に優れる上塗り塗膜からなる複層塗膜を形成する。
【0003】
このうち、上塗り塗膜は、通常、着色塗料、着色ベース塗料、クリヤー塗料等を用いて種々の方式により形成される。例えば、着色塗料を塗装し、次いで焼付け硬化させる1コート1ベーク方式;光輝性顔料、着色顔料等の顔料を含有する着色ベース塗料を塗装し、その未硬化の着色ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装した後、該着色ベース塗膜とクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させる2コート1ベーク方式;着色顔料を含有する着色ベース塗料を塗装し、その未硬化の着色ベース塗膜上に、光干渉性を有する光輝性顔料等を含有する光輝性ベース塗料を塗装し、得られた光輝性ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装した後、該着色ベース塗膜、光輝性ベース塗膜およびクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させる3コート1ベーク方式等が採用されている。通常、上記1コート1ベーク方式は、白色や黒色等のいわゆるソリッド色塗装で多く用いられる。2コート1ベーク方式は、アルミニウム顔料等の光輝性顔料を含有するいわゆるメタリック色塗装で多く用いられる。3コート1ベーク方式は、光干渉性模様を呈するいわゆるパール色塗装で多く用いられる。
【0004】
上記着色塗料、着色ベース塗料および光輝性ベース塗料としては、従来、有機溶剤型塗料が多く用いられていたが、塗装塗膜焼付け時の有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制するため、近年は水性塗料の採用が進んでいる。
【0005】
また、最近では、工程スペースの縮小化及びエネルギー費低減を目的として、中塗り塗料塗装後の焼付硬化工程を省略し、未硬化の中塗り塗膜上に上塗り塗料を塗装した後、該中塗り塗膜と上塗り塗膜を同時に焼付硬化させる塗装方法が検討されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、該塗装方法では中塗り塗膜と上塗り塗膜との間で混層が生じやすく、そのため、形成される塗膜の平滑性及び鮮映性が低下する場合があった。
【0006】
この対策として、中塗り塗料を塗装後、形成される中塗り塗膜をできるだけ硬化状態に近づけてから、上塗り塗料を塗装することにより、中塗り塗膜と上塗り塗膜との混層を抑制する方法が検討されている。例えば、特許文献2には、被塗物に水性第1着色塗料を塗装し、形成される塗膜のゲル分率を5重量%以上に調整してから、水性第2着色塗料を塗装し、形成される塗膜中の水分を揮散させた後、クリヤ塗料を塗装し、次いで得られる3層塗膜を加熱して同時に硬化せしめた場合に、被塗面の表面粗さを隠蔽すること(下地隠蔽性)に優れた複層塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該塗装方法においても十分な平滑性及び鮮映性を有する複層塗膜を得られない場合があり、課題とされていた。
【0007】
また、特許文献3には、中塗り塗料として、数平均分子量(Mn)が900〜3,000、全酸成分中の芳香族ポリカルボン酸成分及び/又は脂環式ポリカルボン酸成分の割合が80質量%以上のポリエステル樹脂、数平均分子量(Mn)が2,000〜10,000、炭素数4以上のアルキル側鎖を有するアクリル系モノマー単位を40〜80質量%含有し、ガラス転移温度(Tg)が30℃以下であるアクリル樹脂、顔料及びセルロース誘導体を含有する主剤(a)と、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物である硬化剤(b)からなる2液型中塗り塗料組成物を使用する場合に、平滑性、光沢感及び鮮明性に優れた塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該塗料組成物は、芳香族ポリカルボン酸成分及び/又は脂環式ポリカルボン酸成分を比較的多量に含むポリエステル樹脂を含有するため、該ポリエステル樹脂と他の樹脂成分との相溶性が低下し、十分な平滑性及び鮮映性を有する塗膜を得られない場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−267834号公報
【特許文献2】特開2001−327911号公報
【特許文献3】特開2008−74959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物を提供することにある。特に、第1着色塗料を塗装して第1着色塗膜を形成し、未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成し、未硬化の第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化する複層塗膜形成方法において、第1着色塗料として使用することにより、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成できる塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を有する水酸基含有ポリエステル樹脂及び特定の構造を有するポリイソシアネート化合物を含有する塗料組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の塗料組成物、該塗料組成物を用いた複層塗膜の形成方法及び該塗料組成物が塗装された物品に係る。
1. (A)酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)の合計含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として65〜100mol%の範囲内であり、かつアルコール成分(a2)が、アルコール成分(a2)の総量を基準として、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを2〜100mol%含有する水酸基含有ポリエステル樹脂、ならびに(B)イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする塗料組成物。
2. 水酸基含有ポリエステル樹脂(A)において、酸成分(a1)中の脂環族多塩基酸(a1−2)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として、65〜100mol%の範囲内である上記項1に記載の塗料組成物。
3. イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)が、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体である上記項1又は2に記載の塗料組成物。
4. 水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を10〜95質量部、ポリイソシアネート化合物(B)を5〜90質量部含有する上記項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
5. 上記項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物が塗装された物品。
6. (1)被塗物に、上記項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、ならびに
(3)未硬化の第1着色塗膜および未硬化の第2着色塗膜を加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
7. (1)被塗物に、上記項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、ならびに
(4)未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱して3層の塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
8. 第2着色塗料が光輝性顔料(C3)を含有する塗料である上記項6又は7に記載の複層塗膜形成方法。
9. 被塗物が、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である上記項6〜8のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
10. 上記項6〜9のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗料組成物によれば、平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成することができる。特に、本発明の塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成し、未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成し、未硬化の第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化する複層塗膜形成方法により、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の塗料組成物(以下、「第1着色塗料(X)」と略記する場合がある)は、
(A)酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)の合計含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として65〜100mol%の範囲内であり、かつアルコール成分(a2)が、アルコール成分(a2)の総量を基準として、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを2〜100mol%含有する水酸基含有ポリエステル樹脂、ならびに(B)イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物を含有する塗料組成物である。
【0015】
また、本発明の塗料組成物は、被塗物に、第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成し、得られた未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料組成物(Y)(以下、「水性第2着色塗料(Y)」と略記する場合がある)を塗装して第2着色塗膜を形成する複層塗膜形成方法において、第1着色塗料(X)として好適に使用できる。
【0016】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)
本発明の塗料組成物において基体樹脂として用いられる水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有し、以下に記載する酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られる。
【0017】
酸成分(a1)
本発明において、酸成分(a1)は、芳香族多塩基酸(a1−1)及び/又は脂環族多塩基酸(a1−2)を含有し、酸成分(a1)中の芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)の合計含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として、65〜100mol%、好ましくは75〜100mol%、さらに好ましくは85〜100mol%の範囲内である。
【0018】
上記芳香族多塩基酸(a1−1)は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸(a1−1)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
上記芳香族多塩基酸(a1−1)としては、得られる塗膜の鮮映性の観点から、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を用いることが好適である。
【0020】
酸成分(a1)が、上記芳香族多塩基酸(a1−1)を含有する場合、該芳香族多塩基酸(a1−1)の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、5〜100mol%、好ましくは10〜100mol%、さらに好ましくは20〜100mol%の範囲内であることが好適である。
【0021】
前記脂環族多塩基酸(a1−2)は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物であって、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられ、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。上記脂環族多塩基酸(a1−2)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
酸成分(a1)が、上記脂環族多塩基酸(a1−2)を含有する場合、該脂環族多塩基酸(a1−2)の含有量は、酸成分(a1)の総量を基準として、5〜100mol%、好ましくは65〜100mol%、さらに好ましくは80〜100mol%の範囲内であることが好適である。
【0023】
また、得られる塗膜の耐チッピング性の観点から、芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)の比率は、芳香族多塩基酸(a1−1)/脂環族多塩基酸(a1−2)の比で、90/10〜0/100、好ましくは35/65〜0/100、さらに好ましくは20/80〜0/100の範囲内であることが好適である。
【0024】
また、酸成分(a1)としては、上記芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)以外に、脂肪族多塩基酸(a1−3)を好適に使用することができる。
【0025】
上記脂肪族多塩基酸(a1−3)は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物であって、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記脂肪族多塩基酸(a1−3)としては、炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸を使用することが好ましい。上記炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、なかでもアジピン酸を好適に使用することができる。
【0027】
また、上記芳香族多塩基酸(a1−1)、脂環族多塩基酸(a1−2)及び脂肪族多塩基酸(a1−3)以外の酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。上記酸成分は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
アルコール成分(a2)
本発明において、アルコール成分(a2)は、該アルコール成分(a2)の総量を基準として、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを2〜100mol%、好ましくは10〜70mol%、さらに好ましくは20〜50mol%含有する。
【0029】
上記トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートとしては、例えば、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを使用することが好ましい。
【0030】
上記トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート以外のアルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0031】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0032】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分(a1)とアルコール成分(a2)とを窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間反応させることにより、エステル化反応またはエステル交換反応を行なう方法が挙げられる。
【0033】
前記エステル化反応またはエステル交換反応では、上記酸成分(a1)およびアルコール成分(a2)を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分(a2)を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0034】
前記エステル化またはエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。前記触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0035】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後またはエステル交換反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0036】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。上記モノエポキシ化合物としては、例えば、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)を好適に用いることができる。
【0037】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の硬化性の観点から、一般に50〜250mgKOH/g、好ましくは70〜180mgKOH/g、さらに好ましくは100〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
【0039】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の平滑性の観点から、50mgKOH/g以下、好ましくは1〜15mgKOH/g、さらに好ましくは3〜10mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
【0040】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の平滑性の観点から、500〜10,000、好ましくは700〜5,000、さらに好ましくは1,000〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0041】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の酸価、水酸基価及び数平均分子量の調整は、例えば、前記酸成分(a1)中のカルボキシル基と前記アルコール成分(a2)中の水酸基の当量比(COOH/OH)を調整する方法、又は前記エステル化反応又はエステル交換反応における反応時間を調整する方法等によって行なうことができる。上記酸成分(a1)中のカルボキシル基とアルコール成分(a2)中の水酸基の当量比(COOH/OH)としては、一般に、0.75〜0.95、好ましくは0.78〜0.92、さらに好ましくは0.80〜0.90の範囲内であることが好適である。
【0042】
なお、本明細書における数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIという測定条件を使用した。
【0043】
イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)
本発明の塗料組成物において架橋剤として使用されるポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、イソシアヌレート構造を有する。
【0044】
上記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、ポリイソシアネート化合物を、イソシアヌレート化触媒の存在下で反応せしめることによって得ることができる。
【0045】
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。なかでも、脂肪族ポリイソシアネートを好適に使用することができる。
【0046】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0047】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。なかでも、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートを使用することが好ましい。
【0048】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0049】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。なかでも、2,4−トリレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0050】
上記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体、好ましくは3量体;イソホロンジイソシアネートの多量体、好ましくは3量体;トリレンジイソシアネートの多量体、好ましくは3量体;等を好適に使用することができる。なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体、特に3量体を好適に使用することができる。
【0051】
上記ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体の市販品としては、例えば、「デスモジュールKL−2444」、「スミジュールN3300」(以上、住化バイエルウレタン社製)、「コロネート−HX」(日本ポリウレタン社製)などが挙げられる。また、前記トリレンジイソシアネートの多量体の市販品としては、例えば、「スミジュールIL」(住化バイエルウレタン社製)、「コロネート2030」(日本ポリウレタン社製)、「バーノックD−800」(大日本インキ社製)、「マイテックGP−700A」(三菱化成社製)、「タケネートD−204EA」(武田薬品社製)などが挙げられる。また、前記イソホロンジイソシアネートの多量体の市販品としては、例えば、「デスモジュールZ−4370」、「デスモジュールZ−4470BA」(以上、住化バイエルウレタン社製)などが挙げられる。
【0052】
また、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)は、得られる塗膜の平滑性の観点から、3,000以下、好ましくは400〜1,500、好ましくは450〜800の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0053】
また、上記イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)は、ブロック剤によってブロック化されていても良い。上記ブロック剤としては、例えば、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤等を好適に使用することができる。
【0054】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)に対するイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)の使用割合は、特に制限されるものではないが、塗膜の硬化性や塗料安定性などの面から、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基と水酸基含有樹脂(A)の水酸基の当量比(NCO/OH)が一般に0.5〜2.0、特に0.8〜1.5、さらに特に0.9〜1.2の範囲内であることが好ましい。
【0055】
塗料組成物
本発明の塗料組成物は、該塗料組成物中の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を10〜95質量部、好ましくは25〜90質量部、さらに好ましくは60〜80質量部の範囲内及びポリイソシアネ−ト化合物(B)を5〜90質量部、好ましくは10〜75質量部、さらに好ましくは20〜40質量部の範囲内で含有することができる。
【0056】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の他に、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)以外のポリエステル樹脂などの改質用樹脂を含むことができる。なかでも、得られる塗膜の外観、耐チッピング性等の観点から、ポリウレタン樹脂及び/又はアクリル樹脂を含むことが望ましい。
【0057】
上記改質用樹脂は、一般に、数平均分子量が1,000〜3,000,000、好ましくは1,500〜1,000,000、さらに好ましくは2,000〜500,000の範囲内であることが好適である。
【0058】
本発明の塗料組成物が、上記改質用樹脂を含有する場合、該改質用樹脂の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜80質量部、好ましくは3〜50質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の範囲内であることが好適である。
【0059】
また、本発明の塗料組成物は、補助架橋剤として、ポリイソシアネート化合物(B)に加えて、メラミン樹脂などを併用することができる。使用しうるメラミン樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化メラミン樹脂が挙げられる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。上記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部又は全部をモノアルコールによってエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチル−1−ヘキサノールなどが挙げられる。
【0060】
上記メラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
上記メラミン樹脂は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
メラミン樹脂を補助架橋剤として使用する場合には、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ2−エチルヘキシルリン酸、ジ2−エチルヘキシルリン酸などのアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミンとの塩などを触媒として使用することができる。
【0062】
本発明の塗料組成物が、上記メラミン樹脂を含有する場合、該メラミン樹脂の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部の範囲内であることが好適である。
【0063】
また、本発明の塗料組成物は、さらに、顔料(C)を含有することが好ましい。
【0064】
上記顔料(C)としては、例えば、着色顔料(C1)、体質顔料(C2)、光輝性顔料(C3)等を挙げることができる。該顔料(C)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
本発明の塗料組成物が、上記顔料(C)を含有する場合、該顔料(C)の配合量は、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜200質量部、好ましくは20〜160質量部、さらに好ましくは50〜140質量部の範囲内であることが好適である。
【0066】
上記着色顔料(C1)としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0067】
本発明の塗料組成物が、上記着色顔料(C1)を含有する場合、該着色顔料(C1)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜180質量部、好ましくは5〜140質量部、さらに好ましくは10〜120質量部の範囲内であることが好適である。
【0068】
また、前記体質顔料(C2)としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、アルミナホワイト等が挙げられ、なかでも硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
【0069】
本発明の塗料組成物が、上記体質顔料(C2)を含有する場合、該体質顔料(C2)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜150質量部、好ましくは5〜130質量部、さらに好ましくは10〜110質量部の範囲内であることが好適である。
【0070】
なかでも、本発明の塗料組成物が、上記体質顔料(C2)として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0071】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
【0072】
また、前記二酸化ケイ素としては、炭素量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である二酸化ケイ素を使用することが、鮮映性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0073】
なお、本明細書において、二酸化ケイ素の炭素量は、二酸化ケイ素が含有する炭素の二酸化ケイ素に対する質量割合であって、固体中炭素分析装置「EMIA−110」(商品名、堀場製作所社製)を用いて測定することができる。具体的には、二酸化ケイ素をるつぼに仕込み、1,000℃まで加熱し、発生した気体成分を赤外線吸収法によって分析し、検出された一酸化炭素及び二酸化炭素の量から全炭素量を求め、その量の仕込んだ二酸化ケイ素に対する質量分率を二酸化ケイ素の炭素量とする。
【0074】
本発明の塗料組成物が、炭素量が少ない、すなわち疎水基が少なく、比較的親水性の高い二酸化ケイ素を含有する場合に、鮮映性に優れた塗膜が得られる理由は明確ではないが、本発明の塗料組成物上に水性第2着色塗料(Y)が塗り重ねられた際に、この比較的親水性が高い二酸化ケイ素が両塗膜の界面付近に集まり、塗膜間の混層を抑制することが推察される。
【0075】
本発明の塗料組成物が上記二酸化ケイ素を含有する場合、該二酸化ケイ素の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部の範囲内であることが好適である。
【0076】
また、前記光輝性顔料(C3)としては、具体的には、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、ガラスフレーク、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母等を使用することができる。なかでも、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0077】
上記光輝性顔料(C3)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(C3)としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0078】
本発明の塗料組成物が、上記光輝性顔料(C3)を含有する場合、該光輝性顔料(C3)の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜100質量部、好ましくは2〜60質量部、さらに好ましくは3〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0079】
本発明の塗料組成物は、上記顔料を含有する着色塗料組成物であることが好ましく、なかでも、白黒隠蔽膜厚が100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下の着色塗料組成物であることが好適である。
【0080】
なお、本明細書において、白黒隠蔽膜厚は、JIS K 5600−4−1(2004)に定められた、100mm×200mm以上の大きさであって、隣接して白部と黒部が印刷され、且つワニスが塗布されていて溶剤又は水で希釈された塗料で容易にぬれるが浸透されない隠ぺい率試験紙の上に、塗料組成物を塗装し、乾燥硬化させた際に、隠ぺい率試験紙の白部と黒部の境界が目視によって判別できなくなる最小の膜厚を意味する。
【0081】
また、本発明の塗料組成物は、硬化触媒を含有することが好ましい。該硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどの有機金属化合物;第三級アミン;りん酸化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0082】
本発明の塗料組成物が、上記硬化触媒を含有する場合、該硬化触媒の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、0.005〜5質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.03〜0.3質量部の範囲内であることが好適である。
【0083】
また、本発明の塗料組成物は、ポリオール化合物を含有することができる。なかでも、本発明の塗料組成物が、該ポリオール化合物として、数平均分子量が100〜2,000、好ましくは200〜1,600、さらに好ましくは300〜900の範囲内であるポリオール化合物を含有することが、平滑性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0084】
上記ポリオール化合物は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられ、これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0085】
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレン/テトラメチレン)グリコール等が挙げられる。
【0086】
前記ポリエステルポリオールは、酸価が3mgKOH/g未満であることが好ましく、数平均分子量が200〜900、好ましくは300〜800の範囲内であることが好適である。また、該ポリエステルポリオールは直鎖状であることが好ましい。
【0087】
上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコール成分と多塩基酸成分とをエステル化反応させることにより得られるポリエステルポリオール、多価アルコール成分を開始剤としてラクトン化合物の開環反応により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。上記多価アルコール成分及び多塩基酸成分としては、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の説明において例示した多価アルコール及び多塩基酸が挙げられ、これらの多価アルコール成分及び多塩基酸成分はそれぞれ単独又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また後者の場合、ラクトン化合物としては、ε−カプロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0088】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物などが挙げられる。上記多価アルコールとしては、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられ、上記環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネートなどが挙げられる。また、該ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0089】
本発明の塗料組成物は、上記ポリオール化合物を含有する場合、該ポリオール化合物の配合量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部の割合で使用することが好適である。
【0090】
また、本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0091】
本発明の塗料組成物は、得られる塗膜の平滑性及び平滑性の観点から、硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱したときの塗膜のゲル分率(G80)が、10〜100質量%、好ましくは30〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%の範囲内であることが好適である。
【0092】
なお、上記ゲル分率(G80)は、以下の方法により測定することができる。
まず、ポリプロピレン板上に本発明の塗料組成物を硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱する。次に、該ポリプロピレン板上の塗膜を回収し、質量(W)を測定する。その後、該塗膜を200メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトン中で5時間還流しながら抽出し、110℃で60分間乾燥した後の塗膜質量(W)を測定し、以下の式に従って算出される不溶塗膜残存率(質量%)をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(W/W)×100
本発明の塗料組成物のゲル分率(G80)の調整は、例えば、塗料組成物中の硬化触媒の配合量を調節することにより行なうことができる。
【0093】
本発明の塗料組成物は、一液型塗料の形態であってもよく、また、多液型塗料の形態であってもよいが、貯蔵安定性などの観点から、水酸基含有樹脂(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物(B)を含有する硬化剤成分とからなる二液型塗料であることが好ましい。また、一般に、上記主剤が、さらに、顔料、硬化触媒及び溶媒を含有し、上記硬化剤成分が、さらに、溶媒を含有することが望ましい。
【0094】
また、本発明の塗料組成物は、水性塗料及び有機溶剤型塗料のいずれの形態であってもよい。なお、本明細書において、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水または水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。本発明の塗料組成物が水性塗料である場合、該塗料組成物中における水の含有量は、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%の範囲内であることが好適である。また、上記有機溶剤型塗料とは、溶媒として実質的に水を含有しない塗料である。本発明の塗料組成物は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、有機溶剤型塗料であることが好適である。
【0095】
本発明の塗料組成物を使用することにより、平滑性及び鮮映性に優れた塗膜を形成することができる。このため、本発明の塗料組成物は自動車用塗料、特に自動車用中塗り塗料として好適に使用することができる。また、本発明の塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成し、未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成し、未硬化の第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化する複層塗膜形成方法において、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【0096】
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法は、
(1)被塗物に、上記塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、ならびに
(3)未硬化の第1着色塗膜および未硬化の第2着色塗膜を加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む。
本発明の塗料組成物は、被塗物に、第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成し、得られた未硬化の第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成する複層塗膜形成方法において、第1着色塗料(X)として好適に使用できる。
【0097】
工程(1)
工程(1)では、被塗物に、前記塗料組成物を塗装して未硬化の第1着色塗膜を形成する。
【0098】
上記被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。なかでも、自動車車体の外板部および自動車部品が好ましい。
【0099】
また、上記被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができる。なかでも、金属材料およびプラスチック材料が好適である。
【0100】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。さらに、該被塗物は、上記金属材料や車体等に、下塗り塗膜および/または中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。なかでも、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0101】
ここで、必要に応じて各種電着塗料の下塗り塗膜を形成した金属部材と、パンパー等のプラスチック部材とを一体化した被塗物上に、本発明の組成物を塗装してもよい。この場合には、金属部材とプラスチック部材の塗色が一致し、かつ両部材上に平滑性に優れる複層塗膜が得られるという利点がある。
【0102】
上記被塗物上に、上記着色塗料組成物を塗装する方法としては、それ自体既知の方法を採用すればよい。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができる。また、塗装の際、静電印加を行ってもよい。なかでも、エアスプレーによる静電塗装および回転霧化塗装機による静電塗装が好ましく、回転霧化塗装機による静電塗装がより好ましい。塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常10〜100μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜35μmの範囲内であることが好適である。
【0103】
上記着色塗料組成物を塗装後、得られた未硬化の第1着色塗膜を、必要に応じて、予備加熱(プレヒート)、エアブロー等の手段によって、実質的に硬化しない程度に乾燥させたり、乾燥しない程度に固形分含有率を調整したりしてもよい。上記加熱は、公知の加熱手段により行うことが可能であり、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。
【0104】
上記予備加熱は、通常、第1着色塗料(A)が塗装された被塗物を乾燥炉内で30〜110℃、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは50〜70℃の温度で、30秒間〜20分間、好ましくは1〜15分間、さらに好ましくは2〜10分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0105】
本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1(2004)に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0106】
また、本工程(1)により形成される未硬化の第1着色塗膜のゲル分率は、得られる複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、5〜95質量%、好ましくは15〜75質量%、さらに好ましくは25〜65質量%の範囲内であることが好適である。
【0107】
上記第1着色塗膜のゲル分率は、例えば、前記予備加熱(プレヒート)、エアブローなどを行なったり、本発明の塗料組成物中の硬化触媒の量を調整したりすることにより、調整することができる。
【0108】
また、第1着色塗膜のゲル分率は、以下の方法により測定することができる。
まず、被塗物に第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、ポリプロピレン板上にも第1着色塗料(X)を塗装し、必要に応じて上記予備加熱などを行った後、被塗物に水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に該ポリプロピレン板を回収し、次に、該ポリプロピレン板上の第1着色塗膜を回収し、質量(W)を測定する。その後、該塗膜を200メッシュのステンレススチール製の網状容器に入れ、64℃に加温したアセトン中で5時間還流しながら抽出し、110℃で60分間乾燥した後の塗膜質量(W)を測定し、以下の式に従って得られる不溶塗膜残存率(質量%)をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(W/W)×100
また、得られる複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、本工程において、第1着色塗膜の固形分含有率が、60〜100質量%、好ましくは75〜100質量%、さらに好ましくは85〜100質量%の範囲内に調整されることが好適である。
【0109】
上記第1着色塗膜の固形分含有率は、例えば、前記予備加熱(プレヒート)、エアブローなどを行なうことにより調整することができる。
【0110】
なお、第1着色塗膜の固形分含有率は、以下の方法により測定することができる。
まず、被塗物に第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも第1着色塗料(X)を塗装し、必要に応じて予備加熱などを行った後、被塗物に水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に該アルミホイルを回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
工程(2)
本工程では、上記工程(1)により形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)が塗装され、未硬化の第2着色塗膜が形成される。
【0111】
水性第2着色塗料(Y)
水性第2着色塗料(Y)は、一般に、被塗物に優れた外観を付与することを目的とするものである。水性第2着色塗料(Y)は、着色塗料であることが好ましい。
【0112】
上記水性第2着色塗料(Y)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、カルボキシル基、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の硬化剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂及びメラミン樹脂を含有する熱硬化型水性塗料を好適に使用することができる。
【0113】
また、上記顔料としては、前記着色顔料(C1)、体質顔料(C2)、光輝性顔料(C3)等を使用することができる。なかでも、水性第2着色塗料(Y)が、上記顔料として光輝性顔料(C3)を含有することが好ましい。水性第2着色塗料(Y)が、上記光輝性顔料(C3)を含有する場合、平滑性に優れ、かつフリップフロップ性が高く、メタリックムラの少ない優れた外観を有する複層塗膜を形成することができる。
上記光輝性顔料(C3)としては、例えば、前記第1着色塗料(X)の説明において例示した、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることがより好ましい。上記光輝性顔料(C3)は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0114】
上記光輝性顔料(C3)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(C3)としては、長手方向寸法が1〜100μm程度、好ましくは5〜40μm程度、厚さが0.001〜5μm程度、好ましくは0.01〜2μm程度であるりん片状顔料が適している。
【0115】
また、前記水性第2着色塗料(Y)は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性向上の観点から、疎水性溶媒(D)をさらに含有することが好ましい。
【0116】
上記疎水性溶媒(D)は、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒である。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0117】
疎水性溶媒(D)としては、得られる複層塗膜の平滑性の観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0118】
水性第2着色塗料(Y)が上記疎水性溶媒(D)を含有する場合、該疎水性溶媒(D)の含有量は、水性第2着色塗料(Y)中の固形分100質量部を基準として、2〜60質量部、好ましくは11〜50質量部、さらに好ましくは16〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0119】
水性第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、前記疎水性溶媒(D)以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0120】
また、水性第2着色塗料(Y)における水の配合割合は、水性第2着色塗料(Y)中の固形分100質量部を基準として、100〜2,000質量部、好ましくは150〜1,000質量部、さらに好ましくは180〜500質量部の範囲内であることが好適である。
【0121】
水性第2着色塗料(Y)の塗装は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常5〜40μm、好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは12〜20μmの範囲内とすることができる。
【0122】
塗装された水性第2着色塗料(Y)の塗膜は、ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃とすることができ、プレヒートの時間は、30秒間〜20分間、好ましくは1〜15分間、さらに好ましくは2〜10分間とすることができる。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0123】
工程(3)
工程(3)では、上記の未硬化の第1着色塗膜および未硬化の第2着色塗膜を加熱して両塗膜を同時に硬化させる。
【0124】
加熱手段としては、前述した公知の加熱手段を採用することができる。
【0125】
加熱温度は、80〜180℃、好ましくは100〜160℃、さらに好ましくは110〜150℃の範囲内であることが好適である。
【0126】
加熱時間は、5〜60分間、好ましくは10〜40分間、さらに好ましくは15〜30分間の範囲内であることが好適である。
【0127】
本発明の方法において、第2着色塗膜上には、必要に応じて、クリヤー塗料(Z)を塗装することができる。クリヤー塗料(Z)を塗装する場合、未硬化の第2着色塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装後、未硬化の第1着色塗膜、第2着色塗膜およびクリヤー塗膜を同時に硬化させてもよい。また、硬化させた第2着色塗膜上に前記クリヤー塗料(Z)を塗装後、クリヤー塗膜を硬化させてもよい。なかでも、省エネルギーの観点から、未硬化の第2着色塗膜上にクリヤー塗料(Z)を塗装後、未硬化の第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させることが好ましい。
【0128】
上記クリヤー塗料(Z)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂などの架橋剤を樹脂成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化型粉体塗料などを使用することができる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂及びメラミン樹脂を含んでなる熱硬化型塗料、水酸基含有アクリル樹脂及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含んでなる熱硬化型塗料又はカルボキシル基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂を含んでなる熱硬化型塗料が特に好ましい。
【0129】
また、上記クリヤー塗料(Z)としては、一液型塗料及び二液型ウレタン樹脂塗料などの二液型塗料のいずれの形態のものであってもよい。
【0130】
クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に、前記着色顔料(C1)、光輝性顔料(C3)、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料(C2)や、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などの通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0131】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装は、タレの抑制や得られる塗膜の鮮映性などの観点から、第2着色塗膜の固形分含有率が、一般に70〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内にある間に行なうことが好適である。
【0132】
第2着色塗膜の固形分含有率は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブローなどを行なうことにより調整することができる。上記予備加熱は、通常、第1着色塗料(X)及び水性第2着色塗料(Y)が塗装された被塗物を乾燥炉内で40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃の温度で30秒間〜20分間、好ましくは1〜15分間、さらに好ましくは2〜10分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0133】
なお、第2着色塗膜の固形分含有率は、以下の方法により測定することができる。
まず、第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性第2着色塗料(Y)を塗装し、必要に応じて予備加熱などを行った後、第2着色塗膜上にクリヤー塗料(Z)が塗装される直前に該アルミホイルを回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
クリヤー塗料(Z)は、水性第2着色塗料(Y)の硬化又は未硬化の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、通常、硬化膜厚で10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0134】
上記クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間、好ましくは3〜20分間のインターバルをおいたり、40〜90℃で1〜30分間、好ましくは3〜10分間程度予備加熱することができる。
【0135】
クリヤー塗料(Z)は、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等の通常の塗膜の加熱手段により、硬化させることができる。加熱温度は、80〜180℃、好ましくは100〜160℃、さらに好ましくは110〜150℃の範囲内であることが好適である。加熱時間は、5〜60分間、好ましくは10〜40分間、さらに好ましくは15〜30分間の範囲内であることが好適である。
【0136】
特に、クリヤー塗料(Z)が、前記水性第2着色塗料(Y)の未硬化の塗膜面に塗装される場合、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、上記加熱により、同時に硬化させることができ、それによって、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜の3層の硬化塗膜からなる平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成せしめることができる。
【0137】
本発明の複層塗膜形成方法において、優れた平滑性と鮮映性を有する複層塗膜が形成される理由としては、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が、芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)を比較的多量に含有し、疎水性が高いため、第1着色塗膜が未硬化の状態で、水性第2着色塗料(Y)が塗装された場合においても、該水性第2着色塗料(Y)中の水が第1着色塗膜中に浸透しにくく、第1着色塗膜と第2着色塗膜との混層が抑制され、優れた平滑性及び鮮映性を有する複層塗膜が形成されることが推察される。また、本発明の塗料組成物は、基体樹脂である上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)がトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを含有し、さらに、硬化剤としてイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)を使用するため、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)を比較的多量に含有し、疎水性が高いにも関わらず、硬化剤との相溶性が高く、第1着色塗膜の予備加熱時、ならびに第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化させる際に、架橋反応が速く進行し、上層の第2着色塗膜との混層が抑制されるため、優れた平滑性及び鮮映性を有する複層塗膜が形成されることが推察される。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0139】
水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物(分子量154)92.4部(0.6mol)、アジピン酸(分子量146)43.8部(0.3mol)、「タナック」(商品名、日産化学工業社製、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、分子量261)13.1部(0.05mol)、1,6−ヘキサンジオール(分子量118)82.6部(0.7mol)及びトリメチロールプロパン(分子量134)34.1部(0.25mol)を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で保持し、酸価が5mgKOH/gとなるまで反応を行った。生成した縮合水は水分離器により留去した。次いで、キシレン/「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素系溶剤)=50/50(質量比)の混合溶剤で固形分濃度60%となるよう希釈し、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は水酸基価が120、数平均分子量が2,010であった。
【0140】
製造例2〜11
製造例1と同様にして、下記表1に示す配合割合のモノマーを、表1に示す酸価となるまで反応させることにより、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−2)〜(A−11)を得た。各モノマーの配合量、得られた各水酸基含有ポリエステル樹脂の酸価、水酸基価及び数平均分子量を製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)と併せて、下記表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
塗料組成物の製造
実施例1〜14、比較例1〜3
製造例1〜11で得たポリエステル樹脂溶液(A−1)〜(A−11)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)、「SPARWITE W−5HB」(商品名、ウィルバーエリス社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径1.6μm)、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク)、「スミジュールN3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分100%)、「デスモジュールZ4470」(商品名、住化バイエルウレタン社製、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分70%)、「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)、「クラレポリオールP−510」(商品名、クラレ社製、ポリエステルポリオール、数平均分子量500)、「AEROSIL 200」(商品名、日本アエロジル社製、二酸化ケイ素、炭素量0質量%)及びジブチル錫ジアセテートを、下記表2に示す配合割合にて攪拌混合して塗料化を行い、塗料組成物(X−1)〜(X−17)を得た。
なお、顔料成分の配合にあたっては、第1着色塗料中の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液42部(樹脂固形分25部)及び表2中に示す量の顔料に、キシレン15部及びガラスビーズを加えて混合し、ペイントシェーカーで30分間分散した後、ガラスビーズを除去して、顔料分散ペーストとし、他成分との攪拌混合に供した。また、二酸化ケイ素の配合にあたっては、第1着色塗料中の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液2部(樹脂固形分1.2部)及び表2中に示す量の二酸化ケイ素に、キシレン5部及びガラスビーズを加えて混合し、ペイントシェーカーで30分間分散した後、ガラスビーズを除去して、顔料分散ペーストとし、他成分との攪拌混合に供した。
塗料組成物は、さらに、キシレン/「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素系溶剤)=50/50(質量比)の混合溶剤を添加することにより、フォードカップNo.4を用いて20℃で20秒の粘度になるように調整した。
また、得られた塗料組成物(X−1)〜(X−17)について、ポリプロピレン板上に硬化膜厚が30μmとなるように塗装し、80℃で10分間加熱した後の塗膜のゲル分率(G80)を合わせて表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
水性第2着色塗料(Y)用アクリル樹脂エマルションの製造例
製造例12
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及び「アクアロンKH−10」(注1)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した)、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルション(AC)を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
(注1)「アクアロンKH−10」: ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬株式会社製、有効成分97%。
【0146】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、アリルメタクリレート2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0147】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0148】
水性第2着色塗料(Y)用ポリエステル樹脂の製造
製造例13
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。生成した縮合水は水分離器により留去した。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに、無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)で希釈し、固形分濃度70%のポリエステル樹脂溶液(PE1)を得た。得られたポリエステル樹脂は酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。
【0149】
製造例14
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールをエチレングリコールモノn−ブチルエーテル(20℃において100gの水に溶解する質量:無限)に変更する以外は、製造例13と同様にして、ポリエステル樹脂(PE2)を得た。
【0150】
光輝性顔料濃厚液の製造例
製造例15
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注2)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料濃厚液(P1)を得た。
(注2)リン酸基含有樹脂溶液:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注3)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注3)リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0151】
製造例16
2−エチル−1−ヘキサノール35部を、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル35部に変更する以外は、製造例36と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P2)を得た。
【0152】
水性第2着色塗料(Y)の製造
製造例17
製造例12で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例13で得たポリエステル樹脂溶液(PE1)57部、製造例15で得た光輝性顔料濃厚液(P1)62部及び「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−1)を得た。
【0153】
製造例18
製造例12で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例14で得たポリエステル樹脂溶液(PE2)57部、製造例16で得た光輝性顔料濃厚液(P2)62部及び「サイメル325」(日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(ロームアンドハース社製、商品名、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−2)を得た。
【0154】
塗膜形成方法
前記実施例1〜14及び比較例1〜3で得た塗料組成物(X−1)〜(X−17)、及び上記製造例17及び18で得た水性第2着色塗料(Y−1)及び(Y−2)を用い、以下のようにしてそれぞれ試験塗板を作製し、評価試験を行なった。
【0155】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0156】
実施例15
上記試験用被塗物、前述した塗着塗膜のゲル分率測定用のポリプロピレン板及び固形分含有率測定用のアルミホイル上に、それぞれ、実施例1で得た塗料組成物(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚が30μmとなるように静電塗装し、第1着色塗膜を形成した。5分間放置後、80℃で10分間プレヒートを行なった後、第1着色塗膜のゲル分率及び固形分含有率を測定した。測定結果を表3に示す。
次いで、第1着色塗膜上に製造例17で得た水性第2着色塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚が15μmとなるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
次いで、該第2着色塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚が40μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験塗板を作製した。
【0157】
実施例16〜29、比較例4〜6
実施例15において、実施例1で得た塗料組成物(X−1)を表3に示す塗料組成物(X−2)〜(X−17)のいずれかに変更し、製造例17で得た水性第2着色塗料(Y−1)を表3に示す水性第2着色塗料(Y−1)又は製造例18で得た水性第2着色塗料(Y−2)に変更する以外は、実施例15と同様にして試験塗板を作製した。
【0158】
評価試験
上記実施例15〜29及び比較例4〜6で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を表3に示す。
(試験方法)
平滑性:Wave Scan(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値を用いて評価した。Long Wave(LW)値は、1.2〜12mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
【0159】
鮮映性:上記Wave Scanによって測定されるShort Wave(SW)値を用いて評価した。Short Wave(SW)値は、0.3〜1.2mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0160】
耐チッピング性:スガ試験機社製の飛石試験機JA−400型(チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、30cmの距離から0.392MPa(4kgf/cm)の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを試験板に45度の角度で衝突させた。その後、得られた試験板を水洗して、乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン社製)を貼着して、それを剥離した後、塗膜のキズの発生程度等を目視で観察し、下記基準により評価した。
◎:キズの大きさが極めて小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない
○:キズの大きさが小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない
△:キズの大きさは小さいが、電着面や素地の鋼板が露出している
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している。
【0161】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)の反応によって得られ、かつ酸成分(a1)中の芳香族多塩基酸(a1−1)及び脂環族多塩基酸(a1−2)の合計含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として65〜100mol%の範囲内であり、かつアルコール成分(a2)が、アルコール成分(a2)の総量を基準として、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートを2〜100mol%含有する水酸基含有ポリエステル樹脂、ならびに(B)イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)において、酸成分(a1)中の脂環族多塩基酸(a1−2)の含有量が、酸成分(a1)の総量を基準として、65〜100mol%の範囲内である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(B)が、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体である請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の合計固形分100質量部を基準として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を10〜95質量部、ポリイソシアネート化合物(B)を5〜90質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物が塗装された物品。
【請求項6】
(1)被塗物に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、ならびに
(3)未硬化の第1着色塗膜および未硬化の第2着色塗膜を加熱して両塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【請求項7】
(1)被塗物に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、
(2)未硬化の第1着色塗膜上に、水性塗料である第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、
(3)未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、ならびに
(4)未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱して3層の塗膜を同時に硬化させる工程、
を含む複層塗膜形成方法。
【請求項8】
第2着色塗料が光輝性顔料(C3)を含有する塗料である請求項6又は7に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項9】
被塗物が、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である請求項6〜8のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2010−150459(P2010−150459A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332223(P2008−332223)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】