説明

塗装システム

【課題】本体と、該本体に対して揺動可能に連結された部材とを有する被塗装物に対して、効率よく塗装を施す。
【解決手段】塗装システムは、下流側の自動車車体14のボンネット22及びトランク26に対して塗装を施す第1塗装ロボット16a、16bと、ボンネット22及びトランク26を開閉するためのオープナーロボット18と、上流側の自動車車体14aの乗員室ドア24a〜24dに対して塗装を施す第2塗装ロボット16c、16dとを有する。第1塗装ロボット16a、16bによる自動車車体14のボンネット22の内側への塗装作業が終了した後、オープナーロボット18が自動車車体14のボンネット22を閉止する。この閉止の間、第1塗装ロボット16a、16bは、自動車車体14のBピラー40a、40bに対して塗装を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装システムに関し、一層詳細には、被塗装物における揺動可能な部材を揺動させるためのオープナーロボットを具備する塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の製造過程では、塗装工程に先んじて、乗員室が形成された車体本体に対してボンネット、乗員室ドア、トランク等の各種のドアが揺動可能に連結される。自動車車体は、前記各種のドアが閉止された状態で、塗装ステーションに搬送される。塗装ステーションでは、変位し続ける自動車車体に対して塗装ロボットから所定の塗料が噴霧され、これにより塗装が実施される。
【0003】
なお、各種のドアにおける車体本体に対する着座部位(すなわち、内側)にも塗装を行う必要がある。このように内側に対して塗装を行う際には、塗料の噴霧に先んじて各種のドアが開放状態とされる。換言すれば、ドアは、車体本体から離間する方向に揺動され、この状態で、該ドアの内側や、必要に応じては車体本体における該ドアの着座部位に対する塗装が実施される。
【0004】
塗装が終了した後、ドアが再び閉じられ(換言すれば、車体本体に接近する方向に揺動され)る。すなわち、自動車車体は、ドアが閉じられた状態で塗装ステーションから搬出される。
【0005】
ここで、各種のドアの中、乗員室ドアの開閉は、例えば、特許文献1に記載されるように塗装ロボットが行う。一方、ボンネット及びトランクの開閉は、特許文献1、2に記載されるように、オープナーロボットと呼称される専用のロボットによって行われる。このことから諒解されるように、四輪の自動車車体に対して塗装を行うための塗装システムは、塗装ロボットと、オープナーロボットとを有するようにして構成される。
【0006】
上記したように、塗装が実施される間、自動車車体は塗装ステーション内を変位し続ける。このため、塗装ロボット及びオープナーロボットの各々は、別個の変位機構の作用下に変位可能に設けられる。すなわち、塗装ロボット及びオープナーロボットは、自動車車体が搬送されること、換言すれば、変位することに追従し、個別に変位する。
【0007】
なお、特許文献1記載の従来技術では、その図1に示されるように、ボンネット又はトランクを開放するためのオープナーロボットと、開放された乗員室ドアの内方を塗装するための塗装ロボットとを同一の案内レール上に配置している。また、特許文献2記載の従来技術では、乗員室ドアの内方を塗装するための塗装ロボットとは別に、該乗員室ドアを開放するためのオープナーロボットを設けるようにしているが、その第1図には、これら塗装ロボット及びオープナーロボットが同一の案内レールで案内することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/108401号
【特許文献2】特開昭61−204060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
塗装効率を向上させるには、塗装ロボットが継続して塗装作業を営む必要がある。しかしながら、特許文献1、2記載の従来技術をはじめとする既存技術では、オープナーロボットが、例えば、ボンネットを開放するための動作を行っている間、塗装ロボットを待機状態とすることを余儀なくされる。当然に、この間に塗装が実施されることはない。
【0010】
この理由の1つとして、上記したように、塗装ロボットとオープナーロボットとが同一の案内レール上に配置されることが挙げられる。すなわち、この場合、塗装ロボット及びオープナーロボットが作業を行うことが可能な範囲に制約を受けることになる。塗装ロボットがオープナーロボットを越えて変位することはできないし、逆に、オープナーロボットが塗装ロボットを越えて変位することもできないからである。
【0011】
また、互いが近接した状態で同時に作業を行わせると、互いに干渉し易い。この場合、例えば、塗装ロボットが塗装に適切な姿勢となることが困難となる。
【0012】
以上のように、既存技術には、塗装ロボットの作業効率、ひいては塗装効率を向上させることが困難であるという不具合がある。
【0013】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、オープナーロボットが作業を行っている間に塗装ロボットに塗装作業を営ませることが可能であり、このために塗装ロボットの作業効率、ひいては被塗装物に対する塗装効率を向上させることが可能である塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数個の部材が本体に対して揺動可能に連結されて構成される被塗装物の少なくとも前記部材に対して塗装を行うための塗装手段を有する塗装ロボットと、前記被塗装物を構成する前記部材を前記本体から離間する方向に揺動させるためのオープナーロボットとを具備する塗装システムであって、
変位する前記被塗装物に追従させて前記塗装ロボットを変位させる際、該塗装ロボットを案内する第1の案内部材と、
変位する前記被塗装物に追従させて前記オープナーロボットを変位させる際、該オープナーロボットを案内する第2の案内部材と、
を備え、
且つ前記オープナーロボットが前記部材を前記本体に対して接近する方向又は離間する方向のいずれかに揺動する最中、前記塗装ロボットが前記本体を塗装することを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明においては、オープナーロボットが部材を揺動させる動作を行っている際に、塗装ロボットが待機状態となることなく、前記部材が連結された本体を塗装する。このため、塗装ロボットが塗装作業を行っている時間が長期化し、しかも、本来は、揺動可能な前記部材に対して塗装を行うための塗装ロボットが本体に対する塗装作業をも営む。
【0016】
その上、本発明では、塗装ロボットとオープナーロボットが変位する際、各々を別個の案内部材で案内するようにしている。従って、塗装ロボットとオープナーロボットは、互いに干渉することなく容易に変位することができる。このため、塗装ロボットやオープナーロボットを、次に作業を営むべき箇所に速やかに変位させることが可能である。
【0017】
以上のような理由から、塗装ロボットの稼動効率、換言すれば、作業効率を向上させることができる。その結果、被塗装物に対する塗装効率も向上する。
【0018】
なお、被塗装物としては自動車車体が例示される。この場合、揺動させるべき部材としてはボンネット、乗員室ドア及びトランクが挙げられ、これらが連結された本体としては車体本体が挙げられる。このような構成においては、例えば、オープナーロボットがボンネットを車体本体から離間する方向に揺動する際、塗装ロボットによって車体本体の一部に対して塗装を施すようにすればよい。
【0019】
この場合、車体本体の一部の好適な例としては、Bピラーを挙げることができる。
【0020】
さらに、オープナーロボットがボンネットを車体本体に接近する方向に揺動した後にトランクを前記車体本体から離間する方向に揺動するために移動する最中、前記塗装ロボットによって、車体本体の別の一部に対して塗装を施すようにしてもよい。この場合、塗装ロボットの稼動効率(作業効率)、ひいては被塗装物である車体本体に対する塗装効率が一層向上する。
【0021】
ここで、別の一部の好適な例としては、Cピラーを挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、オープナーロボットが部材を本体に対して接近又は離間する方向に揺動させる動作を行っている最中、塗装ロボットが、前記部材が連結された前記本体を塗装する。すなわち、本来は、揺動可能な前記部材に対して塗装を行うための塗装ロボットが、待機状態となることなく、本体に対する塗装作業をも営む。このため、塗装ロボットが塗装作業を行っている時間が長期化する。
【0023】
しかも、本発明においては、塗装ロボットとオープナーロボットが変位する際、各々が別個の案内部材で案内されるので、変位する塗装ロボットとオープナーロボットが互いに干渉することがない。このため、塗装ロボットやオープナーロボットを、次に作業を営むべき箇所に速やかに変位させることが可能である。
【0024】
以上のような理由から、塗装ロボットの稼動効率、換言すれば、作業効率を向上させることができるので、被塗装物に対する塗装効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る塗装システムが設置された塗装ステーションの概略平面図である。
【図2】図1の塗装ステーションに搬入された1台目の自動車車体の乗員室ドア中、前ドアを開放した状態を示す概略平面図である。
【図3】図2に続き、前記前ドアの内側に対して塗装を施している状態を示す概略平面図である。
【図4】図3に続き、前記乗員室ドア中の後ドアを開放した状態を示す概略平面図である。
【図5】図4に続き、前記後ドアの内側に対して塗装を施している状態を示す概略平面図である。
【図6】図5に続き、塗装ステーションの下流側に到達した1台目の自動車車体のボンネットを開放し、且つ上流側に新たに搬入された2台目の自動車車体の前ドアを開放した状態を示す概略平面図である。
【図7】図6に続き、1台目の自動車車体のボンネットの内側に対して塗装を施す一方、2台目の自動車車体の前ドアの内側に対して塗装を施している状態を示す概略平面図である。
【図8】図7に続き、1台目の自動車車体のボンネットを閉止するとともにBピラーに対して塗装を施す一方、2台目の自動車車体の前ドアの内側に対する塗装作業を継続して実施している状態を示す概略平面図である。
【図9】図8に続き、1台目の自動車車体の前ドアを閉止するとともにオープナーロボットがトランク側に変位し、且つ2台目の自動車車体の後ドアを開放した状態を示す概略平面図である。
【図10】図9に続き、1台目の自動車車体のトランクを開放するとともに後ドアを閉止し、且つ2台目の自動車車体の後ドアの内側に対して塗装を施している状態を示す概略平面図である。
【図11】図10に続き、1台目の自動車車体のトランクの内側に対して塗装を施す一方、2台目の自動車車体の後ドアの内側に対する塗装作業を継続して実施している状態を示す概略平面図である。
【図12】図11に続き、1台目の自動車車体のトランクを閉止する一方、2台目の自動車車体に対する塗装作業が終了した状態を示す概略平面図である。
【図13】オープナーロボットがトランク側に変位する最中、1台目の自動車車体の前ドアを閉止した塗装ロボットがCピラーに対して塗装を施す状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る塗装システムにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る塗装システム10が設置された塗装ステーション12の概略平面図である。この場合、塗装システム10は、四輪の自動車車体14(被塗装物)に対して塗装を行うためのものであり、4台の塗装ロボット16a〜16dと、1台のオープナーロボット18とを有する。なお、塗装ロボット16a〜16dは全て同一構成であるが、説明の便宜上、以降においては、下流側に位置する2台の塗装ロボット16a、16bを第1塗装ロボット16a、16bと指称し、上流側に位置する2台の塗装ロボット16c、16dを第2塗装ロボット16c、16dと指称する。
【0028】
自動車車体14は、車体本体20に対し、ボンネット22、4枚の乗員室ドア24a〜24d(前ドア24a、24b、後ドア24c、24d)及びトランク26の合計6枚のドアが揺動可能に連結されて構成される。自動車車体14は、これらのドア22、24a〜24d、26の全てが閉止された状態で、図示しないコンベアによって塗装ステーション12に搬入される。
【0029】
前記図示しないコンベアは、自動車車体14を、図1における矢印A1方向に向かって比較的低速で搬送する。換言すれば、自動車車体14は、塗装ステーション12内で各種の作業が営まれる間、矢印A1方向に向かって緩やかに常時変位する。
【0030】
塗装ステーション12の床上には、矢印A1方向及び矢印A2方向に沿って延在するとともに、互いに対向する第1案内レール28a、28b(第1の案内部材)と、この中の第1案内レール28aよりも外方(図1における下方)に配される第2の案内部材としての第2案内レール30とが敷設される。
【0031】
この中の第1案内レール28aには、第1塗装ロボット16a、第2塗装ロボット16cが図示しない走行台車を介して変位可能に配置されており、同様に、第1案内レール28bには、第1塗装ロボット16b、第2塗装ロボット16dが図示しない走行台車を介して変位可能に配置されている。さらに、第2案内レール30には、オープナーロボット18が図示しない走行台車を介して変位可能に配置されている。
【0032】
前記3台の走行台車は、図示しない制御回路に対して電気的に接続されている。第1塗装ロボット16a、16b、第2塗装ロボット16c、16d及びオープナーロボット18は、この制御回路の制御作用下に、第1案内レール28a、28b又は第2案内レール30のいずれかに案内されながら、矢印A1方向又は矢印A2方向に指向して変位する。すなわち、走行台車及び制御回路は、第1塗装ロボット16a、16b、第2塗装ロボット16c、16d及びオープナーロボット18を変位させる変位機構を構成する。
【0033】
第1塗装ロボット16a、16b及び第2塗装ロボット16c、16dとしては、例えば、6軸ロボット等の公知の多関節ロボットが採用される。これら第1塗装ロボット16a、16b及び第2塗装ロボット16c、16dの手首部には、各々、塗装手段としての図示しない塗装ガンが配設され、この塗装ガンを介して、ミスト状の塗料が自動車車体14に噴霧される。
【0034】
第1塗装ロボット16a、16b及び第2塗装ロボット16c、16dの各々は、さらに、4枚の乗員室ドア24a〜24dのいずれかを車体本体20に対して揺動させるための図示しない開閉用治具を有する。すなわち、乗員室ドア24a〜24dは、第1塗装ロボット16a、16b又は第2塗装ロボット16c、16dの作用下に車体本体20に対して接近又は離間する方向に揺動され、これにより開閉される(後述)。
【0035】
一方のオープナーロボット18としても、第1塗装ロボット16a、16b及び第2塗装ロボット16c、16dと同様に、6軸ロボット等の公知の多関節ロボットを採用することができる。このオープナーロボット18の手首部には、ボンネット22又はトランク26に掛合可能なフック(図示せず)が設けられる。すなわち、ボンネット22又はトランク26は、オープナーロボット18によって車体本体20に対して接近又は離間する方向に揺動され、これにより開閉される(後述)。
【0036】
以上のような構成の第1塗装ロボット16a、16b、第2塗装ロボット16c、16d及びオープナーロボット18は公知であり(例えば、前記特許文献1、2参照)、従って、その詳細な説明を省略する。なお、これらのロボット16a〜16d及び18の各アーム部は、周知の通り、伸縮可能である。図面においては、アーム部の長さを相違させることによって伸張状態・収縮状態のいずれであるかを表している。
【0037】
本実施の形態に係る塗装システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0038】
図1に示すように、1台目の自動車車体14は、ドア22、24a〜24d、26の全てが閉止された状態で、前記図示しないコンベアによって塗装ステーション12に搬入される。そして、自動車車体14がさらに変位し、所定の位置に到達すると、上流側に位置する第2塗装ロボット16c、16dが、制御回路の作用下に動作を開始する。
【0039】
具体的には、第2塗装ロボット16c、16dは、前記開閉用治具が乗員室ドア24a〜24d中の2枚の前ドア24a、24bに掛合し、さらに、図2に示すように、前ドア24a、24bが車体本体20に対して離間する方向に揺動するように、アーム部を適宜回動動作ないし伸縮動作させる。これにより、前ドア24a、24bが開放状態となる。
【0040】
この間、自動車車体14は矢印A1方向に向かって緩やかに変位する。この変位の間、第2塗装ロボット16c、16dは、矢印A2方向に向かって適宜変位した後、図3に示すように、その手首部に設けられた塗装ガンが前ドア24a、24bの内側に臨むように動作する。勿論、この動作は、開放された前ドア24a、24bにアーム部が干渉しないように行われる。
【0041】
さらに、第2塗装ロボット16cの塗装ガンから前ドア24aの内側に対して塗料が噴霧される。同時に、第2塗装ロボット16dの塗装ガンから前ドア24bの内側に対して塗料が噴霧される。これにより、前ドア24a、24bの内側に対する塗装が行われる。必要に応じ、その後、車体本体20における前ドア24a、24bの着座部位に対しても塗装が行われる。
【0042】
前ドア24a、24bの塗装が終了した後、第2塗装ロボット16c、16dは、図4に示すように、後ドア24c、24dが開放状態となるように動作する。勿論、この際には、後ドア24c、24dが車体本体20に対して離間する方向に揺動するように、アーム部が適宜回動動作ないし伸縮動作する。
【0043】
その後、前ドア24a、24bに対して塗装を行ったときと同様に、図5に示すように、矢印A2方向に向かって適宜変位した後の第2塗装ロボット16c、16dの各塗装ガンから後ドア24c、24dの内側に対して塗料が噴霧され、これにより、後ドア24c、24dの内側に対する塗装が行われる。勿論、車体本体20における後ドア24c、24dの着座部位に対しても塗装を行うようにしてもよい。
【0044】
なお、以上のようにして塗装が行われる間も、自動車車体14は矢印A1方向に向かって緩やかに変位する。第2塗装ロボット16c、16dは、この自動車車体14の変位に追従して緩やかに変位する。換言すれば、第2塗装ロボット16c、16dは、変位しながら乗員室ドア24a〜24dの内側に対する塗装作業を営む。
【0045】
乗員室ドア24a〜24dの内側が塗装された自動車車体14は、前記コンベアの作用下に、図6に示すように、塗装ステーション12の下流側、すなわち、第1塗装ロボット16a、16bが配されている箇所に到達する。同時に、第2塗装ロボット16c、16dが配されている上流側には、2台目の自動車車体14aが搬送される。なお、自動車車体14aは自動車車体14と同一構成であるが、先行する自動車車体14との区別を容易とするべく、参照符号14aを付している。
【0046】
次に、図6に示すように、オープナーロボット18が、その手首部に設けられた前記フックが1台目の自動車車体14のボンネット22に掛合し、さらに、ボンネット22が車体本体20に対して離間する方向に揺動するように、アーム部を適宜回動動作ないし伸縮動作させる。これにより、ボンネット22が開放状態となる。この間、第1塗装ロボット16a、16bは待機している。
【0047】
同時に、上流側では、矢印A1方向に向かって変位した後の第2塗装ロボット16c、16dの前記開閉用治具が2台目の自動車車体14aの前ドア24a、24bに掛合した後、該第2塗装ロボット16c、16dのアーム部が適宜回動動作ないし伸縮動作する。これにより、自動車車体14aの前ドア24a、24bが開放状態となる。
【0048】
次に、図7に示すように、第1塗装ロボット16a、16bのアーム部が適宜回転動作ないし伸縮動作し、その結果、各々の塗装ガンが自動車車体14のボンネット22の内側に臨む。その後、各塗装ガンから塗料が噴霧され、これにより自動車車体14のボンネット22の内側に対する塗装が行われる。必要に応じ、車体本体20におけるボンネット22の着座部位に対して塗装を行うようにしてもよい。
【0049】
この間、オープナーロボット18は、ボンネット22が自重によって揺動(閉止)することを回避するべく、矢印A1方向に緩やかに変位しながらボンネット22を継続して支持する。換言すれば、オープナーロボット18は、ボンネット22が塗装される間は同一姿勢を保つことで該ボンネット22を保持する。
【0050】
自動車車体14のボンネット22の内側に対する塗装が終了すると、オープナーロボット18は、ボンネット22が車体本体20に対して接近する方向に揺動するように、アーム部を適宜回動動作ないし伸縮動作させる。これにより、ボンネット22が閉止状態となる。
【0051】
ここで、本実施の形態では、第1塗装ロボット16a、16bが第1案内レール28a、28b上の各々に配置される一方、オープナーロボット18が第2案内レール30上に配置される。すなわち、第1塗装ロボット16a、16bとオープナーロボット18は、変位を行う際、互いに別個の案内レールに案内される。このため、第1塗装ロボット16a、16bは、ボンネット22を開放状態として支持しているオープナーロボット18に干渉することなく、案内レール28a、28bに沿って変位することができる。
【0052】
このように、第1塗装ロボット16a、16bは、オープナーロボット18が第2案内レール30上の如何なる箇所に位置しているかに制約を受けることなく、第1案内レール28a、28b上を自在に変位することが可能である。従って、第1塗装ロボット16a、16bを、次に塗装を施すべき箇所に向かって移動させることができる。
【0053】
本実施の形態では、図8に示すように、オープナーロボット18がボンネット22を閉止する間、自動車車体14のBピラー40a、40bに対して塗装を施す。すなわち、第1塗装ロボット16a、16bは、オープナーロボット18がボンネット22を閉止する動作を行う間、自動車車体14を構成する車体本体20におけるBピラー40a、40bに臨む位置となるように、矢印A2方向に沿って変位する。さらに、その後、各塗装ガンからBピラー40a、40bに対して塗料を噴霧し、これにより塗装作業を営む。
【0054】
このように、本実施の形態においては、オープナーロボット18がボンネット22を揺動(閉止)させる動作を行う間、第1塗装ロボット16a、16bが待機状態となることなく、車体本体20の一部位であるBピラー40a、40bに対して塗装作業を営む。従って、第1塗装ロボット16a、16bの稼動効率(作業効率)を向上させることができ、これに伴って自動車車体14に対する塗装効率が向上する。
【0055】
なお、自動車車体14に対して以上の塗装作業が営まれる間、第2塗装ロボット16c、16dの各塗装ガンから自動車車体14aの前ドア24a、24bの内側、必要に応じては車体本体20における前ドア24a、24bの着座部位に対して塗料が噴霧され、これにより塗装が行われる。
【0056】
自動車車体14のボンネット22を閉止させたオープナーロボット18は、図9に示すように、矢印A2方向に変位して自動車車体14のトランク26に近接する。上記したように、第1塗装ロボット16a、16bとオープナーロボット18は、変位を行う際、互いに別個の案内レールに案内されるので、オープナーロボット18は、第1塗装ロボット16a、16bが第1案内レール28a、28b上の如何なる箇所に位置しているかに関わらず、該第1塗装ロボット16a、16bに干渉することなく容易に変位する。
【0057】
その一方で、第1塗装ロボット16a、16bは、前記開閉用治具によって前ドア24a、24bを車体本体20に接近する方向に揺動させ、これにより前ドア24a、24bを閉止する。同時に、第2塗装ロボット16c、16dは、自動車車体14aの後ドア24c、24dが開放状態となるように動作する。
【0058】
次に、オープナーロボット18は、図10に示すように、その手首部の前記フックが自動車車体14のトランク26に掛合し、さらに、該トランク26が車体本体20に対して離間する方向に揺動するように、アーム部を適宜回動動作ないし伸縮動作させる。これにより、トランク26が開放状態となる。
【0059】
この間、第1塗装ロボット16a、16bは、前記開閉用治具によって自動車車体14の後ドア24c、24dを車体本体20に接近する方向に揺動させ、これにより後ドア24c、24dを閉止状態とする。同時に、第2塗装ロボット16c、16dは、自動車車体14aにおける開放された後ドア24c、24dの内側、必要に応じてはさらに車体本体20における後ドア24c、24dの着座部位に対して塗装を施す。
【0060】
次に、図11に示すように、第1塗装ロボット16a、16bのアーム部が適宜回転動作ないし伸縮動作し、その結果、各々の塗装ガンが自動車車体14のトランク26の内側に臨む。その後、各塗装ガンから塗料が噴霧され、これにより自動車車体14のトランク26の内側に対する塗装が行われる。勿論、必要に応じ、車体本体20におけるトランク26の着座部位に対して塗装を行うようにしてもよい。
【0061】
このようにしてトランク26が塗装される間、オープナーロボット18は、上記と同様に、トランク26が自重によって揺動(閉止)することを回避するべく、矢印A1方向に緩やかに変位しながら同一姿勢を保つことでトランク26を保持する。
【0062】
また、トランク26に対する塗装が行われる間、第2塗装ロボット16c、16dは、自動車車体14aにおける後ドア24c、24dの内側、場合によっては車体本体20における後ドア24c、24dの着座部位に対する塗装を継続して実施する。
【0063】
自動車車体14のトランク26の内側に対する塗装が終了すると、オープナーロボット18は、トランク26が車体本体20に対して接近する方向に揺動するように、アーム部を適宜回動動作ないし伸縮動作させる。これにより、図12に示すように、トランク26が閉止状態となる。また、第1塗装ロボット16a、16b及び第2塗装ロボット16c、16dが待機状態となる。
【0064】
勿論、以上の塗装作業が行われる間も、自動車車体14、14aは、矢印A1方向に向かって緩やかに変位する。従って、全ての塗装作業が終了し、且つ全てのドア22、24a〜24d、26が閉止された自動車車体14は、前記図示しないコンベアの作用下に、塗装ステーション12から搬出される。
【0065】
その一方で、自動車車体14aが下流側に搬送され、第1塗装ロボット16a、16bに近接するとともに、上流側に、全てのドア22、24a〜24d、26が閉止された新たな自動車車体が搬入される。すなわち、図6に示す状態となり、以降は図7〜図12に示す状態が繰り返される。
【0066】
以上から諒解されるように、オープナーロボット18がボンネット22を閉止する動作を行う間に第1塗装ロボット16a、16bによってBピラー40a、40bに対する塗装を施す本実施の形態によれば、2台の自動車車体14、14aに対し、4台の塗装ロボット16a〜16d及び1台のオープナーロボット18のみで塗装作業を実施することが可能である。すなわち、第1塗装ロボット16a、16bが待機状態となることなく塗装作業を営むので作業効率が向上したことにより、必要最小限の要素で塗装システム10を構成することが可能となる。このため、設備投資が低廉化するという利点も得られる。
【0067】
上記した実施の形態においては、オープナーロボット18がトランク26側に向かって変位する際、第1塗装ロボット16a、16bの作用下に自動車車体14の前ドア24a、24bを閉止するようにしているが、自動車車体14の前ドア24a、24bが閉止された後もなおオープナーロボット18が変位の最中となるような場合、図13に示すように、第1塗装ロボット16a、16bによってCピラー42a、42bに対して塗装を施すようにしてもよい。この場合、第1塗装ロボット16a、16bの作業効率、ひいては自動車車体14に対する塗装効率を一層向上させることができる。
【0068】
いずれにおいても、被塗装物は、本体に対して揺動が可能となるように所定の部材が連結されたものであればよく、自動車車体14に特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
10…塗装システム 12…塗装ステーション
14…自動車車体 16a〜16d…塗装ロボット
18…オープナーロボット 20…車体本体
22…ボンネット 24a〜24d…乗員室ドア
26…トランク 28a、28b…第1案内レール
30…第2案内レール 40a、40b…Bピラー
42a、42b…Cピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の部材が本体に対して揺動可能に連結されて構成される被塗装物の少なくとも前記部材に対して塗装を行うための塗装手段を有する塗装ロボットと、前記被塗装物を構成する前記部材を前記本体から離間する方向に揺動させるためのオープナーロボットとを具備する塗装システムであって、
変位する前記被塗装物に追従させて前記塗装ロボットを変位させる際、該塗装ロボットを案内する第1の案内部材と、
変位する前記被塗装物に追従させて前記オープナーロボットを変位させる際、該オープナーロボットを案内する第2の案内部材と、
を備え、
且つ前記オープナーロボットが前記部材を前記本体に対して接近する方向又は離間する方向のいずれかに揺動する最中、前記塗装ロボットが前記本体を塗装することを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗装システムにおいて、前記被塗装物が自動車車体、前記本体が車体本体、前記部材がボンネット及びトランクであるとき、前記オープナーロボットが前記ボンネットを前記車体本体から離間する方向に揺動する際、前記塗装ロボットが前記車体本体の一部を塗装することを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項2記載の塗装システムにおいて、前記塗装ロボットが前記車体本体のBピラーを塗装することを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の塗装システムにおいて、前記オープナーロボットが前記ボンネットを前記車体本体に接近する方向に揺動した後に前記トランクを前記車体本体から離間する方向に揺動するために移動する最中、前記塗装ロボットが前記車体本体の別の一部を塗装することを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
請求項4記載の塗装システムにおいて、前記塗装ロボットが前記車体本体のCピラーを塗装することを特徴とする塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−230072(P2011−230072A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103640(P2010−103640)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】